科学者を信頼すべき理由
-
0:01 - 0:04私たちは日々
気候変動やワクチンの安全性などの -
0:04 - 0:05問題に直面し
-
0:05 - 0:09答えを出さなければならないわけですが
-
0:09 - 0:12その答えは科学的な情報に
かなり依存しています -
0:12 - 0:15科学者は世界が温暖化していると
言いますし -
0:15 - 0:17ワクチンが安全だとも言いますが
-
0:17 - 0:19彼らが正しいと
どうして分かるのでしょう -
0:19 - 0:21なぜ科学を信用すべきなのでしょうか?
-
0:21 - 0:25実際 科学を信用しない人も大勢います
-
0:25 - 0:27世論調査が絶えず示すのは
-
0:27 - 0:30アメリカ国民のうち
かなりの割合の人々が -
0:30 - 0:34人類の活動のせいで
温暖化が起きているとは思わず -
0:34 - 0:37自然淘汰による進化を信じず
-
0:37 - 0:40ワクチンの安全性を疑っています
-
0:40 - 0:44なぜ私たちは
科学を信じるべきなのでしょうか -
0:44 - 0:48科学者は科学を信じる信じないで
語ることを好みません -
0:48 - 0:50事実 彼らは科学と信仰を
正反対のものと考え -
0:50 - 0:53信じるというのは
信仰の範疇のものだと言うでしょう -
0:53 - 0:57信仰は科学とはかけ離れた
まったく別のものです -
0:57 - 1:00科学者に言わせれば
宗教は信仰に基づいているか -
1:00 - 1:04パスカルの賭けの論法に
基づいているのです -
1:04 - 1:07ブレーズ・パスカルは
17世紀の数学者で -
1:07 - 1:09神を信じるべきかどうかという問題に
-
1:09 - 1:11科学的論拠を使おうとした人です
-
1:11 - 1:14彼の賭けはこんな感じです
-
1:14 - 1:16もし神が存在しないのに
-
1:16 - 1:18私はその存在を信じることにしても
-
1:18 - 1:20あまり損はない
-
1:20 - 1:22日曜日の数時間が取られる程度
-
1:22 - 1:23(笑)
-
1:23 - 1:26でも もし神が存在するのに
私がそれを信じなければ -
1:26 - 1:28非常にまずいことになる
-
1:28 - 1:31だからパスカルが言うには
「神は信じた方がいい」 -
1:31 - 1:34大学時代のある先生の言葉を借りれば
-
1:34 - 1:36「彼は信仰の手すりを求めた」
-
1:36 - 1:38彼は科学と合理主義を捨てて
-
1:38 - 1:42論理を超えた賭けに出たわけです
-
1:42 - 1:45ところが実際のところ 大抵の人にとって
-
1:45 - 1:48ほとんどの科学的主張は
論理を超えた賭けです -
1:48 - 1:53ほとんどの場合 私たちは自分で
科学的主張を評価することはできません -
1:53 - 1:55実は ほとんどの科学者にとっても
-
1:55 - 1:58自分の専門以外の分野では
そうなのです -
1:58 - 2:00考えてみてください
地質学者はワクチンが安全か -
2:00 - 2:02答えられません
-
2:02 - 2:05ほとんどの化学者は
進化論の専門家ではありません -
2:05 - 2:07物理学者には
-
2:07 - 2:09他の科学者が断言しようとも
-
2:09 - 2:12タバコがガンの原因かどうか
わかりません -
2:12 - 2:14当の科学者たちでさえ
専門外に関しては -
2:14 - 2:16論理を超えて
-
2:16 - 2:18賭けに出なければならないなら
-
2:18 - 2:22なぜ科学者は他の科学者の主張を
聞き入れるのでしょうか -
2:22 - 2:24なぜ彼らは
お互いの主張を信じるのでしょう -
2:24 - 2:27そして私たちはその主張を
信じるべきなのでしょうか -
2:27 - 2:30私の意見はイエス 信じるべきです
-
2:30 - 2:33ただし大抵の人が考えるのとは
理由が違います -
2:33 - 2:35大抵の人は学校で
科学を信じるべき -
2:35 - 2:39理由となるのは
科学的手法だと教わりました -
2:39 - 2:41科学者はある手法に従い
-
2:41 - 2:44この手法が 彼らの主張が真であることを
-
2:44 - 2:46保証するのだと教わりました
-
2:46 - 2:49大抵の人が学校で教わった―
-
2:49 - 2:51教科書どおりの手法は
-
2:51 - 2:54仮説に基づく演繹法です
-
