WEBVTT

00:00:00.717 --> 00:00:05.514
みなさんをロゼッタと言う宇宙船の大冒険に
お連れしたいと思います

00:00:05.514 --> 00:00:09.540
彗星まで着陸機を送り届け
その上に降り立ち調査させるのです

00:00:09.540 --> 00:00:12.730
ここ２年間 これに情熱を傾けてきました

00:00:13.450 --> 00:00:14.545
これを行うために

00:00:14.545 --> 00:00:18.015
みなさんに太陽系の始まりについて
説明する必要があります

NOTE Paragraph

00:00:18.015 --> 00:00:20.238
45億年前

00:00:20.238 --> 00:00:21.957
ガスとチリでできた雲がありました

00:00:21.957 --> 00:00:26.484
この雲の真ん中で
私たちの太陽が形成され火がつきました

00:00:26.484 --> 00:00:32.195
それと同時に私たちがよく知っている惑星や
彗星 小惑星も形成されたのです

00:00:32.195 --> 00:00:35.608
この後何が起こったのか
理論によると―

00:00:35.608 --> 00:00:39.625
地球が形成されて
間もなく冷やされましたが

00:00:39.625 --> 00:00:44.396
そのとき 彗星が地球に落ちて
大きな衝撃を与え水をもたらしました

00:00:45.082 --> 00:00:49.516
水だけではなく複雑な有機物も
もたらされたと考えられます

00:00:49.516 --> 00:00:52.906
これが生命の出現をもたらしたのかもしれません

00:00:52.906 --> 00:00:56.366
これは言わば
250ピースのパズルを解くようなものです

00:00:56.366 --> 00:00:59.570
2000ピースのパズルではありませんよ

NOTE Paragraph

00:00:59.570 --> 00:01:03.053
木星や土星といった大きな惑星は

00:01:03.053 --> 00:01:05.631
今ある位置にはなかったんですが

00:01:05.631 --> 00:01:08.278
やがてこの２つの惑星は
重力に基づいて動き

00:01:08.278 --> 00:01:11.830
太陽系の中にあったさまざまなものを
きれいに整頓しました

00:01:11.830 --> 00:01:13.432
現在の彗星は
カイパーベルトと呼ばれるものに落ち着きました

00:01:13.432 --> 00:01:15.545
現在の彗星は
カイパーベルトと呼ばれるものに落ち着きました

00:01:15.545 --> 00:01:19.213
海王星の軌道の外にある
天体でできたベルトです

00:01:19.213 --> 00:01:22.906
これらの天体はお互いに衝突することがあります

00:01:22.906 --> 00:01:25.971
衝突した後 重力により
お互いから逸れていきます

00:01:25.971 --> 00:01:30.428
それを木星の重力が太陽系に引き戻すのです

00:01:30.428 --> 00:01:34.120
それが現在私たちが空で見ている彗星なのです

NOTE Paragraph

00:01:34.120 --> 00:01:37.394
ここで忘れてならないのは

00:01:37.394 --> 00:01:39.693
この45億年の間

00:01:39.693 --> 00:01:42.875
これら彗星はずっと太陽系の外に位置し

00:01:42.875 --> 00:01:44.290
何も変わっていないことです

00:01:44.290 --> 00:01:47.193
私たちのいる太陽系を
深く凍らせたようなものです

NOTE Paragraph

00:01:47.193 --> 00:01:49.282
私たちが空を見上げるとこのように見えます

00:01:49.282 --> 00:01:51.233
お馴染みのほうき星の尻尾です

00:01:51.233 --> 00:01:52.904
じつは 尻尾は２つあります

00:01:52.904 --> 00:01:56.759
１つはチリでできた尻尾
太陽風に吹かれてできます

00:01:56.759 --> 00:02:00.404
もうひとつはイオンの尻尾で
その正体は荷電粒子です

00:02:00.404 --> 00:02:03.143
この荷電粒子は太陽系の
磁場に沿って動きます

00:02:03.143 --> 00:02:04.292
彗星のコマです

00:02:04.292 --> 00:02:07.199
そして核があります
肉眼で見るには小さすぎます

00:02:07.199 --> 00:02:09.689
ここで忘れてはならないのが
ロゼッタの場合は―

00:02:09.689 --> 00:02:11.866
