1
00:00:02,800 --> 00:00:08,900
これは中央銀行がもつ支配力をテーマとする映画である。

2
00:00:09,960 --> 00:00:13,720
中央銀行は経済 政治

3
00:00:14,020 --> 00:00:20,000
社会を変える権力をもつ。

4
00:00:20,430 --> 00:00:25,320
それはこのようにして行われる...

5
00:00:29,440 --> 00:00:34,440
パールハーバー - 1941年12月7日

6
00:00:51,020 --> 00:00:56,920
リチャード・ヴェルナー教授の著書に基づく

7
00:00:59,320 --> 00:01:05,590
帝国軍万歳！…

8
00:01:05,590 --> 00:01:09,674
監督 マイケル・オズワルト

9
00:01:16,632 --> 00:01:20,200
円の支配者

10
00:01:20,450 --> 00:01:27,601
中央銀行と 経済の変革

11
00:01:39,740 --> 00:01:42,438
私はアメリカ国旗に

12
00:01:42,440 --> 00:01:46,400
忠誠を誓います

13
00:01:52,969 --> 00:01:58,300
原子爆弾

14
00:02:13,450 --> 00:02:18,880
アメリカ軍による占領

15
00:02:20,840 --> 00:02:24,880
9時30分 横浜到着予定

16
00:02:25,900 --> 00:02:29,220
当初の予定通り

17
00:02:29,570 --> 00:02:31,840
上陸する

18
00:02:36,140 --> 00:02:40,440
ダグラス・マッカーサー元帥が横浜に近い厚木海軍飛行場に到着したのは

19
00:02:40,700 --> 00:02:44,680
1945年8月30日のことだった

20
00:02:47,000 --> 00:02:49,520
航空機から現れたマッカーサーは

21
00:02:49,770 --> 00:02:52,240
タラップを降りる前に立ち止まり

22
00:02:52,490 --> 00:02:54,900
片手をポケットに入れ

23
00:02:55,150 --> 00:02:57,920
コーンパイプをきつく咥えて

24
00:02:58,170 --> 00:03:01,400
自分達が征服した地を見渡した

25
00:03:03,460 --> 00:03:08,000
このポーズはカメラマンたちが様々なアングルから撮影し

26
00:03:08,250 --> 00:03:12,600
各紙でこの好場面が何度も繰り返された

27
00:03:16,000 --> 00:03:20,120
民主主義が日本人に植えつけられようとしていた

28
00:03:20,370 --> 00:03:23,560
まるで初めて耳にする話であるかのように。

29
00:03:23,810 --> 00:03:28,240
(ニュース) 問題は日本人の頭の中身だ

30
00:03:28,490 --> 00:03:32,300
彼らの脳は私たち同様によく働くが

31
00:03:32,550 --> 00:03:34,400
中身の良し悪しは

32
00:03:34,650 --> 00:03:39,040
頭の中で考えていることによって決まるのだ

33
00:03:44,000 --> 00:03:47,020
忠義なサムライを演じる歌舞伎は

34
00:03:47,270 --> 00:03:49,520
禁止されるか 厳しい検閲を受けた

35
00:03:50,560 --> 00:03:55,629
広島や長崎の原爆に関する本や映像も禁止

36
00:03:57,000 --> 00:03:59,000
マッカーサーを風刺した漫画も禁じられた

37
00:03:59,250 --> 00:04:03,977
占領軍による検閲に言及することも 厳格に禁止されていた

38
00:04:05,500 --> 00:04:09,400
戦犯法廷：委員会は被告を有罪と判決し

39
00:04:09,650 --> 00:04:13,040
絞首刑を宣告する

40
00:04:13,290 --> 00:04:17,680
山下大将は裁判は公正だとして委員会に謝意を述べた

41
00:04:18,890 --> 00:04:21,269
太平洋戦争の際首相だった

42
00:04:21,269 --> 00:04:24,419
東条元帥は公判中次のように答えた

43
00:04:25,577 --> 00:04:28,198
日本国の臣民(自分)が陛下のご意思に反して

44
00:04:28,205 --> 00:04:30,920
かれこれすることはありえぬことであります

45
00:04:31,388 --> 00:04:34,680
反対尋問は即座に打ち切られた

46
00:04:34,930 --> 00:04:38,320
一週間後、東条は律儀に述べた

47
00:04:38,570 --> 00:04:42,760
「天皇は常に平和を愛し平和を欲していた」 と。

48
00:04:43,010 --> 00:04:45,440
(ニュース) 東条英機元帥は

49
00:04:45,690 --> 00:04:49,216
戦争遂行の責任を負っていましたが、

50
00:04:49,216 --> 00:04:52,771
天皇の戦争責任を免除するためできることは何でもしました

51
00:04:53,490 --> 00:04:56,327
後にマッカーサーはアメリカ上院でこう述べた

52
00:04:56,507 --> 00:04:59,171
「現代の文明から見ると

53
00:04:59,337 --> 00:05:03,382
日本人は12歳の子供のようだ。」

54
00:05:12,000 --> 00:05:14,500
あなたは知らないことに興味がおありですね

55
00:05:14,750 --> 00:05:17,000
神秘的で説明のつかないことに興味がある

56
00:05:17,250 --> 00:05:19,600
だからここにいる...

