WEBVTT 00:00:06.739 --> 00:00:08.217 「おはよう ボブ」 00:00:08.217 --> 00:00:11.237 「おはよう ケリー きれいなチューリップだね」 00:00:11.237 --> 00:00:14.966 イヌが経験する世界を 想像してみたことはありますか? 00:00:14.966 --> 00:00:16.581 こんな風に見えます 00:00:16.581 --> 00:00:18.696 さして 珍しいものではありません 00:00:18.696 --> 00:00:22.266 しかし イヌが鼻を使えば 話はまったく違ってきます 00:00:22.266 --> 00:00:25.381 それは すばらしく発達した 鼻から始まります 00:00:25.381 --> 00:00:28.400 イヌが新鮮な空気の気配を捕えると 00:00:28.400 --> 00:00:34.725 濡れたスポンジ状の外側が 風が運ぶ匂いを捕えます 00:00:34.725 --> 00:00:37.465 それぞれの鼻孔で嗅ぎ取る能力があり 00:00:37.465 --> 00:00:39.099 いわば立体的に匂いを嗅ぐので 00:00:39.099 --> 00:00:41.797 匂いの元の方向が分かります 00:00:41.797 --> 00:00:44.265 それで匂いをちょっと嗅ぐだけで 00:00:44.265 --> 00:00:48.291 どんな物があるのかだけではなく 00:00:48.291 --> 00:00:50.695 その在りかもわかるのです 00:00:50.695 --> 00:00:52.303 鼻の中に空気が入ると 00:00:52.303 --> 00:00:56.101 小さな組織のひだで二手に分かれますが 00:00:56.101 --> 00:00:59.151 1つは呼吸用 もう1つは匂い専用なのです 00:00:59.151 --> 00:01:01.140 この2番目の空気の流れが入ると 00:01:01.140 --> 00:01:04.423 嗅覚受容細胞を満たしますが 00:01:04.423 --> 00:01:08.534 ここには数億個の細胞があります なお ヒトの細胞は5百万個です 00:01:08.534 --> 00:01:12.391 1つの経路で息を吸い込んで 吐き出すヒトとは違い 00:01:12.391 --> 00:01:15.313 イヌは鼻の脇にある開口部から 吐き出すため 00:01:15.313 --> 00:01:19.491 この空気の流れが 新たな匂いの分子を引き込んで 00:01:19.491 --> 00:01:24.148 何度も嗅ぐことで 匂いを濃縮するのです 00:01:24.148 --> 00:01:27.716 見事な鼻の構造だけでは不十分です 00:01:27.716 --> 00:01:32.562 集めた情報を処理する必要があります 00:01:32.562 --> 00:01:36.996 そしてイヌの嗅覚系は相対的に ヒトの何倍もの脳の領域を占めていて 00:01:36.996 --> 00:01:42.655 匂いの処理をしている事がわかりました 00:01:42.655 --> 00:01:44.487 そのおかげでイヌは匂いを見分けて 00:01:44.487 --> 00:01:48.155 多様な匂いを覚えることができるのです 00:01:48.155 --> 00:01:53.416 ヒトに比べ 1億分の1以下の量を捕えられます 00:01:53.416 --> 00:01:56.082 ヒトが狭い部屋で 香水の匂いを感じ取れるとしたら 00:01:56.082 --> 00:01:59.780 イヌの場合はスタジアムでも 同じことが可能であり 00:01:59.780 --> 00:02:02.542 その原材料さえも嗅ぎ分けられるのです 00:02:02.542 --> 00:02:05.768 つまり 通りに出れば 行き交う人や車 00:02:05.768 --> 00:02:08.060 ご近所のごみの中身 00:02:08.060 --> 00:02:09.568 木の種類 00:02:09.568 --> 00:02:11.556 鳥やそれについている昆虫 00:02:11.556 --> 00:02:15.830 それぞれに特有の匂いがあり それが何であるか どこにあるのか 00:02:15.830 --> 00:02:18.977 どこへ向かっていくのかも分かります 00:02:18.977 --> 00:02:21.161 この優れた能力に加えて 00:02:21.161 --> 00:02:26.042 イヌは目には見えないものさえ 嗅ぎ取ることができるのです 00:02:26.042 --> 00:02:27.967 鼻鋤骨器官という 口蓋の上にある 00:02:27.967 --> 00:02:31.506 独立した嗅覚システム全体で 00:02:31.506 --> 00:02:36.033 ヒトなどの生物が自然に放つ ホルモンを検出できるのです 00:02:36.033 --> 00:02:38.310 おかげでイヌはつがいの相手や 00:02:38.310 --> 00:02:41.550 友好的な動物と 自分と敵対する生物を見分けられます 00:02:41.550 --> 00:02:44.250 私達のさまざまな感情も理解でき 00:02:44.250 --> 00:02:48.396 妊婦や病気の人さえ 見分けられるのです 00:02:48.396 --> 00:02:51.117 嗅覚系は他の感覚よりも 原始的なので 00:02:51.117 --> 00:02:54.400 視床を迂回して 感情や本能といった 00:02:54.400 --> 00:02:56.993 脳の構造に直接接続されるため 00:02:56.993 --> 00:03:01.625 イヌの感覚はヒトよりも 直接的かつ本能的と言えるでしょう 00:03:01.625 --> 00:03:04.165 イヌの嗅覚が持つ最も素晴らしい点は 00:03:04.165 --> 00:03:06.343 時間を越えていけることです 00:03:06.343 --> 00:03:09.340 すれ違った人が残した匂いや 00:03:09.340 --> 00:03:11.977 今しがた駐車してあった車のぬくもりで 00:03:11.977 --> 00:03:16.887 今までどこにいたのか 何をしていたのかが分かります 00:03:16.887 --> 00:03:18.807 水栓や木々といった目印は 00:03:18.807 --> 00:03:21.884 匂いの掲示板となり 誰が通ったのか 00:03:21.884 --> 00:03:23.330 何を食べていたのか 00:03:23.330 --> 00:03:25.198 どう感じていたのかが分かります 00:03:25.198 --> 00:03:26.771 そよ風で未来もわかります 00:03:26.771 --> 00:03:31.386 姿が見える前に誰かが 来ることを教えてくれるのです 00:03:31.386 --> 00:03:33.841 私達は視覚や聴覚を利用しますが 00:03:33.841 --> 00:03:38.092 イヌはいつでも匂いを嗅ぐのです 00:03:38.092 --> 00:03:41.075 ヒトとイヌの共同作業の良い例は 00:03:41.075 --> 00:03:44.414 自分のストーリーを 共有してくれることです 00:03:44.414 --> 00:03:47.368 悲しんでいる人には慰めを与え 00:03:47.368 --> 00:03:49.131 威嚇されれば 敵意で応えます 00:03:49.131 --> 00:03:51.928 ストレスや怒りは ホルモンの雲として現れるので 00:03:51.928 --> 00:03:54.507 イヌはそれを嗅ぎとることができるのです 00:03:54.507 --> 00:03:55.792 しっかりと訓練をすれば 00:03:55.792 --> 00:03:58.196 爆弾やがんなどの 00:03:58.196 --> 00:04:00.925 目には見えない危機も 警告してくれます 00:04:00.925 --> 00:04:03.180 人類最良の友は 00:04:03.180 --> 00:04:06.528 私達と経験を分かち合うだけでなく 00:04:06.528 --> 00:04:11.762 素晴らしい鼻で 目には見えない世界を 教えてくれるわけです