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誰も聞いたことのない、システィーナ礼拝堂の物語

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    ローマにいる自分を想像してください
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    向かっているのは
    バチカン美術館
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    長い回廊をゆっくり歩き
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    彫刻やフレスコ画など
    様々なものの横を過ぎます
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    目指しているのはシスティーナ礼拝堂
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    長い回廊と階段と扉を抜けた先に
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    礼拝堂の入り口が現れます
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    あなたなら何を期待しますか?
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    広々としたドーム?
    天使の聖歌隊?
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    実はそういうものは ありません
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    こう考える方が いいかもしれません
    何があるでしょうか?
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    礼拝堂の壁にかかっているのは
    カーテンです
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    壁に描かれたカーテンに
    文字通り 囲まれます
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    これが礼拝堂 本来の装飾です
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    教会では タペストリーを使って
    長いミサの間 寒さをしのぐだけではなく
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    「偉大なる生の劇場」を表したのです
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    この人間ドラマは 私たち全員が
    役割を与えられた壮大な物語
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    全世界を組み込んだ物語であり
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    システィーナ礼拝堂の絵画は
    3つの段階に沿って
  • 1:04 - 1:06
    展開していきます
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    ここは当初 富と教養を持つ
    少数のキリスト教 聖職者用に
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    建てられた空間でした
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    彼らは ここで祈り
    ここで教皇を選出しました
  • 1:15 - 1:16
    500年前 ここは
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    聖職者のための
    究極の「男の隠れ家」でした
  • 1:20 - 1:25
    では なぜこの場所が
    多種多様な文化を持つ人々を
  • 1:25 - 1:28
    毎年500万人も引きつけ
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    魅了するようになったのでしょうか
  • 1:30 - 1:35
    それは この狭い空間に
    創造性が爆発しているからです
  • 1:35 - 1:40
    地政学的な新たな領域の発見という
    熱狂的な興奮に触発されて
  • 1:40 - 1:44
    古くからの教会による
    布教の伝統に火がつき
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    歴史上 最も偉大な芸術作品が
    生まれたのです
  • 1:48 - 1:53
    この発展は大きな進歩であり
  • 1:53 - 1:55
    少数のエリート層に始まり
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    最終的には世界中の大衆という
    観客に向けて
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    語りかけることになりました
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    この進歩は3つの段階を経ていて
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    それぞれが歴史的な出来事に
    結びついていました
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    最初の段階は かなり限定的で
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    とても狭い見方しか
    反映していませんでした
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    2つ目の段階は
    コロンブスの歴史的な航海によって
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    世界観が劇的に変わることで
    生じたものです
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    そして3つ目の段階は
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    「発見の時代」が かなり進み
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    教会がグローバル化という試練に
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    立ち向かっていた頃でした
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    この教会の元々の装飾は