2:54 - 2:57標準的な教科書どおりのモデルによると
-
2:57 - 3:00科学者は仮説を立て
-
3:00 - 3:02その仮説の論理的結論を推論し
-
3:02 - 3:04実際に試して こう問います
-
3:04 - 3:06「さあ この結論は合っているか?」
-
3:06 - 3:10「自然界で この現象が観測できるか?」
-
3:10 - 3:12そして合っていれば科学者はこう言います
-
3:12 - 3:15「よし 仮説は正しいと立証された」
-
3:15 - 3:17まさにこれを行った科学者の
-
3:17 - 3:20有名な例が科学史上にたくさんあります
-
3:20 - 3:22最も有名な例は
-
3:22 - 3:24アルベルト・アインシュタインです
-
3:24 - 3:27アインシュタインが
一般相対性理論を構築した時 -
3:27 - 3:29彼の理論における結論の一つに
-
3:29 - 3:32四次元時空は単なる
カラッポの空間ではなく -
3:32 - 3:34そこには布があって
-
3:34 - 3:36その布が太陽のような―
-
3:36 - 3:39大質量の物体によって
たわむというのが ありました -
3:39 - 3:42つまり この理論が正しければ
光は -
3:42 - 3:43太陽の傍を通過する時
-
3:43 - 3:45その付近で曲げられることになります
-
3:45 - 3:48それはかなり衝撃的な予測でした
-
3:48 - 3:50科学者による確認が可能になるまでに
-
3:50 - 3:51数年かかりましたが
-
3:51 - 3:541919年に確認し
-
3:54 - 3:56なんと理論は正しいと実証されました
-
3:56 - 3:59太陽の近傍を通る光は
実際に曲がるのです -
3:59 - 4:02これが理論を立証する決め手となりました
-
4:02 - 4:03例の斬新な考えが正しいという
-
4:03 - 4:05証拠と見なされ
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4:05 - 4:07世界中の多くの新聞が
-
4:07 - 4:09大々的に扱いました
-
4:09 - 4:11さて この理論あるいはモデルは
-
4:11 - 4:15演繹的・法則的モデルと
言われたりします -
4:15 - 4:18それは主に学者が
事をややこしくするのを好むせいですが -
4:18 - 4:24理想的な場合
法則が関わるせいでもあります -
4:24 - 4:26つまり法則が関係しているということです
-
4:26 - 4:29理想的な場合
仮説はただの思いつきではなく -
4:29 - 4:32理想的には自然の法則なのです
-
4:32 - 4:34自然の法則であることが
なぜ重要なのでしょう -
4:34 - 4:37もしそれが自然の法則なら
絶対だからです -
4:37 - 4:39それがもし法則なら常に
-
4:39 - 4:40いつでもどこでも
-
4:40 - 4:42どんな条件下であれ 真なのです
-
4:42 - 4:46どなたでも有名な法則を
1つはご存じです -
4:46 - 4:49アインシュタインの有名な関係式 E=mc2
-
4:49 - 4:51エネルギーと質量が
-
4:51 - 4:53どんな関係か示してくれる式です
-
4:53 - 4:57そしてその関係は
どんな時も必ず成り立ちます -
4:57 - 5:01ところが このモデルには
いくつかの問題があります -
5:01 - 5:05主な問題は それが間違っているということ
-
5:05 - 5:08真ではないのです(笑)
-
5:08 - 5:11間違いだという根拠を3つお話しします
-
5:11 - 5:14まずは論理上の問題
-
5:14 - 5:17後件肯定の虚偽という問題です
-
5:17 - 5:20これもまた凝った学術的な言い方ですが
要は -
5:20 - 5:23誤った理論からでも
真の予測は可能だと言うことです -
5:23 - 5:25つまり予測が真であるからと言って
-
5:25 - 5:28その理論が正しいという
論理的な証明にはなりません -
5:28 - 5:32これについても科学史に良い例があります
-
5:32 - 5:34こちらはプトレマイオスの宇宙の図です
-
5:34 - 5:36地球が宇宙の中心にあり
-
5:36 - 5:39太陽と惑星がその周りを回っています
-
5:39 - 5:41プトレマイオスの説は何世紀もの間
-
5:41 - 5:44非常に聡明な多くの人々に
信じられていました -
5:44 - 5:46何故でしょうか?
