0:00:00.000,0:00:02.000 20世紀には 0:00:02.000,0:00:04.000 さまざまな大変化が起きました 0:00:04.000,0:00:06.000 中でも最も重要なのは 0:00:06.000,0:00:09.000 恐らく長寿革命でしょう 0:00:09.000,0:00:11.000 私たちの平均寿命は 3世代前より 0:00:11.000,0:00:14.000 34年長くなりました 0:00:14.000,0:00:16.000 考えてみて下さい 0:00:16.000,0:00:19.000 成人してからの人生が 0:00:19.000,0:00:21.000 2倍に伸びたのです 0:00:21.000,0:00:23.000 でも 私たちの文化は 0:00:23.000,0:00:26.000 この変化にあまり上手く対応できていません 0:00:26.000,0:00:29.000 私たちは未だに 人生はアーチのようなものだという 0:00:29.000,0:00:31.000 古い考えに捉われています 0:00:31.000,0:00:33.000 アーチというのは古いたとえで 0:00:33.000,0:00:35.000 人生の真ん中でピークに達し 0:00:35.000,0:00:37.000 その後は衰えていくというものです 0:00:37.000,0:00:39.000 (笑) 0:00:39.000,0:00:41.000 加齢を病気のように捉えています 0:00:41.000,0:00:43.000 でも今では 多くの人が - 0:00:43.000,0:00:46.000 哲学者や芸術家から医者や科学者まで - 0:00:46.000,0:00:49.000 私が第三幕と呼ぶ人生最後の30年を 0:00:49.000,0:00:52.000 新たな見方で考えています 0:00:52.000,0:00:57.000 この時期は それ自身が重要な 0:00:57.000,0:00:59.000 発展期だと気づいているのです 0:00:59.000,0:01:02.000 青年期が子ども時代と異なるのと同様 0:01:02.000,0:01:05.000 人生の第三幕は中年期とは異なります 0:01:05.000,0:01:08.000 この時期をどう過ごすのか 0:01:08.000,0:01:11.000 考えなければなりません 0:01:11.000,0:01:13.000 どうやって上手く過ごすのか? 0:01:13.000,0:01:15.000 年を取ることは 0:01:15.000,0:01:17.000 何に例えればよいのでしょう? 0:01:17.000,0:01:20.000 1年かけてこのテーマを研究し 0:01:20.000,0:01:22.000 年を取ることは 0:01:22.000,0:01:26.000 階段を上るようなものだと考えるのが 0:01:26.000,0:01:28.000 ふさわしいと思うようになりました 0:01:28.000,0:01:32.000 精神的な成長が 0:01:32.000,0:01:34.000 知性や全体性 信頼性に 0:01:34.000,0:01:36.000 つながるのです 0:01:36.000,0:01:38.000 年を取ることは病気ではなく 0:01:38.000,0:01:40.000 将来性のあることなのです 0:01:40.000,0:01:42.000 そしてこの将来性は 0:01:42.000,0:01:44.000 少数の幸運な人だけのものではなく 0:01:44.000,0:01:46.000 50歳以上の人の多くが 0:01:46.000,0:01:48.000 精神状態が良く ストレスが少なく 0:01:48.000,0:01:50.000 敵対心も不安も少ないことが 0:01:50.000,0:01:52.000 わかっています 0:01:52.000,0:01:54.000 50歳以上の人は 0:01:54.000,0:01:56.000 違いより共通点に目を向けます 0:01:56.000,0:01:58.000 50歳を超えるとより幸せになるという 0:01:58.000,0:02:00.000 調査結果さえあります 0:02:00.000,0:02:02.000 これは予想もしていなかったことでした 0:02:02.000,0:02:05.000 私は長いこと鬱を抱えていました 0:02:05.000,0:02:07.000 40代の後半を迎えた頃は 0:02:07.000,0:02:09.000 朝目覚めて最初に考えることは 0:02:09.000,0:02:11.000 全て悲観的なことでした 0:02:11.000,0:02:13.000 私は怯えていました 0:02:13.000,0:02:15.000 あぁ なんてことだ 0:02:15.000,0:02:17.000 自分は偏屈な年寄りになろうとしている 0:02:17.000,0:02:21.000 でも今 私は人生の第三幕のど真ん中にいますが 0:02:21.000,0:02:24.000 これまでになかったほど幸せです 0:02:24.000,0:02:28.000 大きな幸福感に満たされています 0:02:29.000,0:02:31.000 私は気づきました 0:02:31.000,0:02:33.000 自らが老年期に差しかかると 0:02:33.000,0:02:35.000 外から見ているのとは対照的に 0:02:35.000,0:02:37.000 恐れは弱まるのです 0:02:37.000,0:02:39.000 