WEBVTT

00:00:11.681 --> 00:00:13.814
前置きは飛ばして

00:00:15.652 --> 00:00:18.176
まずは実験から始めましょう

00:00:19.557 --> 00:00:23.007
雨の日の映像を３つお見せします

00:00:23.635 --> 00:00:27.519
そのうち１つの映像の
音声を替えてあります

00:00:27.543 --> 00:00:29.917
雨の音の代わりに

00:00:29.941 --> 00:00:33.009
ベーコンを焼く音を
付け加えています

00:00:33.837 --> 00:00:37.809
ベーコンの音がするのは
どの映像か 考えてみてください

00:00:38.395 --> 00:00:40.307
（雨音）

00:00:42.094 --> 00:00:44.000
（雨音）

00:00:46.327 --> 00:00:48.232
（雨音）

00:00:51.711 --> 00:00:52.993
いいですね

00:00:54.164 --> 00:00:56.738
実は 私は嘘を言いました

00:00:56.762 --> 00:00:58.032
全部ベーコンの音なんです

00:00:58.056 --> 00:00:59.631
（ベーコンが焼ける音）

00:01:03.376 --> 00:01:07.154
（拍手）

00:01:08.016 --> 00:01:11.289
私の目的は 何も皆さんが
雨の情景を見るたびに

00:01:11.313 --> 00:01:12.962
お腹をすかせることではなく

00:01:12.986 --> 00:01:18.906
私たちの脳が嘘を受け入れるように
条件づけられていると示すことです

00:01:19.496 --> 00:01:21.594
私たちは正確性を
求めてはいないのです

00:01:22.554 --> 00:01:25.339
そこで 嘘について

00:01:25.363 --> 00:01:28.726
私の好きな作家の言葉を
引用したいと思います

00:01:28.750 --> 00:01:35.699
『嘘の衰退』でオスカー・ワイルドは
こう述べています

00:01:35.723 --> 00:01:41.332
「劣悪な芸術は自然を模倣して
写実的たらんとすることに由来し

00:01:41.896 --> 00:01:47.140
素晴らしい芸術は
嘘とごまかしに由来しており

00:01:47.830 --> 00:01:50.863
美しい非現実のもの
について語るのだ」と

00:01:50.905 --> 00:01:53.690
そこで はっきり申し上げたいのは

00:01:53.787 --> 00:01:56.420
皆さんが映画を観ている時に

00:01:56.990 --> 00:01:58.502
映画の中で
電話が鳴っても

00:01:58.526 --> 00:02:00.528
それは実際に
鳴っているのではありません

00:02:01.042 --> 00:02:05.296
撮影後の編集作業において
スタジオで追加された音です

00:02:05.320 --> 00:02:08.174
耳にする音は全て偽物なのです

00:02:08.198 --> 00:02:10.008
会話以外の音は全て―

00:02:10.039 --> 00:02:11.109
偽物です

00:02:11.158 --> 00:02:14.545
ハリウッドで偽物なのは
これだけではありませんが

00:02:14.618 --> 00:02:16.529
（笑）

00:02:16.610 --> 00:02:20.270
映画の中で
鳥が羽ばたく音がしたら―

00:02:20.294 --> 00:02:22.315
（鳥が羽ばたく）

00:02:23.641 --> 00:02:25.904
それは鳥を録音したもの
ではありません

00:02:25.928 --> 00:02:30.922
シーツやゴム手袋を
はためかせる方が

00:02:30.946 --> 00:02:32.498
ずっとリアルな音になります

00:02:32.522 --> 00:02:34.874
（はためく音）

00:02:36.549 --> 00:02:39.492
間近でタバコが燃える音は―

00:02:40.016 --> 00:02:42.013
（タバコが燃える音）

00:02:42.851 --> 00:02:45.602
実は より本物らしい音がするのは

00:02:45.626 --> 00:02:48.471
サランラップを丸めた玉が

00:02:48.495 --> 00:02:49.713
ほどける音なのです

00:02:49.737 --> 00:02:52.880
（サランラップの玉がほどける音）

00:02:53.869 --> 00:02:55.272
パンチはどうでしょう？

00:02:55.296 --> 00:02:56.818
（パンチの音）

00:02:56.842 --> 00:02:57.978
おっと もう一度
聞いてみましょう

00:02:57.998 --> 00:02:58.780
（パンチの音）

00:02:58.835 --> 00:03:02.571
この音はたいてい
野菜にナイフを突き立てて表現します

00:03:02.595 --> 00:03:04.017
