WEBVTT 00:00:00.921 --> 00:00:02.918 これは私の大叔父です 00:00:02.918 --> 00:00:05.936 私の父の父の弟で 名前は 00:00:05.936 --> 00:00:07.902 ジョー・マッケーナでした 00:00:08.141 --> 00:00:13.089 彼は若い夫で セミプロのバスケの選手でした 00:00:13.089 --> 00:00:16.417 そしてニューヨーク市の消防士でした 00:00:17.407 --> 00:00:20.007 家族の記録によると  大の仕事好きだったようで 00:00:20.007 --> 00:00:23.542 1938年に非番だったある日も 00:00:23.542 --> 00:00:26.319 消防署で時間をつぶすことにしました 00:00:27.019 --> 00:00:31.218 その日を無駄にしないように 彼は全ての真鍮―トラック車体の手すり 00:00:31.218 --> 00:00:34.612 壁面の付属器具― を磨き始めました 00:00:34.612 --> 00:00:36.957 すると 消火用のホースの先端の 00:00:36.957 --> 00:00:39.465 大きく重い金属片が 00:00:39.465 --> 00:00:43.074 棚から落ちて 彼を直撃しました 00:00:43.574 --> 00:00:47.382 数日後 彼の肩は痛み始めました 00:00:47.382 --> 00:00:50.656 その2日後 熱が急に出ました 00:00:50.656 --> 00:00:53.141 熱はどんどん上昇し 00:00:53.141 --> 00:00:55.091 妻は彼の看病をしましたが 00:00:55.091 --> 00:00:59.393 容体は全く変わらず 地元の医師に診てもらっても 00:00:59.393 --> 00:01:01.679 何の変化も見られませんでした NOTE Paragraph 00:01:02.149 --> 00:01:05.459 家族はタクシーを止め 彼を病院まで連れて行きました 00:01:05.911 --> 00:01:09.905 看護師は即座に彼が感染症に 罹患していると判断しました 00:01:09.905 --> 00:01:14.061 当時病院では「敗血症」と 呼んでいたかもしれません 00:01:14.061 --> 00:01:16.174 おそらく口には出さなかったでしょうが 00:01:16.174 --> 00:01:18.031 医師たちはすぐに 00:01:18.031 --> 00:01:21.430 自分たちに出来る事は何もないと 分かったででしょう NOTE Paragraph 00:01:21.770 --> 00:01:24.788 それは現在私たちが 感染症を治療するために 00:01:24.788 --> 00:01:27.437 使用しているものが まだ存在しなかったからです 00:01:27.737 --> 00:01:31.173 ペニシリンや抗生物質の最初の実験は 00:01:31.173 --> 00:01:33.843 3年後だったのです 00:01:33.843 --> 00:01:38.547 感染症に罹患した人々は 幸運にも回復するか 00:01:38.547 --> 00:01:40.042 死亡するかでした 00:01:40.322 --> 00:01:42.411 私の大叔父は運に恵まれませんでした 00:01:42.411 --> 00:01:45.708 彼は一週間入院し 寒気に震え 00:01:45.708 --> 00:01:47.566 脱水症状となり 錯乱状態でした 00:01:47.566 --> 00:01:50.468 臓器不全となり昏睡状態に陥りました 00:01:50.468 --> 00:01:52.604 状態が非常に絶望的になった為 00:01:52.604 --> 00:01:57.234 消防署の人々が列をなして 彼に輸血をしました 00:01:57.234 --> 00:02:01.097 血液中に急増している細菌を 少しでも薄めようとしましたが 00:02:01.497 --> 00:02:04.603 何の効果も見られず 彼は亡くなりました 00:02:05.143 --> 00:02:07.705 30歳でした NOTE Paragraph 00:02:08.115 --> 00:02:10.088 歴史を溯ってみれば 00:02:10.088 --> 00:02:13.362 殆どの人々が 私の大叔父のように亡くなっていきました 00:02:13.362 --> 00:02:16.032 殆どの人々は 今日西洋で私たちを苦しめている 00:02:16.032 --> 00:02:20.120 癌や心臓病といった生活習慣病で 亡くなることはありませんでした 00:02:20.490 --> 00:02:24.229 彼らが こうした病気で亡くならなかったのは その病気に罹る程 00:02:24.229 --> 00:02:26.225 長生きをしなかったからです 00:02:26.225 --> 00:02:28.338 彼らは負傷によって死んだのです― 00:02:28.338 --> 00:02:30.823 おので怪我をしたり 00:02:30.823 --> 00:02:32.727 戦場で銃撃されたり 00:02:32.727 --> 00:02:36.465 産業革命の新しい工場の一つで 事故をおこしたりすると 00:02:36.465 --> 00:02:39.846 たいていの場合 その傷から始まる感染症が 00:02:39.846 --> 00:02:43.352 命を奪ったのです NOTE Paragraph 00:02:44.492 --> 00:02:48.024 抗生物質が登場してから この全てが変わりました 00:02:48.599 --> 00:02:52.198 「死の宣告」であった感染症が 突然 00:02:52.198 --> 00:02:55.588 数日で回復するものとなったのです 00:02:55.588 --> 00:02:58.630 奇跡のように思われました 00:02:58.630 --> 00:03:04.954 それ以来私たちは奇跡の薬による 黄金期の中で 生き続けてきました NOTE Paragraph 00:03:05.294 --> 00:03:09.241 そして今 その時代も 終わりを迎えようとしています 00:03:09.241 --> 00:03:14.303 私の大叔父は「抗生物質以前の時代」 の最後に亡くなったのです 00:03:14.303 --> 00:03:19.457 私たちは今日「抗生物質以後が終わった時代」 との境界に立っています 00:03:19.457 --> 00:03:23.219 それはジョー叔父さんが 罹ったような単純な感染が 00:03:23.219 --> 00:03:27.928 再び人を死に至らしめる時代の始まりです NOTE Paragraph 00:03:28.884 --> 00:03:32.015 現にそれは既に存在しているのです 00:03:32.785 --> 00:03:35.618 薬剤耐性と呼ばれる現象の為に 00:03:35.618 --> 00:03:37.961 再び感染症で死んでいく人がいるのです 00:03:38.381 --> 00:03:40.119 端的に言うと それはこういう事です 00:03:40.119 --> 00:03:45.091 バクテリアは 互いを阻害する 致死性の化合物を作る事によって 00:03:45.091 --> 00:03:49.758 互いにエサや供給源を求めて 争うものです 00:03:49.758 --> 00:03:52.103 バクテリアの中には 身を守る為に 00:03:52.103 --> 00:03:55.354 この化学物質による攻撃に対する 防衛を進化させるものもあります 00:03:55.354 --> 00:03:57.676 私たちが初めて抗生物質を作った時 00:03:57.676 --> 00:04:01.878 それらの化合物を実験室に持ち込み その誘導体を作りました 00:04:01.878 --> 00:04:06.336 するとバクテリアはいつものように 我々の攻撃に反応しました NOTE Paragraph 00:04:07.674 --> 00:04:09.898 次に起こったのは これです 00:04:10.098 --> 00:04:13.488 1943年にペニシリンが使用されると 00:04:13.488 --> 00:04:18.619 その耐性菌が1945年までに現れ あまねく広がりました 00:04:18.619 --> 00:04:21.567 バンコマイシンは1972年に登場し 00:04:21.567 --> 00:04:24.668 1988年にはその耐性菌が出現しました 00:04:25.028 --> 00:04:27.150 イミペネムは1985年に登場し 00:04:27.150 --> 00:04:29.922 1998年には耐性菌が出現しました 00:04:30.192 --> 00:04:33.860 最も新しい薬の一つである ダプトマイシンは2003年に作られ 00:04:33.860 --> 00:04:38.225 翌年の2004年には その耐性菌が出来ました NOTE Paragraph 00:04:38.575 --> 00:04:42.335 70年間 私たちは いたちごっこをしてきました 00:04:42.335 --> 00:04:45.261 我々の薬に耐性菌が現れ― 00:04:45.261 --> 00:04:48.906 次の薬 次の耐性菌 00:04:48.906 --> 00:04:51.217 今ゲームは終わりかけています 00:04:51.437 --> 00:04:55.477 バクテリアが あまりにも早く耐性を獲得するので 00:04:55.477 --> 00:04:59.842 製薬会社は抗生剤を作る事が 自分たちの利益にならないと判断したのです 00:04:59.842 --> 00:05:02.652 それで感染症が世界中に広まり 00:05:02.652 --> 00:05:06.111 その為市場に流通する 100種類以上の 00:05:06.111 --> 00:05:08.340 抗生物質の中で 00:05:08.340 --> 00:05:11.754 2種類が効くけれど副作用がある感染症 00:05:11.754 --> 00:05:14.238 1種類しか効かないもの 00:05:14.238 --> 00:05:15.646 