WEBVTT 00:00:00.000 --> 00:00:01.819 今日お話ししたい事は 00:00:01.819 --> 00:00:03.623 世界中の科学者が行っている 00:00:03.623 --> 00:00:06.310 あるプロジェクト 00:00:06.310 --> 00:00:09.598 ヒトの脳の神経が描く像についてです 00:00:09.598 --> 00:00:11.770 この研究の中心となる考えは 00:00:11.770 --> 00:00:13.628 ヒトの思考と脳は 00:00:13.628 --> 00:00:16.485 汎用な単一目的の プロセッサ―なのではなく 00:00:16.485 --> 00:00:19.927 高度に特殊化された 各部の複合体であり 00:00:19.927 --> 00:00:22.910 その1つ1つが各々 固有の問題を解決しながらも 00:00:22.910 --> 00:00:25.246 総合的に 00:00:25.246 --> 00:00:29.602 思考する我々を 作っているという事です 00:00:29.602 --> 00:00:31.078 これを理解する為 NOTE Paragraph 00:00:31.078 --> 00:00:33.742 次のシナリオを想像してみて下さい 00:00:33.742 --> 00:00:35.938 あなたは自分の子供がいる 保育所に入って行きます 00:00:35.938 --> 00:00:38.175 いつものように何十人もの子どもがいて 00:00:38.175 --> 00:00:39.766 親の迎えを待っていますが 00:00:39.766 --> 00:00:41.398 今日は 00:00:41.398 --> 00:00:44.383 子ども達の顔が奇妙に同じに見えます 00:00:44.383 --> 00:00:47.191 どの子が自分の子なのか 見分けがつきません 00:00:47.191 --> 00:00:48.940 新しい眼鏡がいるのでしょうか? 00:00:48.940 --> 00:00:50.848 気がおかしくなったのでしょうか? 00:00:50.848 --> 00:00:53.300 素早く色々な事が頭をよぎります 00:00:53.300 --> 00:00:55.194 いいえ頭ははっきりしていて 00:00:55.194 --> 00:00:57.585 目も問題なく良く見えています 00:00:57.585 --> 00:00:59.374 全てがまともなのに 00:00:59.374 --> 00:01:01.536 子供達の顔だけがそうでないのです 00:01:01.536 --> 00:01:03.322 顔は見えるのですが 00:01:03.322 --> 00:01:05.030 区別ができず 00:01:05.030 --> 00:01:06.888 どの子も覚えのない顔なのです 00:01:06.888 --> 00:01:09.386 オレンジ色のリボンを見つけて 00:01:09.386 --> 00:01:11.282 ようやくそれが自分の子供だと分かります NOTE Paragraph 00:01:11.282 --> 00:01:14.707 このように急に顔を 認識できなくなることが 00:01:14.707 --> 00:01:16.253 実際起きるのです 00:01:16.253 --> 00:01:18.307 それは相貌失認と呼ばれ 00:01:18.307 --> 00:01:19.488 脳のある特定の場所に 00:01:19.488 --> 00:01:21.614 障害が起きた結果起きます 00:01:21.614 --> 00:01:23.114 これに驚かされる事は 00:01:23.114 --> 00:01:25.709 顔認知だけに障害があり 00:01:25.709 --> 00:01:28.148 その他は問題がない事です NOTE Paragraph 00:01:28.148 --> 00:01:32.016 相貌失認は脳損傷後におきる 00:01:32.016 --> 00:01:36.551 数々の 驚くほど特異な 脳機能障害の1つです 00:01:36.551 --> 00:01:37.914 このような症状などを総合して 00:01:37.914 --> 00:01:40.153 脳は明確に役割が分担された領域別に 00:01:40.153 --> 00:01:43.921 分かれている事が長い間 示唆されていたのですが 00:01:43.921 --> 00:01:46.306 それ等の領域を探求する研究に 00:01:46.306 --> 00:01:47.920 一気に進歩をもたらしたのは 00:01:47.920 --> 00:01:50.502 脳画像技術に於ける発明— 00:01:50.502 --> 00:01:53.550 特にMRIです 00:01:53.550 --> 00:01:56.790 MRIを使い脳内部の組織構造を 00:01:56.790 --> 00:01:58.376 高解度画像で見ることができます 00:01:58.376 --> 00:01:59.806 MRIの断面画像を 00:01:59.806 --> 00:02:03.158 MRIの断面画像を 00:02:03.158 --> 00:02:04.776 よくご存知のものを通して 00:02:04.776 --> 00:02:05.651 お見せしましょう 00:02:05.651 --> 00:02:08.124 その物とは何か分かるでしょうか 00:02:08.124 --> 00:02:10.235 これです NOTE Paragraph 00:02:12.241 --> 00:02:14.130 分かり難いですが アーティチョークです NOTE Paragraph 00:02:14.130 --> 00:02:15.760 ではこれはどうでしょう 00:02:15.760 --> 00:02:18.356 下から上まで行きますよ 00:02:20.812 --> 00:02:21.963 ブロッコリーの頭です! 