WEBVTT 00:00:13.183 --> 00:00:15.149 (ビデオ)司会:10秒 00:00:18.581 --> 00:00:22.777 5、4、3、2、1 00:00:22.797 --> 00:00:24.138 首位です 00:00:24.476 --> 00:00:28.217 プラス1、2、3、4、5 00:00:28.217 --> 00:00:33.383 6、7、8、9、10 00:00:37.009 --> 00:00:39.110 ギヨーム・ネリー、フランス 00:00:39.601 --> 00:00:43.073 コンスタント・ウェイト、123メートル 00:00:43.073 --> 00:00:45.054 3分25秒 00:00:45.054 --> 00:00:48.279 記録更新に挑戦 00:01:19.053 --> 00:01:20.347 70メートル 00:01:31.331 --> 00:01:36.220 [123メートル] 00:02:24.394 --> 00:02:26.530 (ビデオ)審判:ホワイトカード ギヨーム・ネリー! 仏新記録です! 00:02:27.075 --> 00:02:28.387 ギヨーム・ネリー:ありがとうございます 00:02:28.387 --> 00:02:32.039 (拍手) 00:02:32.039 --> 00:02:34.523 暖かい拍手をありがとうございます 00:02:34.523 --> 00:02:37.976 今 見ていただいたのは 00:02:37.976 --> 00:02:39.999 2つの吸気の間の旅です 00:02:41.331 --> 00:02:43.796 2つの吸気の間に出かけた旅ー 00:02:43.796 --> 00:02:45.770 2つの吸気の間に出かけた旅ー 00:02:45.770 --> 00:02:47.756 出発の直前の呼吸 00:02:48.058 --> 00:02:50.887 そして水面に戻った後の 最初の息の間 00:02:51.402 --> 00:02:52.888 このダイブは 00:02:53.138 --> 00:02:55.934 人間の可能性の限界に迫る旅 00:02:55.934 --> 00:02:57.572 未知への旅です 00:02:58.202 --> 00:03:01.391 そして同時に 何より 心の内面への旅でもあります 00:03:01.951 --> 00:03:03.768 そこでは心理的にも身体的にも 00:03:03.768 --> 00:03:06.805 あらゆることが起こります 00:03:06.805 --> 00:03:08.638 今日は皆さんを 00:03:08.638 --> 00:03:11.704 この旅へとお連れしようと思います 00:03:11.974 --> 00:03:14.359 まず最後の息を吸い込み 00:03:31.495 --> 00:03:33.305 このように 直前の吸気は 00:03:33.565 --> 00:03:35.775 ゆっくりと 深く 力強いものです 00:03:35.775 --> 00:03:37.257 そしてそれは「カープ(鯉)」という 特殊な技術で終わります 00:03:37.257 --> 00:03:39.369 そしてそれは「カープ(鯉)」という 特殊な技術で終わります 00:03:39.369 --> 00:03:41.386 こうして僕は1〜2リットルの 00:03:41.936 --> 00:03:43.403 空気を肺に余分に 00:03:44.243 --> 00:03:46.921 肺に詰め込むことができるのです 00:03:46.921 --> 00:03:49.579 水面から離れるとき 00:03:50.989 --> 00:03:52.457 僕の肺にはおよそ10リットルの 空気が入っています 00:03:52.457 --> 00:03:54.525 水に潜り始めた瞬間 00:03:54.525 --> 00:03:55.825 まず最初のメカニズムが働きます 00:03:55.885 --> 00:03:57.785 ダイビングリフレックスです 00:03:57.885 --> 00:04:00.300 これによってまず 00:04:00.610 --> 00:04:03.273 心拍数が急降下します 00:04:03.273 --> 00:04:05.802 毎分60〜70拍から 00:04:05.802 --> 00:04:08.412 30〜40拍まで減少します 00:04:08.412 --> 00:04:11.525 それが数秒のうちにー ほぼ瞬時に起こります 00:04:11.525 --> 00:04:13.447 次に起こるのが 末梢血管収縮です 00:04:13.447 --> 00:04:15.449 これは言わば血流が 00:04:15.719 --> 00:04:18.813 体の末端を離れ 00:04:19.570 --> 00:04:22.991 最も重要な役割を果たす 肺、心臓、脳といった臓器へ 00:04:23.941 --> 00:04:27.080 集まるということです 00:04:27.510 --> 00:04:28.754 このメカニズムは 生得的なもので 00:04:28.754 --> 00:04:30.250 自然に起こります 00:04:30.250 --> 00:04:31.546 もしあなたが水に潜るのが たとえ初めてだとしても 00:04:31.546 --> 00:04:33.899 これと同じメカニズムが働きます 00:04:33.899 --> 00:04:37.736 人間は皆この特性を備えています 00:04:37.736 --> 00:04:39.436 