-
5:46 - 5:49答えは その説から真の予測が
数多くできたからです -
5:49 - 5:51プトレマイオスの体系のおかげで
-
5:51 - 5:54天文学者は惑星運動を
正確に予測できました -
5:54 - 5:57実際 当初の予測は
-
5:57 - 6:01現在の私たちが真と考える地動説より
正確なものでした -
6:01 - 6:04これが教科書モデルの
問題点の1つ目です -
6:04 - 6:062つ目は実務上の問題
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6:06 - 6:10補助仮説の問題です
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6:10 - 6:12補助仮説とは
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6:12 - 6:14科学者が持つ前提のことですが
-
6:14 - 6:17彼ら自身も意識していないかもしれません
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6:17 - 6:20これについて重要な例を
-
6:20 - 6:22最終的に天動説の座を引き継いだ
-
6:22 - 6:25地動説からご紹介します
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6:25 - 6:27ニコラウス・コペルニクスが
-
6:27 - 6:30地球は宇宙の中心ではなく
太陽が太陽系の中心で -
6:30 - 6:32地球は太陽の周りを移動している
-
6:32 - 6:33と言った時 科学者たちは
-
6:33 - 6:37こう言いました
「いいかいニコラウス それがもし本当なら -
6:37 - 6:39太陽の周りを回る地球の運動を
-
6:39 - 6:41検出できることになる」
-
6:41 - 6:43こちらは年周視差として知られる
-
6:43 - 6:44概念の説明です
-
6:44 - 6:48天文学者は言いました
もし地球が動いているなら -
6:48 - 6:51よく見える星 たとえばシリウスを見て―
-
6:51 - 6:54まぁマンハッタンでは
星は見えませんけどね -
6:54 - 6:58田舎にいると思ってください
田舎暮らしをして― -
6:58 - 7:0012月に ある星を見ると
その星の後ろには -
7:00 - 7:03遠くの星が見えます
-
7:03 - 7:06もし私たちが同じ観察を半年後に行うと
-
7:06 - 7:106月に地球は
この位置に動いていますから -
7:10 - 7:14同じ星を見ると
その背景が違っているわけです -
7:14 - 7:18この角度の違いが年周視差です
-
7:18 - 7:21こちらは地動説による予測です
-
7:21 - 7:24天文学者たちは年周視差を探しましたが
-
7:24 - 7:29まったく何も見つかりませんでした
-
7:29 - 7:33これにより多くの人が地動説は
誤りだと証明されたと主張しました -
7:33 - 7:34何故そうなったのでしょうか?