宇宙船はその真ん中の粒子の中なんです

00:02:11.866 --> 00:02:15.976
彗星からはわずか20～40km
しか離れていません

NOTE Paragraph

00:02:15.976 --> 00:02:18.297
ここで何が重要かというと

00:02:18.297 --> 00:02:23.166
彗星の中には太陽系が形成されたときに
あった物質が含まれていること

00:02:23.166 --> 00:02:25.526
ですから組成を分析するのに理想的なのです

00:02:25.526 --> 00:02:29.791
地球が生まれた時 生命が生まれた時に
存在していたものです

00:02:29.791 --> 00:02:31.673
彗星はこう考えられています

00:02:31.673 --> 00:02:35.944
生命の誕生のきっかけとなった元素を
乗せているのではないかとも

00:02:35.944 --> 00:02:40.309
1983年 欧州宇宙機関が
「ホライゾン2000」という長期計画を立て

00:02:40.309 --> 00:02:44.233
その中の試金石の１つとして
彗星の計画がありました

00:02:44.233 --> 00:02:49.123
それと平行して彗星の小さな計画
「ジョット」計画が開始しました

00:02:49.123 --> 00:02:55.329
1986年には ハレー艦隊の他の探査機と共に
ハレー彗星の近くを通過しました

00:02:55.329 --> 00:02:58.900
この計画の結果からすぐに明らかになったのは

00:02:58.900 --> 00:03:04.087
私たちの太陽系を理解する上で
彗星を研究することが理想的だということです

00:03:04.087 --> 00:03:08.599
そういった経緯を経て
ロゼッタ計画は1993年に承認されました

00:03:08.599 --> 00:03:12.234
もともとは2003年に打ち上げが
計画されていましたが

00:03:12.234 --> 00:03:14.858
打上げ機のアリアンロケットに
問題が発生したのです

00:03:14.858 --> 00:03:18.253
当時 われわれの広報は はやる気持ちから
デルフト・ブルーの記念の皿を


00:03:18.253 --> 00:03:20.145
すでに1000枚製作していました

00:03:20.145 --> 00:03:22.535
記載されている彗星の名前が
間違っていたおかげで

00:03:22.535 --> 00:03:26.102
それからというもの
お皿は買わなくてすんでいます

00:03:26.102 --> 00:03:27.821
（笑）

NOTE Paragraph

00:03:27.821 --> 00:03:29.701
問題がすべて解決し

00:03:29.701 --> 00:03:32.882
2004年に地球を離れました

00:03:32.882 --> 00:03:35.970
新しく選択された彗星
チュリュモフ・ゲラシメンコに向けて

00:03:35.970 --> 00:03:38.826
この彗星が選ばれたのには
特別な理由があります

00:03:38.826 --> 00:03:41.480
まずたどり着けること

00:03:41.480 --> 00:03:44.261
次に 太陽系内の滞在時間が長くないこと

00:03:44.261 --> 00:03:48.208
この彗星は1959年から太陽系にいますが

00:03:48.208 --> 00:03:51.523
その時初めて
木星の重力で引き付けられ

00:03:51.523 --> 00:03:54.500
太陽との距離が縮まり
太陽系内に入ったのです

00:03:54.500 --> 00:03:56.151
ですから 彗星としては新しいのです

NOTE Paragraph

00:03:56.611 --> 00:03:59.502
ロゼッタは史上初をいくつか成し遂げています

00:03:59.502 --> 00:04:02.018
彗星の軌道を回る史上初の人工衛星であり

00:04:02.018 --> 00:04:05.640
彗星が太陽系に滞在する間
ずっと追跡していますから

00:04:05.640 --> 00:04:08.938
太陽にもっとも近づいた衛星でもあります
８月にこの様子が見られます

00:04:08.938 --> 00:04:11.259
そして また外へと向かうわけです

00:04:11.259 --> 00:04:13.860
彗星に着陸するのも史上初です

00:04:13.860 --> 00:04:17.552
通常の宇宙探査機とは違う方法で

00:04:17.552 --> 00:04:19.001
彗星を周回しています

00:04:19.001 --> 00:04:22.636
通常は 空を見て目的地と
現在地を把握するわけですが

00:04:22.636 --> 00:04:24.772
