忘れられた宇宙時代の技術が食料の生産方法を変革する
-
0:02 - 0:06想像してみてください
宇宙飛行士のクルーの一員として -
0:06 - 0:09火星や他の遠くの惑星へと
移動しているのだと -
0:10 - 0:13移動には1年
あるいはもっと長い時間が -
0:13 - 0:14かかりそうです
-
0:15 - 0:18[宇宙で炭素を再利用する]
宇宙船内の空間や資源は -
0:18 - 0:19限られるでしょう
-
0:19 - 0:24あなたとクルーは最小限の資源で
食料を生み出す方法を -
0:24 - 0:25見つけなければなりません
-
0:26 - 0:30種を数袋持って行って
たった数時間のうちに -
0:31 - 0:34育てることができるとしたら
どうでしょう? -
0:35 - 0:38その作物が
さらに多くの種子を生み出し -
0:38 - 0:41航行期間中 クルー全員が
-
0:41 - 0:45数袋の種だけで
食べていけるとしたら? -
0:46 - 0:51実は NASA の科学者たちが
やり方を見出しています -
0:52 - 0:54彼らのアイデアは
実に面白いものです -
0:54 - 0:56これには微生物が関わっています
-
0:56 - 0:58単細胞生物です
-
0:59 - 1:01水に由来する水素も利用します
-
1:02 - 1:06水素酸化細菌と呼ばれる微生物を使い
-
1:06 - 1:11良好な炭素循環を生み出して
-
1:11 - 1:14宇宙船内の生命を維持する
というものです -
1:15 - 1:18宇宙飛行士は呼吸する時に
二酸化炭素を吐き出し -
1:18 - 1:22この二酸化炭素は
微生物によって吸収され -
1:22 - 1:26栄養価が高く
炭素の豊富な作物になります -
1:26 - 1:30宇宙飛行士は
この炭素の豊富な作物を食べ -
1:30 - 1:34二酸化炭素の形で
摂取した炭素を吐き出し -
1:34 - 1:36それが微生物に吸収され
-
1:36 - 1:38栄養価の高い作物となり
-
1:38 - 1:41その炭素は二酸化炭素となって
-
1:41 - 1:42宇宙飛行士が吐き出すのです
-
1:42 - 1:45このようにして
炭素循環の閉鎖ループが生まれます -
1:46 - 1:47では なぜこれが重要なのでしょう?
-
1:48 - 1:50私たち人間が生存するためには
炭素を必要です -
1:51 - 1:53炭素は食物と言う形で
摂取されています -
1:53 - 1:55宇宙空間での長期移動では
-
1:55 - 1:58途中で炭素を見つけて
摂取するわけにはいきません -
1:58 - 2:01そこで船内で再利用する方法を
考えなければならないのです -
2:02 - 2:04賢い方法だと思いませんか?