キャベツであることが多いです

00:03:04.361 --> 00:03:05.813
（キャベツをナイフで突き刺す音）

00:03:07.288 --> 00:03:09.636
次の音は ビデオはありませんが

00:03:09.666 --> 00:03:11.620
骨が折れる音です

00:03:11.692 --> 00:03:13.917
（骨が折れる音）

00:03:14.570 --> 00:03:16.904
さて 実際に誰かが
怪我をするわけではなく

00:03:16.928 --> 00:03:18.328
これは実は―

00:03:19.363 --> 00:03:22.618
セロリか冷凍したレタスを
折る音なのです

00:03:22.642 --> 00:03:24.683
（冷凍レタスかセロリを折る音）
［ブルックリンではケールを使用する］

00:03:25.747 --> 00:03:27.616
（笑）

00:03:29.580 --> 00:03:32.980
笑ってくれた ３人の友人に
感謝しなければね

00:03:34.253 --> 00:03:38.968
とはいえ ぴったりの音を
生み出すのは

00:03:38.992 --> 00:03:40.899
スーパーの野菜売り場に行くほど

00:03:40.923 --> 00:03:43.619
常に簡単なわけではありません

00:03:43.643 --> 00:03:46.018
もっと複雑であることが
ほとんどです

00:03:46.042 --> 00:03:49.065
ここで 音響効果の作り方を

00:03:49.089 --> 00:03:51.413
逆行分析してみましょう

00:03:51.437 --> 00:03:54.786
私のお気に入りの話のひとつは
フランク・セラフィーニのものです

00:03:54.810 --> 00:03:56.661
彼は音響ライブラリーの貢献者で

00:03:56.685 --> 00:04:00.247
『トロン』や『スタートレック』などの
音響デザインを手がけています

00:04:01.291 --> 00:04:06.549
彼はアカデミー音響編集賞を受賞した
『レッド・オクトーバーを追え！』の

00:04:06.573 --> 00:04:08.504
パラマウント社のチームにいました

00:04:08.528 --> 00:04:11.918
冷戦を描いた
この90年代の古典的映画で

00:04:11.942 --> 00:04:16.726
潜水艦のプロペラの音を作るよう
チームは求められました

00:04:16.750 --> 00:04:18.096
そこで直面した問題は

00:04:18.120 --> 00:04:21.640
ウェスト・ハリウッドでは
潜水艦が見つからないことでした

00:04:21.664 --> 00:04:25.322
そこで 彼らが講じた策は
こうでした

00:04:25.346 --> 00:04:28.701
友人宅のプールに行って

00:04:28.780 --> 00:04:32.378
フランクがプールに
思い切り飛び込んだのです

00:04:32.469 --> 00:04:34.665
彼らは水中マイクと

00:04:34.696 --> 00:04:37.472
オーバーヘッドマイクを
プールの外に設置しました

00:04:37.966 --> 00:04:39.648
その音を再現してみました

00:04:39.689 --> 00:04:42.942
水中マイクには
こんな音が聞こえていました

00:04:42.966 --> 00:04:44.501
（水中に飛び込む音）

00:04:45.208 --> 00:04:46.714
オーバーヘッドの音も足すと

00:04:46.738 --> 00:04:48.691
こんな風に聞こえます

00:04:48.715 --> 00:04:51.090
（水しぶきの音）

00:04:51.114 --> 00:04:55.561
彼らはこの音のピッチを
１オクターブ下げ

00:04:55.585 --> 00:04:58.061
スロー再生のような状態にしました

00:04:58.450 --> 00:05:00.866
（１オクターブ低い
水しぶきの音）

00:05:01.529 --> 00:05:04.297
それから高周波の音を消去しました

00:05:04.321 --> 00:05:06.596
（水しぶきの音）

00:05:06.620 --> 00:05:08.676
そして もう１オクターブ
下げました

00:05:09.914 --> 00:05:12.202
（さらに低い 水しぶきの音）

00:05:12.226 --> 00:05:14.732
それから オーバーヘッドマイクの
水しぶきも

00:05:14.756 --> 00:05:17.040
少し付け加えました

00:05:17.064 --> 00:05:20.229
（水しぶきの音）

00:05:20.253 --> 00:05:22.791
この音をループ再生して
繰り返すことによって

00:05:22.815 --> 00:05:24.005
こんな音ができました

00:05:24.029 --> 00:05:26.870
（プロペラの回転音）

00:05:30.063 --> 00:05:36.591
つまり 創造性と技術が合わさって
