1 00:00:00,904 --> 00:00:02,309 みなさん こんにちは 2 00:00:02,333 --> 00:00:04,976 赤ちゃんの紙おむつを持ってきました 3 00:00:06,793 --> 00:00:08,515 今 その理由がお分かりになります 4 00:00:08,539 --> 00:00:10,549 紙おむつには 興味深い素材が使われています 5 00:00:10,573 --> 00:00:13,264 紙おむつが水分を吸うと 非常に膨れ上がることは 6 00:00:13,288 --> 00:00:16,272 日々何百万人もの赤ちゃんが 実証してくれています 7 00:00:16,296 --> 00:00:17,446 (笑) 8 00:00:17,470 --> 00:00:18,964 その理由というのは 9 00:00:18,988 --> 00:00:21,178 紙おむつが巧妙に考案され 10 00:00:21,202 --> 00:00:23,837 膨潤性のある素材から 作られているからです 11 00:00:23,861 --> 00:00:25,242 その特別な素材は 12 00:00:25,242 --> 00:00:28,052 水を加えると驚く程膨れ上がり 13 00:00:28,076 --> 00:00:30,242 千倍もの容積になります 14 00:00:30,266 --> 00:00:33,502 これは有用な工業用ポリマーですが 15 00:00:33,819 --> 00:00:35,459 MITの私のグループは 16 00:00:35,459 --> 00:00:39,582 我々の脳にも同じような事が できないかと研究しています 17 00:00:39,606 --> 00:00:40,765 脳をもっと大きく 18 00:00:40,789 --> 00:00:42,467 脳内部を覗ける程大きくして 19 00:00:42,481 --> 00:00:45,109 細かな構成部分の生体分子全てが 20 00:00:45,133 --> 00:00:47,284 3次元的にどのような構成になっているか 21 00:00:47,308 --> 00:00:50,793 脳の実体を見られないだろうかというものです 22 00:00:50,817 --> 00:00:51,975 それができれば 23 00:00:51,999 --> 00:00:53,662 我々の脳がどのように 24 00:00:53,662 --> 00:00:55,235 思考 感情 行動 感覚を 25 00:00:55,235 --> 00:00:58,934 生み出しているのか もっと良くわかるでしょうし 26 00:00:58,958 --> 00:01:00,497 脳のどの箇所の変化が 27 00:01:00,497 --> 00:01:03,877 様々な病気を起こしているかを 的確に突き止められるかも知れません 28 00:01:03,877 --> 00:01:07,409 アルツハイマー病、てんかん、 パーキンソン病などです 29 00:01:07,433 --> 00:01:10,011 これらの病気の完治は勿論のこと 治療法はほとんどなく 30 00:01:10,035 --> 00:01:13,652 何が原因で発症するか 31 00:01:13,676 --> 00:01:16,691 はっきりとは分かっていません 32 00:01:16,691 --> 00:01:18,353 MITの我々の研究グループは 33 00:01:18,377 --> 00:01:21,063 今までとは異なる視点を持ち 34 00:01:21,087 --> 00:01:24,021 過去 100年の神経科学とは 違った方法を試みています 35 00:01:24,021 --> 00:01:26,750 我々はデザイナーでもあり 発明家でもあります 36 00:01:26,750 --> 00:01:28,332 我々が研究しているのは 37 00:01:28,332 --> 00:01:30,942 脳内を見て修復する技術を 作り上げることです 38 00:01:30,942 --> 00:01:32,273 そんな技術が必要な理由は 39 00:01:32,273 --> 00:01:34,968 我々の脳は非常に複雑に できているからです 40 00:01:35,484 --> 00:01:38,371 20世紀を通して 我々が神経科学で学んだ事は 41 00:01:38,395 --> 00:01:40,698 脳は非常に複雑なネットワークであり 42 00:01:40,722 --> 00:01:43,202 特殊化した細胞 ニューロンが 43 00:01:43,226 --> 00:01:44,933 とても込み入った配置をなし 44 00:01:44,933 --> 00:01:49,154 この複雑に構成されたニューロンを通り 電気が流れているということです 45 00:01:49,653 --> 00:01:52,437 さらにネットワークを 