WEBVTT 00:00:00.695 --> 00:00:02.599 9歳のとき 00:00:02.599 --> 00:00:05.447 母に「どんなお家がほしい」と聞かれ 00:00:06.037 --> 00:00:08.520 私は このキノコの家を描きました 00:00:08.520 --> 00:00:11.794 すると 母はその通りに 建ててくれました 00:00:11.794 --> 00:00:13.791 (笑) NOTE Paragraph 00:00:13.791 --> 00:00:16.415 当時 それが特別なこととは 思いもせず 00:00:16.415 --> 00:00:17.947 きっと今もそうでしょう 00:00:17.947 --> 00:00:20.746 私は家の設計を ずっとしていますから 00:00:23.325 --> 00:00:26.698 こちらは 特注の6階建の家で バリ島にあります 00:00:26.698 --> 00:00:29.670 ほぼ全てが 竹でできています 00:00:30.360 --> 00:00:33.797 4階のリビングからは 谷間が一望でき 00:00:34.967 --> 00:00:36.781 橋を渡って 家に入ります 00:00:38.548 --> 00:00:40.405 熱帯の暑さを しのぐため 00:00:40.405 --> 00:00:44.170 大きくカーブした屋根にし 風を取り入れています 00:00:45.760 --> 00:00:49.498 背の高い窓を設け 自然の空調をきかせつつ 00:00:49.498 --> 00:00:52.970 虫が入らないようにした 部屋もあります 00:00:53.515 --> 00:00:55.233 こちらは 開放的な部屋に 00:00:55.233 --> 00:00:57.995 空気の流れる 天幕型の ベッドを用意しました 00:00:58.935 --> 00:01:02.569 リビングの角にテレビ部屋がほしい というクライアント 00:01:02.569 --> 00:01:06.332 高い壁で囲うのは しっくり来なかったので 00:01:06.332 --> 00:01:10.510 このように 巨大な繭(まゆ)型の 部屋を作りました NOTE Paragraph 00:01:12.477 --> 00:01:16.630 必要な贅沢品もあります 例えば お手洗い 00:01:16.630 --> 00:01:20.999 こちらは リビングの隅にある かご型のお手洗いです 00:01:20.999 --> 00:01:24.513 言っておきますと 使うのに抵抗があるかもしれません 00:01:24.513 --> 00:01:27.485 防音が まだ十分ではないんです 00:01:27.485 --> 00:01:29.923 (笑) 00:01:29.923 --> 00:01:32.500 まだ色々と 試行錯誤中ではありますが 00:01:32.500 --> 00:01:34.700 一つ 私が学んだのは 00:01:34.700 --> 00:01:37.937 うまく使えば 竹はそれに応えてくれることです NOTE Paragraph 00:01:38.907 --> 00:01:40.952 竹は 野生のイネ科の植物です 00:01:40.952 --> 00:01:43.924 深い峡谷や山腹など 耕作に向かない土地でも育ちます 00:01:43.924 --> 00:01:47.267 深い峡谷や山腹など 耕作に向かない土地でも育ちます 00:01:47.267 --> 00:01:51.493 雨水 わき水 日光があれば育つのです 00:01:51.493 --> 00:01:56.253 世界には1,450種の竹があり 00:01:56.253 --> 00:01:58.691 私たちが使うのは そのうち7種類です NOTE Paragraph 00:01:58.691 --> 00:02:00.119 こちらは父です 00:02:00.119 --> 00:02:02.220 父の影響で 私は竹の建築を始めました 00:02:02.220 --> 00:02:04.310 父は 竹の群生のなかにいますが 00:02:04.310 --> 00:02:08.327 7年前に植えた デンドロカラムスという巨大竹です 00:02:08.327 --> 00:02:11.369 毎年 新しい芽を出します 00:02:11.369 --> 00:02:16.143 先週 その若竹が3日間で1メートル 成長したのを目の当たりにしたところです 00:02:16.143 --> 00:02:20.756 竹は 3年で建築資材となる 持続可能性を備えた材料なのです NOTE Paragraph 00:02:23.225 --> 00:02:26.638 私たちは 家族で保有する 数百の群生から竹を採っています 00:02:26.638 --> 00:02:29.290 「べトン」と呼ぶ こちらの竹はとても長く 00:02:29.290 --> 00:02:30.956 最長18mの建築材となります 00:02:30.956 --> 00:02:33.487 トラックで竹を麓まで 