-
2:05 - 2:09でも実際には この研究は
実行には至りませんでした -
2:09 - 2:12私たちは火星だとか
他の惑星には到達していません -
2:12 - 2:15この研究がなされたのは
60年代や70年代のことです -
2:15 - 2:19そこで研究仲間の
ジョン・リード博士と私は -
2:19 - 2:23この地球上で炭素を再利用することに
関心を持っています -
2:23 - 2:25気候変動に取り組むために
技術的な解決法を -
2:25 - 2:27見つけたいと考えたのです
-
2:27 - 2:29そして私たちは この研究について
-
2:29 - 2:3360年代―
1967年以降の論文を読むうちに -
2:33 - 2:36この研究についての論文を見つけたのです
-
2:36 - 2:38これは素晴らしいアイデアだ
と思いました -
2:39 - 2:42そこで 地球は宇宙船のようなものだ
と考えてみました -
2:42 - 2:46限られた空間の中に
限られた資源を持ち -
2:46 - 2:48地球上でも私たちは
炭素をいかに再利用するかを -
2:48 - 2:50考える必要があります
-
2:51 - 2:53そこでこんなアイデアが生まれました
-
2:53 - 3:00NASA が考えたようなアイデアの
いくつかを採用して -
3:00 - 3:03地球の炭素にまつわる問題に
応用できないだろうか? -
3:03 - 3:06NASA が考えたような
微生物を培養して -
3:06 - 3:08地球上で役に立つような製品を
作れないだろうか? -
3:09 - 3:12私たちはそのための企業を
立ち上げました -
3:12 - 3:16この企業での研究で
私たちは水素酸化細菌が― -
3:16 - 3:20自然界における「強化された炭素再利用者」
と私は呼んでいますが― -
3:20 - 3:23この細菌が
力強い微生物であり -
3:23 - 3:27ほぼ見逃されており
十分研究がなされてないこと -
3:27 - 3:30そして非常に役に立つ製品を
生み出しうることがわかりました -
3:31 - 3:35そこで私たちは研究室で
この微生物を培養し始めました -
3:35 - 3:39この微生物を用いて
二酸化炭素から必須アミノ酸を -
3:39 - 3:40作れると分かりました
-
3:40 - 3:44さらに動物由来のタンパク質に似た
-
3:44 - 3:48アミノ酸を含んでいる
高タンパクな穀粉も -
3:48 - 3:50作ることができるのです
-
3:51 - 3:53[栄養と産業のための油脂]
さらに培養を進めて -
3:53 - 3:55油脂も生み出せるとわかりました
-
3:55 - 3:57油脂は様々な製品の生産に
用いられています -
3:58 - 4:01柑橘油に似ている油を
作ることができました -
4:01 - 4:04これは調味料や芳香剤に
使うことができますが -
4:04 - 4:07生物分解性の洗剤であったり
-
4:07 - 4:08飛行機の燃料にも使えます
-
4:09 - 4:12パーム油に似た油も
作ることができました -
4:12 - 4:14パーム油は実に様々な種類の
-
4:14 - 4:17消費者向け商品や工業製品の
生産に用いられています -
4:19 - 4:24この技術を拡大するために
製造業者と共同作業を始め -
4:24 - 4:25こうした製品を市場に出すために
-
4:25 - 4:28共同で研究を進めています
-
4:29 - 4:32こうした技術が
二酸化炭素を再利用して -
4:32 - 4:35価値のある製品に作り変える
役に立つと考えています -
4:36 - 4:38これは地球にとってだけでなく
-
4:38 - 4:40産業にとっても
利益につながるものです -
4:40 - 4:42これは現在の取り組みです
-
4:42 - 4:46しかし将来 こうした技術と
こうした微生物の利用を -
4:46 - 4:49次の次元へと進めることができれば
さらに大きな事柄を -
4:49 - 4:51成し遂げる役に立つでしょう
-
4:52 - 4:54[新しい種類の作物栽培]
私たちはこの技術によって -
4:54 - 4:58農業に関する問題に取り組む
役に立つと考えています -
4:58 - 5:02そして持続可能な農業を作り出し
-
5:02 - 5:06未来の食料需要に応えることが
できるようになると考えます -
5:07 - 5:10なぜ持続可能な農業が
必要なのでしょう? -
5:10 - 5:13実は 見積もりによれば
-
5:13 - 5:182050年までに世界の人口は
100億人にまで増加し -
5:18 - 5:21試算によると
そのためには食料生産を -
5:21 - 5:2370% 増加させねばなりません
-
5:23 - 5:26さらに 消費者向け商品や
工業製品を作るために -
5:26 - 5:29より多くの資源や原料が必要になります
-
5:30 - 5:32では その需要に
どうやって答えればよいのでしょう? -
5:33 - 5:38現代の農業では持続可能な形で
その需要に応えることができません -
5:39 - 5:41それにはたくさんの理由があります
-
5:41 - 5:46そのひとつは 現代の農業が
温室効果ガス排出の -
5:46 - 5:48最大の要因のひとつだからです
-
5:48 - 5:51[農業は温室効果ガスを多く排出する]
実際のところ 農業は -
5:51 - 5:55車やトラックや飛行機や列車を
合わせた総量よりも -
5:55 - 5:57多くの温室効果ガスを排出します
-
5:57 - 6:03もうひとつの理由は現代の農業が
多くの土地を必要とするからです -
6:03 - 6:09作物や家畜のために
5千万平方キロの森林を伐採しました -
6:09 - 6:11それはどのくらいでしょうか?
