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依存症の力、力への依存 | ガボール・マテ | TEDxRio+20

  • 0:10 - 0:14
    今日お話しするのは依存症について
    特に依存の力についてですが
  • 0:14 - 0:17
    力への依存についてもお話しします
  • 0:17 - 0:20
    私はカナダのバンクーバーで
    医師として働いています
  • 0:20 - 0:23
    極めて重度の依存症患者を
    診てきました
  • 0:23 - 0:26
    ヘロインを使う者
    コカインを注射する者
  • 0:26 - 0:32
    アルコール 覚せい剤など
    ありとあらゆる薬物の使用者たちです
  • 0:32 - 0:33
    苦しんでいる人たちです
  • 0:33 - 0:38
    もし医師の成功を測る基準が
    患者の寿命を延ばすことなら
  • 0:38 - 0:40
    私は失格です
  • 0:40 - 0:44
    私の患者は相対的に
    若くして亡くなるからです
  • 0:44 - 0:48
    死因はHIV、C型肝炎
  • 0:48 - 0:50
    心臓弁の感染症
  • 0:50 - 0:54
    脳や脊椎の感染症
  • 0:54 - 0:56
    心臓や血液の感染症などです
  • 0:56 - 1:02
    自殺や薬物の過剰摂取
    暴力や事故による死亡もあります
  • 1:02 - 1:06
    彼らの姿を見たら
    エジプトの偉大な作家―
  • 1:06 - 1:10
    ナギーブ・マフフーズの言葉を
    思い起こすでしょう
  • 1:10 - 1:15
    「人間の体ほど 悲しい人生を
    克明に記録するものはない」
  • 1:15 - 1:17
    彼らはすべてを失っているからです
  • 1:17 - 1:20
    健康も 見た目の美しさも
  • 1:20 - 1:24
    歯も富も
  • 1:24 - 1:26
    他人との関係も失い
  • 1:26 - 1:29
    多くの場合 ついには
    命をも失います
  • 1:29 - 1:32
    それでも彼らが依存から
    足を洗うことは ないのです
  • 1:32 - 1:35
    彼らに依存をやめさせることは
    力ずくでも できません
  • 1:35 - 1:39
    依存症には強い力があります
    なぜでしょう
  • 1:39 - 1:41
    ある患者が私に言いました
  • 1:41 - 1:45
    「死ぬのは怖くない
    生きることの方が怖い」
  • 1:45 - 1:51
    我々が考えるべき問題はこれです
    「なぜ彼らは生きることを恐れるのか」
  • 1:51 - 1:54
    依存症を理解しようと思ったら
  • 1:54 - 1:56
    着目すべきは
    依存の悪い点ではありません
  • 1:56 - 1:58
    依存の良い点に目を向けるのです
  • 1:58 - 2:01
    つまり患者が依存から得ているのは
    何なのか
  • 2:01 - 2:04
    依存しなければ得られないものとは
    何なのか
  • 2:04 - 2:08
    依存症患者たちが得ているのは
    痛みからの解放です
  • 2:08 - 2:13
    安らぎやコントロール感
  • 2:13 - 2:16
    落ち着きが得られます
    ただし ほんの一時です
  • 2:16 - 2:20
    問題は なぜこうした感覚が
    彼らの人生に欠けているのか
  • 2:20 - 2:22
    彼らに何が起きたかです
  • 2:22 - 2:28
    ヘロインやモルヒネ
    コデインなどの薬物や
  • 2:28 - 2:32
    コカインやアルコールには
  • 2:32 - 2:34
    どれも鎮痛作用があります
  • 2:34 - 2:36
    とにかく痛みが和らぐのです
  • 2:36 - 2:39
    だから 依存症における真の問題は
  • 2:39 - 2:43
    「なぜ依存するか」ではなく
    「なぜ痛むのか」なのです
  • 2:43 - 2:46
    キース・リチャーズの自伝を
    読み終えたところです
  • 2:46 - 2:48
    ローリング・ストーンズの
    ギタリストですね
  • 2:48 - 2:51
    ご存じかと思いますが
    彼が いまだ存命だというのは
  • 2:51 - 2:54
    やはり驚きです
  • 2:54 - 2:57
    彼は長期にわたり
    重度のヘロイン依存でした
  • 2:57 - 3:01
    自伝には こう書いています
