1 00:00:00,862 --> 00:00:02,640 リマに育った子供として 2 00:00:02,640 --> 00:00:05,115 スペインによる ペルー征服にまつわる伝説を 3 00:00:05,115 --> 00:00:07,449 祖父から よく聞かされました 4 00:00:08,007 --> 00:00:11,546 インカの皇帝アタワルパは 捕らえられ 殺されました 5 00:00:11,570 --> 00:00:14,447 ピサロ率いる征服者達は 金持ちになりました 6 00:00:14,447 --> 00:00:18,293 彼らの征服と栄光の噂が 本国スペインに届くと 7 00:00:18,293 --> 00:00:23,162 金と栄誉に飢えたスペイン人が さらに押し寄せました 8 00:00:24,055 --> 00:00:26,953 インカの町を訪れた彼らは 問いました 9 00:00:26,977 --> 00:00:30,752 「征服できる文明はもっとないのか? 金はどこにある?」 10 00:00:30,776 --> 00:00:34,558 恨みを抱くインカ人は こう教えました 11 00:00:34,558 --> 00:00:36,717 「アマゾンに行くがいい 12 00:00:36,717 --> 00:00:39,413 金なら欲しいだけ 手に入る 13 00:00:39,437 --> 00:00:44,151 実際 パイティティの町 — スペイン語で エル・ドラード — は 14 00:00:44,175 --> 00:00:46,933 町そのものが 金でできている」 15 00:00:46,933 --> 00:00:49,829 スペイン人達はジャングルの奧へと 入って行きましたが 16 00:00:49,829 --> 00:00:53,425 戻ってきた者はわずかで 彼らの持ち帰った話にあったのは — 17 00:00:53,425 --> 00:00:57,711 強い魔力を持つシャーマン 18 00:00:57,735 --> 00:01:00,639 毒矢を放つ戦士 19 00:01:00,663 --> 00:01:04,441 高くそびえて 太陽を覆い隠す木々 20 00:01:04,465 --> 00:01:09,217 鳥を喰らうクモ 人を丸呑みにする大蛇 21 00:01:09,241 --> 00:01:12,155 そして煮えたぎる川です 22 00:01:13,445 --> 00:01:15,773 そんな話が 少年時代の記憶に 刻まれました 23 00:01:15,773 --> 00:01:16,892 時は過ぎて 24 00:01:16,892 --> 00:01:19,681 私は今 南メソジスト大の 博士課程で 25 00:01:19,681 --> 00:01:23,399 ペルーの地熱エネルギーの 可能性について研究していますが 26 00:01:23,413 --> 00:01:25,459 あの伝説のことを思い出して 27 00:01:25,483 --> 00:01:27,592 疑問に思い始めました 28 00:01:28,076 --> 00:01:31,193 煮えたぎる川なんて 本当にあるのだろうか? 29 00:01:32,140 --> 00:01:34,293 いろんな仕事仲間に 聞いてみました 30 00:01:34,293 --> 00:01:35,390 大学 政府 31 00:01:35,390 --> 00:01:37,127 石油 ガス 鉱山会社 32 00:01:37,127 --> 00:01:40,399 みんな口をそろえて 「あるわけない」と言います 33 00:01:40,399 --> 00:01:42,459 そりゃそうです 34 00:01:42,950 --> 00:01:45,682 沸騰する川は 世の中に存在しますが 35 00:01:45,682 --> 00:01:48,301 通常 火山地帯にあります 36 00:01:48,499 --> 00:01:51,476 そのように大きな 地熱エネルギーの発現には 37 00:01:51,476 --> 00:01:54,186 強力な熱源が必要だからです 38 00:01:54,210 --> 00:01:58,948 地図上の赤い点は 火山を表していますが 39 00:01:58,948 --> 00:02:02,230 アマゾンにも ペルーの大部分にも 40 00:02:02,230 --> 00:02:04,098 火山はありません 41 00:02:04,122 --> 00:02:08,389 したがって沸騰する川など 期待すべくもないのです 42 00:02:09,660 --> 00:02:13,748 家族の晩ご飯の席で この話をすると 43 00:02:13,772 --> 00:02:16,242 叔母さんが言うんです 44 00:02:16,266 --> 00:02:20,838 「あら そんなことないわ アンドレス そこに行って 泳いだことあるもの」 45 00:02:20,838 --> 00:02:24,535 (笑) 46 00:02:24,559 --> 00:02:26,306 そこに叔父も加わります 47 00:02:26,330 --> 