まず初めに 皆さんにお礼を申し上げたいと思います 皆さんのような 深い洞察力を持つ指導的な方々の前で お話できるのを大変光栄に思います 週末に時間を割いてくださったことも 実は 私は 食品の安全向上を訴えるような 人間ではありませんでした テキサス州ヒューストンで生まれ育ち ジャンクフードが大好きで グルメ志向ではありませんでした 4人兄弟の長女でしたから よく言われるように とにかくがむしゃらに上を目指すような 典型的な一番目の子どもでした 幸い それを活かして ビジネススクールに入学し 奨学金を得て 女子の首席で卒業し 食品業界のアナリストになりました 健康食品会社の重役チームが オフィスにやってくると 良い隙間産業よね なんて思ってました セレブの御用達か ヒッピー向け産業で 私たちが特に注目していた 分野ではなかったのです しばらくしてブリーフケースから オムツポーチに持ち替え 何に対しても 一生懸命な性格を生かして 5年で4人の子どもができました (笑) それまで 食品に 何が入っているかなんて あまり考えたことはありませんでした お店の棚に並んでいれば 安全なはず 何を食べるべきか 何を子どもに食べさせるべきか なんて 余計なお世話 子どもは好き嫌いが激しいし 時間も予算も限られていて 知ろうとしませんでした ところが ある日の朝食で 全てが変わりました 末の子にアレルギー反応がおきたのです その日の朝食は 正直に言うと 冷凍ワッフル、チューブ入りの青いヨーグルト スクランブルエッグでした 末の子の顔が腫れ上がってきて 食品アレルギーの反応がどんなものか 全く知らなかったので 上の子たちに向かって 「何を顔につけたの」と聞きました 上の子たちはぽかんとしたままで 私は恐ろしくなりました 急いで小児科に連れて行ったら 医師に 「この子はアレルギー反応を起こしている」 「朝食に何を食べたの」と聞かれました 「冷凍ワッフル、青色のヨーグルトと スクランブルエッグ」と答えたら 「8大アレルギー源のうちの3つね」 と言われました その医師が食品アレルギーについて まくしたてている間 「どうして子どもが食品アレルギーなんかに なるのよ」と考えていました 末の子の症状が収まり 家に帰ってから 子どもたちをお昼寝させました その時 私のアナリストとしての血が 騒ぎ出したのです 私が子どもの頃は 周りに 食品アレルギーがある人などいなかったので データを調べました 何が起きているか知りたかったのです 5年前のあの朝 私は 1997年から2002年の間に ピーナツアレルギーが 倍増していたことを知ったのです またその当時 3歳以下の子どもの 17人に1人が 食品アレルギーであることも CDC(疾病管理センター)のデータから 食品アレルギーによる入院率は 265%増加したということも 分かったのです それは母親ではなく 医師が救急外来に送った数です 私は食品アレルギーについて もっと知りたくなりました 食品アレルギーは 体が食品タンパク質を 異物とみなすことで引き起こされます それが炎症反応を起こすのです その異物を追い出すためにです そこで こんな疑問を持ちました 私たちが子どものころには無かった物が 食べ物に含まれているのではないか 分析をしようと 米国農務省に尋ねたところ 思った通り 1990年代の初めに 新しいタイプのタンパク質が 食品に添加されるようになったのです 食品業界の利益を 極限まで増大させるためにです アナリストの私にとって それは当たり前のことに思えました 株主の利益になるのですから 受託者責任として 企業がそういったタンパク質を導入するのは 当然の流れです しかし 安全性を確認するための 臨床試験は行われませんでした 米国で最も多いのは牛乳アレルギーだと CNNや ウォール・ストリート・ジャーナルは 報じています 私が知りたかったのは 牛乳の中に以前は無かったものが 入っているのか ということです 1994年の初めに 乳製品業界の利益向上のため 科学者たちは新しい 遺伝子組み換えタンパク質を開発しました そして合成成長ホルモンを開発し もっと牛乳が出るように 牛に注射しているのです ビジネスモデルとしては完璧です 名案といえるでしょう ところが この名案のせいで 牛は病気になってしまいました 卵巣嚢腫や乳腺炎 歩行障害や皮膚疾患などを引き起こしました そのため 牛に投与される 抗生物質の量も増えました 他の国の政府は 「大事をとって 