    「依存とは
  • 3:01 - 3:05
    すなわち忘却を求めることであった」
    すべてを忘れることだったのです
  • 3:05 - 3:08
    彼は言います
    「薬物による感覚の歪みのおかげで
  • 3:08 - 3:12
    数時間は自分じゃない感覚が
    味わえる」
  • 3:12 - 3:14
    私には その気持ちがよく分かるのです
  • 3:14 - 3:17
    自分に対する不快感を
    知っているからです
  • 3:17 - 3:20
    自分という存在に対する不快感も
  • 3:20 - 3:24
    自分の精神状態から
    逃げ出したいという欲望も分かります
  • 3:24 - 3:30
    イギリスの偉大な精神科医
    ロナルド・D・レインは
  • 3:30 - 3:33
    「人が恐れるものには3つある」
    と言いました
  • 3:33 - 3:38
    人が恐れるのは 死、自分以外の人、
    そして自分の心です
  • 3:38 - 3:42
    長いこと私は自分の心から
    目を背けようとしてきました
  • 3:42 - 3:44
    向き合うのが怖かったのです
  • 3:44 - 3:46
    どうやって逃げていたかというと
  • 3:46 - 3:51
    薬物を使ったことはありませんが
    仕事に逃げていました
  • 3:51 - 3:54
    様々な活動に身を投じました
  • 3:54 - 3:57
    買い物にも逃げました
  • 3:57 - 4:02
    私の場合はクラシック音楽の
    コンパクトディスクでしたが
  • 4:02 - 4:04
    そうやって完全に依存症になりました
  • 4:04 - 4:07
    1週間でコンパクトディスクに
    8千ドルを費やしたこともあります
  • 4:07 - 4:08
    買いたかったわけではなく
  • 4:08 - 4:12
    店へ行かずには
    いられなかったのです
  • 4:12 - 4:15
    その頃 私は医師として
    多くの赤ん坊を取り上げていましたが
  • 4:15 - 4:17
    ある時
    陣痛に苦しむ女性を病院に残して
  • 4:17 - 4:22
    CDを買いに行ってしまったことが
    ありました
  • 4:22 - 4:26
    出産の時間までには
    病院へ戻れるはずでしたが
  • 4:26 - 4:28
    いったん店に入ると出られないのです
  • 4:28 - 4:33
    売り場にはクラシック音楽の
    販売員という悪魔がいるからです
  • 4:33 - 4:37
    「よぅ モーツァルトの交響曲の
    最新のヤツ聴いたかい?」
  • 4:37 - 4:38
    「まだ?それじゃあ...」
  • 4:38 - 4:40
    私は出産に間に合いませんでした
  • 4:40 - 4:43
    帰宅後 そのことで妻に嘘をつきました
  • 4:43 - 4:47
    嘘をつくのは依存者の特徴です
    そして私は子どもたちを無視しました
  • 4:47 - 4:50
    仕事と音楽に
    取りつかれていたからです
  • 4:50 - 4:53
    私には自己からの逃避がどんなものか
    わかるのです
  • 4:53 - 4:55
    私は依存をこう定義しています
  • 4:55 - 5:01
    依存とは
    一時的な安らぎや喜びを与えながら
  • 5:01 - 5:05
    長期的には害になり
    悪影響をもたらす行動のことで
  • 5:05 - 5:09
    その悪影響にも関わらず
    やめることができないものです
  • 5:09 - 5:12
    この観点から見ると
    実に多くの依存があることが
  • 5:12 - 5:16
    お分かりになるでしょう
  • 5:16 - 5:18
    薬物依存はもちろんですが
  • 5:18 - 5:21
    消費依存もありますし
  • 5:21 - 5:26
    セックス依存も
    インターネット依存も
  • 5:26 - 5:29
    買い物や食べ物への依存もあります
  • 5:30 - 5:33
    仏教には
    「餓鬼」という考えがあります
  • 5:33 - 5:37
    餓鬼とは膨れ上がった空っぽの腹に
  • 5:37 - 5:40
    やせ細った首と小さな口を持つ
    生き物です
  • 5:40 - 5:42
    餓鬼は常に飢えており
  • 5:42 - 5:44
    空虚感が満たされることは
    あり得ません
  • 5:44 - 5:47
    我々は皆 この社会における餓鬼です
  • 5:47 - 5:48
    誰もが空虚感を抱えています