驚異的ですが 00:04:39.436 --> 00:04:44.188 この同じメカニズムは 海洋哺乳類にも備わっているのです 00:04:44.188 --> 00:04:47.834 あらゆる海洋哺乳類ー イルカ、クジラ、アシカ等々 00:04:47.834 --> 00:04:50.428 これらの生物が深海へ 息をこらえて潜るとき 00:04:50.428 --> 00:04:52.130 このメカニズムが働き 00:04:52.630 --> 00:04:54.232 しかしもっと強力に 00:04:54.232 --> 00:04:56.066 もちろんずっと効率的に働きます 00:04:58.286 --> 00:04:59.617 実に凄いことです 00:04:59.617 --> 00:05:00.932 水面を離れると直ぐに 00:05:00.932 --> 00:05:02.882 自然の力のおかげで 00:05:02.882 --> 00:05:05.165 安心して深みへ 潜ることが出来ます 00:05:06.203 --> 00:05:09.388 青い海を潜って行くと 00:05:09.388 --> 00:05:12.573 水圧はゆっくりと 僕の肺を圧迫して行き 00:05:12.573 --> 00:05:14.622 僕は肺の中の空気で浮いているため 00:05:14.622 --> 00:05:16.041 僕は肺の中の空気で浮いているため 00:05:16.041 --> 00:05:18.669 僕は更に降下して行き 肺への圧力は強くなります 00:05:18.669 --> 00:05:21.997 空気の容積が減ると 僕の体は下降し易くなり 00:05:21.997 --> 00:05:23.234 35〜40メートル潜った時 00:05:23.234 --> 00:05:24.983 35〜40メートル潜った時 00:05:25.283 --> 00:05:27.974 もう意識して泳ぐ必要もありません 00:05:28.614 --> 00:05:30.825 僕の体は十分に重く 密で 00:05:30.825 --> 00:05:33.585 自由に深部まで 下降して行ける 00:05:33.585 --> 00:05:36.301 フリーフォールと呼ばれる 状態に入ります 00:05:36.311 --> 00:05:39.387 フリーフォールはダイビングの 最も素晴らしい場面です 00:05:39.387 --> 00:05:41.352 この為に僕は潜り続けます 00:05:41.352 --> 00:05:44.824 何もしなくても 00:05:45.830 --> 00:05:47.551 海底へ引き寄せられる感覚の為に 00:05:47.551 --> 00:05:51.666 指先一つ動かさずに35メートルから 123メートルまで潜ることが出来 00:05:51.666 --> 00:05:55.374 僕は海底へと引き寄せられるまま 水中を飛んでいるような感じがします 00:05:55.374 --> 00:05:57.242 これは信じられないような感覚です 00:05:57.242 --> 00:05:59.204 特別な自由の感覚 00:05:59.220 --> 00:06:02.238 僕はゆっくりと海底へ 滑るように潜り続けます 00:06:02.238 --> 00:06:03.715 40メートル、 00:06:03.715 --> 00:06:05.036 50メートル、 00:06:05.036 --> 00:06:08.523 そして50〜60メートルの間に 2番目の身体的変化が訪れます 00:06:10.003 --> 00:06:12.413 僕の肺の体積は「残気量」に達し 00:06:12.413 --> 00:06:14.489 理論的にそれ以上 00:06:14.489 --> 00:06:17.533 肺を圧縮するべきではありません 00:06:17.533 --> 00:06:20.830 この2番目の現象は ブラッドシフト現象と呼ばれます 00:06:20.940 --> 00:06:23.273 フランス語では肺隆起と呼ばれますが 00:06:24.483 --> 00:06:27.179 僕は「ブラッドシフト」の方が好きなので 00:06:27.179 --> 00:06:28.941 「ル・ブラッドシフト」 と呼んでいます 00:06:28.941 --> 00:06:30.501 それはどう作用するのでしょう? 00:06:30.501 --> 00:06:34.728 肺の毛細血管が吸引により充血し 00:06:34.728 --> 00:06:35.912 肺の毛細血管が吸引により充血し 00:06:35.912 --> 00:06:37.608 肺が硬くなり 00:06:37.608 --> 00:06:40.368 胸腔全体が潰れてしまうのを防ぎ 00:06:40.368 --> 00:06:44.249 肺の2つの壁が潰れたり 00:06:44.259 --> 00:06:46.467 張り付いたり 無気肺になったりするのを 防ぎます 00:06:46.467 --> 00:06:48.182 海洋哺乳類と同じように 00:06:48.182 --> 00:06:50.533 備わっているこの生理現象のお陰で 00:06:50.533 --> 00:06:52.013 僕は潜水を続けられます 00:06:52.013 --> 00:06:53.059 60メートル、 00:06:53.059 --> 00:06:54.026 70メートル、 00:06:54.026 --> 00:06:55.987 水圧が僕の体を圧迫し続けるため 00:06:55.987 --> 00:06:58.496 