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自分の脳細胞で脳組織を修復する | ジョスリン・ブロック| TEDxCHUV

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    今日皆さんにお話したいのは
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    脳神経外科医としての私の興味深い経験です
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    私は脳神経外科医として
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    人間の悲劇と毎日向き合わなければなりません
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    自動車事故や脳卒中の後などは本当に大変です
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    脳の大部分が破壊されると
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    残念ながら中枢神経系の自己修理は見込めません
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    脳神経外科医としての私の夢は
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    人の失った機能を取り戻すことです
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    重度の身体障害を持ったままの人を
  • 0:56 - 1:00
    毎日見るのは辛いからです
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    おそらくこれが私が
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    機能的脳神経外科の道を選んだ理由です
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    機能的脳神経外科医が試みるのは
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    外科手術を使って
    失った機能を取り戻したり改善したりすることです
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    よく知られているのが深部脳刺激療法です
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    14年前 私は
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    ある重大な発見に名を連ねました
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    これが中枢神経系に重度の損傷がある患者さんの
  • 1:30 - 1:34
    回復につながるかも知れないと思っています
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    それが今日のお話です
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    その前にここで
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    二人の重要で並外れた登場人物をご紹介します
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    彼ら無しでは今日の話はありません
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    最初のひとりはここにはいません
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    お分かりでしょうか
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    正確に言うとこの牛の従兄弟にあたる
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    南アメリカの牛です
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    この牛の血清なしでは
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    成人の脳細胞を培養することはできませんでした
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    もう一人もここにはいませんが
    牧草は食べません
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    私の友人で共同研究者のジャン-フランソワ・ブルネ
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    生物学者で彼の忍耐と議論好きな性格なしには
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    脳細胞の培養はできなかったでしょう
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    ではお話に戻りましょう
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    14年前を想像してください
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    当時私は脳外科のチーフレジデントでした
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    チーフレジデントは
    昼夜 救急の仕事で多忙です
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    時には救急で脳の一部を取り除くことがあります
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    交通事故などで脳浮腫になった時
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    さもなければ患者さんが死ぬという時には
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    頭蓋骨切除を行わなければなりません
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    脳の一部を切除しなければならないこともあります
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    生物学者のジャン-フランソワと私たちは
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    「頻繁に摘出するこのような脳の一部を
  • 3:14 - 3:18
    何かに活用できないか」と考えたのです
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    ジャン-フランソワは患者さんの同意を得て
  • 3:20 - 3:23
    「この脳組織で興味深いことができる」と言いました
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    彼は色々な種類の血清で
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    何度も何度も実験を試み
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    先程紹介した牛の血清を使って
    良い結果を得たのです
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    ある日 彼が顕微鏡で見たものがこの写真です
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    そこで発見した細胞は
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    幹細胞に似ていました
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    14年前の私たちは
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    中枢神経系にある幹細胞は
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    脳の奥深い2箇所の
    小さな領域にあると考えていました
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    しかし彼が皮質から採集したどのサンプルにも
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    この種の細胞が見つかったのです
    驚くべきことでした
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    この種の細胞
  • 4:16 - 4:18
    緑色に見える細胞がアストロサイト
  • 4:18 - 4:23
    正常な脳では神経細胞を維持しています
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    内側にある小さな丸い細胞は未成熟の神経細胞で
  • 4:28 - 4:32
    これが成熟細胞になります
  • 4:32 - 4:36
    当時は誰もが「皮質を培養しても
  • 4:36 - 4:41
    幹細胞を見いだすのは不可能だ
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    その培養細胞に脳の深部の幹細胞が
    混ざってしまったに違いない」と言いました
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    私たちは反論しました
    なぜならこの細胞は
  • 4:49 - 4:53
    幹細胞とは違い ゆっくりと分裂し
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    決して腫瘍を作らず 活動性は低く
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    10から15週間の培養後に
    死んでしまうからです
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    更新を繰り返すものではないのです
  • 5:06 - 5:12
    ついに私たちはこれらの細胞がどこから来たかを
    突き止めました
  • 5:12 - 5:15
    幹細胞からではありません
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    この青く染色されている細胞からです
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    あなたもこの細胞を脳にもっています
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    ごく最近発見されたことです
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    これらはダブルコーティン陽性細胞と呼ばれます
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    胎児に豊富に見られるのは
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    皮質の折りたたみ形成を促すからです
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    大脳皮質は折りたたまれた構造になっており
    この細胞はそれを促すのです
  • 5:45 - 5:49
    私たちはこの細胞は成人では消失してしまうと
    考えていました
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    それが違っていたのです
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    皮質の細胞の4%は
    ダブルコーティン陽性細胞です
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    それがどんな役割を持つか
  • 6:01 - 6:02
    どんな細胞かも分かりません
  • 6:02 - 6:06
    どこかに傷害がある時に役立つのか
    はっきりは分かりません
  • 6:06 - 6:08
    分かっているのはこれらの細胞から
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    先程お見せした
    培養細胞が得られたということです
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    生物学者が脳神経外科医と仕事をするとき
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    脳神経外科医は常に実践的です
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    「これで細胞がたくさん入手できる
    何かをしてみよう」と
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    先程言いました様に私たちは
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    中枢神経系が自己修復できないことに
    失望しています
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    患者さんを助ける手がかりを