57
00:05:21,000 --> 00:05:22,920
戦争が終わると

58
00:05:23,170 --> 00:05:26,131
銀行の貸付状況は悪化していた。

59
00:05:26,850 --> 00:05:30,140
銀行が保有する資産は、主に戦時国債と

60
00:05:30,390 --> 00:05:32,960
戦争で破壊された諸産業への貸付金だった。

61
00:05:33,280 --> 00:05:37,817
銀行部門自体が事実上破産していた。

62
00:05:40,040 --> 00:05:43,493
この問題は日本銀行によって容易に解決された。

63
00:05:43,845 --> 00:05:46,788
日本銀行は、銀行部門の不良債権を

64
00:05:46,788 --> 00:05:49,126
新たに創造した準備金を使って

65
00:05:49,126 --> 00:05:51,217
買取りさえすればよかった。

66
00:05:51,438 --> 00:05:55,388
しばしば無価値となっていた資産と引き換えに良貨を与えたのである。

67
00:05:56,500 --> 00:05:59,520
終戦後、まず2人の中央銀行総裁が、

68
00:05:59,770 --> 00:06:02,697
アメリカ占領軍によって任命された。

69
00:06:04,240 --> 00:06:07,608
最初に任命された日本銀行総裁は、

70
00:06:07,762 --> 00:06:09,920
新木栄吉(あらき・えいきち)だった。

71
00:06:11,040 --> 00:06:13,486
だがこのポストに就くとまもなく

72
00:06:13,486 --> 00:06:16,840
新木は戦犯検事によって起訴され、

73
00:06:16,840 --> 00:06:19,173
辞職しなければならなかった。

74
00:06:20,360 --> 00:06:22,160
そして1951年、

75
00:06:22,410 --> 00:06:27,131
公職にあった戦犯容疑者に対する大赦の後、

76
00:06:27,394 --> 00:06:31,251
新木はアメリカ合衆国大使に任じられた。

77
00:06:31,750 --> 00:06:35,540
1954年、大使としての職を辞して帰国すると

78
00:06:35,645 --> 00:06:39,980
新木は再び中央銀行総裁の任につけられた。

79
00:06:44,000 --> 00:06:47,500
1951年に行われた戦犯に対する特赦の後、

80
00:06:47,750 --> 00:06:50,000
戦時中の官僚の多くが

81
00:06:50,100 --> 00:06:53,260
戦争当時の地位に復帰した。

82
00:06:54,560 --> 00:06:57,050
この中には戦時中の政治家や

83
00:06:57,300 --> 00:06:59,840
内務省官僚の大半が含まれていた。

84
00:07:00,090 --> 00:07:03,336
彼らは思想警察を統制していた者たちで

85
00:07:03,405 --> 00:07:06,288
その多くが文部省に異動した。

86
00:07:06,586 --> 00:07:09,782
アメリカ陸軍：極東の運命の鍵は日本だ

87
00:07:10,740 --> 00:07:12,982
近代史の流れで今再び

88
00:07:13,859 --> 00:07:17,436
この言葉が差し迫った現実味を帯びている

89
00:07:20,260 --> 00:07:22,768
田園地域での騒乱を避けるうえで

90
00:07:22,768 --> 00:07:25,393
これは中国共産党の助けとなった。

91
00:07:26,250 --> 00:07:29,252
アメリカは大土地所有者から小作人への

92
00:07:29,252 --> 00:07:32,360
土地の再分配に着手した。

93
00:07:33,750 --> 00:07:35,149
財閥と呼ばれる

94
00:07:35,149 --> 00:07:38,127
日本で影響力をもつ資本家エリート [支配層] は

95
00:07:38,127 --> 00:07:40,851
犯罪的な戦争の支持者達として一掃され

96
00:07:40,921 --> 00:07:44,296
ビジネスを続行することを禁じられた。

97
00:07:44,882 --> 00:07:49,738
ドイツで戦争が行われた1930年代に改革主義派ファシスト官僚にも

98
00:07:49,738 --> 00:07:52,986
実施できなかったファシスト政策を

99
00:07:52,986 --> 00:07:55,655
アメリカ占領軍が達成したのです。

100
00:07:55,655 --> 00:07:58,635
土地改革や財閥に対する政策もこれと同様でした。

101
00:07:58,717 --> 00:08:01,402
そうですね、これは戦時中の日本のファシストたちと

102
00:08:01,402 --> 00:08:06,718
米ニューディール政策推進者とのとてもこっけいな出会いですね。

103
00:08:10,560 --> 00:08:16,460
占領終結後の政治体制

104
00:08:19,480 --> 00:08:24,580
(ニュース) 国会、日本の衆参両議院の本拠

105
00:08:25,100 --> 00:08:28,280
日本では、狂信的な学生と左翼グループが

106
00:08:28,530 --> 00:08:30,250
数日間ぶっ続けで暴動を起こし、

107
00:08:30,500 --> 00:08:33,700
アメリカとの相互防衛条約を阻止しようとしています。

108
00:08:33,950 --> 00:08:36,823
社会党議員が国会自体の内部で騒動を起こしました。

109
00:08:36,823 --> 00:08:38,825
警察は秩序を回復するため

110
00:08:38,825 --> 00:08:41,597
社会党員をも強制退去させました。

111
00:08:50,440 --> 00:08:52,792
(ニュース) 議長が演壇に連れていかれ、

112
00:08:52,792 --> 00:08:55,522
条約を批准する国会の開会を宣言しました

113
00:08:57,760 --> 00:08:59,260
1957年、

114
00:08:59,510 --> 00:09:03,640
元A級戦犯容疑者の岸信介が

115
00:09:03,662 --> 00:09:06,453
日本の首相になった。

116
00:09:08,740 --> 00:09:11,340
彼は戦時中、

117
00:09:11,340 --> 00:09:13,619
東条内閣の商務大臣だった。

118
00:09:14,214 --> 00:09:15,983
その職責の範囲は

119
00:09:15,983 --> 00:09:19,914
軍需品の調達から奴隷労働に及ぶものだった。

120
00:09:21,480 --> 00:09:24,380
ヒットラーの戦時経済担当相だった

121
00:09:24,387 --> 00:09:26,692
アルバート・シュピアが

122
00:09:26,770 --> 00:09:31,799
ベルリンのシュパンダウ刑務所に収監されていた当時、

123
00:09:31,909 --> 00:09:36,341
同じく戦時に日本で大臣を務めた人物が首相になったわけです。

124
00:09:36,760 --> 00:09:40,520
岸は戦後、民主主義の擁護者となったが、

125
00:09:40,770 --> 00:09:42,640
戦前と戦時中は

126
00:09:42,890 --> 00:09:46,226
自分を国家社会主義者と名乗っていた。

127
00:09:48,280 --> 00:09:50,424
暴力団からの資金、

128
00:09:50,495 --> 00:09:52,202
企業からの出資、

129
00:09:52,280 --> 00:09:54,198
CIAの裏金を使って

130
00:09:54,290 --> 00:09:57,000
岸は自由民主党を

131
00:09:57,250 --> 00:10:00,272
強力な政治装置に築き上げた。

132
00:10:02,080 --> 00:10:03,442
日本では、

133
00:10:03,609 --> 00:10:07,235
戦後の経済・政治の最も重要な指導者達の多くが

134
00:10:07,285 --> 00:10:10,682
戦時中のエリート官僚グループの出身だった。

135
00:10:10,911 --> 00:10:13,377
つまり日本を戦争へと追いやった同じ人々が

136
00:10:13,377 --> 00:10:15,430
戦後の経済界、政界で

137
00:10:15,430 --> 00:10:16,874
再び指導者となったのである。

138
00:10:17,117 --> 00:10:18,816
自由民主党は

139
00:10:18,816 --> 00:10:21,617
ほぼ40年の間、政権政党であり続けた。

140
00:10:25,540 --> 00:10:29,300
(ニュース)アメリカの軍人さん達に日本語でお帰りなさい！

141
00:10:29,550 --> 00:10:31,460
韓国での勤務期間を経て

142
00:10:31,710 --> 00:10:34,500
兵士達は日本の基地に戻ろうとしています。

143
00:10:34,750 --> 00:10:36,976
ほんのしばらく前まで彼らは

144
00:10:36,976 --> 00:10:39,740
占領軍として駐留していました。

145
00:10:39,990 --> 00:10:41,600
今度はどうやって戻ってきたかって？

146
00:10:41,850 --> 00:10:45,355
兵士達は占領国の人々にどのように迎え入れられたでしょうか。

147
00:10:45,618 --> 00:10:47,875
人々を支配する権力者としてではありません

148
00:10:48,270 --> 00:10:49,600
敵対者としてでもありません

149
00:10:49,850 --> 00:10:53,219
不信の目で見られ、恐れられ、腹立たしく思われる人達としてではなく

150
00:10:53,219 --> 00:10:55,720
友人として迎えられたのです。

151
00:11:04,760 --> 00:11:10,240
戦時経済体制

152
00:11:19,240 --> 00:11:21,740
東京千代田区

153
00:11:21,990 --> 00:11:25,120
大蔵省所在地

154
00:11:25,370 --> 00:11:26,871
ここから

155
00:11:27,120 --> 00:11:31,244
大蔵省は日本の経済生活の大抵の面で統制を行った。

156
00:11:31,950 --> 00:11:35,080
大蔵省は最も大きな権限を持つ
省でした。

157
00:11:35,330 --> 00:11:39,593
日本銀行は大蔵省の指示を仰がなければなりませんでした。

158
00:11:40,680 --> 00:11:42,680
大蔵省官僚を見ると、人々は沈黙のうちに

159
00:11:42,930 --> 00:11:47,352
深い畏怖と尊敬の念のあまり嘆息した。

160
00:11:47,830 --> 00:11:50,505
大蔵省退職者は

161
00:11:50,505 --> 00:11:55,280
公立・私立の公共機関の長として影響力のあるポストに就いた。

162
00:11:57,160 --> 00:11:58,660
だがある分野で

163
00:11:58,910 --> 00:12:01,760
大蔵省は実際には統制を行っていなかった。

164
00:12:02,010 --> 00:12:06,000
それは信用創造の量とその配分である。

165
00:12:06,250 --> 00:12:09,000
これを決定するのは日本の中央銀行、

166
00:12:09,250 --> 00:12:11,000
つまり日本銀行だった。

167
00:12:12,720 --> 00:12:14,720
日本銀行は、大蔵省、

168
00:12:14,873 --> 00:12:17,303
国民、ジャーナリストに対してこう言いました。

169
00:12:17,303 --> 00:12:20,360
「私どもは金利によって金融政策を実施します。」

170
00:12:20,610 --> 00:12:23,000
いわば大蔵省は日銀の上に 「君臨」 し

171
00:12:23,250 --> 00:12:25,540
日銀の金利政策に介入しましたが、

172
00:12:25,790 --> 00:12:28,296
日銀による事実上の 「統治」 は、

173
00:12:28,296 --> 00:12:30,893
金利という通貨の価値ではなく

174
00:12:30,922 --> 00:12:33,840
通貨の量を手段として行われたのです。

175
00:12:34,090 --> 00:12:35,740
窓口指導：

176
00:12:35,990 --> 00:12:38,920
中央銀行が市中銀行に対して

177
00:12:38,921 --> 00:12:43,960
信用創造の増加と信用の配分を指図するプロセス。

178
00:12:44,250 --> 00:12:47,190
これは窓口指導と呼ばれ、次のようにして行われます。

179
00:12:47,190 --> 00:12:49,300
日本銀行は、市中銀行に対して

180
00:12:49,300 --> 00:12:53,877
次の四半期にいくら貸出さなければならないか、

181
00:12:53,961 --> 00:12:57,482
しかも誰に、経済のどの部門に貸出さねばならないか指図しました。

182
00:12:57,551 --> 00:12:59,950
これは信用配分であり、信用統制です。

183
00:13:00,303 --> 00:13:03,734
日本銀行は、四半期毎にそれぞれの銀行に

184
00:13:03,948 --> 00:13:05,785
貸出額について指示をだし、

185
00:13:05,902 --> 00:13:09,441
貸出がどの産業部門に割り当てられるべきかを指導した。

186
00:13:10,000 --> 00:13:13,427
貸出はすべて産業部門・下位部門に内訳され、

187
00:13:13,732 --> 00:13:17,735
大口融資先はリストに名前を載せなければならなかった。

188
00:13:21,800 --> 00:13:24,579
日銀は、どの事業が推奨されるべきか、

189
00:13:24,903 --> 00:13:27,368
またどの事業が推奨されるべきでないか

190
00:13:27,520 --> 00:13:28,762
決めることができた。

191
00:13:29,127 --> 00:13:34,254
これは、銀行が誰に、何を目的として貸出を行うことができるかを指図することによって行われた。

192
00:13:35,227 --> 00:13:37,400
これは消費財の生産に適合した

193
00:13:37,429 --> 00:13:40,907
戦時経済の体制だった。

194
00:13:43,480 --> 00:13:46,241
(ニュース) 日本の9千5百万の人々は、

195
00:13:46,250 --> 00:13:49,936
今やアメリカ合衆国と西ヨーロッパの

196
00:13:49,936 --> 00:13:53,806
最も繁栄した国々に次ぐ国民所得を得ています。

197
00:13:54,394 --> 00:13:58,317
これは資本家・株主にとって望ましい体制ではありません。

198
00:13:58,565 --> 00:14:02,456
ところが国民にとっては多くの富が創出されました。

199
00:14:02,635 --> 00:14:06,951
所得と富の配分がきわめて均等で、

200
00:14:06,951 --> 00:14:09,106
非常に高度に経済が成長しました。

201
00:14:09,106 --> 00:14:12,124
生活の質と水準がたいへん急速に向上しました。

202
00:14:13,840 --> 00:14:15,550
1959年だけでも

203
00:14:15,800 --> 00:14:19,000
経済は17％成長した。

204
00:14:21,600 --> 00:14:24,120
だが戦時経済体制の一つの結果として、

205
00:14:24,135 --> 00:14:26,500
産業部門のすべてにおいて、

206
00:14:26,750 --> 00:14:28,867
競争は利潤のために行われるのでなく、

207
00:14:28,867 --> 00:14:31,280
マーケット・シェアを目標として行われた。

208
00:14:32,960 --> 00:14:35,960
企業はマーケット・シェアを獲得するため

209
00:14:35,982 --> 00:14:38,320
破産するまで戦おうとした。

210
00:14:40,600 --> 00:14:43,000
間もなく人々はこの現象を認識して

211
00:14:43,290 --> 00:14:45,400
「過当競争」と呼んだ。

212
00:14:46,000 --> 00:14:50,925
この問題を解決したのは、あからさまか否かを問わず、カルテルの創出である。

213
00:14:55,100 --> 00:14:57,000
銀行部門では、

214
00:14:57,220 --> 00:15:00,984
窓口指導がカルテルを統制するしくみとなった。

215
00:15:01,365 --> 00:15:04,395
何故ならば日銀は、銀行の貸出件数と貸出額を

216
00:15:04,395 --> 00:15:07,937
指図することができたからだ。

217
00:15:08,794 --> 00:15:11,658
この結果、戦後期を通じて銀行の格付は

218
00:15:11,658 --> 00:15:15,339
合併後を除いて決して変化しなかった。

219
00:15:17,300 --> 00:15:19,000
ある銀行家の言によると

220
00:15:19,250 --> 00:15:21,665
「もし窓口指導がなかったとすれば

221
00:15:21,665 --> 00:15:24,657
我々は腹切りをするまで競争していただろう。」

222
00:15:28,440 --> 00:15:34,000
戦時経済と国際貿易

223
00:15:34,680 --> 00:15:36,941
(ニュース) 米国の経常収支の赤字は

224
00:15:36,950 --> 00:15:39,250
この9年間で最も大きくなっています。

225
00:15:39,500 --> 00:15:43,560
この増加の大きさに多くのエコノミストが驚いています。

226
00:15:47,280 --> 00:15:51,241
日本国内の競争はカルテルによって統制されていたが、

227
00:15:51,250 --> 00:15:56,820
国際市場にはそのような制限がなかった。

228
00:15:58,000 --> 00:16:00,627
日本企業はまもなく

229
00:16:00,627 --> 00:16:03,667
世界の多くの市場で優勢となった。

230
00:16:07,100 --> 00:16:09,549
米国では「日本の生産性 －

231
00:16:09,549 --> 00:16:12,312
アメリカにとっての教訓」という議題で

232
00:16:12,312 --> 00:16:15,270
公式の議会聴聞会がいくつも開かれた。

233
00:16:18,240 --> 00:16:20,391
主要な経済理論が示すところによると、

234
00:16:20,393 --> 00:16:23,640
成功することのできる市場は自由市場だけだ。

235
00:16:24,600 --> 00:16:27,106
だが日本は数十年で

236
00:16:27,106 --> 00:16:30,220
世界第2位の経済大国となった。

237
00:16:30,458 --> 00:16:34,515
これは自由市場にはたらく「見えざる手」だけを頼みの綱としたのではなかった。

238
00:16:38,400 --> 00:16:40,524
日本の戦後経済は

239
00:16:40,567 --> 00:16:43,120
国民を総動員した戦時経済であり、

240
00:16:43,163 --> 00:16:45,660
生産の対象が武器から

241
00:16:45,660 --> 00:16:48,120
消費財に転換されたものだった。

242
00:16:51,000 --> 00:16:55,700
「日銀は鎮守の森のように

243
00:16:55,701 --> 00:17:00,150
静かで目立たないほうがいい。」

244
00:17:00,158 --> 00:17:04,400
( 一萬田尚登[いちまだ・ひさと]第18代日本銀行総裁)

245
00:17:14,250 --> 00:17:19,098
日銀が自由市場の擁護者として自らをアピールしていたため、

246
00:17:19,348 --> 00:17:22,760
窓口指導はきまりの悪い代物だった。

247
00:17:23,560 --> 00:17:27,000
公式刊行物ではこれに言及することができないか、

248
00:17:27,250 --> 00:17:30,410
信用統制は「自主的」に行われるものだと称して

249
00:17:30,410 --> 00:17:33,240
その役割を軽く扱った。

250
00:17:35,160 --> 00:17:38,275
大蔵省が日銀の信用創造と信用配分政策について

251
00:17:38,275 --> 00:17:41,609
問い質(ただ)す時はいつも、

252
00:17:42,380 --> 00:17:44,120
日銀の職員は、

253
00:17:44,120 --> 00:17:46,968
専門家以外にはプロセスがわからないようにするため、

254
00:17:46,968 --> 00:17:48,797
専門用語だらけの

255
00:17:48,797 --> 00:17:51,965
複雑な議論をする習慣だった。

256
00:17:57,160 --> 00:17:59,160
1965年11月、

257
00:17:59,410 --> 00:18:04,670
第一回国債が市場に登場した。

258
00:18:04,690 --> 00:18:05,812
これ以後

259
00:18:05,812 --> 00:18:08,480
政治家たちが一層多くの資金を使いたい場合、

260
00:18:08,480 --> 00:18:10,990
もはや日本銀行に圧力をかけるのではなく

261
00:18:11,487 --> 00:18:14,979
大蔵省にかけたのだった。

262
00:18:16,250 --> 00:18:19,475
ますます増える負債の山を最終的に統括するのは

263
00:18:19,475 --> 00:18:23,100
大蔵省だった。

264
00:18:31,960 --> 00:18:37,960
中央銀行家達による改革の要求

265
00:18:53,400 --> 00:18:56,940
1980年代は、工業化社会で

266
00:18:57,160 --> 00:18:59,480
金融緩和が行われた時期だった。

267
00:19:00,680 --> 00:19:02,680
工業先進国の大半は、

268
00:19:02,930 --> 00:19:06,113
資本の動きに対する制限を撤廃した。

269
00:19:08,000 --> 00:19:09,500
日本では、

270
00:19:09,750 --> 00:19:11,250
前日本銀行総裁

271
00:19:11,500 --> 00:19:14,000
佐々木直 (ささき・ただし) が

272
00:19:14,250 --> 00:19:16,600
日本経済の変革と自由化を目的とした

273
00:19:16,850 --> 00:19:21,300
五カ年計画の実施を求めた。

274
00:19:24,320 --> 00:19:26,000
次いで1986年、

275
00:19:26,250 --> 00:19:29,560
前日銀総裁・前川春雄が座長を務める

276
00:19:29,810 --> 00:19:34,000
経済構造調整研究会が、

277
00:19:34,250 --> 00:19:36,415
日本人の生活水準が

278
00:19:36,415 --> 00:19:39,770
一層西洋並みになるようはかる

279
00:19:39,770 --> 00:19:44,200
経済改革計画 (「10年計画」) を提出した。

280
00:19:48,500 --> 00:19:50,560
この提案によると

281
00:19:50,810 --> 00:19:52,740
「今や我が国は、

282
00:19:52,762 --> 00:19:56,770
従来の経済政策及び国民生活のあり方を

283
00:19:56,770 --> 00:19:58,818
歴史的に転換させるべき

284
00:19:58,818 --> 00:20:02,480
時期を迎えている。

285
00:20:02,850 --> 00:20:05,793
かかる転換なくして、

286
00:20:05,822 --> 00:20:09,560
我が国の発展はありえない。」

287
00:20:18,760 --> 00:20:20,260
この「前川レポート」を読むと

288
00:20:20,510 --> 00:20:24,000
まるでアメリカ通商代表の要望リストのような内容だ。

289
00:20:24,250 --> 00:20:27,500
まず行政改革を要求し、

290
00:20:27,750 --> 00:20:30,920
官僚の権限を廃止することを求めた。

291
00:20:31,680 --> 00:20:34,140
目ざすは、国家の政治体制を構成する

292
00:20:34,140 --> 00:20:36,600
全国民の改革であり、

293
00:20:36,850 --> 00:20:39,948
戦時経済体制を廃止して、

294
00:20:39,948 --> 00:20:43,480
米国型自由市場経済を導入することだ。

295
00:20:44,880 --> 00:20:47,300
諮問グループのメンバーで

296
00:20:47,329 --> 00:20:49,460
異議を唱えた者達は

297
00:20:49,460 --> 00:20:52,240
任を解かれた。

298
00:20:54,320 --> 00:20:57,320
報道関係者のレポートは非常に批判的で、

299
00:20:57,570 --> 00:21:01,680
この計画の内容が過激であることを評者達は認めた。

300
00:21:01,930 --> 00:21:04,560
あまりにも野心的と思われ、

301
00:21:05,240 --> 00:21:07,208
日本の経済、政治、社会体制の

302
00:21:07,208 --> 00:21:08,900
あらゆる部分を

303
00:21:08,900 --> 00:21:10,862
無差別に変える

304
00:21:10,862 --> 00:21:14,325
一つの革命を求めていた。

305
00:21:19,000 --> 00:21:22,680
このレポートで何が望まれているかは明らかだったが、

306
00:21:22,930 --> 00:21:25,841
これらの目標を達成するやり方について言及がないのは

307
00:21:25,841 --> 00:21:28,860
あきれるばかりだった。

308
00:21:29,180 --> 00:21:31,672
レポートで唯一の手掛かりとなるのは、

309
00:21:31,750 --> 00:21:35,146
「これらの推奨事項の実施にあたっては、

310
00:21:35,146 --> 00:21:37,539
税制を含む財政・金融政策の役割が

311
00:21:37,539 --> 00:21:39,784
重要」とされている点だった。

312
00:21:42,600 --> 00:21:44,100
記録によると、

313
00:21:44,350 --> 00:21:46,474
常に日本銀行は

314
00:21:46,474 --> 00:21:50,179
日本の体制を完全に廃止し、

315
00:21:50,882 --> 00:21:53,847
アメリカ型資本主義を

316
00:21:53,847 --> 00:21:57,430
導入するべきだとしてきましたが、

317
00:21:57,430 --> 00:22:00,562
国民がこの考えに賛成するかどうかはまったく別の問題です。

318
00:22:04,320 --> 00:22:05,462
さて次の問題は、

319
00:22:05,462 --> 00:22:07,305
どうやってこれを実行するかです。

320
00:22:07,305 --> 00:22:08,743
大蔵省 [現・財務省] は

321
00:22:08,743 --> 00:22:11,412
戦後期のほとんどの期間、合法的に主導権を握り、

322
00:22:11,412 --> 00:22:14,917
官僚機構、政治家、既存のすべてのカルテル等が

323
00:22:14,917 --> 00:22:17,340
すでに定着しています。

324
00:22:17,613 --> 00:22:19,317
これは古い体制ですが、

325
00:22:19,317 --> 00:22:21,163
歴史が教えるところでは

326
00:22:21,163 --> 00:22:24,680
体制が根本から変わるのは、危機がある場合に限られます。

327
00:22:27,600 --> 00:22:29,320
委員会が提案したのは、

328
00:22:29,570 --> 00:22:31,877
金融政策を利用して

329
00:22:31,877 --> 00:22:34,719
大きな歴史的危機を進展させ

330
00:22:34,719 --> 00:22:42,324
大蔵省、政治家、日本株式会社から成る既得権益を打ち破ることだった。

331
00:22:46,100 --> 00:22:47,841
あらゆる体制には

332
00:22:47,850 --> 00:22:50,000
当の体制から利益を得、

333
00:22:50,290 --> 00:22:52,700
その変革を決して望まないグループがある。

334
00:22:52,950 --> 00:22:55,400
おそらく世界には、危機なくして

335
00:22:55,518 --> 00:22:58,406
経済・社会・政治体制を

336
00:22:58,422 --> 00:23:01,613
大幅に変革した国は存在しない。

337
00:23:02,500 --> 00:23:04,204
変革の必要を

338
00:23:04,204 --> 00:23:06,607
市民と利益団体が納得するのは、

339
00:23:06,607 --> 00:23:08,655
危機に直面する時なのだ。

340
00:23:09,650 --> 00:23:12,000
どうすればこれを達成できるか？

341
00:23:12,250 --> 00:23:14,100
そう、だから危機が必要になる。

342
00:23:14,350 --> 00:23:17,500
危機をつくる一番良い方法はバブルを起こすことです。

343
00:23:17,750 --> 00:23:21,844
なぜなら、起こすのがバブルであれば、こちらの動きを妨げる者は誰もいないからです。

344
00:23:23,579 --> 00:23:29,000
バブルの起こし方

345
00:23:29,800 --> 00:23:31,300
日本銀行は

346
00:23:31,550 --> 00:23:35,800
窓口指導の銀行貸出目標額を大幅に増やし始めた。

347
00:23:36,050 --> 00:23:38,500
1980年代の貸出割当額の増加は

348
00:23:38,750 --> 00:23:41,880
年平均でほぼ15％に達した。

349
00:23:44,100 --> 00:23:46,650
後に都市銀行のある職員は次のように述べた。

350
00:23:46,900 --> 00:23:51,200
「バブル期の間に私たちは貸出額を一定量増やしたいと思いましたが、

351
00:23:51,450 --> 00:23:54,640
日銀は私たちがもっと多く使うことを望みました。」

352
00:23:57,040 --> 00:23:57,290
.

