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誰にだってチャンスは与えられて然るべきもの

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    まず はじめに
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    この5年の間に
    世界でも最も貧しい国々を訪ねる—
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    非常に貴重な機会を与えられ
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    経験したことを
    お話ししたいと思います
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    このような光景は 近頃
    どこでも しょっちゅう見かけます
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    子どもたちが
    スマートフォンに見入っています
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    スマートフォンは 最貧の国々にまで
    多大な影響をもたらしています
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    ある時 私は同僚に
    こう言いました
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    「世界中で 向上心が
    沸き起こっていると感じる
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    しかも目指すところが
    似通ってきているようだ」
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    経済学者を数人集めて
    実際どうなのか調べてもらいました
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    本当に 世界の人の望むものが
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    まとまりつつあるのか
    についてです
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    ギャラップ社の生活満足度調査などを
    調べた結果 分かったのは
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    インターネットが使える環境では
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    生活満足度が高いということでした
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    しかし同時に
    非常に重要なことが起こります
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    「参照所得」—
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    つまり 自分の所得の
    比較対象となる額も
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    上昇するのです
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    例えば ある国における参照所得が
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    他国と比較した結果
    10パーセント上がった場合
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    平均的には
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    その人自身の所得も
    最低5パーセントは上がらないと
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    生活満足度の水準を
    保てないわけですが
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    低所得層になると
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    参照所得が10パーセント上がった場合
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    所得はさらに上がらないといけません
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    20パーセント程度は上げる必要があります
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    となると 向上心が高まりつつある今
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    根本的な疑問が湧いてきます
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    今後 起こりうることは
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    向上心に機会が結びついて
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    勢いが生まれ
    経済成長につながるということなのか—
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    例えば私の生まれた国である
    韓国がそうだったように—
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    それとも 向上心の先には
    不満が待っているだけなのか
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    これは深刻な懸念事項です
    というのも2012年から2015年の間に
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    テロ事件の数が74パーセントも
    増加しているからです
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    テロで死亡した人の数は
    2.5倍に増えました
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    現在 20億人が
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    危険 紛争 暴力と
    隣り合わせで生活し
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    2030年には 世界の
    貧困層の60パーセント以上が
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    危険 紛争 暴力と隣り合わせで
    生活することになると言われています
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    では どうやって人々の
    向上心に応えればいいのでしょうか
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    そのために力を尽くすための
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    新しい考え方はできないでしょうか?
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    できないとしたら非常に心配です
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    インターネットにより 人々の向上心は
    かつてなく膨らみつつあります
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    誰もが 他のみんなの生き方を
    覗ける時代です
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    そうした環境で生まれる向上心に
    応える力は
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    育っているのでしょうか?
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    もっと詳しくお話ししたいので
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    まずは私自身の話から
    始めたいと思います
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    この女性は私の母ではありませんが
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    朝鮮戦争の最中
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    母は まさにこんな感じで
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    自分の妹を背負って
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    時には歩きで移動しながら
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    戦時下のソウルを脱出しました
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    そして 奇跡が重なって
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    両親は二人とも奨学生として
    ニューヨークに行けることになり
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    実際 出会ったのも結婚したのも
    ニューヨークだったそうです
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    父もまた避難民でした
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    19歳の時 北朝鮮に
    家族を残して
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    38度線の国境を超え
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    再び親兄弟と会うことは
    ありませんでした
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    母と結婚して
    ニューヨークに住んでいた父は
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    有名レストランで
    ウェイターとして働いていました
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    両親の夢は膨らみました
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    1950年代にニューヨークのような都市に
    住むとはどういうことかを
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    理解していたのです
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    兄が生まれた後
    両親は韓国に戻り
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    私の記憶に残る限りでは
    まあ平和な生活を送っていました
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    しかし当時の韓国は
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    世界でも最も貧しい国の一つで
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    政治的にも激動の時代でした
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    我が家の目と鼻の先で
    絶えず抗議デモが起こっており
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    学生が軍事政権への
    反対運動を行っていました
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    その当時は
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    私が今 総裁を務める
    世界銀行グループが持っていた—
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    韓国への期待は非常に低く
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    外部支援なしでは
    国民に必要最低限以上の生活は
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    保障できないであろうと
    考えていました
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    韓国は 困難な状況にありました
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    両親はアメリカでの生活が
    どんなものか知っていました
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    結婚したのも
    兄を産んだのもアメリカです
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    だから 自分の子に
    託した夢が叶うチャンスを
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    私たちに与えようとするなら
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    アメリカに戻るしかないと
    思ったのでした
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    こうして アメリカに
    戻ってきた私たち家族が
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    最初に住んだのはダラスで
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    父は歯学部に入って
    学位を取り直しました
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    その後 いろいろあって
    アイオワに引っ越しました
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    私ら兄弟はそこで育ったのです
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    教育はずっと
    アイオワで受けました
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    高校を出て 大学に入りました
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    そんなある日
    忘れがたいことがありました
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    2年生を修了した後
    父が大学まで迎えに来て
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    家に帰る途中 車の中で
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    「ジム お前の夢は何だ?