乳製品にそんなものを入れてはいけない 牛乳にそんなものが入ってはいけない 安全性が確認されていないのだから」 と言ったのに対して 我々の政府はこう言いました 「危険性が確認されていないのだから いいじゃないか」 それを知った時 こう思いました 「今まで その牛乳を どれだけ子どもにあげたのかしら どれだけ 夫のシリアルに 使っていたのかしら」 カナダ、イギリス オーストラリア、日本、ニュージーランドや ヨーローッパの27カ国では 許可されなかったのに 米国では1994年に 導入されたのを知らなかったからです 次に知りたいと思ったのは それによる米国での影響です この新しい成長ホルモンの 危険性の一つとして この合成タンパク質は 乳がん、前立腺がんや大腸がんを 引き起こす可能性がある ホルモンの濃度を 上昇させることがあったからです そこで素晴らしい活動をしている リブストロング財団や アメリカがん協会などにお願いをして 米国のがん発症率を世界各国と比べてみました 米国のがん発症率は この地球上のどの国よりも高いのです アメリカがん協会によれば 移住者研究の結果 例えば あなたが日本のような国から 米国に移住した場合 がんの発症率は4倍になるのです 米国人男性の2人に1人 米国人女性の3人に1人は がんになると言われています さらに女性の8人に1人が 乳がんにかかっています その一方で分かったことは 乳がん患者の わずか 10人に1人が遺伝的なもので 10人中9人は環境的要因が 引き金になっているということです 例えて言うなら 高速道路を運転していて 事故を目撃したのに ただ見つめるだけで 原因がわからないようなものです 私は調べることにしました 他のアレルギーも 食品に添加された外来のタンパク質が 原因かどうか 牛乳増産にこの新しいタンパク質が 使われ始めてから間も無い頃 科学者たちは大豆の 遺伝子組み換えを行いました 大豆は8大アレルゲンの一つです ここでまた 大豆産業の利益のため 大豆は主に家畜を太らせるために 使われているので 科学者たちは遺伝子組み換え大豆を作り 除草剤を増やしても 耐えらるようにしたのです このビジネスモデルは アナリストとして見れば完璧なものです 除草剤がもっと売れるように 遺伝子組み換えをする 同時に その種子に 新しい性質を組み込んだことで 特許を取得するのです 種の特許も取得して 除草剤ももっと売れる ということです ここでもまた 世界中の政府は 安全性を証明するものが無いのだから 家畜や消費者に与えるのは やめておこう と言ったんです それによって誘発されるかもしれない 病気を防ぐためです ところが1996年 米国では違う決断が下されたのです 食品アレルギーについてさらに調べていくと トウモロコシアレルギーを心配する 親御さんたちの存在を知りました そこで トウモロコシに 遺伝子組み換えがされたか調べました 興味深いことに 90年代後半 トウモロコシ畑に撒かれる 殺虫剤の危険性への懸念が高まると同時に 科学者たちはトウモロコシの種のDNAに 殺虫物質を組み込むことに成功し トウモロコシが成長すると殺虫物質が 内部から放出されるようになったのです 結果として トウモロコシは環境保護庁から 殺虫剤と規定されたのです この情報がいかに受け入れがたいものだったか お判りになりますよね 「実質的同等性」という用語が 使われるようになりました これは概念的な手法で タバコ業界が使っているものです 認可を受け易くするためのものですが 臨床試験を行われていないものに対して 使われます この概念が正当化の理由として 遺伝子組み換え食品が 米国に導入されるときに使われるのです ある晩 夫と話をしている時に 私は言いました 「知らないふりはできないわ これを皆に教えたら 何と言われるか分からないけれど 教えるべきだわ」 翌朝 階下に降りてきて 4人の子どもたちに言いました 「ママがとても大変なことを 知ってしまったのは 知ってるよね 私たちの食べ物に どんなものが入っているか 他の国では入っていないものよ 特に子どもに食べさせるものには だから何とかしなければならないのよ 息子の一人が 私を見て こう言いました 「ママの仲間は何人いるの」 (笑) 「そうね あなたたち4人とパパよ」と言ったら 「もっと大きいチームを作らなきゃ」 と言われました (笑) 息子の言う通りです その当時 よく言われました 「あなたは食品版エリン・ブロコビッチね