彫刻になった空間 ― 我々の内部空間と、我々なしで存在する空間
-
0:01 - 0:05私が彫刻家になった
理由をお話します -
0:05 - 0:07彫刻家は 形而上的なものや
-
0:07 - 0:12物体や身体を扱うものだと
-
0:12 - 0:15皆さんは思っているでしょう
-
0:15 - 0:20でも 私が一番関心を
持っているのは -
0:20 - 0:24空間を作ることです
だからこの話のタイトルは -
0:24 - 0:26「空間を作る」になります
-
0:26 - 0:31空間は 私たちの内側だろうと
私たちが いなかろうと -
0:31 - 0:33存在しています
-
0:33 - 0:37私が小さい頃 ―
ここに50年代を経験した人が -
0:37 - 0:39何人いるかわかりませんが ―
-
0:39 - 0:442階で無理やり
昼寝をさせられたものです(笑) -
0:44 - 0:48ひどい話です
6歳の頃だったら -
0:48 - 0:51昼食の後は
木登りに行きたいのに -
0:51 - 0:532階の小部屋に行かされました
-
0:53 - 0:54そこは古いバルコニーを
改造したもので -
0:54 - 1:00ひどく暑くて 小さくて
明るいのです -
1:00 - 1:03私はそこで横になります
ひどい話です -
1:03 - 1:06でも なぜか
心に決めていたのは -
1:06 - 1:08決して動かず ―
-
1:08 - 1:10母さんの期待どおりに
することでした -
1:10 - 1:12母さんの期待どおりに
することでした -
1:12 - 1:15私は その小さな空間に
横たわっていました -
1:15 - 1:22暑く 暗く 窮屈で マッチ箱くらい ―
目の奥くらいの小さな空間です -
1:22 - 1:26でも おかしなことに
これを何日も ― -
1:26 - 1:33何週間も 何か月も続けるうちに
空間が次第に大きく ― -
1:33 - 1:36暗く 涼しくなって
-
1:36 - 1:41とうとう私は 30分間
じっと休むことを -
1:41 - 1:45強いられるのが
楽しみになるほどでした -
1:45 - 1:50その暗い場所へ行くことが
-
1:50 - 1:52本当に楽しみでした
-
1:52 - 1:55全然別のことを
してもいいですか? -
1:55 - 1:57みんなで目を
閉じてみましょう -
1:57 - 1:59変なことじゃありません
-
1:59 - 2:00カルトの儀式じゃ
ありませんから(笑) -
2:00 - 2:03ただ・・・みんなで経験したいんです
-
2:03 - 2:06私もやりますよ
みんなで体感しましょう -
2:06 - 2:09さあ目を閉じて
-
2:09 - 2:13私たちは ある空間にいます
-
2:13 - 2:20主観的で 集合的な
身体の中にある 暗黒の空間です -
2:20 - 2:24私はこの空間が想像力と
-
2:24 - 2:27可能性の源泉だと
考えています -
2:27 - 2:30この空間の性質とは
どんなものでしょう -
2:30 - 2:36ここに物体はありません
何もないのです -
2:36 - 2:42大きさもない
限界もない -
2:42 - 2:46終わりもない・・・
-
2:46 - 2:49いいですよ 目を開けて
-
2:49 - 2:53この空間では 彫刻とは・・・
-
2:53 - 2:56少し逆説的ですが
彫刻とは 素材を元に -
2:56 - 2:59命題を作ることなのですが
-
2:59 - 3:01私の考えでは この空間では
-
3:01 - 3:06彫刻が 私たちを
つなぐことができるのです -
3:06 - 3:10さて アメリカのど真ん中に
いるところを想像して下さい -
3:10 - 3:13皆さんは眠っています
そして目覚めます -
3:13 - 3:16寝袋に横になったまま ―
-
3:16 - 3:22100キロ先まで
見渡せます -
3:22 - 3:25ここは干上がった湖底です
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3:25 - 3:29私はまだ若く 美術学校を
卒業したばかりでした -
3:29 - 3:32私がやりたかったのは
-
3:32 - 3:37世界や場所に 直接
働きかけることでした -
3:37 - 3:40素晴らしい場所でした
自分が ここを訪れる ― -
3:40 - 3:42最初の人間のように
-
3:42 - 3:44思えたからです
-
3:44 - 3:49これまで ほとんど何も
起こった事がない場所です -
3:49 - 3:52もう少しお付き合いください
-
3:52 - 3:56私はこぶし大の石を拾い
-
