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悪い習慣を断ち切るシンプルな方法

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    私が瞑想を習い始めたとき
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    指示はこんな簡単なものでした
    「呼吸を意識しましょう
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    雑念が浮かんだら
    呼吸に意識を戻しましょう」
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    そのくらい簡単だと思いました
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    でも実際に 瞑想の合宿研修で
    座禅を組んでみると
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    真冬なのにTシャツ1枚で
    汗だくになりました
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    時間を見つけては 昼寝をしました
    結構疲れるからです
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    実際 体力がもちませんでした
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    簡単な指示にもかかわらず
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    私には 肝心な何かが
    つかめていなかったのです
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    注意を保つのは
    なぜ こんなに難しいのでしょう?
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    いくつかの研究によると
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    一生懸命 何かに集中しようとしても
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    例えば このトークを聞くにしても
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    ある時点から
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    半分ぐらいの人が
    上の空になったり
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    Twitterを見たくなったりするそうです
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    なぜ こうなるのでしょう?
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    実は こんなとき人は
    現在知られている学習プロセスの中で
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    最も原始的なものの
    1つと戦っています
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    最も基本的だと
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    研究からわかっている神経系に
    刻み込まれたプロセスです
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    これは報酬に基づく学習プロセスで
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    「正の強化」および「負の強化」と呼ばれ
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    基本はこんな仕組みです
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    例えばおいしそうな食べ物を見ると
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    「カロリーだ! 食べて生き残れ!」と
    脳は命じます
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    そして口に入れ 味わい
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    おいしさに満足します
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    特に砂糖が入っていると
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    体から脳へ
    こんな信号が送られます
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    「今 食べたものと
    どこで見つけたかを記憶せよ」
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    私たちはこれを「文脈依存記憶」として
    脳内にとどめて
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    そのプロセスを次回も繰り返すことを
    学習します
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    食べ物を見る
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    食べる そしていい気分になる
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    繰り返す
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    トリガー(きっかけ)→行動→報酬
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    簡単ですね
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    やがて 独創的な脳はこう思い付きます
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    「なあ ちょっと
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    単純に 食べ物の在りかを
    覚えとくだけじゃなく
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    今度 気分が落ち込んだとき
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    何か食べてみたら
    気分がよくなるんじゃないか?」と
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    それを 私たちは脳に言われるがまま実行し
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    その結果を覚えてしまいます
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    悲しいときや頭にきたとき
    チョコレートやアイスクリームを食べると
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    気が紛れますよね
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    これも 同じプロセスです
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    トリガーが違うだけ
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    胃から発せられる 空腹のシグナルではなく
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    感情のシグナル つまり「悲しみ」が
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    食欲のトリガーとなるのです
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    例えば 私らが10代の頃
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    学校では「オタク」だったのが
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    外ではワルぶって
    喫煙してる連中がいたのを
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    「カッコイイ」と思って
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    自分もマネしてみたとか
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    タバコ広告のモデルが本当にカッコいい
    時代もありましたからね
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    カッコいい姿を見る
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    カッコよくなるために吸う
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    いい気分になる だから繰り返す
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    これも「トリガー→行動→報酬」です
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    これを実行するたびに
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    同じプロセスを繰り返して学習し
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    これが 習慣になります
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    こうして
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    強いストレスが トリガーとなり
    タバコが吸いたくてたまらなくなったり
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    甘いものが欲しくなったりします
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    一方 脳の同じプロセスによって
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    生き延びるための学習が
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    悪習と化し 文字どおり
    自殺行為となってしまっています