00:02:28,574 「いや 嘘じゃないぞ 48 00:02:28,574 --> 00:02:33,067 泳げるのは 大雨の後だけだけどな 49 00:02:33,091 --> 00:02:36,191 それに魔力の強いシャーマンに 守られている 50 00:02:36,191 --> 00:02:39,317 お前の叔母さんはな 彼の奥さんと友達なんだ」 51 00:02:39,317 --> 00:02:40,926 (笑) 52 00:02:40,926 --> 00:02:42,077 (スペイン語) マジで? 53 00:02:42,077 --> 00:02:44,475 科学者としては 懐疑的でしたが 54 00:02:44,499 --> 00:02:48,931 気がつくと 叔母さんの案内で ジャングルをハイキングしていました 55 00:02:48,955 --> 00:02:52,852 一番近い火山から 700キロも離れた場所です 56 00:02:52,876 --> 00:02:56,268 正直 見ることになるのは せいぜい 57 00:02:56,268 --> 00:03:01,284 伝説の「アマゾンの生温かい流れ」 だろうと思っていました 58 00:03:02,671 --> 00:03:04,292 しかし それから 59 00:03:04,316 --> 00:03:05,998 何かが聞こえてきました 60 00:03:07,255 --> 00:03:08,994 低い轟きが 61 00:03:10,347 --> 00:03:13,042 進んでいくにつれて 62 00:03:13,062 --> 00:03:16,050 徐々に大きくなっていきます 63 00:03:16,300 --> 00:03:20,228 絶えずくだけ続ける 波の音のようでした 64 00:03:20,252 --> 00:03:24,937 さらに近づくと 木々の間から 湯気が漏れてきました 65 00:03:24,961 --> 00:03:28,940 そして 目にしたのが この光景です 66 00:03:29,511 --> 00:03:32,640 すぐに温度計を取り出して 測ってみると 67 00:03:32,640 --> 00:03:35,561 川の平均温度は 68 00:03:35,585 --> 00:03:38,332 86℃でした 69 00:03:39,310 --> 00:03:42,807 100℃に沸騰しているわけでは ありませんが 70 00:03:42,831 --> 00:03:46,048 ほとんど それに 近いものです 71 00:03:46,296 --> 00:03:49,898 川の流れは熱く 速いものでした 72 00:03:49,898 --> 00:03:52,703 シャーマンの弟子に連れられ 上流へと進み 73 00:03:52,703 --> 00:03:55,637 その川の最も神聖な場所に 行きました 74 00:03:55,661 --> 00:03:57,067 奇妙なのは 75 00:03:57,091 --> 00:03:59,493 川の水は はじめ冷たい ということです 76 00:03:59,502 --> 00:04:01,163 この場所が 77 00:04:01,163 --> 00:04:03,930 水の母なる ヤクママの棲み家 — 78 00:04:03,954 --> 00:04:06,661 熱水と冷水を生み出す 79 00:04:06,661 --> 00:04:09,854 巨大なヘビの精です 80 00:04:10,015 --> 00:04:14,427 ここに熱水泉がありました 81 00:04:14,451 --> 00:04:19,733 ヘビの精の 母なる口の下で 冷たい水の流れと混じり合い 82 00:04:19,733 --> 00:04:23,688 伝説に命が 与えられていました 83 00:04:24,283 --> 00:04:26,411 翌朝 目を覚ますと — 84 00:04:26,411 --> 00:04:28,504 (笑) 85 00:04:28,528 --> 00:04:30,559 お茶を頼みました 86 00:04:30,583 --> 00:04:33,253 するとマグカップと ティーバッグをよこして 87 00:04:33,253 --> 00:04:35,515 川の方を指します 88 00:04:36,075 --> 00:04:40,584 意外なことに 川の水は 澄んでいて良い味がしました 89 00:04:40,608 --> 00:04:43,892 地熱系においては 少し奇妙なことです 90 00:04:44,441 --> 00:04:45,989 驚いたのは 91 00:04:46,013 --> 00:04:48,997 その場所が 地元の人には ずっと知られていて 92 00:04:49,021 --> 00:04:53,525 私がそれを見た最初のよそ者 でもないことでした 93 00:04:53,701 --> 00:04:56,978 彼らの日常生活の 一部になっていました 94 00:04:57,115 --> 00:04:59,809 彼らはその水を飲み 95 00:04:59,833 --> 00:05:02,388 