    小さな世界を反映しています
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    キリストやモーゼの
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    人生を語る 活気に満ちた場面があり
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    ユダヤ教徒やキリスト教徒の
    進歩を表しています
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    これを発注した教皇シクストゥス4世は
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    フィレンツェ画壇の
    ドリームチームを結集しました
  • 2:47 - 2:50
    そこにいたのは
    サンドロ・ボッティチェリや
  • 2:50 - 2:54
    後年ミケランジェロの師となる
  • 2:54 - 2:55
    ギルランダイオなどです
  • 2:55 - 3:01
    彼らは純粋な色の装飾で
    壁を覆い尽くしました
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    この物語の中に 見慣れた光景が
    あるのがわかるでしょう
  • 3:04 - 3:08
    ローマにある史跡や
    トスカナの風景を取り入れることで
  • 3:08 - 3:11
    はるか彼方の物語を
    親しみやすくしています
  • 3:11 - 3:15
    教皇自身の友人や家族も
    描き加えられ
  • 3:15 - 3:18
    欧州大陸の小さな宮廷の装飾には
  • 3:18 - 3:20
    ぴったりでした
  • 3:20 - 3:25
    ところが1492年に
    新世界が発見された頃には
  • 3:25 - 3:27
    世界が どんどん広がり
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    奥行き40m 幅14mの この小宇宙も
    広がる必要に迫られました
  • 3:33 - 3:35
    そして それは実現しました
  • 3:35 - 3:37
    豊かな創造性とビジョンに恵まれた
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    一人の天才と
    素晴らしい物語のおかげです
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    この天才こそ
    ミケランジェロ・ブオナロッティ
  • 3:43 - 3:47
    1,100平方メートルある天井の装飾を
    依頼された時は33歳でした
  • 3:47 - 3:49
    彼は苦境に立っていました
  • 3:49 - 3:52
    絵画の修行もしましたが
    彫刻を極めるために辞めました
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    フィレンツェには 怒り狂った
    依頼人が沢山いました
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    未完成の依頼を山のように残し
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    一大彫刻プロジェクトを期待して
    ローマに行ってしまったからです
  • 4:01 - 4:03
    でも その計画は反故になってしまいました
  • 4:03 - 4:07
    彼に残されたのは
    システィーナ礼拝堂の天井の
  • 4:07 - 4:10
    装飾的な背景に重ねて
    十二使徒を描く契約だけでした
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    イタリア中 どこにでもあるような
    装飾画です
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    ところが この天才は挑戦します
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    人間が勇敢にも大西洋を
    横断した この時代に
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    ミケランジェロは 新しい芸術の
    海図を作ろうしたのです
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    彼も物語を伝えようとしました
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    ただし 使徒の物語ではなく
    偉大な はじまりの物語 つまり
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    『創世記』の物語です
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    天井に物語を描くのは
    容易な仕事ではありません
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    どうすれば19m下から 活気あふれる情景を
    読み取ることができるでしょうか?
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    200年間フィレンツェの工房に
    伝わってきた
  • 4:42 - 4:45
    絵画の技法は このような物語を
    描くには不十分でした
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    ただミケランジェロの本職は
    画家ではなかったので
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    自分の強みを生かすことにしたのです
  • 4:51 - 4:54
    彼は 空間を群衆で満たす技術を
    身につける代わりに
  • 4:54 - 4:58
    ハンマーとノミを手に
    大理石の塊を彫り
  • 4:58 - 5:01
    その中から人物像を取り出しました
  • 5:01 - 5:03
    ミケランジェロは本質を重視し
  • 5:03 - 5:07
    物語を伝えるために 躍動感あふれる
    堂々たる肉体を使いました
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    この計画を支持したのは
    非凡な教皇ユリウス2世でした
  • 5:12 - 5:16
    この教皇はミケランジェロの
    大胆な才能を恐れませんでした
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    教皇シクストゥス4世の甥で
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    30年間 芸術にどっぷり浸かっていたので
    その力を心得ていました
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    歴史上「戦う教皇」の異名をとった彼ですが
