1 00:00:00,785 --> 00:00:02,665 もし 私が皆さんに 2 00:00:02,689 --> 00:00:05,103 心だけでなく 身体全体で 憶えられるような 3 00:00:05,127 --> 00:00:07,284 物語を描写できるとしたら? 4 00:00:07,308 --> 00:00:09,983 ジャーナリストとしての私の人生では 5 00:00:10,007 --> 00:00:12,318 一石を投じ 人々を鼓舞できるような物語を 6 00:00:12,342 --> 00:00:14,912 遮二無二なって紡がなくては なりませんでした 7 00:00:14,936 --> 00:00:17,216 出版業界、ドキュメンタリー業界 8 00:00:17,216 --> 00:00:18,825 それから放送業界で働きましたが 9 00:00:18,825 --> 00:00:21,761 バーチャルリアリティに関わるまでは 10 00:00:21,761 --> 00:00:24,350 目の覚めるような強烈な 11 00:00:24,350 --> 00:00:26,514 人々の真正な反応を 12 00:00:26,538 --> 00:00:28,673 見ることはなかったのです 13 00:00:28,673 --> 00:00:32,910 特筆すべき点は VR- バーチャルリアリティを用いて 14 00:00:32,934 --> 00:00:35,618 物語のただ中の場面に 15 00:00:35,618 --> 00:00:38,169 参加してもらえるのです 16 00:00:38,169 --> 00:00:41,596 ゴーグルをつけることで どこを見渡しても 17 00:00:41,596 --> 00:00:44,528 あたかも皆さんがそこに 実際に存在するかのような 18 00:00:44,528 --> 00:00:47,235 身体全体を通じた感覚を得るのです 19 00:00:47,235 --> 00:00:50,575 5年前に 私はバーチャルリアリティと ジャーナリズムを 20 00:00:50,575 --> 00:00:53,885 併用するという未知の挑戦を始めました 21 00:00:53,909 --> 00:00:56,457 私は飢餓に関して 何かしたかったのです 22 00:00:56,481 --> 00:00:59,594 アメリカの家庭は飢え フードバンクは凌駕され 23 00:00:59,594 --> 00:01:02,329 頻繁に食物が不足しています 24 00:01:02,330 --> 00:01:06,039 さて 私は人々に飢えを 感じさせる事は出来ませんが 25 00:01:06,039 --> 00:01:10,750 物理的に何かを感じさせる方法は 生み出せるかもしれせん 26 00:01:10,750 --> 00:01:13,790 繰り返しますが 5年前の事です 27 00:01:13,814 --> 00:01:16,990 ジャーナリズムとバーチャルリアリティに 同時に携わることは 28 00:01:17,014 --> 00:01:19,997 生半可な思いつきより たちが悪いとみなされ 29 00:01:20,021 --> 00:01:21,796 資金もありませんでした 30 00:01:21,796 --> 00:01:24,437 私は沢山の同僚から笑われたものでした 31 00:01:24,437 --> 00:01:27,307 でも ミカエラ・コブサマークという 32 00:01:27,307 --> 00:01:29,799 素晴らしい女性のインターンを 迎えることができ 33 00:01:29,799 --> 00:01:32,367 一緒にフードバンクへ行き 34 00:01:32,367 --> 00:01:34,913 音声や写真を記録し始めたのです 35 00:01:34,937 --> 00:01:36,857 彼女がただ泣き叫びながら 36 00:01:36,881 --> 00:01:39,276 オフィスに戻って来たあの日までは 37 00:01:39,300 --> 00:01:42,552 彼女はある女性が取りまとめる 長い行列に居て 38 00:01:42,552 --> 00:01:45,871 その女性は精神的に極限状態まで 追い詰められていました 39 00:01:45,895 --> 00:01:48,863 そして 「人が多すぎる!人が多すぎる!」 40 00:01:48,887 --> 00:01:50,783 と叫んでいたのです 41 00:01:50,807 --> 00:01:54,362 糖尿を患う男性は 食べ物にありつけず 42 00:01:54,386 --> 00:01:58,711 血糖値が下がりすぎた為 昏睡状態に陥りました 43 00:01:58,711 --> 00:02:00,627 その音声を聞いてすぐに 44 00:02:00,627 --> 00:02:03,496 これはフードバンクで 何が起きているかを実際に描き得る 45 00:02:03,520 --> 00:02:07,314 ある種の心揺さぶるきっかけに なり得ると確信しました 46 00:02:07,314 --> 00:02:10,906 さて これが実際の列です どれだけ長いか分かりますよね? 