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    何を学び 何を仕事にしたい?」
    と聞かれました
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    実は母は哲学者で
    そんな母に
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    抗議運動や社会正義などという
    考え方を教え込まれていた私は
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    こう答えました
    「政治学と哲学を勉強して
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    政治運動に関わりたいと思う」
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    すると韓国人歯科医だった父は
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    ゆっくりと 車を端に寄せて停めると—
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    (笑)
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    私の顔を見て言いました
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    「まずは医師免許を取れ
    それから何の勉強でもすればいい」
  • 5:21 - 5:23
    (笑)
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    この話を 観客のほとんどがアジア人という
    会場で話したことがあるのですが
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    誰も笑わずに 皆 頷いていましたよ
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    当然だというように
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    (笑)
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    (拍手)
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    悲しいことに
    父は早くに亡くなりました
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    30年前のことです
    享年57歳でした
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    私はちょうど今
    その時の父と同い年です
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    当時 私は医学部で
    大学院の真っ只中でしたが
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    医学と人類学を両方取ることで
    帳尻を合わせていました
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    大学院で両方学んだんです
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    そして ちょうどその頃
    この2人に出会いました
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    オフィリア・ダールと
    ポール・ファーマーです
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    ポールとは院で一緒でした
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    私も彼も医学を学びながら
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    同時進行で人類学の
    博士課程を修め
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    しごく根本的な疑問を
    持つようになりました
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    医学と人類学を学ぶという
    恵まれた環境にいましたが
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    私の両親は難民でしたし
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    ポールは幼少の頃 フロリダの沼地にある
    バスの中で生活していました
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    よく自分自身を「下層白人」と呼んでいました
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    それでも機会に恵まれていた私たちは
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    こう自問しました
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    自分たちがすべきことは何か?
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    この冗談みたいに
    高い学歴を考えたとき
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    自分たちは世界に対して
    どのような責務があるのか?