この場合 それだけでは
十分ではありません

00:04:24.772 --> 00:04:28.070
彗星のランドマークを確認しながら
ナビゲーションします

00:04:28.070 --> 00:04:30.545
特徴を認識します
大きな石とかクレーターとか

00:04:30.545 --> 00:04:34.562
そうやって彗星に対して
自分がどこにいるか確認するのです

NOTE Paragraph

00:04:34.562 --> 00:04:39.091
そして 木星の軌道の外に出た
史上初の衛星でもありました

00:04:39.091 --> 00:04:40.292
太陽電池を使ってです

00:04:40.292 --> 00:04:42.619
こう言うと 少々オーバーに
聞こえるかもしれません

00:04:42.619 --> 00:04:47.715
放射性同位体熱発電機という技術は―

00:04:47.715 --> 00:04:51.013
当時 まだヨーロッパでは使えず
他に選択肢がなかっただけですから

00:04:51.013 --> 00:04:52.590
この太陽電池アレイは大きかった

00:04:52.590 --> 00:04:55.865
こちらは翼のひとつです
ここにいるのは小人ではありません

00:04:55.865 --> 00:04:57.699
皆さんや私と同じ
通常サイズの人間です

00:04:57.699 --> 00:05:00.090
（笑）

00:05:00.090 --> 00:05:04.291
こういった翼が２つあり
合わせて65平方メートルあります

00:05:04.291 --> 00:05:07.310
それで このあと彗星にたどり着いたら

00:05:07.310 --> 00:05:10.839
65平方メートルの翼を使って
ガスを噴出する天体の近くで

00:05:10.839 --> 00:05:16.481
航行するのは容易ではないとわかるはずです

NOTE Paragraph

00:05:16.481 --> 00:05:18.525
では どうやって彗星にたどり着いたのでしょうか

00:05:18.525 --> 00:05:22.193
ロゼッタの科学的目的のために
到達しなければならないのは

00:05:22.193 --> 00:05:26.001
地球から太陽までの距離の
４倍という長距離でした

00:05:26.001 --> 00:05:30.111
また 燃料で達成できる速度よりも
はるかに速い速度が必要でした

00:05:30.111 --> 00:05:34.430
宇宙探査機の重さの６倍の燃料がないと
達成できない速度だったんです

00:05:34.430 --> 00:05:35.840
さあ どうしたらいいのでしょう

00:05:35.840 --> 00:05:39.323
重力を利用して近傍通過したり
重力スリングショットを使いました

00:05:39.323 --> 00:05:42.690
かなりの低空飛行で惑星を通過するのです

00:05:42.690 --> 00:05:44.455
惑星との距離は数千キロメートル

00:05:44.455 --> 00:05:49.168
そうすると その惑星が持っている
公転速度がタダで得られます

00:05:49.168 --> 00:05:51.211
これを何度か繰り返しました

00:05:51.211 --> 00:05:53.690
地球と火星でこれを行い
再度 地球で２回やりました

00:05:53.690 --> 00:05:57.658
小惑星も利用しました
「ルテティア」と「ステインズ」です

00:05:58.318 --> 00:06:02.243
そうして2011年には これ以上
太陽から遠くなったら―

00:06:02.243 --> 00:06:06.792
宇宙船を救うことは無理なほど
太陽から離れました

00:06:06.792 --> 00:06:08.765
そのため冬眠しました

00:06:08.765 --> 00:06:12.103
時計ひとつを除き
すべてのスイッチを切りました

00:06:12.103 --> 00:06:15.614
こちらの白い線は ロゼッタの軌道です

00:06:15.614 --> 00:06:18.057
私たちの始点となっている円から比べて

00:06:18.057 --> 00:06:21.873
白い線が外に行くにつれて
楕円形になっています

00:06:21.873 --> 00:06:24.822
そうしてやっと彗星にたどり着きました

00:06:24.822 --> 00:06:29.187
2014年５月ランデブーの操作を開始しました

NOTE Paragraph

00:06:29.187 --> 00:06:33.784
そこへ行くまでに地球の近くを通り
カメラのテストをする意味で何枚か写真を撮りました

00:06:33.784 --> 00:06:35.962
地球の向こう側で月が昇ってくる様子です

