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親子を繋ぐ愛着の脳科学 | 友田明美 | TEDxKumamotoshi

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    これは私が30年前
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    まだ若かった頃の写真です
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    ちょうど 会場にいる2番目の娘と
  • 0:22 - 0:25
    同い年のときの写真です
  • 0:25 - 0:30
    それから大学を卒業し
    小児科の道に入り
  • 0:30 - 0:33
    患者さんと対峙しながら
    研究をして
  • 0:33 - 0:39
    2人の子どもの母親として
    育児を頑張ってきました
  • 0:40 - 0:45
    子どもの発達に関わる
    仕事をしてきました
  • 0:47 - 0:52
    愛着は子どもの発達に
    とっても大事なんです
  • 0:53 - 0:56
    愛着には3つの方法があります
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    目と目で見つめ合う
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    手と手で触れ合う
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    そして 微笑むことです
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    親から たっぷりの愛情を
    子どもはもらうことで
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    安定した愛着が定着し
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    親が子どもにとって
    安全基地になるんです
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    しかし この赤ちゃんをご覧ください
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    こういう風にお祖母ちゃんから
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    日常的に怒鳴られ
    ガミガミ言われると
  • 1:29 - 1:35
    安定した愛着が作られずに
    不安定な愛着
  • 1:35 - 1:38
    発達が止まってしまい
    視線も合わなくなります
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    その赤ちゃんが
    お祖母ちゃんから引き離すことで
  • 1:42 - 1:45
    こんなにかわいい笑顔の
    赤ちゃんに戻りました
  • 1:45 - 1:49
    発達も戻ったんですよ
    びっくりポンですよね
  • 1:49 - 1:51
    (笑)
  • 1:53 - 1:56
    虐待やネグレクトのような
    不適切な養育が
  • 1:57 - 2:00
    愛着障害を引き起こすことが
    分かってきました
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    例えば 家庭で親が
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    いろんな
    虐待に近い暴言を吐いたり
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    厳しい長期的な体罰を与えると
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    親が出かけようとしても
    子どもは後追いもしません
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    悲しみもしません
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    そして戻ってきても
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    きょとんとして 喜びもしないんです
  • 2:26 - 2:31
    心の発達に問題を抱え
    様々な症状を呈するんです
  • 2:33 - 2:35
    例えば 内向きに症状が出ますと
  • 2:35 - 2:38
    他人に対して無関心で 用心深い
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    イライラしやすくなって
    いろんな人間関係に支障をきたします
  • 2:44 - 2:46
    また 外側に出てしまうと
  • 2:46 - 2:48
    多動 落ち着きがない
  • 2:48 - 2:53
    そして友達とのトラブルが多い
    喧嘩が絶えないです
  • 2:53 - 2:55
    人見知りもなくなって
  • 2:55 - 3:00
    また他人との良い関係が
    作れなくなるんです