速度を増して降下し続けます 00:06:58.496 --> 00:07:00.473 80メートルを超えると 00:07:00.473 --> 00:07:02.559 水圧は更に強まり 00:07:02.559 --> 00:07:04.849 それを体に感じ始め 00:07:04.849 --> 00:07:06.500 僕は本当に息苦しさを感じ始めます 00:07:06.580 --> 00:07:07.968 ご覧のようにー あまり美しくはありません 00:07:07.968 --> 00:07:09.085 ご覧のようにー あまり美しくはありません 00:07:09.085 --> 00:07:11.240 横隔膜は完全に陥没し 00:07:11.330 --> 00:07:13.625 胸郭は内側に絞られ 00:07:14.145 --> 00:07:16.650 精神的にも色々と起こっていて 00:07:16.830 --> 00:07:18.474 こう思うかも知れません 「あまり気持ちが良くないな 00:07:19.404 --> 00:07:20.918 どうしよう?」 00:07:21.448 --> 00:07:23.123 地上での反射だけだとー 00:07:23.123 --> 00:07:24.971 何か地上で障害に出会うと どうしますか? 00:07:24.971 --> 00:07:26.661 何か避けたい事態がある時には? 00:07:26.751 --> 00:07:28.883 抗い 戦い 抵抗したくなります 00:07:28.883 --> 00:07:30.073 抗い 戦い 抵抗したくなります 00:07:30.393 --> 00:07:31.528 水中ではそうは行きません 00:07:31.528 --> 00:07:32.610 もしこれを水中で行おうとすると 00:07:32.610 --> 00:07:33.861 肺は裂け 00:07:33.861 --> 00:07:35.839 血を吐き 浮腫が生じ 00:07:35.839 --> 00:07:38.079 ダイビングが暫く 出来なくなるかも知れません 00:07:38.959 --> 00:07:41.972 だから自分にこう言い聞かせるのです 00:07:42.582 --> 00:07:43.526 自然の力は強大だ 00:07:43.526 --> 00:07:44.974 水は自分よりもずっと強いのだ 00:07:44.974 --> 00:07:47.817 そして水が自分を呑むままにさせるのです 00:07:47.817 --> 00:07:49.652 水圧を受け入れ 00:07:49.652 --> 00:07:50.732 なされるがままにします 00:07:51.262 --> 00:07:53.329 その瞬間 僕は自分の体に この情報を与え 00:07:53.649 --> 00:07:55.472 肺は 緊張を解きます 00:07:55.872 --> 00:07:57.230 僕はコントロールを全て手放し 00:07:57.760 --> 00:07:59.228 完全にリラックスします 00:07:59.228 --> 00:08:01.867 水圧は僕を圧倒し始めますが 全く不快ではありません 00:08:02.577 --> 00:08:04.537 僕は自分が 繭であるかのようにさえ感じ 00:08:04.537 --> 00:08:05.775 守られ 00:08:06.035 --> 00:08:08.567 ダイブは続きます 00:08:08.567 --> 00:08:09.450 80メートル、 00:08:09.450 --> 00:08:10.232 85メートル、 00:08:10.232 --> 00:08:11.124 90メートル、 00:08:11.124 --> 00:08:12.456 100メートル 00:08:12.716 --> 00:08:15.149 100メートル これは神秘的な数字です 00:08:15.939 --> 00:08:17.735 あらゆる競技において これは神秘の数字です 00:08:17.735 --> 00:08:20.056 水泳、体操ーダイビングでも同じ 00:08:20.056 --> 00:08:22.167 フリーダイバー達にとって 夢の数字です 00:08:22.167 --> 00:08:25.070 皆 いつか 水深100メートルに 到達したいと夢見ているのです 00:08:25.830 --> 00:08:27.374 この数字は僕たちにとって 象徴的です 00:08:27.374 --> 00:08:29.103 何故なら1970年代に 医師と生理学者たちは 00:08:29.103 --> 00:08:30.283 何故なら1970年代に 医師と生理学者たちは 00:08:30.283 --> 00:08:31.472 人間の身体が耐え得る 水深の限界は 00:08:31.472 --> 00:08:32.602 人間の身体が耐え得る 水深の限界は 00:08:32.602 --> 00:08:36.734 100メートルだろう という結論に達したからです 00:08:36.813 --> 00:08:39.277 それ以上の深さでは 身体は内破してしまうと 00:08:39.327 --> 00:08:41.866 そしてフランス人の ジャック・マイヨール 00:08:41.866 --> 00:08:42.813 皆さんも知っている映画 『グラン・ブルー』の主人公の 00:08:42.813 --> 00:08:43.953 皆さんも知っている映画 『グラン・ブルー』の主人公の 00:08:43.953 --> 00:08:45.115 彼が現れ 00:08:45.755 --> 00:08:47.556 