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    こうして パートナーズ・イン・ヘルス
    という組織を一緒に立ち上げることにしました
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    ちなみに この話は
    映画にもなっています
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    (拍手)
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    『Bending the Arc』という
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    素晴らしい映画です
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    今年1月のサンダンス映画祭で
    公開されました
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    この場にいるジェフ・スコールを
    はじめとする様々な人々のおかげです
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    立ち上げ当初 私たちは
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    「世界で最も貧しい地域の人々の
    夢に応えるには何が必要なのだろう」
  • 7:07 - 7:09
    そんなふうに考え始めました
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    これは1988年にハイチを
    初めて訪れた時の写真です
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    その年 私たちは ミッション・ステートメント
    のようなものを練り上げました
  • 7:17 - 7:22
    貧困者を優先して
    保健医療活動をしようというものです
  • 7:22 - 7:26
    これには 長い時間がかかりました
    院で人類学を研究していて
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    マルクスの本は
    片っぱしから読み漁り
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    ハーバーマスやブローデルなども
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    たくさんの本を読んで
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    どんな事業構成にしようか
    決めたのです
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    「優貧」と言っていました
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    貧困者を優先した活動だからです
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    「貧困者を優先した活動」で
    最も大事なことは
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    それが何では「ない」かということです
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    自分が英雄気分になるための
    活動ではありません
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    貧困者を貧困から
    どう引っ張り上げるかという
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    持論にこだわった
    活動ではありません
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    自分の組織を優先した
    活動ではありません
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    最も難しいのは
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    自分が考える貧困者を
    優先した活動ではなく
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    本当の貧困者を
    優先した活動だということです
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    では どんな活動かというと
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    ハイチで まずやったのは—
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    誰もがこう言いました
    「費用対効果を考えれば
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    予防接種に専念して たまに
    食事支援すればいい」
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    でも ハイチの人々が
    望んでいたのは病院とか
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    学校とか
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    子どもに機会を与えることでした
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    アメリカに渡った
    知り合いや家族親戚などから
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    聞いていたような機会です
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    私の両親が望んでいたような
    機会をハイチの人も望んでいたのです
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    私には感じ取れました
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    そういうわけで
    期待に応えて病院や
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    学校を作りました
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    機会の提供についても
    できる限り手を尽くしました
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    パートナーズ・イン・ヘルスで
    強烈な体験をするようになったのは
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    ペルーのリマ北部にある
    カラバイヨという貧困地区でした
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    この地域では
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    まず 家々を訪ね
    現地の人々と話しました
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    すると 多剤耐性結核が
    大流行していることが分かりました