00:02:21.963 --> 00:02:23.627 綺麗でしょう?私は好きです NOTE Paragraph 00:02:23.627 --> 00:02:26.384 もう1つ 勿論これはヒトの脳です 00:02:26.384 --> 00:02:27.970 実はこれは私の脳です 00:02:27.970 --> 00:02:29.703 私の脳をスライスして行きます 00:02:29.703 --> 00:02:31.461 右の方に鼻があり 00:02:31.461 --> 00:02:34.870 今ここに来ました ちょうどここです NOTE Paragraph 00:02:34.870 --> 00:02:39.471 この画像はいいですね 自分でも本当にそう思いますが 00:02:39.471 --> 00:02:41.383 組織を映し出してるだけに過ぎません 00:02:41.383 --> 00:02:43.903 機能画像という本当にすごい進歩は 00:02:43.903 --> 00:02:45.475 科学者が組織だけでなく 00:02:45.475 --> 00:02:48.870 活動 すなわちニューロンの発火を 捉える技術を 00:02:48.870 --> 00:02:51.305 編み出した時に起きました 00:02:51.305 --> 00:02:52.821 それは このような働きをします 00:02:52.821 --> 00:02:53.938 脳は筋肉の様なもので 00:02:53.938 --> 00:02:55.501 活発な時は 00:02:55.501 --> 00:02:58.475 その活動の為に 送り込む血量を増やします 00:02:58.475 --> 00:03:02.043 幸いに脳の血流制御は 局部的なので 00:03:02.043 --> 00:03:04.205 例えばここで 多くのニューロンが 00:03:04.205 --> 00:03:05.705 活発に発火し始めたら 00:03:05.705 --> 00:03:08.430 そこの血流は増します 00:03:08.430 --> 00:03:12.151 fMRIはその血流の 増加をキャッチし 00:03:12.151 --> 00:03:14.184 ニューロンが活性化した箇所で 00:03:14.184 --> 00:03:17.110 高反応を示します NOTE Paragraph 00:03:17.110 --> 00:03:18.810 具体的に 00:03:18.810 --> 00:03:21.295 fMRIの実験が如何に行われるか 00:03:21.295 --> 00:03:22.734 そこからどんな事が分かるか 00:03:22.734 --> 00:03:24.118 又 分からないかを説明するため 00:03:24.118 --> 00:03:27.560 最初の研究の1つを お話しします 00:03:27.560 --> 00:03:31.698 我々が知りたかったのは 顔認知だけの領野があるかどうかです 00:03:31.698 --> 00:03:34.770 既に その存在は 00:03:34.770 --> 00:03:36.490 お話しした相貌失認に基づき 00:03:36.490 --> 00:03:38.613 推察されてはいましたが 00:03:38.613 --> 00:03:40.891 健常者の脳にそれを確認した者は 00:03:40.891 --> 00:03:42.810 誰もいませんでした 00:03:42.810 --> 00:03:44.866 それで我々はその探索に 乗り出しました 00:03:44.866 --> 00:03:46.817 私が最初の実験台になり 00:03:46.817 --> 00:03:49.029 MRI 内に入り横たわりました 00:03:49.029 --> 00:03:51.612 頭を出来るだけ動かさず 00:03:51.612 --> 00:03:56.629 このような顔や物を 00:03:56.629 --> 00:03:58.760 何時間も見つめました 00:03:58.760 --> 00:04:03.925 何時間も見つめました 00:04:03.925 --> 00:04:06.697 私は fMRIスキャナーの中で 00:04:06.697 --> 00:04:10.240 費やした時間の合計が 世界記録に 00:04:10.240 --> 00:04:11.672 近いと思いますが 00:04:11.672 --> 00:04:14.335 この研究で 本当に大切なスキルの一つは 00:04:14.335 --> 00:04:16.113 膀胱制御でした 00:04:16.113 --> 00:04:17.915 (笑) NOTE Paragraph 00:04:17.915 --> 00:04:19.452 スキャナーから出た時 00:04:19.452 --> 00:04:21.767 データをすぐに分析して 