1 00:00:07,095 --> 00:00:08,584 多くの人は薬を飲んだり 2 00:00:08,584 --> 00:00:09,834 注射をされたり 3 00:00:09,834 --> 00:00:13,335 別の方法でも生涯のうちに なんらかの薬を使うでしょう 4 00:00:13,335 --> 00:00:18,266 でも ほとんどの人が 薬物の実際の働きを何も知りません 5 00:00:18,266 --> 00:00:21,816 どのようにしていろいろな薬物が 身体感覚や 6 00:00:21,816 --> 00:00:22,726 思考や 7 00:00:22,726 --> 00:00:24,844 行動に影響するのでしょう? 8 00:00:24,844 --> 00:00:28,665 たいていは 脳細胞同士のコミュニケーションを 9 00:00:28,665 --> 00:00:31,226 変えることによります 10 00:00:31,226 --> 00:00:33,787 それを起こすには 様々な方法があります 11 00:00:33,787 --> 00:00:35,866 でも 脳に入る前に 12 00:00:35,866 --> 00:00:38,124 薬は まず血流に 到達しなければなりません 13 00:00:38,124 --> 00:00:41,897 それにかかる時間は投与方法などの違いで 数秒のこともありますし 14 00:00:41,897 --> 00:00:44,327 何時間もかかることもあります 15 00:00:44,327 --> 00:00:47,367 最も遅い方法は口から飲むことです 16 00:00:47,367 --> 00:00:50,097 効果が出る前に 17 00:00:50,097 --> 00:00:52,189 消化管から吸収されないといけないからです 18 00:00:52,189 --> 00:00:55,398 薬を吸入する方法だと もっと速く血液中に入りますし 19 00:00:55,398 --> 00:00:58,888 静脈注射だと最速です 20 00:00:58,888 --> 00:01:02,007 薬物を直接 血液の中に投与するからです 21 00:01:02,007 --> 00:01:06,788 一度 薬が血液に入ると すぐに目的地である脳の入り口に行きます 22 00:01:06,788 --> 00:01:10,606 ここは血液脳関門で守られています 23 00:01:10,606 --> 00:01:12,858 これは脳と血液を隔てていて 24 00:01:12,858 --> 00:01:15,940 害になるかもしれない物質が 入れないようにします 25 00:01:15,940 --> 00:01:19,148 ですから薬は この関門を開けて通るためのカギとして 26 00:01:19,148 --> 00:01:23,568 特別な分子構造を持っています 27 00:01:23,568 --> 00:01:27,428 一度 脳に入ると 薬は神経細胞の集まりやシナプスを標的にして 28 00:01:27,428 --> 00:01:30,938 その通常の機能を妨害し始めます 29 00:01:30,938 --> 00:01:35,498 神経細胞とは核と樹状突起と 軸索から成る脳細胞のことです 30 00:01:35,498 --> 00:01:39,540 シナプスとは樹状突起と軸索の間に 存在する構造です 31 00:01:39,540 --> 00:01:43,989 ここで神経細胞の間の 電気化学的シグナルの交換が起こります 32 00:01:43,989 --> 00:01:47,669 そのシグナルは神経伝達物質という 化学物質のかたちをとっています 33 00:01:47,669 --> 00:01:51,470 それぞれの神経伝達物質には 行動や感情や認識を調整する 34 00:01:51,470 --> 00:01:52,280 それぞれの 35 00:01:52,280 --> 00:01:53,489 役割があります 36 00:01:53,489 --> 00:01:55,880 しかし それらは全て 2つの内1つの働きをします 37 00:01:55,880 --> 00:01:58,080 シナプス後細胞を抑制して 38 00:01:58,080 --> 00:01:59,601 活動を制限するか 39 00:01:59,601 --> 00:02:00,980 もしくは興奮させて 40 00:02:00,980 --> 00:02:05,079 神経回路全体に拡がる 新しい電気化学シグナルを作るかです 41 00:02:05,079 --> 00:02:08,020 残った神経伝達物質は 通常 分解されるか 42 00:02:08,020 --> 00:02:11,120 シナプス前細胞に再吸収されます 43 00:02:11,120 --> 00:02:13,981 薬の効果とは これらの過程の各段階で 44 00:02:13,981 --> 00:02:18,651 シナプス伝達を操作する 能力のことです 45 00:02:18,651 --> 00:02:21,401 それが神経伝達物質の拡散量を 46 00:02:21,401 --> 00:02:24,752 増加させたり 減少させたりすることで行われます 47 00:02:24,752 --> 00:02:28,402 例えば SSRIなどの 一般的な抗うつ薬は 48 00:02:28,402 --> 00:02:31,181 気分を調整する神経伝達物質である 