1 00:00:01,099 --> 00:00:02,718 私はアリを研究しています 2 00:00:02,718 --> 00:00:06,015 砂漠や 熱帯林の中のアリや 3 00:00:06,015 --> 00:00:07,543 我が家のキッチンや 4 00:00:07,543 --> 00:00:11,563 私の住むシリコンバレー周辺の丘でも アリを調べています 5 00:00:11,563 --> 00:00:13,239 最近 私は ある事に気がつきました 6 00:00:13,239 --> 00:00:15,517 アリ同士の「やりとり」は環境の違いで 7 00:00:15,517 --> 00:00:17,345 異なった使われ方になるということです 8 00:00:17,345 --> 00:00:19,345 また この事から 他のシステムについて 9 00:00:19,345 --> 00:00:20,900 学ぶ事があるのではと考えました 10 00:00:20,900 --> 00:00:26,488 例えば 脳の仕組みや 私達が設計するデータネットワークや― 11 00:00:26,488 --> 00:00:29,334 癌についてでさえもです 12 00:00:29,334 --> 00:00:31,086 これら全てのシステムには 13 00:00:31,086 --> 00:00:33,943 中央司令塔はないのです 14 00:00:33,943 --> 00:00:37,763 アリのコロニーは 生殖機能が無いメスの働きアリ ― 15 00:00:37,763 --> 00:00:40,149 皆さんが歩いている所を 見かけるアリと 16 00:00:40,149 --> 00:00:42,305 最低1匹の生殖を行うメスで 成り立っています 17 00:00:42,305 --> 00:00:44,408 このメスはひたすら卵を産むだけで 18 00:00:44,408 --> 00:00:46,417 誰にも指示を与えません 19 00:00:46,417 --> 00:00:48,401 「女王アリ」という名にもかかわらず― 20 00:00:48,401 --> 00:00:50,566 なんら命令を出すわけではありません 21 00:00:50,566 --> 00:00:53,842 つまり コロニーに リーダーはおらず 22 00:00:53,842 --> 00:00:56,620 この類の集中制御機能の無い システムは全て 23 00:00:56,620 --> 00:01:00,539 とても簡単な「やりとり」によって 制御されています 24 00:01:00,549 --> 00:01:03,276 アリ同士のやりとりには 匂いが使われます 25 00:01:03,276 --> 00:01:05,462 触角でにおいを感じ取り 26 00:01:05,462 --> 00:01:08,224 触角でコミュニケーションを取り合います 27 00:01:08,224 --> 00:01:11,233 アリ同士は触角を お互いに触れ合う事で 28 00:01:11,233 --> 00:01:12,840 相手が同じ巣の仲間なのか 29 00:01:12,840 --> 00:01:14,474 確認したり 30 00:01:14,474 --> 00:01:18,710 相手の行動を知ることができます 31 00:01:18,710 --> 00:01:21,910 これは研究用アリーナです 沢山のアリが動き回り 32 00:01:21,910 --> 00:01:23,843 相互に関わっています 33 00:01:23,843 --> 00:01:27,281 他の2つのアリーナと チューブで つながっています 34 00:01:27,281 --> 00:01:29,785 アリ同士が接触する際には 35 00:01:29,785 --> 00:01:31,874 相手が誰かに関わらず 36 00:01:31,874 --> 00:01:33,759 複雑な信号や メッセージのやりとりは 37 00:01:33,759 --> 00:01:37,224 全く行っていません 38 00:01:37,224 --> 00:01:39,335 アリにとって重要なのは 39 00:01:39,335 --> 00:01:42,156 他のアリに出会う頻度なんです 40 00:01:42,156 --> 00:01:44,913 そして このような出会いを総合して 41 00:01:44,913 --> 00:01:47,418 ネットワークを 構成しています 42 00:01:47,418 --> 00:01:49,628 これが アリの出会いの 相互作用が創る 43 00:01:49,628 --> 00:01:52,272 アリーナの内部のネットワークです 44 00:01:52,272 --> 00:01:55,559 