作っているニューロンは 46 00:01:52,461 --> 00:01:56,296 シナプスという小さな結合部で繫がり 化学物質で伝達し合い 47 00:01:56,320 --> 00:01:58,538 互いに情報交換をしています 48 00:01:58,562 --> 00:02:00,502 我々の脳の密度はとても高く 49 00:02:00,526 --> 00:02:02,833 脳の1ミリ立方メートル内に 50 00:02:02,857 --> 00:02:05,314 約十万個のニューロン 51 00:02:05,338 --> 00:02:07,855 十億ものシナプスがあり得るということです 52 00:02:08,887 --> 00:02:10,269 それだけではなく 53 00:02:10,293 --> 00:02:12,598 1つのニューロンにズームインしてみると 54 00:02:12,622 --> 00:02:15,372 もちろんこれは概念図にすぎませんが― 55 00:02:15,396 --> 00:02:19,603 何千種もの生体分子が見られ 56 00:02:19,627 --> 00:02:24,027 その小さなナノスケールの生体分子が 複雑な3Dの形態で構成され 57 00:02:24,051 --> 00:02:26,679 共に電気のパルスを送り 58 00:02:26,703 --> 00:02:30,640 化学物質を交換し合い ニューロンを恊働させ 59 00:02:30,664 --> 00:02:33,217 思考や感情などを生み出しています 60 00:02:33,217 --> 00:02:36,715 ニューロンがどのように脳内に ネットワークを作っているのか 61 00:02:36,715 --> 00:02:38,213 分かっていません 62 00:02:38,213 --> 00:02:40,207 このような生体分子が 63 00:02:40,207 --> 00:02:42,755 どのようにニューロン内で組織化され 64 00:02:42,755 --> 00:02:45,930 こうした複雑に組織立った機能を 持っているのか分かっていません 65 00:02:45,930 --> 00:02:47,738 本当にこれを理解したいなら 66 00:02:47,762 --> 00:02:49,579 新しいテクノロジーが必要になるでしょう 67 00:02:49,603 --> 00:02:51,387 そんな地図を手に入れて 68 00:02:51,411 --> 00:02:53,218 分子とニューロンや 69 00:02:53,218 --> 00:02:55,944 ニューロンとネットワークの構成が 見られたとしたら 70 00:02:55,968 --> 00:02:59,239 恐らく我々の脳がどうやって 知覚野からの情報を 71 00:02:59,239 --> 00:03:00,200 処理して 72 00:03:00,200 --> 00:03:01,650 感情や感覚とミックスして 73 00:03:01,650 --> 00:03:05,044 我々を決断や行動に移らせるのか 本当に理解できるかも知れません 74 00:03:05,131 --> 00:03:08,204 的確にどの分子グループが 脳の疾患を起こしているか 75 00:03:08,204 --> 00:03:10,146 探し出せるかも知れません 76 00:03:10,170 --> 00:03:12,992 一旦 分子がどのように 変わったかが分かれば 77 00:03:13,016 --> 00:03:15,796 問題の分子が増えようと パターンが変わろうと 78 00:03:15,820 --> 00:03:18,759 その情報を新薬の標的として 79 00:03:18,783 --> 00:03:21,774 脳にエネルギーを送り込む 新しい方法の為に使い 80 00:03:21,774 --> 00:03:24,312 脳疾患を持つ患者の脳機能を 81 00:03:24,312 --> 00:03:27,281 修復することができるでしょう 82 00:03:27,793 --> 00:03:30,260 前世紀に生まれた 多種多様なテクノロジーを使い 83 00:03:30,260 --> 00:03:32,756 我々はこの問題に取り組もうとして来ました 84 00:03:32,756 --> 00:03:34,130 脳画像を撮る 85 00:03:34,154 --> 00:03:36,188 MRIはご存知だと思います 86 00:03:36,212 --> 00:03:39,559 これは非侵襲的で 高性能であり 87 00:03:39,583 --> 00:03:41,938 生きているヒトに使えますが 88 00:03:42,407 --> 00:03:44,638 空間解像度は低く 89 00:03:44,662 --> 00:03:47,652 ボクセルと呼ばれる画素の1つ1つは 90 00:03:47,676 --> 00:03:50,359 何百万ものニューロンを含んでいます 91 00:03:50,379 --> 00:03:53,199 それで この解像度のレベルでは 92 00:03:53,199 --> 00:03:54,801 分子レベルの変化や 93 00:03:54,825 --> 00:03:57,111 ヒトの意識を制御する高い能力に関わる 94 00:03:57,135 --> 00:04:01,081 神経ネットワークの配線の変化を 突き止めることはできません 95 00:04:01,797 --> 00:04:04,978 その一方 顕微鏡もありますね 96 00:04:05,002 --> 00:04:08,297 勿論 顕微鏡は微細なものを 見るために光を使います 97 00:04:08,321 --> 00:04:11,396 何世紀もバクテリアのようなものを 見るのに使われてきました 98 00:04:11,420 --> 00:04:12,571 神経科学において 99 00:04:12,595 --> 00:04:16,007 神経細胞は顕微鏡を使い発見された というのが始まりで 100 00:04:16,031 --> 00:04:17,323 130年程前のことです 101 00:04:17,347 --> 00:04:20,625 しかし顕微鏡で見られるものは 基本的に限られています 102 00:04:20,625 --> 00:04:22,987 普通の顕微鏡では 分子は見分けられません 103 00:04:23,011 --> 00:04:25,163 小さな結合部分を見ることができません 104 00:04:25,187 --> 00:04:29,129 脳をもっと詳細を鮮明に見られるようにして 105 00:04:29,153 --> 00:04:31,321 脳の構造を根本から把握したいならば 106 00:04:31,345 --> 00:04:34,625 もっと進んだテクノロジーが 必要になって来るでしょう 107 00:04:35,611 --> 00:04:37,835 数年前 私の研究グループは こう考え始めました 108 00:04:37,859 --> 00:04:39,271 「逆から考えてみよう 109 00:04:39,295 --> 00:04:41,756 脳にズームインするのがそんなに難しいなら 110 00:04:41,780 --> 00:04:43,723 脳を大きくできないだろうか?」 111 00:04:44,166 --> 00:04:45,321 まず2人の大学院生の 112 00:04:45,345 --> 00:04:48,341 フェイ・チェンとポール・ティルバーグ と共に始めました 113 00:04:48,365 --> 00:04:51,085 今では私のグループの多くが このプロセスに参加しています 114 00:04:51,109 --> 00:04:53,871 紙おむつに使われている ポリマーが使えるかどうか 115 00:04:53,895 --> 00:04:55,524 脳内に実際埋め込んで 116 00:04:55,548 --> 00:04:57,554 検討してみる事にしました 117 00:04:57,578 --> 00:04:59,819 それが きちんと入り 水を加えると 118 00:04:59,843 --> 00:05:01,678 こうして脳を膨らますことができ 119 00:05:01,702 --> 00:05:05,079 微細な生体分子の1つ1つが 見分けられます 120 00:05:05,103 --> 00:05:07,973 その結合の仕方を見て 脳の地図ができます 121 00:05:07,997 --> 00:05:09,985 これはかなり劇的なことになりかねません 122 00:05:10,009 --> 00:05:13,017 その小さなデモを持ってきました 123 00:05:13,538 --> 00:05:16,113 ここに精製された紙おむつの素材があります 124 00:05:16,137 --> 00:05:18,411 ネットで買った方が 125 00:05:18,435 --> 00:05:21,910 オムツに実際に含まれている 少量のポリマーを抽出するよりは 126 00:05:21,934 --> 00:05:24,159 ここに小さじ1杯分の 127 00:05:24,706 --> 00:05:26,500 精製されたポリマーが入っています 128 00:05:27,270 --> 00:05:29,422 ここに水があります 129 00:05:29,446 --> 00:05:30,608 今から 130 00:05:30,632 --> 00:05:33,643 一さじの紙おむつ素材 ポリマーが 131 00:05:33,667 --> 00:05:35,376 大きくなるかどうか見ます 132 00:05:36,687 --> 00:05:40,383 千倍ほどに膨らむのが 133 00:05:40,407 --> 