00:04:21.767 --> 00:04:23.271 私の脳の中で 00:04:23.271 --> 00:04:26.077 顔を見ている時に 物体を見たときよりも 00:04:26.077 --> 00:04:27.947 強い反応を示す箇所を探しました 00:04:27.947 --> 00:04:30.118 これが私が見たものです 00:04:30.118 --> 00:04:33.774 この画像は今の基準からすると ひどいもののように見えますが 00:04:33.774 --> 00:04:36.582 当時は美しいものだと思いました 00:04:36.582 --> 00:04:38.532 小さな塊が見える 00:04:38.532 --> 00:04:39.815 箇所がありますが 00:04:39.815 --> 00:04:41.562 オリーブサイズ位で 00:04:41.562 --> 00:04:43.718 私の脳表面の下部— 00:04:43.718 --> 00:04:46.924 ここから約2.5cm真っすぐ中に 入った所です 00:04:46.924 --> 00:04:49.714 脳のその箇所が示しているのは 00:04:49.714 --> 00:04:52.634 強い fMRI反応 つまり 00:04:52.634 --> 00:04:54.382 非常に活発な脳の神経の活動です 00:04:54.382 --> 00:04:55.864 私が 物体でなく 00:04:55.864 --> 00:04:58.130 人の顔写真を見ている時のものです 00:04:58.130 --> 00:04:59.490 かなり面白いのですが 00:04:59.490 --> 00:05:01.808 何故これが偶然でないと 分かるのでしょう? 00:05:01.808 --> 00:05:03.228 では最も簡単な方法は 00:05:03.228 --> 00:05:05.342 実験をもう一度やってみる事です 00:05:05.342 --> 00:05:06.981 私はMRIスキャナーに戻り 00:05:06.981 --> 00:05:09.412 もっと顔や物の写真を見ました 00:05:09.412 --> 00:05:11.601 そして同じ様な斑点が見られました 00:05:11.601 --> 00:05:13.496 それからもう一度やり 00:05:13.496 --> 00:05:15.351 又同じ結果がでました 00:05:15.351 --> 00:05:18.423 もう一度 もう一度と 00:05:18.423 --> 00:05:19.470 もうその頃には 00:05:19.470 --> 00:05:22.411 これは本物だと 信じる事にしました 00:05:22.411 --> 00:05:26.164 しかし これは私の脳が 何かおかしいからであり 00:05:26.164 --> 00:05:28.626 他の誰にも こういう事は 起きないのかもしれないと 00:05:28.626 --> 00:05:31.081 他の多くの人達も スキャンして調べると 00:05:31.081 --> 00:05:33.527 殆ど同じ結果で 00:05:33.527 --> 00:05:35.533 小さな顔領域が 誰でも 00:05:35.533 --> 00:05:38.426 同じ様な部位にありました NOTE Paragraph 00:05:38.426 --> 00:05:40.314 それで次にくる疑問は 00:05:40.314 --> 00:05:41.788 この箇所の機能です 00:05:41.788 --> 00:05:45.720 顔認知だけでしょうか? そうでないかもしれませんね 00:05:45.720 --> 00:05:46.960 顔認知だけでしょうか? そうでないかもしれませんね 00:05:46.960 --> 00:05:48.762 人の顔だけに反応するのでなく 00:05:48.762 --> 00:05:50.871 他の身体部分にも 反応するかもしれません 00:05:50.871 --> 00:05:53.240 人の様な物や他の生物や 00:05:53.240 --> 00:05:55.020 丸っこい物にも 00:05:55.020 --> 00:05:56.676 反応するかもしれません 00:05:56.676 --> 00:05:58.830 その領域が顔の認知に 特化して機能する事を 00:05:58.830 --> 00:06:01.247 はっきり確かめる唯一の方法は 00:06:01.247 --> 00:06:03.890 仮説を全て除外していく事です 00:06:03.890 --> 00:06:06.720 そこで我々はそれから数年 00:06:06.720 --> 00:06:08.367 色々な写真を見る人々の脳を 00:06:08.367 --> 00:06:09.973 スキャンして 00:06:09.973 --> 00:06:11.930 何の顔であろうと 00:06:11.930 --> 00:06:13.880 顔の写真を見ている時は 00:06:13.880 --> 00:06:17.333 顔以外の写真の時と比べて 00:06:17.333 --> 00:06:19.246 脳のその領野が 00:06:19.246 --> 00:06:22.395 強く反応しているのが 00:06:22.395 --> 00:06:23.700 観察されました NOTE Paragraph 00:06:23.700 --> 