水深100メートルまで潜水しました 00:08:47.556 --> 00:08:49.357 さらに105メートルまで 00:08:49.357 --> 00:08:50.519 当時 彼の種目は「ノーリミット」でした 00:08:50.519 --> 00:08:53.053 より速く潜水するため 重りをつけ 00:08:53.053 --> 00:08:55.203 バルーンを使い浮上しました 映画にある通りです 00:08:55.203 --> 00:08:56.518 今日 ノーリミットなら 00:08:56.518 --> 00:08:57.575 200メートル潜れます 00:08:57.575 --> 00:09:00.655 僕は123メートルまで 筋肉の力だけで行けます 00:09:01.055 --> 00:09:02.535 そして全ては少し彼のお陰でー 00:09:02.755 --> 00:09:04.453 何故なら彼は既知の 受け入れられていた概念を 00:09:04.453 --> 00:09:06.520 腕の一振りで 00:09:07.160 --> 00:09:09.134 理論的に信じられていたことを 00:09:09.134 --> 00:09:12.489 人が精神的に課した限界を 払い除けたのですから 00:09:12.489 --> 00:09:15.788 彼は人体の適応力には 限界が無いことを見せてくれたのです 00:09:16.288 --> 00:09:17.525 だから僕はダイブを続けます 00:09:17.715 --> 00:09:18.411 105 00:09:18.411 --> 00:09:19.202 110 00:09:19.202 --> 00:09:20.025 115 00:09:20.025 --> 00:09:21.141 海底が近づいてきます 00:09:21.791 --> 00:09:23.169 120メートル 00:09:23.359 --> 00:09:25.857 123メートル 海底へ到着します 00:09:25.857 --> 00:09:27.852 さあ みなさんに少し ご協力頂きましょう 00:09:27.852 --> 00:09:29.062 僕になったと想像して 00:09:29.562 --> 00:09:30.685 目を閉じてください 00:09:31.505 --> 00:09:34.527 そして123メートルの水深に 到達したと想像してください 00:09:36.367 --> 00:09:39.044 水面がとても、とても遠く 00:09:39.634 --> 00:09:40.650 あなたはたった一人です 00:09:42.690 --> 00:09:44.447 ほとんど光は届かず 00:09:45.347 --> 00:09:46.408 水は冷たく 00:09:46.648 --> 00:09:47.671 凍えるほどの冷たさです 00:09:48.201 --> 00:09:49.838 水圧はあなたを 完全に押しつぶします 00:09:49.838 --> 00:09:51.780 水面の13倍の圧力です 00:09:53.040 --> 00:09:54.973 皆さんはこう考えているでしょう 00:09:54.973 --> 00:09:56.352 「恐ろしい!」 00:09:57.162 --> 00:09:58.570 「何故こんな目にあっているんだろう?」 00:09:59.110 --> 00:10:00.603 「彼は完全にアホだ」 00:10:01.453 --> 00:10:02.076 でも違います 00:10:03.016 --> 00:10:04.591 僕が潜って思うのは そういう事ではなく 00:10:05.201 --> 00:10:06.777 僕は海底に着くと いい気分になります 00:10:06.777 --> 00:10:09.309 素晴らしく 満ち足りた気持ちになります 00:10:09.309 --> 00:10:12.101 多分それはあらゆる緊張を解き 00:10:12.101 --> 00:10:13.315 自由になったからでしょう 00:10:13.785 --> 00:10:17.290 気分は良く 呼吸の欲求も全くありません 00:10:19.930 --> 00:10:24.457 でも確かに不安な状況です 00:10:24.777 --> 00:10:26.597 僕は自分が小さな点のように感じます 00:10:26.597 --> 00:10:28.618 水の中の一滴 海の中に漂っています 00:10:29.018 --> 00:10:30.090 毎回僕は同じイメージを 思い浮かべます 00:10:30.290 --> 00:10:32.136 毎回僕は同じイメージを 思い浮かべます 00:10:32.786 --> 00:10:34.450 "Pale Blue Dot" です 00:10:34.450 --> 00:10:35.312 この画像をご存知でしょうか 00:10:36.032 --> 00:10:38.472 この "Pale Blue Dot" 小さな薄水色の点 00:10:38.572 --> 00:10:40.925 この矢印が指している 小さな点 00:10:40.925 --> 00:10:42.635 これが何か分かりますか? 