353
00:24:00,210 --> 00:24:00,460
.

354
00:24:02,610 --> 00:24:02,860
.

355
00:24:05,250 --> 00:24:05,500
.

356
00:24:17,400 --> 00:24:18,761
信用拡張は

357
00:24:18,761 --> 00:24:21,206
不動産ブームの原因となっただけでなく

358
00:24:21,206 --> 00:24:23,374
株式市場のブームを引き起こした。

359
00:24:24,312 --> 00:24:27,191
1985年から1989年にかけて

360
00:24:27,391 --> 00:24:30,887
株価は240％上昇、

361
00:24:31,535 --> 00:24:35,560
地価は245%上昇した。

362
00:24:38,520 --> 00:24:40,313
1980年代末まで

363
00:24:40,515 --> 00:24:45,531
東京の中心にある皇居を取り囲む庭園の価額は、

364
00:24:45,531 --> 00:24:49,488
カリフォルニア州全体と同じ額だった。

365
00:25:06,360 --> 00:25:10,837
日本の国土面積はアメリカ合衆国の26分の1の広さしかないが、

366
00:25:10,922 --> 00:25:15,869
日本の土地全体の価額は合衆国の4倍だった。

367
00:25:18,500 --> 00:25:23,770
東京23区の１つ、

368
00:25:23,770 --> 00:25:25,212
千代田区の市場価額は

369
00:25:25,295 --> 00:25:28,747
カナダ全体の価額を超えた。

370
00:25:30,520 --> 00:25:31,607
エコノミスト達は、

371
00:25:31,607 --> 00:25:34,400
市場の成り行きを真に受けるよう訓練されているので

372
00:25:34,443 --> 00:25:36,784
地価の高さを正当化しようとした。

373
00:25:36,991 --> 00:25:40,303
一部には土地の不足がその理由だと考える者があった。

374
00:25:42,434 --> 00:25:44,600
光り輝く新しい企業本社が

375
00:25:44,615 --> 00:25:48,000
東京の高級オフィス街に誕生した。

376
00:25:49,200 --> 00:25:51,700
労働市場もにわかに活気づき

377
00:25:51,743 --> 00:25:55,282
掛け値なしに深刻な労働者不足が懸念された。

378
00:25:57,200 --> 00:26:01,255
最終学年の大学生を釣ろうとする企業は、就職の意図がある旨を署名させようと

379
00:26:01,255 --> 00:26:03,853
ホリデー・リゾートへの高価な旅に

380
00:26:03,853 --> 00:26:06,486
誘うようになった。

381
00:26:12,250 --> 00:26:13,222
政治家達にも、

382
00:26:13,222 --> 00:26:15,294
大蔵省にも、この状況は好ましかったのです。

383
00:26:15,294 --> 00:26:16,750
税の歳入額が上昇しました。

384
00:26:16,750 --> 00:26:19,801
企業にもこの状況は好ましかった... バブルではすべてがすばらしかったのです。

385
00:26:22,550 --> 00:26:22,800
.

386
00:26:24,950 --> 00:26:25,200
.

387
00:26:29,300 --> 00:26:29,550
.

388
00:26:33,650 --> 00:26:33,900
.

389
00:26:37,270 --> 00:26:37,520
.

390
00:26:39,800 --> 00:26:43,700
資産価格と株価の上昇は止まらず、

391
00:26:43,950 --> 00:26:46,767
従来の製造業者でさえ、相場に手を出してみる

392
00:26:46,767 --> 00:26:50,320
誘惑には逆らえなかった。

393
00:26:51,274 --> 00:26:54,660
まもなく投機そのものを取り扱うために、

394
00:26:54,660 --> 00:26:58,106
大蔵省の財務部と理財局国庫課が拡張された。

395
00:26:58,970 --> 00:27:00,831
財テクとして知られる

396
00:27:00,831 --> 00:27:02,718
企業ヘッジファンドは

397
00:27:02,718 --> 00:27:06,267
借入金を使って資産と株の投機を行った。

398
00:27:08,300 --> 00:27:10,898
その熱狂ぶりは非常な水準にまで高まり、

399
00:27:10,898 --> 00:27:11,962
日産のような

400
00:27:11,962 --> 00:27:15,253
多くの自動車トップメーカーが

401
00:27:15,253 --> 00:27:18,352
投機的投資によって儲けた利益は、

402
00:27:18,352 --> 00:27:21,384
自動車の製造によって得られた額よりも多かった。

403
00:27:24,440 --> 00:27:26,822
日本の新たな奇跡の経済を主題として

404
00:27:26,822 --> 00:27:29,141
文字通り何千もの記事が書かれた。

405
00:27:29,950 --> 00:27:32,550
誰もがよく知っている、エコノミストの説明は

406
00:27:32,550 --> 00:27:34,885
生産性の向上と水準から

407
00:27:34,885 --> 00:27:38,412
日本経済の印象的な実績が説明できる、というものだった。

408
00:27:44,800 --> 00:27:47,494
日本的な経営管理手法に関する書籍が

409
00:27:47,494 --> 00:27:49,900
国際的にベストセラーとなった。

410
00:27:50,800 --> 00:27:52,568
西欧のビジネスマン達が

411
00:27:52,568 --> 00:27:56,805
サムライの戦略を主題とした17世紀の小冊子を読んだ。

412
00:28:03,200 --> 00:28:04,700
ところが実は

413
00:28:04,743 --> 00:28:07,775
1980年代の日本の非常にすばらしい実績は

414
00:28:07,775 --> 00:28:10,892
経営管理手法とほとんど関係がなかった。

415
00:28:12,280 --> 00:28:15,739
信用を制限し指導するために窓口指導を用いる代わりに、

416
00:28:15,739 --> 00:28:20,280
巨大なバブルを生み出すために窓口指導を用いたのだった。

417
00:28:26,300 --> 00:28:31,500
私は日銀の職員と銀行家達にインタヴューして調査を行いました。

418
00:28:31,750 --> 00:28:33,900
双方ともテープに収録しています。

419
00:28:34,150 --> 00:28:35,700
調査の結果、

420
00:28:35,950 --> 00:28:39,525
日銀は実際に非公式な窓口指導を続けたことがわかりました。

421
00:28:39,760 --> 00:28:43,890
実のところ、銀行に貸出額をこれほどにも増やすよう強いたのは

422
00:28:43,890 --> 00:28:45,560
日本銀行だったのです。

423
00:28:49,100 --> 00:28:51,000
日銀は知っていた。

424
00:28:51,250 --> 00:28:54,867
銀行が貸出目標額を達成する唯一の方法は、

425
00:28:54,931 --> 00:28:57,866
非生産的貸出額を増額することだと。

426
00:29:00,521 --> 00:29:02,842
ある銀行家の言葉を用いるならば

427
00:29:02,842 --> 00:29:06,567
「低リスクの借手に信用に対する需要がない場合、

428
00:29:06,567 --> 00:29:08,796
貸出割当額をすべて消化したいと望むと、

429
00:29:08,796 --> 00:29:11,970
リスクは悪化する。」

430
00:29:13,300 --> 00:29:16,183
いま一人の銀行家は次のように述べている。

431
00:29:16,708 --> 00:29:19,684
「貸出を増やす窓口指導のルールの副作用は、

432
00:29:19,684 --> 00:29:22,429
貸出の需要がまったくない時も

433
00:29:22,429 --> 00:29:25,546
銀行が貸出額を増やしたことだ。」

434
00:29:27,920 --> 00:29:33,560
通貨の創造とバブル

435
00:29:34,560 --> 00:29:35,654
あらゆるバブルと同様、

436
00:29:35,654 --> 00:29:37,722
日本のバブルが煽（あお）られたのは

437
00:29:37,722 --> 00:29:39,724
ひとえに銀行制度によって

438
00:29:39,724 --> 00:29:42,958
新しい通貨が急速に創造されたことによる。

439
00:29:45,300 --> 00:29:48,400
1986年から1989年にかけて

440
00:29:48,400 --> 00:29:50,615
日銀の営業局長だったのは

441
00:29:50,615 --> 00:29:53,320
福井俊彦だ。

442
00:29:54,825 --> 00:29:57,706
これは窓口指導による各銀行の貸出割当額に

443
00:29:57,706 --> 00:29:59,960
責任を負う局だ。

444
00:30:00,311 --> 00:30:02,767
福井にあるジャーナリストが尋ねた。

445
00:30:02,860 --> 00:30:05,207
貸し出しが急速に増えていますが...

446
00:30:05,250 --> 00:30:09,354
「貸し出しの蛇口を狭めるつもりはないのですか？」

447
00:30:09,521 --> 00:30:10,843
福井は答えた。

448
00:30:10,843 --> 00:30:14,899
「金融緩和を一貫して続けるわけだから

449
00:30:15,128 --> 00:30:19,568
貸し出しの量的規制は自己矛盾に陥ることになります。

450
00:30:20,515 --> 00:30:24,740
だから量的規制をするつもりはない。

451
00:30:28,690 --> 00:30:30,792
経済の構造調整を

452
00:30:30,792 --> 00:30:33,546
かなりの期間かけてやっていきながら

453
00:30:33,546 --> 00:30:37,470
国際的な不均衡を是正していく。

454
00:30:38,853 --> 00:30:41,832
金融政策はそれを支えることになるわけですから、

455
00:30:41,832 --> 00:30:44,865
(私たちには) なるべく長く金融緩和を続けていく

456
00:30:44,865 --> 00:30:47,506
責任があるのです。

457
00:30:48,494 --> 00:30:53,882
そうすると金融機関の貸し出しが伸びるのは当然なのです。」

458
00:30:55,751 --> 00:30:58,943
なぜ銀行はこれほど多くの融資を行っていたのか？

459
00:30:59,208 --> 00:31:01,681
それは日本銀行の命令によって

460
00:31:01,681 --> 00:31:04,329
そうせざるを得なかったからです。

461
00:31:09,720 --> 00:31:10,690
通常

462
00:31:10,690 --> 00:31:14,946
銀行は多くの融資申込者の中から顧客を選び

463
00:31:15,161 --> 00:31:18,608
かなりの割合で融資を断る。

464
00:31:22,000 --> 00:31:24,130
だが1987年から

465
00:31:24,130 --> 00:31:26,256
形勢が逆転し

466
00:31:26,368 --> 00:31:28,834
銀行家のほうが

467
00:31:28,834 --> 00:31:32,160
積極的に見込み客を追いかけるようになった。

468
00:31:33,080 --> 00:31:35,793
銀行がまるで行商人のように顧客を追いかけ

469
00:31:35,793 --> 00:31:38,712
格安の金利で融資を勧誘した逸話が

470
00:31:38,712 --> 00:31:41,341
たくさんある。

471
00:31:42,350 --> 00:31:42,600
.

472
00:31:46,850 --> 00:31:47,100
.

473
00:31:48,750 --> 00:31:49,000
.

474
00:31:53,050 --> 00:31:53,300
.

475
00:31:56,050 --> 00:31:56,300
.