その蒸気を体に取り込み 96 00:05:02,412 --> 00:05:04,103 それで料理をし 97 00:05:04,127 --> 00:05:05,637 洗濯をし 98 00:05:05,661 --> 00:05:08,039 薬を作りさえします 99 00:05:09,094 --> 00:05:10,840 シャーマンに会いましたが 100 00:05:10,864 --> 00:05:15,593 彼は川やジャングルの 一部のように見えました 101 00:05:15,718 --> 00:05:17,992 彼は私の意図を問い 102 00:05:18,459 --> 00:05:20,788 注意深く聞いていました 103 00:05:21,262 --> 00:05:24,373 そしてホッとしたことには — 104 00:05:24,397 --> 00:05:27,944 正直おっかなびっくり だったんですが 105 00:05:27,968 --> 00:05:32,247 彼の顔に笑顔が広がり 笑い出したんです 106 00:05:32,271 --> 00:05:35,018 (笑) 107 00:05:35,796 --> 00:05:40,375 その川を研究してよいという許しを シャーマンから得ました 108 00:05:40,375 --> 00:05:43,353 ただ1つ条件として 水のサンプルを採取し 109 00:05:43,353 --> 00:05:45,203 研究室で分析した後 110 00:05:45,203 --> 00:05:47,653 そこが世界のどこであれ 111 00:05:48,165 --> 00:05:52,031 その水を大地に 戻すということ 112 00:05:52,055 --> 00:05:53,516 そうすれば 113 00:05:53,516 --> 00:05:56,871 水は戻って来られるからと 114 00:05:58,922 --> 00:06:03,139 2011年に初めて訪れて以来 私は毎年その場所に行っています 115 00:06:03,139 --> 00:06:06,308 そこでの野外調査は 胸が躍ると同時に 116 00:06:06,332 --> 00:06:10,259 きつく 時に危険もあります 117 00:06:10,583 --> 00:06:13,912 ナショナルジオグラフィック誌の 特集で取り上げられた話ですが 118 00:06:13,912 --> 00:06:18,303 便箋ほどの小さな岩の上で 身動きが取れなくなったことがあります 119 00:06:18,303 --> 00:06:20,693 海パンにサンダルという格好で 120 00:06:20,693 --> 00:06:23,697 80℃の川と 熱水泉に挟まれました 121 00:06:23,697 --> 00:06:27,030 ご覧のように ほとんど沸騰しています 122 00:06:27,030 --> 00:06:30,956 そこへ持ってきて アマゾンは熱帯雨林です 123 00:06:30,956 --> 00:06:33,932 ザーッと大雨が来て 何も見えなくなりました 124 00:06:33,932 --> 00:06:37,608 温度差のため 辺り一面真っ白です 125 00:06:38,766 --> 00:06:40,661 凄まじい体験でした 126 00:06:42,158 --> 00:06:44,520 何年もの調査の末に 127 00:06:44,520 --> 00:06:50,642 私は地球物理・地球化学的研究の 論文発表をしようとしています 128 00:06:51,047 --> 00:06:53,486 その発見の中の いくつかを 129 00:06:53,486 --> 00:06:58,606 このTEDの場で 初めて公開しようと思います 130 00:06:59,340 --> 00:07:02,441 まず初めに これは伝説ではありません 131 00:07:02,468 --> 00:07:03,642 驚きでしょ! 132 00:07:03,666 --> 00:07:05,991 (笑) 133 00:07:06,015 --> 00:07:07,603 この研究を始めた頃は 134 00:07:07,603 --> 00:07:11,532 衛星画像の解像度が低く 役に立ちませんでした 135 00:07:11,556 --> 00:07:13,684 ちゃんとした地図が なかったんです 136 00:07:13,684 --> 00:07:16,145 グーグルアース開発チームのお陰で 137 00:07:16,169 --> 00:07:18,314 今や この鮮明さです 138 00:07:19,251 --> 00:07:24,991 この川の現地名である 「シャナイ・ティンピシュカ」には 139 00:07:24,998 --> 00:07:29,100 「太陽の熱で沸いた」 という意味があり 140 00:07:29,100 --> 00:07:34,663 なぜ川が沸騰しているのか不思議に思ったのは 私が最初ではないことを示しています 141 00:07:34,663 --> 00:07:37,594 人類は常に 周りの世界のことを 142 00:07:37,594 --> 00:07:40,293 解き明かそうと してきたんです 143 00:07:40,786 --> 00:07:44,194 ではなぜ この川は 沸騰しているのでしょう? 