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    愛着障害は 実は
    社会的な養護と言われる—
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    養護施設や児童自立支援施設のような
    ところに暮らしているお子さん
  • 3:11 - 3:16
    それから里親に養子として
    引き取られたお子さんの
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    40パーセントにこういった障害が
    出ることが分かってきたんです
  • 3:22 - 3:24
    大変なことなんですよ
  • 3:24 - 3:30
    そして 本人のみならず
    家族にも苦しみを与えます
  • 3:31 - 3:33
    例えば 精神の病を発症するんです
  • 3:33 - 3:37
    うつ病 アルコールや薬物の依存症
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    PTSD 統合失調症
    そして様々な人格障害
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    こういった精神の病で
    本人のみならず 家族まで苦しみます
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    そして 虐待の被害者は
  • 3:53 - 3:56
    その虐待を受けた子ども
    本人だけではなくて
  • 3:56 - 4:02
    他人や 回り回って私達社会に
    苦しみが返ってくるんです
  • 4:03 - 4:08
    例えば こういうお子さん達は
    いじめの加害者になります
  • 4:08 - 4:13
    そうすると 皆さんのお子さんが
    学校でいじめにあって
  • 4:13 - 4:15
    心の傷が残ったりします
  • 4:16 - 4:21
    それから こういう虐待の被害者は
    生活に困窮します
  • 4:21 - 4:26
    社会的に適応できなかったり
    そして 精神の病に陥って
  • 4:26 - 4:30
    生活保護費や医療費の負担が増え
  • 4:30 - 4:34
    結果的に経済の悪化を招くんです
  • 4:34 - 4:39
    児童虐待によって生じる
    社会的な経費や損失は
  • 4:40 - 4:46
    なんと1年間だけで1兆6千億円も
    多いことが分かっています
  • 4:46 - 4:52
    このほかに肺癌や心疾患のリスクが
    生涯で3倍に増え
  • 4:52 - 4:56
    20年も寿命が縮まってしまうんです
  • 4:56 - 5:01
    もはや個人の問題だけではなく
    社会全体の問題なんです
  • 5:04 - 5:07
    これまでの研究で
    大量のストレスホルモンが
  • 5:07 - 5:10
    脳の発育を遅らせることが
    分かってきました
  • 5:10 - 5:13
    小さい時期に虐待の
    ストレスを受けると
  • 5:13 - 5:18
    それがずっと脳の
    扁桃体という感情の中枢を
  • 5:18 - 5:20
    異常に興奮させます
  • 5:20 - 5:23
    それで副腎皮質に司令が行って
  • 5:23 - 5:27
    ストレスホルモンが
    どんどん出てしまって
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    脳にダメージを与えるんです
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    実は 私は研修医になったときに
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    救急外来に運ばれてきた
    3歳の男の子のことを
  • 5:38 - 5:41
    今でも忘れることができません
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    その子は実の両親から虐待を受けて
    脳内出血で運ばれてきたんです
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    全身にはタバコの火を押し付けた
    火傷の跡がありました
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    3日間 何とかその子の
    命を助けようと
  • 5:56 - 6:00
    集中治療室で
    救命に頑張ったんですが
  • 6:00 - 6:02
    命は助かりませんでした
  • 6:03 - 6:08
    無償の愛を注ぐべき親が
    なぜ子どもに虐待をしてしまうのか
  • 6:09 - 6:11
    にわかには理解できませんでした
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    私はこの問題をなんとかしようと
    研究を始めたんです
  • 6:18 - 6:23
    アメリカのボストンへの留学で
    分かったことがあります
  • 6:24 - 6:29
    例えば 長期的に激しい
    体罰を受け続けると
  • 6:29 - 6:32
    頭の前の方 感情の中心である—
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    前頭葉が小さくなります