ひとつも効かないものもあります NOTE Paragraph 00:05:16.096 --> 00:05:17.668 それはこんな状況です 00:05:18.278 --> 00:05:22.458 2000年にアメリカ疾病管理予防センター(CDC) は 00:05:22.458 --> 00:05:24.501 ノースカロライナ州の病院で 00:05:24.501 --> 00:05:26.753 ある一つの症例を確認しました 00:05:26.753 --> 00:05:30.486 それは2つの薬以外の全てに 耐性菌を示す感染症でした 00:05:30.886 --> 00:05:35.205 今日 KPCとして知られるその感染症は 00:05:35.205 --> 00:05:37.805 3つの州を除くアメリカ全土 00:05:37.805 --> 00:05:40.150 南アメリカ、ヨーロッパ、中東の 00:05:40.150 --> 00:05:42.357 あらゆる場所に広がっています 00:05:42.867 --> 00:05:45.189 2008年にスウェーデンの医師は 00:05:45.189 --> 00:05:47.975 インド出身の男性に当時 一つの薬を除くすべてに 00:05:47.975 --> 00:05:51.690 耐性を示す 別の感染症の診断を下しました 00:05:51.690 --> 00:05:53.919 その耐性を生み出す遺伝子は 00:05:53.919 --> 00:06:00.444 NDMとして知られていますが 現在インドから中国、アジア、アフリカ 00:06:00.444 --> 00:06:04.809 ヨーロッパ、カナダ、アメリカ合衆国に 広がっています NOTE Paragraph 00:06:05.129 --> 00:06:07.688 その感染症が特殊な症例であると 00:06:07.688 --> 00:06:11.287 願うのは当然かもしれません 00:06:11.287 --> 00:06:13.145 しかし実際は 00:06:13.145 --> 00:06:15.606 アメリカとヨーロッパにおいて 00:06:15.606 --> 00:06:18.322 年間5万人の人々が 00:06:18.322 --> 00:06:22.446 どんな薬も効かない感染症で 亡くなっているのです NOTE Paragraph 00:06:22.966 --> 00:06:26.008 イギリス政府によって 支援されたプロジェクトである 00:06:26.008 --> 00:06:29.746 Review on Antimicrobial Resistance の推計によると 00:06:29.746 --> 00:06:37.118 今現在の世界中の犠牲者は 年間70万人で 00:06:38.291 --> 00:06:42.655 それは大変な数なのですが 私たちには 00:06:42.655 --> 00:06:45.767 危険を感じない可能性が 十分あるのです 00:06:45.767 --> 00:06:48.995 犠牲者の方々は病院のICUに 00:06:48.995 --> 00:06:50.713 入院する患者や 00:06:50.713 --> 00:06:54.660 終末期のホスピスに入った患者であって 00:06:54.660 --> 00:06:57.841 その感染症は私たちから隔たったところで生じ 00:06:57.841 --> 00:07:01.045 自分たちとは縁遠いと思いがちなのです NOTE Paragraph 00:07:02.455 --> 00:07:05.852 私たちが考えたこともなく 思いもよらないことに 00:07:05.852 --> 00:07:10.818 抗生物質は現代の生活の殆ど全てを 支えているのです 00:07:11.721 --> 00:07:13.932 もし抗生物質がなければ失うものを 00:07:13.932 --> 00:07:15.386 挙げてみます 00:07:15.836 --> 00:07:20.015 まず免疫システムが弱い人への保護があります 00:07:20.015 --> 00:07:23.475 癌患者、エイズ患者 00:07:23.475 --> 00:07:27.979 臓器移植患者、未熟児等に対する保護 NOTE Paragraph 00:07:27.979 --> 00:07:32.391 次にその体内に異物を留置する治療― 00:07:32.391 --> 00:07:36.269 梗塞に対するステント治療 糖尿病に対するポンプ治療 00:07:36.269 --> 00:07:40.193 透析、関節置換術です 00:07:40.193 --> 00:07:43.908 逞しいベビーブーマーたちが新たな 人工股関節や人工膝関節を必要とします 00:07:43.908 --> 00:07:46.717 最近の研究によると 抗生物質がなければ 00:07:46.717 --> 00:07:50.234 6人に1人は命を落とすだろうと 言われています 00:07:50.664 --> 00:07:53.869 次に来るのは おそらく手術が出来なくなることです 00:07:53.869 --> 00:07:56.191 多くの手術は抗生物質の 00:07:56.191 --> 00:07:59.139 