00:06:35.962 --> 00:06:38.917
これは私たちが「セルフィー」
つまり「自撮り」と呼んでいるものです

00:06:38.917 --> 00:06:41.609
その頃はそんな言葉はありませんでしたが（笑）

00:06:41.609 --> 00:06:44.580
これは火星です
CIVAカメラで撮影しました

00:06:44.580 --> 00:06:46.912
着陸機に搭載されているカメラの１つです

00:06:46.912 --> 00:06:49.287
太陽電池アレイのすぐ下のようです

00:06:49.287 --> 00:06:52.760
火星と太陽電池アレイが遠くに見えます

NOTE Paragraph

00:06:53.450 --> 00:06:58.248
2014年１月に冬眠から目が覚めたとき

00:06:58.248 --> 00:07:00.903
彗星から200万kmの距離でしたが

00:07:00.903 --> 00:07:03.736
５月に 彗星にたどり着くべく
接近を始めました

00:07:03.736 --> 00:07:07.845
しかし 宇宙探査機の速度が速すぎました

00:07:07.845 --> 00:07:13.906
彗星よりも 時速2800 km
速度を落とす必要がありました

00:07:13.906 --> 00:07:15.763
８回操作をして

00:07:15.763 --> 00:07:18.340
ここを見ると中には
非常に大きなものがあります

00:07:18.340 --> 00:07:24.364
最初は 時速数百kmほど
減速しなければなりませんでした

00:07:24.364 --> 00:07:28.674
操作にかかった時間は７時間でした

00:07:28.674 --> 00:07:31.622
燃料を218キロ使い

00:07:31.622 --> 00:07:35.572
非常に神経を使う作業でした
当時はまだ2007年でしたから

00:07:35.572 --> 00:07:38.762
ロゼッタの推進力のシステムに
漏れがあったんです

00:07:38.762 --> 00:07:40.909
ブランチを遮断しなくてはなりませんでした

00:07:40.909 --> 00:07:43.487
ですから システムは実際には
圧力で動いていました

00:07:43.487 --> 00:07:46.785
そのようにデザインもされていなければ
その能力も証明されていないのに

NOTE Paragraph

00:07:47.795 --> 00:07:52.704
そのあと 彗星の近くまできたのですが
これが そのとき撮った初めての写真です

00:07:52.704 --> 00:07:55.277
彗星の実質回転周期は12時間半でしたから

00:07:55.277 --> 00:07:57.366
加速されていたわけです

00:07:57.366 --> 00:08:00.617
飛行力学のエンジニアたちが
着陸するのは楽じゃない―

00:08:00.617 --> 00:08:04.471
「これはえらいこっちゃ」と
考えたのがわかりますね

00:08:04.471 --> 00:08:09.115
ジャガイモのような着陸しやすいものだと

00:08:09.115 --> 00:08:11.281
私たちは期待していました

00:08:11.281 --> 00:08:14.572
少なくとも 表面が滑らかだろうと

00:08:14.572 --> 00:08:18.310
いいえ とんでもありません（笑）

NOTE Paragraph

00:08:18.310 --> 00:08:21.003
その時点で 明らかになったのは―

00:08:21.003 --> 00:08:24.534
できるだけ細かく天体を
マッピングする必要があること

00:08:24.534 --> 00:08:29.687
直径500メートルの平地を
探さなければならなかったからです

00:08:29.687 --> 00:08:34.286
なぜ500メートルかというと
着地にはその範囲の誤差が出てしまうからです

00:08:34.286 --> 00:08:37.467
このプロセスを実行し彗星のマッピングをしました

00:08:37.467 --> 00:08:39.834
写真傾斜測定というテクニックを使いました

00:08:39.834 --> 00:08:42.064
太陽が投げかける影を使います

00:08:42.064 --> 00:08:45.151
ここには彗星の表面にある岩が見えます

00:08:45.151 --> 00:08:48.077
上のほうから太陽が照っています

00:08:48.077 --> 00:08:50.236
この影から 私たちの頭脳を使って

00:08:50.236 --> 00:08:53.880
瞬時に この岩のおおよその形がわかります

00:08:53.880 --> 00:08:55.922
それをコンピュータにプログラムします