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    自分をコントロールできなくなり
  • 6:37 - 6:41
    凶暴になって
    しかも集中力も落ちるんです
  • 6:41 - 6:47
    そして 暴言虐待を受け続けると
    なんと 聴覚野が変形して
  • 6:47 - 6:52
    音や聞こえ 会話 コミュニケーションに
    障害が起きてしまいます
  • 6:53 - 6:57
    そして 親のDVを目撃することで
    視覚野が小さくなると
  • 6:57 - 7:03
    相手の表情が分からなくなり
    対人関係に支障をきたします
  • 7:03 - 7:09
    こういう脳の変化は外部からの
    ストレスを極力避けるために
  • 7:10 - 7:14
    情報量を減らすための
    脳の防衛本能だと考えられています
  • 7:16 - 7:18
    私達の研究で
  • 7:18 - 7:22
    健康な子どもに比べて
    愛着障害を持つお子さんは
  • 7:22 - 7:27
    お金というご褒美に
    脳が反応しないことが分かってきました
  • 7:28 - 7:30
    これもびっくりポンです
  • 7:31 - 7:33
    褒める言葉が響かないのです
  • 7:33 - 7:36
    自己肯定感を上げることができませんよね
  • 7:39 - 7:42
    実は1歳頃に虐待を受けると
  • 7:43 - 7:47
    ご褒美への脳活動が
    最も低下することが分かってきました
  • 7:47 - 7:51
    いかに早い時期の虐待防止が
  • 7:52 - 7:56
    切実に大事かということを
    物語っています
  • 7:57 - 8:00
    虐待のストレスを
    小さい時期に受けると
  • 8:01 - 8:04
    大人になって 親になって
  • 8:04 - 8:09
    我が子に虐待や
    ネグレクトを繰り返すんです
  • 8:10 - 8:13
    虐待は連鎖するんです
  • 8:14 - 8:18
    私はこのような仕事をしていると
    たくさんのお手紙[を頂きます]
  • 8:18 - 8:21
    その中には感謝のメッセージがあります
  • 8:22 - 8:25
    とっても嬉しいです
    私の方が感謝です
  • 8:27 - 8:29
    一部をご紹介します
  • 8:29 - 8:33
    この方のご主人は小さい頃
    虐待を受けて育ちました
  • 8:33 - 8:35
    「世の中このような人々が
  • 8:35 - 8:38
    たくさんいるんじゃないかなぁ
    と思っています
  • 8:38 - 8:42
    先生 私も自分の気持ちに
    整理がつきました
  • 8:42 - 8:45
    60歳を過ぎてやっと
    安心して生活できます」
  • 8:45 - 8:47
    こう書いてありました
  • 8:47 - 8:53
    また 自らも親から虐待を
    受けて育った30代の女性
  • 8:54 - 8:58
    「このように一般にも広めて頂き
    子どものころ被害にあって
  • 8:58 - 9:02
    今も苦しんでいる者として嬉しいです」
    と書いてありました
  • 9:02 - 9:04
    では皆さん ここで考えてください
  • 9:05 - 9:11
    どうやったら こういう人達を
    増やさないことができるでしょうか?
  • 9:13 - 9:15
    いい日本語がありますね
  • 9:15 - 9:18
    「おせっかい」です
  • 9:19 - 9:21
    「おせっかい」は子どもを救うのです
  • 9:23 - 9:25
    「おせっかい」は「貝」ですよ
    (笑)
  • 9:26 - 9:30
    これは東京都の児童虐待防止啓発の
    キャラクターです
  • 9:30 - 9:35
    見てください こんなにおせっかいに
    活動している人がたくさんいます
  • 9:35 - 9:37
    本当におせっかいなんだから!
  • 9:37 - 9:40
    でも これくらいが
    ちょうどいいんですよ
  • 9:41 - 9:45
    大事なのは
    こういう子育て困難や
  • 9:45 - 9:50
    そんな子ども達に無関心に
    ならないことが一番です
  • 9:50 - 9:54
    皆さんができることから
    アクションを起こして
  • 9:54 - 9:57
    養育者支援の主役になるのです
  • 9:58 - 10:04
    そうすることで この子ども達が
    幸せになることができると思います
  • 10:04 - 10:10
    子どもは実の親だけでなく
    社会が育てていくという視点で
  • 10:10 - 10:15
    愛情のある言葉かけを
    近くの子ども達にしてあげる
  • 10:15 - 10:19
    それから 子育て困難な親に
    寄り添ってあげる
  • 10:19 - 10:23
    そういった家庭の情報を
    他機関に繋いでいく
  • 10:24 - 10:29
    そうすることで虐待の連鎖を
    断ち切ることができるかもしれません
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    もちろん 1人のおせっかいではダメです