予防投与がされています 00:07:59.139 --> 00:08:00.811 その保護がなければ 00:08:00.811 --> 00:08:05.015 私たちは体の内部を 切開する能力を失うでしょう 00:08:05.015 --> 00:08:07.848 心臓手術も出来なければ 00:08:07.848 --> 00:08:10.680 前立腺生検も出来ず 00:08:10.680 --> 00:08:13.382 帝王切開も出来ません 00:08:13.792 --> 00:08:18.444 私たちは現在些細なものと考えている 感染症に注意するようにしなければなりません 00:08:18.784 --> 00:08:22.592 かつて 溶連菌喉頭炎は 心不全を引き起こしていました 00:08:22.592 --> 00:08:25.239 皮膚感染症が肢切断に繋がりました 00:08:25.819 --> 00:08:28.722 最も清潔な病院での 感染症による産婦の死亡は 00:08:28.722 --> 00:08:31.397 100例に1例の割合で起こりました 00:08:31.717 --> 00:08:36.549 肺炎では10人に3人の子供たちが 死亡しました NOTE Paragraph 00:08:37.220 --> 00:08:39.332 他の何よりも 00:08:39.332 --> 00:08:43.707 私たちは日常生活を生きる上で 信頼できる方法を失うでしょう 00:08:44.836 --> 00:08:49.043 どんな怪我も死に繋がる 可能性があると知っているなら 00:08:49.043 --> 00:08:52.289 モーターバイクに乗ったり 00:08:52.289 --> 00:08:55.500 スキーでゲレンデを滑降したり 00:08:55.500 --> 00:08:58.976 クリスマスの照明を装飾するのに 梯子を上ったり 00:08:58.976 --> 00:09:02.643 子どもに本塁まで滑り込ませますか? NOTE Paragraph 00:09:03.573 --> 00:09:06.638 ペニシリン接種を最初に受けた 00:09:06.638 --> 00:09:10.516 アルバート・アレキサンダーという名の イギリスの警察官は 00:09:10.516 --> 00:09:14.858 何しろ 至極簡単なことが原因で 感染しましたが 00:09:14.858 --> 00:09:17.783 感染症がひどくなり 頭皮から膿が滲み出ており 00:09:17.783 --> 00:09:21.162 眼球を摘出しなければなりませんでした 00:09:22.172 --> 00:09:26.988 彼は 自分の庭に入っていくときに 棘で顔を引っかいたのです 00:09:28.831 --> 00:09:32.481 前に挙げたイギリスのプロジェクトによると 現在世界中で死者が 00:09:32.481 --> 00:09:36.358 年間70万人と推定され 00:09:36.358 --> 00:09:42.535 2050年迄にこれを鎮圧出来なければ 00:09:42.535 --> 00:09:50.127 間もなく死者は年間1千万人に 達するだろうとのことでした NOTE Paragraph 00:09:50.127 --> 00:09:52.829 こんな恐ろしい数字を 00:09:52.829 --> 00:09:54.864 予見せざるを得ない状況に 00:09:54.864 --> 00:09:58.347 至ったのはどうしてでしょう? 00:09:58.347 --> 00:10:02.535 難解な答えですが 自分たちで行った事です 00:10:02.875 --> 00:10:05.847 耐性獲得は生物的な過程として不可避ですが 00:10:05.847 --> 00:10:09.900 私たちはそれを加速させた事に対する 責任があります 00:10:10.490 --> 00:10:14.043 加速させたのは抗生物質の浪費によってです 00:10:14.043 --> 00:10:18.131 今から振り返ると 恐ろしいほど無頓着でした 00:10:19.408 --> 00:10:23.494 ペニシリンは1950年代まで 店頭で販売されていました 00:10:23.494 --> 00:10:26.829 開発途上国の多くでは 未だに大半の抗生物質を店で買えます 00:10:27.209 --> 00:10:30.971 アメリカでは病院で渡される 抗生物質の50%が 00:10:30.971 --> 00:10:34.663 不必要なものです 00:10:34.663 --> 00:10:39.037 医師の書く処方箋の45%が 00:10:39.037 --> 00:10:43.010 抗生物質の効かない 状態に対するものです 00:10:44.577 --> 00:10:47.247 それは医療についてだけです NOTE Paragraph 00:10:47.247 --> 00:10:52.100 この惑星に住むほとんどの食肉動物に 日常的に抗生物質が与えられています 00:10:52.100 --> 00:10:54.376 それは病気を治療するためではなく 00:10:54.376 --> 00:11:01.815 動物を太らせ 