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    バチカンに残したのは
    要塞でも 砲台でもなく
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    芸術でした
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    ラファエロの間や システィーナ礼拝堂
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    サン・ピエトロ大聖堂や
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    大規模なギリシャ・ローマ彫刻の
    コレクションを後世に残したのです
  • 5:40 - 5:44
    確かにキリスト教的ではありませんが
    このコレクションは
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    世界初の近代的美術館
    バチカン美術館の基礎となりました
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    ユリウスという人物は
  • 5:50 - 5:54
    壮麗さと美を通して
    バチカンに永遠の意義を
  • 5:54 - 5:56
    与えようと考えました
  • 5:56 - 5:58
    その判断は正解でした
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    ミケランジェロとユリウス2世という
    2人の巨人が出会いが
  • 6:03 - 6:05
    システィーナ礼拝堂を産んだのです
  • 6:06 - 6:08
    ミケランジェロは この計画に没頭し
  • 6:08 - 6:13
    3年半で完成させました
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    最小限の人員しか使わず
    何時間にも渡って ほとんどの時間を
  • 6:17 - 6:21
    頭上に手を伸ばして
    天井に物語を描いたのです
  • 6:21 - 6:23
    では この天井画を見ながら
  • 6:23 - 6:26
    物語が世界に広がる様子を
    見ていきましょう
  • 6:26 - 6:31
    芸術と私たちの世界の間に
    ありふれた関係は もう存在しません
  • 6:31 - 6:35
    そこにあるのは
    空間と構造とエネルギーだけです
  • 6:35 - 6:40
    9枚のパネルを取り囲むように
    堂々たる枠が描かれ
  • 6:40 - 6:44
    絵画的な色彩というより
    彫刻的な形態に突き動かされます
  • 6:44 - 6:48
    私たちは入り口の近く
    部屋の端に立っています
  • 6:48 - 6:52
    祭壇から離れた場所
    聖職者用の入り口がついた柵から
  • 6:52 - 6:57
    私たちは覗き込んで
    遠くにある始まりを探します
  • 6:57 - 7:01
    科学的な探求であれ
    聖書の伝統であれ
  • 7:01 - 7:05
    私たちは まず原初の光を考えます
  • 7:05 - 7:07
    ミケランジェロは原初のエネルギーを
  • 7:07 - 7:10
    光と闇が分かれる様と
  • 7:10 - 7:13
    遠くにぼんやりと躍動する姿を
    狭いスペースに
  • 7:13 - 7:15
    描き込むことで表現しました
  • 7:15 - 7:18
    次にその姿は より大きくなり
  • 7:18 - 7:21
    左から右へ すごい勢いで
    動いていくのが見えます
  • 7:21 - 7:26
    その後には 太陽と月と
    植物が残されます
  • 7:26 - 7:30
    他の画家とは違い
    ミケランジェロは創り出された物に
  • 7:30 - 7:32
    焦点は合わせません
  • 7:32 - 7:36
    創造という行為自体に注目したのです
  • 7:36 - 7:40
    そして詩の休止のように
    動きは静まり
  • 7:40 - 7:41
    創造主は停止します
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    何をしているのでしょう?
  • 7:43 - 7:46
    造っているのは大地でしょうか
    それとも海でしょうか?
  • 7:46 - 7:50
    あるいは自分が造った
    宇宙や いろいろな宝物を振り返り
  • 7:50 - 7:52
    ミケランジェロと同じように
  • 7:52 - 7:55
    天井にある自分の創造物を振り返って
  • 7:55 - 7:57
    「良し」と言っているのでしょうか
  • 7:58 - 8:00
    これで場面は整い
  • 8:01 - 8:04
    いよいよ創造のクライマックス
    男の創造に至ります
  • 8:04 - 8:09
    アダムは 暗い背景に明るく描かれ
    際立っています
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    でも よく見ると
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    足は地面の上に力なく置かれ
  • 8:13 - 8:15
    腕は膝の上に 重く寄りかかっています
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    アダムには 偉大さへと突き進むような
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    内面の輝きがありません
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    創造主は その輝きを
    指先から与えようとしています
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    アダムの手との間は わずか1ミリです
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    これを見て私たちは夢中になります
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    なぜなら もう少しで指が触れ
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    人間が自分の目的を見つけて
    立ち上がり
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    創造物の頂点を
    極めようとしているからです
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    ここでミケランジェロは
    変化球を投げます
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    もう一方の腕の中にいる人物は?