自分らしさはそのままですし 0:02:39.000,0:02:41.000 一層自分らしくなるかもしれません 0:02:41.000,0:02:45.000 かつてピカソはこう言いました「若くなるには時間がかかる」 0:02:45.000,0:02:47.000 (笑) 0:02:47.000,0:02:49.000 加齢を美化したい訳ではありません 0:02:49.000,0:02:51.000 老年期が実りと成長の時期になる 0:02:51.000,0:02:53.000 保証などないのはもちろんです 0:02:53.000,0:02:55.000 運の問題や 0:02:55.000,0:02:58.000 遺伝的なことも関わってきます 0:02:58.000,0:03:00.000 遺伝的な要素は3分の1を占めます 0:03:00.000,0:03:03.000 それに対してできることはあまりありません 0:03:03.000,0:03:05.000 でも 老年期の幸せを決める要素の 0:03:05.000,0:03:07.000 3分の2は 0:03:07.000,0:03:10.000 自分で何とかできることなのです 0:03:10.000,0:03:13.000 長くなった老年期を上手に過ごし 0:03:13.000,0:03:16.000 その期間を使って変化を生み出すために 0:03:16.000,0:03:19.000 何ができるのかをお話ししていきましょう 0:03:19.000,0:03:21.000 まず 階段モデルについて説明します 0:03:21.000,0:03:25.000 年配者の方々は階段に苦労することが多いので 0:03:25.000,0:03:28.000 階段を例えに使うのは変だと思うかもしれません 0:03:28.000,0:03:30.000 (笑) 0:03:30.000,0:03:33.000 私も階段は苦手です 0:03:33.000,0:03:35.000 ご存知かもしれませんが 0:03:35.000,0:03:38.000 この世界は普遍的法則の上に成り立っています 0:03:38.000,0:03:42.000 エントロピー すなわち熱力学の第二法則です 0:03:42.000,0:03:45.000 エントロピーが意味するのは 全てのものは 0:03:45.000,0:03:47.000 衰え朽ちていくということです 0:03:47.000,0:03:49.000 先にお話ししたアーチのようなものです 0:03:49.000,0:03:52.000 この基本法則には一つだけ例外があります 0:03:52.000,0:03:54.000 人間の精神です 0:03:54.000,0:03:57.000 人間の精神は 階段を上るように 0:03:57.000,0:03:59.000 上に向かって発展し 0:03:59.000,0:04:01.000 全体性 信頼性 そして知性へと 0:04:01.000,0:04:04.000 我々を導きます 0:04:04.000,0:04:06.000 1つの例をお話ししましょう 0:04:06.000,0:04:08.000 この上昇は 肉体的な困難に 0:04:08.000,0:04:12.000 直面した時にでさえ起きることがあります 0:04:12.000,0:04:14.000 3年ほど前 私はニューヨーク・タイムズの 0:04:14.000,0:04:16.000 記事を読みました 0:04:16.000,0:04:18.000 ニール・セリンガーという 57歳の 0:04:18.000,0:04:21.000 引退した弁護士についての記事でした 0:04:21.000,0:04:24.000 彼はサラ・ローレンス大学の作家コースに参加し 0:04:24.000,0:04:27.000 そこで自らの作家としての内なる声に気づきました 0:04:27.000,0:04:29.000 2年後彼は筋萎縮側索硬化症にかかりました 0:04:29.000,0:04:32.000 ルー・ゲーリック病として知られる 0:04:32.000,0:04:35.000 命に関わる難病です 0:04:35.000,0:04:39.000 この病気は体を蝕みますが 心は侵しません 0:04:39.000,0:04:42.000 記事の中で セリンガー氏は自らに起きていることを 0:04:42.000,0:04:45.000 このように書き記していました 0:04:45.000,0:04:48.000 引用します 0:04:48.000,0:04:50.000 「筋肉が衰えるにつれて 0:04:50.000,0:04:53.000 私の文章は力強さを増した 0:04:53.000,0:04:56.000 少しずつ会話ができなくなるにつれて 0:04:56.000,0:04:59.000 私は自分の声を得た 0:04:59.000,0:05:01.000 私は衰えるにつれて成長し 0:05:01.000,0:05:03.000 数多くのものを失う一方で 0:05:03.000,0:05:07.000 ついに自分自身を見つけ始めた」 0:05:07.000,0:05:09.000 私にとってニール・セリンガー氏は 0:05:09.000,0:05:12.000 人生の第三幕で階段を上ることを 0:05:12.000,0:05:15.000 体現した人です 0:05:15.000,0:05:17.000 人は皆 生まれた時には元気いっぱいです 0:05:17.000,0:05:20.000 しかし暴力 虐待 育児放棄など 0:05:20.000,0:05:22.000 人生の困難が立ちはだかる中 