00:05:42,043 今 見えてきますよ 134 00:05:49,597 --> 00:05:51,569 もっと水を入れてもいいのですが 135 00:05:51,593 --> 00:05:53,151 これでポリマーが 136 00:05:53,175 --> 00:05:56,247 とても興味深い分子だと お分かりになると思います 137 00:05:56,247 --> 00:05:57,613 正しく使えば 138 00:05:57,637 --> 00:05:59,958 今までのテクノロジーでは できないやり方で 139 00:05:59,982 --> 00:06:02,576 本当に脳内にズームイン できるかもしれません 140 00:06:03,227 --> 00:06:05,281 今度は 化学をちょっと 141 00:06:05,305 --> 00:06:07,747 紙おむつのポリマーでは 何が起きているのでしょう? 142 00:06:07,771 --> 00:06:09,447 ズームインしてみると 143 00:06:09,471 --> 00:06:12,144 スライドのように 144 00:06:12,168 --> 00:06:16,660 ポリマーは原子が細長い鎖状になったものです 145 00:06:16,684 --> 00:06:18,051 鎖はとても細く 146 00:06:18,075 --> 00:06:19,939 生体分子の太さくらいです 147 00:06:19,963 --> 00:06:21,710 とても密度が高く 148 00:06:21,734 --> 00:06:23,234 鎖間の距離は 149 00:06:23,258 --> 00:06:25,510 生体分子サイズ位です 150 00:06:25,534 --> 00:06:26,699 これが とてもいいことなのは 151 00:06:26,723 --> 00:06:29,764 脳内の全てのものを分離させられる かもしれないからです 152 00:06:29,788 --> 00:06:31,636 水を加えると 153 00:06:31,660 --> 00:06:34,175 この膨潤性のある材料は水を吸収します 154 00:06:34,199 --> 00:06:36,599 ポリマーの鎖同士の距離間が広がり 155 00:06:36,623 --> 00:06:39,257 素材全体が膨張します 156 00:06:39,615 --> 00:06:41,429 ポリマーの鎖はとても細く 157 00:06:41,453 --> 00:06:44,208 その間隔は生体分子サイズなので 158 00:06:44,208 --> 00:06:45,721 詳しく見られるほど 脳を膨らませることができるでしょう 159 00:06:45,745 --> 00:06:47,378 詳しく見られるほど 脳を膨らませることができるでしょう 160 00:06:48,020 --> 00:06:49,260 しかし 問題は 161 00:06:49,284 --> 00:06:52,894 脳の生体分子を分離するため どうやって こんなポリマーの鎖を 162 00:06:52,918 --> 00:06:55,157 脳内につくれるか ということです 163 00:06:55,181 --> 00:06:56,332 それができれば 164 00:06:56,356 --> 00:06:58,753 脳地図を作ることが可能となり 165 00:06:58,777 --> 00:07:00,166 神経回路が見られるでしょう 166 00:07:00,190 --> 00:07:03,347 こうして中をのぞき 分子を見る事ができます 167 00:07:03,925 --> 00:07:06,406 これを説明するため アニメーションを作成しました 168 00:07:06,430 --> 00:07:09,033 この概念図で示すのは 169 00:07:09,057 --> 00:07:12,598 生体分子がどのように見えるか そして それらの分離の様子です 170 00:07:12,622 --> 00:07:15,171 ステップ1:まず しなくてはならない事は 171 00:07:15,195 --> 00:07:18,584 茶色で示してある 生体分子全てに 172 00:07:18,608 --> 00:07:20,767 小さな取っ手をつけます 173 00:07:20,791 --> 00:07:23,886 脳の分子を1つずつ 離さなくてはならないので 174 00:07:23,910 --> 00:07:26,236 それには 小さな取っ手が要ります 175 00:07:26,260 --> 00:07:28,545 ポリマーを取っ手と結合させ 176 00:07:28,569 --> 00:07:30,111 力を伝えます 177 00:07:31,278 --> 00:07:34,439 ただ紙おむつのポリマーを 脳の上に置いたら 178 00:07:34,463 --> 00:07:36,500 脳の表面に乗っかっているだけです 179 00:07:36,524 --> 00:07:39,052 ポリマーを脳内に入れる方法を 考え出す必要があります 180 00:07:39,076 --> 00:07:40,864 ここがとても幸運なところで 181 00:07:40,888 --> 00:07:43,076 モノマーと呼ばれる単量体を 182 00:07:43,100 --> 00:07:44,472 これに使えるのです 183 00:07:44,496 --> 00:07:46,280 それを脳内に入れて 184 00:07:46,304 --> 00:07:48,340 化学反応を引き起こさせ 185 00:07:48,364 --> 00:07:51,066 この長いポリマーの鎖を 作る事ができるのです 186 00:07:51,090 --> 00:07:52,888 脳の組織内 その場でです 187 00:07:53,325 --> 00:07:55,722 ポリマーは生体分子の周りや 188 00:07:55,746 --> 00:07:56,967 分子間に巻き付き 189 00:07:56,991 --> 00:07:58,616 複雑な網を作り 190 00:07:58,640 --> 00:08:01,502 最後には分子を お互いから引き離します 191 00:08:01,526 --> 00:08:02,701 最後には分子を お互いから引き離します 192 00:08:02,725 --> 00:08:05,779 取っ手の1つがあれば 193 00:08:05,803 --> 00:08:09,153 ポリマーは取っ手に結合します まさにこれが必要なことで 194 00:08:09,177 --> 00:08:11,708 これが分子をお互いから引き離すのです 195 00:08:11,732 --> 00:08:13,825 実は ここで重要な事が1つ 196 00:08:13,825 --> 00:08:15,597 試料を薬品で処理し 197 00:08:15,621 --> 00:08:18,487 分子の繫がりをほぐさなくてはなりません 198 00:08:18,487 --> 00:08:20,927 そうすれば水を加えると 199 00:08:20,951 --> 00:08:23,904 膨潤性のある素材は 水を吸い始めるのです 200 00:08:23,928 --> 00:08:25,781 ポリマーの鎖は互いに遠のき始め 201 00:08:25,781 --> 00:08:28,737 それと共に生体分子が お互い遠のき合います 202 00:08:28,737 --> 00:08:30,565 それは風船に 絵を描くのと似ています 203 00:08:30,589 --> 00:08:32,176 そのまま風船を膨らませても 204 00:08:32,200 --> 00:08:33,870 上に描かれたイメージは同じですが 205 00:08:33,870 --> 00:08:36,062 絵のインク分子は 1つ1つ遠のいて行きます 206 00:08:36,086 --> 00:08:39,553 それと同じ事が3Dでできたのです 207 00:08:39,577 --> 00:08:41,576 最後に1つの工夫があります 208 00:08:41,600 --> 00:08:42,818 ここに見られるように 209 00:08:42,842 --> 00:08:44,951 生体分子は全部茶色に 色分けしてあります 210 00:08:44,975 --> 00:08:47,145 どれもみんな似ているからです 211 00:08:47,169 --> 00:08:49,274 生体分子は同じ原子からできていますが 212 00:08:49,298 --> 00:08:51,538 ただその並び方が違うのです 213 00:08:51,562 --> 00:08:53,062 それで最後にあるものが 214 00:08:53,086 --> 00:08:54,781 分子を見分ける為に必要です 215 00:08:54,805 --> 00:08:56,384 小さな名札です 216 00:08:56,408 --> 00:08:59,427 光る染料で生体分子を 見分けるようにします 217 00:08:59,451 --> 00:09:02,124 ある種の生体分子は青で 218 00:09:02,148 --> 00:09:04,499 別の種類は赤という風に 219 00:09:04,523 --> 00:09:05,799 種類別に色を変えます 220 00:09:05,823 --> 00:09:07,375 それが最後の段階です 221 00:09:07,399 --> 00:09:09,677 これで脳の 222 00:09:09,701 --> 00:09:11,497 分子を1つ1つ見る事ができます 223 00:09:11,521 --> 00:09:14,228 なぜなら分子同士が十分離れているので 224 