飼育施設の環境から保護するためなのです 00:11:01.815 --> 00:11:04.824 アメリカでは毎年 00:11:04.824 --> 00:11:11.527 売られた抗生物質の80%が 人間にではなく農場の動物に使われており 00:11:11.527 --> 00:11:15.203 農場から流れ出る 00:11:15.203 --> 00:11:17.827 水、ちり 00:11:17.827 --> 00:11:20.695 そして出荷される肉の中に 耐性菌が生まれるのです 00:11:20.985 --> 00:11:23.910 特にアジアでは 魚介類の養殖も 00:11:23.910 --> 00:11:25.559 抗生物質に頼っています 00:11:25.559 --> 00:11:28.902 りんご、梨、柑橘類を病気から守る為に 00:11:28.902 --> 00:11:33.801 果実の生育を抗生物質に頼っています 00:11:34.491 --> 00:11:40.117 まるで旅行者が 空港で荷物を預けるように 00:11:40.117 --> 00:11:44.552 バクテリアは互いのDNAを 受け渡す事が出来るので 00:11:44.552 --> 00:11:49.360 一旦私たちがその耐性を作らせてしまうと 00:11:49.360 --> 00:11:51.587 それがどこに広がるかは 分からないのです 00:11:53.723 --> 00:11:55.294 これは予想可能な事でした NOTE Paragraph 00:11:55.674 --> 00:11:58.506 実際 それはペニシリンを発見した 00:11:58.506 --> 00:12:02.941 アレキサンダー・フレミングが 予測した事でした 00:12:02.941 --> 00:12:06.935 彼は1945年にその発見が評価され ノーベル賞を受賞しました 00:12:06.935 --> 00:12:11.282 そのすぐ後のインタビューで 彼はこう語っています NOTE Paragraph 00:12:11.282 --> 00:12:15.549 「ペニシリン治療を弄ぶ 思慮のない人間は 00:12:15.549 --> 00:12:18.823 道徳的見地から 00:12:18.823 --> 00:12:21.147 ペニシリン耐性菌による 00:12:21.147 --> 00:12:24.050 感染症に倒れる人の死に責任を持っている」 00:12:24.050 --> 00:12:28.335 又こう続けています 「この悪弊が避けられることを願う」 NOTE Paragraph 00:12:28.986 --> 00:12:31.842 私たちはそれを回避 出来るでしょうか? 00:12:31.842 --> 00:12:35.510 新しい抗生物質に 取り組んでいる会社があります 00:12:35.510 --> 00:12:39.086 それは「抗生物質が効かない菌」が 目にしたことのない程 強力な薬です 00:12:39.086 --> 00:12:41.803 そのような新薬がとても必要なのです 00:12:41.803 --> 00:12:44.055 私たちにはインセンティブ― 00:12:44.055 --> 00:12:46.586 開発に対する助成金、 特許条件の優遇 00:12:46.586 --> 00:12:53.343 褒賞、他の会社が再び抗生物質を 作るように誘導すること等―が必要なのです NOTE Paragraph 00:12:53.343 --> 00:12:55.709 でもそれだけでは十分ではありません 00:12:56.059 --> 00:13:00.163 何故か―それはバクテリアの進化が 必ず勝利するからです 00:13:00.703 --> 00:13:04.627 バクテリアは20分ごとに 新しい世代を生み出しています 00:13:04.627 --> 00:13:09.410 薬学が新たな薬を得るのには 10年かかります 00:13:09.410 --> 00:13:12.266 私たちは抗生物質を使うたびに 00:13:12.266 --> 00:13:15.540 耐性を獲得する何百万回もの機会を 00:13:15.540 --> 00:13:17.281 耐性を獲得する何百万回もの機会を 00:13:17.281 --> 00:13:20.486 バクテリアに与えています 00:13:20.486 --> 00:13:22.877 バクテリアが打ち負かすことの 出来なかった薬は 00:13:22.877 --> 00:13:25.431 未だに一つもないのです NOTE Paragraph 00:13:25.431 --> 00:13:28.961 これは非対称な戦いですが 00:13:28.961 --> 00:13:32.969 結果を変えることは出来るのです 00:13:33.929 --> 00:13:40.334 抗生物質の使われ方についてのデータを 自動的かつ具体的に 00:13:40.334 --> 00:13:43.263 収集するシステムを 確立することが出来ます 00:13:43.263 --> 00:13:46.096 私たちは薬剤注文システムに 関門を設定出来ます 00:13:46.096 --> 00:13:49.811 どの処方箋も 二重チェックされるようにです 