  • 5:48 - 5:52
    そして多くの人々がその空虚を
    外から埋めようとしています
  • 5:52 - 5:57
    依存とは まさに その空虚を外から
    埋めようとすることなのです
  • 5:58 - 6:03
    依存者が痛みに苦しんでいる理由に
    取り組もうと思ったら
  • 6:03 - 6:06
    着目すべきは遺伝子ではありません
  • 6:06 - 6:08
    彼らの人生に目を向けるのです
  • 6:08 - 6:12
    私が診ている
    常習の依存患者たちの場合
  • 6:12 - 6:14
    彼らが痛みに苦しんでいる理由は
    明白です
  • 6:14 - 6:17
    人生を通じて
    ずっと虐待されてきたのです
  • 6:17 - 6:19
    生まれた時から虐待の日々です
  • 6:19 - 6:23
    12年の間に何百人もの女性を
    診てきましたが
  • 6:23 - 6:25
    全員 幼少期に
    性的虐待を受けていました
  • 6:25 - 6:27
    男性も精神的に傷ついていました
  • 6:27 - 6:30
    男性の場合は性的虐待を受けたり
    ネグレクトされたり
  • 6:30 - 6:33
    身体的虐待を受けたり 捨てられたり
  • 6:33 - 6:36
    繰り返し心を傷つけられたり
    しています
  • 6:36 - 6:38
    これが痛みの理由です
  • 6:38 - 6:42
    そして また別の理由もあります
    人間の脳です
  • 6:42 - 6:45
    耳にしたことがあるでしょうが
    人間の脳は
  • 6:45 - 6:48
    環境と相互に作用します
  • 6:48 - 6:50
    遺伝的にプログラムされている
    訳ではないのです
  • 6:50 - 6:53
    ですから子どもの頃の環境によって
  • 6:53 - 6:57
    実際に脳がどう発達するかが
    決まってくるのです
  • 6:57 - 7:01
    マウスを使った実験を2つ
    ご紹介しましょう
  • 7:01 - 7:04
    ある子どものマウスの口に
    食べ物を入れると
  • 7:04 - 7:07
    マウスはそれを食べ 味わい
    飲み込みますが
  • 7:07 - 7:11
    ほんの7~8センチ先に
    食べ物を置くと
  • 7:11 - 7:13
    そこまで動いて食べようとはしません
  • 7:13 - 7:16
    食べには行かず餓死するのです
  • 7:16 - 7:18
    なぜでしょう?
  • 7:18 - 7:22
    このマウスの脳では
    ドーパミンという物質の受容体が
  • 7:22 - 7:23
    遺伝的に不活化してあったからです
  • 7:23 - 7:26
    ドーパミンには報酬とやる気の
    作用があります
  • 7:26 - 7:29
    ドーパミンが分泌されるのは
    私たちがやる気になった時や
  • 7:29 - 7:33
    興奮したり 明るく元気になった時
    興味がわいた時
  • 7:33 - 7:36
    食べ物やセックスの相手を
    探している時です
  • 7:36 - 7:38
    ドーパミンがなければ
    やる気が起きません
  • 7:38 - 7:40
    では依存症患者の行動を
    考えてみましょう
  • 7:40 - 7:42
    コカインや覚せい剤など
  • 7:42 - 7:45
    薬物を注入すると
    依存症患者の脳では
  • 7:45 - 7:47
    ドーパミンの放出が見られます
  • 7:47 - 7:49
    問題は
  • 7:49 - 7:52
    そもそも彼らの脳に
    何が起こっていたかです
  • 7:52 - 7:56
    薬物に依存性があるというのは
    正しくないからです
  • 7:56 - 7:58
    薬物そのものに依存性はありません
  • 7:58 - 8:01
    ほとんどの人は 薬物を使っても
    依存症になることはありません
  • 8:01 - 8:02
    ですから問題は
  • 8:02 - 8:05
    なぜ一部の人は
    依存症になりやすいのか?
  • 8:05 - 8:08
    食べ物に依存性はありませんが
    依存症になる人はいます
  • 8:08 - 8:11
    買い物に依存性はありませんが
    依存症になる人はいます
  • 8:11 - 8:14
    テレビに依存性はありませんが
    依存症になる人はいます
  • 8:14 - 8:17
    このように依存症になりやすい理由は
    何なのでしょう?