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    最初の女性 イヴです
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    でもイヴは単なる思いつきではなく
    筋書きの一部で
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    最初からミケランジェロの
    頭にありました
  • 8:53 - 8:57
    イヴを見てください
    腕を 神の腕に回すほど親しいのです
  • 8:57 - 9:03
    21世紀アメリカの美術史家である
    私にとって この時がまさに
  • 9:03 - 9:06
    絵が語りかけてきた瞬間でした
  • 9:06 - 9:09
    ここで表現された人間ドラマは
  • 9:09 - 9:12
    男と女のドラマだと気づいたからです
  • 9:12 - 9:16
    だからこそ 天井の心臓部となる
    中心にはアダムの創造ではなく
  • 9:16 - 9:18
    女性の創造が描かれているのです
  • 9:18 - 9:22
    確かにエデンの園では
    2人は一緒でしたし
  • 9:22 - 9:24
    堕落する時も一緒
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    堂々とした姿が 恥ずかしさのあまり
    前かがみになるのも一緒でした
  • 9:29 - 9:31
    今 天井の重要な地点に
    差し掛かったところです
  • 9:31 - 9:34
    教会の中でも
    これ以上 進めない地点に
  • 9:34 - 9:36
    いるのです
  • 9:36 - 9:39
    入り口のついた柵で
    内部の祭壇には近づけないので
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    まるで追放されたアダムとイヴのようです
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    天井に描かれた 後の場面は
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    人でごった返す
    私たちの周りの世界を反映しています
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    ノアと箱舟と洪水
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    生贄を捧げ 神と契約するノア
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    彼は救世主かもしれません
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    その一方でノアはブドウを育て
    ワインを作って 泥酔し
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    納屋の中で 裸で眠りこみます
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    天井画のデザインとしては 奇妙です
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    生命を創造する神に始まり
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    納屋で泥酔する男に至るのですから
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    アダムと比べてみると ミケランジェロが
  • 10:10 - 10:12
    私たちをからかっていると思うでしょう
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    でも彼はノアの真下に
  • 10:15 - 10:18
    明るい色彩を配置して
    暗さを吹き飛ばします
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    エメラルド色 橙色 緋色の
    預言者ゼカリアです
  • 10:22 - 10:25
    ゼカリアは東から
    光がさすことを預言し
  • 10:25 - 10:28
    その瞬間 私たちの目は
    新たな方向へと向けられます
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    巫女や預言者たちが 列をなして
    私たちを導いてくれます
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    道中の安全を確保する
    英雄たちに導かれ
  • 10:36 - 10:38
    母親や父親にしたがって進みます
  • 10:38 - 10:42
    彼らが動力となって
    偉大な人間のエンジンを前進させます
  • 10:42 - 10:45
    さて とうとう私たちは天井画の要
  • 10:45 - 10:47
    すべてが最高潮に達する場所に至ります
  • 10:47 - 10:51
    そこには 自分の領域から抜け出し
  • 10:51 - 10:52
    私たちの空間を
  • 10:52 - 10:53
    蝕む人物がいます
  • 10:53 - 10:56
    ここが最も大事な局面
  • 10:56 - 10:58
    過去が現在と出会う場所です
  • 10:58 - 11:01
    この人物 ヨナは
    3日間クジラの腹の中で過ごしたので
  • 11:01 - 11:04
    キリスト教徒にとっては
    イエスの犠牲を通した
  • 11:04 - 11:05
    人間の復活を象徴します
  • 11:05 - 11:08
    ただ 毎日ここを訪れる
    あらゆる信仰を持った
  • 11:08 - 11:11
    大勢の訪問者にとって
  • 11:11 - 11:17
    ヨナは 遠い過去が今の現実と
    出会う瞬間を表しています
  • 11:18 - 11:23
    これらすべてに導かれ ぽっかりと
    開いた祭壇のアーチにたどり着き
  • 11:23 - 11:25
    目にするのがミケランジェロの
    『最後の審判』です
  • 11:25 - 11:29
    世界が再び変容した後の
    1534年に制作されました
  • 11:29 - 11:31
    宗教改革により教会は分裂し
  • 11:31 - 11:34
    オスマン帝国はイスラムの名を
    世に広め
  • 11:34 - 11:38
    マゼランが太平洋航路を
    発見していました
  • 11:38 - 11:43
    ベニスより遠くに行ったこともない
    59歳の芸術家は この新世界に
  • 11:43 - 11:45
    どう語りかけるのでしょう?