47 00:02:10,930 --> 00:02:13,557 繰り返しますが 私達は潤沢な資金は無かったので 48 00:02:13,581 --> 00:02:17,331 寄付でいただいた仮想人間と 49 00:02:17,355 --> 00:02:21,481 周りの厚意を募って 出来る限り正確に 50 00:02:21,505 --> 00:02:23,664 モデルを再現しました 51 00:02:23,688 --> 00:02:26,297 そして私達は あの日に何が起きたのかを 52 00:02:26,321 --> 00:02:29,115 出来る限り正確に伝えようとしたのです 53 00:02:29,680 --> 00:02:33,878 (映像)音声:「人が多すぎる! 人が多すぎる!」 54 00:02:42,340 --> 00:02:45,061 音声:「オーケー 彼は発作を起こしているわ」 55 00:02:59,023 --> 00:03:01,872 音声:「救急車を呼ばなきゃ」 56 00:03:02,181 --> 00:03:04,198 ペーニャ:右側の男性ー 57 00:03:04,222 --> 00:03:06,094 彼は倒れた男性の側を歩きまわっています 58 00:03:06,118 --> 00:03:09,375 彼はその人と同じ空間に居るのです 59 00:03:09,375 --> 00:03:12,322 まるでその男性が足元に居るかのようです 60 00:03:12,322 --> 00:03:14,588 そして装置の視界を通してさえも 61 00:03:14,588 --> 00:03:17,523 彼は実験室に居て 道端に実際にいないことが 62 00:03:17,523 --> 00:03:20,140 分かっているはずなのに 63 00:03:20,164 --> 00:03:23,060 装置越しの人々と そこに居るかのように感じています 64 00:03:23,084 --> 00:03:25,334 彼は現実の場に居ないこの男性を 65 00:03:25,334 --> 00:03:27,704 踏まないよう 慎重に歩いていますよね? 66 00:03:27,704 --> 00:03:30,609 この作品は2012年の サンダンス映画祭で上映され 67 00:03:30,633 --> 00:03:34,298 驚くべきことにー 基本的に史上初の 68 00:03:34,298 --> 00:03:36,838 バーチャルリアリティ映画となったのです 69 00:03:36,838 --> 00:03:38,977 現地に向う時 私は本当に怯えていました 70 00:03:38,977 --> 00:03:41,484 人々がどのように反応するか 何が起こるのか 71 00:03:41,508 --> 00:03:42,897 全く分からなかったからです 72 00:03:43,083 --> 00:03:45,567 私達はこのお手製のゴーグルを 持って行きました 73 00:03:46,058 --> 00:03:49,827 (映像)「まぁ あなた泣いてるのね 泣いてるのね ジナ」 74 00:03:49,851 --> 00:03:52,571 私が驚いているのが 声から分かりますよね? 75 00:03:52,595 --> 00:03:56,190 そして この類の反応は 私達が幾度と無く見た 76 00:03:56,214 --> 00:03:58,984 ある種の反応に帰結したのです 77 00:03:59,008 --> 00:04:02,714 人々は発作を起こした人を 慰めようと地面に跪き 78 00:04:02,738 --> 00:04:05,508 何もできないと分かっていても そっと何かを語りかけ 79 00:04:05,508 --> 00:04:08,640 救いの手を差し伸べようとするのです 80 00:04:08,664 --> 00:04:11,348 そして多くの人が こう口にしたのです 81 00:04:11,372 --> 00:04:14,156 「なんてことだ 助けらずもどかしかった」 82 00:04:14,156 --> 00:04:17,000 そしてこれを教訓として その後の人生に活かすのです 83 00:04:17,000 --> 00:04:20,195 この作品が作られた後 84 00:04:20,197 --> 00:04:24,007 南カルフォルニア大学の 映画芸術学部長が 85 00:04:24,031 --> 00:04:27,592 『Hunger in LA』を世界経済フォーラムの 会長に試してもらいました 86 00:04:27,592 --> 00:04:29,783 視聴後 彼はゴーグルを外して 87 00:04:29,783 --> 00:04:32,667 シリアの現場についての映像を委託しました 88 00:04:32,691 --> 00:04:36,914 シリアの内戦で最悪の状況下にある シリア難民の子供たちのために 89 00:04:36,914 --> 00:04:40,810 