9歳のとき
母に「どんなお家がほしい」と聞かれ
私は このキノコの家を描きました
すると 母はその通りに
建ててくれました
(笑)
当時 それが特別なこととは
思いもせず
きっと今もそうでしょう
私は家の設計を
ずっとしていますから
こちらは 特注の6階建の家で
バリ島にあります
ほぼ全てが
竹でできています
4階のリビングからは
谷間が一望でき
橋を渡って
家に入ります
熱帯の暑さを
しのぐため
大きくカーブした屋根にし
風を取り入れています
背の高い窓を設け
自然の空調をきかせつつ
虫が入らないようにした
部屋もあります
こちらは
開放的な部屋に
空気の流れる 天幕型の
ベッドを用意しました
リビングの角にテレビ部屋がほしい
というクライアント
高い壁で囲うのは
しっくり来なかったので
このように 巨大な繭(まゆ)型の
部屋を作りました
必要な贅沢品もあります
例えば お手洗い
こちらは リビングの隅にある
かご型のお手洗いです
言っておきますと
使うのに抵抗があるかもしれません
防音が まだ十分ではないんです
(笑)
まだ色々と
試行錯誤中ではありますが
一つ 私が学んだのは
うまく使えば
竹はそれに応えてくれることです
竹は 野生のイネ科の植物です
深い峡谷や山腹など
耕作に向かない土地でも育ちます
深い峡谷や山腹など
耕作に向かない土地でも育ちます
雨水 わき水
日光があれば育つのです
世界には1,450種の竹があり
私たちが使うのは
そのうち7種類です
こちらは父です
父の影響で
私は竹の建築を始めました
父は 竹の群生のなかにいますが
7年前に植えた
デンドロカラムスという巨大竹です
毎年 新しい芽を出します
先週 その若竹が3日間で1メートル
成長したのを目の当たりにしたところです
竹は 3年で建築資材となる
持続可能性を備えた材料なのです
私たちは 家族で保有する
数百の群生から竹を採っています
「べトン」と呼ぶ
こちらの竹はとても長く
最長18mの建築材となります
トラックで竹を麓まで
運ぼうとしているところです
竹は とても強く
鉄のように しなり
コンクリートのような
圧縮力があります
竹の棹(さお)は
1本で4トンの重さに
耐えられるほどです
中が空洞で 非常に軽く
男性数人で持ち上げられるほどです
もちろん女性一人でも大丈夫
(笑)(拍手)
父がバリ島に
グリーン・スクールを建てたとき
キャンパス内の建物は
すべて竹で作りました
父なりの「約束」だったのです
子どもたちへの「約束」です
持続可能な材料で なくなることのない
竹に思いをこめたのです
6年前に建築中の建物を
初めて見たとき
まさに理にかなったものだ
と思いました
竹はそこら中に生えています
強くてエレガントでもあります
地震にも耐性があります
なぜもっと早くしなかったのか―
次は何ができるだろうと考え
グリーン・スクール建設に
初期から関わったメンバー数名と
「IBUKU(イブク)」を設立しました
IBUは「母」 KUは「私の」という意味で
「母なる大地」を表わしています
私たち IBUKUは
職人、建築家、デザイナーのチームで
新しい建築のあり方を
創造しています
この5年あまり
共に活動を続け
50以上のユニークな建物を誕生させました
ほとんどがバリ島にあります
うち9つの建物は
グリーン・ビレッジにあり―
さきほど ご紹介した建物は
ここにあります―
オーダーメイドの家具を入れ
まわりには菜園を設けました
皆さんにも いつか
ぜひお越しいただきたいです
滞在中にグリーン・スクールも
ご覧になれます
スクールでは 毎年
新しい教室を作っています
最新版のキノコの家も
お楽しみいただけます
輸出用の小さな家作りにも
取り組んでいます
こちらは スンバ島の伝統的な家を
再現したもので
布地などの
細部に至るまで同じです
オープンエアのキッチンがある
レストランです
まさにキッチンという感じでしょう
こちらの川にかかった橋は
22mの長さがあります
私たちの取組みは
そんなに新しいことではありません