  • 8:19 - 8:22
    マウスを使った もう1つの実験では
  • 8:22 - 8:24
    マウスの赤ちゃんを使いました
  • 8:24 - 8:28
    母親から引き離されても
    赤ちゃんマウスは母を求めて鳴きません
  • 8:28 - 8:29
    自然界だったら どうなるでしょう?
  • 8:29 - 8:31
    赤ちゃんは死にます
  • 8:31 - 8:34
    子どもの命を守り育てるのは
    母親しかいないからです
  • 8:34 - 8:35
    なぜ 鳴かないのか?
  • 8:35 - 8:38
    このマウスでは 脳内で
    エンドルフィンに結合する受容体が
  • 8:38 - 8:42
    遺伝的に不活性化してあったからです
  • 8:42 - 8:47
    エンドルフィンは脳内にある
    モルヒネ様の物質で
  • 8:47 - 8:50
    我々が持つ天然の鎮痛剤です
  • 8:50 - 8:56
    またモルヒネやエンドルフィン類によって
    愛を感じることや
  • 8:56 - 8:59
    親への愛着心や
    親から子への愛着心を
  • 8:59 - 9:02
    感じることが可能になります
  • 9:02 - 9:05
    ですから脳内のエンドルフィン受容体が
    働かない赤ちゃんマウスたちは
  • 9:05 - 9:07
    母親を求めて鳴くことがない
    というわけです
  • 9:07 - 9:09
    言い換えると
  • 9:09 - 9:14
    ヘロインやモルヒネなどの薬物への
    依存というものは
  • 9:14 - 9:18
    このエンドルフィンの仕組みに
    作用するのです
  • 9:18 - 9:20
    それで薬物の効果が
    現れるというわけです
  • 9:20 - 9:23
    ですから問題は
  • 9:23 - 9:27
    この物質を外から取り入れなければ
    ならない人たちの身に何が起きたのか―
  • 9:27 - 9:30
    彼らのように
    虐待を受けている子どもの脳では
  • 9:30 - 9:33
    こうした回路が発達しないのです
  • 9:34 - 9:36
    乳幼児のうちに 暮らしの中で
  • 9:36 - 9:38
    愛やつながりを感じていないと
  • 9:38 - 9:42
    こうした脳の重要な回路が
    正常に発達しません
  • 9:42 - 9:46
    虐待の環境にあれば
    なにしろ正常に発達しませんから
  • 9:46 - 9:52
    薬物を使った場合
    彼らの脳は影響を受けやすくなります
  • 9:52 - 9:54
    薬物によって ようやく
    調子を取り戻し 痛みが和らぎ
  • 9:54 - 9:56
    愛を感じられるようになるのです
  • 9:56 - 10:00
    ある患者が こう言いました
    「初めてヘロインをやった時
  • 10:00 - 10:05
    優しいハグの温もりを感じたわ
    母親が赤ん坊を抱くような感覚だった」
  • 10:06 - 10:13
    さて患者たちほどではないにしろ
    私も同じ空虚感を抱えていました
  • 10:13 - 10:17
    私の身に起きたことをお話ししましょう
    私は1944年 ハンガリーの
  • 10:17 - 10:19
    ブダペストで
    ユダヤ人の両親の元に生まれました
  • 10:19 - 10:22
    ドイツ人がハンガリーを占領する
    直前のことです
  • 10:22 - 10:26
    東欧のユダヤ人に何が起きたかは
    ご存じでしょう
  • 10:26 - 10:30
    ドイツ軍がブダペストへ侵攻してきた時
    私は生後2ヶ月でした
  • 10:30 - 10:34
    そして侵攻された翌日
    母は小児科医に電話をして
  • 10:34 - 10:35
    こう言いました
  • 10:35 - 10:39
    「ガボールが泣き止まないので
    診に来ていただけませんか」
  • 10:39 - 10:42
    小児科医は こう言いました
    「もちろん 伺いますが
  • 10:42 - 10:46
    ただ 申し上げておきますと
    ユダヤ人の赤ちゃんは皆 泣いてるんですよ」
  • 10:46 - 10:47
    さあ なぜでしょう?