49 00:02:31,181 --> 00:02:34,572 セロトニンの再吸収を阻止します 50 00:02:34,572 --> 00:02:37,744 こうしてセロトニン濃度を効果的に 神経ネットワーク中に増加させます 51 00:02:37,744 --> 00:02:40,332 一方 モルヒネなどの鎮痛剤は 52 00:02:40,332 --> 00:02:43,444 セロトニンとノルアドレナリンの 濃度を上げることで 53 00:02:43,444 --> 00:02:44,842 活力と 54 00:02:44,842 --> 00:02:45,801 覚醒と 55 00:02:45,801 --> 00:02:46,740 注意力と 56 00:02:46,740 --> 00:02:48,190 快楽を調節します 57 00:02:48,190 --> 00:02:51,812 これらの神経伝達物質が エンドルフィン受容体に働きかけ 58 00:02:51,812 --> 00:02:53,542 痛み知覚を下げます 59 00:02:53,542 --> 00:02:57,712 精神安定剤はGABAの生成を増加させて 60 00:02:57,712 --> 00:02:59,902 神経活動を抑制し 61 00:02:59,902 --> 00:03:03,913 リラックスさせたり 鎮静させたりします 62 00:03:03,913 --> 00:03:06,473 では脱法ドラッグや違法薬物はどうでしょう? 63 00:03:06,473 --> 00:03:10,954 これらの薬物は まだ解明途中の 多大な影響を脳に起こします 64 00:03:10,954 --> 00:03:12,884 覚せい剤のアンフェタミンは 65 00:03:12,884 --> 00:03:15,943 報酬と快楽の知覚に 関係する神経伝達物質である 66 00:03:15,943 --> 00:03:21,055 ドーパミンの長期放出を引き起こします 67 00:03:21,055 --> 00:03:23,593 そして ノルアドレナリン受容体を 活性化し 68 00:03:23,593 --> 00:03:25,125 心拍数を上げ 69 00:03:25,125 --> 00:03:26,368 瞳孔を開き 70 00:03:26,368 --> 00:03:29,632 『闘争・逃走反応』を引き起こします 71 00:03:29,632 --> 00:03:33,444 コカインはドーパミンとセロトニンの 再吸収を阻害し 72 00:03:33,444 --> 00:03:35,073 神経ネットワークにおける それらの濃度を高めることで 73 00:03:35,073 --> 00:03:36,432 活力を高め 74 00:03:36,432 --> 00:03:38,125 幸福感を作りだし 75 00:03:38,125 --> 00:03:40,454 食欲を抑制します 76 00:03:40,454 --> 00:03:44,159 幻覚剤には最も不可解な効果があります 77 00:03:44,159 --> 00:03:45,659 LSDや 78 00:03:45,659 --> 00:03:46,638 ムスカリンや 79 00:03:46,638 --> 00:03:47,757 DMTなどは 80 00:03:47,757 --> 00:03:50,225 気分や衝動性を調節する 81 00:03:50,225 --> 00:03:52,895 セロトニンの放出を阻害します 82 00:03:52,895 --> 00:03:55,246 また それらの薬物は 知覚と学習と行動制御を 83 00:03:55,246 --> 00:03:59,815 司る神経回路への影響があります 84 00:03:59,815 --> 00:04:04,348 だから 幻覚剤は強力な薬物なのです 85 00:04:04,348 --> 00:04:06,594 それらの効果は愉快に聞こえますが 86 00:04:06,594 --> 00:04:10,944 強く規制されたり しばしば違法なのには 理由があります 87 00:04:10,944 --> 00:04:13,468 薬物には脳内化学物質のバランスを 変える力があって 88 00:04:13,468 --> 00:04:17,315 繰り返し使用されると 思考力、決断力 89 00:04:17,315 --> 00:04:19,107 学習能力、記憶力を司どる 90 00:04:19,107 --> 00:04:20,255 神経回路を 91 00:04:20,255 --> 00:04:21,000 永遠に 92 00:04:21,000 --> 00:04:22,757 変化させる可能性があります 93 00:04:22,757 --> 00:04:25,996 今でも薬とその効果の 善悪両面に関して 94 00:04:25,996 --> 00:04:27,911 知らないことが沢山あります 95 00:04:27,911 --> 00:04:31,647 しかし詳しく研究されて よく分かっているものについては 96 00:04:31,647 --> 00:04:33,978 効果的な薬として使われています 97 00:04:33,978 --> 00:04:36,958 薬と脳についての知識が増えることで 98 00:04:36,958 --> 00:04:39,308 現在の研究者が頭をひねる 多くの病気を 99 00:04:39,308 --> 00:04:43,287 治療する可能性も増すでしょう