1 00:00:00,000 --> 00:00:03,000 『エリザベス』という映画を 撮って来てほしいと 言われたので 2 00:00:03,000 --> 00:00:06,000 この偉大なイギリス人について 話し合いました 3 00:00:06,000 --> 00:00:08,000 「いろんなことをした この素晴らしい女性を 4 00:00:08,000 --> 00:00:10,000 どうやって登場させようか」という話です 5 00:00:10,000 --> 00:00:12,000 スタジオの人とプロデューサー 脚本家と 6 00:00:12,000 --> 00:00:14,000 テーブルを囲み 「監督の考えは?」 と聞かれ 7 00:00:14,000 --> 00:00:17,000 「踊るのが好きな人だったんじゃないかな」 と答えました 8 00:00:17,000 --> 00:00:20,000 皆がこちらを見ているのがわかりました 9 00:00:20,000 --> 00:00:22,000 「ボリウッドだ」と誰かが言いました 10 00:00:22,000 --> 00:00:24,000 「彼を雇うのにいくら払ったんだ?」 と別の人 11 00:00:24,000 --> 00:00:27,000 「別の監督を探そう」と言う人もいました 12 00:00:27,000 --> 00:00:29,000 方針を変えた方が良さそうだと思い 13 00:00:29,000 --> 00:00:31,000 エリザベスの描き方をいろいろ議論して 14 00:00:31,000 --> 00:00:34,000 「確かにちょっとボリウッド風過ぎたかも」 と言いました 15 00:00:34,000 --> 00:00:36,000 「あの偉大なエリザベスが踊ってたって? 16 00:00:36,000 --> 00:00:38,000 そんなバカな」 17 00:00:38,000 --> 00:00:40,000 もう一度全体を考えなおし 18 00:00:40,000 --> 00:00:42,000 話がまとまりました 19 00:00:42,000 --> 00:00:44,000 イギリスの偉人「エリザベス女王」を 20 00:00:44,000 --> 00:00:46,000 私たちはこんな風に登場させました 21 00:00:51,000 --> 00:00:54,000 レスター伯:女王様、ご一緒しても よろしいでしょうか? 22 00:01:03,000 --> 00:01:06,000 エリザベス:お望みなら 23 00:01:06,000 --> 00:01:09,000 (音楽) 24 00:01:50,000 --> 00:01:52,000 カプール:ほら、彼女は踊っていました 25 00:01:52,000 --> 00:01:55,000 この映画を見れば エリザベスが恋をしていること 26 00:01:55,000 --> 00:01:57,000 彼女が本当に純粋で人生を楽しみ 27 00:01:57,000 --> 00:01:59,000 若々しかったことが 28 00:01:59,000 --> 00:02:02,000 わかるはずです 29 00:02:02,000 --> 00:02:05,000 わからなかった人はいますか? 30 00:02:06,000 --> 00:02:08,000 これが映像による物語の力です 31 00:02:08,000 --> 00:02:11,000 これが踊りの力で 音楽の力なのです 32 00:02:11,000 --> 00:02:14,000 無知の力でもあります 33 00:02:14,000 --> 00:02:16,000 私が映画を撮る際は いつも 34 00:02:16,000 --> 00:02:18,000 スタッフと準備し過ぎ 考え過ぎるんです 35 00:02:18,000 --> 00:02:21,000 知識が知恵に重くのしかかり 36 00:02:21,000 --> 00:02:23,000 単純な言葉が 37 00:02:23,000 --> 00:02:27,000 経験という泥沼に飲まれてしまいます 38 00:02:27,000 --> 00:02:29,000 だから私は言うのです 39 00:02:29,000 --> 00:02:32,000 「今日は何をするんだ?」 計画していたことはせずに 40 00:02:32,000 --> 00:02:35,000 自らを完全なパニックに陥れます 41 00:02:35,000 --> 00:02:38,000 自分を解放するひとつの方法です 42 00:02:38,000 --> 00:02:40,000 「今日何をするか知ってるだろう 43 00:02:40,000 --> 00:02:42,000 何年も監督をしてきたんだから」という 44 00:02:42,000 --> 00:02:44,000 思いを取り除くのです 45 00:02:44,000 --> 00:02:46,000 撮影場所に行って 46 00:02:46,000 --> 00:02:48,000 完全なパニックになっています 47 00:02:48,000 --> 00:02:50,000 象徴的な仕草です 台本を破り捨てるんです 48 00:02:50,000 --> 00:02:53,000 パニックに陥り 怖くなります 49 00:02:53,000 --> 00:02:56,000 今もそうです 見てください 緊張しています 50 00:02:56,000 --> 00:02:59,000 言うべきこと すべきことがわからず 撮影所に行くのが嫌になります 51 00:02:59,000 --> 00:03:01,000 でも到着すると ADが言うんです 52 00:03:01,000 --> 00:03:04,000 「今日の予定は ご存知ですよね」 私は「もちろんだよ」と答えます 53 00:03:05,000 --> 00:03:07,000 スタジオの重役たちはこう言うでしょう 54 00:03:07,000 --> 00:03:09,000 「さすがシェーカル、準備万端だ」 55 00:03:09,000 --> 00:03:11,000 頭の中は ヌスラト・ファテー・アリー・ハーン 56 00:03:11,000 --> 00:03:13,000 彼の音楽は混沌としているからです 57 00:03:13,000 --> 00:03:16,000 私は自らを混沌に陥れます 58 00:03:16,000 --> 00:03:19,000 混沌から何らかの真実が 生まれると思っているからです 59 00:03:20,000 --> 00:03:22,000 全ての準備は 準備に過ぎません 60 00:03:22,000 --> 00:03:24,000 それが誠実なものなのか 61 00:03:24,000 --> 00:03:26,000 真実なのかということすら わかりません 62 00:03:26,000 --> 00:03:29,000 真実はいつもある瞬間に 自然と訪れます 63 00:03:29,000 --> 00:03:31,000 もし物語や映画に 64 00:03:31,000 --> 00:03:33,000 素晴らしく活き活きとした瞬間を5つ 65 00:03:33,000 --> 00:03:35,000 織り込むことができれば 66 00:03:35,000 --> 00:03:37,000 観客にもそれが伝わるでしょう 67 00:03:37,000 --> 00:03:39,000 私はそうした瞬間を探し求めながら 撮影所で 68 00:03:39,000 --> 00:03:41,000 「何と言おうか・・・」と迷っているのです 69 00:03:41,000 --> 00:03:43,000 つまるところ 皆に見られているのです 70 00:03:43,000 --> 00:03:45,000 6時45分には200人が撮影所に集まり 71 00:03:45,000 --> 00:03:47,000 7時に到着した自分は 72 00:03:47,000 --> 00:03:49,000 こう言われるのです 73 00:03:49,000 --> 00:03:51,000 「何から始めます?何をしましょうか?」 74 00:03:51,000 --> 00:03:53,000 自分にも理解できないパニックに陥ります 75 00:03:53,000 --> 00:03:56,000 自分にもわからないのです 76 00:03:56,000 --> 00:03:58,000 わからないから 77 00:03:58,000 --> 00:04:01,000 何かを求めて宇宙に祈るんです 78 00:04:01,000 --> 00:04:04,000 私はアインシュタインがしたのと同じように 79 00:04:04,000 --> 00:04:06,000 宇宙と向き合います 80 00:04:06,000 --> 00:04:08,000 彼の方程式と 81 00:04:08,000 --> 00:04:11,000 同じ源を探すんです 82 00:04:11,000 --> 00:04:13,000 創造性は 自分自身の外側からやって来ます 83 00:04:13,000 --> 00:04:15,000 宇宙の遥かかなたで瞑想するのと 84 00:04:15,000 --> 00:04:17,000 同じところから生まれるのです 85 00:04:17,000 --> 00:04:19,000 何かがやって来てひらめくのを待ちます 86 00:04:19,000 --> 00:04:21,000 ひらめきが起きるまで撮影には入りません 87 00:04:21,000 --> 00:04:23,000 では何をするか? 88 00:04:23,000 --> 00:04:25,000 ケイトが言います 「私にどう演じて欲しいの?」 89 00:04:25,000 --> 00:04:28,000 私は「ケイト 君は何をしたいんだい? (笑) 90 00:04:28,000 --> 00:04:31,000 君は大女優だ 君たちに任せるよ 91 00:04:31,000 --> 00:04:33,000 何をしたいのか見せてくれないか?」 92 00:04:33,000 --> 00:04:35,000 (笑) 93 00:04:35,000 --> 00:04:37,000 何をしてるかって? 時間稼ぎですよ 94 00:04:37,000 --> 00:04:39,000 時間を稼ごうとしてるんです 95 00:04:39,000 --> 00:04:41,000 物語について私が最初に学んでから 96 00:04:41,000 --> 00:04:43,000 ずっとしてきていることは 「パニック」です 97 00:04:43,000 --> 00:04:46,000 パニックの中で 創造性が大いに引き出されます 98 00:04:46,000 --> 00:04:48,000 正気を脱するにはパニックしかありません 99 00:04:48,000 --> 00:04:50,000 正気を捨て去ってください 100 00:04:50,000 --> 00:04:52,000 捨てるのです 101 00:04:52,000 --> 00:04:54,000 そこから宇宙に行きましょう 102 00:04:54,000 --> 00:04:56,000 そこには自分の心よりも 103 00:04:56,000 --> 00:04:58,000 自分の宇宙よりも 104 00:04:58,000 --> 00:05:00,000 もっと真理に近い 何かがあります 105 00:05:00,000 --> 00:05:02,000 私はこれを繰り返しています 106 00:05:02,000 --> 00:05:04,000 スニャータ すなわち虚心を得るために 107 00:05:04,000 --> 00:05:07,000 いつもこうするんです 108 00:05:07,000 --> 00:05:10,000 創造性は虚心から生まれます 109 00:05:10,000 --> 00:05:12,000 これが私のやりかたです 110 00:05:12,000 --> 00:05:14,000 子どもの頃 8歳くらいだったと思います 111 00:05:14,000 --> 00:05:17,000 昔のインドをご存知ですか 公害はありませんでした 112 00:05:17,000 --> 00:05:21,000 デリーで私たちは チャタとかコタという暮らしをしていました 113 00:05:21,000 --> 00:05:24,000 コタは今では悪い意味になりました 酒場風のテラスです 114 00:05:24,000 --> 00:05:26,000 夜は外で寝ていました 115 00:05:26,000 --> 00:05:28,000 学校ではちょうど物理を学んでいて 116 00:05:28,000 --> 00:05:31,000 実在するものは全て 117 00:05:31,000 --> 00:05:33,000 測ることができる 118 00:05:33,000 --> 00:05:36,000 と教わりました 119 00:05:36,000 --> 00:05:38,000 測ることができなければ 120 00:05:38,000 --> 00:05:40,000 それは存在しないのだと 121 00:05:40,000 --> 00:05:43,000 夜になると 澄み渡った夜空の下に横たわり 122 00:05:43,000 --> 00:05:46,000 私の少年時代のデリーは 空気が汚れていなかったのです 123 00:05:46,000 --> 00:05:49,000 そして空を見上げてよく言ったものでした 124 00:05:49,000 --> 00:05:51,000 「宇宙はどれくらい広いんだろう?」 