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    例えば肥満や喫煙は
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    世界の罹患・死亡要因の中でも
    回避できるものの代表的な例です
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    呼吸の話に戻りますが
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    自分の脳に抵抗したり
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    無理に何かに意識を向けようとする代わりに
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    「報酬に基づく学習プロセス」を
    活用してみるのはどうでしょう
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    コツがあるんですよ
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    呼吸する間
    自分の体が経験することに
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    ひたすら注意を向けるんです
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    例を挙げますね
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    私の研究室では
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    マインドフルネス・トレーニングが
    禁煙に有効かどうかを研究しました
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    私が無理して呼吸に意識を
    向けようとしたのと同じように
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    無理やり喫煙の習慣を断とうとする
    というやり方もありました
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    参加者の大半はそうやって禁煙を試み
    挫折を経験した人でした
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    平均6回失敗していました
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    でも このトレーニングでは
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    参加者に何かを強制するのではなく
    好奇心を持つように促しました
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    実際 喫煙を勧めさえしました
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    本当です
    「どうぞ吸ってください
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    どんな気分になるか
    関心を持って観察してみてください」と
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    さて その結果は?
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    ある参加者のコメントを紹介します
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    「マインドフルネス喫煙は
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    臭いチーズみたいなニオイで
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    薬臭い味だった
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    オエッ!」
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    彼女はもともと 喫煙が良くないという
    認識があったからこそ
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    私たちのプログラムに参加したわけです
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    そんな彼女が 喫煙したときの感覚に
    興味を持つことで発見したのは
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    「タバコはクソまずい」ってことでした
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    (笑)
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    こうして彼女の中で
    知識が知恵に変わりました
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    「喫煙は良くない」と
    頭で理解しているだけの段階を抜けて
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    つくづく 骨身に染みたので
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    喫煙の魔法は解けました
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    タバコを吸うという自分の行為に
    幻滅するようになったんです
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    このとき 前頭前野は
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    ここは脳の進化の過程では
    最後に生まれた部分ですが
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    知能の域では
    喫煙すべきではないと理解しています
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    そんな前頭前野は 一生懸命
    人が行動を変えられるよう
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    つまり喫煙をやめたり
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    2つ目 3つ目 4つ目のクッキーには
    手を出さないように助けようとします
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    「認知的制御」というものです
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    人間は 行動を制御するために
    認知を使うんです
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    しかし 残念なことに
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    この前頭前野は 強いストレスを受けると
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    働かなくなってしまうので
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    それほど役に立ちません
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    これは皆さんも日常で
    経験していることでしょう
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    配偶者や子どもに
    つい怒鳴ってしまうこと ありますよね
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    ストレスや疲れがたまっていると
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    そんなことしても意味がないと
    分かっていても
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    自分が抑えられなくなります
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    前頭前野が働かなくなると
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    昔ながらの習慣に逆戻りしてしまいます
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    自分自身の行為への幻滅が重要な理由は
    ここにあります
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    習慣に従った結果を見つめることで
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    骨身に染みるほど深いレベルで
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    悪習の実態を自覚できます
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    こうすると 行動を無理に抑えたり
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    我慢したりすることもなくなります
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    そもそも その行為自体への興味が
    薄まるからです
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    これがマインドフルネスの神髄です
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    悪習にとらわれた結果を
    客観的に見据え
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    心底 嫌気がさすことで
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    昔の悪い習慣から自然に
    離れることができるんです
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    魔法のように 一瞬にして
    禁煙できるわけではないですが
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    時間をかけて
    少しずつ 自分の行動の結果への
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    自覚が深まるにつれ
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    自然に昔の習慣が離れていき
    新しい習慣が形成されます
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    ただし 矛盾があるんです