  • 10:34 - 10:37
    みんなで おせっかいを
    しないといけません
  • 10:37 - 10:42
    現在 どうやったら養育者に
    上手におせっかいを焼けるのかを
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    分野を超えた仲間と研究しています
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    学校 法律 施設
  • 10:49 - 10:53
    警察 研究 医療
  • 10:53 - 10:57
    そして地域社会と
    子どもを守るという
  • 10:57 - 11:02
    とても大事な連携した研究に
    取り組んでいます
  • 11:03 - 11:07
    虐待を防止する方法だけでなく
  • 11:07 - 11:10
    子育て困難な親に対する対策を
  • 11:10 - 11:14
    仲間とともに提言して
    いきたいと考えています
  • 11:15 - 11:20
    「虐待をしなければ 子育て困難でもいい」
    とは言えないからです
  • 11:22 - 11:27
    政府がお金を子ども達に
    かける場合に
  • 11:27 - 11:30
    学童期やそれ以降に
    お金をかけるよりも
  • 11:30 - 11:34
    もっと早い時期 乳児期に
    お金をかける方が
  • 11:34 - 11:38
    より効果が高いということも
    分かってきました
  • 11:38 - 11:45
    起こった犯罪に厳罰を与えるよりも
  • 11:46 - 11:48
    病気になった人を治療するよりも
  • 11:49 - 11:53
    もっと養育者支援に
    お金をかけた方が
  • 11:53 - 11:55
    効果が高いんです
  • 11:55 - 11:58
    それだけ社会の苦しみが
    減るのですよ
  • 12:00 - 12:03
    「あなたの笑顔に会えて良かった」
  • 12:03 - 12:06
    子ども達の笑顔を取り戻すために
  • 12:06 - 12:11
    そういった養育困難な親に対する
    周囲の支援の必要性を
  • 12:11 - 12:13
    提言したいと思います
  • 12:15 - 12:18
    そのためにも 虐待に無関心にならず
  • 12:19 - 12:23
    皆さんができることから
    アクションを起こして頂きたいです
  • 12:27 - 12:34
    親が子どもに虐待をする
    社会のシステムを変えるのです
  • 12:37 - 12:41
    「命がけのゆりかご」という
    報道をご紹介したいと思います
  • 12:41 - 12:46
    中国の四川省で8年前に
    大地震が起きました
  • 12:47 - 12:52
    捜索隊が瓦礫の中から
    必死になって探したときに
  • 12:54 - 12:58
    生まれたばかりの
    赤ちゃんを抱くお母さんが
  • 12:58 - 13:01
    四つん這いになって
    息絶えていたのです
  • 13:01 - 13:06
    その体の下で奇跡的に
    赤ちゃんは生きていたんです
  • 13:06 - 13:11
    そして こういうメッセージが 
    携帯に残っていました
  • 13:12 - 13:19
    「もしあなたが生き延びてくれたら
    私が愛していたことを忘れないで」と
  • 13:20 - 13:24
    このお母さんは幼子の
    未来を守ったんです
  • 13:25 - 13:27
    これが親 本来の姿
  • 13:28 - 13:33
    自分の体を張ってでも
    我が子の命を守ろうとする行動です
  • 13:34 - 13:41
    今日はこれまで分かってきた
    虐待に関する脳科学研究をご紹介しました
  • 13:42 - 13:44
    児童虐待にどう対応するか
  • 13:45 - 13:49
    そういった子ども達の
    ケアや支援をどう繋げていくか
  • 13:49 - 13:55
    そのために自分は何ができるかを
    希望を持って考えてください
  • 13:58 - 14:02
    親が子どもを虐待する
    社会のシステムを変える
  • 14:03 - 14:07
    それは 皆さん1人1人の
    行動にかかっているんです
  • 14:07 - 14:09
    ご静聴ありがとうございました
  • 14:09 - 14:12
    (拍手)
Title:
親子を繋ぐ愛着の脳科学 | 友田明美 | TEDxKumamotoshi
Description:

被虐待児の心の傷の治療に取り組む小児科医の友田明美が、幼少期の経験と脳に及ぼす影響についての研究成果から、育児における愛着の大切さを語ります。

このビデオは、TEDカンファレンスの形式で地元コミュニティが独自に運営するTEDxイベントにおいて収録されたものです。詳しくは http://ted.com/tedx をご覧ください。

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Video Language:
Japanese
Team:
closed TED
Project:
TEDxTalks
Duration:
14:25

Japanese subtitles

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