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    この写真は
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    メルキアデスという患者で
    当時は18歳くらいでした
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    非常にやっかいなタイプの
    薬剤耐性結核を患っていました
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    世界中の国際保健の権威が
    皆 口を揃えて
  • 9:21 - 9:25
    薬剤耐性結核の治療は
    費用対効果が悪いと言っていました
  • 9:25 - 9:27
    あまりに面倒だし
    金がかかりすぎるし
  • 9:27 - 9:30
    無理だ 不可能だと言うのです
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    それだけでなく
    私らに腹を立て始めました
  • 9:33 - 9:35
    こう言うのです
  • 9:35 - 9:37
    「できるんだったら
    とっくにやっている
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    君らは何様のつもりなんだ」と
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    争っていた相手は
    世界保健機構(WHO)の人たちなどで
  • 9:42 - 9:45
    たぶん最も激しく
    やりあった相手が
  • 9:45 - 9:47
    世界銀行グループでした
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    私たちは メルキアデスが薬を飲むように
    説得しようと
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    あらゆる手を尽くしました
  • 9:53 - 9:55
    とても辛い治療だからです
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    でも治療中 ご家族に
    こんなことを言われたことはありません
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    「まあ メルキアデスじゃ
    費用対効果が悪いし
  • 10:02 - 10:04
    よそに行って別の患者でも
    治療したら?」
  • 10:04 - 10:05
    (笑)
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    メルキアデスとは
    10年くらい会っていませんでしたが
  • 10:08 - 10:11
    2年ほど前に世銀の年次総会が
  • 10:11 - 10:12
    リマで開催された時
  • 10:12 - 10:15
    映画のスタッフが
    彼を探し出してくれました
  • 10:15 - 10:17
    これが 再会した時の写真です
  • 10:17 - 10:20
    (拍手)
  • 10:24 - 10:26
    メルキアデスは ちょっとした
    メディアの寵児になりました
  • 10:26 - 10:30
    封切りの舞台挨拶に出て 今や
    観客の扱い方を心得てますから
  • 10:30 - 10:31
    (笑)
  • 10:31 - 10:34
    でも 私たちが勝つやいなや—
  • 10:34 - 10:35
    そう 例の論争に勝ったんです
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    多剤耐性結核は治療すべきだという
    私らの主張が勝ちました
  • 10:38 - 10:42
    21世紀初頭にHIVについても
    同じ論争がありました
  • 10:42 - 10:45
    世界中の国際保健の権威は
    口を揃えて
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    HIVを貧困国で治療するのは
    不可能だと言い張りました
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    金がかかりすぎるし
    あまりに面倒だし 無理だと
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    でも薬剤耐性結核の治療に比べると
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    実は それほど難しくないのです
  • 10:55 - 10:58
    この写真のような患者が対象でした
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    ジョセフ・ジューンという患者です
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    自分は費用対効果が悪いなどとは
    決して言いませんでした
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    これが数ヶ月
    投薬治療した後の姿です
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    (拍手)
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    HIV治療で「黄泉がえった」のです
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    ジョセリンはこんな状態で
    診察に来ましたが
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    数ヶ月後はこんな姿にまで
    回復しました
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    (拍手)
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    さて こうした論争や闘争の相手は
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    費用対効果が悪いと言い続ける
    組織だと考えていました
  • 11:25 - 11:26
    私らの意見はこうでした
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    「それは違う 貧困者を優先するには
    貧困者本人の夢や希望に合わせて
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    我々の期待値を上げねばならない」
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    すると「優しい考え方だが
    やはり割に合わない」と言われました
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    そこで私らはパートナーズ・イン・ヘルスの
    マニアックな活動手段として
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    基本的に 世界銀行を批判する内容の
    本を書きました
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    本の中で
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    世銀はあまりにも経済成長ばかりに
    とらわれ過ぎであり