3:56 - 3:58できるだけ遠くに投げました
-
3:58 - 4:00およそ22mでした
-
4:00 - 4:07それから それを半径とする
円内の石を全部拾って -
4:07 - 4:11積み上げました
-
4:11 - 4:13こんな感じです
-
4:13 - 4:16そして その上に立って
-
4:16 - 4:20もう一度 石を全部
投げていきました -
4:20 - 4:26すると砂漠はこんな風に
再構成されました -
4:26 - 4:28皆さんは 最初と
あまり変わらないと -
4:28 - 4:30おっしゃるかもしれません
-
4:30 - 4:31(笑)
-
4:31 - 4:32一体何をしているのだ?と
-
4:32 - 4:34クリスも心配して
言いました -
4:34 - 4:35「そのスライドは
見せちゃだめだ -
4:35 - 4:37みんなが あなたを
役立たずの ― -
4:37 - 4:40変な現代作家と
思いかねないから」 -
4:40 - 4:42(笑)
-
4:42 - 4:49でも これは生身の体が
-
4:49 - 4:52他の物体 すなわち ―
-
4:52 - 4:58地層の堆積や浸食といった
時間の作用の対象である ― -
4:58 - 5:03岩の上に存在した証です
-
5:03 - 5:06皆さんには この場所を
-
5:06 - 5:09違った見方で
眺めてほしいのです -
5:09 - 5:13それは ここで起きた出来事 ―
-
5:13 - 5:15人間が企てた出来事のせいです
-
5:15 - 5:19この場所が私たちに
要求するのは -
5:19 - 5:21私たちが共有する
科学技術の世界とは -
5:21 - 5:24全く異なる世界を再発見し
-
5:24 - 5:27全く異なる世界を再発見し
-
5:27 - 5:32原初の世界を
見つめ直すことです -
5:32 - 5:37私たちが生きる
原初の世界とは -
5:37 - 5:42先程 みんなで見た空間
つまり身体内の闇です -
5:42 - 5:45私はその環境 つまり
私たちが住む ― -
5:45 - 5:49親密で主観的な空間から
やり直したかったのです -
5:49 - 5:53ただ やり直すのは
内側からです -
5:53 - 5:55ただ やり直すのは
内側からです -
5:55 - 5:58これは いつもの
スタジオでの作業です -
5:58 - 6:02私は ほとんど何もしません
ただそこに立つだけです -
6:02 - 6:04ここでも目を閉じています
他の人達は ― -
6:04 - 6:09私の型をとっています
いわば証拠です -
6:09 - 6:12時間の中で身体が
生きた その瞬間を -
6:12 - 6:16索引のように
記録したものです -
6:16 - 6:21そんな空間を描き出せるでしょうか
-
6:21 - 6:26素粒子や宇宙線を手段とし
身体が囲む領域を境界と捉え ― -
6:26 - 6:32一方で伝統的な
ギリシャの技法である ― -
6:32 - 6:34「星取り法」とは正反対の
やり方で描き出せるでしょうか -
6:34 - 6:38かつてギリシャ人は
ペンテリクス産の大理石を -
6:38 - 6:43表面から彫っていき
-
6:43 - 6:44表皮または外見 つまり
-
6:44 - 6:47アリストテレスが実体と
外見の違いとして定義した ― -
6:47 - 6:49事物に外見を与える要素を
取り出しました -
6:49 - 6:52事物に外見を与える要素を
取り出しました -
6:52 - 6:56でもここでは内部から
作業を進めています -
6:56 - 7:00あるいは それを閉じた膜で
作れるでしょうか -
7:00 - 7:06これは私の身体が占めていたけれど
今は空っぽの空間を -
7:06 - 7:09覆う鉛のケースです
-
7:09 - 7:13『Learning to See』という作品です
-
7:13 - 7:19これを「夜」と呼んでもいいですし
-
7:19 - 7:24重力の96%を占める
謎の物質である ― -
7:24 - 7:27「暗黒物質」と
呼んでもいいでしょう -
7:27 - 7:31この暗黒物質は
空間全体の中で -
7:31 - 7:34人間が占める空間に置かれます
皆さんはわかるでしょうか -
7:34 - 7:40目が表されていますが
閉じています -
7:40 - 7:43これを『Learning to See』と
名づけたのは -
7:43 - 7:47この作品が 内省的に
作用する物体 あるいは -
7:47 - 7:51私が可能性の空間と捉えている
身体の闇の -
7:51 - 7:56視界や結びつきを表現する
物体に関するものだからです -
7:56 - 7:59別の方法は?