125 00:05:51,000 --> 00:05:53,000 私の父は医者でした 126 00:05:53,000 --> 00:05:56,000 「宇宙はどこまであるの」と私が聞くと 127 00:05:56,000 --> 00:05:59,000 「宇宙は永遠に続いているんだよ」と父は答え 128 00:05:59,000 --> 00:06:02,000 それで私は 「永遠を測ってよ 129 00:06:02,000 --> 00:06:04,000 測れないものは存在しないって 130 00:06:04,000 --> 00:06:07,000 学校で教わったんだ 131 00:06:07,000 --> 00:06:10,000 測れなかったらおかしいんだ」と言いました 132 00:06:10,000 --> 00:06:12,000 では永遠はどこまで続くのか 133 00:06:12,000 --> 00:06:14,000 永遠がどういう意味なのか分からず 134 00:06:14,000 --> 00:06:17,000 私は夜に泣きべそをかくこともありました 135 00:06:17,000 --> 00:06:20,000 想像したものを 形にすることが 出来なかったからです 136 00:06:20,000 --> 00:06:22,000 それで私は何をしたかって? 137 00:06:22,000 --> 00:06:24,000 当時 弱冠7歳で 138 00:06:24,000 --> 00:06:26,000 私は物語を作りました 139 00:06:26,000 --> 00:06:28,000 どんな物語かって? 140 00:06:28,000 --> 00:06:31,000 なぜかわかりませんが 覚えています 141 00:06:31,000 --> 00:06:33,000 木こりが斧を手に取り 142 00:06:33,000 --> 00:06:36,000 薪を割ろうとしていました 143 00:06:36,000 --> 00:06:40,000 そして全宇宙はその斧の一粒の原子でした 144 00:06:41,000 --> 00:06:44,000 斧が薪を割った時 145 00:06:44,000 --> 00:06:46,000 全てが破壊されて 146 00:06:46,000 --> 00:06:48,000 再びビッグバンが起きるのです 147 00:06:48,000 --> 00:06:50,000 でもビッグバンの前には 木こりが存在していました 148 00:06:50,000 --> 00:06:52,000 その物語が終わらんとするとき 149 00:06:52,000 --> 00:06:55,000 私はその木こりの宇宙が 150 00:06:55,000 --> 00:06:58,000 別の木こりの斧にある 一粒の原子なんだと考えました 151 00:06:58,000 --> 00:07:01,000 こうして私は物語を何度も繰り返し 話すことができました 152 00:07:01,000 --> 00:07:03,000 そうすることで 自分が抱える問題を 153 00:07:03,000 --> 00:07:06,000 乗り越えることができたのです 154 00:07:06,000 --> 00:07:09,000 物語を語ることによって乗り越えたのです 155 00:07:09,000 --> 00:07:11,000 では物語とは何でしょう? 156 00:07:11,000 --> 00:07:14,000 物語とは 我々の全てです 157 00:07:14,000 --> 00:07:17,000 私たちは 自らが語る物語なのです 158 00:07:17,000 --> 00:07:21,000 自分は存在するのかしないのか 159 00:07:21,000 --> 00:07:23,000 自分は何者なのかという 160 00:07:23,000 --> 00:07:25,000 二重性の中で 161 00:07:25,000 --> 00:07:27,000 私たちは暮らしていますが 162 00:07:27,000 --> 00:07:30,000 自ら語る物語こそが 163 00:07:30,000 --> 00:07:32,000 私たちの存在の可能性を明らかにする 164 00:07:32,000 --> 00:07:34,000 証なのです 165 00:07:34,000 --> 00:07:37,000 私たちは 自らが語る物語なのです 166 00:07:39,000 --> 00:07:41,000 そして これが物語の幅なのです 167 00:07:41,000 --> 00:07:43,000 物語とは 自分自身や潜在的な自分と 168 00:07:43,000 --> 00:07:47,000 無限の世界の間で生まれる 169 00:07:47,000 --> 00:07:49,000 関係性のことで 170 00:07:49,000 --> 00:07:52,000 それが我々の神話なのです 171 00:07:52,000 --> 00:07:55,000 私たちはさまざまな物語を語ります 172 00:07:55,000 --> 00:07:58,000 物語を持たない人などいません 173 00:07:58,000 --> 00:08:01,000 アインシュタインは物語を語り 174 00:08:01,000 --> 00:08:04,000 自分の物語を追うことで 理論を見出し 175 00:08:04,000 --> 00:08:07,000 