運ぼうとしているところです 00:02:33.487 --> 00:02:37.133 竹は とても強く 鉄のように しなり 00:02:37.133 --> 00:02:39.849 コンクリートのような 圧縮力があります 00:02:39.849 --> 00:02:42.775 竹の棹(さお)は 1本で4トンの重さに 00:02:42.775 --> 00:02:45.492 耐えられるほどです 00:02:45.492 --> 00:02:48.690 中が空洞で 非常に軽く 00:02:48.690 --> 00:02:51.410 男性数人で持ち上げられるほどです 00:02:51.410 --> 00:02:54.130 もちろん女性一人でも大丈夫 NOTE Paragraph 00:02:54.130 --> 00:02:59.700 (笑)(拍手) NOTE Paragraph 00:03:02.279 --> 00:03:06.435 父がバリ島に グリーン・スクールを建てたとき 00:03:06.435 --> 00:03:09.639 キャンパス内の建物は すべて竹で作りました 00:03:09.639 --> 00:03:11.892 父なりの「約束」だったのです 00:03:11.892 --> 00:03:13.796 子どもたちへの「約束」です 00:03:13.796 --> 00:03:17.856 持続可能な材料で なくなることのない 竹に思いをこめたのです 00:03:18.547 --> 00:03:22.694 6年前に建築中の建物を 初めて見たとき 00:03:22.694 --> 00:03:26.780 まさに理にかなったものだ と思いました 00:03:26.780 --> 00:03:28.893 竹はそこら中に生えています 00:03:28.893 --> 00:03:31.283 強くてエレガントでもあります 00:03:31.283 --> 00:03:33.514 地震にも耐性があります 00:03:33.514 --> 00:03:37.610 なぜもっと早くしなかったのか― 次は何ができるだろうと考え NOTE Paragraph 00:03:37.610 --> 00:03:42.637 グリーン・スクール建設に 初期から関わったメンバー数名と 00:03:42.637 --> 00:03:44.613 「IBUKU(イブク)」を設立しました 00:03:44.613 --> 00:03:50.271 IBUは「母」 KUは「私の」という意味で 「母なる大地」を表わしています 00:03:50.271 --> 00:03:55.363 私たち IBUKUは 職人、建築家、デザイナーのチームで 00:03:55.363 --> 00:03:59.916 新しい建築のあり方を 創造しています 00:04:00.316 --> 00:04:02.677 この5年あまり 共に活動を続け 00:04:02.677 --> 00:04:07.666 50以上のユニークな建物を誕生させました ほとんどがバリ島にあります 00:04:08.737 --> 00:04:11.779 うち9つの建物は グリーン・ビレッジにあり― 00:04:11.779 --> 00:04:14.612 さきほど ご紹介した建物は ここにあります― 00:04:14.612 --> 00:04:18.776 オーダーメイドの家具を入れ 00:04:18.776 --> 00:04:20.834 まわりには菜園を設けました 00:04:20.834 --> 00:04:23.946 皆さんにも いつか ぜひお越しいただきたいです 00:04:23.946 --> 00:04:26.974 滞在中にグリーン・スクールも ご覧になれます 00:04:26.974 --> 00:04:29.588 スクールでは 毎年 新しい教室を作っています 00:04:29.588 --> 00:04:32.874 最新版のキノコの家も お楽しみいただけます NOTE Paragraph 00:04:34.548 --> 00:04:37.938 輸出用の小さな家作りにも 取り組んでいます 00:04:37.938 --> 00:04:41.119 こちらは スンバ島の伝統的な家を 再現したもので 00:04:41.119 --> 00:04:44.346 布地などの 細部に至るまで同じです 00:04:45.056 --> 00:04:49.310 オープンエアのキッチンがある レストランです 00:04:49.310 --> 00:04:52.320 まさにキッチンという感じでしょう 00:04:52.320 --> 00:04:56.291 こちらの川にかかった橋は 22mの長さがあります NOTE Paragraph 00:04:57.150 --> 00:05:01.014 私たちの取組みは そんなに新しいことではありません 00:05:01.691 --> 00:05:06.220 小屋から 複雑な橋― このジャワ島の橋のようなものまで 00:05:06.220 --> 00:05:09.330 竹は 世界中の熱帯で ずっと使われてきました 00:05:09.330 --> 00:05:12.232 文字どおり 何万年もの間です 00:05:12.232 --> 