この錯覚が生み出されたのです

00:05:36.615 --> 00:05:39.652
まるで潜水艦の中に
いるかのように感じられますね

00:05:39.768 --> 00:05:43.129
しかし 音響効果を作って

00:05:43.153 --> 00:05:45.547
映像に合わせてみると

00:05:45.571 --> 00:05:49.622
その音に物語の中で
生きてほしいと考えるようになります

00:05:50.297 --> 00:05:54.331
良い方法のひとつは
残響を加えることです

00:05:54.897 --> 00:05:57.512
これがお話ししたい
音響ツールのひとつ目です

00:05:58.098 --> 00:06:03.220
残響音とは
元の音が止んだ後も

00:06:03.244 --> 00:06:05.175
音が持続することです

00:06:05.199 --> 00:06:07.767
ですから いわば

00:06:07.791 --> 00:06:10.827
音が様々な物質に跳ね返ったもの―

00:06:10.851 --> 00:06:13.738
つまり音を取り巻く物や
壁からの反射です

00:06:13.762 --> 00:06:15.974
銃声を例に取ってみましょう

00:06:15.998 --> 00:06:19.000
銃声の音源は
２分の１秒もありません

00:06:20.238 --> 00:06:21.388
（銃声）

00:06:22.647 --> 00:06:24.336
残響を加えることで

00:06:24.360 --> 00:06:27.577
まるで浴室で録音されたかのような
音にすることができます

00:06:28.370 --> 00:06:29.933
（浴室に響く銃声）

00:06:29.957 --> 00:06:33.462
またはチャペルや教会で
録音されたかのようにもできます

00:06:33.787 --> 00:06:35.340
（教会に響く銃声）

00:06:35.943 --> 00:06:37.947
渓谷のようにもできます

00:06:38.399 --> 00:06:40.160
（渓谷に響く銃声）

00:06:40.884 --> 00:06:44.615
ですから 残響によって
この音を聞く者と

00:06:44.661 --> 00:06:49.591
元の音源との間の空間について
多くのことがわかります

00:06:49.615 --> 00:06:51.724
音が味のようなものだとすれば

00:06:51.748 --> 00:06:55.932
残響は その音の
においのようなものです

00:06:56.309 --> 00:06:58.467
残響にはもっと多くのことができます

00:06:58.491 --> 00:07:02.155
画面で行われている動きよりも
残響がずっと少ない音を

00:07:02.225 --> 00:07:04.308
耳にすると

00:07:04.332 --> 00:07:07.352
すぐさま 私たちは
こう思います

00:07:07.376 --> 00:07:10.019
この音は解説者によるもの―

00:07:10.043 --> 00:07:14.834
つまり 画面上の動きに参加していない
客観的な語り手の音なのだと

00:07:16.271 --> 00:07:20.462
また 映画における
ごく親密な瞬間というのは

00:07:20.486 --> 00:07:22.433
残響なしで提示されることが多いです

00:07:22.457 --> 00:07:26.427
なぜなら 耳元で話されると
そのように聞こえるからです

00:07:26.824 --> 00:07:28.785
それとは全く反対に

00:07:28.809 --> 00:07:31.305
声にたくさん残響をかけると

00:07:31.329 --> 00:07:34.706
フラッシュバックを
耳にしているように聞こえたり

00:07:35.037 --> 00:07:38.346
登場人物の頭の中に
いるように聞こえたり

00:07:39.346 --> 00:07:41.822
神の声を聞いているように
思えたりします

00:07:41.846 --> 00:07:44.108
映画でもっと効果を発するのは

00:07:44.132 --> 00:07:45.619
モーガン・フリーマンですね

00:07:45.643 --> 00:07:46.927
（笑）

00:07:46.951 --> 00:07:48.118
ですから―

00:07:48.142 --> 00:07:50.372
（拍手）

00:07:50.902 --> 00:07:54.773
では 音響デザイナーが用いる
他のツールや手法には

00:07:54.797 --> 00:07:56.657
どんなものがあるでしょうか？

00:07:57.586 --> 00:07:59.889
非常に重要なものがこちらです

00:08:10.347 --> 00:08:11.876
お分かりの方もいるようですね

00:08:11.901 --> 00:08:12.855
そう 無音状態です

00:08:12.887 --> 00:08:15.156
トークの内容を
ど忘れしたわけではありません

00:08:15.228 --> 00:08:16.863