そこから方程式を考え出しました 176 00:08:07,000 --> 00:08:10,000 アレクサンダー大王は 母親が昔語った物語を元に 177 00:08:10,000 --> 00:08:12,000 世界征服に乗り出しました 178 00:08:12,000 --> 00:08:15,000 誰もが自分の物語を持っています 179 00:08:15,000 --> 00:08:17,000 そして自分自身に物語を語ります 180 00:08:17,000 --> 00:08:20,000 もっと突っ込んで言いましょう 181 00:08:20,000 --> 00:08:22,000 我物語を語る、ゆえに我あり 182 00:08:22,000 --> 00:08:24,000 私たちは 物語があるから存在しているのです 183 00:08:24,000 --> 00:08:26,000 物語がなければ存在していません 184 00:08:26,000 --> 00:08:29,000 私たちは自らの存在を確立するために 物語を作り出します 185 00:08:29,000 --> 00:08:31,000 物語を作らなければ 186 00:08:31,000 --> 00:08:34,000 恐らく狂人になってしまうでしょう 187 00:08:34,000 --> 00:08:37,000 絶対にそうだとは言えませんが 私はいつもそう考えています 188 00:08:37,000 --> 00:08:41,000 映画の話をしましょう 189 00:08:41,000 --> 00:08:43,000 映画は物語を語ります 190 00:08:43,000 --> 00:08:46,000 私はブッダの映画を撮ろうと思って いるのですが 191 00:08:46,000 --> 00:08:50,000 時々こんなことを考えます もしブッダが 192 00:08:50,000 --> 00:08:52,000 映画監督と同じ要素を手にしていたら― 193 00:08:52,000 --> 00:08:55,000 つまり音楽と映像 ビデオカメラがあれば 194 00:08:55,000 --> 00:08:57,000 仏教はもっと分かりやすくなったのだろうか 195 00:08:57,000 --> 00:08:59,000 でもそうなるとプレッシャーですね 196 00:08:59,000 --> 00:09:01,000 私は物語を 197 00:09:01,000 --> 00:09:03,000 より巧みに語らなければなりません 198 00:09:03,000 --> 00:09:05,000 でもサブテキスト(言外の意味)を使えば 199 00:09:05,000 --> 00:09:07,000 そうできるかもしれません 200 00:09:07,000 --> 00:09:09,000 初めてハリウッドに行った時 201 00:09:09,000 --> 00:09:11,000 サブテキストのことをよく口にしたのですが 202 00:09:11,000 --> 00:09:14,000 代理人に「その話はしないで」と言われました 203 00:09:14,000 --> 00:09:16,000 なぜかと聞くと 「サブテキストなんて言ったら- 204 00:09:16,000 --> 00:09:18,000 誰も映画を撮らせてくれませんよ 205 00:09:19,000 --> 00:09:21,000 筋書きのことだけを話して 206 00:09:21,000 --> 00:09:23,000 自分がどれ程上手くそれを撮れるか 207 00:09:23,000 --> 00:09:25,000 映像はどうなるのかを話しなさい」と 208 00:09:25,000 --> 00:09:27,000 映画の良し悪しを判断する時 209 00:09:27,000 --> 00:09:29,000 私たちはこのような点に注目します 210 00:09:29,000 --> 00:09:32,000 物語の筋書きレベル 211 00:09:32,000 --> 00:09:34,000 そしてその物語の 212 00:09:34,000 --> 00:09:36,000 心理的なレベル 213 00:09:36,000 --> 00:09:39,000 政治的なレベル 214 00:09:39,000 --> 00:09:41,000 さらに 物語の 215 00:09:41,000 --> 00:09:43,000 神話的レベル 216 00:09:43,000 --> 00:09:45,000 それぞれのレベルで物語を検討します 217 00:09:45,000 --> 00:09:47,000 こうした物語たちが 218 00:09:47,000 --> 00:09:50,000 互いに一致している必要はありません 219 00:09:50,000 --> 00:09:52,000 驚くべきことに 220 00:09:52,000 --> 00:09:56,000 多くの場合 それぞれのレベルで 物語は互いに矛盾しています 221 00:09:56,000 --> 00:09:58,000 偉大な音楽家であるラーマンと仕事をするとき 222 00:09:58,000 --> 00:10:02,000 私はよくこう言います 「台本に書いてあることに従うのではなく 223 00:10:02,000 --> 00:10:04,000 書いてないことを見つけてください 224 00:10:04,000 --> 00:10:06,000 自分にとっての真実を探してください 225 00:10:06,000 --> 00:10:08,000 真実が見つかった時 226 00:10:08,000 --> 00:10:10,000 それは筋書きと矛盾するかもしれません 227 00:10:10,000 --> 00:10:12,000 でも心配は無用です」 228 00:10:14,000 --> 00:10:17,000 『エリザベス:ゴールデン・エイジ』は 『エリザベス』の続編です 229 00:10:17,000 --> 00:10:19,000 続編を作った時 230 00:10:19,000 --> 00:10:21,000 脚本家はこんなことを言っていました 231 00:10:21,000 --> 00:10:24,000 フェリペ2世に脅迫され 232 00:10:24,000 --> 00:10:26,000 戦争を始めようとしている 233 00:10:26,000 --> 00:10:28,000 女性が 234 00:10:28,000 --> 00:10:30,000 ウォルター・ローリーに恋をした 235 00:10:30,000 --> 00:10:33,000 ウォルター・ローリーに恋をしたので 236 00:10:33,000 --> 00:10:35,000 女王である理由がなくなってしまった 237 00:10:35,000 --> 00:10:37,000 でもウォルター・ローリーは 238 00:10:37,000 --> 00:10:39,000 女官と恋に落ちたので 239 00:10:39,000 --> 00:10:41,000 彼女は戦争を始めようとしている 女王であるべきか 240 00:10:41,000 --> 00:10:44,000 別の何かを望むのか 決めなければならなかった… 241 00:10:45,000 --> 00:10:48,000 私はこんな物語を語りました 242 00:10:48,000 --> 00:10:50,000 神々がいて 243 00:10:50,000 --> 00:10:52,000 2人の人間がいる 244 00:10:52,000 --> 00:10:55,000 フェリペ2世はいつも祈りを捧げており 245 00:10:55,000 --> 00:10:58,000 神聖な人だった 246 00:10:58,000 --> 00:11:00,000 エリザベスも神聖だったが それほどでもなかった 247 00:11:00,000 --> 00:11:02,000 自らのことを神聖だと思っていたからだ 248 00:11:02,000 --> 00:11:05,000 彼女に流れるのは 死すべき定めにある者の血だった 249 00:11:05,000 --> 00:11:08,000 神聖さというのは不公平なものであり 250 00:11:08,000 --> 00:11:10,000 神々は言った 251 00:11:10,000 --> 00:11:12,000 「よし 正しい者を 252 00:11:12,000 --> 00:11:15,000 救うことにしよう」 253 00:11:15,000 --> 00:11:17,000 彼らは正しい者を救った 254 00:11:17,000 --> 00:11:20,000 神々は ウォルター・ローリーを仕向けて 255 00:11:20,000 --> 00:11:23,000 エリザベスの死すべき肉体を 256 00:11:23,000 --> 00:11:25,000 彼女の精神から分離させた 257 00:11:25,000 --> 00:11:27,000 死すべき肉体とは 258 00:11:27,000 --> 00:11:29,000 ウォルター・ローリーと恋をした少女のこと 259 00:11:29,000 --> 00:11:32,000 彼は徐々にエリザベスから遠ざかったので 260 00:11:32,000 --> 00:11:34,000 エリザベスは神聖さを得ることができたのだ 261 00:11:34,000 --> 00:11:36,000 2人の神聖な人間が争い 262 00:11:36,000 --> 00:11:38,000 神々は神聖さを秤にかけた 263 00:11:38,000 --> 00:11:41,000 もちろんイギリスの世論は怒って 264 00:11:42,000 --> 00:11:45,000 「我々はアルマダの海戦に勝ったんだ」と 言いましたが 265 00:11:45,000 --> 00:11:47,000 私に言わせれば アルマダを打ち破ったのは嵐で 266 00:11:47,000 --> 00:11:49,000 神々が嵐をもたらしたのです 267 00:11:49,000 --> 00:11:51,000 私が何をしていたのわかりますか? 268 00:11:51,000 --> 00:11:53,000 映画を作る 269 00:11:53,000 --> 00:11:55,000 神話的な理由を探していたのです 270 00:11:55,000 --> 00:11:58,000 ケイト・ブランシェットに 「これは何の映画だい?」と尋ねたら 271 00:11:58,000 --> 00:12:00,000 「老いることと折り合いをつけようとしている 272 00:12:00,000 --> 00:12:03,000 女性についての映画よ」と答えました 273 00:12:03,000 --> 00:12:05,000 心理学的な答えです 274 00:12:05,000 --> 00:12:08,000 脚本家は歴史と策略についての 映画だと言います 275 00:12:08,000 --> 00:12:10,000 私にとっては神話と神々についての 276 00:12:10,000 --> 00:12:12,000 映画です 277 00:12:12,000 --> 00:12:14,000 映画の一場面を 278 00:12:14,000 --> 00:12:16,000 お見せします 279 00:12:16,000 --> 00:12:18,000 カメラワークにも注目してください 280 00:12:18,000 --> 00:12:20,000 エリザベスが死すべき運命の 281 00:12:20,000 --> 00:12:23,000 深みにいるシーンです 282 00:12:23,000 --> 00:12:26,000 彼女は 死が持つ本当の意味と 283 00:12:26,000 --> 00:12:29,000 もし自分が死すべき運命ならば 284 00:12:29,000 --> 00:12:31,000 何が起きるのかを見出すのです 285 00:12:31,000 --> 00:12:33,000 死すべき運命の危険性に気づき 286 00:12:33,000 --> 00:12:36,000 なぜそれを排除すべきかを悟ります 287 00:12:36,000 --> 00:12:38,000 いいですか 私にとっては 288 00:12:38,000 --> 00:12:40,000 エリザベスも女官のベスも 289 00:12:40,000 --> 00:12:42,000 同じ肉体の一部分です 290 00:12:42,000 --> 00:12:44,000 片方は死すべき自己で 291 00:12:44,000 --> 00:12:47,000 もう一つは精神的な自己です 292 00:12:47,000 --> 00:12:49,000 ではご覧ください 293 00:12:49,000 --> 00:12:51,000 (音楽) 294 00:12:51,000 --> 00:12:53,000 エリザベス:べス? 295 00:12:55,000 --> 00:12:57,000 べスはどこにおる? 