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    政府は予算を縮小すべきだとか
  • 11:56 - 12:00
    保健 教育 社会福祉の支出を
    削減すべきだと言っているが
  • 12:00 - 12:02
    それは根本的に間違っている
    と論じました
  • 12:02 - 12:04
    世銀と戦ったわけです
  • 12:04 - 12:06
    すると とんでもないことに
  • 12:06 - 12:09
    オバマ大統領が私を
    世銀の総裁に推薦したのです
  • 12:09 - 12:12
    (拍手)
  • 12:15 - 12:20
    大統領の下で行われる
    審査会に出席したとき
  • 12:20 - 12:23
    そこには私の本があり
    隅から隅まで熟読済みのようでした
  • 12:23 - 12:25
    そこで「そういうことですか
  • 12:25 - 12:27
    私は落ちたわけですね」と言うと
  • 12:27 - 12:29
    大統領は「違う違う
    大丈夫だから」と言って
  • 12:29 - 12:30
    推薦してくれました
  • 12:30 - 12:35
    こうして私は2012年7月
    世界銀行グループの門をくぐりました
  • 12:35 - 12:39
    壁には「貧困のない世界
    それが私たちの夢です」とありました
  • 12:39 - 12:42
    数ヶ月後 その「夢」は
    「目標」に変わりました
  • 12:42 - 12:44
    「極度の貧困を2030年までに撲滅し
  • 12:44 - 12:46
    繁栄の共有を促進すること」
  • 12:46 - 12:48
    これが世界銀行グループの
    現在の活動内容です
  • 12:48 - 12:52
    貧困者を優先する活動を
    世銀に持ち込めたという
  • 12:52 - 12:53
    自負があります
  • 12:53 - 12:56
    (拍手)
  • 12:58 - 13:00
    でも ここはTEDなので
  • 13:00 - 13:02
    この場で懸念をいくつか挙げて
  • 13:02 - 13:05
    ある提案をしたいと思います
  • 13:05 - 13:07
    まず第四次産業革命については
  • 13:07 - 13:09
    皆さんのほうが
    ずっとよくご存知でしょうが
  • 13:09 - 13:10
    気になる点が1つあります
  • 13:10 - 13:12
    雇用喪失の話は
    耳にしたことがあるでしょう
  • 13:12 - 13:14
    世銀が独自に集めたデータによると
  • 13:14 - 13:17
    発展途上国では
    現在の雇用の3分の2が
  • 13:17 - 13:20
    自動化によって失われると
    見られています
  • 13:20 - 13:22
    減った仕事を
    補わなければなりません
  • 13:22 - 13:24
    その方法の1つは
  • 13:24 - 13:28
    コミュニティ・ヘルス・ワーカーを
    正規労働者として雇用することで
  • 13:28 - 13:29
    これが やりたいのです
  • 13:29 - 13:30
    (拍手)
  • 13:30 - 13:33
    数字的にうまくいくと考えています
  • 13:33 - 13:37
    保健医療の状況が改善し
    正規雇用を増やしながら
  • 13:37 - 13:38
    現地の人々に職業訓練を行い
  • 13:38 - 13:41
    これに加えてソフトスキルも教え
  • 13:41 - 13:44
    多大な効果を生む
    労働力を作り出します
  • 13:44 - 13:48
    ここが最大の成長分野に
    なるかもしれません
  • 13:48 - 13:50
    しかし もう1つ
    悩んでいることがあります
  • 13:50 - 13:53
    私にしてみれば
    これからの仕事は
  • 13:53 - 13:56
    IT的な難易度が
    上がることが明らかですが
  • 13:56 - 14:00
    一方で 子どもの栄養不良による
    発育阻害という危機が起こっています
  • 14:00 - 14:04
    これはハーバード大学医学大学院の
    チャールズ・ネルソンが
  • 14:04 - 14:05
    撮影した写真です
  • 14:05 - 14:09
    この写真から分かることは何かというと
  • 14:09 - 14:14
    まず左の写真は 発育阻害の起きている
    生後3ヶ月の乳児の脳です
  • 14:14 - 14:17
    栄養や脳への刺激が
    不足しています
  • 14:17 - 14:19
    もう片方は もちろん
    正常な乳児の脳です
  • 14:19 - 14:22
    脳神経細胞の結合が
    密で広範囲です
  • 14:22 - 14:25
    脳神経細胞の結合は重要です
  • 14:25 - 14:28
    これこそが「人的資本」を
    決定づけるものだからです
  • 14:28 - 14:32
    こういった事態が起こる割合を
    下げることは可能だと分かっています
  • 14:32 - 14:35
    子どもの発育阻害が起こる割合を
    速やかに下げることは可能なのです
  • 14:35 - 14:40
    これを行わないと 例えばインドでは
    発育阻害児率が38パーセントです
  • 14:40 - 14:42
    これでは将来世界経済の中で
    競争できるわけありません
  • 14:42 - 14:48
    未来の労働力となる子どもの4割が
    勉強で遅れを取るのですから
  • 14:48 - 14:52
    特に 国全体の成長にかかわる
    経済面での成功も
  • 14:52 - 14:56
    ままならないだろうという
    懸念も確実にあります
  • 14:56 - 14:59
    では どうすればいいのでしょうか
  • 14:59 - 15:02
    78兆ドルが
    世界経済の規模です
  • 15:02 - 15:06
    8.55兆ドル分が マイナス金利の
    債券で運用されています
  • 15:06 - 15:10
    これは何かというと
    ドイツ中央銀行に預金して
  • 15:10 - 15:13
    預かってもらうために
    さらにお金を払うというのが
  • 15:13 - 15:15
    マイナス金利債券です
  • 15:15 - 15:19
    24.4兆ドルが 非常に利率の低い
    国債に当たります
  • 15:19 - 15:22
    そして8兆ドルが 金持ちの懐で
  • 15:22 - 15:26
    その ふかふかのベッドの下で
    まさに眠った状態にあります
  • 15:26 - 15:30
    今 世銀で試みているのは
    持っているツールを使うということ—
  • 15:30 - 15:32
    一瞬マニアックな話になりますが
  • 15:32 - 15:34
    第一次損失リスク債券類に
  • 15:34 - 15:37
    ディリスキングに
    ブレンド・ファイナンスに
  • 15:37 - 15:40
    政治リスク保険に
    信用補完などといった—
  • 15:40 - 15:43
    世界銀行グループで学んできた
    手法があります
  • 15:43 - 15:48
    金持ちが私腹を肥やすために
    常々利用している手法ですが
  • 15:48 - 15:51
    貧困者のための資金調達という目的で
    積極的に使われているかというと
  • 15:51 - 15:53
    まだまだ不十分です
  • 15:53 - 15:56
    (拍手)
  • 16:00 - 16:02
    しかし 現実的でしょうか?