皆さんにお見せしたかったのは

00:08:16.907 --> 00:08:20.511
ほんの少しの静寂でも
注意を引くことができるということです

00:08:20.981 --> 00:08:23.421
そして 西洋では

00:08:23.445 --> 00:08:25.568
私たちは会話の中の沈黙に
あまり慣れていません

00:08:25.592 --> 00:08:28.621
ぎこちないとか
失礼だと思われているからです

00:08:29.637 --> 00:08:33.210
ですから 会話に先立って
沈黙が流れると

00:08:34.121 --> 00:08:36.181
かなりの緊張感が生まれます

00:08:36.205 --> 00:08:39.909
しかし ハリウッドの超大作映画で

00:08:39.933 --> 00:08:44.278
爆発や銃が多く登場するものを
思い浮かべてみて下さい

00:08:44.389 --> 00:08:47.984
大音量も しばらくすると
大きいと感じられなくなります

00:08:48.008 --> 00:08:49.952
ですから 陰陽さながら

00:08:49.976 --> 00:08:53.113
静寂には大音量が
大音量には静寂があってこそ

00:08:53.137 --> 00:08:55.402
それぞれに効果を持つようになります

00:08:55.450 --> 00:08:56.827
でも 静寂とは何でしょうか？

00:08:56.851 --> 00:08:59.789
これは映画でどのように
用いられるかによって違います

00:08:59.816 --> 00:09:02.995
静寂によって 登場人物の
頭の中にいると感じたり

00:09:03.019 --> 00:09:04.637
考える時間を与えられたりします

00:09:04.661 --> 00:09:07.658
私たちが静寂と
結びつけるものには―

00:09:07.690 --> 00:09:09.072
熟考

00:09:09.658 --> 00:09:10.915
瞑想

00:09:12.285 --> 00:09:13.852
沈思黙考などがあります

00:09:14.069 --> 00:09:17.171
しかし １つの意味を持つのではなく

00:09:17.195 --> 00:09:19.365
静寂は 観る者がそれぞれに

00:09:19.389 --> 00:09:23.914
自分なりの考えを投影できる
真っ白なキャンバスになります

00:09:24.462 --> 00:09:28.138
ただ はっきりさせておきたいのは
無音状態などないということです

00:09:28.692 --> 00:09:33.137
TEDトーク史上
最も仰々しい発言のように聞こえますね

00:09:33.152 --> 00:09:35.271
（笑）

00:09:35.335 --> 00:09:39.521
たとえ残響も外部からの音も
一切ない部屋に

00:09:39.564 --> 00:09:41.629
足を踏み入れるとしても

00:09:41.653 --> 00:09:44.770
自分の血液が押し出される
心臓の音が聞こえるはずです

00:09:45.404 --> 00:09:49.721
そして映画館では 伝統的に
無音状態などありませんでした

00:09:49.745 --> 00:09:51.665
映写機の音がするためです

00:09:52.116 --> 00:09:54.563
現在のドルビーの
音響システムの時代でも

00:09:55.434 --> 00:09:58.715
良く耳を澄ませば
全くの無音などないことがわかります

00:09:59.885 --> 00:10:02.110
常に何かしら音はしています

00:10:02.134 --> 00:10:05.061
無音状態など存在しない
とわかったところで

00:10:05.085 --> 00:10:08.656
映画監督や音響デザイナーは
何を使っているのでしょう？

00:10:08.687 --> 00:10:13.183
類似したものとして
環境音がよく使われます

00:10:13.307 --> 00:10:17.176
環境音というのは
それぞれの場所に見られる―

00:10:17.200 --> 00:10:20.248
独特の周辺音のことです

00:10:20.272 --> 00:10:22.121
それぞれの場所に独特の音があり

00:10:22.145 --> 00:10:24.121
それぞれの部屋にも
独特の音があります

00:10:24.145 --> 00:10:25.718
これはルームトーンと呼ばれます

00:10:25.742 --> 00:10:28.165
これはモロッコの市場の録音です

00:10:28.189 --> 00:10:32.668
（声や音楽）

00:10:34.570 --> 00:10:37.338
これはニューヨークの
タイムズスクエアの録音です

00:10:37.943 --> 00:10:42.466
（交通音やクラクション、声など）

00:10:44.450 --> 00:10:47.529
タイムズスクエアの音を聞く方が

00:10:47.553 --> 00:10:49.601
タイムズスクエアのにおいを
嗅ぐよりずっとましですよ

00:10:49.648 --> 00:10:53.371