296 00:12:58,000 --> 00:13:00,000 ベス・スロックモートン? 297 00:13:05,000 --> 00:13:07,000 べス:はいここに 女王様 298 00:13:07,000 --> 00:13:09,000 エリザベス:述べよ それは真か? 299 00:13:09,000 --> 00:13:12,000 そなたは身籠っているのか? 300 00:13:13,000 --> 00:13:15,000 子どもができたのか? 301 00:13:15,000 --> 00:13:17,000 べス:はい 女王様 302 00:13:17,000 --> 00:13:20,000 エリザベス:この裏切り者め 303 00:13:20,000 --> 00:13:22,000 なぜそのことを隠しておった? 304 00:13:22,000 --> 00:13:25,000 そなたは 恋をするにも子を産むにも 305 00:13:25,000 --> 00:13:27,000 私の許しが必要ではないか 306 00:13:27,000 --> 00:13:29,000 こんなあばずれが私の服を着ているとは 307 00:13:29,000 --> 00:13:31,000 聞いているのか? 308 00:13:31,000 --> 00:13:34,000 ウォルシンガム:陛下 威厳と慈悲をお持ちになって下さい 309 00:13:34,000 --> 00:13:37,000 エリザベス:慈悲など言っている場合ではない 310 00:13:37,000 --> 00:13:40,000 お主は裏切り者の兄弟のところに行っておれ 311 00:13:40,000 --> 00:13:42,000 奴の子か? 312 00:13:42,000 --> 00:13:45,000 申せ 奴の子どもなのか 313 00:13:45,000 --> 00:13:47,000 べス:はい 314 00:13:47,000 --> 00:13:49,000 女王様 315 00:13:49,000 --> 00:13:52,000 私の夫の子です 316 00:13:54,000 --> 00:13:57,000 エリザベス:あばずれめ!(叫び声) 317 00:13:57,000 --> 00:13:59,000 ローリー:陛下 318 00:13:59,000 --> 00:14:02,000 これは私が愛し仕える女王ではない 319 00:14:07,000 --> 00:14:10,000 エリザベス:こやつは私の侍女を誘惑し 320 00:14:10,000 --> 00:14:13,000 王室の許しなく結婚した 321 00:14:14,000 --> 00:14:17,000 法に違反する行為である 奴を逮捕せよ 322 00:14:18,000 --> 00:14:20,000 行け 323 00:14:24,000 --> 00:14:27,000 お前にはもう私の庇護はやらん 324 00:14:28,000 --> 00:14:31,000 べス:お望みの通りに 陛下 325 00:14:31,000 --> 00:14:34,000 エリザベス:行け 消え失せよ! 326 00:14:38,000 --> 00:14:40,000 行ってしまえ 327 00:14:40,000 --> 00:14:43,000 (音楽) 328 00:15:01,000 --> 00:15:04,000 カプール: 私はここで何をしようと しているか分かりますか? 329 00:15:05,000 --> 00:15:07,000 エリザベスは全てに気づき 330 00:15:07,000 --> 00:15:09,000 自らの嫉妬心 331 00:15:09,000 --> 00:15:11,000 自らの死すべき運命と 332 00:15:11,000 --> 00:15:13,000 向き合っています 333 00:15:13,000 --> 00:15:16,000 建築にも目を向けて下さい 334 00:15:16,000 --> 00:15:18,000 建物は物語を語っています 335 00:15:18,000 --> 00:15:20,000 エリザベスが当時 336 00:15:20,000 --> 00:15:22,000 世界最高の権力者だったとしても 337 00:15:22,000 --> 00:15:24,000 他にも強大なものはあるのです 338 00:15:24,000 --> 00:15:27,000 建築は彼女よりずっと大きいのです 339 00:15:28,000 --> 00:15:30,000 石は自然界のもので 巨大ですし 340 00:15:30,000 --> 00:15:32,000 彼女よりも長く存在し続けるでしょう 341 00:15:32,000 --> 00:15:35,000 つまり 石は彼女の運命の一部として 描かれています 342 00:15:36,000 --> 00:15:39,000 また カメラが見下ろす構図を取っているのは 343 00:15:39,000 --> 00:15:42,000 彼女が井戸の中にいるからです 344 00:15:42,000 --> 00:15:44,000 有限の命という 345 00:15:44,000 --> 00:15:47,000 井戸の中にいるのです 346 00:15:47,000 --> 00:15:50,000 彼女はそこから 347 00:15:50,000 --> 00:15:52,000 自ら抜け出し 348 00:15:52,000 --> 00:15:54,000 精神を解放しなければなりません 349 00:15:54,000 --> 00:15:56,000 その時こそ 350 00:15:56,000 --> 00:15:59,000 エリザベスとべスが一体になるのです 351 00:15:59,000 --> 00:16:01,000 でもそれは エリザベスが物理的に 352 00:16:01,000 --> 00:16:04,000 ベスと別離する瞬間でもあります 353 00:16:04,000 --> 00:16:06,000 映画ではその場面を 354 00:16:06,000 --> 00:16:08,000 複層的に描いています 355 00:16:08,000 --> 00:16:10,000 我々は物語を 356 00:16:10,000 --> 00:16:13,000 映像 音楽 そして役者という層を通して 語りますが 357 00:16:13,000 --> 00:16:15,000 層ごとに色合いは異なり 358 00:16:15,000 --> 00:16:18,000 互いにぶつかり合うこともあります 359 00:16:19,000 --> 00:16:24,000 私がこのような撮り方を始めたきっかけを お話ししましょう 360 00:16:24,000 --> 00:16:27,000 物語を語る過程とは何でしょう? 