00:06:25.939 これで我々は 00:06:25.939 --> 00:06:29.179 ここは顔認知に必要な領域だと 決定づけたのでしょうか 00:06:29.179 --> 00:06:30.502 いいえ そうではありません 00:06:30.502 --> 00:06:32.453 脳画像だけでは 特定の領野が 00:06:32.453 --> 00:06:34.893 特定の機能に必要かどうかは 分からないのです 00:06:34.893 --> 00:06:36.333 脳画像で私たちが出来る事は 00:06:36.333 --> 00:06:38.381 様々な思考で あらゆる領野のニューロンが 00:06:38.381 --> 00:06:40.349 活性・不活性化されるのを 見るだけです 00:06:40.349 --> 00:06:43.960 脳の一部がある心的機能に 必要かどうかを見るには 00:06:43.960 --> 00:06:46.469 そこを刺激して 反応を見る必要がありますが 00:06:46.469 --> 00:06:48.744 普段そういう事はできません 00:06:48.744 --> 00:06:51.328 しかし最近驚くべき機会が巡ってきて 00:06:51.328 --> 00:06:53.792 私の同僚数人が 00:06:53.792 --> 00:06:56.863 癲癇持ちのある男性を テストしました 00:06:56.863 --> 00:06:59.545 これが病院のベットに 横たわるその男性です 00:06:59.545 --> 00:07:00.912 脳の表面に 00:07:00.912 --> 00:07:02.983 癲癇の源を特定するための 00:07:02.983 --> 00:07:05.537 電極が 配置されたばかりです 00:07:05.537 --> 00:07:08.070 全く偶然に 00:07:08.070 --> 00:07:10.019 電極の二つが 00:07:10.019 --> 00:07:13.242 顔認知領域の上部に 配置されていました 00:07:13.242 --> 00:07:15.571 それで患者の同意を得て 00:07:15.571 --> 00:07:18.158 医師達は 00:07:18.158 --> 00:07:22.324 脳のその部位を電気で刺激して どうなるか彼に尋ねました 00:07:22.324 --> 00:07:23.978 患者はどこに電極が あるのか知りませんし 00:07:23.978 --> 00:07:25.362 患者はどこに電極が あるのか知りませんし 00:07:25.362 --> 00:07:27.574 顔認知領域の事など 聞いた事もありません 00:07:27.574 --> 00:07:29.565 では どうなるか見てみましょう 00:07:29.565 --> 00:07:31.534 比較用の条件から始めます 00:07:31.534 --> 00:07:33.941 殆ど見えないくらい「Sham」と 00:07:33.941 --> 00:07:35.651 左下に赤く 00:07:35.651 --> 00:07:37.933 電気が流されてない時に 出てきます 00:07:37.933 --> 00:07:41.748 神経学者が患者にまず 話しかけているが聞こえます NOTE Paragraph 00:07:41.748 --> 00:07:43.829 神経学者:「私の顔を見て下さい 00:07:43.829 --> 00:07:47.114 こうした時に 何が起きるか言って下さい 00:07:47.114 --> 00:07:48.048 いいですか?」 NOTE Paragraph 00:07:48.048 --> 00:07:50.871 患者:「OK」 NOTE Paragraph 00:07:50.871 --> 00:07:55.191 神経学者:「1、2、3」 NOTE Paragraph 00:07:55.191 --> 00:07:58.206 患者:「何も起きません」 神経学者:「何も?Ok」 NOTE Paragraph 00:07:58.206 --> 00:08:00.613 神経学者:「もう一度します 00:08:00.613 --> 00:08:03.807 私の顔を見て 00:08:03.807 --> 00:08:08.307 1、2、3」 NOTE Paragraph 00:08:08.307 --> 00:08:11.131 患者:「他の誰かになっただけです 00:08:11.131 --> 00:08:13.268 顔が変形して 00:08:13.268 --> 00:08:16.279 鼻が下がり左に行き 00:08:16.279 --> 00:08:19.815 見た事がある様な 他の人みたいになりました 00:08:19.815 --> 00:08:22.449 でも全く他の誰かです 00:08:22.449 --> 00:08:24.521 ドラッグでもやったようでした」 NOTE Paragraph 00:08:24.521 --> 00:08:27.653 (笑) NOTE Paragraph 00:08:27.653 --> 00:08:29.268 この実験が・・・ 00:08:29.268 --> 00:08:33.491 (拍手) 00:08:33.491 --> 00:08:36.173 この実験で ついに確定したことは 00:08:36.173 --> 00:08:37.998 この脳の領域は 00:08:37.998 --> 