00:05:18.290 竹のいかだで初めて漂着した島や 大陸まであります 00:05:18.290 --> 00:05:20.823 でも 最近までは 00:05:20.823 --> 00:05:25.444 虫害から確実に竹を守ることは ほぼ不可能であったため 00:05:25.444 --> 00:05:29.705 竹で作られたものは全て ダメになってしまいました 00:05:30.613 --> 00:05:32.981 竹は 保護しなければ 色あせますし 00:05:32.981 --> 00:05:36.371 処理を怠れば ほこりに やられてしまいます 00:05:36.371 --> 00:05:39.650 ですから 特にアジアでは 竹の家に住むのは 00:05:39.650 --> 00:05:43.546 よほど貧しいか 田舎者だけ と考える人がほとんどなのです 00:05:43.546 --> 00:05:46.146 よほど貧しいか 田舎者だけ と考える人がほとんどなのです NOTE Paragraph 00:05:46.146 --> 00:05:47.981 そこで 考えたのが 00:05:47.981 --> 00:05:50.326 どうやって彼らの認識を変え 00:05:50.326 --> 00:05:53.507 たとえ最高の素材ではないにせよ 00:05:53.507 --> 00:05:56.340 竹が建築に適している と納得させるかです NOTE Paragraph 00:05:56.340 --> 00:05:59.428 まず 必要だったのは 安全な処理方法です 00:05:59.428 --> 00:06:01.123 ホウ砂は自然の塩で 00:06:01.123 --> 00:06:03.839 竹に 建築材料としての 耐久性を与えてくれます 00:06:03.839 --> 00:06:06.602 正しく扱い 注意深く設計をすることで 00:06:06.602 --> 00:06:09.290 竹の建築は 一生ものになります NOTE Paragraph 00:06:10.390 --> 00:06:14.148 つぎに 傑出したものを 作り出すこと 00:06:14.148 --> 00:06:16.240 人々の心を動かすのです 00:06:16.240 --> 00:06:17.294 幸いにも 00:06:17.294 --> 00:06:19.168 バリでは職人技術を 育む文化があり 00:06:19.168 --> 00:06:21.143 職人が尊重されています 00:06:21.143 --> 00:06:23.970 これらに加えるのが 冒険的なスパイス 00:06:23.970 --> 00:06:27.105 地元で生まれた 新進気鋭の建築家 00:06:27.105 --> 00:06:30.530 デザイナー エンジニアです 00:06:30.530 --> 00:06:33.683 設計のとき 常に肝に銘じておくべきは 00:06:33.683 --> 00:06:37.451 曲がり 先細で空洞の筒を 扱うということです 00:06:37.451 --> 00:06:40.725 竹は どれ一つとして同じものはなく 直線もありません 00:06:40.725 --> 00:06:43.128 ツーバイフォーの木材 ではないのです 00:06:43.128 --> 00:06:48.109 建築界で実証された 精巧な方式や用語などは 00:06:48.109 --> 00:06:49.427 ここでは通用しません 00:06:49.427 --> 00:06:51.731 自らルールも作り出さないと いけませんでした 00:06:51.731 --> 00:06:56.198 何が得意で どうなりたいのか 竹の声に耳を傾け 00:06:56.198 --> 00:07:00.690 導かれた答えが 竹を尊重し その強みに合わせて設計し 00:07:00.690 --> 00:07:04.435 水から守り 曲線を生かす ということでした NOTE Paragraph 00:07:04.435 --> 00:07:06.336 リアル3Dで設計し 00:07:06.336 --> 00:07:08.159 構造模型を作るのにも 00:07:08.159 --> 00:07:11.258 実際の建築で使う素材を 使います 00:07:11.258 --> 00:07:13.278 竹の設計模型は それ自体が芸術で 00:07:13.278 --> 00:07:16.372 本格的なエンジニアリングでもあります NOTE Paragraph 00:07:22.752 --> 00:07:24.632 これが家の青写真です NOTE Paragraph 00:07:24.632 --> 00:07:27.042 (笑) NOTE Paragraph 00:07:27.042 --> 00:07:28.951 これを現場に持ち込み 00:07:28.951 --> 00:07:31.691 小さな巻尺で竹の棹を 一本一本 計測し 00:07:31.691 --> 00:07:36.288 曲がり具合を見て その場で たくさんの竹から 00:07:36.288 --> 00:07:38.813 模型を再現するのに