0:05:22.000,0:05:25.000 時にそれは抑えつけられてしまいます 0:05:25.000,0:05:27.000 両親は鬱で苦しんでいたかもしれません 0:05:27.000,0:05:29.000 子どものことを どれほど活躍したかという 0:05:29.000,0:05:33.000 視点でしか愛せなかったのかもしれません 0:05:33.000,0:05:35.000 私たちは今でも 心の痛みや傷に 0:05:35.000,0:05:37.000 苦しんでいるかもしれません 0:05:37.000,0:05:41.000 そして そうした関係の多くには結末がなく 0:05:41.000,0:05:45.000 まだ終わっていないと感じているかもしれません 0:05:45.000,0:05:48.000 恐らく 人生の第三幕が果たす役割は 0:05:48.000,0:05:53.000 人生の最後に向けての仕上げをすることです 0:05:53.000,0:05:57.000 私は60歳の誕生日を迎え 自らが人生の第三幕に 0:05:57.000,0:05:59.000 入ろうとする頃 そう気づきました 0:05:59.000,0:06:01.000 自分はこれからどう過ごせばよいか? 0:06:01.000,0:06:04.000 この人生の最終章で何を成し遂げるべきか? 0:06:04.000,0:06:08.000 向かうべき方向を知るためには 自分がこれまで辿ってきた 0:06:08.000,0:06:10.000 道筋を知らねばならないと思いました 0:06:10.000,0:06:12.000 そこで私は自分の人生の 0:06:12.000,0:06:14.000 最初の二幕を振り返り 0:06:14.000,0:06:17.000 その時自分がどういう人物だったのか 0:06:17.000,0:06:19.000 自分は何者だったのかを知ろうとしました 0:06:19.000,0:06:22.000 両親や他の人が私のことをどう語ったり 0:06:22.000,0:06:24.000 どう接したのかということではありません 0:06:24.000,0:06:26.000 私とは何者だったのでしょう? 0:06:26.000,0:06:29.000 両親は 親でなく人間としてどんな人だったのでしょう? 0:06:29.000,0:06:31.000 私の祖父母はどうでしょう? 0:06:31.000,0:06:33.000 どのように両親に接したのでしょう? 0:06:33.000,0:06:36.000 そうしたことを知ろうとしたのです 0:06:36.000,0:06:39.000 数年後に知ったのですが 0:06:39.000,0:06:42.000 私が体験した過程は 0:06:42.000,0:06:44.000 心理学者たちの間では 0:06:44.000,0:06:46.000 「回想法」と呼ばれていて 0:06:46.000,0:06:48.000 その人の人生に 0:06:48.000,0:06:50.000 新たな意義や 明瞭さ 意味合いを 0:06:50.000,0:06:52.000 与えるとされています 0:06:52.000,0:06:55.000 やってみると気づくかもしれません 0:06:55.000,0:06:58.000 ずっと自分のせいだと思っていたことや 0:06:58.000,0:07:01.000 自分について考えていたことの多くが 0:07:01.000,0:07:04.000 実は自分とは何の関係もなかったのだと 0:07:04.000,0:07:07.000 自分の落ち度ではなく 何も問題はないのだと知ると 0:07:07.000,0:07:09.000 人は当時に思いを巡らせ 0:07:09.000,0:07:11.000 相手も自分も 0:07:11.000,0:07:13.000 許すことができます 0:07:13.000,0:07:16.000 自分を過去から解放することが 0:07:16.000,0:07:18.000 できるのです 0:07:18.000,0:07:20.000 自らの過去との関係性を変えるために 0:07:20.000,0:07:22.000 できることがあるのです 0:07:22.000,0:07:24.000 このことを書き物にまとめている時 0:07:24.000,0:07:27.000 ヴィクトール・フランクルの 0:07:27.000,0:07:29.000 「夜と霧」に出会いました 0:07:29.000,0:07:32.000 フランクルはオーストリアの精神科医で 0:07:32.000,0:07:35.000 5年間 ナチスの強制収容所に入れられていました 0:07:35.000,0:07:38.000 彼は 収容所にいた時 0:07:38.000,0:07:42.000 もし解放されたとして 0:07:42.000,0:07:44.000 問題なく社会復帰できる人と 0:07:44.000,0:07:46.000 そうでない人を見分けられたと言います 0:07:46.000,0:07:51.000 そしてこう記しています 0:07:51.000,0:07:54.000 「人生で得たものは全て奪い去られかねないが 0:07:54.000,0:07:56.000 一つだけ例外がある 0:07:56.000,0:07:58.000 それは 与えられた状況に 0:07:58.000,0:08:00.000 どのようにふるまうかという 0:08:00.000,0:08:02.000 選択の自由だ 0:08:02.000,0:08:04.000 それが私たちの人生の 