この絶えず変化するネットワークは 45 00:01:55,559 --> 00:01:58,079 コロニー全体の行動となって現れます 46 00:01:58,079 --> 00:02:00,960 全てのアリが巣内に籠もるとか 47 00:02:00,960 --> 00:02:03,654 何匹が 収穫に出るかなどを 決めているのです 48 00:02:03,654 --> 00:02:05,413 実は 脳も同じように機能していますが 49 00:02:05,413 --> 00:02:06,913 アリの良いところは 50 00:02:06,913 --> 00:02:11,780 ネットワーク全体をリアルタイムで 観察出来る事です 51 00:02:11,780 --> 00:02:14,880 アリはあらゆる環境下に生息し 52 00:02:14,880 --> 00:02:17,005 12,000種にものぼります 53 00:02:17,005 --> 00:02:19,654 それぞれの異なった 環境の問題に対応する為に― 54 00:02:19,654 --> 00:02:22,422 「やりとり」を様々な形で利用しています 55 00:02:22,422 --> 00:02:24,727 まず どのシステムもが直面する 56 00:02:24,727 --> 00:02:26,597 環境上の課題は 57 00:02:26,597 --> 00:02:28,680 システムの維持に必要な 58 00:02:28,680 --> 00:02:30,945 「運転コスト」です 59 00:02:30,945 --> 00:02:33,493 もう1つの環境上の 課題は「資源」です 60 00:02:33,493 --> 00:02:35,829 「資源」を見つけ出し 集めるという事です 61 00:02:35,829 --> 00:02:38,612 砂漠では 水が乏しい為 62 00:02:38,612 --> 00:02:40,385 システム運用コストは 高くなります 63 00:02:40,385 --> 00:02:42,884 私が砂漠で観察した 植物の種を食べるアリは 64 00:02:42,884 --> 00:02:45,784 水を得るために 水を消費しなければなりません 65 00:02:45,784 --> 00:02:47,923 巣の外で収穫活動をしているアリは 66 00:02:47,923 --> 00:02:49,960 灼熱の太陽に照らされている為に 67 00:02:49,960 --> 00:02:51,967 体内の水分が蒸発してしまうからです 68 00:02:51,967 --> 00:02:53,631 でも コロニーは種に含まれる 69 00:02:53,631 --> 00:02:55,397 脂肪を代謝することにより 70 00:02:55,397 --> 00:02:57,331 水を得ています 71 00:02:57,331 --> 00:03:00,490 このような環境下では アリ間のやりとりが 72 00:03:00,490 --> 00:03:02,039 収穫行動を促進させます 73 00:03:02,039 --> 00:03:04,303 収穫に向かうアリは 戻ってくるアリとの 74 00:03:04,303 --> 00:03:06,876 やりとりが十分でなければ 巣から出ません 75 00:03:06,876 --> 00:03:08,866 これは 収穫を終えたアリの隊列が 76 00:03:08,866 --> 00:03:10,690 巣に戻るためにトンネルを 通過する様子ですが 77 00:03:10,690 --> 00:03:13,326 収穫に向かうアリたちと 接触し合っています 78 00:03:13,326 --> 00:03:14,949 これは理にかなっています 79 00:03:14,949 --> 00:03:17,272 沢山の餌があれば あるほど 80 00:03:17,272 --> 00:03:19,123 それを見つける時間が短くなるので 81 00:03:19,123 --> 00:03:20,359 出たアリがすぐに戻り 82 00:03:20,359 --> 00:03:23,160 より沢山のアリを 送り出す仕組みになっています 83 00:03:23,160 --> 00:03:25,667 これは通常止まっていて 84 00:03:25,667 --> 00:03:27,682 好条件下でのみ稼動するシステムです 85 00:03:27,682 --> 00:03:31,563 アリ間のやりとりが 収穫活動を促進するのです 86 00:03:31,563 --> 00:03:34,470 私達は このシステムの 進化についても研究しています 87 00:03:34,470 --> 00:03:35,561 まず コロニーによる 88 