  • 16:02 - 16:05
    実際に民間セクターを
    現地に呼び込んで
  • 16:05 - 16:08
    本当にうまく事が運ぶように
    できるのでしょうか
  • 16:08 - 16:10
    成功例はいくつかあります
  • 16:10 - 16:13
    これはザンビアの
    スケーリング・ソーラーです
  • 16:13 - 16:15
    世銀が主導する
    全て込みのソリューションで
  • 16:15 - 16:17
    民間の投資家を集めるのに
  • 16:17 - 16:19
    必要な お膳立てを全てやります
  • 16:19 - 16:24
    ザンビアのケースでは
    1キロワット時当たりの電気料金が
  • 16:24 - 16:26
    当初25セントでしたが
  • 16:26 - 16:30
    競争入札や
    政策変更などという
  • 16:30 - 16:32
    シンプルなことのみで
  • 16:32 - 16:35
    コスト削減に成功しました
  • 16:35 - 16:36
    最低入札価格は
  • 16:36 - 16:39
    元は1キロワット時当たり
    25セントだったのが
  • 16:39 - 16:43
    4.7セントになりました
    ですから実現可能なのです
  • 16:43 - 16:45
    (拍手)
  • 16:45 - 16:47
    ここで 皆さんに提案があります
  • 16:47 - 16:50
    これはジップラインという
    優秀な会社で
  • 16:50 - 16:52
    高度な技術者の集団です
  • 16:52 - 16:54
    ルワンダでのドローンの
    うまい利用法を考え出しました
  • 16:54 - 16:56
    写真はルワンダで
    ドローンを発射する私です
  • 16:56 - 17:01
    血液を国内のどこにでも
    1時間以内に届けるというドローンです
  • 17:01 - 17:02
    これによって
  • 17:02 - 17:04
    たくさんの人々の命が救われ—
  • 17:04 - 17:05
    (拍手)
  • 17:05 - 17:07
    ジップラインは収益を上げ
  • 17:07 - 17:11
    ルワンダにとっても
    多大な費用削減になりました
  • 17:11 - 17:14
    世界に必要なのはまさにこれで
    皆さんの協力が必要なところです
  • 17:14 - 17:17
    お願いです 皆さんの頭脳で
    少しの時間でいいから
  • 17:17 - 17:20
    ご自分の専門とする技術や
    立ち上げた会社や
  • 17:20 - 17:22
    得意とするデザインについて
    考えてみてください
  • 17:22 - 17:25
    少しだけでいいので
    知恵と力を貸してください
  • 17:25 - 17:29
    このような卓越した「Win-Win」の
    ソリューションが導き出せるかもしれません
  • 17:29 - 17:32
    最後に もう1つだけ
    お話ししたいと思います
  • 17:33 - 17:35
    タンザニアの小学校を
    訪問した時のことです
  • 17:35 - 17:38
    写真は5年生の教室にいる私です
  • 17:39 - 17:41
    いつものように児童に尋ねました
  • 17:41 - 17:43
    「大人になったら何になりたい?」
  • 17:43 - 17:45
    2人が手を挙げて
    こう言いました
  • 17:45 - 17:47
    「世界銀行の総裁になりたい」
  • 17:47 - 17:49
    (笑)
  • 17:49 - 17:52
    皆さん同様 私のスタッフや