144 00:07:44,194 --> 00:07:48,361 (泡立つ音) 145 00:07:48,385 --> 00:07:51,990 この映像は 撮るのに 3年かかったんですよ 146 00:07:52,649 --> 00:07:55,235 割れ目から熱水泉が 湧き出ています 147 00:07:55,235 --> 00:07:59,258 私たちの体の 動脈や静脈に 熱い血が流れているように 148 00:07:59,282 --> 00:08:04,670 地球の割れ目や断層にも 熱い水が流れているんです 149 00:08:05,022 --> 00:08:08,757 地球の動脈が 地表に出てくる場所では 150 00:08:08,781 --> 00:08:11,375 様々な形で 地熱の発現が見られます 151 00:08:11,375 --> 00:08:16,179 噴気孔 熱水泉 そしてご覧の 沸騰する川です 152 00:08:16,329 --> 00:08:20,799 でも本当にすごいのは この場所の規模の大きさです 153 00:08:21,071 --> 00:08:24,317 今度道路を渡るときに ちょっと思い出してください 154 00:08:24,427 --> 00:08:26,673 この川は ほとんどの部分で 155 00:08:26,673 --> 00:08:29,487 二車線の道路よりも幅があり 156 00:08:29,504 --> 00:08:35,385 6.24キロに渡って 熱湯が流れているんです 157 00:08:36,222 --> 00:08:38,152 本当に大したものです 158 00:08:38,827 --> 00:08:42,077 このTEDの舞台よりも広い 熱水溜まりがあり 159 00:08:42,101 --> 00:08:44,111 あの滝は落差が 160 00:08:44,111 --> 00:08:46,639 6メートルあります 161 00:08:47,384 --> 00:08:51,346 水はほとんど 100℃に近い熱湯です 162 00:08:51,783 --> 00:08:54,429 私たちは川に沿って 温度を測定しました 163 00:08:54,429 --> 00:08:57,656 この野外調査で 一番大変だった部分です 164 00:08:57,656 --> 00:09:01,793 結果はもう「スゲェ!」としか 言い様がありません 165 00:09:01,793 --> 00:09:04,830 すいません 地球科学者の血が騒ぎました 166 00:09:04,830 --> 00:09:07,180 水温はこのように 見事な推移を見せています 167 00:09:07,204 --> 00:09:09,420 川は冷たい水で始まります 168 00:09:09,444 --> 00:09:12,263 それから熱くなり 冷たくなり 熱くなり 冷たくなり 169 00:09:12,263 --> 00:09:15,571 再び熱くなって それから このきれいな減衰曲線で推移し 170 00:09:15,571 --> 00:09:18,247 右の冷たい川に ぶち当たります 171 00:09:18,379 --> 00:09:21,333 皆さん地熱が専門じゃないのは 分かっているので 172 00:09:21,357 --> 00:09:23,975 日常の言葉を使って 説明しましょう 173 00:09:23,975 --> 00:09:26,358 皆さんコーヒーは好きですか? 174 00:09:26,382 --> 00:09:28,031 好きですよね? 175 00:09:28,517 --> 00:09:32,200 普通のホットコーヒーは 54℃です 176 00:09:32,224 --> 00:09:34,744 エクストラホットだと60℃ 177 00:09:34,756 --> 00:09:37,067 コーヒーショップの 言い方をすると 178 00:09:37,091 --> 00:09:40,384 この川の温度は こうなります 179 00:09:40,401 --> 00:09:42,430 ここがホット 180 00:09:42,756 --> 00:09:44,630 ここがエクストラホットです 181 00:09:44,654 --> 00:09:46,752 ご覧のように この川には 182 00:09:46,752 --> 00:09:49,840 エクストラホットよりも 熱い部分があるんです 183 00:09:49,864 --> 00:09:52,206 これ平均温度ですからね 184 00:09:52,206 --> 00:09:56,409 地熱そのものの温度を確かめるため 乾期に測定しました 185 00:09:56,603 --> 00:09:59,223 ここに出ていない 特別な温度があって 186 00:09:59,247 --> 00:10:02,067 それは47℃です 187 