小屋から 複雑な橋―
このジャワ島の橋のようなものまで
竹は 世界中の熱帯で
ずっと使われてきました
文字どおり
何万年もの間です
竹のいかだで初めて漂着した島や
大陸まであります
でも 最近までは
虫害から確実に竹を守ることは
ほぼ不可能であったため
竹で作られたものは全て
ダメになってしまいました
竹は 保護しなければ
色あせますし
処理を怠れば
ほこりに やられてしまいます
ですから 特にアジアでは
竹の家に住むのは
よほど貧しいか 田舎者だけ
と考える人がほとんどなのです
よほど貧しいか 田舎者だけ
と考える人がほとんどなのです
そこで 考えたのが
どうやって彼らの認識を変え
たとえ最高の素材ではないにせよ
竹が建築に適している
と納得させるかです
まず 必要だったのは
安全な処理方法です
ホウ砂は自然の塩で
竹に 建築材料としての
耐久性を与えてくれます
正しく扱い
注意深く設計をすることで
竹の建築は
一生ものになります
つぎに 傑出したものを
作り出すこと
人々の心を動かすのです
幸いにも
バリでは職人技術を
育む文化があり
職人が尊重されています
これらに加えるのが
冒険的なスパイス
地元で生まれた
新進気鋭の建築家
デザイナー
エンジニアです
設計のとき
常に肝に銘じておくべきは
曲がり 先細で空洞の筒を
扱うということです
竹は どれ一つとして同じものはなく
直線もありません
ツーバイフォーの木材
ではないのです
建築界で実証された
精巧な方式や用語などは
ここでは通用しません
自らルールも作り出さないと
いけませんでした
何が得意で どうなりたいのか
竹の声に耳を傾け
導かれた答えが
竹を尊重し その強みに合わせて設計し
水から守り 曲線を生かす
ということでした
リアル3Dで設計し
構造模型を作るのにも
実際の建築で使う素材を
使います
竹の設計模型は
それ自体が芸術で
本格的なエンジニアリングでもあります
これが家の青写真です
(笑)
これを現場に持ち込み
小さな巻尺で竹の棹を
一本一本 計測し
曲がり具合を見て
その場で たくさんの竹から
模型を再現するのに
ふさわしい竹を選び出しました
細部に至っては
あらゆることを考慮します
なぜドアは
長方形が多いのか
なぜ丸ではないのか
どうすれば
ドアを良くできるか
蝶番(ちょうつがい)と重力とでは
重力が勝つに
決まっていますから
最初から
バランスが取れるよう
中央に回転軸を
置いたらどうか
それなら ドアを
涙型にしたらどうか
この素材にある
制約のなかで
選り抜きの恩恵を
享受すべく
私たちは自らを
限界まで押しやり
その制約のなかで
新しい工夫の余地を見つけました
まさにチャレンジです
まっすぐな板もないのに
どうやって
天井を作るというんでしょう
正直なところ 時には
石膏ボードや合板がほしいと思います
(笑)
でも もし熟練した職人と
ちょっと割竹があれば
一緒に天井を編んで
そこにキャンバスを広げて
漆を塗れます
こんな風に
曲線でできた建物に合い
頑丈なキッチン・カウンターを
どう設計しますか
食パンみたいに
岩をスライスし
ピッタリ合うよう
手で削り
固くなった表面は
そのまま残しておきます
つまり ほぼ全てが
手作りなんです
私たちの建物の構造は
鋼製の継ぎ手で強化できますが
手製の竹の留め具を大量に使います
一つの階に
何千もの留め具が使われています
こちらの床はつやつやして
丈夫な竹の皮でできています
素足で その質感を
感じられます
どんな床を歩くかで
歩き方も
変わるのでは
ないでしょうか
この世界に残す足跡までをも
変えるかもしれません
9歳の私は
感嘆の気持ちと
可能性
ちょっとした理想主義を
感じていました
これからの道のりは
まだまだ長く
学ぶことは
たくさんあります
でも 確実なのは
創造力と強い思いがあれば
美しさや快適さ、安全性
贅沢ささえ創り出せることです
美しさや快適さ、安全性
贅沢ささえ創り出せることです
必ず応えてくれる素材が
ここに あるのですから
ありがとうございました
(拍手)