-
6:11 - 6:16大体 南アメリカとアフリカを
合わせたくらいの面積です -
6:17 - 6:19あるの例についてお話ししましょう
-
6:19 - 6:24インドネシアでは
アイルランドほどの大きさの -
6:24 - 6:28手付かずの熱帯雨林が
-
6:28 - 6:302000年から2012年の間に
伐採されました -
6:31 - 6:34様々な種や生物多様性が
-
6:34 - 6:36失われたことを
考えてみてください -
6:36 - 6:39植物も昆虫も動物もです
-
6:39 - 6:42自然の二酸化炭素吸収源が
失われたのです -
6:42 - 6:44これをより現実的に
説明してみましょう -
6:45 - 6:49この伐採が行われた主な理由は
パーム椰子栽培の土地を作るためです -
6:49 - 6:51先程申し上げたように
-
6:51 - 6:54パーム油は様々な製品を
生み出すのに用いられています -
6:54 - 6:58実際 消費者向け製品の半分以上が
-
6:58 - 7:01パーム油を使っている
とされています -
7:02 - 7:05その製品には
アイスクリームやクッキー -
7:06 - 7:07調理油も含まれます
-
7:07 - 7:11洗剤やローション
石鹸もそうです -
7:12 - 7:16あなた方も私も おそらく
非常にたくさんのパーム油製品を -
7:16 - 7:19台所や浴室に
-
7:19 - 7:21持っていることでしょう
-
7:21 - 7:27皆さんも私も熱帯雨林伐採の
直接的な受益者なのです -
7:28 - 7:30現代農業には問題があります
-
7:30 - 7:33持続可能な形にしたければ
解決策が必要です -
7:35 - 7:40私は微生物がその答えの一部を
提供してくれると考えています -
7:40 - 7:44特に強化された炭素再利用者は
役に立つはずです -
7:44 - 7:46強化された炭素再利用者は
-
7:46 - 7:50植物のように 生態系における
-
7:50 - 7:52天然の再利用者として機能します
-
7:52 - 7:55地球上の珍しい場所である―
-
7:55 - 7:57熱水噴出孔や温泉で繁栄します
-
7:58 - 8:01こうした生態系では
それらは炭素を吸収して -
8:01 - 8:03生態系に必要な栄養素として
再利用します -
8:04 - 8:05栄養に富んでおり
-
8:05 - 8:11油やタンパク質
無機物や炭水化物になります -
8:12 - 8:17実は 微生物は私たちの日常生活で
欠かせないものになっています -
8:17 - 8:22金曜日の夜に赤ワインの
ピノ・ノワールを -
8:22 - 8:24忙しい1週間の締めに飲みたければ
-
8:24 - 8:26微生物による産物を
飲んでいることになります -
8:27 - 8:30地元のマイクロブルワリーの
ビールを飲むのであれば -
8:30 - 8:32それも微生物による産物です
-
8:32 - 8:34[微生物の産物を食べている]
パンやチーズ、ヨーグルトもそうです -
8:35 - 8:37これらはすべて微生物による産物です
-
8:38 - 8:43強化された炭素再利用者のもたらす
美しさと力強さは -
8:43 - 8:48それらが数か月でなく
数時間の間に -
8:48 - 8:49生み出せるということです
-
8:50 - 8:51つまり これによって
現在よりも -
8:51 - 8:55ずっと速く作物を作ることが
可能になります -
8:56 - 8:57暗闇で育つため
-
8:57 - 9:00どんな季節でも栽培でき
-
9:00 - 9:03どのような地形や
場所であっても同じです -
9:03 - 9:07最小限のスペースしか取らない容器で
育てることができます -
9:08 - 9:12そこで 縦型の農業というものに
移行できるのです -
9:12 - 9:14多くの土地を必要とした
私たち伝統の -