00:10:43.945 --> 00:10:45.359 これは地球です 00:10:45.709 --> 00:10:48.171 無人惑星探査機ボイジャーが捉えた 00:10:48.171 --> 00:10:51.962 40億キロメートル先からの画像です 00:10:52.402 --> 00:10:55.759 それは私たちの惑星が 00:10:55.759 --> 00:10:58.049 何もない空間に浮かぶ 小さな点だということを見せてくれます 00:10:58.049 --> 00:11:01.001 これが僕が123メートルの 水深に潜って感じることです 00:11:01.001 --> 00:11:02.108 これが僕が123メートルの 水深に潜って感じることです 00:11:02.108 --> 00:11:04.025 自分が小さな点で 00:11:04.025 --> 00:11:06.681 埃の点 星屑で 00:11:06.681 --> 00:11:10.109 銀河の真っ只中に浮かび 無の中に 00:11:10.109 --> 00:11:11.442 広大さの中にいます 00:11:11.442 --> 00:11:12.919 これは素晴らしい感覚です 00:11:12.919 --> 00:11:17.318 周りを360度見回しても 00:11:17.318 --> 00:11:18.441 周りを360度見回しても 00:11:18.441 --> 00:11:20.307 深い青が永遠に続いています 00:11:20.307 --> 00:11:23.026 地上のどこを見回しても 同じ感覚は得られないでしょう 00:11:23.026 --> 00:11:26.992 周りを見回して 全く同じ景色に囲まれるということ 00:11:26.992 --> 00:11:28.604 素晴らしい感覚です 00:11:28.984 --> 00:11:30.034 その瞬間 00:11:30.034 --> 00:11:32.642 毎回同じ感覚が 00:11:32.642 --> 00:11:34.617 こみ上げてきます 00:11:34.627 --> 00:11:37.786 謙虚さを感じるのです 00:11:38.966 --> 00:11:40.323 この写真を見る時 00:11:40.323 --> 00:11:43.167 謙虚な気持ちを覚えます 00:11:43.167 --> 00:11:44.331 (笑) 00:11:44.331 --> 00:11:46.337 そしてこのように深海にいる時も 00:11:46.337 --> 00:11:48.066 僕は無だからです 00:11:48.066 --> 00:11:49.707 僕は小さな無の塵で 00:11:49.707 --> 00:11:51.283 この広大な空間に漂っています 00:11:51.953 --> 00:11:54.746 それでも 完全に魅惑的な体験です 00:11:54.746 --> 00:11:56.894 そこは僕の世界ではないので 00:11:56.894 --> 00:11:58.144 やがて水面へと出発します 00:11:59.014 --> 00:12:00.990 僕の世界は遥か上の方で 水面のところです 00:12:00.990 --> 00:12:02.887 浮上を始めます 00:12:04.647 --> 00:12:08.489 浮上を始めようと思った瞬間 00:12:08.749 --> 00:12:11.602 大きなショックを感じます 00:12:11.602 --> 00:12:14.160 まず 海底から自分を引き離すのに 00:12:14.160 --> 00:12:15.316 とてつも無い力が要ります 00:12:15.316 --> 00:12:17.093 海底は降下の際に僕の体を 引き寄せました 00:12:17.093 --> 00:12:19.195 浮上したい時も同じく 引力があるのです 00:12:19.195 --> 00:12:20.961 だから2倍の力で泳がなければなりません 00:12:23.067 --> 00:12:24.814 それから次の現象が起こります 00:12:24.814 --> 00:12:25.995 昏睡です 00:12:26.215 --> 00:12:27.529 この症状はご存知でしょうか 窒素中毒というものです 00:12:27.529 --> 00:12:29.514 深海中毒とも呼ばれ 00:12:29.924 --> 00:12:32.112 これはスキューバダイバー達だけでなく 00:12:32.112 --> 00:12:34.200 素潜り時にも起こり得ます 00:12:34.660 --> 00:12:37.130 これは血中の窒素が 00:12:37.850 --> 00:12:40.174 意識の混濁を 00:12:40.174 --> 00:12:42.821 招いてしまうものです 00:12:43.211 --> 00:12:44.495 色々な考えが意識を 00:12:44.495 --> 00:12:47.615 右へ左へ くるくるとよぎります 00:12:47.665 --> 00:12:48.910 もうコントロールはできません 00:12:49.450 --> 00:12:52.458 ドラッグの効果と少し似ているようです 00:12:52.458 --> 00:12:54.612 僕は一度も試したことはありませんが もしみなさんが… 00:12:54.612 --> 00:12:56.112 いや そんなバカなことはしないですよね! 