エリン・ブロコビッチに連絡したら」 私は食品版エリン・ブロコビッチに なりたいわけではありませんでした 「彼女と連絡なんて取れるわけない」 とも思っていました でも また 負けず嫌いの血が 騒ぎ出して 「やるだけやってみよう」と思いました エリン・ブロコビッチみたいな人に 分かってもらえたら 米国の現状も変えられるかもしれないと そこで全精力を注いで 本当に約2週間かけて エリン・ブロコビッチ宛に 4行のメールを書き上げました (笑) 送信はあっという間でした 彼女からの返事は あまり期待していませんでしたが 返事が来た時 彼女のような人が応援してくれていると知って 一人だって何かを変えることができる と思えるようになりました (歓声) (拍手) さらに調べていくうちに 米国の食品では使われている こういった新しい物質が 他の国では使われていないと知り オーガニック食品がいかに高額かということに 腹が立ちました 私はこのビジネスモデルについて調べました 分かったのは 国中の家族が 国中で食事をする時 私たちの税金が 化学物質を使った農作物の栽培に 使われているのです 一方で有機栽培された農作物は 合成化学物質が使用されていないという 証明をするために お金を払わなければならず お金を払って オーガニックであるという ラベルを貼るのです さらに 彼らには政府からの保障や 事業補助はありません 化学物質を使っていればあるのですが ですから コストが高くなるんです それだけではありません 弊害が及んでいるのは 有機栽培農家だけではないのです 4代目 5代目という農家の方々 私たちの食べ物を何代にもわたって 作ってきてくれた方々です 種に特許が与えられたため 新しいコストが加わったのです 使用料、ライセンス料、形質使用料を 支払わなければなりません 自分の農場に種を植えるためにですよ この事について考えた時に これらの物質を禁じている国に 製品を輸出している 米国の会社はどうしているのだろう と思いました そこで分かったんです 私が調べたところ クラフト、コカコーラ、ウォールマートなどは さすがです 他の国のお客様の要求には ちゃんと応えているのです 製品の内容を変更して製造しているのです クラフト、コカコーラ、ウォールマートは 他の国に輸出する製品には それらの物質を使わないのです これを知ったとき 何だか気が滅入りました でも 皆で考えるべきだと思ったんです 遺伝子組み換えタンパク質を使っているという 事実を踏まえ 毒性に関する危惧があるのだから 他国と比較して 米国はどのくらい 医療費に費やしているのか 知りたいと思いました 米国は地球上のどの国よりも 多額の医療費を費やしています 我々のGDPの16%は 疾病管理に使われています これは 例えば スターバックスのような会社が コーヒー豆よりも 医療費にお金を かけているということです 一人のアメリカ人として考えました これは 私たちの国際競争力にも 影響を及ぼすことだと 利益性を国際競争力に活用するより 疾病管理にお金をかけているのですから そこで思いました 規制ができるまで待たなくてもいい 法律ができるまで待たなくてもいい 先ずは 家庭で気をつけるようにすればいい 自分のコミュニティで そして自分の会社で そうすれば自分の家族の健康を守る事ができて 結果的に 私たちの経済を守る事ができます また 私が知ったことを 全て否定すれば 機能不全に陥ってしまいます そこで気付きました 完璧を求めては逆効果になることもある 進歩することが大切です 完璧さではありません 何でもできる人はいませんが 1つのことなら誰でもできるのです おむつトレーニングが たった一晩ではできないように たった1日で離乳できないように この変化は一晩のうちには起きません でも 私たち一人一人が それぞれ何か1つのことに取り組めば 大きな変化へと繋げることができるのです 皆さんにはそれぞれ違った才能や 得意なことがあるのですから それをあなたがやりたい事に利用すれば 大きな変化に繋がるかもしれません あなたの家族の健康のために あなたの会社を健康に保つために 私たちの国を健康に保つために 結局 私たちがこの国のためにできることは 今できることをする ということなんです 皆さん ありがとう (歓声)(拍手) ホスト:あなたにとって 満場の拍手は いつものことかもしれませんが ここでは なかなか無いことです 素晴らしい話を ありがとう