00:03:35,561 --> 00:03:38,040 微妙な違いに注目しました 89 00:03:38,040 --> 00:03:40,736 乾燥時に収穫活動を 減らすコロニーもあります 90 00:03:40,736 --> 00:03:42,241 つまり コロニーによって 91 00:03:42,241 --> 00:03:43,595 トレードオフの管理 つまり 92 00:03:43,595 --> 00:03:46,763 どれだけ 水分を消費して種を探し 93 00:03:46,763 --> 00:03:50,083 見返りに種から水分を得るかの 管理に差があるのです 94 00:03:50,083 --> 00:03:51,802 私たちは 収穫活動を減らす― 95 00:03:51,802 --> 00:03:53,942 コロニーが存在する訳を 96 00:03:53,942 --> 00:03:56,267 アリをニューロン(神経細胞)に見立てて 97 00:03:56,267 --> 00:03:58,605 神経科学のモデルから 理解しようとしています 98 00:03:58,605 --> 00:04:01,279 神経細胞が 外部からの刺激を加算して 99 00:04:01,279 --> 00:04:03,285 発火するかを決めるように 100 00:04:03,285 --> 00:04:06,170 アリも 他のアリとの やりとりの量を加算して 101 00:04:06,170 --> 00:04:08,193 収穫を行うか 決めています 102 00:04:08,193 --> 00:04:09,830 ですので コロニーによる 103 00:04:09,830 --> 00:04:11,822 微妙な違い― 104 00:04:11,822 --> 00:04:15,136 それぞれのアリが 収穫に向かうのに必要な― 105 00:04:15,136 --> 00:04:17,062 やりとりの量に差があって 106 00:04:17,062 --> 00:04:20,829 それが コロニーの収穫活動の減少に つながるのかを模索しています 107 00:04:20,829 --> 00:04:23,968 これは 脳に対しても 同様な疑問を投げかけます 108 00:04:23,968 --> 00:04:25,380 よく 脳について話をしますが 109 00:04:25,380 --> 00:04:28,270 もちろん それぞれの脳も微妙に違い 110 00:04:28,270 --> 00:04:29,649 それぞれの性質や 111 00:04:29,649 --> 00:04:30,968 それぞれの状況によって 112 00:04:30,968 --> 00:04:34,190 ニューロンの電気的特性等に 違いが生じ 113 00:04:34,190 --> 00:04:38,060 発火に より多量の刺激が 必要になり 114 00:04:38,060 --> 00:04:41,786 その差が脳の機能の 違いに繋がるかもしれません 115 00:04:41,786 --> 00:04:44,120 進化の過程を知る為には 116 00:04:44,120 --> 00:04:46,799 繁殖に成功しているかどうか 知る必要があります 117 00:04:46,799 --> 00:04:49,124 これは私が28年間 118 00:04:49,124 --> 00:04:51,677 アリ数の追跡調査を行ってきた地域の 119 00:04:51,677 --> 00:04:54,970 収穫アリのコロニーの地図です 120 00:04:54,970 --> 00:04:57,232 この年数は コロニーの寿命とほぼ同じです 121 00:04:57,232 --> 00:04:59,331 各シンボルは コロニー 122 00:04:59,331 --> 00:05:02,597 大きさは 子孫の数を表しています 123 00:05:02,597 --> 00:05:04,510 遺伝子の情報を利用して 124 00:05:04,510 --> 00:05:07,221 親と子孫をマッチさせ 125 00:05:07,221 --> 00:05:10,518 どのコロニーが 2世代目女王アリによって― 126 00:05:10,518 --> 00:05:12,443 設けられたのか 更には 127 00:05:12,443 --> 00:05:14,511 どの親コロニーの 出身なのか解明しました 128 00:05:14,511 --> 00:05:16,513 そして長年の調査の末 驚きの事実が判明しました 129 00:05:16,513 --> 00:05:19,641 例えば この154番のコロニーは 130 00:05:19,641 --> 00:05:21,817 私が 長年調査しているのですが 131 