  • 11:45 - 11:48
    ミケランジェロが
    描こうとしたのは 宿命であり
  • 11:48 - 11:50
    優れたものを
  • 11:50 - 11:51
    後世に残したいという
  • 11:51 - 11:54
    人類共通の普遍的な欲求です
  • 11:54 - 11:57
    『最後の審判』という
    キリスト教的な視点で
  • 11:57 - 11:59
    世界の終わりを語るため
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    ミケランジェロは
    驚くほど美しい肉体を持った
  • 12:02 - 12:05
    人々の姿を描きました
  • 12:05 - 12:08
    いくつかの例外を除き
    何も身につけておらず
  • 12:08 - 12:09
    誰かの肖像でもなく
  • 12:09 - 12:12
    肉体だけで構成され
  • 12:12 - 12:15
    この391人の中に
    一人として同じ者はいません
  • 12:15 - 12:18
    私たちと同じで
    それぞれが唯一の存在です
  • 12:18 - 12:22
    人々は下の隅にある
    地面から抜け出し
  • 12:22 - 12:24
    上昇しようと もがきます
  • 12:24 - 12:27
    昇天した人々は
    他の人を救うため手を伸ばします
  • 12:27 - 12:29
    この素晴らしい場面では
  • 12:29 - 12:32
    黒人と白人が
    一緒に引き上げられていて
  • 12:32 - 12:34
    新しい世界における人間の調和を
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    見事に表現しています
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    画面で一番大きな部分は
    勝者に与えられています
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    そこにはスポーツ選手のような
    全裸の男女がいます
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    彼らこそ 困難を乗り越えた人々 つまり
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    困難と戦い 障害を克服する人間像という
    ミケランジェロの
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    想像の産物です
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    まるでスポーツ選手のようです
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    男性と女性が途方もない
    スポットライトの中で
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    体を曲げ ポーズをとっています
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    この集団を統率するのはイエスです
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    十字架上で苦痛に耐えていた男が
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    今では栄誉に満ちた天国の支配者なのです
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    ミケランジェロが絵画で示したように
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    苦難や挫折や障害は
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    美徳を封じるどころか
    生み出すのです
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    ところで これは奇妙な結果を招きます
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    ここは教皇の私的な礼拝堂ですが
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    「ひしめく裸体」と呼ぶのが
    もっともふさわしいでしょう
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    それでもミケランジェロは
    最高の芸術的言語を使おうとしました
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    考えうる最も普遍的な
    芸術上の言語 つまり
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    人間の肉体です
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    だから 不屈の精神や自制といった
    美徳を示す方法を使うのではなく
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    ユリウス2世の見事な
    彫刻コレクションからヒントを得て
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    内面的な強さを 外から見える力として
    表したのです
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    ところで当時の人は
    こう書き残しています
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    この礼拝堂は あまりにも美しいので
    論争は避けられないだろう と
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    実際そうなりました
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    印刷機のおかげで 裸体に対する
    批判が広まっていることが
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    ミケランジェロの
    知るところとなりました
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    すぐに この人間ドラマの傑作は
    「ポルノ」というレッテルを貼られました
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    彼が肖像を2つ描き加えたのは その頃です
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    1つは彼を非難した儀典長の肖像
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    もう1つは自分自身の肖像を
    スポーツ選手ではなく 乾いた皮として
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    苦痛に耐える殉教者の手元に描きました
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    彼が亡くなる年 数名の人物に
    覆いが描き加えられました
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    彼が説いた栄光は
    余計なものに邪魔されました
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    さて 私たちは今
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    この世にいます
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    始まりと終わりの間にある
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    この空間
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    壮大な人間の経験全体に
    閉じ込められています
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    私たちは システィーナ礼拝堂で
    鏡を覗くように周りを見ます
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    自分は この絵の中の誰だろう?
