この男性の髭は ハチ髭ですね (笑) 顔がハチだらけです ミツバチと言ったときに 皆さんの多くは ただの昆虫だとか 脚がたくさんある生き物とか思われるのでしょう お気持ちはわかります ただ皆さんに知って欲しいこと ちょっと想像力を働かせて欲しいことがあるんです そしてミツバチを見る目を変えていただきたいのです この男性が刺されていないことにお気づきでしょうか もしかしたら女王蜂をあごに括り付けて ハチの気をそらしているのかもしれません 彼のこの姿は我々人間とミツバチとの 数千年にも及ぶつながりを表しています 人類とミツバチは共に進化してきました ハチは植物の受粉を助けますし 最近では 経済的にも欠かせないものになっています そのミツバチが消滅していることを ご存知の方も多いと思います 「死んでいる」のではなく「消えている」のです 死骸も目にすることはありません これは「蜂群崩壊症候群」と呼ばれる 奇妙な現象です 世界中の研究者が いまだに理由もわからずにいます わかっていることは ミツバチの減少と共に 我々が食料としている130以上の野菜や 果物の値段が上がっているということです ミツバチは経済的にも農業においても 重要な役割を担っています こちらの写真は我々が 緑の屋根とか都市農園と呼ぶものです 左側の写真の方が馴染みがありますね ボストンのサウスエンドにある住宅の庭です 私の自宅なんですが 裏庭でミツバチを飼っています 右は未来の緑の屋根の想像図 都市空間をより有効に活用して 庭にできるスペースを積み重ねています これはオレンジライン(地下鉄)上にある建物ですが 蜂の巣があるんですが どこかわかりますか? 屋上の隅っこの方にあります もう設置されてから何年か経っています 現在 都市で行われている養蜂は かなりひっそりと行われていますが それはなにも 隠さなきゃいけないわけではありません ただそこに暮らす人たちが嫌がるからです だから今日は是非皆さんに考えていただきたい 都市でミツバチを飼うことのメリットや その素晴らしさ まず受粉の仕組みについて簡単にお話しましょう ご存知の通り花や果実に野菜 そして我々が口にする牛の飼料に含まれる アルファルファも受粉媒介者に頼っています それらの植物には雄しべと雌しべがあり 基本的に受粉媒介者は植物の 蜜を求め その過程で ハチが花に潜り込み花粉が体に付着します そうして精子にあたる花粉が運ばれ 違う株の花へ辿り着き やがて 例えばリンゴができます 茎が下に向かって伸びていますね 花の先の部分は果実が食べられるころにはなくなります 受粉の仕組みはこのようなものです では次に 都市生活について考えてみましょう ただし現在や 過去についてではなく これから100年後の都市生活です どういうふうになっているでしょう? 我々の直面する大きな問題は 居住スペースの減少です 人口増加は 過去100年で数十億です いったい今後どれだけ増えるのか 居住空間が どの程度不足するのか 誰にもわかりません 都市に対する見方を変える必要があります 左側の写真は現在のニューヨークですが グレーと茶色ばかりですね 屋根に貼られたタール紙が大気中に 熱を跳ね返しますから 気候変動に影響しているのは確実でしょう 100年後 緑の屋根が普及していれば そこでガーデニングや農作物の栽培が 都市でできれば 輸送のコストを低減し 安全な食料を確保し 更に学ぶことができ 地元で新たな職を 創り出すことができます 私たちの都市とそこでの生活を守るために ミツバチが必要です 我々の会社で集めたデータがあります ベスト・ビーズはミツバチの巣箱を要望に応じて 届け 設置し 管理をします 都会・田舎を問わずミツバチと養蜂というアイデアを紹介し 自宅の庭や屋根 また必要であれば 非常階段でも養蜂がいかに無理なく 簡単にできるということを知っていただきます さて データですがおかしな傾向が見られます こちらの指標をご覧ください 越冬生存率に関するものです これは長年大きな問題になっているのですが 1980年代にバロアダニが入ってきて 様々なウィルスや細菌を持ち込みました そして真菌病をもたらしました 越冬を成功させるのは大変です 冬を越す時に多くのコロニーが失われます 都市では田舎よりもミツバチの越冬生存率が 高いことがわかりました ちょっと考えられないですよね? 普通ハチといえば田園風景を思い浮かべます でもハチは違うというのです ハチは都会が好きなんですね (笑) さらに都会ではより多くの蜂蜜を作るんです 都会の蜂蜜は美味しいんですよ ボストンではシーポートホテルの屋上に 何百何千のハチがいて 皆さんはお気づきでないでしょうが 今も頭の上を飛び回っています そのハチたちは近所の庭に飛んでいき 美味しくてヘルシーな蜂蜜 ボストンに咲く花の味がする蜂蜜を作っています つまり 都会のミツバチと田舎のミツバチを比較すると 越冬生存率だけでなく蜂蜜の生産量も 高いことがわかります やはり何か不思議な感じがしますね ミツバチの健康に関して歴史を振り返ってみましょう 西暦950年までさかのぼってみると アイルランドでミツバチの大量死があったことがわかります ミツバチの大量死などの問題は必ずしも 新しい問題ではなく1000年以上も前から 起きていることなのです 私たちが気付かない問題は都会で起こる問題です そこで皆さんに是非考えてほしいことは 都市という独特な環境についてです 恐らく都会では気温が高いと思われるでしょう なぜ都市の方がハチが元気なのでしょう これは我々がミツバチが なぜ都会に向いているのかを 理解するための重要な問いです 花粉がより多くあるのでしょうか 郊外からの電車は非常に軽い花粉を 都市のハブに運んでくるかもしれません まるで大きな市場のようなものです 線路沿いには多くのシナノキが生えています おそらく都会の方が田舎よりも 