00:08:40.135 顔だけに反応するのでなく 00:08:40.135 --> 00:08:43.179 顔を認識する為に無くてはならないものだという事です 00:08:43.179 --> 00:08:45.310 こうして顔認知領域に関しての 詳細を見てきたのは 00:08:45.310 --> 00:08:47.774 脳には特定の思考過程に関与する 00:08:47.774 --> 00:08:50.113 領域がある事を確定するには 00:08:50.113 --> 00:08:53.241 どのようにする必要があるのかを お伝えする為です NOTE Paragraph 00:08:53.241 --> 00:08:55.400 次にもっと端的に 00:08:55.400 --> 00:08:58.060 今までに発見された 機能が分化した脳領域 00:08:58.060 --> 00:09:00.160 に関してお話しします 00:09:00.160 --> 00:09:02.274 この為に私は先月 00:09:02.274 --> 00:09:04.141 fMRIの中で 時間を随分費やしたので 00:09:04.141 --> 00:09:06.402 私の脳のこんなところを お見せできるのです NOTE Paragraph 00:09:06.402 --> 00:09:09.635 まず私の脳の右半球から行きます 00:09:09.635 --> 00:09:12.297 この向きから 今 私の頭をこのように見ています 00:09:12.297 --> 00:09:13.390 頭蓋骨を取り除き 00:09:13.390 --> 00:09:15.658 脳の表面を見ていると 想像してください 00:09:15.658 --> 00:09:17.416 ご覧のように 00:09:17.416 --> 00:09:18.919 脳の表面が折り畳まれていますが 00:09:18.919 --> 00:09:20.640 何か隠れているかもしれません 00:09:20.640 --> 00:09:22.074 全部見たいので 00:09:22.074 --> 00:09:25.386 膨らまして全体像を見ましょう 00:09:25.386 --> 00:09:28.215 お話ししてきたこのような写真に 00:09:28.215 --> 00:09:30.442 反応する顔領域を 探しましょう 00:09:30.442 --> 00:09:31.961 脳を回転して 00:09:31.961 --> 00:09:33.980 下部の表面下を見てみましょう 00:09:33.980 --> 00:09:36.285 ここに私の顔領域があります 00:09:36.285 --> 00:09:38.992 その右には他の領域が 00:09:38.992 --> 00:09:40.630 紫色に示してあり 00:09:40.630 --> 00:09:43.702 ここは色の情報を 処理する時 反応します 00:09:43.702 --> 00:09:46.393 その近くにはまた他の領域 00:09:46.393 --> 00:09:48.756 場所を認識することに関わる領域があります 00:09:48.756 --> 00:09:51.594 今私もこのように会場の空間レイアウトを 見ていますが 00:09:51.594 --> 00:09:53.346 ここにある緑色の領域は 00:09:53.346 --> 00:09:54.620 本当に活発です 00:09:54.620 --> 00:09:56.990 もう1つ外側に 00:09:56.990 --> 00:09:59.795 数カ所 顔認識領域があり 00:09:59.795 --> 00:10:02.140 この周辺にも 00:10:02.140 --> 00:10:03.785 選択的に視覚運動機能に 00:10:03.785 --> 00:10:05.721 関わっている領域があります 00:10:05.721 --> 00:10:07.225 この動いている 00:10:07.225 --> 00:10:09.914 下部の黄色い斑点がそうです 00:10:09.914 --> 00:10:13.082 その近くには体の各部を 00:10:13.082 --> 00:10:15.979 見る時に反応する領域があり 00:10:15.979 --> 00:10:18.724 その領域はライムグリーン色で 00:10:18.724 --> 00:10:20.727 脳の下部にあります NOTE Paragraph 00:10:20.727 --> 00:10:23.359 これまでお見せした領域は 00:10:23.359 --> 00:10:27.791 特定の視覚に関係しています 00:10:27.791 --> 00:10:29.939 また特定の機能 00:10:29.939 --> 00:10:32.752 聴覚とか他の感覚を専門とする 領域があるでしょうか? 