  • 10:47 - 10:51
    赤ん坊がヒトラーや大虐殺や戦争の
    何を知っているのでしょう?
  • 10:51 - 10:52
    何も知りません
  • 10:52 - 10:56
    赤ん坊は母親の感じている
    ストレスや恐怖や
  • 10:56 - 10:58
    絶望に気づいていたのです
  • 10:58 - 11:03
    そのことが子どもの脳の発達を
    方向付けるのです
  • 11:03 - 11:07
    そして当時の私は
    「自分はこの世で望まれていない」
  • 11:07 - 11:10
    というメッセージを
    受け取っていたのでした
  • 11:10 - 11:13
    母が私のそばにいて 幸せでないなら
  • 11:13 - 11:15
    母には私を求める気持ちが
    ないに違いありません
  • 11:15 - 11:18
    のちに私が仕事中毒になった理由は
  • 11:18 - 11:21
    気持ちとしては求められずとも
    私を必要と思ってもらえるからです
  • 11:21 - 11:25
    有力な医者になれば
    皆が私を必要としてくれます
  • 11:25 - 11:26
    そうすれば最初に感じた
  • 11:26 - 11:29
    望まれていない感覚の
    埋め合わせができると考えたのです
  • 11:29 - 11:31
    その結果 どうなったかと言えば
  • 11:31 - 11:33
    私は 休みなく働き続け
  • 11:33 - 11:38
    働いていない時は
    音楽CDを買うことに没頭しました
  • 11:38 - 11:40
    私の子たちは どう感じたでしょう?
  • 11:40 - 11:43
    私の時と同じく「自分は望まれていない」
    と感じていました
  • 11:43 - 11:47
    こうして我々は
    自分が受け取ったメッセージや
  • 11:47 - 11:49
    トラウマや苦痛を
    無意識のうちに
  • 11:49 - 11:53
    次の世代へ伝えてしまうのです
  • 11:53 - 11:56
    当然 この空虚感を埋める方法は
    いろいろあり
  • 11:56 - 11:59
    人それぞれ 空虚感の埋め方は
    異なりますが
  • 11:59 - 12:01
    結局のところ 空虚感は
  • 12:01 - 12:08
    幼い頃に得られなかったものに
    端を発しているのです
  • 12:08 - 12:11
    薬物依存者に出会うと
    私たちは こう言います
  • 12:11 - 12:14
    「よく そんなことが
    自分自身にできるもんだ
  • 12:14 - 12:17
    自分を殺すかもしれない悪い物質を
    自分の身に注射するなんて
  • 12:17 - 12:19
    どうしてできるんだ?」
  • 12:19 - 12:21
    でも我々が地球に対して
    していることは?
  • 12:21 - 12:24
    我々は地球の大気圏や
    海洋や環境に
  • 12:24 - 12:28
    様々なものを注射していますよね
  • 12:28 - 12:30
    それが私たちや 地球を
    殺しつつあるのに
  • 12:30 - 12:33
    どちらの依存が より深刻でしょう?
  • 12:33 - 12:36
    石油への依存?
    大量消費への依存?
  • 12:36 - 12:38
    より甚大な害をもたらすのは
    どちらでしょう?