00:05:21,817 --> 00:05:23,636 第一世代の 親コロニーです 132 00:05:23,636 --> 00:05:25,376 これが 娘のコロニーで 133 00:05:25,376 --> 00:05:28,060 これが 孫のコロニーです 134 00:05:28,060 --> 00:05:30,452 そして これらは ひ孫世代のコロニーになります 135 00:05:30,452 --> 00:05:32,477 この調査によって 解った事は 136 00:05:32,477 --> 00:05:35,760 子孫と親コロニーは 137 00:05:35,760 --> 00:05:37,977 どのくらい暑ければ収穫に出ないかの 138 00:05:37,977 --> 00:05:39,755 判断が似ています 139 00:05:39,755 --> 00:05:41,219 この子孫のコロニーは 親コロニーとは 140 00:05:41,219 --> 00:05:44,125 決して出会うことの無いほど 離れているので 141 00:05:44,125 --> 00:05:46,414 子孫コロニーのアリは 親コロニーから 142 00:05:46,414 --> 00:05:48,658 この知識を教わったはずはありません 143 00:05:48,658 --> 00:05:50,039 ですから 次のステップは 144 00:05:50,039 --> 00:05:55,315 この相似を生み出す 遺伝子の違いを探す事です 145 00:05:55,315 --> 00:05:59,440 そこから どのアリが 繁栄しているかを 探ることもできます 146 00:05:59,440 --> 00:06:00,900 これまでの研究の中で 147 00:06:00,900 --> 00:06:02,365 特にこの10年間は 148 00:06:02,365 --> 00:06:05,673 南西部アメリカでは 149 00:06:05,673 --> 00:06:07,800 厳しい干ばつに襲われていますが 150 00:06:07,800 --> 00:06:10,853 水を節約するために 151 00:06:10,853 --> 00:06:15,282 猛暑の日は 巣の中に留まり 152 00:06:15,282 --> 00:06:17,914 最大限の収穫を犠牲にするコロニーが 153 00:06:17,914 --> 00:06:20,859 より’多くの子孫を残す事が解りました 154 00:06:20,859 --> 00:06:23,128 それまで 154番のコロニーは 155 00:06:23,128 --> 00:06:25,798 「負け組」だと考えていました 156 00:06:25,798 --> 00:06:27,666 特に乾燥した日には収穫をほとんどせず 157 00:06:27,666 --> 00:06:29,257 その間 他のコロニーは収穫に出て 158 00:06:29,257 --> 00:06:31,374 沢山の餌を手に入れていたからです 159 00:06:31,374 --> 00:06:34,394 しかし 154番コロニーは 沢山の子孫を残しました 160 00:06:34,394 --> 00:06:35,726 彼女は偉大な女王です 161 00:06:35,726 --> 00:06:38,778 この場所で稀な 3世代のコロニーを築き上げました 162 00:06:38,778 --> 00:06:41,563 私の知る限り 初めてではないでしょうか 163 00:06:41,563 --> 00:06:43,202 自然な動物群の集団行動が 164 00:06:43,202 --> 00:06:46,203 進化する過程を追跡調査して 165 00:06:46,203 --> 00:06:48,320 どの行動によって 166 00:06:48,320 --> 00:06:52,977 いちばん繁栄するのかを 明らかにしました 167 00:06:52,977 --> 00:06:55,398 インターネットは データの流れの制御に 168 00:06:55,398 --> 00:06:58,251 アルゴリズムを使用していますが 169 00:06:58,251 --> 00:07:00,478 この仕組みは 170 00:07:00,478 --> 00:07:02,854 収穫アリが 餌集めに送り出す個体数を 171 00:07:02,854 --> 00:07:04,395 制御する仕組みによく似ています 172 00:07:04,395 --> 00:07:07,761 この類似を なんと呼んでいるか ご存知ですか? 