-
7:34 - 7:37今の私たちには 当時の天文学者が
-
7:37 - 7:392つの補助仮説を立てていて
-
7:39 - 7:42そのどちらも不適当だったとわかります
-
7:42 - 7:461つは地球の軌道の大きさに関する前提
-
7:46 - 7:49天文学者は他の星との距離から算出し
-
7:49 - 7:51地球の軌道を大きく見積もっていました
-
7:51 - 7:53今日 私たちが描くのはこんな図です
-
7:53 - 7:55NASAの画像です
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7:55 - 7:57地球の軌道はかなり小さいでしょう
-
7:57 - 8:00実は ここに描かれているよりも
ずっと小さいんですよ -
8:00 - 8:02そのため年周視差は
-
8:02 - 8:05非常に小さく
検出するのは非常に困難なのです -
8:05 - 8:07このことは予測どおり行かなかった―
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8:07 - 8:09理由の2つ目と関連してきます
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8:09 - 8:11科学者は自分たちの望遠鏡が
-
8:11 - 8:14視差を検出できるほど高感度だと
-
8:14 - 8:16思っていたのです
-
8:16 - 8:18そうではありませんでした
-
8:18 - 8:21科学者が年周視差を検出するのは
-
8:21 - 8:2219世紀になるまで
-
8:22 - 8:24不可能でした
-
8:24 - 8:26さて問題の3つ目です
-
8:26 - 8:293つ目の問題は事実に関する問題で
-
8:29 - 8:32科学の多くが教科書モデルに
該当しないということです -
8:32 - 8:34科学の多くは決して演繹的ではなく
-
8:34 - 8:36実際には帰納的なのです
-
8:36 - 8:39つまり科学者は必ずしも
-
8:39 - 8:41理論や仮説から出発するわけではなく
-
8:41 - 8:43世界で起きていることの観察から
-
8:43 - 8:45出発することも多々あるのです
-
8:45 - 8:48この例として最も有名なのは
-
8:48 - 8:51かの有名な科学者
チャールズ・ダーウィンです -
8:51 - 8:54若き日のダーウィンが
ビーグル号に乗船して旅に出た時 -
8:54 - 8:57彼は仮説も理論も持っていませんでした
-
8:57 - 9:01ただ科学者としての経歴を持ちたい
その一心で -
9:01 - 9:03彼はデータを集め始めました
-
9:03 - 9:05なにしろ彼は医学をやるのが嫌でした
-
9:05 - 9:07血を見ると気分が悪くなるからです
-
9:07 - 9:09だから別の進路が必要だったのです
-
9:09 - 9:11それでデータ収集を始めました
-
9:11 - 9:15あの有名なフィンチを含め
様々なものを集めました -
9:15 - 9:17採集の際 彼はフィンチを袋に放り込み
-
9:17 - 9:19その意味も認識していませんでした
-
9:19 - 9:21何年も後 ロンドンで
-
9:21 - 9:24ダーウィンはデータを見直し
-
9:24 - 9:26解釈を見出し始めました
-
9:26 - 9:29その解釈が自然選択説です
-
9:29 - 9:32帰納的な科学に加え
-
9:32 - 9:34科学者がよく使う手法に
モデリングがあります -
9:34 - 9:37科学者が人生で実現したいことの一つに
-
9:37 - 9:39原因の説明があります
-
9:39 - 9:41どうやるのでしょうか?