476
00:32:01,520 --> 00:32:04,163
銀行家はますます地価の評価を

477
00:32:04,163 --> 00:32:06,326
誇張して行うようになり、

478
00:32:06,370 --> 00:32:09,146
貸付金に対する地価の実際比が

479
00:32:09,146 --> 00:32:12,129
しばしば300％以上に急増した。

480
00:32:13,920 --> 00:32:17,293
一般の人々にとってこれは奇妙な現象だった。

481
00:32:17,750 --> 00:32:19,568
ほどなく人々はこれを

482
00:32:19,584 --> 00:32:21,600
「過剰資金」と呼んだ。

483
00:32:23,100 --> 00:32:24,629
エコノミストや

484
00:32:24,629 --> 00:32:26,120
アナリスト、

485
00:32:26,156 --> 00:32:29,150
金融市場や不動産会社で働く人々だけが

486
00:32:29,179 --> 00:32:31,800
事情をわきまえていた。

487
00:32:32,174 --> 00:32:35,477
あまりに簡単に割り切りすぎた分析を彼らは斥けた。

488
00:32:36,600 --> 00:32:38,655
地価の上昇は

489
00:32:38,655 --> 00:32:40,871
単に過剰資金によるというよりも

490
00:32:40,970 --> 00:32:42,600
はるかに複雑な理由によるものだった。

491
00:32:42,884 --> 00:32:44,591
こうした業種の人たちは、

492
00:32:44,600 --> 00:32:47,558
庶民には、ただ高度な財テクの複雑な仕組みが

493
00:32:47,558 --> 00:32:49,830
分からないのだ、と主張した。

494
00:32:53,680 --> 00:32:58,680
国際資本の移動

495
00:33:07,840 --> 00:33:10,500
ある国が創造した通貨の量が多すぎると

496
00:33:10,750 --> 00:33:13,282
その通貨の一部は、海外へ投資という形で

497
00:33:13,282 --> 00:33:15,520
流出する。

498
00:33:17,960 --> 00:33:19,199
1980年代の

499
00:33:19,199 --> 00:33:21,696
日本の資本の流れは

500
00:33:22,250 --> 00:33:24,401
1980年に2億ドル以上(純額)が

501
00:33:24,401 --> 00:33:26,549
国内に流入したのに対して

502
00:33:27,110 --> 00:33:28,474
1986年には

503
00:33:28,474 --> 00:33:31,800
1320億ドルが流出した。

504
00:33:35,400 --> 00:33:38,200
美術品その他の貴重品を含む

505
00:33:38,450 --> 00:33:40,165
世界中の資産が

506
00:33:40,250 --> 00:33:42,500
日本のバイヤーたちの標的となった。

507
00:33:44,500 --> 00:33:46,680
これにはロックフェラー・センター、コロンビア映画、

508
00:33:46,930 --> 00:33:49,651
ペブルビーチ・ゴルフリンクスのような

509
00:33:49,651 --> 00:33:52,596
知名度の高い購入物件が含まれていた。

510
00:33:55,200 --> 00:33:57,367
驚くべきことに1986年に競売された

511
00:33:57,367 --> 00:34:00,394
アメリカ合衆国の長期国債の75％が

512
00:34:00,656 --> 00:34:03,444
日本円によって購入された。

513
00:34:07,000 --> 00:34:08,917
だが一国が紙幣を印刷するだけで

514
00:34:08,917 --> 00:34:11,661
世界中の物件を買いたい放題に購入するというのは

515
00:34:11,661 --> 00:34:13,641
たやすくできることではない。

516
00:34:14,449 --> 00:34:16,594
日本にこれができたのは

517
00:34:16,594 --> 00:34:19,690
市場が通貨を切り下げなかったからだ。

518
00:34:22,100 --> 00:34:24,500
それぞれの通貨の価値は

519
00:34:24,501 --> 00:34:27,100
為替ディーラーによって決められる。

520
00:34:27,350 --> 00:34:30,475
その際、彼らが観察する従来の経済指標が

521
00:34:30,475 --> 00:34:34,239
その国の過剰な通貨創造を捉えていない場合、

522
00:34:35,551 --> 00:34:37,920
多額の通貨創造と

523
00:34:37,920 --> 00:34:40,376
これを外貨と交換しようとする試みが

524
00:34:40,376 --> 00:34:42,324
影響を及ぼすことがある。

525
00:34:49,438 --> 00:34:51,330
1950年代、1960年代に

526
00:34:51,330 --> 00:34:54,909
米国の銀行はドルを過剰に創造したが、

527
00:34:54,909 --> 00:34:56,793
この時に米国が使った同じトリックを

528
00:34:56,793 --> 00:34:59,585
日本は成功させたのだった。

529
00:35:02,720 --> 00:35:04,603
アメリカ合衆国株式会社は

530
00:35:04,603 --> 00:35:06,627
ヨーロッパの諸企業を買収するため

531
00:35:06,627 --> 00:35:09,166
このホットマネー [不正に得たカネ] を使った。

532
00:35:10,000 --> 00:35:11,927
この時に米国が使った口実は

533
00:35:11,927 --> 00:35:14,380
金本位制だったが、

534
00:35:14,380 --> 00:35:18,978
日本の場合、口実となったのは多額の貿易黒字だった。

535
00:35:24,320 --> 00:35:26,776
GDPを根拠としない融資：

536
00:35:26,776 --> 00:35:30,557
財貨やサービスの生産を目的としない融資。

537
00:35:32,151 --> 00:35:34,506
金融制度全体のリスクの増加を

538
00:35:34,506 --> 00:35:37,205
その初期に警告する指標として、

539
00:35:37,205 --> 00:35:39,525
融資総額に対して

540
00:35:39,525 --> 00:35:44,529
GDPに基づかない取引を目的とする貸付金が占める割合がある。

541
00:35:47,100 --> 00:35:49,780
この比率は、金融危機が発生しつつある

542
00:35:49,780 --> 00:35:54,317
国々のほとんどで著しく高くなる。

543
00:35:59,000 --> 00:36:01,303
1980年代と2000年代に

544
00:36:01,303 --> 00:36:03,601
アメリカとイギリスで

545
00:36:03,601 --> 00:36:06,704
抵当貸付と住宅価格の急騰を刺激したのは

546
00:36:06,704 --> 00:36:09,449
このプロセスにほかならなかった。

547
00:36:11,200 --> 00:36:13,608
これと同じプロセスはまた

548
00:36:13,608 --> 00:36:15,887
黄金の1920年代を創出した。

549
00:36:16,600 --> 00:36:20,503
この時アメリカの銀行は株を担保として貸出を行った。

550
00:36:22,000 --> 00:36:24,000
原理は同じだ。

551
00:36:24,250 --> 00:36:27,499
各銀行は株価を既定の事実と考え

552
00:36:27,499 --> 00:36:30,150
新たに通貨を創造した。

553
00:36:30,400 --> 00:36:32,896
株式市場で通貨量が増えると

554
00:36:32,896 --> 00:36:35,200
株価は上昇しなければならなかった。

555
00:36:36,200 --> 00:36:39,100
株価の一定の割合を担保として受け取れば

556
00:36:39,100 --> 00:36:42,276
安全だと各々の銀行は考えたが、

557
00:36:42,628 --> 00:36:45,316
すべての銀行が同じ行動をとることによって

558
00:36:45,316 --> 00:36:48,520
市場全体が押し上げられる。

559
00:36:52,000 --> 00:36:53,591
日本では、

560
00:36:53,591 --> 00:36:56,920
民間部門が所有する土地の富が

561
00:36:56,920 --> 00:36:59,720
1969年に14兆2千億円だったのが、

562
00:36:59,720 --> 00:37:03,326
1989年には2000兆円に上昇した。

563
00:37:08,200 --> 00:37:09,981
日本銀行第26代総裁

564
00:37:09,981 --> 00:37:12,349
三重野康 (みえの・やすし) は

565
00:37:12,349 --> 00:37:14,800
1989年、最初の記者会見で

566
00:37:15,180 --> 00:37:17,140
地価高騰の原因として

567
00:37:17,140 --> 00:37:19,900
「金融が片棒をかついでいることは否めない」

568
00:37:20,270 --> 00:37:22,677
と金融緩和の副作用を率直に認め、

569
00:37:22,997 --> 00:37:27,780
今後は個別の指導で不動産関連融資を抑制していくと述べた。

570
00:37:27,600 --> 00:37:29,767
周囲を見回して、彼はバブル、

571
00:37:29,767 --> 00:37:33,563
資産価値の上昇、貧富の格差の拡大に目を向け、

572
00:37:33,563 --> 00:37:35,850
これを止めようではないかと言いました。

573
00:37:36,100 --> 00:37:39,300
三重野氏は新聞や雑誌の記事で英雄になりました。

574
00:37:39,550 --> 00:37:42,900
それは彼がこの愚かな金融緩和策に反対して戦ったからですが、

575
00:37:43,150 --> 00:37:47,412
ところが本人はバブル期の間は副総裁を務め、

576
00:37:47,434 --> 00:37:55,606
バブルの創出を担当していたのです。

577
00:37:57,400 --> 00:38:01,900
相場の暴落

578
00:38:16,600 --> 00:38:18,299
突然、地価と

579
00:38:18,299 --> 00:38:20,900
資産価値の上昇が止まった。

580
00:38:22,400 --> 00:38:24,103
1990年だけで

581
00:38:24,103 --> 00:38:27,573
株価は32％下落した。

582
00:38:31,600 --> 00:38:33,600
その後、1991年7月

583
00:38:33,850 --> 00:38:36,500
窓口指導が廃止された。

584
00:38:38,200 --> 00:38:40,734
これには、日本銀行で

585
00:38:40,750 --> 00:38:43,880
窓口指導を担当していた職員自身が驚いた。

586
00:38:44,200 --> 00:38:46,744
銀行家達はほとんど無力のまま取り残された。

587
00:38:46,850 --> 00:38:50,130
もはやどのようにして貸出を計画すればよいかわからないと

588
00:38:50,130 --> 00:38:51,634
彼らは不満をもらした。

589
00:38:52,453 --> 00:38:54,405
かつてある銀行の支店が

590
00:38:54,405 --> 00:38:56,718
もっと多く融資したいと言う時には、

591
00:38:56,912 --> 00:39:01,310
窓口指導の貸出割当額は使い果たしたと答えるのが常だったが、

592
00:39:02,856 --> 00:39:05,903
この度はもはやそうすることができなかった。

593
00:39:09,000 --> 00:39:11,279
バブルで融資された99兆円の大部分が

594
00:39:11,279 --> 00:39:13,684
焦げつく可能性が高いことに

595
00:39:13,684 --> 00:39:16,165
銀行が気づき始めると、

596
00:39:16,946 --> 00:39:19,560
恐ろしさのあまり

597
00:39:19,560 --> 00:39:21,970
銀行は投機家への融資をやめたばかりか、

598
00:39:22,740 --> 00:39:25,560
他の誰に対しても融資を制限した。

599
00:39:26,250 --> 00:39:29,200
（ニュース）日本では希望のないクリスマスが待っているようです。

600
00:39:29,450 --> 00:39:31,100
月曜日、株式市場は

601
00:39:31,350 --> 00:39:34,000
下落して過去2年以上で最低の終値となりました。

602
00:39:34,250 --> 00:39:37,400
先週、日本の食品業者最大手の一つが倒産しました。

603
00:39:37,650 --> 00:39:39,772
今年上場企業が倒産したのは

604
00:39:39,772 --> 00:39:41,960
これで9回目です。

605
00:39:43,500 --> 00:39:46,300
5百万人を超える日本人が職を失い

606
00:39:46,550 --> 00:39:49,640
就職先がどこにも見つからなかった。

607
00:39:54,100 --> 00:39:56,900
20歳から44歳までの男性の死亡原因では

608
00:39:57,160 --> 00:40:00,500
自殺がトップになった。

609
00:40:02,640 --> 00:40:02,890
.

610
00:40:04,900 --> 00:40:05,150
.

611
00:40:07,150 --> 00:40:07,400
.

612
00:40:09,600 --> 00:40:09,850
.