173 00:07:07,761 --> 00:07:09,279 「anternet (アンターネット)」です 174 00:07:09,279 --> 00:07:11,000 (拍手) 175 00:07:11,000 --> 00:07:14,454 データの伝送路容量が 176 00:07:14,454 --> 00:07:17,315 十分に確保されているという 信号を受けるまで 177 00:07:17,315 --> 00:07:20,044 発信元コンピュータはデータを 送出しません 178 00:07:20,044 --> 00:07:21,485 インターネット初期は 179 00:07:21,485 --> 00:07:23,759 運用コストは非常に高く 180 00:07:23,759 --> 00:07:26,986 データを紛失しない事が 極めて重要だったので 181 00:07:26,986 --> 00:07:29,143 システムは信号のやりとりによって 182 00:07:29,143 --> 00:07:32,205 データ送信を開始するように 設計されました 183 00:07:32,205 --> 00:07:34,590 アリが使用するアルゴリズムと 184 00:07:34,590 --> 00:07:38,486 近年発明されたシステムの酷似は 興味深いものがあります 185 00:07:38,486 --> 00:07:41,439 しかし それは私達が知っている 一握りのアリのアルゴリズムの 186 00:07:41,439 --> 00:07:42,858 ほんの1つに過ぎません 187 00:07:42,858 --> 00:07:46,051 一方 アリ達は1億3千万年の過程で 素晴らしいものを 188 00:07:46,051 --> 00:07:48,077 数多く進化させてきました 189 00:07:48,077 --> 00:07:49,583 ですから 他の12,000種の 190 00:07:49,583 --> 00:07:52,140 アルゴリズムの中には 191 00:07:52,140 --> 00:07:54,837 私達が考え付かなかった 192 00:07:54,837 --> 00:07:55,861 データネットワークに関しての 193 00:07:55,861 --> 00:07:58,558 役立つヒントが あるに違いありません 194 00:07:58,558 --> 00:08:01,643 では 運用コストが 低い場合はどうでしょう? 195 00:08:01,643 --> 00:08:03,430 熱帯地方では 運用コストは下がります 196 00:08:03,430 --> 00:08:05,526 なぜなら 多湿の為に 巣外での作業が 197 00:08:05,526 --> 00:08:08,350 アリの負担にならないからです 198 00:08:08,350 --> 00:08:10,003 しかし 熱帯地方では アリの数が多く 199 00:08:10,003 --> 00:08:11,821 種類も多く存在しますので 200 00:08:11,821 --> 00:08:14,419 沢山の競争があります 201 00:08:14,419 --> 00:08:16,371 ある種が使っている資源は 202 00:08:16,371 --> 00:08:19,543 別の種のアリも同時に 203 00:08:19,543 --> 00:08:21,922 狙っているかもしれません 204 00:08:21,922 --> 00:08:24,530 ですので この環境では 「やりとり」は 205 00:08:24,530 --> 00:08:26,475 逆の目的で使われます 206 00:08:26,475 --> 00:08:27,870 これは常に「オン」のシステムで 207 00:08:27,870 --> 00:08:29,424 不都合がある場合のみ ストップします 208 00:08:29,424 --> 00:08:31,591 私が観察したアリの1種は 209 00:08:31,591 --> 00:08:33,750 木の幹や枝に収穫アリが経路を形成し 210 00:08:33,750 --> 00:08:36,731 巣と餌場との往復を 211 00:08:36,731 --> 00:08:38,059 何回も繰り返します 212 00:08:38,059 --> 00:08:39,501 不都合が発生しない限り -- 213 00:08:39,501 --> 00:08:41,111 例えば 他の種のアリと 214 00:08:41,111 --> 00:08:43,850 出くわしたりしない限り やめません 215 00:08:43,850 --> 00:08:46,787 アリのセキュリティの1例を お見せしましょう 216 00:08:46,787 --> 00:08:48,645 中央部で 1匹のアリが 217 00:08:48,645 --> 00:08:51,108 自らの頭で巣の入口を塞いでいますが 