00:09:14,252 --> 00:09:15,950 個々の分子を識別できるからです 225 00:09:15,974 --> 00:09:19,508 ここでは今まで視認できなかったものを 見えるようにすることが目標です 226 00:09:19,508 --> 00:09:21,528 小さくはっきりしないしないものを 227 00:09:21,528 --> 00:09:22,573 膨らませて 228 00:09:22,597 --> 00:09:25,774 生物が持つ情報の集合体が 星座のように見られます 229 00:09:25,798 --> 00:09:28,173 これがその様子を示す 実際のビデオです 230 00:09:28,197 --> 00:09:30,568 培養皿に小さな脳が・・・ 231 00:09:30,592 --> 00:09:32,339 脳の一部が少しあります 232 00:09:32,363 --> 00:09:33,959 ポリマーが注入されています 233 00:09:33,983 --> 00:09:35,450 これに水を加えます 234 00:09:35,474 --> 00:09:37,246 皆様の目の前で起こるのは・・・ 235 00:09:37,246 --> 00:09:39,779 このビデオは60倍に 圧縮されています 236 00:09:39,803 --> 00:09:42,528 この小さな脳組織が大きくなります 237 00:09:42,552 --> 00:09:45,732 百倍あるいはそれ以上の大きさにもなり得ます 238 00:09:45,756 --> 00:09:48,705 これが巧くできているのは ポリマーがとても小さいので 239 00:09:48,729 --> 00:09:51,288 生体分子を等間隔に 分離させている事です 240 00:09:51,312 --> 00:09:52,970 スムーズな膨張です 241 00:09:52,994 --> 00:09:55,681 情報の配置関係は失われてはいません 242 00:09:55,705 --> 00:09:58,405 ただ見やすくしているだけです 243 00:09:59,333 --> 00:10:01,509 これで実際の脳の神経回路を 見る事ができます 244 00:10:01,533 --> 00:10:04,667 例えば ここに記憶を司る 脳の部分があります 245 00:10:04,691 --> 00:10:05,954 ここにズームインして 246 00:10:05,978 --> 00:10:08,868 神経回路がどのように配線されているか 見る事ができます 247 00:10:08,892 --> 00:10:11,550 恐らく将来は記憶を 読み取れるようになるかも 248 00:10:11,550 --> 00:10:13,217 神経回路がどのようになって 249 00:10:13,217 --> 00:10:14,839 感情を生み出しているのか 250 00:10:14,863 --> 00:10:18,095 神経回路の繫がりがどうなって ヒトとしての我々を作っているのか 251 00:10:18,095 --> 00:10:20,376 見られるようになるかも知れません 252 00:10:20,400 --> 00:10:22,447 もちろん うまく行けば 的確に 253 00:10:22,471 --> 00:10:25,630 脳内の実際の問題箇所を 分子レベルで突き止められるので 254 00:10:25,654 --> 00:10:28,223 脳内の細胞を実際に見て 255 00:10:28,247 --> 00:10:33,420 「この17個の分子が脳組織に変化を起こして てんかんの原因となっているんだ」 256 00:10:33,420 --> 00:10:34,809 とか 257 00:10:34,833 --> 00:10:36,483 パーキンソン病における推移を見られ 258 00:10:36,507 --> 00:10:38,824 または修復できるとしたらすごいですね 259 00:10:38,824 --> 00:10:41,091 悪い箇所の系統立ったリストが手に入るなら 260 00:10:41,115 --> 00:10:43,314 それが治療の標的となり 261 00:10:43,338 --> 00:10:45,015 そこに結合する薬が作られます 262 00:10:45,039 --> 00:10:47,666 脳の特定箇所に 集中的にエネルギー照射をして 263 00:10:47,690 --> 00:10:50,377 パーキンソン病やてんかんの患者や 264 00:10:50,401 --> 00:10:52,952 その他の脳疾患を持つ 世界中の十億以上の人々を 265 00:10:52,976 --> 00:10:54,189 助けられるかも知れません 266 00:10:55,246 --> 00:10:57,452 面白いことが今起きています 267 