613
00:40:21,100 --> 00:40:23,350
1990年から2003年にかけて

614
00:40:23,600 --> 00:40:27,674
21万2千社が倒産した。

615
00:40:29,000 --> 00:40:30,594
同じ期間に

616
00:40:30,594 --> 00:40:33,640
株式市場は80％下落した。

617
00:40:35,500 --> 00:40:37,446
主要都市の地価は

618
00:40:37,446 --> 00:40:40,200
最大で84％下落した。

619
00:40:41,620 --> 00:40:44,442
エコノミストのある者たちはホッと胸を撫でおろしているように見えた。

620
00:40:44,442 --> 00:40:46,196
景気の低迷は、煎じ詰めると

621
00:40:46,196 --> 00:40:47,929
日本の経済体制がそれほど

622
00:40:47,929 --> 00:40:50,314
成功していない証拠だった。

623
00:40:53,000 --> 00:40:54,637
その一方で

624
00:40:54,750 --> 00:40:56,180
日本銀行総裁、

625
00:40:56,180 --> 00:40:59,000
三重野康（みえの・やすし）は語った。

626
00:40:59,400 --> 00:41:01,287
「この不況のおかげで

627
00:41:01,287 --> 00:41:03,766
誰もが経済改革を行う必要を

628
00:41:03,766 --> 00:41:06,466
意識するようになってきた。」

629
00:41:10,960 --> 00:41:15,100
救済措置の失敗

630
00:41:15,600 --> 00:41:17,367
大蔵省は、

631
00:41:17,367 --> 00:41:20,443
金利が主要な政策手段であると信じていたので、

632
00:41:20,443 --> 00:41:24,746
日銀に金利を下げるよう圧力をかけた。

633
00:41:25,451 --> 00:41:29,410
この結果、公定歩合は0.1％まで下がった。

634
00:41:32,100 --> 00:41:35,900
ほとんどのエコノミストは、景気が回復すると予測した。

635
00:41:41,300 --> 00:41:44,303
だが金利を下げれば成長が刺激され、

636
00:41:44,650 --> 00:41:47,513
金利を上げれば成長が鈍化すると

637
00:41:47,693 --> 00:41:49,426
金融新聞や中央銀行が

638
00:41:49,426 --> 00:41:51,558
頻繁に主張したにもかかわらず、

639
00:41:51,787 --> 00:41:55,524
経験上そのような因果関係を示す証拠は全く存在しない。

640
00:42:03,320 --> 00:42:06,500
（ニュース）日米のビジネスマンがここで会合を開いています。

641
00:42:06,750 --> 00:42:09,850
日本の企業からは円安を求める嘆願が出されています。

642
00:42:10,440 --> 00:42:13,358
1ドルが100円以下で利益を出すことのできる日本の輸出業者は

643
00:42:13,358 --> 00:42:15,296
全体のわずか6％しかありません。

644
00:42:15,422 --> 00:42:18,222
収支を合わせるには、平均して1ドルが

645
00:42:18,222 --> 00:42:21,106
117円超に上がることが必要です。

646
00:42:25,280 --> 00:42:27,542
大蔵省は日銀に

647
00:42:27,542 --> 00:42:29,586
大量の円を売り

648
00:42:29,586 --> 00:42:32,100
米国ドルを買うことを求めた。

649
00:42:32,805 --> 00:42:35,700
円の為替レートが下落し、

650
00:42:35,960 --> 00:42:38,500
輸出が上向くようにするためだ。

651
00:42:39,760 --> 00:42:41,520
大蔵省と日銀の

652
00:42:41,550 --> 00:42:44,800
両者は、

653
00:42:45,050 --> 00:42:47,160
実に折り合いがよくありません。

654
00:42:47,410 --> 00:42:50,275
今月再び起こっているのは、

655
00:42:50,275 --> 00:42:54,400
日銀が自らの介入を無効にしているということ、

656
00:42:54,650 --> 00:42:56,410
正確に言えば、

657
00:42:56,410 --> 00:42:59,000
大蔵省の命令による介入を無効にしつつあることです。

658
00:42:59,250 --> 00:43:00,932
大蔵省は日銀に

659
00:43:00,932 --> 00:43:05,297
米国債を凡そ200億ドル購入するよう指示しています。

660
00:43:05,568 --> 00:43:08,239
ところがこの購入資金は

661
00:43:08,239 --> 00:43:11,800
基本的に日銀が国の経済から得るカネなので、

662
00:43:11,850 --> 00:43:14,000
不胎化されます。

663
00:43:14,250 --> 00:43:16,000
大半の研究者は

664
00:43:16,150 --> 00:43:19,250
不胎化された介入には効果がないことに同意しています。

665
00:43:19,250 --> 00:43:21,332
日銀はまた不胎化を行っているのです。

666
00:43:21,410 --> 00:43:23,248
このため介入には効力がなく、

667
00:43:23,250 --> 00:43:26,132
円は現在まで依然として強いのです。

668
00:43:30,100 --> 00:43:33,100
中央銀行はその資産を売却することによって国の経済から

669
00:43:33,350 --> 00:43:35,320
通貨を回収することができる。

670
00:43:35,760 --> 00:43:38,800
これは、資産を購入することによって国の経済に

671
00:43:38,863 --> 00:43:41,100
通貨を投入することができるのと同様だ。

672
00:43:43,300 --> 00:43:46,406
中央銀行が資産を売買すると、

673
00:43:46,550 --> 00:43:51,680
国の経済を循環する通貨の量が増減するわけだ。

674
00:43:53,400 --> 00:43:56,000
日銀の職員はこの点を無視し、

675
00:43:56,280 --> 00:43:58,300
その代わりにこう主張した。

676
00:43:58,550 --> 00:44:01,700
「この構造改革で

677
00:44:01,950 --> 00:44:05,700
短期的にはデフレ圧力が生じるかもしれないが、

678
00:44:05,950 --> 00:44:10,720
しばらくすればはるかに効率的な経済が生まれるだろう。」

679
00:44:18,000 --> 00:44:20,250
この時、独立した立場にあるオブザーバーたちは、

680
00:44:20,500 --> 00:44:24,600
国内需要は財政支出によって押し上げられなければならない、

681
00:44:24,850 --> 00:44:27,960
そうすれば借入需要も高まるだろう、と提案した。

682
00:44:29,840 --> 00:44:31,340
10年間、

683
00:44:31,590 --> 00:44:33,700
政府は彼らのアドバイスに従って

684
00:44:33,950 --> 00:44:36,700
政府債務を歴史的な水準にまで押し上げた。

685
00:44:36,950 --> 00:44:39,200
1992年から2002年までの間に

686
00:44:39,550 --> 00:44:44,665
景気刺激策が10回打ち出され、その総額は146兆円に達した。

687
00:44:47,560 --> 00:44:49,060
（ニュース）リチャード・ヴェルナー氏は

688
00:44:49,310 --> 00:44:51,880
東京のジャーディン・フレミング証券会社のチーフ・エコノミストです。

689
00:44:52,130 --> 00:44:54,120
日本経済がどこに向かっているか、

690
00:44:54,370 --> 00:44:57,129
ご意見を伝えていただきます。

691
00:44:57,129 --> 00:44:59,500
日本政府は右手を使って支出を行い

692
00:44:59,500 --> 00:45:01,262
国の経済組織に通貨を投入していますが、

693
00:45:01,262 --> 00:45:03,770
資金調達は債券市場を通じて行われましたから、

694
00:45:03,770 --> 00:45:07,185
左手を使ってその同じ通貨を国の経済組織から取り去ったわけです。

695
00:45:07,185 --> 00:45:09,496
購買力は全体としてまったく増えていません。

696
00:45:09,496 --> 00:45:12,139
ですから政府の財政支出には効果がないのです。

697
00:45:12,139 --> 00:45:17,720
2011年までに日本政府の負債はGDPの230％、

698
00:45:17,970 --> 00:45:20,040
世界最高に達しようとしていた。

699
00:45:27,100 --> 00:45:30,100
大蔵省 [2001年より財務省] は万策尽きようとしていた。

700
00:45:32,000 --> 00:45:35,800
オブザーバー達は不況の責任を大蔵省に負わせるようになり、

701
00:45:36,050 --> 00:45:38,606
不況は日本の経済体制のせいだと唱える声に

702
00:45:38,606 --> 00:45:42,296
耳を傾けはじめた。

703
00:45:45,880 --> 00:45:48,050
だが銀行部門の不良債権問題と

704
00:45:48,050 --> 00:45:50,601
デフレを解決することは、

705
00:45:50,609 --> 00:45:53,337
どれほど難しいことだったのだろうか。

706
00:45:53,617 --> 00:45:57,267
結局これはそれほど難しいことではなかったことが分かる。

707
00:45:57,572 --> 00:46:01,862
金融システムは、映画「キャッチ22」のようにいつもどちらに転んでも勝算がないように見えます。

708
00:46:01,862 --> 00:46:04,206
貸出額の伸びがないので、経済は成長しない。

709
00:46:04,206 --> 00:46:06,713
それで貸出額が伸びないので、経済成長はない。

710
00:46:06,713 --> 00:46:09,925
さて、この循環論法を破ることのできるものが一つあります。

711
00:46:10,010 --> 00:46:11,731
それは中央銀行です。

712
00:46:11,850 --> 00:46:16,115
この状況での中央銀行の義務は、通貨を印刷することなのです。

713
00:46:17,664 --> 00:46:22,200
中央銀行の権限

714
00:46:22,500 --> 00:46:25,689
今私たちに必要なのはもっと抜本的な措置です。

715
00:46:25,850 --> 00:46:27,958
その中には痛みを伴うものがあれば、

716
00:46:27,958 --> 00:46:29,800
伴わないものもあります。

717
00:46:30,050 --> 00:46:33,900
例えば中央銀行は、すべての不良債権をただ額面どおりに買い取ることができます。

718
00:46:33,982 --> 00:46:36,965
これは日本が世界で最強の銀行を持っているということでしょう。

719
00:46:37,600 --> 00:46:39,765
銀行部門を救済するため

720
00:46:39,794 --> 00:46:43,155
中央銀行は新たに創造された通貨を使って

721
00:46:43,280 --> 00:46:45,294
不良金融資産を額面通りに

722
00:46:45,294 --> 00:46:47,720
買い取ることができる。

723
00:46:47,970 --> 00:46:51,237
この場合は、資産が著しく減価していることがよくあるのだが。

724
00:46:52,600 --> 00:46:57,341
これは日本銀行が戦後に行ったことだ。

725
00:46:59,200 --> 00:47:02,280
もう一つの方法として、銀行を支援して相当な利益を得させ、

726
00:47:02,530 --> 00:47:05,520
通貨を銀行に移転させることができる。

727
00:47:05,670 --> 00:47:07,840
これを成し遂げるやり方の一つは、

728
00:47:07,850 --> 00:47:10,600
中央銀行が市場を独占し、

729
00:47:10,617 --> 00:47:13,950
一定の市場に実際にミニ・バブルを創出することだ。

730
00:47:14,200 --> 00:47:16,723
このバブルで銀行は多量に出資するため

731
00:47:16,723 --> 00:47:18,988
多額の利益が得られる。

732
00:47:20,153 --> 00:47:21,401
これは結局、

733
00:47:21,401 --> 00:47:24,830
中央銀行が自らの銀行制度を支援するために用いる

734
00:47:24,830 --> 00:47:28,351
比較的ありふれたテクニックであることがわかる。

735
00:47:32,200 --> 00:47:33,920
その他の提案としては、

736
00:47:33,950 --> 00:47:37,100
銀行にリスクのまったくない借り手を紹介する措置や、

737
00:47:37,156 --> 00:47:41,828
会計に別の計算方法を導入して銀行のバランスシートを改善することが挙げられる。

738
00:47:48,000 --> 00:47:51,655
これは西側主要国では約20年後に議論されたことだが、日本では

739
00:47:51,655 --> 00:47:54,955
当局と日銀が論陣を張って

740
00:47:54,955 --> 00:47:58,696
納税者がつけを支払うべきだとされた。

741
00:48:00,600 --> 00:48:03,267
富士銀行頭取(当時) 橋本徹氏：　去年の3月に

742
00:48:03,267 --> 00:48:06,615
政府は日本のおよそ15の主要金融機関に

743
00:48:06,615 --> 00:48:10,480
多額の資金を注入しました。

744
00:48:13,920 --> 00:48:16,500
私どもはその一つでした。

745
00:48:16,750 --> 00:48:20,168
これは不良債権を帳簿から消すのに役立ち、

746
00:48:20,168 --> 00:48:23,528
キャピタルベースの強化にも役立ちましたから、

747
00:48:23,528 --> 00:48:26,958
私どもには融資の準備ができると思われました。

748
00:48:29,000 --> 00:48:32,617
これまで税金が、銀行の資本構成を変更するために使われてきた。

749
00:48:33,100 --> 00:48:36,174
とはいえ、納税者が銀行の問題に対して責任があったという

750
00:48:36,174 --> 00:48:37,990
証拠はない。

751
00:48:38,154 --> 00:48:41,134
だからこのような金融政策がモラル・ハザードを引き起こし、

752
00:48:41,134 --> 00:48:44,817
リスクに対する補償のために責任感・経営倫理が失われた可能性が高い。

753
00:48:47,600 --> 00:48:48,977
通貨の供給は

754
00:48:48,977 --> 00:48:50,877
銀行と中央銀行による

755
00:48:50,877 --> 00:48:53,810
信用創造の純増加によって決まる。

756
00:48:54,950 --> 00:48:56,733
モラル・ハザードのために

757
00:48:56,733 --> 00:48:59,203
銀行部門が救済されないとなれば、

758
00:48:59,340 --> 00:49:04,684
デフレと不況をなお回避できるのは中央銀行である。

759
00:49:04,684 --> 00:49:05,994
この目的のために

760
00:49:05,994 --> 00:49:09,358
中央銀行は通貨供給量を増やすことができる。

761
00:49:11,000 --> 00:49:12,477
中央銀行は、

762
00:49:12,477 --> 00:49:14,831
単に民間部門から資産を購入し、

763
00:49:14,831 --> 00:49:17,906
新たに創造された信用を使って支払いをするだけで

764
00:49:17,906 --> 00:49:19,972
いつでも無制限に国の経済の

765
00:49:19,975 --> 00:49:23,337
通貨量を増やすことができる。

766
00:49:24,700 --> 00:49:26,980
たとえば日銀は

767
00:49:27,010 --> 00:49:28,841
不動産を購入して

768
00:49:28,850 --> 00:49:31,200
これを公園にすることができる。

769
00:49:31,450 --> 00:49:35,440
ここに、３つの問題を一気に解決する機会があります。

770
00:49:35,690 --> 00:49:37,680
国の経済は信用創造を必要とし、

771
00:49:37,930 --> 00:49:40,389
銀行は不良債権をなくす必要があります。

772
00:49:40,625 --> 00:49:43,489
そして不動産部門には取引が必要です。

773
00:49:43,850 --> 00:49:47,380
そのために中央銀行が紙幣を印刷し、

774
00:49:48,120 --> 00:49:49,849
銀行から土地を購入して、

775
00:49:49,849 --> 00:49:51,637
それを公園に変えれば、

776
00:49:51,637 --> 00:49:53,695
日本人の生活の質の向上という

777
00:49:53,695 --> 00:49:55,944
今ひとつの問題も解決されるのです。

778
00:49:57,100 --> 00:49:59,281
たとえ日銀が後日これらの公園を

779
00:49:59,281 --> 00:50:02,249
経費のほんの一部にあたる額で売却したとしても、

780
00:50:02,249 --> 00:50:04,393
日銀はなお通貨を創造したことになる。

781
00:50:04,760 --> 00:50:06,863
これは、そもそも日銀に

782
00:50:06,863 --> 00:50:10,230
通貨を創造する費用がまったくかからないためだ。

783
00:50:11,880 --> 00:50:14,791
国の経済に通貨を注入するための今ひとつの選択肢は、

784
00:50:14,791 --> 00:50:16,837
量的緩和だ。

785
00:50:18,840 --> 00:50:21,753
これらの選択肢がすべて使用できるにもかかわらず、

786
00:50:21,753 --> 00:50:24,370
日銀はあらゆる段階で

787
00:50:24,370 --> 00:50:28,437
危機を解決したであろう政策の実施を拒んだ。

788
00:50:30,200 --> 00:50:32,700
私が1992年からその翌年にかけて

789
00:50:32,950 --> 00:50:34,800
日銀に客員研究員として在籍していた時、

790
00:50:35,050 --> 00:50:38,600
この不況はほんとうに悪化に向かっていると確信しました。

791
00:50:38,850 --> 00:50:42,800
そこで日銀の人に誰と話ができるか尋ねようとしました。

792
00:50:43,050 --> 00:50:46,216
なぜもっと通貨を印刷しないのかが疑問だったのです。

793
00:50:46,926 --> 00:50:49,337
この問題についてとてもオープンな人に会って話をすると、

794
00:50:49,337 --> 00:50:50,529
その人は言いました。

795
00:50:50,556 --> 00:50:53,827
「リチャード、確かに我々はもっと多くの通貨を印刷することができたよ。

796
00:50:53,827 --> 00:50:56,230
我々は経済の回復を創出することができたはずだ。

797
00:50:56,230 --> 00:50:58,355
だがその場合、何も変わらなかったことになるだろう。

798
00:50:58,355 --> 00:51:00,493
日本の経済構造は変わらなかったことになる。」

799
00:51:00,844 --> 00:51:03,370
それでその時には、私にはまだ日銀が

800
00:51:03,370 --> 00:51:06,385
まさかあまりにも大それた構造変革を成し遂げるために、

801
00:51:06,385 --> 00:51:09,220
本気で不景気をわざと引き延ばしているとは

802
00:51:09,220 --> 00:51:11,182
信じることができませんでした。

803
00:51:13,000 --> 00:51:16,850
塩川正十郎 (まさじゅうろう) 財務大臣は、日銀に対して

804
00:51:16,927 --> 00:51:20,800
デフレを止めるか、少なくともデフレと闘う手助けをするよう求めました。

805
00:51:21,050 --> 00:51:24,156
経済を刺激し長期の不況を終わらせるために

806
00:51:24,156 --> 00:51:26,816