    見つけたのではないかと思い
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    ある考えにたどり着きました
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    人の生検を行おう
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    方法は分かっている
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    その細胞を培養する―その方法も知っている
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    培養した細胞に目印を付け
  • 6:55 - 6:59
    それを脳の他の部位に移植する
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    よし そうしよう
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    もちろん最初に人には試せません
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    マウスやラットのモデルで試すことは誰でも知ってるでしょう
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    しかし残念ながらマウスやラットの大脳皮質には
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    ダブルコーティン陽性細胞はありません
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    なぜかは分かりませんが マウスやラットではだめです
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    ほかの動物で実験です
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    運良く見つかりました
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    私の良い友人で私たちの考えを信じてくれた
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    フリブールの生理学教授エリック・ルイレーです
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    彼はスイス最大の猿の施設を持ち
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    私たちを手助けしてくれました
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    「あなた方の考えは素晴らしい
    正しいやり方だと思う
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    この2匹の猿で試しなさい」と言ってくれました
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    私たちは喜びました
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    まず 人でするのと全く同じ培養ができると
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    証明できるのです
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    なぜなら猿は人と全く同じ細胞の構成を
    持っているからです
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    培養細胞に印をつけ 移植しました
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    最初の疑問は
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    正常な脳に移植したら
    これらの細胞はどのような行動をとるか
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    傷害部位に移植したら?
    傷害に近い部分に移植したら?
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    興味深いことに 正常な脳に移植された細胞は
    消えてしまいました
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    生検で 細胞を元の場所から取り出し
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    培養し同じ猿に移植すると
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    免疫応答がでません
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    細胞は入るスペースがないと分かると
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    「私は必要じゃないのね バイバイ」と言って
    いなくなってしまうのです
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    しかし傷害部位の近くに移植すると
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    「空きのスペースがある」と思い
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    次第に順応し
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    1カ月から1カ月半ぐらいで
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    成長し成熟した神経細胞になります
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    この写真は傷害部付近に移植して
    3カ月後です
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    赤く見えるのが移植した細胞です
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    最初にお見せした小さな丸い細胞ではありませんね
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    しかし軸索のある大きな神経細胞です
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    それらはコロニー形成したと考えられます
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    またこれらの細胞は
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    私たちが培養した細胞と同じだと証明できます
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    この赤い染料が私たちが培養に使ったものだからです
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    緑の蛍光は成熟した神経細胞を示します
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    これらの細胞には2種類の目印があります
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    緑と赤
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    それは以前培養されて
    移植後に成熟した神経細胞を意味します
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    つまり 未熟な神経細胞が
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    成熟した神経細胞となったのです
  • 9:58 - 10:00
    では次のステップは何でしょう?
  • 10:00 - 10:04
    特に脳神経外科医が知りたいのは
    これが何を意味しているのかということです?
  • 10:04 - 10:08
    これは正常に働いているのか?
    これらの細胞はあっていいものか?
  • 10:08 - 10:10
    それでこの実験をしました
  • 10:10 - 10:15
    数匹の猿に特別なタスクを訓練しました
  • 10:15 - 10:20
    トレイに入れた食べ物を取り出すことです
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    皆上手にできました
  • 10:22 - 10:27
    時間をかけて習得させ
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    とても良いレベルに達成しました
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    その良いレベルが維持できるようになってから
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    手の動きを司る大脳の皮質運動中枢に
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    少し傷害を加えました
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    もちろん直後には麻痺が起こります
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    腕を動かすことができません
    タスクができなくなります
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    しかし自然とはすごいものです
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    動物には自然治癒力があります
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    おそらく痙性麻痺のためでしょう
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    動作はある程度まで回復します
  • 11:04 - 11:09
    しかしその回復には限りがあります
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    ここで生検を行い 細胞培養し
    それを脳に移植しました
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    ご覧ください
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    この映像が一番わかりやすいでしょう
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    左側は
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    猿が自然治癒した後での
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    ベストな状態です
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    右側は移植後2カ月
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    移植をした猿たちは皆
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    移植をしなかった猿たちより
    動きが良くなりました
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    素晴らしいと思います
  • 11:58 - 12:00
    では次のステップはなんでしょう
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    当然 いろいろなモデルで実験を続けました
  • 12:03 - 12:07
    以来いろいろな発見がありました
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    しかし 私の目的は人の回復に結びつけることです
  • 12:14 - 12:17
    必要な過程をすべてクリアすることが
    どれほど難しいか理解するにつれて
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    正直 意気込みが少ししぼんだ面もあります
  • 12:23 - 12:29
    人に実験を試みるには認可も必要です
  • 12:29 - 12:33
    しかし私が引退するまでには
    成功できると期待しています
  • 12:34 - 12:37
    ご静聴ありがとうございました
  • 12:37 - 12:38
    (拍手)
Title:
自分の脳細胞で脳組織を修復する | ジョスリン・ブロック| TEDxCHUV
Description:

脳卒中後の脳の回復に、実験室で培養した自らの脳細胞を役立てられるようになったら?

このビデオは、TEDカンファレンスの形式で地元コミュニティが独自に運営するTEDxイベントにおいて収録されたものです。

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDxTalks
Duration:
12:50

Japanese subtitles

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