恋に落ちる仕組みとは どんなものでしょうか? それはあなたの脳に起こる 魔法のようなものでしょうか あるいは恋に落ちる原因となる 生物学的な何かが 脳で起きているのでしょうか? 私は疑問に思っていました これが 恋について 私たちが知っていることです いくつかの神経伝達物質が増加し 他のいくつかが低下します ストレスホルモンである コルチゾールの濃度が高くなると人は緊張し オキシトシン濃度が高くなると 人は愛情を感じます 女性でテストステロンが増加すると より攻撃的になる一方で 男性で低下すると より消極的になります また女性も男性もセロトニン濃度が低下すると やや強迫的になります 私たちは何が起きているのかは分かっていても どのようにそれが起こるのかは分かっていません 特定の化学的プロセスが起こっています ある転換点を超えると増加したり または酵素反応が起こると それに続いて低下するといったものです これらのプロセスのどれかが その疑問に答えてくれそうです これについてじっくり考えていたとき 私はちょうど休暇中で 実家に帰っていたんです 生化学の博士号を持つ いとこがいるので その機会を利用して 彼の知識を借りることにしました 私は恋について 知っていることを話しました 私が「特定の神経伝達物質の濃度が増え 他のものは減るので 生化学的なものかもしれない」と言い 彼を見ると いかにも「妥当だ」 という表情をしていたので 続けて「いくつかの化学反応には 転換点があるかもしれない」と言うと また彼は「妥当だ」と言ったか そういう表情を見せました 私が「いくつかは酵素反応で その後に濃度低下するかもしれない」と言うと また彼は もっともだ というような表情を見せました 彼は大口を叩く人ではないので これは上手くいっていると思いました (笑) でも私が次の質問を考えていると 当時95歳の祖母が はっきりとこう言ったんです 「あなたたち若者は 恋について何も分かっていないわ」 私はびっくりして「分かっているわ だからこうやって話しているの」と言うと 彼女は「問題はすぐベッドに入ろうとする あなたのような今の女性よ」と言いました (笑) 「あなたが恋に落ちても 男性は同じように恋に落ちないのよ」 私はそう言う彼女を見て こう質問しました 「それならもう少し話しましょう 男性はどうやって恋に落ちるの?」 すると彼女は「私の若い頃は 男性に恋に落ちて欲しかったら すぐに彼と寝ようとしてはダメだと 女性は知っていたの」と言いました 私は前にもそんなことを聞きました― 3回目のデートでベッドインするルールのように 90日ルールがあります スティーブ・ハーベイの著書ー 『世界中の女性が幸せをつかんだ 魔法の恋愛書』にです しかし これらはただの経験則で 科学的な証拠はないと いつも思っていました 私がいとこを見ると 彼はもう妥当だという表情を していませんでした 祖母との話を続けることにしました 問題はデートのことだったからです 「ベッドインするまで どのくらい待つ必要があるの?」と聞くと 彼女は「彼が恋に落ちるまでよ」 と言いました 「分かったわ でもどうやれば 彼が恋に落ちていると分かるの?」 「簡単よ 彼が真剣に向き合っていれば 恋をしていると分かるわ」 私が「どう思う?」と言わんばかりに いとこを見ると 彼は顔を伏せて ただ首を横に振りました (笑) 彼は「よし おばあちゃん 帰る時間だよ」と言いました 彼はこの話を 全く信じなかったのでしょう こうして私の研究は またの日まで待たねばなりませんでした 私は自宅に戻り 研究図書館に行きました 問題なのは いかに人間が恋に落ちるかという 研究があまりないことです その原因は主に 私たちが研究する方法にあります 男性が「愛してる」と 誰かに言うとします 恋に落ちた彼に対し 研究者が近づきこう言います 「おめでとうございます!これを あなたの脳に注射して効果を見ていいですか?」 はいと言う協力者は あまりいないでしょう そのため私たちは次善の策に 頼らなければいけません―動物研究です でも どんな動物が 恋に落ちるのでしょうか? 人間は恋に落ちると 1人の人間を独占するので 独占的に交配する 他の生物を探し始めました そして最終的にこの動物が選ばれました 一雄一雌のプレーリーハタネズミです プレーリーハタネズミが 興味を持った相手を見つけると 彼らは基本的に ともに一生を添い遂げます そこで研究者は 何が起こっているのか知るために 神経伝達物質を調べました 彼らが発見したのは 最初に増加するものの1つが ドーパミンで そのドーパミンを遮断すると 動物は愛情を示さなくなりました 研究者は「ドーパミンか」と思いましたが それには問題がありました 人間の恋愛のカギが ドーパミンである訳がありません ドーパミンは多くの状況下で 増加するからです ギャンブルでも チョコレートでも キャンディークラッシュで遊んでいてもです (笑) ドーパミンであるはずがないのです そこで研究者は 「人間の絆に関係する― 別の神経伝達物質は オキシトシンだ」と言いました オキシトシンは母親と子供の間で増加し それによって絆が深まります 彼らは「今度はそれを調べよう」と 研究を再開しました メスがオスに興味を持つと メスのオキシトシンは51%増加し