00:08:55.922 --> 00:09:00.176
それを彗星全体に繰り返すと
彗星のマップが出来上がります

00:09:00.176 --> 00:09:03.856
そのために ８月から
特別な軌道をいくつも通りました

00:09:03.856 --> 00:09:06.765
まずは１辺が100kmの三角形を

00:09:06.765 --> 00:09:08.428
100kmの距離で

00:09:08.428 --> 00:09:11.432
それから 50キロメートルの距離で
同じことを繰り返しました

00:09:11.432 --> 00:09:15.079
ここまでで 彗星を
ありとあらゆる角度で確認しました

00:09:15.079 --> 00:09:19.752
このテクニックを使って
全体をマッピングしたわけです

NOTE Paragraph

00:09:19.752 --> 00:09:23.019
これにより着地点の選定ができました

00:09:23.019 --> 00:09:27.279
彗星のマッピングから実際の着地点の選択まで

00:09:27.279 --> 00:09:30.844
全体のプロセスにかかった期間は60日でした

00:09:30.844 --> 00:09:32.230
もう時間はありませんでした

00:09:32.230 --> 00:09:34.350
通常の火星のミッションでは

00:09:34.350 --> 00:09:38.134
何百人という科学者が何年もミーティングを重ね

00:09:38.134 --> 00:09:40.201
「どこへ行こうか」と議論します

00:09:40.201 --> 00:09:42.359
でも私たちには
たった60日しかなかったんです

NOTE Paragraph

00:09:42.359 --> 00:09:45.402
さて ついに最終的な着地点を決めました

00:09:45.402 --> 00:09:50.455
ロゼッタからフィラエを着地させる
コマンドの準備が整いました

00:09:50.455 --> 00:09:54.830
宇宙空間の最適な地点にロゼッタが
位置していないとうまくいきません

00:09:54.830 --> 00:09:57.653
そして 彗星に対して正確に
狙いを定めていないといけません

00:09:57.653 --> 00:10:01.330
着陸機は受動的なんです
押し出されて彗星に向かって動きます

00:10:01.330 --> 00:10:03.120
ロゼッタは向きを変える必要がありました

00:10:03.120 --> 00:10:07.677
離れていくあいだ
カメラをフィラエに向けるためです

00:10:07.677 --> 00:10:10.146
同時に 通信できなければなりません

NOTE Paragraph

00:10:10.146 --> 00:10:14.720
軌道全体の着地にかかる時間は７時間

00:10:14.720 --> 00:10:17.507
ここで簡単な計算をしてみましょう

00:10:17.507 --> 00:10:21.546
ロゼッタの速度が
１秒間で１センチずれていたとします

00:10:21.546 --> 00:10:25.888
７時間は25000秒ですから

00:10:25.888 --> 00:10:30.253
252メートルずれてしまうことになります

00:10:30.253 --> 00:10:33.597
ですから ロゼッタの速度を

00:10:33.597 --> 00:10:36.104
１秒１センチ以下の精度で
把握する必要がありました

00:10:36.104 --> 00:10:40.168
地球から５億kmの距離にあるロゼッタの位置把握は―

00:10:40.168 --> 00:10:43.372
100メートル以上の精度で求められます

00:10:43.372 --> 00:10:45.740
これは至難の業です

NOTE Paragraph

00:10:45.740 --> 00:10:50.129
科学的に また装置がどうなっているのか
手短に説明しましょう

00:10:50.129 --> 00:10:53.565
あくびが出るほど事細かく説明したりは
しないので安心してください

00:10:53.565 --> 00:10:55.214
でも すべて網羅しています

00:10:55.214 --> 00:10:58.348
ガスを探知したり 塵を測定したり

00:10:58.348 --> 00:11:00.600
形や組成を調べたり

00:11:00.600 --> 00:11:03.108
磁気探知機など みんな揃っています

00:11:03.108 --> 00:11:06.707
気体の濃度を測る機器から
ロゼッタのポジションで

00:11:06.707 --> 00:11:08.565
計測された結果のひとつですが

00:11:08.565 --> 00:11:10.794
彗星から放出されるガスです