原子核の周りの粒子を使って -
7:59 - 8:03エネルギーの中心としての
-
8:03 - 8:04身体について語れるでしょうか?
-
8:04 - 8:08彫像との関係もなく
立たせるという義務 つまり -
8:08 - 8:11人体や彫像を立たせる
義務もなく -
8:11 - 8:14作品を解放し
-
8:14 - 8:18それをエネルギー場にするのです
-
8:18 - 8:25その「場」とは 人間の生について語る
空間内部の空間であり -
8:25 - 8:30意識の集中の一種としての
エントロピーになる間であり -
8:30 - 8:35空間全体のうち
人間が存在しうる場なのです -
8:35 - 8:39別の方法はあるでしょうか
-
8:39 - 8:45暗黒物質が
今度は水平線に対置されます -
8:45 - 8:49もし心が身体の中にあり
身体は衣服の中にあり ― -
8:49 - 8:52それがさらに 部屋の中
建物の中 ― -
8:52 - 8:58都市の中にあるとするなら
最も外側の表皮はあるのでしょうか? -
8:58 - 9:00その表皮は感覚を
もっているでしょうか? -
9:00 - 9:03それが水平線です
-
9:03 - 9:05さらに芸術は
-
9:05 - 9:11水平線の向こうに在るものを
想像する試みなのでしょうか? -
9:11 - 9:20私たちは ありのままの時空を
体感するために -
9:20 - 9:25身体を うつろな触媒として
使えるでしょうか? -
9:25 - 9:30ちょうど 私がこの場所 ―
-
9:30 - 9:35皆さんの前に立って
共有する この時空の中で -
9:35 - 9:39つながりを感じ つながりを
生み出そうとするように -
9:39 - 9:42私たちは
身体の記憶 つまり -
9:42 - 9:45人間が占める空間の
記憶を使って -
9:45 - 9:49原初の時間の経験
それも直接的な経験を -
9:49 - 9:52生みだせるでしょうか?
-
9:52 - 9:56人間または産業の時間を
潮の満ち引きの時間と -
9:56 - 9:59対比しました
-
9:59 - 10:04ここではひとつの身体の記憶が
-
10:04 - 10:09機械による再生産を通して
-
10:09 - 10:14繰り返し作られ
8平方キロに渡って -
10:14 - 10:17沖合1.6kmまで配置されています
-
10:17 - 10:22昼夜で異なる条件によって
見えなくなったりします -
10:22 - 10:25これは皆さんもご覧いただけます
マージー川の河口 ― -
10:25 - 10:28リヴァプールのそばです
-
10:28 - 10:31午後のリヴァプール周辺の
海が いつもどんな感じか -
10:31 - 10:34わかりますよ
-
10:34 - 10:37作品が 現れたり
見えなくなったりします -
10:37 - 10:39でも もっと重要なことがあります
-
10:39 - 10:43これは インスタレーションの
中心から北を見た様子です -
10:43 - 10:47これらが場を形成します
そこに見えるのは -
10:47 - 10:53生きている身体と
それに代わる身体との関係 ― -
10:53 - 10:58作品相互の関係や
限界であり果てである -
10:58 - 11:02水平線との関係です
-
11:02 - 11:04次に移りましょう
こんなことは可能でしょうか -
11:04 - 11:09心と身体と
身体の構築を考えた場合 ― -
11:09 - 11:12生身の身体を
-
11:12 - 11:14別の身体
つまり建築の身体や -
11:14 - 11:17構築された環境に
置き換えられるでしょうか -
11:17 - 11:22これは『Room for the Great Australian
Desert』という作品です -
11:22 - 11:23場所は不詳です
-
11:23 - 11:27私はそこがどこかを
公表していません -
11:27 - 11:28心のためのオブジェだからです
-
11:28 - 11:32私はこれを21世紀の
ブッダだと思っています -
11:32 - 11:34再び身体の闇が登場しますが
-
11:34 - 11:37今度は壕のような形の
中に収められています -
11:37 - 11:40その中の身体は最も
コンパクトな姿勢 ― -
11:40 - 11:42かがんだ姿勢です
-
11:42 - 11:45肛門とペニスの位置に
穴が開いています -
11:45 - 11:48耳の所にも穴があります
目の所にはありません -
11:48 - 11:52口の所に切り込みがあります
6cmの厚さのコンクリート製で -
11:52 - 11:55内部に空洞があります
-
11:55 - 11:59この場所も まっ平らで
-
11:59 - 12:04360度地平線を見渡せます
-
12:04 - 12:08この作品も疑問を
投げかけています -
12:08 - 12:13まるで私たちが初めて
そこに現れたかのようです -
12:13 - 12:17その疑問とは 人間の企てと
-
12:17 - 12:21時空との関係についてです
-
12:21 - 12:24身体の闇を建築に
変換するという -
12:24 - 12:29言い方をそのまま受け取ったとして
-
12:29 - 12:33建築空間を 生活空間ではなく
メタファーとして -
12:33 - 12:35利用できるでしょうか?
