0:00:06.804,0:00:10.722 イスラム文化は[br]幾何学文様であふれています 0:00:10.722,0:00:16.294 モスクにマドラサ(宗教学校)[br]宮殿や各家庭でも目にすることでしょう 0:00:16.294,0:00:22.141 この伝統は8世紀[br]イスラム史の初期に始まりました 0:00:22.141,0:00:26.710 職人が先のローマやペルシア文化の[br]モチーフを取り入れて 0:00:26.710,0:00:31.208 新たな視覚表現へと発展させた時代です 0:00:31.208,0:00:35.159 まさにイスラム文化の黄金時代でした 0:00:35.159,0:00:38.044 この時期は先史文明からの[br]数多くの偉業が残されていて 0:00:38.044,0:00:40.740 それを昇華させることで 0:00:40.740,0:00:46.522 科学や数学の基本的な[br]発展がもたらされました 0:00:46.522,0:00:50.860 それに加えて高度な[br]芸術的抽象化が進み 0:00:50.860,0:00:53.979 イスラム芸術の[br]複雑な幾何学と合わさって 0:00:53.979,0:00:57.740 カーペットやテキスタイルを飾る[br]花のモチーフから 0:00:57.740,0:01:01.887 永遠に続くかのようなパターンの[br]タイル装飾にいたるまで 0:01:01.887,0:01:06.340 無限の秩序という畏怖と沈思を[br]生み出しました 0:01:06.340,0:01:09.135 このように非常に複雑なデザインですが 0:01:09.135,0:01:12.380 実は円を描くためのコンパスと 0:01:12.380,0:01:14.953 その中に線を引く定規だけで[br]作成できます 0:01:14.953,0:01:20.936 こんなシンプルな道具で万華鏡のような[br]多様なパターンが生まれるのです 0:01:20.936,0:01:22.746 どうやって作成するのでしょうか? 0:01:22.746,0:01:25.370 まず 円を描くことから始めます 0:01:25.370,0:01:28.946 そして それを何等分するかを考えます 0:01:28.946,0:01:34.222 ほとんどのパターンでは 円を4等分か[br]5等分あるいは6等分します 0:01:34.222,0:01:37.964 等分されたところから[br]特徴あるパターンが生まれます 0:01:37.964,0:01:41.810 パターンが4回対称に基づくか 0:01:41.810,0:01:43.129 5回対称か 0:01:43.129,0:01:45.001 6回対称に基づくか見分ける[br]簡単な方法があります 0:01:45.001,0:01:48.215 ほとんどが花びらの形に[br]囲まれた星形になります 0:01:48.215,0:01:51.074 星形が持つ腕の数や 0:01:51.074,0:01:53.117 その周りの花びらの数を数えれば 0:01:53.117,0:01:56.626 どのカテゴリーなのかが分かります 0:01:56.626,0:02:00.315 6本の腕を持つ星[br]または6枚の花びらに囲まれていれば 0:02:00.315,0:02:03.468 6回対称カテゴリーです 0:02:03.468,0:02:08.531 8枚の花びらだったら[br]4回対称カテゴリーという具合です 0:02:08.531,0:02:11.228 このデザインには[br]他にも秘密の構成要素があります 0:02:11.228,0:02:13.418 グリッドです 0:02:13.418,0:02:16.044 目には見えなくとも[br]どのパターンにも欠かせないもので 0:02:16.044,0:02:21.190 このグリッドで作業前に[br]大きさを決め 0:02:21.190,0:02:22.569 パターンを正確に保つことで 0:02:22.569,0:02:26.700 すばらしい新たなパターンを[br]生み出すのです 0:02:26.700,0:02:30.813 これらの要素が上手く[br]組み合わさっていく例を見てみましょう 0:02:30.813,0:02:35.983 まず 正方形に収まる円を8等分します 0:02:35.983,0:02:39.161 そして 交差する線を1組引いて 0:02:39.161,0:02:41.895 別の2つの線と交差させます 0:02:41.895,0:02:44.528 この線は作図線と呼ばれ 0:02:44.528,0:02:46.902 この部分を1セット[br]選択する事で 0:02:46.902,0:02:50.711 基礎となる連続パターンを作成します 0:02:50.711,0:02:54.508 1組の作図線から[br]異なる形を選ぶことで 0:02:54.508,0:02:57.307 様々なデザインが可能です 0:02:57.307,0:02:59.457 ひとつのタイルを[br]何度も繰り返していく 0:02:59.457,0:03:04.428 平面充填という過程を経て 0:03:04.428,0:03:07.330 最終的な姿が現れます 0:03:07.330,0:03:09.856 別の作図線のセットを選択すれば 0:03:09.856,0:03:12.752 別のパターンが現れ 0:03:12.752,0:03:14.225 こんなパターンにもなります 0:03:14.225,0:03:17.243 いわば 可能性は無限なのです 0:03:17.243,0:03:21.037 6回対称パターンを作成する場合も[br]同じです 0:03:21.037,0:03:25.083 作図線を引いて[br]円を6等分し 0:03:25.083,0:03:29.931 平面充填を行うと[br]このような姿になります 0:03:29.931,0:03:33.458 こちらは別の6回対称パターンで[br]何世紀にもわたり 0:03:33.458,0:03:38.351 マラケシュ アグラ コンヤ[br]アルハンブラといった 0:03:38.351,0:03:41.239 イスラム世界で見ることができます 0:03:41.239,0:03:49.437 4回対称パターンは正方形格子に[br]6回対称パターンは六角形格子になります 0:03:49.437,0:03:53.282 しかし 5回対称パターンは[br]平面充填が難しいのです 0:03:53.282,0:03:57.487 五角形は綺麗に[br]敷き詰めることはできないため 0:03:57.487,0:04:00.421 五角形のパターンを[br]作成するだけではなく 0:04:00.421,0:04:04.084 他の図形を加えることで[br]繰り返していくのです 0:04:04.084,0:04:08.129 その結果 パターンは非常に[br]複雑でありながら 0:04:08.129,0:04:11.881 作成するのは比較的易しいのです 0:04:11.881,0:04:16.886 平面充填はシンプルな[br]幾何学模様だけではなく 0:04:16.886,0:04:19.680 マウリッツ・エッシャーの[br]作品のようなものも見られます 0:04:19.680,0:04:22.189 伝統的に幾何学模様を扱う[br]イスラムのデザインでは 0:04:22.189,0:04:25.782 魚や顔といったモチーフを[br]用いることはありませんが 0:04:25.782,0:04:31.912 複雑なパターンを生み出すのに[br]さまざまな形状が使用されます 0:04:31.912,0:04:36.260 千年を超える伝統で[br]幾何学の基礎を巧みに使い 0:04:36.260,0:04:41.489 複雑ながらも 装飾的で[br]目を楽しませる作品を生み出しました 0:04:41.489,0:04:46.277 職人たちは芸術的な直観[br]創造力や献身 情熱と 0:04:46.277,0:04:51.030 すばらしいコンパスと定規で[br]その可能性を示したのです