00:12:56.232 --> 00:12:59.126 とにかく これはドラッグの効果と 似ているようなんです 00:13:00.536 --> 00:13:02.333 コントロールしようとも 思わない方がいい 00:13:02.333 --> 00:13:03.854 身を任せます 00:13:03.854 --> 00:13:04.709 何も制御できないのです 00:13:04.709 --> 00:13:07.105 そうしようと すればする程 動くのが難しくなります 00:13:07.865 --> 00:13:09.382 それから3番目の現象が起こり 00:13:09.382 --> 00:13:10.512 呼吸がしたくなります 00:13:10.512 --> 00:13:11.958 僕は半魚人ではない ただの人間だと 00:13:11.958 --> 00:13:15.709 この呼吸の欲求が そう思い出させます 00:13:16.279 --> 00:13:18.243 そうして水深 60メートルか70メートル辺りで 00:13:20.073 --> 00:13:21.803 呼吸への欲求が現れます 00:13:22.503 --> 00:13:25.502 こうしてあらゆることが起こり 00:13:25.532 --> 00:13:29.209 とても簡単にバランスを失い 00:13:29.459 --> 00:13:31.272 パニックに陥りやすくなります 00:13:32.482 --> 00:13:34.143 その瞬間 こう頭をよぎります 00:13:34.143 --> 00:13:37.062 「水面はどこだ?たった今 水面に出て 呼吸がしたい」 00:13:37.062 --> 00:13:38.408 でもそうしてはいけません 00:13:38.408 --> 00:13:40.680 水面を見上げても 00:13:40.680 --> 00:13:41.503 水面を見上げても 00:13:41.503 --> 00:13:42.943 探そうと思ってもいけません 00:13:43.449 --> 00:13:46.150 気持ちを水面に持って行っては 絶対にいけないのです 00:13:46.150 --> 00:13:48.108 今という瞬間に留まるのです 00:13:48.108 --> 00:13:50.173 僕は目の前のロープを見ます 00:13:50.173 --> 00:13:52.796 そのロープは水面へと 連れて行ってくれるもので 00:13:53.246 --> 00:13:54.713 僕は引き続き その時 その瞬間に集中します 00:13:54.713 --> 00:13:55.880 僕は引き続き その時 その瞬間に集中します 00:13:55.880 --> 00:13:58.046 もし水面のことを考えると パニックに陥るでしょう 00:13:58.046 --> 00:13:58.796 パニックになれば 一巻の終わりです 00:13:58.796 --> 00:14:00.618 パニックになれば 一巻の終わりです 00:14:01.512 --> 00:14:03.710 突然 時が速まり 00:14:03.710 --> 00:14:05.890 30メートルに達すると ついに救出の時です 00:14:05.890 --> 00:14:06.892 もう一人ではありません 00:14:06.892 --> 00:14:09.676 救出チーム 僕の守護天使たちが 00:14:09.690 --> 00:14:10.851 助けに来ます 00:14:10.851 --> 00:14:11.890 水上から 00:14:11.890 --> 00:14:13.171 彼らは水深30メートルの ところまで僕を迎えに来て 00:14:13.171 --> 00:14:14.892 残りをエスコートしてくれます 00:14:14.892 --> 00:14:17.808 そこでも問題が起こる可能性はあります 00:14:18.498 --> 00:14:20.583 僕は彼らを見る度 こう感じます 00:14:21.673 --> 00:14:23.101 「皆のおかげだよ」 00:14:23.101 --> 00:14:24.694 僕がそこに戻れるのも 皆のおかげです 00:14:24.694 --> 00:14:25.494 僕がそこに戻れるのも 皆のおかげです 00:14:25.494 --> 00:14:27.305 2度目に謙虚さを覚えるときです 00:14:28.475 --> 00:14:30.140 僕を助けてくれる皆ー 彼らがいなくては 00:14:30.140 --> 00:14:31.898 僕を助けてくれる皆ー 彼らがいなくては 00:14:31.898 --> 00:14:33.958 海底への旅は不可能でしょう 00:14:33.958 --> 00:14:36.177 海底への旅はチームの 努力によるものなのです 00:14:36.177 --> 00:14:37.639 海底への旅はチームの 努力によるものなのです 00:14:38.169 --> 00:14:40.458 だからこの旅を彼らと共に 終えるのを幸せだと思います 00:14:40.458 --> 00:14:42.229 彼らのおかげで 僕は戻って来れるのだから 00:14:42.929 --> 00:14:43.982 20メートル、10メートル 00:14:43.982 --> 00:14:44.775 20メートル、10メートル 00:14:44.775 --> 00:14:46.410 僕の肺はゆっくりと通常のサイズに戻り 00:14:46.410 --> 00:14:48.376 浮力で水面へと体が上昇します 00:14:49.146 --> 00:14:51.160 水面まで5メートルというところで 息を吐き始めます 00:14:51.160 --> 00:14:55.224 水面に出た途端に息を吸えるように 00:14:56.874 --> 00:14:58.790 そして水面に到達します 00:15:05.732 --> 00:15:07.541 空気が肺に流れ込みます 00:15:07.721 --> 00:15:09.093 まるで復活の体験です 00:15:09.093 --> 00:15:10.556 そして救出 