-
9:41 - 9:43方法の一つは アイディアを試すための
-
9:43 - 9:45モデルを作ることです
-
9:45 - 9:46こちらの写真はヘンリー・キャデル
-
9:46 - 9:4919世紀のスコットランド人地質学者です
-
9:49 - 9:51スコットランド人だというのは
-
9:51 - 9:53鹿撃ち帽にウェリントン・ブーツで
一目瞭然です -
9:53 - 9:55(笑)
-
9:55 - 9:57キャデルが解こうとした問題は
-
9:57 - 9:59「山はどうやって出来るのか?」でした
-
9:59 - 10:00彼は気づきました
-
10:00 - 10:03アパラチアのような山脈を見ると
-
10:03 - 10:04岩が褶曲(しゅうきょく)しているのを
-
10:04 - 10:06見かけますよね
-
10:06 - 10:08岩の独特な曲がり方から
-
10:08 - 10:09彼はピンと来ました
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10:09 - 10:12岩は側面から圧迫を受けていたのです
-
10:12 - 10:14そして このアイディアは後に
-
10:14 - 10:16大陸移動の議論で
重要な役目を果たしました -
10:16 - 10:19彼はこれをモデル化し
テコと木材で -
10:19 - 10:21奇抜な仕掛けを作りました
手押し車や -
10:21 - 10:24バケツや大きなゲンノウもありますね
-
10:24 - 10:25ウェリントン・ブーツの理由は不明です
-
10:25 - 10:27雨だったのかしらね
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10:27 - 10:30彼がこの物理的モデルを作ったのは
-
10:30 - 10:34側面から圧力をかけると
-
10:34 - 10:37岩や この場合で言うと泥に
-
10:37 - 10:39山にかなり似た模様が作り出せると
-
10:39 - 10:41実証するのが目的でした
-
10:41 - 10:44それは山ができる原因についての
主張でした -
10:44 - 10:47最近の科学者は屋内での仕事を好むので
-
10:47 - 10:50物理的モデルはあまり作りませんが
-
10:50 - 10:52コンピュータ・シミュレーションはします
-
10:52 - 10:55コンピュータ・シミュレーションは
モデルの一種です -
10:55 - 10:57それは数学によるモデルで
-
10:57 - 11:0019世紀の物理モデル同様
-
11:00 - 11:04原因について思考するために
非常に重要です -
11:04 - 11:07気候変動に関する大問題の一つを
挙げましょう -
11:07 - 11:08地球の温暖化については
-
11:08 - 11:10膨大な証拠があります
-
11:10 - 11:13こちらのスライドの黒い線は
-
11:13 - 11:15ここ150年間の
-
11:15 - 11:17科学者による測定結果で
-
11:17 - 11:18地球の温度の
-
11:18 - 11:20着実な上昇を示しています
-
11:20 - 11:23特に最近50年で このように劇的に
-
11:23 - 11:24上昇しているのがわかります
-
11:24 - 11:27摂氏1度近く
-
11:27 - 11:29あるいは華氏2度ほどの上昇です
-
11:29 - 11:32でも 何がその変化を促しているのでしょう
-
11:32 - 11:34観測された温暖化の原因が何か
-
11:34 - 11:35どうしたらわかるのでしょう
-
11:35 - 11:37科学者はシミュレーションを使って
-
11:37 - 11:40それをモデル化できるのです
-
11:40 - 11:42こちらはコンピュータ・シミュレーションの
説明図です -
11:42 - 11:44地球の気候に影響を与え得る
-
11:44 - 11:47様々な因子を残らず調べています
-
11:47 - 11:50大気汚染から出る硫酸塩粒子
-
11:50 - 11:53火山の噴火から出る火山灰
-
11:53 - 11:55太陽放射の変動
-
11:55 - 11:57当然 温室効果ガスも入っています
-
11:57 - 11:59そして科学者は調べます
-
11:59 - 12:03どの変数の組み合わせを
モデルに入れると -
12:03 - 12:06現実に起きていることを再現できるか
-
12:06 - 12:08この黒い線が現実です
-
12:08 - 12:10モデルはこの薄いグレーの線
-
12:10 - 12:12そして出た答えは
-
12:12 - 12:16学力試験の選択肢で お馴染みの
-
12:16 - 12:18「上記のすべて」を含むモデルです
-
12:18 - 12:20計測された温度を
-
12:20 - 12:22再現するためには
-
12:22 - 12:24温室効果ガスを含む全ての因子を
-
12:24 - 12:26取り込むより他にないのです
-
12:26 - 12:28とりわけ ご覧のとおり
温室効果ガスの増加が -
12:28 - 12:30ここ50年の間の