ふさわしい竹を選び出しました NOTE Paragraph 00:07:40.064 --> 00:07:43.417 細部に至っては あらゆることを考慮します 00:07:43.417 --> 00:07:45.530 なぜドアは 長方形が多いのか 00:07:45.530 --> 00:07:46.876 なぜ丸ではないのか 00:07:46.876 --> 00:07:48.523 どうすれば ドアを良くできるか 00:07:48.523 --> 00:07:50.498 蝶番(ちょうつがい)と重力とでは 00:07:50.498 --> 00:07:52.658 重力が勝つに 決まっていますから 00:07:52.658 --> 00:07:55.398 最初から バランスが取れるよう 00:07:55.398 --> 00:07:57.650 中央に回転軸を 置いたらどうか 00:07:57.650 --> 00:08:02.316 それなら ドアを 涙型にしたらどうか NOTE Paragraph 00:08:02.316 --> 00:08:05.366 この素材にある 制約のなかで 00:08:05.366 --> 00:08:07.100 選り抜きの恩恵を 享受すべく 00:08:07.100 --> 00:08:09.329 私たちは自らを 限界まで押しやり 00:08:09.329 --> 00:08:13.916 その制約のなかで 新しい工夫の余地を見つけました 00:08:15.235 --> 00:08:17.525 まさにチャレンジです まっすぐな板もないのに 00:08:17.525 --> 00:08:20.660 どうやって 天井を作るというんでしょう 00:08:20.660 --> 00:08:25.210 正直なところ 時には 石膏ボードや合板がほしいと思います 00:08:25.210 --> 00:08:27.010 (笑) 00:08:27.710 --> 00:08:31.819 でも もし熟練した職人と 00:08:31.819 --> 00:08:34.490 ちょっと割竹があれば 00:08:34.490 --> 00:08:36.672 一緒に天井を編んで 00:08:36.672 --> 00:08:39.635 そこにキャンバスを広げて 漆を塗れます 00:08:39.635 --> 00:08:42.352 こんな風に 曲線でできた建物に合い 00:08:42.352 --> 00:08:45.904 頑丈なキッチン・カウンターを どう設計しますか 00:08:45.904 --> 00:08:48.737 食パンみたいに 岩をスライスし 00:08:48.737 --> 00:08:51.106 ピッタリ合うよう 手で削り 00:08:51.106 --> 00:08:53.427 固くなった表面は そのまま残しておきます 00:08:53.427 --> 00:08:57.677 つまり ほぼ全てが 手作りなんです 00:08:57.677 --> 00:08:59.813 私たちの建物の構造は 00:08:59.813 --> 00:09:04.695 鋼製の継ぎ手で強化できますが 手製の竹の留め具を大量に使います 00:09:04.695 --> 00:09:08.891 一つの階に 何千もの留め具が使われています 00:09:08.891 --> 00:09:13.883 こちらの床はつやつやして 丈夫な竹の皮でできています 00:09:13.883 --> 00:09:16.995 素足で その質感を 感じられます NOTE Paragraph 00:09:16.995 --> 00:09:19.610 どんな床を歩くかで 歩き方も 00:09:19.610 --> 00:09:21.453 変わるのでは ないでしょうか 00:09:21.453 --> 00:09:26.329 この世界に残す足跡までをも 変えるかもしれません 00:09:26.329 --> 00:09:28.279 9歳の私は 00:09:28.279 --> 00:09:30.183 感嘆の気持ちと 00:09:30.183 --> 00:09:32.200 可能性 00:09:32.200 --> 00:09:34.474 ちょっとした理想主義を 感じていました 00:09:34.474 --> 00:09:37.330 これからの道のりは まだまだ長く 00:09:37.330 --> 00:09:39.732 学ぶことは たくさんあります 00:09:39.732 --> 00:09:44.672 でも 確実なのは 創造力と強い思いがあれば 00:09:44.672 --> 00:09:49.223 美しさや快適さ、安全性 贅沢ささえ創り出せることです 00:09:49.223 --> 00:09:52.450 美しさや快適さ、安全性 贅沢ささえ創り出せることです 00:09:52.450 --> 00:09:55.408 必ず応えてくれる素材が ここに あるのですから NOTE Paragraph 00:09:55.408 --> 00:09:57.651 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:09:57.651 --> 00:10:03.451 (拍手)