00:15:10.976 --> 00:15:12.446 ええ とてもいい気分です 00:15:12.446 --> 00:15:13.332 この旅は並外れています 00:15:13.332 --> 00:15:16.253 僕は酸素が肺を満たし 00:15:16.253 --> 00:15:18.132 身体に活力を与えるのを 感じなければ 00:15:18.452 --> 00:15:20.290 素晴らしい気分です しかし時に 00:15:20.290 --> 00:15:21.869 これはトラウマティックです 00:15:22.139 --> 00:15:23.612 身体にとって これは衝撃なのです 00:15:23.612 --> 00:15:24.686 暗闇から陽の光の元へと行く 想像してみてください 00:15:24.686 --> 00:15:26.912 暗闇から陽の光の元へと行く 想像してみてください 00:15:27.512 --> 00:15:31.552 ほぼ無音の静寂から 喧騒へと 00:15:32.352 --> 00:15:35.279 感触については なめらかなベルベットのような 00:15:35.279 --> 00:15:39.121 柔らかい水の肌触りが 顔にぶつかる空気のそれに変わり 00:15:39.481 --> 00:15:42.673 味や匂いについては 00:15:42.673 --> 00:15:44.883 空気が肺へと流れ込んで来ます 00:15:45.053 --> 00:15:46.918 そして肺は膨らみます 00:15:47.278 --> 00:15:49.671 90秒前には完全に凹んでいたのに 00:15:49.671 --> 00:15:51.290 また広がります 00:15:51.860 --> 00:15:55.220 このように様々な影響があります 00:15:55.390 --> 00:15:57.511 僕は自分自身を現在に 00:15:57.971 --> 00:15:59.439 取り戻すのに数秒かかります 00:15:59.719 --> 00:16:01.201 でも急がなければなりません 00:16:01.201 --> 00:16:02.671 審判が見ていて 00:16:02.671 --> 00:16:04.287 僕のパフォーマンスを審査しているのです 00:16:04.413 --> 00:16:06.616 自分の身体が良いコンディションだと 証明しなければいけません 00:16:06.956 --> 00:16:09.489 エグジット・プロトコルというものです 00:16:09.489 --> 00:16:13.608 水から出ると15秒以内に ノーズ・クリップを外し 00:16:14.648 --> 00:16:15.648 手でサインを送り 00:16:15.978 --> 00:16:17.333 こう言います(英語で)「アイム OK」 00:16:17.893 --> 00:16:19.475 バイリンガルである事も 要求されます 00:16:19.475 --> 00:16:20.997 (笑) 00:16:20.997 --> 00:16:22.260 この後にやらされるのは 00:16:22.260 --> 00:16:23.191 ちょっとね 00:16:25.136 --> 00:16:26.735 プロトコルが終わると 00:16:26.735 --> 00:16:28.256 審判からホワイトカードをもらい 00:16:28.256 --> 00:16:29.856 そこで喜びが爆発します 00:16:30.336 --> 00:16:31.654 やっとついに素潜りの 00:16:31.654 --> 00:16:33.525 成功を喜べます 00:16:34.255 --> 00:16:36.257 今皆さんにお話しした旅は 00:16:36.257 --> 00:16:39.520 フリーダイビングの極端な例ですが 00:16:40.210 --> 00:16:42.050 フリーダイビングはそれだけではありません 00:16:42.210 --> 00:16:44.867 フリーダイビングはそれだけではありません 00:16:44.947 --> 00:16:48.542 3年前から 僕はフリーダイビングの もう一つの面を紹介して来ました 00:16:48.542 --> 00:16:50.026 メディアではその 00:16:50.026 --> 00:16:51.896 競技性や記録のことしか 語られません 00:16:51.896 --> 00:16:53.516 でもフリーダイビングは 00:16:53.516 --> 00:16:54.706 その他に 00:16:54.706 --> 00:16:55.614 その他に 00:16:55.614 --> 00:16:57.385 水中で自由に過ごすことでもあります 00:16:57.385 --> 00:16:58.999 それは極めて美しく 詩的で芸術的な体験です 00:16:58.999 --> 00:17:00.024 僕と妻はそれを映像に 残そうと思いました 00:17:00.024 --> 00:17:02.816 この もう一つの面をお見せして 00:17:04.036 --> 00:17:06.189 皆さんにも海に潜ってもらいたいのです 00:17:06.669 --> 00:17:08.404 これから映像を少しお見せして 00:17:08.404 --> 00:17:11.134 お話を締めくくりましょう 00:17:12.444 --> 00:17:14.953 水中の美しい映像のパッチワークです 00:17:15.843 --> 00:17:17.281 みなさんが 00:17:17.571 --> 