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    群衆の中にいるのか?
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    あの酔っ払いだろうか?
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    あのスポーツ選手だろうか?
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    そして心躍る美の楽園を出る頃には
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    私たちは人生最大の疑問を
    抱くようになります
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    自分は何者か 人生という大舞台で
    自分はどの役なのか という疑問です
  • 15:02 - 15:03
    ありがとうございます
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    (拍手)
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    (ブルーノ・ジュッサーニ)
    エリザベス・レヴ ありがとう
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    あなたはポルノの話題を
    出していましたね
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    当時の人々にとって
    ヌードや日常の場面や不適切なものが
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    多すぎたという点です
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    ただ問題は より深刻です
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    単に覆いを描き加えたことが
    問題なのではなく
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    芸術が破壊される寸前だったんですから
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    (エリザベス・レヴ)『最後の審判』は
    大きな影響力を持ちました
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    印刷術によって 誰でも
    見られるようになったためです
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    この問題も1〜2週間で
    起こったわけではなく
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    20年もの期間に渡って
    続いた問題でした
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    教会には こんな評論や
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    批判が寄せられました
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    「教会が 我々に生き方を
    説けるわけがない
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    教皇の礼拝堂には
    ポルノがあるではないか」
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    こんな批判や
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    作品を破壊しようする
    主張がありましたが
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    ミケランジェロが亡くなった年に
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    教会は やっと作品を守るための
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    妥協案を思いつきました
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    それが30枚の覆いを
    描き加えるということでした
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    ちなみにイチジクの葉を描く習慣は
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    ここから始まりました
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    教会は芸術作品を
    守ろうとしたのであって
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    汚したり破壊する気はなかったのです
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    (ブルーノ)今の話は
    システィーナ礼拝堂で
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    よく耳にするツアーガイドとは
    まったく違いますね
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    (笑)
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    (エリザベス)どうでしょう
    それは宣伝ですか?
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    (笑)
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    (ブルーノ)いえいえ そうではなく
    私の意見なのですが
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    現在 芸術を体験する時
    いくつか問題があります
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    その場で見ようとする人が
    あまりにも多く
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    500万人が礼拝堂の
    小さなドアをくぐりますが
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    それは私たちが今 経験したのとは
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    まったく違うのです
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    (エリザベス)そうですね
    立ち止まって見るのは 確かにいいことです
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    ただ 理解して欲しいのは
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    毎日2万8千人が訪れていた頃
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    たくさんの人々が一緒に
    周囲を見回しながら
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    素晴らしさを感じていた頃だって
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    500年前の壁画が
    自分の周りに立っている人々全員を
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    惹きつけ みんなが天井を見上げて
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    感動していたのです
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    これは 時間や地理的空間を超え
    私たち全員に 本当の意味で
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    美が伝わることを
    見事に証明しています
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    (ブルーノ)グラツィエ
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    (エリザベス)グラツィエ
  • 17:17 - 17:18
    (ブルーノ)ありがとう
  • 17:18 - 17:20
    (拍手)
Title:
誰も聞いたことのない、システィーナ礼拝堂の物語
Speaker:
エリザベス・レヴ
Description:

システィーナ礼拝堂は地球上で最も象徴的な建物ですが、知られていないことも沢山あります。美術史家エリザベス・レヴが巧みに案内してくれるのは、この有名な建物の天井画の全体像、そしてミケランジェロが生き生きと描いた、いにしえの物語です。そして彼が当時の宗教的な図像を乗り越えて、新しい芸術の海図を作り上げていった様子を教えてくれます。レヴによれば、ミケランジェロがこの絵を描いて500年経った今、私たちはシスティーナ礼拝堂によって、鏡を覗くように世界を見て、自問するように仕向けられます。「自分は何者か、そして人生という大舞台で自分はどんな役を演じているのか?」と。

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDTalks
Duration:
17:33

Japanese subtitles

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