00:10:02,856 --> 00:10:05,378 火傷をし始める温度です 188 00:10:05,402 --> 00:10:09,575 個人的な体験から 私にはよく分かります 189 00:10:10,186 --> 00:10:13,012 これより熱いお湯には 入らないことです 190 00:10:13,036 --> 00:10:14,522 注意しないと 191 00:10:14,522 --> 00:10:16,317 本当に危険です 192 00:10:16,554 --> 00:10:19,285 この川に落ちた 様々な動物を見ましたが 193 00:10:19,285 --> 00:10:23,378 起きることは どの動物でも ほとんど一緒です 194 00:10:23,758 --> 00:10:26,579 川に落ちて最初に やられるのが目です 195 00:10:26,603 --> 00:10:29,970 目は熱に弱く すぐ乳白色に変わります 196 00:10:29,974 --> 00:10:31,258 水に流され 197 00:10:31,258 --> 00:10:33,525 出ようともがきますが 高温のため 198 00:10:33,525 --> 00:10:35,621 骨付きのまま 煮えていきます 199 00:10:35,645 --> 00:10:37,820 どんどん力を失っていき 200 00:10:37,820 --> 00:10:40,518 やがて熱湯が口からも入って 201 00:10:40,518 --> 00:10:43,419 すっかり茹で上がってしまいます 202 00:10:43,440 --> 00:10:48,436 (笑) 203 00:10:48,436 --> 00:10:50,815 ちょっとサディスティックでしたかね? 204 00:10:50,839 --> 00:10:52,179 いやはや 205 00:10:53,172 --> 00:10:56,660 もうしばらく漬け込んでおくと こうなります 206 00:10:57,468 --> 00:11:00,196 この温度のなせる技です 207 00:11:00,220 --> 00:11:01,992 イエローストーンや 208 00:11:01,992 --> 00:11:06,259 世界の火山地帯でも 似たものを見ましたが 209 00:11:06,896 --> 00:11:08,384 問題は — 210 00:11:09,883 --> 00:11:14,686 この沸騰する川が 火山活動とは無縁なことを 211 00:11:14,686 --> 00:11:17,876 データが示していることです 212 00:11:18,491 --> 00:11:22,211 マグマや火山を 熱源とするわけではなく 213 00:11:23,722 --> 00:11:30,295 火山からは700キロ以上 離れているんです 214 00:11:30,543 --> 00:11:34,909 こんな沸騰する川がどうして 存在するのでしょう? 215 00:11:35,790 --> 00:11:39,816 これまで地熱の専門家や火山学者に いろいろ聞いてきましたが 216 00:11:39,816 --> 00:11:43,787 非火山性の地熱系で これほどの規模のものは 217 00:11:43,811 --> 00:11:46,138 他に例がありません 218 00:11:47,051 --> 00:11:49,105 世界的に見ても 219 00:11:49,105 --> 00:11:53,471 独特で類を見ないのです 220 00:11:54,398 --> 00:11:57,556 どうなっているのでしょう? 221 00:11:58,170 --> 00:12:00,956 この熱はいったい どこから来るのか? 222 00:12:00,956 --> 00:12:04,589 問題をきちんと押さえ この地熱系のことを もっと良く理解するには 223 00:12:04,589 --> 00:12:06,492 さらに研究が必要ですが 224 00:12:06,516 --> 00:12:08,842 データを見て 今言えるのは 225 00:12:08,866 --> 00:12:12,680 これは大きな熱水系によるものらしい ということです 226 00:12:13,151 --> 00:12:14,611 説明しましょう 227 00:12:14,635 --> 00:12:17,943 地下深くへ行くほど 温度は高くなります 228 00:12:17,967 --> 00:12:21,285 これを「地温勾配」と 呼んでいます 229 00:12:21,285 --> 00:12:26,388 水は遠くアンデス山脈の氷河に 端を発するのかもしれません 230 00:12:26,412 --> 00:12:28,411 それから地下深くを流れ 231 00:12:28,435 --> 00:12:31,476 地温勾配によって 熱せられた後に 232 00:12:31,476 --> 00:12:34,823 地上に出て来て 沸騰する川になります 233 00:12:35,001 --> 00:12:38,320 すべてはこの場所の 