00:10:32.752 --> 00:10:35.789 あります 脳を少し回してみると 00:10:35.789 --> 00:10:38.190 濃い青の領域があり 00:10:38.190 --> 00:10:40.536 ほんの数ヶ月前 発表したばかりです 00:10:40.536 --> 00:10:42.170 この領域は 00:10:42.170 --> 00:10:45.599 このような 音程の鮮明な音を聞くと 大きく反応します 00:10:45.599 --> 00:10:47.742 (サイレン) 00:10:47.742 --> 00:10:49.823 (チェロ音楽) 00:10:49.823 --> 00:10:51.740 (玄関の呼び鈴) 00:10:51.740 --> 00:10:55.348 それに比べ 同じ領域は こんな時は大きく反応しません 00:10:55.348 --> 00:10:56.910 普段 よく聞く音— 00:10:56.910 --> 00:10:59.272 次のように 音程が不鮮明な音を聞いた時です 00:10:59.272 --> 00:11:01.741 (咀嚼音) 00:11:01.741 --> 00:11:03.941 (ドラムの音) 00:11:03.941 --> 00:11:06.708 (トイレの水を流す音) NOTE Paragraph 00:11:06.708 --> 00:11:09.206 音程の鮮明さに反応する領域の側には 00:11:09.206 --> 00:11:11.680 こういう時だけに反応する 1つの領域帯があります 00:11:11.680 --> 00:11:14.445 話し声を聞くときです NOTE Paragraph 00:11:14.445 --> 00:11:16.285 ではこれらの領域を見てみましょう 00:11:16.285 --> 00:11:18.753 私の左半球は 同じ様になっていて 00:11:18.753 --> 00:11:20.226 全く同じではありませんが— 00:11:20.226 --> 00:11:22.435 時にはサイズの 違いはあれ 00:11:22.435 --> 00:11:24.437 領域の殆どがここにあります NOTE Paragraph 00:11:24.437 --> 00:11:26.451 これまでお見せした全ては 00:11:26.451 --> 00:11:29.477 聴覚 視覚などの様々な 認知機能を司る 00:11:29.477 --> 00:11:31.310 領域でした 00:11:31.310 --> 00:11:34.190 では 素晴らしく精巧で複雑な 思考活動のための 00:11:34.190 --> 00:11:36.405 特別な領域もあるのでしょうか 00:11:36.405 --> 00:11:37.834 はい あります 00:11:37.834 --> 00:11:41.223 このピンクの色が私の言語領域です 00:11:41.223 --> 00:11:42.651 長い間 00:11:42.651 --> 00:11:44.686 脳の全般に於いて 00:11:44.686 --> 00:11:46.879 言語プロセスは起きていると 思われてきました 00:11:46.879 --> 00:11:48.611 しかし ごく最近 00:11:48.611 --> 00:11:50.321 このピンクの領域が 00:11:50.321 --> 00:11:52.526 選択的に著しく 反応している事が分かりました 00:11:52.526 --> 00:11:55.338 センテンスの意味が分かる時 ここが反応しますが 00:11:55.338 --> 00:11:58.176 他の複雑な思考には 反応しません 00:11:58.176 --> 00:12:00.355 それは暗算をするとか 00:12:00.355 --> 00:12:02.751 情報を記憶しようとか 00:12:02.751 --> 00:12:05.406 音楽の複雑な構成を理解しようと 00:12:05.406 --> 00:12:07.690 する時などがそうです NOTE Paragraph 00:12:09.664 --> 00:12:12.553 未だに分かっていない事で 最も驚くべき領域は 00:12:12.553 --> 00:12:15.860 青緑色のこれです 00:12:15.860 --> 00:12:18.050 この領域は 00:12:18.050 --> 00:12:22.318 他の人が考えている事を 推測している時に反応します 00:12:22.318 --> 00:12:23.962 クレイジーに聞こえますが 00:12:23.962 --> 00:12:27.830 実際 我々はこんな事を 常にしています 00:12:27.830 --> 00:12:30.023 遅くなる事を電話して 伝えなければパートナーが 00:12:30.023 --> 00:12:31.654 心配するだろうと気づくとき 00:12:31.654 --> 00:12:34.161 あなたはこれをしています 00:12:34.161 --> 00:12:37.630 今 私の脳がそれをしています 00:12:37.630 --> 00:12:39.911 というのも皆さんが多分 00:12:39.911 --> 00:12:41.509 この触れてない灰色の部分は 00:12:41.509 --> 00:12:44.056 一体何をするのだろうと 考えていらっしゃる事に 00:12:44.056 --> 00:12:46.020 私は気がついているからです NOTE Paragraph 00:12:46.020 --> 00:12:47.705 私もそれについて考えていて 00:12:47.705 --> 00:12:50.100 他に特定の機能を持った 00:12:50.100 --> 00:12:52.113 領域が脳に多くあるのではないかと 00:12:52.113 --> 00:12:54.145 あらゆる実験を研究室で 00:12:54.145 --> 00:12:57.513 行っています 00:12:57.513 --> 00:13:00.134 重要な事は脳には 00:13:00.134 --> 00:13:01.698 全ての思考機能それぞれに 00:13:01.698 --> 00:13:04.444 致命的なものも含めて 特殊に特化した 00:13:04.444 --> 00:13:07.853 機能が備わっているというのでは無い と思っています NOTE Paragraph 00:13:07.853 --> 00:13:09.955 事実 数年前 00:13:09.955 --> 00:13:11.072 私の実験室に 00:13:11.072 --> 00:13:12.481 食物を見分ける 00:13:12.481 --> 00:13:14.230 領域を発見したと主張する 00:13:14.230 --> 00:13:16.142 科学者がいました 00:13:16.142 --> 00:13:18.060 人々がこのような画像を見たとき 00:13:18.060 --> 00:13:20.788 その領域はfMRIで大きく反応しました 00:13:20.788 --> 00:13:23.700 更に実験は進められ 同じ様な反応が 00:13:23.700 --> 00:13:25.639 殆ど同じ領域に12件中 00:13:25.639 --> 00:13:27.640 10件の対象について 見られました 00:13:27.640 --> 00:13:29.934 それで彼はかなり興奮して 00:13:29.934 --> 00:13:31.194 実験室を走り回り 00:13:31.194 --> 00:13:33.196 「この大発見で『Oprah』に出るぞ」と 00:13:33.196 --> 00:13:35.214 みんなに言っていましたが 00:13:35.214 --> 00:13:38.236 臨界実験を考えつき 00:13:38.236 --> 00:13:41.419 この様な食べ物の画像を被験者に見せ 00:13:41.419 --> 00:13:44.160 色も形もよく似ているけれど 食べ物ではない 00:13:44.160 --> 00:13:47.970 このような物の画像と 比べて見せたところ 00:13:47.970 --> 00:13:50.101 その領域はその両方ともに 00:13:50.101 --> 00:13:52.050 同じように反応したのです 00:13:52.050 --> 00:13:53.377 食物領域ではなかったのです 00:13:53.377 --> 00:13:56.148 色と形に反応するだけの 領域だったのです 00:13:56.148 --> 00:13:58.709 『Oprah』は諦めるしかないですね NOTE Paragraph 00:14:00.483 --> 00:14:02.708 それでも 勿論 疑問が残ります 00:14:02.708 --> 00:14:04.834 特化した脳領域が無い 00:14:04.834 --> 00:14:07.804 他の全ての事をどうやって 脳は処理するのでしょうか 00:14:07.804 --> 00:14:09.615 その答えは 00:14:09.615 --> 00:14:13.169 お話しして来た 高度に分化した構成要素に加えて 00:14:13.169 --> 00:14:16.848 あらゆる問題に対処する 00:14:16.848 --> 00:14:18.342 汎用な目的を持った 00:14:18.342 --> 00:14:20.448 領域もあります 00:14:20.448 --> 00:14:22.503 事実 00:14:22.503 --> 00:14:24.571 白い領域は 00:14:24.571 --> 00:14:27.982 どんな難しい思考活動にも— 00:14:27.982 --> 00:14:29.539 どんな難しい思考活動にも— 00:14:29.539 --> 00:14:31.096 少なくとも私達の7回の実験に於いて— 00:14:31.096 --> 00:14:32.654 反応する事が最近示されました 00:14:32.654 --> 00:14:34.823 今日お話しした脳の各領域は 00:14:34.823 --> 00:14:36.129 今日お話しした脳の各領域は 00:14:36.129 --> 00:14:38.896 健常な人の脳には 00:14:38.896 --> 00:14:40.638 ほぼ同じ箇所にあります 00:14:40.638 --> 00:14:42.261 あなた方をMRIの 00:14:42.261 --> 00:14:43.487 スキャナーに入れ 00:14:43.487 --> 00:14:45.772 脳にこれらの領域 1つ1つを探してみると 00:14:45.772 --> 00:14:47.677 この私の脳とよく似ているでしょう 00:14:47.677 --> 00:14:49.747 ただサイズや正確な位置には わずかな違いはあるでしょうが 00:14:49.747 --> 00:14:53.311 ただサイズや正確な位置には わずかな違いはあるでしょうが NOTE Paragraph 00:14:53.311 --> 00:14:55.676 この研究で私にとって重要な事は 00:14:55.676 --> 00:14:58.645 これらの領野がどこにあるかでなく 00:14:58.645 --> 00:15:01.232 我々の脳には特殊に分化した 00:15:01.232 --> 00:15:03.800 思考機能の構成分野が 