00:11:10.794 --> 00:11:13.278
下にあるグラフは昨年９月のものです

00:11:13.278 --> 00:11:16.575
長期的な変動があるのは驚くことではありません

00:11:16.575 --> 00:11:18.456
尖ったピークがありますね

00:11:18.456 --> 00:11:20.546
これは彗星の日中です

00:11:20.546 --> 00:11:24.656
太陽の影響でガスが蒸発して出てきます

00:11:24.656 --> 00:11:27.604
彗星は自転しています

00:11:27.604 --> 00:11:29.312
つまり場所によって はっきりと

00:11:29.312 --> 00:11:31.459
たくさん噴出する部分が見えるんです

00:11:31.459 --> 00:11:34.756
太陽によって熱せられ
裏側に回って冷やされます

00:11:34.756 --> 00:11:38.262
これに関する比重の変動が見えます

NOTE Paragraph

00:11:38.262 --> 00:11:42.395
これらはガスと有機化合物です

00:11:42.395 --> 00:11:44.090
すでに測定済みのものです

00:11:44.090 --> 00:11:45.878
感動するほど大きなリストになりました

00:11:45.878 --> 00:11:48.362
こんなものではありません
もっともっとあります

00:11:48.362 --> 00:11:50.308
測定されている値はもっと沢山あるからです

00:11:50.308 --> 00:11:53.656
現在 会合がヒューストンで開かれていて

00:11:53.656 --> 00:11:56.117
そこで 沢山のデータが発表されています

NOTE Paragraph

00:11:56.827 --> 00:11:58.448
塵の粒子も測定しています

00:11:58.448 --> 00:12:01.250
みなさんには あまりすごいことに
見えないと思いますが―

00:12:01.250 --> 00:12:04.523
科学者にとっては これは
ワクワクすることだったんです

00:12:04.523 --> 00:12:05.940
２つの粒子があります

00:12:05.940 --> 00:12:08.284
右が「ボリス」です

00:12:08.284 --> 00:12:11.048
タンタルを発射して分析しました

00:12:11.048 --> 00:12:13.439
塩素とマグネシウムを発見しました

00:12:13.439 --> 00:12:17.688
これによってわかることは
この２つの物質こそ

00:12:17.688 --> 00:12:20.584
太陽系形成時に存在した物質が
凝縮されたものということです

00:12:20.584 --> 00:12:22.951
惑星が生まれたとき

00:12:22.951 --> 00:12:26.859
どの物質が存在していたのか
わかるようになりました

NOTE Paragraph

00:12:26.859 --> 00:12:29.577
重要なことのひとつは
画像化することでした

00:12:29.577 --> 00:12:32.943
ロゼッタ搭載のカメラのひとつで
オシリス・カメラです

00:12:32.943 --> 00:12:35.508
科学雑誌の『サイエンス』で

00:12:35.508 --> 00:12:38.608
今年の1月23日号の表紙を飾った写真です

00:12:38.608 --> 00:12:42.046
この天体の姿がこうだと想像した人はいませんでした

00:12:42.046 --> 00:12:45.644
大小の岩―どちらかというと
ヨセミテ国立公園にある

00:12:45.644 --> 00:12:48.151
ハーフドームのようなものです

00:12:48.151 --> 00:12:50.729
こんなものも見ました

00:12:50.729 --> 00:12:55.651
砂丘や右手にあるような風に吹かれる影など

00:12:55.651 --> 00:12:59.575
また 火星から知ったのですが
この彗星には大気がありません

00:12:59.575 --> 00:13:02.454
ですから風に吹かれる影を作るのは
少々難しいのです

00:13:02.454 --> 00:13:04.439
局所からのガス放出の可能性があります

00:13:04.439 --> 00:13:06.622
つまり出たり戻ったりするものだということです

00:13:06.622 --> 00:13:09.803
でも まだ分かりません
調査すべきことはたくさんあります

00:13:09.803 --> 00:13:11.893
ここで同じ画像を２枚見せます

00:13:11.893 --> 00:13:14.410
左側の画像の真ん中には穴があります