9:14 - 9:16水平型での農業ではなく
-
9:16 - 9:18縦に計画できるので
-
9:18 - 9:23面積あたりの生産量が
ぐっと上がります -
9:24 - 9:29このようなアプローチを実践して
強化された炭素再利用者を用いれば -
9:29 - 9:32これ以上 私たちの消費する
食べ物や品物を生み出すために -
9:32 - 9:35熱帯雨林を伐採する必要はなくなります
-
9:37 - 9:39なぜなら より大きな規模では
-
9:39 - 9:44各土地につき1万倍の
生産量を確保できるからです -
9:44 - 9:47そうすれば 例えば
大豆を使ったとしたら― -
9:47 - 9:50同じ面積の土地に大豆を
-
9:50 - 9:521年間植えたとしましょう
-
9:53 - 9:551年間で1万倍です
-
9:56 - 10:00新しい種類の農業とは
このようなものです -
10:01 - 10:04このようにして
100億人もの需要に -
10:04 - 10:09持続可能な方法で応えることのできる
システムを生み出せるのです -
10:11 - 10:14この新しい農業による
産物とは何でしょうか? -
10:14 - 10:17タンパク質を含む穀粉は
既に作られています -
10:17 - 10:20大豆由来の穀粉や
コーンミール -
10:20 - 10:22小麦粉などが考えられるでしょう
-
10:22 - 10:24油脂も作られています
-
10:24 - 10:27ココナッツオイルに似たようなものや
-
10:27 - 10:29オリーブオイルや大豆油などが
考えられます -
10:30 - 10:34こうした作物は実際に
栄養素を生み出すことができ -
10:34 - 10:37パスタやパン
-
10:37 - 10:40ケーキなど様々な
栄養のある食べ物の原料となります -
10:40 - 10:47さらに 油脂は様々な製品―
工業製品や消費者向け製品の -
10:47 - 10:49製造に用いられているため
-
10:49 - 10:54洗剤や石鹸やローションなどを
これらの作物から -
10:54 - 10:56作ることができるでしょう
-
10:57 - 11:00土地が足りなくなっているだけでなく
-
11:00 - 11:03現代の農業を現状のまま
-
11:03 - 11:05続けていくのならば
-
11:05 - 11:10私たちの子孫から
美しい惑星を奪うことになりかねません -
11:10 - 11:12でも そうさせる必要はないのです
-
11:13 - 11:15私たちは豊かな未来を
思い描くことができます -
11:16 - 11:22私たちの宇宙船である
この地球を守るシステムを作りましょう -
11:22 - 11:24衝突から守るだけでなく
-
11:24 - 11:29私たちの生活と
2050年までに100億人になるという -
11:29 - 11:33この惑星の人々の生活にとって
利益となるような -
11:33 - 11:36システムや生き方を
発展させることのできるシステムです -
11:37 - 11:38ありがとうございました
-
11:38 - 11:42(拍手)
- Title:
- 忘れられた宇宙時代の技術が食料の生産方法を変革する
- Speaker:
- リサ・ダイソン
- Description:
-
世界の人口は100億人にまで増えようとしています。でも、そうなったら私たちは何を食べればいいのでしょう? リサ・ダイソンは、深宇宙探査を目的として1960年代にNASAが開発したアイデアを再発見し、これが食料の生産方法を変革するための鍵となるのではと提案します。
- Video Language:
- English
- Team:
- closed TED
- Project:
- TEDTalks
- Duration:
- 11:55
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