独特な地形によるものです 234 00:12:38,667 --> 00:12:41,318 この川の中や周辺で — 235 00:12:41,318 --> 00:12:43,661 これはナショジオ誌の スペンサー・ウェルズと 236 00:12:43,661 --> 00:12:46,262 カリフォルニア大学デービス校の ジョン・アイゼンとの 237 00:12:46,262 --> 00:12:47,796 共同研究なんですが — 238 00:12:47,820 --> 00:12:50,512 この川の中や周辺に生息する 239 00:12:50,512 --> 00:12:53,464 極限微生物の DNAを分析して 240 00:12:53,464 --> 00:12:59,419 この沸騰する川に固有の 生物種が見つかりました 241 00:13:00,264 --> 00:13:05,507 これらの研究 発見 伝説を経てもなお 242 00:13:06,189 --> 00:13:08,119 残る疑問があります 243 00:13:09,404 --> 00:13:13,104 この沸騰する川に どんな重要性があるのか? 244 00:13:14,601 --> 00:13:19,247 このジャングルの一区画の上に 常に浮かんでいる雲に 245 00:13:19,271 --> 00:13:22,367 どんな重要性があるのか? 246 00:13:23,333 --> 00:13:26,523 子供の頃に聞いた 伝説の一節に 247 00:13:26,523 --> 00:13:29,730 どんな重要性があるのか? 248 00:13:31,307 --> 00:13:35,235 シャーマンと地元コミュニティにとっては 神聖な場所です 249 00:13:35,274 --> 00:13:37,759 地熱学者の私にとっては 250 00:13:37,783 --> 00:13:41,116 きわめて独特な地熱現象です 251 00:13:41,934 --> 00:13:45,772 しかし違法森林伐採業者や 牧畜業者には 252 00:13:45,796 --> 00:13:50,009 乱用できる資源の 1つにすぎません 253 00:13:50,700 --> 00:13:53,061 ペルー政府にとっては 254 00:13:53,061 --> 00:14:00,995 開発できる保護されていない土地の 1つにすぎません 255 00:14:01,856 --> 00:14:06,152 私の目標は この土地を管理する ことになるのが 誰であるにせよ 256 00:14:06,152 --> 00:14:10,304 沸騰する川の独特さと重要性を 分かってもらうことです 257 00:14:10,892 --> 00:14:13,130 そここそが 258 00:14:13,583 --> 00:14:15,877 大事なところだからです 259 00:14:16,568 --> 00:14:18,897 そして肝心なことは 260 00:14:19,880 --> 00:14:22,538 重要性を決めるのは 私たちだということです 261 00:14:22,538 --> 00:14:25,658 私たち自身なんです 私たちには その力があります 262 00:14:25,682 --> 00:14:29,000 神聖なものと 何でもないものの間に 線を引くのは 263 00:14:29,000 --> 00:14:31,232 私たちなんです 264 00:14:31,536 --> 00:14:34,792 あらゆるものが 地図に載り 265 00:14:34,792 --> 00:14:38,604 測られ 調べられている時代 — 266 00:14:38,980 --> 00:14:42,356 この情報の時代にあって 267 00:14:42,589 --> 00:14:44,545 皆さんに分かって欲しいのは 268 00:14:44,545 --> 00:14:51,618 発見は未知の暗い深淵の中でだけ なされるのではなく 269 00:14:51,633 --> 00:14:56,452 圧倒されるデータのホワイトノイズの中からも なされるということです 270 00:14:57,452 --> 00:15:01,357 探求すべきものは まだまだ残されています 271 00:15:01,678 --> 00:15:05,017 我々は すごい世界に いるんです 272 00:15:05,017 --> 00:15:07,306 だから出かけましょう 273 00:15:08,146 --> 00:15:10,393 好奇心を持って 274 00:15:11,481 --> 00:15:14,754 私たちが生きているのは 275 00:15:15,299 --> 00:15:19,029 シャーマンが森の精に歌い 276 00:15:20,109 --> 00:15:22,550 川は煮えたぎり 277 00:15:22,879 --> 00:15:26,535 伝説のものが現実にある 世界なんですから 278 00:15:26,688 --> 00:15:28,199 ありがとうございました 279 00:15:28,223 --> 00:15:30,819 (拍手)