00:13:14.410 --> 00:13:16.627
右側の画像には よく見ると

00:13:16.627 --> 00:13:19.858
その穴のそこの部分から
気体が３本噴射しています

00:13:19.858 --> 00:13:22.155
これが彗星の活動なのです

00:13:22.155 --> 00:13:26.172
このくぼみの部分は活動している部分なんです

00:13:26.172 --> 00:13:28.935
ここから物質が宇宙空間へと蒸発します

00:13:28.935 --> 00:13:32.545
非常に興味深いひび割れが
彗星の首の辺りにあります

00:13:32.545 --> 00:13:34.541
みなさんから見て右手になります

00:13:34.541 --> 00:13:38.237
長さが１メートルあり 幅2.5メートルです

00:13:38.237 --> 00:13:40.483
その部分については一部の人がこう言います

00:13:40.483 --> 00:13:42.101
太陽に近づいたら

00:13:42.101 --> 00:13:44.059
彗星が２つに割れるだろう

00:13:44.059 --> 00:13:45.769
ですから 選ばないといけなくなります

00:13:45.769 --> 00:13:47.351
どちら側の彗星にするのか

00:13:48.341 --> 00:13:51.514
着陸機にもたくさんの装置が付いています

00:13:51.514 --> 00:13:56.515
地面をたたくハンマーやドリルなどを除くと
ほぼ同等の道具があります

00:13:56.515 --> 00:14:00.732
それはロゼッタとほぼ同様に
宇宙空間で見つかるものを

00:14:00.732 --> 00:14:04.238
彗星で見つかるものと比較するためです

00:14:04.238 --> 00:14:06.931
グラウンドトルース測定と呼ばれています

NOTE Paragraph

00:14:06.931 --> 00:14:10.162
こちらは着陸進入の際の画像です

00:14:10.162 --> 00:14:12.210
オシリスカメラで撮影されたものです

00:14:12.210 --> 00:14:16.436
着陸機がロゼッタから
次第に遠ざかって行くのがわかります

00:14:16.436 --> 00:14:20.244
右上に60メートルの地点で
着陸機が撮影した画像があります

00:14:20.244 --> 00:14:23.100
彗星の表面から60メートル上空です

00:14:23.100 --> 00:14:25.514
ここに見える大きな石は10メートルもあります

00:14:25.514 --> 00:14:30.228
つまり これらの写真は彗星に
着陸する直前にとらえた画像なんです

00:14:30.228 --> 00:14:33.786
こちらは 同じ様子を
別の角度からとらえたものです

00:14:33.786 --> 00:14:37.971
彗星の表面を動いている着陸機の
左の下の部分から

00:14:37.971 --> 00:14:42.156
中央に向かって
３本の噴出しているものが見えます

00:14:42.156 --> 00:14:46.342
上のほうをご覧ください
着陸する前と後の写真があります

00:14:46.342 --> 00:14:50.269
ところが 後のほうの写真には
着陸機の姿がありません

00:14:50.269 --> 00:14:53.540
でも よく見るとこの写真の右手のほうに

00:14:53.540 --> 00:14:57.569
着陸機がまだいるのがわかりますが
じつはこの着陸機は跳ねたんです

00:14:57.569 --> 00:14:59.230
いったん地面を離れたんです

NOTE Paragraph

00:14:59.230 --> 00:15:02.317
ここで ちょっと笑い話なんですが

00:15:02.317 --> 00:15:06.937
ロゼッタは もともと跳ねる着陸機を
持つよう設計されました

00:15:06.937 --> 00:15:09.510
でも あまりに費用がかかるので
取りやめになったんです

00:15:09.510 --> 00:15:11.784
私たちは忘れていたけれど
着陸機は覚えていたんです

00:15:11.784 --> 00:15:13.388
（笑）

00:15:13.388 --> 00:15:15.895
最初に跳ねたときに磁気探知機から得られた

00:15:15.895 --> 00:15:19.725
データがここにあります
Ｘ軸　Ｙ軸　Ｚ軸の３つです

00:15:19.725 --> 00:15:21.931
真ん中あたりに赤い線があります

00:15:21.931 --> 00:15:23.765
この赤い線のあたりで変化がありました

00:15:23.765 --> 00:15:27.690
何が起きたかというと