218 00:08:51,108 --> 00:08:54,101 これは他の種に出くわした結果です 219 00:08:54,101 --> 00:08:55,760 相手は 腹部を上に曲げて 220 00:08:55,760 --> 00:08:58,511 動き回っているアリです 221 00:08:58,511 --> 00:09:00,557 脅威が去るとすぐに 222 00:09:00,557 --> 00:09:03,312 入口は 開けられます 223 00:09:03,312 --> 00:09:05,102 コンピュータのセキュリティでも 224 00:09:05,102 --> 00:09:06,191 状況によって 225 00:09:06,191 --> 00:09:08,397 運用コストが安い場合には 226 00:09:08,397 --> 00:09:11,772 直面する脅威に対して 一時的に対応して 227 00:09:11,772 --> 00:09:13,965 接続をブロックし 228 00:09:13,965 --> 00:09:15,991 再度 接続を開始する方が 229 00:09:15,991 --> 00:09:17,260 恒久的なファイアウォールや 230 00:09:17,260 --> 00:09:21,240 フォートレスを築くよりも 効率的かもしれません 231 00:09:21,240 --> 00:09:23,180 さて もう一つの環境問題 232 00:09:23,180 --> 00:09:24,875 全てのシステムにおいて 必要なのが 233 00:09:24,875 --> 00:09:30,327 「資源」です 「資源」を見つけ 集める事です 234 00:09:30,327 --> 00:09:32,000 アリは この問題の解決に 235 00:09:32,000 --> 00:09:33,258 集団探索を行っています 236 00:09:33,258 --> 00:09:34,834 この行為は 現在ロボット工学で 237 00:09:34,834 --> 00:09:36,318 注目されている問題です 238 00:09:36,318 --> 00:09:38,050 なぜなら 例えばですが 239 00:09:38,050 --> 00:09:39,664 他の星の探査や 240 00:09:39,664 --> 00:09:43,159 火災のビルの捜索などに 241 00:09:43,159 --> 00:09:44,576 洗練された高価な 242 00:09:44,576 --> 00:09:47,143 ロボットを1台使用するより 243 00:09:47,143 --> 00:09:49,743 最小限の情報を交換する 244 00:09:49,743 --> 00:09:54,120 安価なロボットを複数使った方が 245 00:09:54,120 --> 00:09:56,665 効率的だと考えられていますが 246 00:09:56,665 --> 00:09:59,464 これは まさにアリのやり方と同じなのです 247 00:09:59,464 --> 00:10:01,229 侵略的な アルゼンチンアリは 248 00:10:01,229 --> 00:10:03,559 拡張可能なサーチ網を形成します 249 00:10:03,559 --> 00:10:05,832 このアリは 集団探索の重大な課題に 250 00:10:05,832 --> 00:10:07,163 上手く対応しています 251 00:10:07,163 --> 00:10:09,729 徹底的に探索するか 252 00:10:09,729 --> 00:10:11,065 広い面積を探索するかの 253 00:10:11,065 --> 00:10:13,062 トレードオフの問題に対して 254 00:10:13,062 --> 00:10:13,957 このアリのやり方は 255 00:10:13,957 --> 00:10:16,344 狭い面積に沢山のアリがいる場合 256 00:10:16,344 --> 00:10:18,557 それぞれが 自分の周りを徹底的に探索します 257 00:10:18,557 --> 00:10:20,181 なぜならその周辺は他のアリが 258 00:10:20,181 --> 00:10:21,538 すでに探索を行っているからです 259 00:10:21,538 --> 00:10:23,185 しかし より大きな範囲で 260 00:10:23,185 --> 00:10:25,240 数匹のアリしかいない場合は 261 00:10:25,240 --> 00:10:27,654 遠くまで出向いて 262 00:10:27,654 --> 00:10:29,457 捜索範囲を広げる必要があります 263 00:10:29,457 --> 00:10:32,411 アリ同士はやりとりから 密度を評価していると思います 264 00:10:32,411 --> 00:10:33,640 非常に密な状況では 265 00:10:33,640 --> 00:10:34,742 仲間に頻繁に出会うので 266 00:10:34,742 --> 00:10:37,207 より 徹底的な捜索を行うのです 267 00:10:37,207 --> 00:10:40,607 それぞれの種のアリに 様々なアルゴリズムがあるはずです 268 00:10:40,607 --> 00:10:43,129 なぜなら どのアリも色々な環境に 269 00:10:43,129 --> 00:10:44,800 対応しながら進化してきたからです 270 00:10:44,800 --> 00:10:47,359 これを学ぶことは非常に役立つと考え 271 00:10:47,359 --> 00:10:49,001 アリに 極限の環境で 272 00:10:49,001 --> 00:10:51,451 集団捜索の問題を 273 00:10:51,451 --> 00:10:52,819 解いてもらうことにしました 274 00:10:52,819 --> 00:10:54,377 国際宇宙ステーション内の 275 00:10:54,377 --> 00:10:56,353 微小重力環境での実験です 276 00:10:56,353 --> 00:10:57,898 最初に写真を見た時は 277 00:10:57,898 --> 00:11:00,755 「うわっ アリの箱が垂直になっている!」 と思いましたが 278 00:11:00,755 --> 00:11:03,373 その後 「そうか 問題無いんだ」と 気付きました 279 00:11:03,373 --> 00:11:06,010 実験の目的は アリ達は― 280 00:11:06,010 --> 00:11:07,980 壁面や床面に あたる場所へ 281 00:11:07,980 --> 00:11:11,037 しがみつくのに必死で 282 00:11:11,037 --> 00:11:14,046 やりとりをする機会が減り 283 00:11:14,046 --> 00:11:15,290 アリの密度と 284 00:11:15,290 --> 00:11:17,410 アリ同士が接触する頻度の関係が 285 00:11:17,410 --> 00:11:19,135 めちゃくちゃになるか というものです 286 00:11:19,135 --> 00:11:20,530 まだ データは分析中ですので 287 00:11:20,530 --> 00:11:22,494 結果は解りませんが 288 00:11:22,494 --> 00:11:24,188 地球上でも 異なった環境で 289 00:11:24,188 --> 00:11:26,647 様々な種の問題の解決方法を 290 00:11:26,647 --> 00:11:29,211 知ることは 興味深い事です 291 00:11:29,211 --> 00:11:30,477 ですので 私達は 292 00:11:30,477 --> 00:11:32,637 世界中の子供たちに 色々な種のアリで 293 00:11:32,637 --> 00:11:35,173 この実験にトライしてもらう計画を 立てています 294 00:11:35,173 --> 00:11:36,940 非常に簡単で― 295 00:11:36,940 --> 00:11:39,030 安価な材料で実験ができるので 296 00:11:39,030 --> 00:11:41,863 世界中のアリの集団捜索に関する 297 00:11:41,863 --> 00:11:45,210 アルゴリズム・マップも作成出来るかもしれません 298 00:11:45,210 --> 00:11:47,693 侵略的な種で建物の中に 299 00:11:47,693 --> 00:11:49,842 侵入するタイプのものには 300 00:11:49,842 --> 00:11:51,584 素晴らしいアルゴリズムがあるでしょう 301 00:11:51,584 --> 00:11:53,432 台所にまで入って来て 302 00:11:53,432 --> 00:11:57,339 食糧や水をうまく探し出すのですから 303 00:11:57,339 --> 00:12:00,604 アリがよく集まってくるのが 304 00:12:00,604 --> 00:12:01,919 ピクニックです 305 00:12:01,919 --> 00:12:04,064 これは まとまった資源です 306 00:12:04,064 --> 00:12:05,063 果物を見つけたら 307 00:12:05,063 --> 00:12:07,578 そのすぐ側にも 