-
12:30 - 12:32この非常に劇的な気温上昇の
-
12:32 - 12:34動きを追っています
-
12:34 - 12:36ですから これを根拠に気候学者は
-
12:36 - 12:39気候変動が起きているだけではなく
-
12:39 - 12:42温室効果ガスがその理由の
主要な部分を -
12:42 - 12:45占めているのは明らかだと
言えるわけです -
12:45 - 12:47さて このように科学者が違う研究を
-
12:47 - 12:49行っていることから
-
12:49 - 12:52哲学者ポール・ファイヤアーベントは
ご存知の通り こう言いました -
12:52 - 12:54「『何でもあり』の精神こそが
-
12:54 - 12:58科学の進歩を妨げない
唯一の原理である」 -
12:58 - 13:00実はこれは言葉尻を取られていて
-
13:00 - 13:03ファイヤアーベントは
科学では「何でもありだ」とは -
13:03 - 13:05言っていないのです
-
13:05 - 13:06実際に言った
-
13:06 - 13:08全文はこうです
-
13:08 - 13:10「科学の手法とは何か
-
13:10 - 13:12答えろと迫られたら
-
13:12 - 13:15『何でもありだ』と言わざるを得ない」
-
13:15 - 13:16彼が言おうとしたのは
-
13:16 - 13:19科学者は様々な異なることをしており
-
13:19 - 13:21創造性豊かだということです
-
13:21 - 13:23しかし ここであの疑問が戻ってきます
-
13:23 - 13:27科学者の使う手法がバラバラなら
-
13:27 - 13:29何が正しく何が間違っているか
-
13:29 - 13:30どうやって決めるのでしょう
-
13:30 - 13:32誰が判断するのでしょう
-
13:32 - 13:34答えは 科学者が判断するのです
-
13:34 - 13:37その判断は証拠の判断によります
-
13:37 - 13:40科学者は様々な異なる方法で
証拠を集めますが -
13:40 - 13:42それが どんな方法であれ
-
13:42 - 13:45証拠を検査にかけなければなりません
-
13:45 - 13:47社会学者ロバート・マートンは
-
13:47 - 13:49科学者がどうやってデータや
-
13:49 - 13:51証拠を検査するかという
-
13:51 - 13:54問題に着目し その方法を
-
13:54 - 13:56「組織的懐疑主義」と呼びました
-
13:56 - 13:58彼が組織化されていると考えたのは
-
13:58 - 13:59科学者たちが共同で
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13:59 - 14:01集団として検査を行うからで
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14:01 - 14:04懐疑主義だと考えたのは
科学者がそれを -
14:04 - 14:05不信をベースに行うからです
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14:05 - 14:07すなわち 立証責任を負うのは
-
14:07 - 14:09新しい主張を持ち込んだ その人物です
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14:09 - 14:13この意味で 科学は本質的に保守的です
-
14:13 - 14:15科学界を説得し
「よし これは明らかに真だ」と -
14:15 - 14:19言わせるのは 非常に厳しいことです
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14:19 - 14:21だからパラダイム シフトの概念が
-
14:21 - 14:23支持を集めていようとも
-
14:23 - 14:24実際のところ
-
14:24 - 14:27科学的思考に本当に大幅な
変化が起きた例は -
14:27 - 14:31科学史上 比較的まれです
-
14:31 - 14:34このことは いよいよ私たちを
次の考えへと導きます -
14:34 - 14:38科学者が集団で証拠を判断することから
-
14:38 - 14:41歴史学者は合意の問題に
-
14:41 - 14:42注目してきました
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14:42 - 14:44歴史学者の最終的な結論は こうです
-
14:44 - 14:46科学というもの
-
14:46 - 14:48科学的知見というものは
-
14:48 - 14:51組織的で集団的な
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14:51 - 14:53検査のプロセスを通っており
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14:53 - 14:55それは証拠を判断し