361 00:16:27,000 --> 00:16:29,000 10年ほど前 362 00:16:29,000 --> 00:16:32,000 ある政治家からこんな話を聞きました 363 00:16:32,000 --> 00:16:35,000 インドではあまり尊敬されていない政治家です 364 00:16:35,000 --> 00:16:38,000 彼が言うには 都市に住む人々は 365 00:16:38,000 --> 00:16:42,000 田舎に住む人々の2日分の生活を 支える水よりも 366 00:16:42,000 --> 00:16:44,000 多くの量の水を 367 00:16:44,000 --> 00:16:47,000 一度にトイレに流してしまうのだと 368 00:16:47,000 --> 00:16:50,000 それにピンと来て 「その通りだ」と答えました 369 00:16:50,000 --> 00:16:52,000 友人を訪ねた時 370 00:16:52,000 --> 00:16:54,000 マラバールヒルの彼のアパートで 371 00:16:54,000 --> 00:16:56,000 待たされました 372 00:16:56,000 --> 00:16:58,000 ムンバイの超高級エリアにある 373 00:16:58,000 --> 00:17:00,000 21階の部屋です 374 00:17:00,000 --> 00:17:02,000 彼は20分間 シャワーを浴びていました 375 00:17:02,000 --> 00:17:04,000 退屈した私はそこを離れ 車を走らせました 376 00:17:04,000 --> 00:17:06,000 いつものように 377 00:17:06,000 --> 00:17:08,000 ボンベイのスラムを通り抜けると 378 00:17:08,000 --> 00:17:10,000 強烈な日差しの下で 379 00:17:10,000 --> 00:17:13,000 女性たちが子どもを連れて長い列を作り 380 00:17:13,000 --> 00:17:15,000 バケツを持って給水車から 381 00:17:15,000 --> 00:17:17,000 水をもらうのを待っているのが見えました 382 00:17:17,000 --> 00:17:19,000 そこからあるアイデアが生まれました 383 00:17:19,000 --> 00:17:21,000 どうやってそれが物語になるのでしょう? 384 00:17:21,000 --> 00:17:24,000 私は突然 人類は災厄に向かっているのだと気づきました 385 00:17:24,000 --> 00:17:26,000 私の次回作は“Paani”という題名です 386 00:17:26,000 --> 00:17:28,000 水という意味です 387 00:17:28,000 --> 00:17:30,000 水の神話から 388 00:17:30,000 --> 00:17:32,000 世界を作り始めたところです 389 00:17:32,000 --> 00:17:34,000 どんな世界を作り 390 00:17:34,000 --> 00:17:37,000 そのアイデアやデザインはどこから来たのでしょう? 391 00:17:37,000 --> 00:17:39,000 私が思うに 未来には 392 00:17:39,000 --> 00:17:42,000 フライオーバー (上空飛行)が行われるようになるでしょう 393 00:17:42,000 --> 00:17:44,000 フライオーバーというのは 394 00:17:44,000 --> 00:17:46,000 A地点からB地点に速く行くため 395 00:17:46,000 --> 00:17:48,000 空を通るようになるということです 396 00:17:48,000 --> 00:17:51,000 でもそれは 裕福な場所同士を 397 00:17:51,000 --> 00:17:53,000 効率的に行き交うということです 398 00:17:53,000 --> 00:17:55,000 ここから生まれるのは 399 00:17:55,000 --> 00:17:57,000 中空で結ばれた都市です 400 00:17:57,000 --> 00:18:00,000 金持ちは上層の都市に行き 401 00:18:00,000 --> 00:18:03,000 貧しい人々は下層に残されます 402 00:18:03,000 --> 00:18:06,000 上層の都市に行くのは 403 00:18:06,000 --> 00:18:08,000 10~12%ぐらいの人々です 404 00:18:08,000 --> 00:18:10,000 上層都市と下層都市には由来があります 405 00:18:10,000 --> 00:18:12,000 インドの神話の中で 406 00:18:12,000 --> 00:18:15,000 ヒンディ語でこんなことが言われています 407 00:18:15,000 --> 00:18:19,000 [ヒンディ語] 408 00:18:19,000 --> 00:18:21,000 どんな意味かわかりますか? 