0:08:04.000,0:08:06.000 質を決めるのだ 0:08:06.000,0:08:08.000 人生の質は 金持ちか貧乏か 0:08:08.000,0:08:10.000 有名か無名か 健康か病気かによって 0:08:10.000,0:08:12.000 決まるものではない 0:08:12.000,0:08:15.000 人生の質を決めるのは 0:08:15.000,0:08:18.000 そうした現実をいかに関連づけ 0:08:18.000,0:08:20.000 そこにどんな意味を与え 0:08:20.000,0:08:23.000 いかなる態度で臨み 0:08:23.000,0:08:27.000 どのような思いを引き出すのかということだ」 0:08:27.000,0:08:30.000 人生の第三幕の核となる目的は 0:08:30.000,0:08:34.000 必要に応じて 0:08:34.000,0:08:36.000 過去との関係性を 0:08:36.000,0:08:38.000 変えることなのだと思います 0:08:38.000,0:08:41.000 認知研究によると 0:08:41.000,0:08:43.000 過去との関係性を変えることができると 0:08:43.000,0:08:46.000 神経学的にも変化が現れ 0:08:46.000,0:08:49.000 脳内に神経経路が作られるのだそうです 0:08:49.000,0:08:51.000 もし長年に渡って 0:08:51.000,0:08:54.000 過去の出来事や人に否定的な対応をしていると 0:08:54.000,0:08:57.000 脳からの化学的・電気的な信号により 0:08:57.000,0:09:00.000 否定的な考えの神経経路が形成されます 0:09:00.000,0:09:03.000 その神経回路は 時間の経過とともに硬くなり 0:09:03.000,0:09:05.000 それが常態になります 0:09:05.000,0:09:07.000 でもこれは望ましいことではありません 0:09:07.000,0:09:10.000 ストレスや不安の原因になります 0:09:10.000,0:09:12.000 でも もし私たちが 0:09:12.000,0:09:16.000 昔に戻って 過去の人や出来事との 0:09:16.000,0:09:18.000 関係性を変え 0:09:18.000,0:09:20.000 それを再構築することができれば 0:09:20.000,0:09:22.000 神経経路も変わります 0:09:22.000,0:09:24.000 過去に対してより肯定的な感覚を 0:09:24.000,0:09:27.000 保つことができれば 0:09:27.000,0:09:29.000 それが新しい常態になります 0:09:29.000,0:09:32.000 温度調節器をリセットするようなものです 0:09:32.000,0:09:35.000 私たちを賢くするような 0:09:35.000,0:09:38.000 経験を新たにするということではありません 0:09:38.000,0:09:42.000 これまでにあった 自分を賢くする体験に 0:09:42.000,0:09:44.000 しっかり向き合うことで 0:09:44.000,0:09:46.000 全体性を高め 0:09:46.000,0:09:48.000 知性と信頼性を得る助けとするのです 0:09:48.000,0:09:52.000 それは自らの可能性を発揮させる一助となります 0:09:52.000,0:09:54.000 女性は思春期までは全き存在です 0:09:54.000,0:09:57.000 少女の頃は元気が良いものです - 「へえ 誰が言ったのよ?」 0:09:57.000,0:09:59.000 実行力があり 0:09:59.000,0:10:01.000 自らの人生の主人公です 0:10:01.000,0:10:03.000 でも 多くの場合 0:10:03.000,0:10:06.000 思春期を迎えると 0:10:06.000,0:10:09.000 周りに合わせて上手くやろうと心配し始めます 0:10:09.000,0:10:13.000 他人の人生の主役や脇役になるのです 0:10:13.000,0:10:16.000 でも今 人生の第三幕を迎えると 0:10:16.000,0:10:18.000 自分の出発点にぐるりと戻って 0:10:18.000,0:10:21.000 生きるべきは自分の人生なのだと 0:10:21.000,0:10:23.000 初めて気づくことができるかもしれません 0:10:23.000,0:10:26.000 もしそうすることができれば 0:10:26.000,0:10:29.000 それは自分以外の人のためにもなります 0:10:29.000,0:10:31.000 年配の女性は 0:10:31.000,0:10:33.000 世界で最大の人口集団です 0:10:33.000,0:10:36.000 私たちが過去に戻り 自らを再定義して 0:10:36.000,0:10:38.000 全き人間になることができれば 0:10:38.000,0:10:43.000 世界の文化が変わることになりますし 0:10:43.000,0:10:46.000 若い人たちが生き方を見直すための 0:10:46.000,0:10:49.000 モデルを提示することにもなります 0:10:49.000,0:10:51.000 どうもありがとうございました 0:10:51.000,0:10:58.000 (拍手)