-
12:35 - 12:38そして 収縮し拡張する ―
-
12:38 - 12:43小さくなり 大きくなる空間を
-
12:43 - 12:49空間と光と闇の中を
旅する肉体の -
12:49 - 12:52物語として
利用できるでしょうか? -
12:52 - 12:58これは一定の均衡と
重さをもった作品で -
12:58 - 13:03身体を都市 つまり
細胞の集合に変えます -
13:03 - 13:05細胞は互いにつながり
-
13:05 - 13:10一定の場所で
何らかの視覚体験を -
13:10 - 13:13与えるのです
-
13:13 - 13:19最後にお見せしたい作品は
-
13:19 - 13:23この『Blind Light』です
これはおそらく -
13:23 - 13:26最も開かれた作品なので
-
13:26 - 13:29「根源的な開放」をテーマとする ―
-
13:29 - 13:33この集まりにふさわしく
可能な限り根源的な作品だと思います -
13:33 - 13:37素材は光と水蒸気です
-
13:37 - 13:39この箱の中は
-
13:39 - 13:431.5気圧の大気と
-
13:43 - 13:47雲と明るい光で
満たされています -
13:47 - 13:50開けっぱなしの
入口から入ると -
13:50 - 13:58あなた自身にも そして他の人にも
姿が見えなくなります -
13:58 - 14:00手を自分の前に差し出しても
-
14:00 - 14:02見えないほどです
-
14:02 - 14:05下を向いても
足が見えません -
14:05 - 14:12皆さんは 実体を持たない
意識になり -
14:12 - 14:16生が 私たちを必然へと
結びつけている存在 ― -
14:16 - 14:22空間を満たし 測定できるような
存在であることから -
14:22 - 14:25解き放たれます
-
14:25 - 14:30ところが 実際には
この空間は人々や -
14:30 - 14:32実体をもたない声で
満たされていて -
14:32 - 14:36周囲の環境から
現れる他者は -
14:36 - 14:40あなたの身体空間に
かなり近づいて -
14:40 - 14:44はじめて姿を現します
-
14:44 - 14:47人がこの箱の端に近付くと
-
14:47 - 14:51姿が見えます
-
14:51 - 14:55観察者が反対に観察されるのです
-
14:55 - 15:01私にとってアートとは
金銭の交換ではありません -
15:01 - 15:06アートは いま現在の直接体験を
-
15:06 - 15:09提示し直すものです
-
15:09 - 15:13ジョン・ケージは
かつて言いました -
15:13 - 15:18「我々は何らかのゴールに
向かっているのではない -
15:18 - 15:22ゴールは我々のもとにあり
我々とともに変化する -
15:22 - 15:29もしアートに目的があるとするなら
その事実に気付かせることなのだ」 -
15:29 - 15:31どうもありがとうございました
-
15:31 - 15:35(拍手)
- Title:
- 彫刻になった空間 ― 我々の内部空間と、我々なしで存在する空間
- Speaker:
- アントニー・ゴームリー
- Description:
-
伝説的な彫刻家アントニー・ゴームリーは空間と人の姿を繰り返し制作しています。作品を通して彼が探求するのは、私たちが身体の中に感じる内部空間、そして身体の周りに感じる外部空間です。これらの空間は、自分が時空の中の点に過ぎないと悟ることで感じられるものです。
- Video Language:
- English
- Team:
- closed TED
- Project:
- TEDTalks
- Duration:
- 15:56
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