殺虫剤の量が少ないのかもしれませんが 他にも我々の考えつかないことがあるかもしれません 都会独特の環境は 考える価値があります ミツバチに影響を与えているのは 蜂群崩壊症候群だけではなく 他の原因でもミツバチが死んでいます これは非常に由々しき問題です こちらの世界地図上で バロアダニの拡大を追跡しています バロアダニは養蜂のあり方を大きく変えました 右上の数字をご覧いただくと 1900年代初めから現在まで バロアダニがいかに広がっているか おわかりいただけるでしょう 1968年にはアジアのほとんどを 1971年にはヨーロッパと南アメリカ 1980年代まで下って 1987年にはバロアダニはついに アメリカ合衆国にまで到達しました アメリカのミツバチにとっては それが転換点となりました 子供時代にミツバチに刺されたり 見かけたことを覚えているでしょう 今日の子供達の子供時代は少し様子が違います 彼らはそうした経験をしません ハチが周りにいないのです 必要なハチがいなくなってしまっている 大きな問題です 私たちには何ができるのでしょう? 私はミツバチの研究をしています ミツバチの健康について博士号を取りました 2005年に研究を始めて 2006年からミツバチが消滅し始めました 学校でムシをいじくっていた このオタクが突如として— (笑) — 世界にとって重要な人間になったのです そんないきさつでした 私の研究の焦点は 「いかにハチを健康にするか」にあります ハチを殺している要因自体は直接研究していません 世界中にいる多くの研究者のように 殺虫剤や病気やハチの住処・栄養の不足について 研究しているのではありません ハチを健康にする方法を研究しています ワクチンやヨーグルトや細菌など ハチへの経口投与による様々な治療方法です このプロセスは非常に簡単で7歳の子供でもできます 砂糖や水を花粉に混ぜたり 他にも何か有効成分を混ぜたりして ハチに与えるだけで薬剤は不要です ハチの免疫力を高めるだけです ヒトは自分の健康を未来志向で考えます 運動したり健康的な食事をしたりビタミンを飲んだりします ミツバチについても同じように考えればいいのです 彼らが元気で暮らしている場所に連れてくる ミツバチを健康にしてあげて病気を予防するのです 大学院ではハチにワクチンを注射するために長い時間を (笑) そう何年も何年も 研究室に居残って 「おやもう 朝の3時になってしまった」 「まだハチの注射が終わってない」なんて (笑) ある日ひらめきました 「経口投与すればいいんじゃない?」 そして「ああそうか」となって今があります (笑) これは都会にある巣箱の写真です どんな姿形にでもできますよ 自由な発想でいいんです お宅にマッチするように塗っても構いません お宅の中に巣箱を隠すこともできます フェアモント・コプリー・プラザ・ホテルの 屋上には3つの巣箱があります 美しいですねえ ホテルの部屋の調度に合わせて 塗装した木材を使いました それにハチ達は庭で栽培されているハーブを 利用するんです 素晴らしいですね ハーブはシェフが料理に使い ハチが作る蜂蜜は ホテルのバーで使われます 砂糖の代わりに蜂蜜を使えば健康的です 様々な糖分が含まれていますから また教室でハチを飼うこともしています これは非営利のベンチャーですが 蜂の巣箱が教室でも取り入れられるということを 世界に向けて宣伝しています または博物館でもガラスケースの中で 教育のために設置することもできます こちらの巣箱はもう長い間 フェンウェイ高校に設置されています ハチはフェンウェイパークの外野に飛んでいきますが 気付かないでしょう あなたが花でない限り ハチは皆さんに興味もありません(笑) 全く気にしないんです ブンブンしながら 「ちょっとごめんよ」なんて言うくらいです (笑) 都市での養蜂が素晴らしいものである理由を この写真が物語っています ニューヨークでは2010年まで養蜂は違法でした それは大きな問題です 植物を受粉させようとしても 地元で生えている植物の受粉はどうします? まさか手でやりますか? ここボストンには素晴らしい会社があって グリーン・シティ・グロウワーズという会社が 綿棒を使って手作業でカボチャを受粉させていました もし彼らが貴重なタイミングを逃せば 実はできません 顧客は不服で人々は空腹になりますね 受粉はとても重要です 写真はブルックリンでとれた蜂蜜です ニューヨークタイムズでは謎としてとりあげられました 蜂蜜が真っ赤だったので 州の化学調査班が調査しました その調査の結果わかったことによると 赤い色の正体は 少し先にあるマラスキーノ・チェリーの工場でした (笑) つまり蜂蜜と共生できる花を植えることによって 自分好みの蜂蜜を作れます パリは都市での養蜂の素晴らしいお手本です オペラ座の屋上にはずっと巣箱があって 人々はこう考えるようになりました 「これなら私たちにもできそうだし やるべきだ」 ロンドンでもヨーロッパ全体でも 人々は緑の屋上の活用と巣箱を置くことについて すいぶんと先進的です 最後になりますが 皆さんにも心を開いていただきたいのです ハチを守り助けるために また将来の持続可能な 都市について考えるために何ができるか 見方を大きく変えて欲しいのです ハチの重要さをわかっていただきたい ミツバチはあなたに見つかったからといって刺しはしません ミツバチは一度刺すと死んでしまうんです そんなことしたくもないでしょう (笑) パニックを起こす必要はありません 都市では街中にミツバチはいるんです 自分の巣箱を持つこともできるんです すぐ手に入りますし 巣箱の設置と世話の指導をする会社もあります また教育的にも農業について学ぶことが 世界中で重要になっています この女の子を見て下さい 刺されてなんていないでしょう ありがとうございました (拍手)