  • 12:38 - 12:40
    それでも我々は
    薬物依存者を非難します
  • 12:40 - 12:44
    その理由は彼らが自分たちに
    そっくりだと知っていて
  • 12:44 - 12:45
    そのことが嫌だからです
  • 12:45 - 12:49
    だから言うのです「お前は我々とは違う
    お前は我々より悪い」
  • 12:49 - 12:54
    (拍手)
  • 12:56 - 13:01
    サンパウロ そしてリオデジャネイロへ
    来る飛行機で
  • 13:01 - 13:04
    6月9日のニューヨーク・タイムズ紙を
    読んでいると
  • 13:04 - 13:06
    ブラジルに関する記事がありました
  • 13:06 - 13:10
    ニジオ・ゴメスという男性についての
    記事です
  • 13:10 - 13:14
    彼はアマゾンに住む
    グアラニー族の長で
  • 13:14 - 13:19
    去年11月に殺害されました
    皆さんも お聞き及びでしょう
  • 13:19 - 13:22
    彼は大農場や企業から
    自分の部族を守ろうとして
  • 13:22 - 13:25
    殺されました
  • 13:25 - 13:29
    大農場や企業が熱帯雨林を買収し
    破壊することによって
  • 13:29 - 13:32
    ブラジルの先住民の居住環境が
    破壊されています
  • 13:32 - 13:36
    カナダ出身者として言いますが
    あちらでも同じことが起きています
  • 13:36 - 13:40
    実際 私の患者の多くは
    ファースト・ネーションという
  • 13:40 - 13:44
    カナダの先住民で
    重度の依存症を患っています
  • 13:44 - 13:47
    彼らが人口全体に占める割合は
    小さいのですが
  • 13:47 - 13:50
    受刑者や依存症患者や
    精神疾患の患者や
  • 13:50 - 13:52
    自殺者の中では
  • 13:52 - 13:54
    大きな割合を占めます
  • 13:54 - 13:56
    なぜでしょうか
  • 13:56 - 13:58
    その理由は 彼らが土地を奪われ
  • 13:58 - 14:03
    何世代にもわたって
    殺され 虐待されてきたからです
  • 14:03 - 14:04
    しかし 考えてみてください
  • 14:04 - 14:07
    彼ら先住民の苦しみを理解でき
    その苦しみが原因で
  • 14:07 - 14:12
    彼らが痛みからの解放を求めて
    依存に向かうのだと理解できたなら
  • 14:12 - 14:14
    殺害や虐待をおこなう人間は
    どうでしょう?
  • 14:14 - 14:16
    彼らは何に依存しているのか?
  • 14:16 - 14:18
    彼らは権力に依存しているのであり
  • 14:18 - 14:19
    富に依存しているのであり
  • 14:19 - 14:21
    獲得することに依存しているのです
  • 14:21 - 14:23
    より強大な力を手に入れたいのです
  • 14:23 - 14:26
    権力への依存を理解しようと
    私は歴史上
  • 14:26 - 14:29
    最大級の力を得た人物を何人か
    調べました
  • 14:29 - 14:34
    アレクサンダー大王や
    ナポレオン、ヒトラー、
  • 14:34 - 14:36
    チンギス・カンやスターリンを
    調べました
  • 14:36 - 14:39
    この人たちを調べると
    非常に面白いことが わかります
  • 14:39 - 14:42
    まず 彼らは なぜ あれほどまでに
    権力を欲したのか?
  • 14:42 - 14:44
    興味深いことに
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    身体的には 彼らは全員
    とても背が低いのです
  • 14:46 - 14:52
    私と同じか 私より小柄なぐらいです
  • 14:52 - 14:56
    また彼らは もともと よそ者です
  • 14:56 - 14:59
    中心的な集団の出身者では
    ありませんでした
  • 14:59 - 15:04
    スターリンはロシアでなくグルジア人
    ナポレオンはフランスでなくコルシカ人
  • 15:06 - 15:13
    アレクサンダーはギリシャでなくマケドニア人
    ヒトラーはドイツでなくオーストリア人でした
  • 15:14 - 15:16
    ですから本質的に不安や
    劣等感があったのでしょう
  • 15:16 - 15:20
    彼らが力を必要としたのは
    「自分は大丈夫だ」と感じ
  • 15:20 - 15:21
    自分を大きく見せるためです
  • 15:21 - 15:25
    その力を手に入れるために
    彼らは進んで戦争をおこない
  • 15:25 - 15:28
    大勢の人々を殺したのです
    すべては 自分の力を維持するためです
  • 15:29 - 15:32
    小柄な人だけが権力に貪欲なわけでは
    ありませんよ
  • 15:32 - 15:35
    ただ 彼らのような例は興味深いです
  • 15:35 - 15:39
    なぜなら権力への依存とは
    例外なく自らの空虚感を
  • 15:39 - 15:41
    外から埋めようとすることだからです
  • 15:41 - 15:45
    たとえば ナポレオンは
    セントヘレナ島へ追放され
  • 15:45 - 15:50
    力を失った後も
    自らの権力への愛を語り続けました
  • 15:50 - 15:53
    力を持たない自分の姿など
    考えられなかったのです
  • 15:53 - 15:57
    他人の目に映る自分が もう力を
    失っているとは思いもよりませんでした
  • 15:57 - 16:01
    これを釈迦やキリストのような人々と
    比べてみると
  • 16:01 - 16:03
    大変に興味深く感じられます
  • 16:03 - 16:06
    釈迦やキリストの物語を見ると
  • 16:06 - 16:09
    どちらも悪魔に誘惑されていますが
  • 16:09 - 16:14
    悪魔が様々な申し出をする中で
    壮大な力を授けてやると言った時
  • 16:14 - 16:17
    2人とも断っているのです
  • 16:17 - 16:18
    なぜ彼らは断るのでしょう?