私は本当に何かをしたかったのです 90 00:04:40,810 --> 00:04:44,767 難民キャンプで素材を記録するために イラク国境にチームを派遣しました 91 00:04:44,791 --> 00:04:47,942 そこはISIS(イスラム過激派組織)の活動拠点なので 92 00:04:47,966 --> 00:04:50,434 今だったら決してチームを派遣しないでしょう 93 00:04:50,458 --> 00:04:54,694 さて 私達は少女が歌っている時に 94 00:04:54,694 --> 00:04:57,341 爆弾が爆発した路上のシーンを再現しました 95 00:04:57,341 --> 00:04:59,419 皆さんは現場のただ中に居て 96 00:04:59,443 --> 00:05:01,997 色んな音が聞こえ 97 00:05:02,021 --> 00:05:04,314 周囲には怪我人がいます 98 00:05:04,338 --> 00:05:07,338 信じられない程怖い 本物の感情です 99 00:05:07,362 --> 00:05:11,902 実際に爆発に遭遇したことのある人によると 100 00:05:11,926 --> 00:05:15,401 この映像は同様の恐怖を呼び起こすと言います 101 00:05:16,211 --> 00:05:20,730 [シリアの内戦は他人事かもしれない] 102 00:05:22,078 --> 00:05:28,344 [自分で体験するまでは] 103 00:05:29,062 --> 00:05:36,013 (少女の歌) 104 00:05:36,037 --> 00:05:38,815 (爆発) 105 00:05:38,839 --> 00:05:43,076 [シリアプロジェクト] 106 00:05:43,988 --> 00:05:45,985 [バーチャルリアリティ体験] 107 00:05:46,653 --> 00:05:48,721 ペーニャ:ロンドンの ヴィクトリア&アルバート博物館に 108 00:05:48,745 --> 00:05:50,763 この作品を出品するよう招待されました 109 00:05:50,763 --> 00:05:52,310 宣伝目的ではありません 110 00:05:52,310 --> 00:05:54,522 このタペストリーの展示場に設置しました 111 00:05:54,522 --> 00:05:55,944 何も告知していなかったので 112 00:05:55,944 --> 00:05:59,039 その日 偶然博物館に タペストリーを見に来た誰もが 113 00:05:59,039 --> 00:06:01,376 電光に包まれた私達を見たのでした 114 00:06:01,376 --> 00:06:05,141 彼らはタペストリーに纏わる由来を 見たかったのでしょうが 115 00:06:05,165 --> 00:06:08,502 私達のバーチャルリアリティカメラに 直面したのです 116 00:06:08,513 --> 00:06:12,130 でも 5日間以上にも渡り 多くの人が試してくれ 117 00:06:12,130 --> 00:06:16,178 ゲストブックには54ページに渡り コメントが書かれました 118 00:06:16,178 --> 00:06:18,528 そこの学芸員からは このような盛況ぶりは 119 00:06:18,528 --> 00:06:22,021 未だかつて見たことがないと言われました 120 00:06:22,021 --> 00:06:25,772 例えば「すごく本物だ」 「はっきり信じられる」とか 121 00:06:25,772 --> 00:06:28,312 もちろん 私が興奮してしまったのは 122 00:06:28,336 --> 00:06:31,345 「普段はテレビのニュースで 見るもののただ中にいるかのような 123 00:06:31,345 --> 00:06:34,461 本物の感情だ」というコメントです 124 00:06:34,463 --> 00:06:38,369 ということで成功ですよね? これは成功しました 125 00:06:38,369 --> 00:06:42,092 そして皆さんの出身だとか年齢だとか 全く問題ではなくー 126 00:06:42,116 --> 00:06:44,699 それは実に心揺さぶるものなのです 127 00:06:44,699 --> 00:06:48,295 でも 誤解しないで下さい 皆さんが映像の中にいる時 128 00:06:48,319 --> 00:06:51,199 ここにいることを忘れている とは言っていません 129 00:06:51,223 --> 00:06:54,422 でも 1度に2つの場所に居るように 感じることができるわけです 130 00:06:54,422 --> 00:06:57,572 いわゆる 2重性の存在と呼ぶものを 得ることができ 131 00:06:57,596 --> 00:07:02,533 それがこれらの共感という感情に 踏み込ませてくれると思うのです 132 00:07:02,533 --> 00:07:04,038 そうですよね? 