もっと多くの通貨を創造してほしいとの

807
00:51:26,816 --> 00:51:29,750
政府、蔵相、総理大臣の要求に、

808
00:51:29,750 --> 00:51:32,400
日本銀行は一貫して盾を突いた。

809
00:51:34,600 --> 00:51:35,544
時に日銀は

810
00:51:35,544 --> 00:51:39,500
国の経済を流通する通貨量を積極的に削減する施策さえ行ったので、

811
00:51:39,750 --> 00:51:41,975
不況はさらに悪化した。

812
00:51:48,320 --> 00:51:52,320
日銀の論法はいつも最後に同じ結論で締めくくられる。

813
00:51:52,570 --> 00:51:54,634
つまり、非難されるべきであるのは

814
00:51:54,650 --> 00:51:56,680
日本の経済構造なのだ。

815
00:52:00,160 --> 00:52:02,103
日銀の職員達の論法によると、

816
00:52:02,201 --> 00:52:04,250
大幅な金融緩和は

817
00:52:04,375 --> 00:52:06,806
「構造調整の進捗がさらに遅れ」

818
00:52:06,806 --> 00:52:10,800
「害になりかねない」とさえいうのだ。

819
00:52:17,800 --> 00:52:20,580
戦後初期の日本の指導者たちは

820
00:52:20,740 --> 00:52:23,100
自分たちが戦時経済を運営していることを知っていたが、

821
00:52:23,350 --> 00:52:26,200
政治的な理由からそれを語らなかった。

822
00:52:28,510 --> 00:52:30,627
冷戦期の政治宣伝では、

823
00:52:30,627 --> 00:52:32,310
戦後の日本は

824
00:52:32,394 --> 00:52:36,560
アメリカ型の政治・経済体制を採用したといわれていた。

825
00:52:39,500 --> 00:52:41,424
本当のことを言いたくなかった

826
00:52:41,424 --> 00:52:43,300
戦後初期の指導者達は、

827
00:52:43,550 --> 00:52:45,534
奇跡の日本経済の起源について

828
00:52:45,534 --> 00:52:47,670
公にできない彼らの秘密を

829
00:52:47,670 --> 00:52:49,982
語らずに世を去った。

830
00:52:52,320 --> 00:52:54,840
1980年代から1990年代にかけて

831
00:52:54,924 --> 00:52:57,450
日本を統治したのは、

832
00:52:57,700 --> 00:52:59,201
自国の経済の真の性格と

833
00:52:59,201 --> 00:53:01,765
本来望まれる目的を理解していない世代に属する

834
00:53:01,765 --> 00:53:03,250
官僚・政治家たちだった。

835
00:53:05,400 --> 00:53:07,950
このような世代の日本のエコノミスト達が丸ごと

836
00:53:07,972 --> 00:53:10,187
米国に送り出され、

837
00:53:10,201 --> 00:53:14,729
アメリカ型経済の分野で博士や経営大学院修士となった。

838
00:53:19,240 --> 00:53:21,648
彼らが学んだ新古典経済学の前提によると、

839
00:53:21,650 --> 00:53:24,638
経済体制には一種類のシステムしか存在しない。

840
00:53:24,887 --> 00:53:27,207
つまり何の緩和策もない純然たる自由市場、

841
00:53:27,207 --> 00:53:31,186
株主と中央銀行家が最高の支配者として君臨する自由市場だ。

842
00:53:31,918 --> 00:53:35,724
多くの日本のエコノミストが、すばやく米国のエコノミストの議論をうのみにし、

843
00:53:35,724 --> 00:53:37,840
受け売りでそれを繰り返すようになった。

844
00:53:43,720 --> 00:53:49,700
大蔵省の解体

845
00:53:50,000 --> 00:53:54,500
(ニュース) 日米保険協議が火曜日に2日間の日程を終了しました。

846
00:53:54,750 --> 00:53:56,800
大手生命保険会社と

847
00:53:57,050 --> 00:54:00,100
それ以外の大手保険会社、

848
00:54:00,350 --> 00:54:04,520
それに大蔵省の既得権を制するためには、

849
00:54:04,539 --> 00:54:09,821
第1次産業部門の規制緩和が必要です。

850
00:54:11,680 --> 00:54:14,400
これらの当事者は12月15日以前に合意に達する必要があります。

851
00:54:14,650 --> 00:54:17,772
この日以後、米国は貿易制裁を課す恐れがあります。

852
00:54:18,220 --> 00:54:22,348
アナリストたちが予想する主な解決の鍵は、不動産の証券化です。

853
00:54:22,798 --> 00:54:25,320
詳細についてリチャード・ヴェルナーに聞きます。

854
00:54:25,350 --> 00:54:28,400
意味のある証券化を行うには、規制緩和が必要です。

855
00:54:28,650 --> 00:54:31,300
これはすでにご質問への答えになります。

856
00:54:31,550 --> 00:54:34,575
規制緩和を達成するためには、大蔵省の権限を

857
00:54:34,624 --> 00:54:36,700
縮小しなければなりませんが、

858
00:54:36,950 --> 00:54:39,880
大蔵省がこれに抵抗していたことは明らかです。

859
00:54:40,720 --> 00:54:42,474
1980年代に

860
00:54:42,474 --> 00:54:45,243
名声ある大蔵省の名刺を持って

861
00:54:45,243 --> 00:54:47,767
自己紹介することのできた者たちは、

862
00:54:47,767 --> 00:54:51,679
沈黙のうちにも深い畏怖と尊敬の念から人々を嘆息させた。

863
00:54:54,000 --> 00:54:57,150
ところが1990年代の中頃から人々の態度が変わり、

864
00:54:57,150 --> 00:54:59,125
大半のオブザーバーには

865
00:54:59,125 --> 00:55:01,050
大蔵省が不況を起こしたことは

866
00:55:01,050 --> 00:55:04,548
ほとんど疑いないと思われた。

867
00:55:07,000 --> 00:55:10,441
大蔵省の庁舎の外では

868
00:55:10,450 --> 00:55:14,100
しばしば官僚たちの行動に嫌気がさした市民達がデモを行った。

869
00:55:17,440 --> 00:55:19,194
1998年初め、

870
00:55:19,194 --> 00:55:21,725
検察官が初めて日本の省庁の中で

871
00:55:21,725 --> 00:55:25,180
最大の実力をもつ省を強制捜索した。

872
00:55:26,200 --> 00:55:28,105
銀行と金融当局の両者が

873
00:55:28,105 --> 00:55:30,846
彼らがとった行動に対して厳しい批判を受けた。

874
00:55:31,490 --> 00:55:35,244
大蔵省の官僚と銀行家達の間に存在した非公式のつながりの一部が

875
00:55:35,244 --> 00:55:38,124
スキャンダルで浮き彫りにされた。

876
00:55:40,200 --> 00:55:41,920
多くの銀行員とともに

877
00:55:41,950 --> 00:55:43,760
一部の大蔵省官僚さえ

878
00:55:43,795 --> 00:55:46,000
逮捕、収監され、

879
00:55:46,250 --> 00:55:48,500
数人の自殺者がでた。

880
00:55:53,920 --> 00:55:57,200
中央銀行家・白川方明 (しらかわ・まさあき) はこう説明した。

881
00:55:57,450 --> 00:56:01,487
「関連するあらゆる個々の経済主体の

882
00:56:01,487 --> 00:56:04,640
既得権益に関係しているので、

883
00:56:04,703 --> 00:56:08,391
制度の枠組みを変えて構造改革を推進するのは

884
00:56:08,391 --> 00:56:11,664
容易ではありません。」

885
00:56:15,284 --> 00:56:17,887
日銀副総裁・山口泰（やまぐち・ゆたか）は

886
00:56:17,887 --> 00:56:19,792
こう語った。

887
00:56:21,250 --> 00:56:23,881
日銀は金融緩和によって

888
00:56:23,881 --> 00:56:27,915
差し迫ったリスクの緩和が生じるというディレンマに直面し、

889
00:56:29,336 --> 00:56:30,924
その結果

890
00:56:30,924 --> 00:56:34,422
究極的な解決策の採用を遅らせることになった。」

891
00:56:48,600 --> 00:56:51,200
1990年代以降、

892
00:56:51,450 --> 00:56:55,000
政府は大蔵省の権力構造の多くの部分を

893
00:56:55,000 --> 00:56:57,250
解体し始めた。

894
00:56:57,500 --> 00:56:59,928
他方で、日本銀行の影響力は

895
00:56:59,930 --> 00:57:02,464
著しく増大した。

896
00:57:03,360 --> 00:57:06,350
(ニュース) つい先日あなたが書いていたことですが、

897
00:57:06,350 --> 00:57:07,758
あなたにとっては

898
00:57:07,794 --> 00:57:10,469
「日本銀行が大蔵省から切り離されて独立し、

899
00:57:10,469 --> 00:57:11,924
他国の中央銀行と

900
00:57:11,924 --> 00:57:14,911
対等の立場に置かれることは疑いない」とのことですね。

901
00:57:14,911 --> 00:57:16,787
なぜそれほど確かなのですか。

902
00:57:16,870 --> 00:57:19,846
大蔵省は少なくとも法的には

903
00:57:19,846 --> 00:57:23,142
日銀を統制してきたのですが、

904
00:57:23,142 --> 00:57:25,434
すっかり信用を失ってしまいました。

905
00:57:25,530 --> 00:57:28,124
大蔵省が現在非難されているのは、

906
00:57:28,124 --> 00:57:29,680
バブルを創出し

907
00:57:29,688 --> 00:57:32,050
不況を長引かせた責任を問われ、

908
00:57:32,050 --> 00:57:36,196
他にも多くの問題が最近日本で起こっているためです。

909
00:57:36,618 --> 00:57:38,613
ところが日銀のほうは、

910
00:57:38,613 --> 00:57:41,453
これまでずっと国民の批判の眼差しを浴びないまま、

911
00:57:41,453 --> 00:57:43,922
今度はこれを利用して、こう言おうとしています。

912
00:57:43,922 --> 00:57:45,800
そうだよね、大蔵省は悪かった。

913
00:57:45,800 --> 00:57:48,524
だから私たちには今や独立することが必要なのです。

914
00:57:48,524 --> 00:57:50,253
リチャード、どうもありがとう。

915
00:57:50,419 --> 00:57:52,657
東京のジャーディン・フレミング証券会社の

916
00:57:52,657 --> 00:57:55,233
チーフ・エコノミスト、リチャード・ヴェルナーでした。

917
00:57:58,200 --> 00:57:59,494
1994年に

918
00:57:59,494 --> 00:58:02,160
日銀総裁の地位を退いて間もなく、

919
00:58:02,727 --> 00:58:04,317
三重野は

920
00:58:04,317 --> 00:58:07,105
あるキャンペーンに乗り出し

921
00:58:07,105 --> 00:58:10,134
さまざまな協会や利益団体に対して演説した。

922
00:58:11,950 --> 00:58:15,000
彼は日銀法を変えるよう働き掛けた。

923
00:58:15,250 --> 00:58:18,300
彼の論法は、日銀が間違った政策を取るよう

924
00:58:18,300 --> 00:58:21,600
大蔵省が圧力をかけた、と

925
00:58:21,663 --> 00:58:23,880
微妙にほのめかすものだった。

926
00:58:26,000 --> 00:58:28,500
将来このような問題を回避するうえで、

927
00:58:28,750 --> 00:58:32,960
日銀は完全な合法的独立を承認される必要があるというのだ。

928
00:58:36,000 --> 00:58:37,600
三重野によれば、

929
00:58:37,850 --> 00:58:40,113
中央銀行を独立させることは、

930
00:58:40,150 --> 00:58:44,321
歴史によって育まれた人類の智慧を反映するものだった。

931
00:58:46,600 --> 00:58:50,740
1998年、通貨政策は

932
00:58:50,740 --> 00:58:53,923
新たに独立した日銀の手に委ねられた。

933
00:58:56,000 --> 00:58:58,906
ではあなたは、政治家もエコノミストも

934
00:58:58,906 --> 00:59:01,381
もっと多くの通貨を創造するよう日銀に圧力を

935
00:59:01,381 --> 00:59:03,744
さらにもっとかけるべきだというのですね。

936
00:59:03,951 --> 00:59:06,781
でも多くの評論家は、それは中央銀行の独立に

937
00:59:06,781 --> 00:59:09,700
干渉することだというでしょう。

938
00:59:09,950 --> 00:59:11,760
その点をどう考えますか？

939
00:59:12,010 --> 00:59:13,540
まさにその通りです。

940
00:59:13,790 --> 00:59:16,205
これは中央銀行の独立に干渉することであり、

941
00:59:16,205 --> 00:59:18,576
まさに我々が必要としている事柄なのです。

942
00:59:22,400 --> 00:59:27,400
政治体制の変革

943
00:59:28,000 --> 00:59:31,800
バブルがはじけた後に続いた数多くのスキャンダルも

944
00:59:32,430 --> 00:59:34,970
自由民主党による1955年体制を

945
00:59:34,970 --> 00:59:37,644
破滅させることになった。

946
00:59:40,500 --> 00:59:42,390
かつての体制では

947
00:59:42,390 --> 00:59:46,500
政治家は異なる政策を掲げて角逐を演じることはなかった。

948
00:59:46,750 --> 00:59:49,300
政策は官僚が作り、

949
00:59:49,356 --> 00:59:53,225
政治家は公共事業で地方の支持基盤をなだめることに

950
00:59:53,225 --> 00:59:55,555
専念していたにすぎない。

951
00:59:59,100 --> 01:00:00,700
1997年10月には

952
01:00:00,950 --> 01:00:03,878
戦後史で初めて

953
01:00:03,878 --> 01:00:07,040
経済を刺激するためのすべての政策構想が、

954
01:00:07,480 --> 01:00:10,667
官僚ではなく政治家によって出された。

955
01:00:15,300 --> 01:00:17,496
次いで2001年初め

956
01:00:17,550 --> 01:00:21,000
新しいタイプの政治家が権力の座に押し上げられた。

957
01:00:21,720 --> 01:00:25,963
(ニュース) 小泉純一郎が次期総理の本命馬として現れ、人気を博していることから、

958
01:00:25,963 --> 01:00:27,887
日本国債市場は

959
01:00:27,887 --> 01:00:30,324
今月最大の反騰を示しました。

960
01:00:30,491 --> 01:00:33,793
小泉純一郎が総理大臣となった。

961
01:00:35,200 --> 01:00:38,100
彼の人気と政策は、しばしば

962
01:00:38,350 --> 01:00:41,320
マーガレット・サッチャーやロナルド・レーガンにたとえられた。

963
01:00:42,300 --> 01:00:44,355
小泉の政策スローガンは単純なものだった。

964
01:00:44,355 --> 01:00:47,320
「構造改革なくして経済回復なし」

965
01:00:54,000 --> 01:00:56,800
2001年のジェノヴァ・サミットで彼は言った。

966
01:00:57,050 --> 01:01:00,874
「改革せず景気が先だと言って

967
01:01:00,874 --> 01:01:03,300
景気が回復したら、

968
01:01:03,308 --> 01:01:07,162
改革する意欲がなくなってしまう。

969
01:01:07,732 --> 01:01:09,387
だから

970
01:01:09,387 --> 01:01:11,743
「構造改革なくして成長なし」

971
01:01:11,743 --> 01:01:15,520
という方針通り選挙後もやっていこうと思っている。」

972
01:01:18,560 --> 01:01:20,246
2001年の一年間、

973
01:01:20,310 --> 01:01:24,290
「構造改革なくして経済成長なし」のスローガンが

974
01:01:24,290 --> 01:01:26,553
日本の各テレビ局で

975
01:01:26,553 --> 01:01:29,280
ほとんど毎日放送された。

976
01:01:30,200 --> 01:01:30,450
.

977
01:01:32,850 --> 01:01:33,100
.

978
01:01:36,750 --> 01:01:37,000
.

979
01:01:38,950 --> 01:01:39,200
.

980
01:01:43,010 --> 01:01:43,260
.

981
01:01:45,650 --> 01:01:45,900
.

982
01:01:48,050 --> 01:01:48,300
.

983
01:01:55,000 --> 01:01:58,120
今や誰もが構造改革が必要だと信じています。

984
01:01:58,370 --> 01:02:00,608
経済回復のためには、日本型資本主義を

985
01:02:00,608 --> 01:02:02,818
廃棄する必要があります。なぜでしょうか。

986
01:02:03,000 --> 01:02:05,123
あらゆる政策を試みても、どれも

987
01:02:05,123 --> 01:02:07,260
うまくいかなかったようです。

988
01:02:07,290 --> 01:02:10,443
だから悪いのは日本式の経済体制で、

989
01:02:10,443 --> 01:02:12,893
これとは縁を切ったほうがよいというわけです。

990
01:02:13,164 --> 01:02:17,760
経済の改革

991
01:02:18,010 --> 01:02:20,440
日本はその経済体制を

992
01:02:20,690 --> 01:02:23,200
アメリカ型市場経済に切り替えつつあった。

993
01:02:23,450 --> 01:02:25,000
そのことはまた、

994
01:02:25,250 --> 01:02:27,000
経済の中心が、

995
01:02:27,430 --> 01:02:30,169
銀行から株式市場に移されつつあることを意味した。

996
01:02:32,300 --> 01:02:35,440
預金者を誘惑して銀行預金を

997
01:02:35,483 --> 01:02:38,100
危険な株式市場に投資させようと、

998
01:02:38,100 --> 01:02:41,575
改革論者達はあらゆる銀行の預金保証を撤回し、

999
01:02:41,750 --> 01:02:45,300
税制面のインセンティブで株式投資を優遇した。

1000
01:02:47,840 --> 01:02:50,840
アメリカ型株主資本主義が広まると、

1001
01:02:51,110 --> 01:02:53,239
失業者数が大幅に増え、

1002
01:02:53,577 --> 01:02:56,510
所得と富の格差が拡大した。

1003
01:02:56,794 --> 01:02:59,900
自殺と暴力犯罪件数も増加した。

1004
01:03:03,400 --> 01:03:05,000
次いで2002年、日銀は

1005
01:03:05,250 --> 01:03:09,720
銀行がバランスシートを悪化させ、借手に担保権を行使せざるをえなくなるよう

1006
01:03:09,970 --> 01:03:12,880
努力を強化した。

1007
01:03:14,316 --> 01:03:16,504
この時まで柳沢伯夫(やなぎさわ・はくお)