果物があるはずですから 308 00:12:07,578 --> 00:12:11,010 まとまった食糧に 特化している種のアリは 309 00:12:11,010 --> 00:12:12,952 「やりとり」を 仲間の召集に使います 310 00:12:12,952 --> 00:12:14,229 ですから 他のアリや 311 00:12:14,229 --> 00:12:15,854 地面に残された匂いに 312 00:12:15,854 --> 00:12:17,590 出会った場合 313 00:12:17,590 --> 00:12:19,423 アリは方向転換をして 314 00:12:19,423 --> 00:12:20,996 やりとりの方に向かいます 315 00:12:20,996 --> 00:12:22,973 このようにして ピクニックの食べ物に 316 00:12:22,973 --> 00:12:24,386 アリの行列がやってくるわけです 317 00:12:24,386 --> 00:12:26,081 この状況から癌について 318 00:12:26,081 --> 00:12:29,822 何か学べるかもしれません 319 00:12:29,822 --> 00:12:31,803 もちろん 320 00:12:31,803 --> 00:12:33,413 癌予防のためには 321 00:12:33,413 --> 00:12:35,990 私たちの体内で 癌の発生を促進する 322 00:12:35,990 --> 00:12:37,934 有害物質の拡散や売買の禁止も 323 00:12:37,934 --> 00:12:40,714 大切な事ですが 324 00:12:40,714 --> 00:12:43,060 これは アリから学ぶ事はできません 325 00:12:43,060 --> 00:12:46,418 アリは自らコロニーを 有害物質で汚染しませんから 326 00:12:46,418 --> 00:12:47,750 でも癌の治療法については 327 00:12:47,750 --> 00:12:49,513 学ぶ事があるかもしれません 328 00:12:49,513 --> 00:12:51,738 癌にも 沢山の種類があります 329 00:12:51,738 --> 00:12:54,716 それぞれの癌は体内の 決まった場所で発生し 330 00:12:54,716 --> 00:12:57,682 その中のいくつかは 広がって 331 00:12:57,682 --> 00:13:00,512 癌細胞が必要とする 332 00:13:00,512 --> 00:13:03,392 資源を得られる細胞へ転移します 333 00:13:03,392 --> 00:13:05,200 ですので 早期の 334 00:13:05,200 --> 00:13:07,150 転移性がん細胞が 335 00:13:07,150 --> 00:13:08,773 必要とする資源を 336 00:13:08,773 --> 00:13:11,090 探し回っているとき 337 00:13:11,090 --> 00:13:13,073 まとまった資源をみつけたら 338 00:13:13,073 --> 00:13:16,086 仲間を招集する やりとりをするかもしれません 339 00:13:16,086 --> 00:13:19,179 もし 癌細胞が仲間を集める仕組みを 解明出来れば 340 00:13:19,179 --> 00:13:21,526 罠を仕掛け― 341 00:13:21,526 --> 00:13:25,575 癌細胞が定着する前に 捕えられるかもしれません 342 00:13:25,575 --> 00:13:28,810 アリは 様々な環境の中 様々な方法で 343 00:13:28,810 --> 00:13:31,412 「やりとり」を利用しています 344 00:13:31,412 --> 00:13:33,233 私達はこれらの やりとりから 345 00:13:33,233 --> 00:13:35,010 他の「集中制御機能の無いシステム」― 346 00:13:35,010 --> 00:13:37,347 についても学ぶ事が出来ます 347 00:13:37,347 --> 00:13:39,326 単純なやりとりを利用するのみで 348 00:13:39,326 --> 00:13:41,121 アリのコロニーは驚くべき偉業を 349 00:13:41,121 --> 00:13:44,754 1億3千万年以上成し遂げてきました 350 00:13:44,754 --> 00:13:46,894 私達はアリからまだまだ学ぶ事があるのです 351 00:13:46,894 --> 00:13:49,632 ありがとう 352 00:13:49,632 --> 00:13:52,365 (拍手)