初めからあったという 00:15:03.800 --> 00:15:05.448 シンプルな事実です 00:15:05.448 --> 00:15:07.459 つまり さもなければ 00:15:07.459 --> 00:15:09.900 脳は単一の汎用機能を 00:15:09.900 --> 00:15:11.395 有していただけでしょう 00:15:11.395 --> 00:15:12.867 スイスナイフというより 00:15:12.867 --> 00:15:14.550 料理用のナイフの様なものです 00:15:14.550 --> 00:15:17.661 そうではなく 脳画像が示すのは 00:15:17.661 --> 00:15:21.507 興味深い豊かなヒトの 思考活動を表しています 00:15:21.507 --> 00:15:23.970 我々の頭の中には 汎用な目的を持つ 00:15:23.970 --> 00:15:25.040 脳機能と 00:15:25.040 --> 00:15:27.397 驚くほど複雑に特化され 00:15:27.397 --> 00:15:30.832 多岐に分化した領域とが 共に存在するのです NOTE Paragraph 00:15:31.712 --> 00:15:33.865 この研究は始まったばかりで 00:15:33.865 --> 00:15:36.641 精神活動のニューロン像を 00:15:36.641 --> 00:15:39.568 描き始めたばかりに過ぎず 00:15:39.568 --> 00:15:42.650 最も根本的な疑問は そのまま残っています 00:15:42.650 --> 00:15:46.450 例えばこれらの領域は それぞれ何をしているのでしょうか? 00:15:46.450 --> 00:15:48.592 どうして3カ所も顔認知や 00:15:48.592 --> 00:15:50.057 位置認知に必要なのでしょうか? 00:15:50.057 --> 00:15:52.925 これらの働きの分担は どうなっているのでしょうか? 00:15:52.925 --> 00:15:55.618 第二に脳内部の それぞれの領域は 00:15:55.618 --> 00:15:57.330 どう関連し合っているのでしょうか? 00:15:57.330 --> 00:15:58.917 拡散画像で 00:15:58.917 --> 00:16:01.096 脳のあらゆる部分を繋ぐ 00:16:01.096 --> 00:16:03.671 ニューロンの束を辿ったり 00:16:03.671 --> 00:16:05.302 ここで示した方法で 00:16:05.302 --> 00:16:08.999 脳のニューロン個別の繫がりを 辿る事が出来 00:16:08.999 --> 00:16:11.717 こうして いつか脳全体の配線図が 00:16:11.717 --> 00:16:13.783 分かる事となるでしょう 00:16:13.783 --> 00:16:15.830 第三にこの様な体系的な構造が 00:16:15.830 --> 00:16:18.979 どうやって 00:16:18.979 --> 00:16:21.935 ヒトの成長期や人類の進化上 00:16:21.935 --> 00:16:24.747 出来上がったのかです 00:16:24.747 --> 00:16:26.647 この様な疑問に取り組むため 00:16:26.647 --> 00:16:28.430 科学者達は他の動物達の脳を 00:16:28.430 --> 00:16:30.587 スキャンして 00:16:30.587 --> 00:16:35.973 また幼児の脳もスキャンして 調べています NOTE Paragraph 00:16:36.931 --> 00:16:40.582 神経科学研究にかかる高額な 費用の必要性については 00:16:40.582 --> 00:16:43.336 アルツハイマー病や自閉症の様な 00:16:43.336 --> 00:16:46.793 脳疾患の治療の為に いつか役に立つのだ と多くの人が指摘します 00:16:46.793 --> 00:16:48.740 それはとても重要な目標です 00:16:48.740 --> 00:16:51.961 私の仕事がそう貢献できるなら どんなに嬉しいでしょう 00:16:51.961 --> 00:16:54.959 しかし 壊れた物を治す事だけが 00:16:54.959 --> 00:16:57.760 唯一 価値があるのではありません 00:16:57.760 --> 00:17:00.988 ヒトの思考と脳を理解する努力は 00:17:00.988 --> 00:17:03.806 病気を1つも 治せないとしても 00:17:03.806 --> 00:17:05.483 価値のある事です 00:17:05.483 --> 00:17:07.520 我々が本質的に誰なのかを 理解する為に 00:17:07.520 --> 00:17:10.661 ヒトの経験の根底となる 00:17:10.661 --> 00:17:12.957 根本的機能を理解する事程 00:17:12.957 --> 00:17:15.883 興奮させられる事はあるでしょうか 00:17:15.883 --> 00:17:19.332 これは科学に於ける 時代を超えた 00:17:19.332 --> 00:17:22.045 最大の探求なのです 00:17:22.045 --> 00:17:27.515 (拍手)