それを遮断すると メスは愛情を示さなくなりました そこで研究者は「ではドーパミンと オキシトシンに違いない」と考えましたが そこには問題がありました 男性にとっては オキシトシンであるはずがないのです テストステロンがオキシトシンの 効果を遮断してしまうからです そこで研究者は 「何か別のもののはずだ」と考え オキシトシンと似た化学式を持つ― バソプレシンに着目し また研究を再開しました ハタネズミ同士が出会うと バソプレシンが分泌され 拮抗薬を注射し バソプレシンを遮断すると オスは愛情を示さなくなります 研究者は「それでは 男性では ドーパミンとバソプレシンのはずだ それとテストステロンの増加も おそらく関係するのだろう」 「完璧な答えだ」と言いました これは私たち人間にも 適用可能でしょうか? それを確かめるために 私はフロリダ州立大学の 主任研究員の1人に「ハタネズミの研究は 人間にも適用できますか?」 と尋ねました ちょっと気恥ずかしくなるような彼の返信には 「もちろんだ ドーン!」と 感嘆符つきで書かれていました もっと詳しく聞くために 返信したいとは思えませんでした 気恥ずかしかったので もう返信はいいやと思いました 幸運なことに ミシガン大学出身の ティファニー・ラヴさんが ハタネズミの研究と 人間の恋愛は類似すると 公的に発言しました 素晴らしいです これは何を意味するでしょうか? これまでみた研究から分かった メカニズムによると 女性では ドーパミンとオキシトシンが 増加するということです ドーパミンはデートをしているとき 勝とうとしているとき増加します 興奮しているときです 愛という大賞を勝ち取ろうとします 誰かとデートしていて幸せである限り ドーパミンは増加します オキシトシンは抱擁ホルモン または信頼ホルモンとも呼ばれます キスをしたり 抱きしめたりして 楽しい時間を過ごすとオキシトシンは増加します また 女性が男性とデートをし 彼を信頼するようになると オキシトシンは増加します しかし 難点が1つあります オキシトシンはあのようにゆっくり増えますが オーガズムに達すると急騰してしまうのです 言い換えれば 私の祖母は いいところに気付いていたのかもしれません 彼女の発言を覚えていますか? 「今の女性は すぐベッドに入って 恋に落ちる」 まるで 祖母の言ったことが 科学的事実となって 広がって行くようです その一方で 男性は どのように恋に落ちるのでしょうか? それを知るには ドーパミンです 男性が楽しい時間を過ごすと ドーパミンが増加します ではバソプレシンはどうでしょう? バソプレシンは 男性が性的に興奮すると増加します もし女性とデートをしていて 男性が性的に興味を持っていたら バソプレシンは増加します しかしこれにも難点があり オキシトシンとは異なり 男性が 性交渉をもつとバソプレシンは低下します これがどう重要なのでしょうか 私がさらに詳しく調べてみると フロリダ州立大学の研究では 重要なのは 神経伝達物質だけではなく 受容体も必要だと発表しています 人間はどのように受容体を作るのでしょうか? 受容体は 神経伝達物質の存在下で作られます 神経伝達物質が 体に受容体を作るように命令します それには 神経伝達物質の濃度が 十分に高い必要があります すると 受容体は 神経伝達物質で満たされます つまり一定の時間が かかるということです でも私の祖母は他にも こんなことを言っていましたよね? 「彼が真剣に向き合っていれば 恋をしていると分かるわ」 真剣な交際は 神経伝達物質と何か関係があるでしょうか? それを明らかにするため 私は米空軍の研究を調べました 空軍は2000人以上の空兵を 10年以上にわたって追跡調査し その間 様々な検査を受けさせました 1つはテストステロンに関する検査で 独身で入隊した男性の テストステロンは比較的高く 彼が結婚すると低くなることが分かりました テストステロンについて 私が言ったことを覚えていますか? オキシトシンの効果を遮断します オキシトシンは 絆のホルモンなので テストステロンの低下はオキシトシンに 何か関係がありそうですが さらに明確にする必要があります それは結婚によるものなのか? 真剣な交際によるものなのか? ハーバード大学の研究で 既婚男性と独身男性 そして真剣交際をしている男性の テストステロンが調べられ その研究結果は 空軍の研究と同じく 独身男性のテストステロンは高く 既婚男性のテストステロンは それより低いというものでしたが 注意すべきポイントは 既婚男性と 真剣に交際している男性の テストステロン値に 違いがなかったということです これは男性が結婚した時点で テストステロンが低下したのではなく それ以前に真剣に向き合った時点で 低下したことを意味します つまり 私の祖母はある意味 正しかったということです 女性は 男性より大きなリスクがありながらも 性交渉をするときに恋に落ちる傾向があり 男性は真剣に向き合うとき 恋に落ちる傾向があります そして私がうすうす感じていたことが 確信に変わりました 恋に落ちやすいのが 女性は性交渉のときで 男性は真剣に向き合うときなのとは別に 何かもっと重要なことで それは 私の祖母は 素晴らしく聡明だということです (笑) (拍手)