1008
01:03:16,504 --> 01:03:18,641
金融相は、日銀が吹き込んだ

1009
01:03:18,641 --> 01:03:20,660
銀行への税金投入の提案に

1010
01:03:20,660 --> 01:03:22,672
抵抗を続けていた。

1011
01:03:25,544 --> 01:03:27,772
これによって銀行を事実上国有化して

1012
01:03:27,772 --> 01:03:29,636
経営を引き継ぎ、

1013
01:03:29,636 --> 01:03:32,667
企業に融資の支払いを要求する権限を利用すれば、

1014
01:03:32,917 --> 01:03:37,137
多数の大企業の倒産の引き金が引かれる。

1015
01:03:40,320 --> 01:03:44,320
柳沢氏は、正式に総理大臣によって罷免され、

1016
01:03:44,570 --> 01:03:47,000
竹中平蔵と交替した。

1017
01:03:47,250 --> 01:03:50,900
竹中は、借手の抵当流れを増やす

1018
01:03:50,908 --> 01:03:53,317
日本銀行の計画の支持者だった。

1019
01:03:53,732 --> 01:03:57,137
竹中氏は、銀行を国有化できるようにするため、

1020
01:03:57,250 --> 01:04:01,240
銀行のバランスシートを劇的に悪化させるための政策を

1021
01:04:01,393 --> 01:04:04,900
実施しようとしていました。

1022
01:04:07,120 --> 01:04:09,252
竹中は銀行政策を監視する

1023
01:04:09,252 --> 01:04:11,480
作業部会を任命したが、

1024
01:04:11,730 --> 01:04:14,800
これには2人の前日銀職員が含まれていた。

1025
01:04:15,050 --> 01:04:17,288
その一人、木村剛(きむら・たけし)は、

1026
01:04:17,290 --> 01:04:21,000
会計方針の変更を実施することをただちに要求した。

1027
01:04:21,250 --> 01:04:24,300
これを実施すれば銀行のバランスシートが悪化し、

1028
01:04:24,330 --> 01:04:27,120
国有化は避けられないことになる。

1029
01:04:28,400 --> 01:04:31,200
東京の著名なエコノミスト森永卓郎は、力説した。

1030
01:04:31,450 --> 01:04:35,900
日銀が吹き込んだ竹中の提案には

1031
01:04:36,150 --> 01:04:39,200
本来のうま味はあまりない。

1032
01:04:41,100 --> 01:04:42,744
ところがその代わりに、

1033
01:04:42,744 --> 01:04:45,655
不良資産の購入を専門とする米国ハゲタカファンドを

1034
01:04:45,655 --> 01:04:48,163
主に利することになるのだ。

1035
01:04:50,200 --> 01:04:52,907
これらのファンドが直面した困難は、

1036
01:04:52,930 --> 01:04:57,820
20万件を上回る倒産があるにもかかわらず、

1037
01:04:57,820 --> 01:04:59,900
関心の対象となるほどの大きな企業は

1038
01:04:59,908 --> 01:05:02,682
ほとんど倒産しないことだった。

1039
01:05:08,500 --> 01:05:12,900
木村と福井が倒産計画に対する支援を表明した際、

1040
01:05:13,150 --> 01:05:15,937
木村は、不良資産の証券化のアドバイスを行う

1041
01:05:15,937 --> 01:05:19,730
民間企業を経営し、

1042
01:05:20,128 --> 01:05:23,750
福井は、世界最大のハゲタカファンド事業主の一つである

1043
01:05:23,750 --> 01:05:24,905
ウォールストリートの投資会社、

1044
01:05:24,905 --> 01:05:28,486
ゴールドマンサックスのアドバイザーだった。

1045
01:05:29,560 --> 01:05:30,441
福井氏、

1046
01:05:30,441 --> 01:05:34,508
また福井氏に助言を与える三重野氏と、三重野氏に助言を与える前川氏、

1047
01:05:34,508 --> 01:05:35,470
お判りでしょう、

1048
01:05:35,470 --> 01:05:38,918
これらの人たちが私が著作で述べている日銀のプリンスの一部です。

1049
01:05:39,560 --> 01:05:42,804
記録によると、1980年代と90年代に彼らは

1050
01:05:42,804 --> 01:05:45,700
金融政策の目標が何だと言ったでしょうか？

1051
01:05:45,700 --> 01:05:47,484
経済構造を変えることです。

1052
01:05:47,484 --> 01:05:50,934
ではどうやってそれをするのか。そう、それには危機が必要なのです。

1053
01:05:50,934 --> 01:05:53,579
そしてそれこそが、彼らが実際にした仕事なのです。

1054
01:05:53,579 --> 01:05:56,200
リチャード、時間がありません。ここで打ち切ります。

1055
01:05:56,250 --> 01:05:58,999
内部告発者

1056
01:06:02,350 --> 01:06:02,600
.

1057
01:06:04,600 --> 01:06:04,850
.

1058
01:06:07,100 --> 01:06:07,350
.

1059
01:06:08,850 --> 01:06:09,100
.

1060
01:06:12,150 --> 01:06:12,400
.

1061
01:06:17,800 --> 01:06:18,050
.

1062
01:06:21,350 --> 01:06:21,600
.

1063
01:06:26,544 --> 01:06:27,930
日本銀行では

1064
01:06:27,930 --> 01:06:30,955
窓口指導による銀行の貸出割当に責任を負う部署を

1065
01:06:30,955 --> 01:06:32,900
営業局といった。

1066
01:06:33,150 --> 01:06:35,720
では誰がこの局を任されていたか？

1067
01:06:35,720 --> 01:06:37,422
バブル期の1986年から1989年にかけて

1068
01:06:37,422 --> 01:06:39,760
営業局のトップにあったのは

1069
01:06:40,010 --> 01:06:41,600
福井俊彦氏でした。

1070
01:06:41,850 --> 01:06:44,322
現在日銀総裁の福井氏が

1071
01:06:44,322 --> 01:06:48,282
バブルを創った人物なのです。

1072
01:06:49,100 --> 01:06:52,250
日銀総裁になったとき、

1073
01:06:52,500 --> 01:06:54,000
福井はよくこう言った。

1074
01:06:54,250 --> 01:06:56,800
「古い成長モデルを破壊して

1075
01:06:57,050 --> 01:07:00,240
新しい時代に合ったモデルをつくっているところです。」

1076
01:07:04,200 --> 01:07:07,050
あらゆる点で彼らは成功しました。

1077
01:07:07,300 --> 01:07:10,000
彼らの目標のリストをご覧になると、

1078
01:07:10,250 --> 01:07:12,650
目標をすべて達成しています。

1079
01:07:12,900 --> 01:07:16,000
つまり、― 大蔵省を破壊し分割する

1080
01:07:16,250 --> 01:07:19,350
独立の監督官庁 [金融庁] を手に入れる

1081
01:07:19,600 --> 01:07:22,594
日銀法を改正して

1082
01:07:22,594 --> 01:07:26,000
日銀の独立そのものの達成する

1083
01:07:26,250 --> 01:07:30,250
製造業からサービス業へ融資の重点を移し

1084
01:07:30,500 --> 01:07:33,750
深層から経済構造が変わるよう工作する

1085
01:07:34,000 --> 01:07:36,179
無差別に市場開放と規制緩和を行い、

1086
01:07:36,436 --> 01:07:38,560
片っ端から一切合財を

1087
01:07:38,560 --> 01:07:40,560
自由化し私有化する.

1088
01:07:41,200 --> 01:07:42,700
1920年代には

1089
01:07:42,950 --> 01:07:46,600
日本の経済は多くの点で今日の米国経済と似ていた。

1090
01:07:46,850 --> 01:07:49,700
競争は激しく、強引なやり方で雇用と解雇が行われ、

1091
01:07:49,950 --> 01:07:52,500
大企業は乗っ取り合戦を繰り広げた...