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14:55 - 14:57マルかバツかの
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14:57 - 14:59断定をした科学の専門家たちの
-
14:59 - 15:02総意であるということです
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15:02 - 15:04つまり科学的知見は
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15:04 - 15:06専門家の総意だと考えられます
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15:06 - 15:07科学とは陪審のようなものだと
-
15:07 - 15:09考えることもできます
-
15:09 - 15:12かなり特殊な陪審ですけどね
-
15:12 - 15:14あまり身近にはいないタイプの
-
15:14 - 15:16オタクの陪審です
-
15:16 - 15:19博士号を持つ人たちの陪審です
-
15:19 - 15:22そして有罪か無罪か
-
15:22 - 15:23二者択一の
-
15:23 - 15:26通常の陪審と違って
-
15:26 - 15:29科学の陪審には
選択肢がいろいろあります -
15:29 - 15:32科学者は「Yes 真である」
と言うこともあれば -
15:32 - 15:35「No 偽である」と言うこともあります
-
15:35 - 15:37あるいは「 真の可能性はあるが―
-
15:37 - 15:40もっと研究を重ね
証拠を積み上げる必要がある」とか -
15:40 - 15:42「真の可能性はあるが―
-
15:42 - 15:44答えようがないので
-
15:44 - 15:45ひとまず保留にして
-
15:45 - 15:48後々また考えよう」とか言うこともあります
-
15:48 - 15:52これは科学者が
「解決困難」と呼ぶものです -
15:52 - 15:54しかしこれが最後の問題につながります
-
15:54 - 15:57科学が 科学者の意見で
成立しているのなら -
15:57 - 16:00単なる権威への訴えかけでは
ないのでしょうか -
16:00 - 16:01私たちは学校で
-
16:01 - 16:04権威への訴えは論理上の誤謬だと
教わったのではないでしょうか -
16:04 - 16:07ここに現代科学の矛盾があります
-
16:07 - 16:10私が思うに 歴史学者や哲学者や
-
16:10 - 16:12社会学者が至った―
-
16:12 - 16:16科学は権威への訴えだという
結論の矛盾です -
16:16 - 16:19ただし権威と言っても
特定の人物のことではありません -
16:19 - 16:22プラトンやソクラテスや
アインシュタインのように -
16:22 - 16:26どんなに頭脳明晰でも
ある個人のことではないのです -
16:26 - 16:29権威とは科学界全体のことです
-
16:29 - 16:32ある種の「集団の知恵」だと
思えばいいです -
16:32 - 16:36非常に特殊な集団ですけどね
-
16:36 - 16:38科学は権威に訴えかけますが
-
16:38 - 16:40基準は特定の人物ではありません
-
16:40 - 16:42どんなに頭脳明晰だとしてもです
-
16:42 - 16:44基準となるのは ある問題について
-
16:44 - 16:47研究してきた全ての科学者の集団的英知
-
16:47 - 16:49集団的知見
-
16:49 - 16:51集合体としての研究成果です
-
16:51 - 16:54科学者には ある種の
集団的不信の文化があります -
16:54 - 16:56「証明してみろ」の文化です
-
16:56 - 16:58こちらの素敵な女性が良い例です
-
16:58 - 17:01仲間に自分の見つけた証拠を
見せています -
17:01 - 17:03勿論 この人たちは科学者にしては
-
17:03 - 17:05ニコニコしすぎですね
-
17:05 - 17:09(笑)
-
17:09 - 17:14さて では私の最後の論点です
-
17:14 - 17:16大抵の人は朝起きて
-
17:16 - 17:18自分の車を信頼しています
-
17:18 - 17:19ここはマンハッタンですから
-
17:19 - 17:21例えが悪いですけど
-
17:21 - 17:23マンハッタン以外に住む
アメリカ人のほとんどは -
17:23 - 17:25朝起きて車に乗ります
-
17:25 - 17:28エンジンをかければ車は動きます
-
17:28 - 17:30それも非常によく動きます
-
17:30 - 17:32現代の車はめったに故障しません
-
17:32 - 17:35なぜ車はそんなにうまく動くのでしょう
-
17:35 - 17:38ヘンリー・フォードやカール・ベンツや
-
17:38 - 17:41イーロン・マスクらの才能のためでは
ありません -
17:41 - 17:43その理由は現代の車が
-