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    マインドフルネスで大事なのは
    関心を向けることです
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    移り行く一瞬一瞬の中で
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    自分の体と心に起こることのすべてを
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    敏感に感じ取ろうとすることです
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    良からぬ欲望を遠ざけようと焦るよりも
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    自分自身の体験に意識を
    向けようとする意欲—
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    つまりこの
    体験に意識を向ける意欲の
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    土台となっている好奇心には
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    満足感をもたらす性質があります
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    好奇心って
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    いい気分ですよね
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    好奇心を持つと
    人はどうなるでしょうか?
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    欲求の正体は身体感覚に過ぎないと
    気づけるようになります
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    つまり緊張や不安感
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    そわそわ感などです
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    この身体感覚は 現れたり消えたりします
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    自分の中で起きる 小さな体験であり
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    そのつど 自分で制御することも可能です
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    私たちを苦しめる 巨大で恐ろしい欲求に
    やられっぱなしにはなりません
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    言い換えると 好奇心を持つことで
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    長年染み付いた 不安から来る
    反射的な習慣行動から抜け出して
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    あるがままの自分を
    認められるようになります
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    自分の内面に科学者が誕生し
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    次のデータ点はどこだろうと
    心待ちにするようになります
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    行動を変える方法として
    安易すぎるように聞こえるかもしれませんが
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    ある研究で
    マインドフルネスのトレーニングは
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    標準的な治療法に比べ 禁煙に
    2倍の効果があると分かりました
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    実際に効き目があるわけです
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    また 瞑想の達人の脳を調べたところ
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    神経網の一部の
    自己参照処理機能である—
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    デフォルトモードネットワーク(DMN)
    が活性化していました
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    現存する仮説によると
    DMNの一部の領域である―
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    後帯状皮質と呼ばれる部分は
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    必ずしも 人が強い欲求を
    抱いたときではなく
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    欲求にとらわれているときに
    活性化するため
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    私たちはこれにだまされるそうです
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    逆に その衝動から距離を置いて
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    自分に起こっている変化を
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    ただ注意深く観察することで
    プロセスから抜け出せば
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    後帯状皮質の興奮は収まります
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    さて現在 マインドフルネスを教える
    オンラインコースとアプリを試験運用中です
  • 7:55 - 7:59
    これは 今お話しした脳のメカニズムに
    働きかけて
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    皮肉にも 人々を
    現実逃避に駆り立てている技術を活用して
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    不健康な習慣から抜け出すのに
    役立てるというものです
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    例えば喫煙 ストレスからの過食
    その他の依存的な習慣を断つためです
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    先ほど話した「文脈依存記憶」を
    覚えていますか?
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    このツールは その人にとって
    一番大事な「文脈」で
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    すぐに使えます
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    つまり 人々が
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    タバコの誘惑を感じたり
    ヤケ食いしたい衝動が起こったその場で
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    脳に本来備わる 注意深く意識する能力を
    利用するのに役立てられるのです
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    喫煙やヤケ食いをしない人でも
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    暇つぶしに
    メールをチェックしたくなったり
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    仕事中に無関係なことを始めたくなったり
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    車を運転している最中に
    メールの返事をしたい衝動に駆られたりしたら
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    脳の本来の性質をうまく利用できるか
    試してみてください
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    ただ好奇心を持ち
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    その瞬間 体と心に起こっていることを
    観察してみてください
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    これはチャンスです
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    終わりがなく 疲れるだけの悪循環に
    一生付き合うか―
  • 8:52 - 8:54
    断ち切るかの分かれ道です
  • 8:54 - 8:57
    メールが来たら 反射的に
    返信するのではなく
  • 8:57 - 8:59
    向き合い方を変えましょう
  • 8:59 - 9:00
    衝動に気づいて
  • 9:00 - 9:02
    それに関心を持ち
  • 9:02 - 9:04
    手放す喜びを感じてください
  • 9:04 - 9:05
    これを繰り返しましょう
  • 9:05 - 9:07
    ありがとうございました
  • 9:07 - 9:09
    (拍手)
Title:
悪い習慣を断ち切るシンプルな方法
Speaker:
ジャドソン・ブルワー
Description:

つい引きずっている悪い習慣を新たな視点から捉え直すことで、その悪習を断ち切れるとしたらどうでしょう。 精神科医ジャドソン・ブルワーは、喫煙から過食に至るまで、よくないと自覚していても、どうしてもやめられない習慣、つまり依存症と「マインドフルネス」との関係を研究しています。習慣形成のメカニズムをまず詳しく学び、その知識をもとに、簡単に実行できるのに実は深い意味のある、悪習への対策を見つけましょう。今度こそ、つい一服、ほんの一口、車の運転中に一瞬だけメール…という誘惑に勝てるかもしれません。

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDTalks
Duration:
09:24

Japanese subtitles

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