00:13:49.811 --> 00:13:55.920 私たちは農業に抗生物質を使うのを 止めるよう要求出来ます 00:13:56.243 --> 00:13:59.275 何処に耐性菌が現れたかを 00:13:59.275 --> 00:14:03.501 知らせる監視システムを 作ることが出来ます NOTE Paragraph 00:14:03.501 --> 00:14:05.814 これらは技術的な解決策です 00:14:06.264 --> 00:14:08.888 皆さんの支援がなければ 00:14:08.888 --> 00:14:12.117 これだけでは不十分です 00:14:15.785 --> 00:14:18.099 抗生物質の耐性は習慣から生じました 00:14:18.479 --> 00:14:21.567 習慣を変えるのが至難の技なのは 周知のことです 00:14:21.567 --> 00:14:26.097 しかし実社会で 私たちはそれを過去に行ってきました 00:14:26.397 --> 00:14:29.972 人々は街頭にゴミを放り投げ 00:14:29.972 --> 00:14:31.737 シートベルトを締めず 00:14:31.737 --> 00:14:35.994 公共の建物の中で喫煙をしていました 00:14:36.404 --> 00:14:38.624 今はそんな事はしません 00:14:39.144 --> 00:14:41.466 私たちは環境を汚したり 00:14:41.466 --> 00:14:44.623 みすみす重大事故を起こしたり 00:14:44.623 --> 00:14:47.595 他人を癌の可能性に曝したりしません 00:14:47.595 --> 00:14:51.102 それはこれらには金がかかり 00:14:51.102 --> 00:14:55.815 有害で 自分たちにとって 都合が良いものではないと判断したからです 00:14:55.825 --> 00:14:58.715 私たちは社会規範を変えたのです 00:14:59.135 --> 00:15:03.279 抗生物質の規範も変える事が 出来るのです NOTE Paragraph 00:15:05.499 --> 00:15:07.774 抗生物質に対する耐性菌の出現は 00:15:07.774 --> 00:15:09.678 圧倒的に大きな問題に思えますが 00:15:09.678 --> 00:15:13.138 温暖化問題が心配だから 00:15:13.138 --> 00:15:15.854 蛍光灯を買った事があったり 00:15:15.854 --> 00:15:18.989 パーム油のための 森林破壊が気になるから 00:15:18.989 --> 00:15:23.470 クラッカーの箱のラベルを 読んだことがあるなら 00:15:23.470 --> 00:15:26.349 圧倒的な問題に立ち向かう 小さなステップを 00:15:26.349 --> 00:15:31.349 歩む事がどんなものか 既に分かっているでしょう 00:15:31.829 --> 00:15:36.310 私たちは抗生物質の使用に於いても このステップを歩む事が出来るのです 00:15:36.310 --> 00:15:43.947 効果が確かでないなら 抗生物質なしで済ます事も出来るのです 00:15:44.251 --> 00:15:50.564 子供の耳の感染症の原因が はっきりするまでは 抗生物質を求めるのを 00:15:50.564 --> 00:15:52.462 控えることも出来ます 00:15:53.468 --> 00:15:57.045 どのレストランでも スーパーでも 00:15:57.045 --> 00:15:58.856 この肉はどこから来たのかと 00:15:58.856 --> 00:16:00.476 尋ねることが出来ます 00:16:00.806 --> 00:16:02.640 私たちは互いに こう約束します 00:16:02.640 --> 00:16:06.745 抗生物質を常用して育ったチキンや 00:16:06.745 --> 00:16:09.629 海老、果物は決して買わないと 00:16:09.629 --> 00:16:12.323 もしそれをするなら 00:16:12.323 --> 00:16:16.815 「抗生物質が終わった世界」の到来を 遅らせる事が出来るのです NOTE Paragraph 00:16:17.547 --> 00:16:21.680 しかし私たちは迅速に それを行わなければなりません 00:16:21.680 --> 00:16:26.185 ペニシリンは1943年に 抗生物質の時代を開きました 00:16:26.185 --> 00:16:31.891 たった70年で 私たちは 大災害の縁まで歩んで来ました 00:16:32.291 --> 00:16:34.613 この困難を切り抜けるのに 00:16:34.613 --> 00:16:38.339 私たちに70年という時間はないのです NOTE Paragraph 00:16:38.769 --> 00:16:40.279 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:16:40.789 --> 00:16:46.640 (拍手)