17:43 - 17:48百年以上に渡る
何百 何千 何万もの -
17:48 - 17:50人々の仕事の
-
17:50 - 17:51積み重ねだからです
-
17:51 - 17:53現代の車は
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17:53 - 17:56車に関わる仕事をした すべての人の
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17:56 - 17:58集合的な研究と知恵と経験の
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17:58 - 18:00成果であり
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18:00 - 18:03テクノロジーの信頼性は
-
18:03 - 18:05蓄積された努力の結晶なのです
-
18:05 - 18:08私たちが恩恵を受けているのは
ベンツやフォードやマスクらの -
18:08 - 18:09才能だけでなく
-
18:09 - 18:12現代の車に関わった すべての人たちの
-
18:12 - 18:14集団的な知と勤勉の
-
18:14 - 18:16おかげなのです
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18:16 - 18:18科学も同じです
-
18:18 - 18:21ただし科学は車より歴史が長いですが
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18:21 - 18:23私たちの科学を信頼する根拠は
-
18:23 - 18:26テクノロジーを信頼する根拠と同じで
-
18:26 - 18:30対象が何であれ
信頼するときの根拠と同じです -
18:30 - 18:32すなわち経験がモノを言うのです
-
18:32 - 18:34しかし盲目的な信頼はダメです
-
18:34 - 18:37何事においても鵜呑みはいけません
-
18:37 - 18:40科学自体がそうであるように
私たちの科学に対する信頼も -
18:40 - 18:42証拠に基づいていなければなりません
-
18:42 - 18:43だから科学者は もっと上手に
-
18:43 - 18:45伝えるようにしなければなりません
-
18:45 - 18:48科学者は私たちに結果だけではなく
その過程をも -
18:48 - 18:50説明しなければなりません
-
18:50 - 18:54そして私たちはもっと上手に
聞けるようにならなければなりません -
18:54 - 18:55ありがとうございました
-
18:55 - 18:57(拍手)
- Title:
- 科学者を信頼すべき理由
- Speaker:
- ナオミ・オレスケス
- Description:
-
世界の重大な問題の多くは科学者の見解を必要としますが、なぜ私たちは科学者の言うことを信じるべきなのでしょうか。科学史の研究者であるナオミ・オレスケスは、私たちと信じることとの関係を深く考察し、科学研究に対する姿勢にまつわる3つの問題点を導き出します。さらに、私たちが科学を信頼すべき理由として、独自の根拠を示してくれます。
- Video Language:
- English
- Team:
- closed TED
- Project:
- TEDTalks
- Duration:
- 19:14
Natsuhiko Mizutani approved Japanese subtitles for Why we should trust scientists | ||
Natsuhiko Mizutani edited Japanese subtitles for Why we should trust scientists | ||
Natsuhiko Mizutani edited Japanese subtitles for Why we should trust scientists | ||
Natsuhiko Mizutani edited Japanese subtitles for Why we should trust scientists | ||
Natsuhiko Mizutani edited Japanese subtitles for Why we should trust scientists | ||
Natsuhiko Mizutani edited Japanese subtitles for Why we should trust scientists | ||
Misaki Sato accepted Japanese subtitles for Why we should trust scientists | ||
Emi Kamiya edited Japanese subtitles for Why we should trust scientists |
Misaki Sato
こんばんは。
分かりやすく訳されていて、興味深く拝見しました。細かな点を変更しましたが、好みもあると思いますので、もとに戻していただいても結構です。
よろしくお願いします。