ルームトーンは 部屋の中の
雑音の合わさったものです

00:10:53.394 --> 00:10:55.783
換気扇、空調、冷蔵庫などです

00:10:56.408 --> 00:11:00.313
これはブルックリンにある
私のアパートの録音です

00:11:00.543 --> 00:11:05.421
［換気扇、ボイラー、冷蔵庫
外の通りの音が聞こえる］

00:11:05.483 --> 00:11:10.283
［（電動歯ブラシの音？
隣人がお楽しみ中なのかも）］

00:11:10.422 --> 00:11:14.726
環境音は非常に
原始的な作用をします

00:11:15.718 --> 00:11:18.572
私たちの脳の
潜在意識に語りかけるのです

00:11:19.538 --> 00:11:25.387
ですから 窓の外で鳥がさえずると
平常時であることが示されます

00:11:25.937 --> 00:11:28.728
これはおそらく 私たち人間が

00:11:28.752 --> 00:11:32.889
何百万年もの間 この音を
毎朝耳にしてきたからでしょう

00:11:33.360 --> 00:11:37.303
（鳥のさえずり）

00:11:40.839 --> 00:11:44.480
それに対して 工業的な音が
私たちの生活に入ってきたのは

00:11:44.504 --> 00:11:45.995
より最近のことです

00:11:46.969 --> 00:11:49.027
個人的にはとても好きなのですが―

00:11:49.051 --> 00:11:51.464
というのも 私の憧れである
デヴィッド・リンチや

00:11:51.488 --> 00:11:53.423
その音響デザイナーの
アラン・スプレットが使っているので―

00:11:53.447 --> 00:11:56.009
工業音は否定的な意味合いを
持つことが多いです

00:11:56.033 --> 00:11:58.787
（機械音）

00:12:03.092 --> 00:12:07.948
音響効果は私たちの
感情の記憶に訴えかけます

00:12:08.069 --> 00:12:10.426
時には 大きな意味を
持っているために

00:12:10.450 --> 00:12:13.024
映画の登場人物になることさえあります

00:12:13.260 --> 00:12:16.744
しかも ある役者なんかより
手がかからないんです

00:12:18.442 --> 00:12:19.823
例えば―

00:12:20.769 --> 00:12:25.374
雷の音は 神の介入や
神の怒りを意味するかもしれません

00:12:26.073 --> 00:12:29.038
（雷鳴）

00:12:32.157 --> 00:12:36.132
教会の鐘は過ぎゆく時間や

00:12:36.156 --> 00:12:38.061
限りある命を思わせます

00:12:38.427 --> 00:12:44.315
（教会の鐘が鳴る音）

00:12:46.373 --> 00:12:50.863
ガラスが割れる音は
恋愛関係や友人関係の終わりを

00:12:50.887 --> 00:12:52.115
告げることができます

00:12:52.990 --> 00:12:54.791
（ガラスが割れる音）

00:12:55.388 --> 00:12:58.941
科学者によると
不協和音は―

00:12:58.965 --> 00:13:03.736
例えば 吹奏楽の楽器が
大音量で奏でる音などは―

00:13:04.938 --> 00:13:09.382
自然界で動物が
雄叫びを上げる様子を思わせるため

00:13:09.406 --> 00:13:12.533
焦りや恐れを感じさせるといいます

00:13:13.006 --> 00:13:15.937
（吹奏楽器の音）

00:13:19.214 --> 00:13:22.386
ここまで画面上での音について
話してきました

00:13:22.798 --> 00:13:27.431
しかし 音源が
目に見えないこともあります

00:13:27.455 --> 00:13:29.979
これは画面外の音 つまり

00:13:30.003 --> 00:13:31.451
「アクースマティック」と呼ばれます

00:13:31.587 --> 00:13:36.620
「アクースマティック」という語は
古代ギリシャのピタゴラスに由来します

00:13:36.644 --> 00:13:40.235
長い間ベールやカーテンに隠れて

00:13:40.259 --> 00:13:43.449
自らの姿を弟子にも見せず
教えを垂れたためです

00:13:43.473 --> 00:13:46.261
私が思うに
この数学者でもある哲学者は

00:13:46.927 --> 00:13:48.078
そうすることによって

00:13:48.784 --> 00:13:52.821
生徒たちが声や言葉や

00:13:52.845 --> 00:13:54.809
その意味に より集中でき

00:13:54.833 --> 00:13:58.003
話しているピタゴラスの見た目に
惑わされないと考えたようです

00:13:58.027 --> 00:14:00.726
ですから オズの魔法使いや