409 00:18:21,000 --> 00:18:24,000 金持ちは常に貧民の肩にどっかりと座り 410 00:18:24,000 --> 00:18:26,000 そこで生きているのだということです 411 00:18:26,000 --> 00:18:28,000 その神話から上層都市と下層都市が生まれました 412 00:18:28,000 --> 00:18:31,000 デザインには物語があるのです 413 00:18:31,000 --> 00:18:34,000 今 何が起きているかというと 上層都市の人々が 414 00:18:34,000 --> 00:18:36,000 全ての水を吸い上げているのです 415 00:18:36,000 --> 00:18:38,000 そう 吸い上げているのです 416 00:18:38,000 --> 00:18:40,000 全ての水を吸い上げ 自分たちのために使い 417 00:18:40,000 --> 00:18:42,000 下層都市にはポタポタとしか垂らしません 418 00:18:42,000 --> 00:18:44,000 もし革命が起きれば 水の供給を切ってしまうでしょう 419 00:18:44,000 --> 00:18:47,000 民主主義がまだ存在しますから 420 00:18:47,000 --> 00:18:50,000 もし私たちの望むものをくれるならば 水をやろうと言うのが 421 00:18:50,000 --> 00:18:53,000 民主的な方法なのです 422 00:18:53,000 --> 00:18:55,000 もうそろそろ時間です 423 00:18:55,000 --> 00:18:57,000 でもこれはお伝えしておきます 424 00:18:57,000 --> 00:18:59,000 私が映画を通じて行っているのは 425 00:18:59,000 --> 00:19:02,000 いかにして物語を発展させ 物語と我々自身のつながりを語り 426 00:19:02,000 --> 00:19:04,000 そうしたことを映画という文法の中に 427 00:19:04,000 --> 00:19:06,000 落とし込んでいくことです 428 00:19:06,000 --> 00:19:09,000 でも結局 物語とは矛盾です 429 00:19:09,000 --> 00:19:11,000 あらゆるものは矛盾します 430 00:19:11,000 --> 00:19:13,000 宇宙は矛盾そのものです 431 00:19:13,000 --> 00:19:15,000 そして我々はいつも調和を探し求めるのです 432 00:19:15,000 --> 00:19:17,000 目を覚ますと 夜と昼は矛盾しています 433 00:19:17,000 --> 00:19:19,000 でも もし朝4時に目を覚ませば 434 00:19:19,000 --> 00:19:21,000 暗い空が最初に赤らむのは 435 00:19:21,000 --> 00:19:24,000 夜と昼が調和を見出そうとしているところです 436 00:19:24,000 --> 00:19:27,000 モーツァルトの楽譜に調和自体が 現れなくても 437 00:19:27,000 --> 00:19:29,000 どういう訳か 438 00:19:29,000 --> 00:19:33,000 彼の楽譜にある全ての矛盾は 調和に向かっているように感じられます 439 00:19:33,000 --> 00:19:35,000 詩人や物語の語り手が 440 00:19:35,000 --> 00:19:38,000 心に存在する矛盾の中で 441 00:19:38,000 --> 00:19:41,000 調和を探し求めるとそうなるのです 442 00:19:41,000 --> 00:19:44,000 物語の語り手は 心に倫理的な矛盾を抱えています 443 00:19:44,000 --> 00:19:46,000 詩人の心には言葉の衝突があります 444 00:19:46,000 --> 00:19:49,000 宇宙の心には昼と夜の相克があります 445 00:19:49,000 --> 00:19:51,000 男と女の心には 446 00:19:51,000 --> 00:19:53,000 常に男性と女性の 447 00:19:53,000 --> 00:19:55,000 矛盾があります 448 00:19:55,000 --> 00:19:57,000 私たちはその中で調和を見いだそうとするのです 449 00:19:57,000 --> 00:20:00,000 矛盾というのはこうしたものです 450 00:20:00,000 --> 00:20:03,000 でも矛盾を受け入れることは 物語を語ることであって 451 00:20:03,000 --> 00:20:05,000 問題の解消ではありません 452 00:20:05,000 --> 00:20:07,000 ハリウッドや多くの映画で語られる 453 00:20:07,000 --> 00:20:10,000 物語が問題なのは 454 00:20:10,000 --> 00:20:13,000 矛盾を解決しようとするからです 455 00:20:13,000 --> 00:20:15,000 調和とは解決ではありません 456 00:20:15,000 --> 00:20:17,000 調和とは解決よりもずっと大きなことを 457 00:20:17,000 --> 00:20:19,000 暗示するものです 458 00:20:19,000 --> 00:20:21,000 調和とは包括的で普遍的 459 00:20:21,000 --> 00:20:24,000 永遠でもあり この瞬間のものでもある 460 00:20:24,000 --> 00:20:26,000 何かを暗示するものです 461 00:20:26,000 --> 00:20:30,000 解決というのはもっとずっと限られたものです 462 00:20:30,000 --> 00:20:33,000 解決は有限で 調和は無限です 463 00:20:33,000 --> 00:20:36,000 物語とは宇宙にある他の全ての矛盾と同じく 464 00:20:36,000 --> 00:20:39,000 調和と永遠を探し求めるもので 465 00:20:39,000 --> 00:20:42,000 断固とした倫理観を持って 解決する矛盾と そのまま残して置く矛盾を決め 466 00:20:42,000 --> 00:20:46,000 矛盾を残しながら 本当に重要な問いを作り出すのです 467 00:20:46,000 --> 00:20:48,000 どうもありがとうございます 468 00:20:48,000 --> 00:20:51,000 (拍手)