１回目に跳ねたとき

00:15:27.690 --> 00:15:32.416
クレーターのどこか端っこに
着陸機の足がぶつかったんです

00:15:32.416 --> 00:15:35.236
そのため着陸機の回転速度が変わった

00:15:35.236 --> 00:15:37.209
ですから 今の場所にあるというのは

00:15:37.209 --> 00:15:39.485
幸運だと言わざるを得ません

NOTE Paragraph

00:15:39.485 --> 00:15:43.154
こちらはロゼッタの有名な画像のひとつです

00:15:43.154 --> 00:15:47.077
人工物である着陸機の足で

00:15:47.077 --> 00:15:49.028
彗星に第一歩を踏み出している様子です

00:15:49.028 --> 00:15:54.159
これまでに見た宇宙科学に関する画像のなかで
最高のものだと 個人的に思っています

NOTE Paragraph

00:15:54.159 --> 00:15:59.340
（拍手）

NOTE Paragraph

00:15:59.340 --> 00:16:03.191
まだ済んでいないのが着陸機を見つけることです

00:16:03.191 --> 00:16:06.887
この青い部分にあるに違いないとわかっています

00:16:06.887 --> 00:16:10.505
まだ見つけられてはいませんが
探索は続いています

00:16:10.505 --> 00:16:14.270
着陸機をまた作動しようと努力しているので

00:16:14.270 --> 00:16:16.012
毎日 私たちは耳を澄ましています

00:16:16.012 --> 00:16:18.570
遅くとも４月中には着陸機を覚醒させ

00:16:18.570 --> 00:16:20.308
再び稼動させたいと思っています

NOTE Paragraph

00:16:20.308 --> 00:16:22.445
彗星で発見したことは

00:16:23.795 --> 00:16:26.251
この物体が水に浮いていただろうということ

00:16:26.251 --> 00:16:28.875
水の半分の比重です

00:16:28.875 --> 00:16:31.893
大きな岩のように見えますが
実際は違います

00:16:31.893 --> 00:16:35.539
昨年の６月から８月にかけて
私たちが目にした活発化した活動は

00:16:35.539 --> 00:16:37.930
通常の４倍の活動量でした

00:16:37.930 --> 00:16:39.673
太陽に近づくまでには

00:16:39.673 --> 00:16:44.246
１秒に100キロ この彗星から
物質が出て行くことになります

00:16:44.246 --> 00:16:45.802
ガスにしろ 塵にしろ

00:16:45.802 --> 00:16:48.333
とにかく 一日に１億キロになるのです

NOTE Paragraph

00:16:49.603 --> 00:16:51.978
そうして ついに着陸の日を迎えました

00:16:51.978 --> 00:16:57.366
決して忘れることはないでしょう　ドイツに
250人ものテレビ取材陣が集まる狂気の沙汰で

00:16:57.366 --> 00:16:59.385
BBCのインタビュー取材もあれば

00:16:59.385 --> 00:17:02.357
私を１日 密着取材するテレビ局もありました

00:17:02.357 --> 00:17:04.493
私がインタビューを受ける様子を撮影したり

00:17:04.493 --> 00:17:06.931
そういうことが一日中続きました

00:17:06.931 --> 00:17:08.742
『ディスカバリーチャンネル』の取材班が

00:17:08.742 --> 00:17:11.064
私が制御室を出てくるところをつかまえて

00:17:11.064 --> 00:17:13.177
すばらしい質問をしてくれました

00:17:13.177 --> 00:17:16.802
思わず涙が出ました
今でもそのときの気持ちがよみがえります

00:17:16.802 --> 00:17:18.485
１ヵ月半のあいだ

00:17:18.485 --> 00:17:21.319
着陸の日のことを涙なしで
思い起こすことはできませんでした

00:17:21.319 --> 00:17:24.034
今でもその時の思いが自分のなかにあります

NOTE Paragraph

00:17:24.034 --> 00:17:26.983
彗星のこの画像をご覧頂きながら
私の話を終わりたいと思います

NOTE Paragraph

00:17:26.983 --> 00:17:28.526
ありがとうございました

NOTE Paragraph

00:17:28.556 --> 00:17:33.975
（拍手）