00:17:19.592 いつの日か 試しに 00:17:19.821 --> 00:17:20.824 息を止めてみると 00:17:21.134 --> 00:17:22.709 思考も止まることに 00:17:23.299 --> 00:17:25.571 気づくでしょう 00:17:25.571 --> 00:17:27.554 精神の平穏が訪れます 00:17:28.704 --> 00:17:31.534 21世紀 我々の心は 大変なプレッシャーに 晒されています 00:17:31.694 --> 00:17:34.261 常に酷使され 1時間1万マイルの勢いです 00:17:34.261 --> 00:17:36.535 我々は常にストレスを感じています 00:17:36.535 --> 00:17:37.772 フリーダイビングは 00:17:37.772 --> 00:17:40.146 心を一瞬でも 00:17:40.146 --> 00:17:41.527 リラックスさせてくれます 00:17:42.497 --> 00:17:43.976 水中で息を止めると 00:17:43.976 --> 00:17:47.524 重力を味わうことができます 00:17:48.374 --> 00:17:50.500 水中で浮き 00:17:51.420 --> 00:17:53.652 体を完全に解放し 00:17:54.092 --> 00:17:55.316 緊張を完全に解きます 00:17:55.316 --> 00:17:57.637 これが私たちの21世紀の窮状なのです 00:17:57.637 --> 00:17:58.575 背中に 肩に あちこちが痛みます 00:17:58.575 --> 00:17:59.836 常にストレスを感じ 00:17:59.836 --> 00:18:01.331 緊張しているからです 00:18:01.331 --> 00:18:03.309 でも水中では 体が 浮かぶままに任せます 00:18:03.309 --> 00:18:04.572 宇宙空間にいるかのように 00:18:05.852 --> 00:18:07.970 完全に身を任せ 00:18:07.970 --> 00:18:08.771 その感覚は素晴らしいものです 00:18:08.771 --> 00:18:10.551 ついには 自分の身体、心 00:18:10.551 --> 00:18:14.695 精神と向き合います 00:18:15.305 --> 00:18:17.053 全てが穏やかになります 00:18:18.723 --> 00:18:20.850 フリーダイビングを学ぶのは 00:18:20.850 --> 00:18:22.626 正しい呼吸法を学ぶことでもあります 00:18:23.766 --> 00:18:27.850 私たちは産まれる時呼吸を始め 最後の呼吸までそれは続きます 00:18:28.290 --> 00:18:31.247 呼吸は人生のリズムなのです 00:18:31.767 --> 00:18:33.793 より良く呼吸することを学ぶのは より良く生きることを学ぶことです 00:18:35.523 --> 00:18:38.645 水中で息を止め 100メートルまでとは言わず 00:18:38.795 --> 00:18:40.364 2〜3メートル ゴーグルとフィンを つけて潜ってみてください 00:18:40.364 --> 00:18:41.566 手のひらを合わせて 00:18:41.566 --> 00:18:43.685 別世界を見に 00:18:43.685 --> 00:18:45.686 完全に幻想的な 別の次元を見るために 00:18:45.686 --> 00:18:47.604 小さな魚や海藻たち 00:18:47.604 --> 00:18:49.400 動植物がいます 00:18:49.400 --> 00:18:51.266 あなたはそれらを 静かに観察し 00:18:51.486 --> 00:18:54.645 水中を滑るように進み 見渡して 水面へ戻って来れます 00:18:54.875 --> 00:18:56.515 何の痕跡も残さず 00:18:56.835 --> 00:18:58.405 このように自然と一体になるのは 00:18:58.405 --> 00:19:00.187 この上なく素晴らしい感じがします 00:19:01.857 --> 00:19:04.150 最後に付け加えると 00:19:05.220 --> 00:19:07.484 水中へ潜り 海の世界に出会うということは 00:19:07.484 --> 00:19:11.706 自分自身と繋がるということです 00:19:12.046 --> 00:19:13.675 プレゼンテーションで お見せしたように 00:19:13.885 --> 00:19:16.565 我々が海の生き物だった 何億年も前に遡る 00:19:17.295 --> 00:19:20.175 身体の記憶について たくさんお話ししました 00:19:20.175 --> 00:19:22.508 あなたが海に潜り 00:19:22.508 --> 00:19:24.771 数秒間 息を止める時 00:19:25.341 --> 00:19:28.350 この起源に再び出会うでしょう 00:19:29.010 --> 00:19:30.238 約束します 00:19:30.508 --> 00:19:32.145 それは魔法のような感覚です 00:19:32.145 --> 00:19:33.200 ぜひあなたもやってみてください 00:19:33.450 --> 00:19:33.972 ありがとうございました 00:19:33.972 --> 00:19:37.972 (拍手)