133 00:07:04,041 --> 00:07:07,232 意味するところは もちろん 134 00:07:07,256 --> 00:07:12,145 私はこれらの作品を創るにあたって 極めて慎重でなければなりません 135 00:07:12,145 --> 00:07:15,611 最良のジャーナリズムに忠実に従い 136 00:07:15,611 --> 00:07:18,596 これらの強烈な物語は 高潔さと共に成り立っている事を 137 00:07:18,620 --> 00:07:20,206 明確にしなければなりません 138 00:07:20,230 --> 00:07:23,673 もし自身で素材を手に入れる事が 出来ない場合は 139 00:07:23,673 --> 00:07:26,989 出所やどこから来たものなのか 140 00:07:26,989 --> 00:07:29,904 そして真正のものなのか明白にすべく 141 00:07:29,904 --> 00:07:32,252 徹底しなければなりません 142 00:07:32,276 --> 00:07:33,633 例を挙げましょう 143 00:07:33,657 --> 00:07:36,754 トレイボン・マーティンの事件ですが 144 00:07:36,754 --> 00:07:40,721 彼は17歳でソーダとキャンディーを 商店で買った帰り道に 145 00:07:40,745 --> 00:07:44,611 自警団員のジョージ・ジマーマンに尾行され 146 00:07:44,611 --> 00:07:47,090 射殺されました 147 00:07:47,090 --> 00:07:49,129 その作品を創るのに 148 00:07:49,129 --> 00:07:52,495 居住区全体の設計図を手に入れ 149 00:07:52,495 --> 00:07:57,172 設計図を元に徹底的に 当時の現場を再現しました 150 00:07:57,172 --> 00:07:59,007 すべての行動は 151 00:07:59,007 --> 00:08:03,821 実際に録音された警察への通報で 論拠づけられました 152 00:08:03,821 --> 00:08:07,188 そして面白いことに この物語について 幾つかのニュースを流したのです 153 00:08:07,212 --> 00:08:11,187 音声の再現をした科学捜査班と 音響映像の会社が 154 00:08:11,211 --> 00:08:13,437 ジョージ・ジマーマンは 車から降りた時 155 00:08:13,437 --> 00:08:17,126 マーティン少年を追跡する前に 引き金を引いたと 156 00:08:17,126 --> 00:08:20,022 証言したと言ったのです 157 00:08:20,022 --> 00:08:23,418 ジャーナリズムの基本的な信条が お分かりになりますよね 158 00:08:23,442 --> 00:08:25,315 彼らはこの状況を何も変えていません 159 00:08:25,339 --> 00:08:28,743 私達は今だに そしてこれからも 同じ原則に従うのです 160 00:08:28,767 --> 00:08:32,070 飢餓で倒れた男性を目撃していようが 161 00:08:32,094 --> 00:08:34,433 爆発現場のただ中にいる感覚だろうが 162 00:08:34,457 --> 00:08:36,943 違いは現場に居るという感覚なのです 163 00:08:36,967 --> 00:08:41,270 これが私を作品とともに前に推し進め 164 00:08:41,270 --> 00:08:44,143 どうやってそれらを創るのかを 考えさせてくれる類のものです 165 00:08:44,143 --> 00:08:48,892 私達はこれをヘッドセットではなく もっと利用可能なものにするつもりです 166 00:08:48,892 --> 00:08:52,073 トレイボン・マーティンの作品のように モバイル版も作っています 167 00:08:52,073 --> 00:08:55,086 そしてこれらの出来事は 強い影響を及ぼしました 168 00:08:55,086 --> 00:08:58,842 シリア難民の子供たちに 169 00:08:58,842 --> 00:09:01,420 預金口座から直接お金を寄付したという アメリカ人もいました 170 00:09:01,444 --> 00:09:03,777 そして『Hunger in LA』プロジェクトは 171 00:09:03,801 --> 00:09:05,264 ジャーナリズムの新形態を後押ししています 172 00:09:05,264 --> 00:09:07,524 それは将来的には 既存のプラットフォームに 173 00:09:07,524 --> 00:09:10,499 取り入れられていくことでしょう 174 00:09:10,499 --> 00:09:11,713 ありがとうございました 175 00:09:11,737 --> 00:09:14,149 (拍手)