フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が名作である訳 ― ジェームズ・アール
-
0:07 - 0:10この少女は振り向いたところでしょうか
顔を背けようとしているのでしょうか -
0:10 - 0:12意見が一致するのは難しいでしょう
-
0:12 - 0:15彼女はオランダの巨匠
ヨハネス・フェルメールが描いた -
0:15 - 0:17ミステリアスな
「真珠の耳飾りの少女」です -
0:17 - 0:22「北のモナ・リザ」とも
称されることが多い絵画で -
0:22 - 0:27理想化したり 時には劇的な表現を用いる
オランダ絵画スタイルである -
0:27 - 0:29「トローニー」に属します
-
0:29 - 0:31私たちを魅了する
「真珠の耳飾りの少女」は -
0:31 - 0:35フェルメールの作品らしい
魅力と巧みさを備えています -
0:35 - 0:38ただ 静かで寓意を感じさせる情景を
離れたところから眺めるような -
0:38 - 0:42フェルメールの他の作品群からは
際立ったものがあります -
0:42 - 0:43「手紙を読む少女」
-
0:43 - 0:45「音楽の稽古」
-
0:45 - 0:47「画家のアトリエ」
-
0:47 - 0:51これらの絵は 親近感を
感じさせられる一方 -
0:51 - 0:55カーテンを描く事で
距離感が強調されています -
0:55 - 0:58ミルクを静かに注いでいる女性を
私たちは目にしているものの -
0:58 - 1:00このミルクは私たちのためでは
ありません -
1:00 - 1:02私たちはあくまで傍観者にすぎないのです
-
1:02 - 1:05フェルメールの絵画の
よく練られた構成は -
1:05 - 1:07バランスがとれた調和を呼び起こしています
-
1:07 - 1:10作品の多くに
市松模様の床を登場させることで -
1:10 - 1:14フェルメールは彼の視点と
遠近法の技能を示しています -
1:14 - 1:16形のゆがみを正しくとらえるテクニックで
-
1:16 - 1:21物体が絵の奥に退いているかのように
見えるのです -
1:21 - 1:24他の要素 例えば視線
鏡や光源 -
1:24 - 1:28空間や位置を通じて
ある瞬間を描きだします -
1:28 - 1:30窓辺で手紙を読む女性を
巧みに配置することで -
1:30 - 1:35窓にも彼女の姿が映りこんでいます
-
1:35 - 1:40構成のためにはイーゼルの脚を
隠してしまっているのもあります -
1:40 - 1:42「真珠の耳飾りの少女」は
-
1:42 - 1:45こういった要素を省いて
生き生きと描かれています -
1:45 - 1:49フェルメールは
光と影の処理に明暗法を用い -
1:49 - 1:55暗くフラットな背景に
スポットライトで立体感を出しています -
1:55 - 1:59そのため 演劇的な物語の1シーンではなく
-
1:59 - 2:02少女が心理的な主題となるのです
-
2:02 - 2:06こちらに向けた視線や
何かを言おうとするかのような開きかけた口や -
2:06 - 2:09彼女のまなざしに引き込まれるのです
-
2:09 - 2:13伝統的な肖像画のモデルは
貴族や聖者が多いのですが -
2:13 - 2:17なぜフェルメールは
無名の少女を描いたのでしょうか? -
2:17 - 2:2017 世紀のデルフトの町は
一般的なオランダの都市と同様に -
2:20 - 2:25貴族政治やカトリック教会に対して
反旗を翻すようになりました -
2:25 - 2:28スペインに対する80年の反乱の後
-
2:28 - 2:34オランダは自治や共和制という
アイデアを好むようになり -
2:34 - 2:38デルフトなどの都市は
王や宗教の権力からは独立し -
2:38 - 2:43フェルメールの様なアーティストには
伝統的なパトロンがいなかったのです -
2:43 - 2:45幸い オランダ東インド会社による
-
2:45 - 2:48ビジネスの革新により
-
2:48 - 2:51オランダにおける
経済的な光景は変化していき -
2:51 - 2:55商人階級の勢力は増し
新種のパトロンを生み出したのです -
2:55 - 2:58自分が出資した絵画に
描かれることを望んだ -
2:58 - 3:01商人たちには
中産階級風の主題が好まれ -
3:01 - 3:04自分たちの家のような環境の中で
見慣れたものに囲まれ -
3:04 - 3:06描かれることが多かったのです
-
3:06 - 3:09例えば フェルメールの絵画に
描かれている地図は -
3:09 - 3:11いわゆるオランダ黄金時代の
商人階級によって -
3:11 - 3:16ファッショナブルでその時代にふさわしいと
考えられていました -
3:16 - 3:19「真珠の耳飾りの少女」が
かぶっている東洋風のターバンもやはり -
3:19 - 3:23商人階級の世界観を現わしており
-
3:23 - 3:27また 真珠そのものも
富の象徴を誇張しています -
3:27 - 3:32フェルメール自身ではこの大きさの
真珠は入手するのは難しく -
3:32 - 3:37ガラスかスズ製の玉を真珠風に
コーティングした物のようです -
3:37 - 3:40この富の幻影が 絵画に
そのまま写し出されています -
3:40 - 3:44全体を見ると この真珠は
丸くて重量感があるものの -
3:44 - 3:49詳細に見てみると 絵の具の滲みが
浮かんでいるにすぎません -
3:49 - 3:55詳細に見ていくことでフェルメールの
イリュージョンを作り出す力量を思い知るのです -
3:55 - 3:58「真珠の耳飾りの少女」の
本当の身元は分かりませんが -
3:58 - 4:02彼女の肖像画との出会いは
忘れられないものとなることでしょう -
4:02 - 4:06ハーグにあるマウリッツハイス美術館に
常設展示されている -
4:06 - 4:10彼女の存在は突き刺さるようでありながら
はかなげでもあります -
4:10 - 4:15彼女の謎めいた方法で
近代的な経済や政治 -
4:15 - 4:18そして愛の誕生という視点を
象徴しているのです
- Title:
- フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」が名作である訳 ― ジェームズ・アール
- Description:
-
この少女は振り向いたところでしょうか、顔を背けようとしているのでしょうか? 意見が一致するのは難しいでしょう。オランダの巨匠ヨハネス・フェルメールが描いたミステリアスな「真珠の耳飾りの少女」のことです。「北のモナ・リザ」とも称されることが多い一枚ですが、この絵がこんなにも魅惑的なのはなぜでしょうか?近代的な経済、政治そして愛の誕生を、いかにこの作品が象徴しているかをジェームズ・アールが解説します。
講師:ジェームズ・アール、アニメーション:テス・マーティン
*このビデオの教材: http://ed.ted.com/lessons/why-is-vermeer-s-girl-with-the-pearl-earring-considered-a-masterpiece-james-earle - Video Language:
- English
- Team:
- closed TED
- Project:
- TED-Ed
- Duration:
- 04:34