    学校の先生方も笑いましたが
  • 17:52 - 17:54
    私はそれを制止して
    こう言いました
  • 17:54 - 17:56
    「皆さん 聞いてください
  • 17:57 - 18:01
    私が生まれた頃の韓国は
    こんな様子でした
  • 18:01 - 18:03
    ここが私の生まれ故郷です
  • 18:03 - 18:05
    私は3歳の時
  • 18:06 - 18:08
    幼稚園に通っていましたが
  • 18:08 - 18:12
    当時の世界銀行総裁
    ジョージ・デビッド・ウッズが
  • 18:12 - 18:15
    もしも韓国を訪れて
    私の教室に来たとしても
  • 18:15 - 18:19
    未来の世界銀行総裁が
    その教室に座っていようとは
  • 18:19 - 18:20
    思いもしなかったでしょう
  • 18:20 - 18:23
    君らが世界銀行総裁に
    なれるわけがないなんて
  • 18:23 - 18:25
    決して誰にも
    言わせてはいけませんよ」
  • 18:25 - 18:27
    さて…どうも
  • 18:27 - 18:28
    (拍手)
  • 18:28 - 18:30
    もう1つだけ言わせてください
  • 18:30 - 18:33
    私は 当時世界で
    最貧だった国の出身ながらも
  • 18:33 - 18:34
    世界銀行の総裁を務めています
  • 18:34 - 18:38
    私の後に続く人々が歩む道を
    ふさぐわけにはいきません
  • 18:38 - 18:39
    これは緊急事態です
  • 18:39 - 18:41
    人々の向上心は
  • 18:41 - 18:43
    世界中あらゆる場所で上昇中です
  • 18:43 - 18:46
    この会場の皆さんは
    ぜひ 協力してください
  • 18:46 - 18:50
    ジップラインのような
    ソリューションを見いだして
  • 18:50 - 18:53
    貧困者が生活を飛躍的に改善するのを
    手助けできることは分かっています
  • 18:53 - 18:56
    でも 私たちが力を合わせない限り
    実現しません
  • 18:56 - 18:59
    「未来の自分」—
    特に お子さんの世代にとって—
  • 18:59 - 19:01
    「未来の自分」がどうなるかは
  • 19:01 - 19:04
    私たちが どれだけの
    配慮や思いやりを行動に移し
  • 19:04 - 19:07
    「未来のみんな」が
    世界中の子どもたち一人一人に
  • 19:07 - 19:10
    均等な機会を与えられるかに
    かかっているのです
  • 19:10 - 19:11
    ありがとうございました
  • 19:11 - 19:13
    (拍手)
  • 19:13 - 19:16
    ありがとう
    どうもありがとう
  • 19:16 - 19:19
    (拍手)
  • 19:21 - 19:24
    (クリス・アンダーソン)みんな
    世界銀行総裁の口から
  • 19:24 - 19:26
    このようなお話が出てきたことに
    驚いているのでは
  • 19:26 - 19:27
    素敵ですね
  • 19:27 - 19:31
    ご提案について もう少し
    具体的なお話を伺えないでしょうか
  • 19:31 - 19:35
    会場には投資家や起業家が
    たくさん来ています
  • 19:35 - 19:37
    どう提携するのか
    具体的な提案を教えてください
  • 19:37 - 19:39
    (ジム・ヨン・キム)
    マニアックな話でもいい?