  • 16:18 - 16:24
    なぜなら彼らは自分の内側に
    力を持っているからです
  • 16:24 - 16:26
    力を外側に求める必要がないのです
  • 16:26 - 16:29
    また彼らは
    人々を支配することを望まず
  • 16:29 - 16:30
    人々に教えを説くことを望みました
  • 16:30 - 16:36
    手本を示し 穏やかな口調で
    腕ずくではなく知恵でもって
  • 16:36 - 16:41
    人々に教えることを望みました
    だから力を拒んだのです
  • 16:41 - 16:44
    これについて彼らは大変
    興味深い言葉を残しています
  • 16:46 - 16:53
    キリストは「力と本当の姿は
    自分の外ではなく内にある」と説きます
  • 16:53 - 16:57
    天国は人の心の中にあると説きます
  • 16:57 - 17:01
    釈迦は入滅に際し
    弟子たちが嘆き悲しみ 泣き
  • 17:01 - 17:03
    誰もが動揺している時
  • 17:03 - 17:06
    こう言いました「私を悼んだり
    崇拝したり してはならぬ
  • 17:06 - 17:13
    自らの内に灯明を見つけ 自らを灯し
    その中に光を見出しなさい」
  • 17:13 - 17:17
    ですから環境の損失や
    地球温暖化や
  • 17:17 - 17:22
    海洋汚染などを抱える
    この難しい世界について考える場合も
  • 17:22 - 17:25
    世の中を変えるため 権力者を
    当てにするのは やめましょう
  • 17:25 - 17:29
    というのも 残念ながら
    権力者とは 往々にして誰よりも深い―
  • 17:29 - 17:31
    空虚感に苛まれている人で
    彼らが我々のために
  • 17:31 - 17:33
    世の中を変えてくれることは
    ないからです
  • 17:33 - 17:36
    我々は自らの内に光を見出し
  • 17:36 - 17:38
    コミュニティや自らの英知や
    創造性の中に
  • 17:38 - 17:42
    光を見出さなければなりません
  • 17:42 - 17:45
    権力者が世の中を良くしてくれるのを
    待っても無駄です
  • 17:45 - 17:49
    私たちが強制しない限り
    彼らは やってくれません
  • 17:53 - 17:58
    彼らは
    人間の本質とは 野心的で攻撃的で
  • 17:58 - 18:00
    利己的だと言います
  • 18:00 - 18:04
    まったく正反対です
    人間の本質とは実に協力的で
  • 18:04 - 18:09
    実に寛容で
    社会への貢献を目指すものなのです
  • 18:09 - 18:14
    このカンファレンスもそうです
    ここに集まっているのは 情報を共有し
  • 18:14 - 18:17
    情報を受け取り 世界を良くしようと
    尽力する人々です
  • 18:17 - 18:19
    それこそが人間の本質です
  • 18:19 - 18:21
    最後に申し上げます
  • 18:21 - 18:24
    もし皆さんが自分の内に光を見出し
    自分らしさを見出せたら
  • 18:24 - 18:26
    我々はもっと自分に優しくなり
  • 18:26 - 18:28
    自然に対しても優しくなれるでしょう
  • 18:28 - 18:29
    ありがとうございました
  • 18:29 - 18:32
    (歓声)(拍手)
Title:
依存症の力、力への依存 | ガボール・マテ | TEDxRio+20
Description:

もし医師の成功を測る基準が患者の寿命を延ばすことなら、ナチスによる大虐殺後のハンガリーで生まれカナダで育った精神科医ガボール・マテは失格です。彼が語るのは薬物や権力への依存です。「自分の本質を見つけ、自分に優しくしよう。」それが彼からの、一般に通用する寛容な処方箋です。

このビデオはTEDカンファレンスとは独立して運営されるTEDxイベントにおいて収録されたものです。

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDxTalks
Duration:
18:47

Japanese subtitles

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