00:14:00.750 --> 00:14:03.339
『1984』のビッグ・ブラザーのように

00:14:03.488 --> 00:14:06.754
声をその音源から切り離すと―

00:14:06.778 --> 00:14:08.669
つまり原因と結果を切り離すと

00:14:09.479 --> 00:14:13.274
遍在または全てを一望しているような
感覚が生まれて

00:14:13.298 --> 00:14:15.378
権威を感じさせます

00:14:16.256 --> 00:14:19.317
アクースマティックの音には
力強い伝統があります

00:14:20.229 --> 00:14:25.535
ローマやヴェニスの修道院の
尼僧は天井に程近い

00:14:25.563 --> 00:14:29.422
回廊の部屋で
賛美歌を歌ったと言います

00:14:29.446 --> 00:14:33.386
天高く舞う天使の歌声を聞いているという
錯覚を感じさせるためです

00:14:34.190 --> 00:14:37.880
リヒャルト・ワーグナーは
舞台と観客の間に設けられた―

00:14:37.904 --> 00:14:41.740
オーケストラピットに
オーケストラを隠したことで有名です

00:14:41.764 --> 00:14:46.807
私の憧れのエイフェックス・ツインは
クラブの暗い一角で演奏しました

00:14:47.420 --> 00:14:52.163
偉大な彼らが知っていたのは
音源を見えなくすることで

00:14:52.187 --> 00:14:53.850
神秘的な趣を出せるということです

00:14:53.874 --> 00:14:55.943
この手法は映画でも
繰り返し用いられ

00:14:55.967 --> 00:14:58.154
ヒッチコックやリドリー・スコットの
『エイリアン』などがあります

00:14:58.171 --> 00:15:00.563
その源がわからない音を耳にすると

00:15:00.587 --> 00:15:03.812
何らかの緊張感が生まれるのです

00:15:05.630 --> 00:15:11.244
また それによって映画監督の
視覚的制約が最小限にとどめられ

00:15:11.268 --> 00:15:14.958
撮影時になかったものも
表すことができます

00:15:14.982 --> 00:15:17.067
説明だけでは分かりにくい
かもしれませんので

00:15:17.091 --> 00:15:18.712
ちょっとビデオを
お見せしたいと思います

00:15:19.489 --> 00:15:22.016
（おもちゃが鳴る音）

00:15:22.583 --> 00:15:25.234
（タイプライターの音）

00:15:25.961 --> 00:15:28.467
（ドラムの音）

00:15:29.364 --> 00:15:31.685
（卓球の音）

00:15:32.684 --> 00:15:35.644
（ナイフを研ぐ音）

00:15:35.986 --> 00:15:39.032
（レコードのスクラッチ音）

00:15:39.605 --> 00:15:40.791
（のこぎりの音）

00:15:40.815 --> 00:15:42.272
（女性の叫び声）

00:15:42.848 --> 00:15:44.714
（笑）

00:15:47.163 --> 00:15:50.958
これらのツールで
お見せしようとしているのは

00:15:52.430 --> 00:15:54.619
音響は言語であるということです

00:15:55.016 --> 00:15:58.158
違う場所にいるように錯覚させたり

00:15:59.071 --> 00:16:00.587
雰囲気を変えたり

00:16:01.079 --> 00:16:02.500
ペースを設定したり

00:16:03.882 --> 00:16:07.336
笑わせたり
怖がらせたりできます

00:16:09.098 --> 00:16:12.448
個人的には 私が
この言語が好きになったのは

00:16:12.472 --> 00:16:13.789
数年前のことで

00:16:13.813 --> 00:16:18.420
これを何とか
仕事にすることができました

00:16:19.674 --> 00:16:22.900
私が思うに
音響ライブラリーの仕事で

00:16:22.924 --> 00:16:28.720
私たちはこの音響という言語の
語彙を増やそうとしているのです

00:16:30.197 --> 00:16:33.679
そうすることで
私たちは適切なツールを

00:16:33.703 --> 00:16:35.343
音響デザイナーや

00:16:35.367 --> 00:16:36.715
映画制作者や

00:16:36.739 --> 00:16:38.574
ゲームやアプリのデザイナーに提供し

00:16:39.148 --> 00:16:42.283
彼らがより上手く物語を伝えたり

00:16:42.782 --> 00:16:45.514
もっと美しい嘘をつけるように
手助けしているのです

00:16:45.538 --> 00:16:46.825
聞いてくださって
ありがとうございました

00:16:46.849 --> 00:16:50.368
（拍手）