  • 19:39 - 19:41
    (クリス)どうぞ
    (ジム)何をしたかというと
  • 19:41 - 19:46
    例えば 保険会社というものは
    発展途上国のインフラに投資したりはしません
  • 19:46 - 19:48
    リスクを冒すことは
    しませんから
  • 19:48 - 19:51
    保険料を払う人々のために
    資金を保管しているのです
  • 19:51 - 19:54
    そこでスウェーデン国際開発協力庁から
  • 19:54 - 19:55
    少しだけ出資してもらい
  • 19:55 - 19:58
    さらに よそからも1億ドル調達し
  • 19:58 - 20:00
    世銀が一次損失を負担します
  • 20:00 - 20:04
    コケたら 10パーセントまでの損失は
    うちがかぶり
  • 20:04 - 20:05
    他の当事者の資金は安全です
  • 20:05 - 20:09
    これで投資額の90パーセントにあたる
    「トランシェ」と呼ばれる塊が
  • 20:09 - 20:13
    信用格付けではBBBとなり
    保険会社の投資が得られたのでした
  • 20:13 - 20:18
    世銀がしているのは
    手持ちの公的資金を使った—
  • 20:18 - 20:22
    特定の債券類のディリスキングによる
    外部投資の呼び込みです
  • 20:22 - 20:25
    ですからお金を何兆ドルか
    持て余している皆様はこぞって
  • 20:25 - 20:27
    うちにいらっしゃい
  • 20:27 - 20:27
    (笑)
  • 20:27 - 20:29
    (クリス)とりわけ
  • 20:29 - 20:33
    途上国での雇用創出につながるような
    投資案件をお探しなのですよね
  • 20:33 - 20:34
    (ジム)全くもってその通りです
  • 20:34 - 20:38
    その対象は例えば
    電気やガスを引いたり
  • 20:38 - 20:41
    道路 橋や港湾の建設といったことです
  • 20:41 - 20:44
    この種の事業は
    雇用創出には欠かせませんが
  • 20:44 - 20:46
    他にも言いたいことがあります
  • 20:46 - 20:49
    皆さんが専門とする技術や
  • 20:49 - 20:50
    専門とする事業には
  • 20:50 - 20:53
    途上国での使い道はないと
    思うかもしれませんが
  • 20:54 - 20:55
    ジップラインの例もあります
  • 20:55 - 20:56
    ジップラインの場合
  • 20:56 - 20:59
    決め手は技術の性質だけでは
    ありませんでした
  • 20:59 - 21:02
    ルワンダの人々と
    早い段階で関わりを持ち
  • 21:02 - 21:04
    人工知能を利用したこと—
  • 21:04 - 21:07
    現地のインターネット接続基盤も
    非常に発達しています
  • 21:07 - 21:10
    そしてドローンは完全に
    自動操縦で飛ぶんですよ
  • 21:10 - 21:12
    こういう事業を世銀は援助します
  • 21:12 - 21:15
    紹介したり 資金提供もして
    実現をお手伝いします
  • 21:15 - 21:18
    (クリス)こういう取り組みを
    支援するために世銀が
  • 21:18 - 21:19
    提供してもいいという額は?
  • 21:19 - 21:22
    (ジム)いつも私に
    そんな話をさせますよね
  • 21:22 - 21:25
    (クリス)ちょっと困らせようかなと
    (ジム)では予定を言いましょう
  • 21:25 - 21:31
    世界銀行が貧困国に投資する額は
    1年に250億ドルです
  • 21:31 - 21:32
    最貧国にです
  • 21:33 - 21:35
    向こう3年間
    毎年250億ドルの
  • 21:35 - 21:36
    投資を続けながら
  • 21:36 - 21:38
    皆さんと一緒に
    このお金を どうやって
  • 21:38 - 21:40
    もっと効率よく使うか
    考えなければなりません
  • 21:40 - 21:44
    アイデアの内容にもよるので
    これという数字は出せませんが
  • 21:44 - 21:46
    まずは持ち込んでください
  • 21:46 - 21:51
    資金面が問題になることは
    ないでしょう
  • 21:51 - 21:55
    (クリス)総裁ご本人の口から聞きましたね
    ジム どうもありがとう
  • 21:55 - 21:56
    (ジム)ありがとう
  • 21:56 - 21:58
    (拍手)
Title:
誰にだってチャンスは与えられて然るべきもの
Speaker:
ジム・ヨン・キム
Description:

今、世界中で人々の夢や希望が過去に例を見ないほど膨らんでいます。スマートフォンやインターネットの普及によるところが大きいのですが、これに見合う機会は与えられるのか、それとも不満につながるだけなのでしょうか? 世界銀行グループのジム・ヨン・キム総裁は極度の貧困を撲滅し、繁栄の共有促進を図りたいと考えています。最貧の国々での投資を促し開発のリスク低減を図ることで、人々の保健や経済を改善するという世銀の取り組みについて解説します。

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDTalks
Duration:
22:12

Japanese subtitles

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