ジミ・ヘンドリックス カート・コバーンにジミー・ペイジ 皆 速弾きの達人ですが 彼らのトレードマークである 超絶技巧プレイは 一体どんな原理で 音色 リズム 旋律 そして音楽となるのでしょうか? ギターの弦をはじくと 定常波と呼ばれる振動が発生します 弦の「節」と呼ばれる点は まったく動かないのに対し 「腹」という別の点は 往復振動を行います 振動はギターのネックとブリッジ 経由でボディに伝わり 薄く柔軟性のある木製の表板に 届いて共鳴し 周囲の空気分子と 付いたり離れたりします このような連続的な圧力の変化が 音波となり ギター内部の音波はほとんど サウンドホールから外に出ます それらの音波は やがて人の耳に入り 耳中で神経インパルスに変換され 脳内で音として認識されます その音の高さは 疎密波の振動数に左右されます 弦が高速で振動すると 短い間隔で疎密が数多く生じ 高い音が出ます その逆に 低速の振動からは 低い音が出ます 振動する弦の振動数に影響を与える 要素は4つあります 長さ 張力 密度 太さです 標準的なギターの場合 弦の長さは皆同じで 張力もほぼ同じですが 太さと密度は色々です 弦が太いほど振動が緩やかになり 低い音色を出します 弦をはじくたびに 実際に定常波がいくつか生じます まず 基本振動が生じ 音の高さが決まりますが それに加え倍音というのものも生じ その振動数は基本振動(基音)の2倍です これらの定常波が重なって 複雑な波ができ 豊かな音色を出します 弦のはじき方も 倍音の出方を左右します 弦の中央のあたりをはじくと 基本波を主とし 奇数倍の倍音も生じ 弦の中央は腹となります 弦をブリッジ付近ではじくと 主に偶数倍の倍音が発生し よりビュンとした音色がでます よく知られる 西洋音階は 振動する弦の 一連の倍音に基づき規定されています ある音に対し ちょうど2倍の振動数をもった もう1つの音を同時に奏でる場合 これが第一倍音となります 2つの音は調和しているため 同じアルファベット文字をあてがい その違いを オクターブ(8度音程)で示します 音階の残りの部分には 1オクターブを12階に分割して 半音として配置します 各半音はひとつ前の半音より 振動数が2の12乗根ずつ上がっていきます これがフレット間隔を決定する要素です 各フレットは弦長を 2の12乗根の比で分割したもので 振動数は半音分ずつ上がっていきます バイオリンなどの フレットのない弦楽器では 各音程間に無数の異なる振動数を 作り出すのが容易になる反面 きちんと音程を保ちながら 弾くことが難しくなります 楽器の弦の数と 弦の間の音程の調整方法は どんな和音を出したいのか また 弾き手の手の形状に合わせて 仕立てられます ギターの形状と素材にもまた色々あり いずれも振動の仕方や音色を左右します 弦を2本以上同時にはじくと 和音や他の効果音といった 新たな波のパターンが生まれます 例えば 振動数の近い 2つの音を同時に弾くと それぞれの音が組み合わさり 振幅が上下する音波が生じ ギタリストが「うなり」と呼ぶ 鼓動するような効果音が出ます エレキギターでは より様々な効果音を出せます 振動が弦から生じるのに 変わりはありませんが ピックアップが 振動を電気信号に変え それがスピーカーに送信されて 音波が生じます ピックアップとスピーカーの間で 波長を自在に処理して 様々な効果音が出せます 例えばー ティストーション、オーバードライブ ワウワウ、ディレイ、フランジャーなどです 音楽の物理学はエンターテイメント以外にも 応用できることを知ってもらいたいので こう考えてみてください 一部の物理学者は  宇宙に存在する全てのものは 極小のピンと張った弦から出される 調和した一連の波から成ると考える人もいます そう思えば 世の現実は全て 宇宙で ジミ・ヘンドリックスが奏でる 長いギターソロなのかもしれません 明らかに 弦には何か 耳で聞く以上のものがあるのです