00:10:57,476 --> 00:11:01,081 医学において生体分子を 拡大して観察できることが 268 00:11:01,081 --> 00:11:03,091 助けとなる他の問題があるのです 269 00:11:03,091 --> 00:11:06,129 これは乳がん患者の生検材料です 270 00:11:06,505 --> 00:11:08,693 このように癌や 271 00:11:08,717 --> 00:11:10,328 免疫組織など 272 00:11:10,352 --> 00:11:12,865 また加齢や成長過程を見ると 273 00:11:12,889 --> 00:11:17,386 これらは全て 生物学的システム全体が関与していますが 274 00:11:17,410 --> 00:11:21,434 もちろん それらの問題は 人体が機能する為の細胞や臓器を作る 275 00:11:21,458 --> 00:11:25,327 ナノスケールの分子から始まっています 276 00:11:25,351 --> 00:11:27,573 そこで今 我々は 277 00:11:27,597 --> 00:11:31,063 様々な病気に広く使えないかと このテクノロジーを使い 278 00:11:31,087 --> 00:11:33,702 生命の構成単位の地図作りに 取り組んでいます 279 00:11:33,702 --> 00:11:36,752 癌に起きる分子の変化を ピンポイントで見つけ 280 00:11:36,752 --> 00:11:38,145 巧い方法でそれを捉えて 281 00:11:38,169 --> 00:11:42,113 ちょうどその箇所に薬を運び 除きたい細胞だけをとり除けないか? 282 00:11:42,137 --> 00:11:44,472 ご存知のように薬の多くには 危険を伴い 283 00:11:44,496 --> 00:11:46,688 時には当てずっぽうで投与されます 284 00:11:46,688 --> 00:11:50,501 私の希望は月に行くかのような 危険性の高い無謀な治療を 285 00:11:50,525 --> 00:11:52,294 もっと確かなものにすることです 286 00:11:52,318 --> 00:11:54,373 もっとも実際にあった月旅行は 287 00:11:54,397 --> 00:11:56,295 月に着陸したので 288 00:11:56,319 --> 00:11:57,763 堅固な科学に基づいていました 289 00:11:57,787 --> 00:11:58,684 重力や 290 00:11:58,684 --> 00:12:00,755 空気力学の理解に基づき 291 00:12:00,779 --> 00:12:02,174 宇宙船は作られました 292 00:12:02,198 --> 00:12:04,666 リスクが科学的にコントロールされた 293 00:12:04,690 --> 00:12:07,443 それは それは偉大なる 技術の集結でしたが 294 00:12:07,467 --> 00:12:10,112 医療では そんな法則が 必ずしもあるとは言えません 295 00:12:10,136 --> 00:12:13,245 医療に重力や空気力学のような 296 00:12:13,269 --> 00:12:15,613 そんな法則がありますか? 297 00:12:15,637 --> 00:12:17,367 今日私が話しているような 298 00:12:17,391 --> 00:12:19,263 テクノロジーを使いそんな法則を 299 00:12:19,287 --> 00:12:20,980 導き出せるかもしれません 300 00:12:21,004 --> 00:12:23,861 生体のシステム内で 起きているパターンの地図を作り 301 00:12:23,885 --> 00:12:28,443 我々を悩ます病気を克服する方法を 見つけられます 302 00:12:29,499 --> 00:12:31,578 私と妻には幼い二人の子供たちがいます 303 00:12:31,602 --> 00:12:34,836 生物工学者として私は 子供たちのために今より良い未来をと 304 00:12:34,860 --> 00:12:36,589 願っています 305 00:12:36,613 --> 00:12:40,343 そして生物学と医療を 306 00:12:40,367 --> 00:12:44,724 偶然と運にだけに頼る 危険性の高い試みから 307 00:12:44,748 --> 00:12:48,675 日々精進して技能を磨き 可能なものにできるならば 308 00:12:48,699 --> 00:12:50,597 それは 大きな進歩となるでしょう 309 00:12:50,621 --> 00:12:51,827 ありがとうございました 310 00:12:51,851 --> 00:12:56,354 (拍手)