1092
01:07:52,750 --> 01:07:54,500
官僚による統制はほとんどなく、

1093
01:07:54,750 --> 01:07:57,200
強力な株主達が高配当を要求し、

1094
01:07:57,450 --> 01:08:00,362
企業の資金は、銀行からではなく、市場から調達された。

1095
01:08:00,702 --> 01:08:02,967
だが戦後期を通じて

1096
01:08:02,967 --> 01:08:06,155
日本経済はこれとはまったく逆だった ―

1097
01:08:06,584 --> 01:08:10,910
官僚による高度の統制下で、競争はカルテルによって制限され、

1098
01:08:10,910 --> 01:08:13,165
融資は銀行によって行われ、株は持ち合いだった。

1099
01:08:13,518 --> 01:08:15,762
株主の力は弱められ、

1100
01:08:15,762 --> 01:08:19,465
企業の乗っ取りは皆無で、労働市場は凍結して

1101
01:08:19,471 --> 01:08:23,399
終身雇用と年功序列の社会がそこにあった。

1102
01:08:26,120 --> 01:08:30,600
不況を終わらせ業績を改善するため、

1103
01:08:30,767 --> 01:08:32,956
日本は福祉資本主義から

1104
01:08:32,956 --> 01:08:35,880
株主資本主義に戻らなければならないと主張された。

1105
01:08:36,300 --> 01:08:37,808
それにもかかわらず、

1106
01:08:37,808 --> 01:08:41,160
なぜ貿易収支が従来一貫して大幅な黒字であり続けた国が、

1107
01:08:41,182 --> 01:08:43,234
さらに競争力をつけるため

1108
01:08:43,234 --> 01:08:46,390
経済体制を変える必要があるのか、

1109
01:08:46,390 --> 01:08:49,700
依然として分からなかった。

1110
01:08:51,000 --> 01:08:56,600
東南アジア危機

1111
01:09:04,000 --> 01:09:07,830
日本は、1990年代に世界大恐慌以来の

1112
01:09:07,830 --> 01:09:09,772
最も深刻な不況を経験したアジアで

1113
01:09:09,772 --> 01:09:13,587
唯一の高パフォーマンス経済国ではなかった。

1114
01:09:20,000 --> 01:09:24,868
1997年、東南アジアで急激な成長を遂げた「タイガー」諸国の通貨は、

1115
01:09:24,868 --> 01:09:28,772
米国ドルとの固定為替相場を維持することができなかった。

1116
01:09:29,240 --> 01:09:33,934
これらの通貨は1年以内に60～80パーセント暴落した。

1117
01:09:37,520 --> 01:09:41,520
この値崩れの原因は1993年にさかのぼる。

1118
01:09:42,640 --> 01:09:44,580
この年、

1119
01:09:44,580 --> 01:09:48,520
アジアのタイガー経済国である韓国、タイ、インドネシアは、

1120
01:09:48,770 --> 01:09:52,899
資本勘定と国際金融機関の設立に関する規制について

1121
01:09:53,149 --> 01:09:56,513
強引な緩和政策を実施した。

1122
01:09:56,881 --> 01:09:59,346
これによって企業部門と銀行部門は

1123
01:09:59,346 --> 01:10:02,396
海外から自由に融資を受けることができるようになった。

1124
01:10:02,950 --> 01:10:04,832
これが可能になったのは

1125
01:10:04,832 --> 01:10:07,631
戦後期になって初めてのことだった。

1126
01:10:15,100 --> 01:10:19,050
実際には、アジアのタイガー経済国が海外から資金を借りる必要は

1127
01:10:19,050 --> 01:10:21,400
まったくなかった。

1128
01:10:21,650 --> 01:10:24,253
国内投資に必要なすべての資金は

1129
01:10:24,253 --> 01:10:26,503
自国で創造することができた。

1130
01:10:27,840 --> 01:10:30,600
実際には、資本移動の自由化は

1131
01:10:30,760 --> 01:10:33,332
海外からの圧力によるものだった。

1132
01:10:36,000 --> 01:10:37,600
1990年代の初期から、

1133
01:10:37,850 --> 01:10:41,760
IMF、世界貿易機関、米国財務省が

1134
01:10:42,010 --> 01:10:44,200
これらの国々に働きかけて

1135
01:10:44,450 --> 01:10:47,600
国内企業が海外から借金することを認めさせたのだ。

1136
01:10:49,200 --> 01:10:52,246
この3者は、新古典主義経済学が

1137
01:10:52,246 --> 01:10:55,760
自由市場と自由な資本移動によって経済成長が達せられることを

1138
01:10:55,782 --> 01:10:57,851
証明したと主張した。

1139
01:11:01,000 --> 01:11:04,320
ひとたび資本勘定が規制緩和された時点で、

1140
01:11:04,570 --> 01:11:07,840
中央銀行は国内企業が外国から融資を受けるよう、

1141
01:11:08,090 --> 01:11:10,160
逆らいがたいインセンティを創出する仕事に取り掛かった。

1142
01:11:11,200 --> 01:11:13,700
自国通貨で借り入れると

1143
01:11:13,950 --> 01:11:16,303
米国ドルよりも

1144
01:11:16,332 --> 01:11:18,800
高くつくようにしたのだ。

1145
01:11:20,100 --> 01:11:23,500
(世界銀行・河合正弘氏) 国内の実勢金利は

1146
01:11:23,611 --> 01:11:27,239
米国ドルの金利よりも高く、

1147
01:11:28,000 --> 01:11:32,500
為替レートは事実上固定されていました。

1148
01:11:33,320 --> 01:11:35,522
為替レートを維持すると言ったのは

1149
01:11:35,522 --> 01:11:37,368
政府と中央銀行でした。

1150
01:11:37,652 --> 01:11:39,539
その通りです。タイ中央銀行と

1151
01:11:39,539 --> 01:11:42,870
他の東アジア諸国の中央銀行は、

1152
01:11:42,870 --> 01:11:46,900
為替レートの調整に抵抗しました。

1153
01:11:47,150 --> 01:11:49,600
為替レートを守るという信号を

1154
01:11:49,677 --> 01:11:52,391
発信しようとしました。

1155
01:11:57,500 --> 01:12:00,944
中央銀行は、公式声明で

1156
01:12:01,570 --> 01:12:05,727
米国ドルとの固定為替相場を維持することを強調した。

1157
01:12:06,750 --> 01:12:10,120
借手が、当初借りたよりも多くを自国通貨で

1158
01:12:10,120 --> 01:12:12,698
返さなければならなくなる心配を

1159
01:12:12,698 --> 01:12:14,899
無用にするためだ。

1160
01:12:19,489 --> 01:12:21,314
タイにいた時、私は

1161
01:12:21,314 --> 01:12:23,404
まっすぐタイ銀行に行って尋ねました。

1162
01:12:23,404 --> 01:12:26,390
「非公式に信用を指導する仕組みが何かありますか？」

1163
01:12:26,390 --> 01:12:28,598
私がこれを尋ねると驚いていましたが、

1164
01:12:28,598 --> 01:12:30,550
自分が日本にいた時の研究から、

1165
01:12:30,550 --> 01:12:33,828
ことによると、何か似たものがあるだろうと思いました。

1166
01:12:34,620 --> 01:12:35,410
私の質問に答えたのは

1167
01:12:35,410 --> 01:12:36,286
若い職員で、

1168
01:12:36,286 --> 01:12:39,234
どんな政略が関係しているか承知していなかったかも知れませんが、

1169
01:12:39,234 --> 01:12:43,100
彼は言いました。「ええ、ええ、その信用の仕組みは私たちの銀行にあります。」

1170
01:12:45,289 --> 01:12:48,301
銀行は貸出を増やすよう命じられていたが、

1171
01:12:48,301 --> 01:12:50,268
生産部門の借入需要が

1172
01:12:50,268 --> 01:12:53,594
少なくなっているという事態に直面していた。

1173
01:12:53,594 --> 01:12:55,953
この部門の企業が、海外からの借入の

1174
01:12:55,953 --> 01:12:58,748
インセンティブを与えられていたためだ。

1175
01:13:00,200 --> 01:13:02,879
このため銀行は、最後の手段として

1176
01:13:02,879 --> 01:13:06,466
リスクの高い借手への貸出を増やさなければならなかった。

1177
01:13:10,620 --> 01:13:12,686
中央銀行が

1178
01:13:12,686 --> 01:13:16,750
自国通貨を米国ドルに固定することに同意したため、

1179
01:13:16,750 --> 01:13:18,276
輸入が縮小し始め、

1180
01:13:18,324 --> 01:13:20,800
経済競争力が低下した。

1181
01:13:21,863 --> 01:13:25,168
ところが国際収支統計で輸出として勘定される国外債によって

1182
01:13:25,168 --> 01:13:27,560
これらの国々の経常収支は

1183
01:13:27,560 --> 01:13:30,520
維持されていた。

1184
01:13:37,000 --> 01:13:38,525
投機家が

1185
01:13:38,525 --> 01:13:43,310
タイバーツ、韓国ウォン、インドネシア・ルピーを売り始めると、

1186
01:13:43,712 --> 01:13:45,182
各国の中央銀行は

1187
01:13:45,182 --> 01:13:47,225
固定相場を維持しようとして

1188
01:13:47,225 --> 01:13:50,134
外貨準備を事実上すべて使い果たすに至ったが、

1189
01:13:50,141 --> 01:13:52,710
これは無益な試みとなった。

1190
01:13:54,960 --> 01:13:57,306
このため海外の資金提供者に

1191
01:13:57,306 --> 01:14:02,412
為替相場が割高となっているタイミングで資金を回収する機会をたっぷりと与えることになった。

1192
01:14:04,100 --> 01:14:07,317
これらの国々の中央銀行は、外貨準備を使い果たした場合、

1193
01:14:07,317 --> 01:14:08,987
債務不履行を避けるため

1194
01:14:08,987 --> 01:14:12,112
IMFの援助を求めなければならなくなることを心得ていた。

1195
01:14:13,900 --> 01:14:15,800
一たびIMFが関与すると

1196
01:14:16,050 --> 01:14:17,600
ワシントンを本拠とするこの機関が何を要求するか、

1197
01:14:17,850 --> 01:14:20,613
中央銀行は知っていた。

1198
01:14:21,450 --> 01:14:23,496
過去30年の間、

1199
01:14:23,496 --> 01:14:26,265
このような場合同じことが要求されてきた。

1200
01:14:26,950 --> 01:14:30,768
それは中央銀行の独立だった。

1201
01:14:33,100 --> 01:14:35,000
7月16日、

1202
01:14:35,250 --> 01:14:38,300
タイの財務大臣が日本に緊急援助を求めるため

1203
01:14:38,550 --> 01:14:40,900
空路で東京にやって来た。

1204
01:14:45,640 --> 01:14:50,703
この時、日本には2,130億ドルの外貨準備高があった。

1205
01:14:52,987 --> 01:14:55,674
これはIMFの資金の総額を上回る。

1206
01:14:57,690 --> 01:14:59,117
日本側は援助を厭(いと)わなかった。

1207
01:14:59,117 --> 01:15:02,251
ところがワシントンは日本が主導権を発揮しようとするのを阻止した。

1208
01:15:02,350 --> 01:15:05,240
アジアの通貨危機の発生に対するどのような解決策も、

1209
01:15:05,248 --> 01:15:08,527
IMFを介してワシントンから提示されなければならなかった。

1210
01:15:13,000 --> 01:15:15,600
(ニュース) 2か月にわたる投機攻撃の後

1211
01:15:15,656 --> 01:15:18,561
タイ政府はバーツを変動相場制に切り替えました。

1212
01:15:24,800 --> 01:15:27,900
通貨救済に乗り出すIMF

1213
01:15:28,150 --> 01:15:29,875
現在に至るまでIMFは

1214
01:15:29,875 --> 01:15:31,611
多くの難問をかかえる

1215
01:15:31,611 --> 01:15:34,218
タイ、インドネシア、韓国の経済に対して

1216
01:15:34,218 --> 01:15:37,180
ほぼ1200億ドルの援助を約束しています。

1217
01:15:37,400 --> 01:15:40,600
危機に見舞われた国々にやって来るとすぐに

1218
01:15:40,691 --> 01:15:44,900
IMFチームは中央銀行の内部にオフィスを設置し、

1219
01:15:46,825 --> 01:15:51,100
そこから、降伏条件に等しい事柄が何であるかを指図した。

1220
01:15:53,930 --> 01:15:57,166
IMFは、中央銀行と銀行による信用創造に対する制限、

1221
01:15:57,173 --> 01:15:59,722
大規模な法改正、金利の急激な

1222
01:15:59,722 --> 01:16:01,614
引き上げを含む

1223
01:16:01,614 --> 01:16:05,144
一連の政策を要求した。

1224
01:16:08,280 --> 01:16:10,286
金利が引き上げられると、

1225
01:16:10,286 --> 01:16:13,686
高リスクの借手達が債務の履行を怠り始めた。

1226
01:16:16,600 --> 01:16:19,500
タイ、韓国、インドネシアの銀行制度は

1227
01:16:19,556 --> 01:16:22,987
大量の不良債権に悩み、

1228
01:16:22,987 --> 01:16:25,300
事実上破綻した。

1229
01:16:26,120 --> 01:16:28,531
さらに銀行ばかりか、健全な企業でさえ

1230
01:16:28,531 --> 01:16:31,343
ますます信用が収縮することから苦しみ始め、

1231
01:16:31,343 --> 01:16:33,951
企業の倒産が急増した。

1232
01:16:34,215 --> 01:16:38,350
失業率は、1930年代以来、最高の水準に上昇した。

1233
01:16:44,400 --> 01:16:47,806
(ニュース) 経済の不調に悩む国々の救済でIMFが果たす役割が、

1234
01:16:47,822 --> 01:16:49,768
激しい論争の対象となっています。

1235
01:16:49,963 --> 01:16:52,224
IMFはアジア経済危機を悪化させていると

1236
01:16:52,224 --> 01:16:53,675
非難する人々もいます。

1237
01:16:53,815 --> 01:16:57,575
(マハティール首相) たとえマレーシアの経済を破壊しなければならないとしても、

1238
01:16:57,575 --> 01:17:00,549
彼らはそれを、自分たちが正しいことを証明するために行うでしょう。

1239
01:17:00,549 --> 01:17:02,124
IMFは役に立ちませんでした。

1240
01:17:03,413 --> 01:17:04,556
IMFは

1241
01:17:04,556 --> 01:17:07,631
その政策の結果がどのようなものとなるかをよく知っていた。

1242
01:17:08,302 --> 01:17:09,965
韓国の場合、

1243
01:17:10,153 --> 01:17:13,906
IMFは非公開の詳細な研究を準備し、

1244
01:17:13,950 --> 01:17:16,493
金利が5％まで上昇した場合

1245
01:17:16,493 --> 01:17:19,206
韓国企業の倒産が何件になるか

1246
01:17:19,206 --> 01:17:22,280
計算していた。

1247
01:17:24,100 --> 01:17:27,050
IMFの韓国との最初の合意では

1248
01:17:27,050 --> 01:17:32,080
金利をちょうど5％上げることが要求された。

1249
01:17:35,200 --> 01:17:37,972
明らかにIMFの政策の狙いは、アジア諸国の

1250
01:17:38,050 --> 01:17:41,100
経済の回復を創出することではありません。

1251
01:17:41,239 --> 01:17:44,199
まったく別の隠れた意図を達成しようとしています。

1252
01:17:44,199 --> 01:17:46,974
それは、これらの国々の経済・政治・社会体制を

1253
01:17:46,974 --> 01:17:48,689
変えることなのです。

1254
01:17:48,960 --> 01:17:52,501
実のところIMFの取引条件だと、韓国、タイのような国は、

1255
01:17:52,501 --> 01:17:55,324
通貨供給を再び拡大させることができなくなります。

1256
01:17:55,441 --> 01:17:58,739
では経済危機をますます悪化させていると。う～ん、面白いですね。

1257
01:17:58,739 --> 01:18:00,646
しかもIMFには隠れた意図があるというのですね。

1258
01:18:00,646 --> 01:18:03,687
そうですね、それほど隠されているというわけではありませんが。

1259
01:18:03,687 --> 01:18:05,887
IMFは、銀行から土地に至るまで

1260
01:18:05,887 --> 01:18:08,829
海外の事業者が何でも購入できるよう、

1261
01:18:08,829 --> 01:18:13,931
法律を変更しなければならないと、アジアの国々に明らかに要求しているわけですから。

1262
01:18:14,519 --> 01:18:18,782
また実のところ、IMFの取引条件に従えば、銀行業界の資本構成の変更は

1263
01:18:18,782 --> 01:18:20,889
外貨を使うことによってしか

1264
01:18:20,889 --> 01:18:22,279
行えません。

1265
01:18:22,470 --> 01:18:24,844
ところが、これはまったく必要のないことです。

1266
01:18:24,844 --> 01:18:27,299
なぜならば、これらの国に中央銀行がある限り、

1267
01:18:27,356 --> 01:18:30,922
紙幣を印刷しさえすれば銀行業界の資本構成を変更できるのですから。

1268
01:18:30,922 --> 01:18:33,153
この目的のために外貨は必要ありません。

1269
01:18:33,298 --> 01:18:38,655
ですからIMFの意図は、明らかにアジアを海外事業者の権益のために強引に抉じ開けようという算段なのです。

1270
01:18:40,400 --> 01:18:44,341
IMFは、経営難の銀行を救済せず、

1271
01:18:44,853 --> 01:18:49,400
その代わりに閉鎖して、不良資産として安く売り払うよう要求した。

1272
01:18:49,650 --> 01:18:52,200
それもしばしば大手の米国投資銀行に売却せよというのだ。

1273
01:18:53,320 --> 01:18:55,810
(ニュース) タイで起った好ましい結末の一つは、

1274
01:18:55,810 --> 01:18:59,250
金融会社56社の主要な資産が

1275
01:18:59,250 --> 01:19:01,400
競売に出されることです。

1276
01:19:01,650 --> 01:19:03,900
あなたの考えでは

1277
01:19:04,600 --> 01:19:07,412
その56社の一部のオーナーには

1278
01:19:07,412 --> 01:19:10,400
資産を買い戻すことが許されると思いますか？

1279
01:19:11,500 --> 01:19:13,255
IMFは、ほとんどの場合

1280
01:19:13,255 --> 01:19:16,550
銀行が海外投資家に売却されなければならないことを

1281
01:19:16,550 --> 01:19:17,791
同意書に明記するよう

1282
01:19:17,791 --> 01:19:19,575
指図した。

1283
01:19:23,920 --> 01:19:26,717
(ルービン米財務長官)　財政の安定を回復するうえで

1284
01:19:26,717 --> 01:19:30,220
これらの改革プログラムが確かな鍵になることを

1285
01:19:30,250 --> 01:19:32,200
強調したいと思います。

1286
01:19:32,450 --> 01:19:34,500
(ニュース) 初めて韓国は、

1287
01:19:34,550 --> 01:19:36,800
IMFの指図に応じる大きな歩みとして

1288
01:19:36,850 --> 01:19:40,200
5つの銀行を閉鎖しました。

1289
01:19:41,522 --> 01:19:44,860
銀行の閉鎖や

1290
01:19:44,860 --> 01:19:47,132
合併と買収の結果、

1291
01:19:47,201 --> 01:19:49,753
都市銀行の数が減り、

1292
01:19:49,891 --> 01:19:54,510
海外の戦略的投資家が一般受けしています。

1293
01:19:54,553 --> 01:19:57,619
これは注目に値する変化です。

1294
01:20:02,800 --> 01:20:06,620
アジアでは、政府が経済不振に陥った金融機関を生かすために

1295
01:20:06,620 --> 01:20:08,514
緊急援助を行うことは

1296
01:20:08,514 --> 01:20:10,508
認められなかった。

1297
01:20:11,300 --> 01:20:13,524
ところがこの一年後に同様の危機が

1298
01:20:13,524 --> 01:20:15,700
アメリカ本国を襲った時、

1299
01:20:15,700 --> 01:20:19,680
同じ機関がとった対応はこれとは異なるものだった。

1300
01:20:21,320 --> 01:20:27,320
ロングターム・キャピタル・マネジメントの救済

1301
01:20:28,080 --> 01:20:30,355
コネチカット州に本拠を置くヘッジファンド、

1302
01:20:30,355 --> 01:20:32,494
ロングターム・キャピタル・マネジメントは

1303
01:20:32,494 --> 01:20:34,748
富裕な個人と機関だけを顧客とし、

1304
01:20:34,748 --> 01:20:38,398
顧客から50億ドルを集めて

1305
01:20:38,565 --> 01:20:42,301
25倍のレバレッジを効かせ

1306
01:20:42,301 --> 01:20:44,900
世界の銀行から

1307
01:20:44,910 --> 01:20:47,808
1,000億ドルを超える資金を借りて

1308
01:20:47,808 --> 01:20:50,596
運用を行っていた。

1309
01:20:53,600 --> 01:20:56,360
損失が出て、融資を行った銀行を

1310
01:20:56,360 --> 01:20:58,900
徐々に根底から揺るがせる兆候があらわれ、

1311
01:20:59,660 --> 01:21:02,212
これらが互いに連動して米国の金融システムと

1312
01:21:02,212 --> 01:21:04,405
経済が危機にさらされる恐れが生じると、

1313
01:21:04,694 --> 01:21:08,282
米国連邦準備銀行はデフォルトを避けるため

1314
01:21:08,512 --> 01:21:10,955
ウォールストリートと国際銀行に頼って

1315
01:21:10,977 --> 01:21:12,743
カルテルと同様の

1316
01:21:12,743 --> 01:21:16,165
緊急援助のしくみを編成した。

1317
01:21:19,000 --> 01:21:22,187
おっしゃる通り、確かにワシントンとニューヨークの物の見方は

1318
01:21:22,318 --> 01:21:24,789
どのようにも融通のつく代物に思えますね。

1319
01:21:24,998 --> 01:21:28,122
アジア諸国に「金融機関の救済はしない」ようにと言って

1320
01:21:28,122 --> 01:21:31,331
まもなくしてニューヨークのヘッジファンドの

1321
01:21:31,331 --> 01:21:33,209
ロング・ターム・キャピタル・マネージメントが

1322
01:21:33,209 --> 01:21:35,694
ほとんど破綻状態になると、

1323
01:21:35,694 --> 01:21:38,200
すぐに救済の仕組みが組織された。

1324
01:21:38,450 --> 01:21:41,642
これはアジア諸国に対して言ったことと矛盾しています。

1325
01:21:41,819 --> 01:21:46,040
(アジア開発銀行・吉富勝氏) でも公的資金はこのヘッジファンドの救済に使わなかったと言っていますね。

1326
01:21:46,290 --> 01:21:50,900
よく知られているように、打ち合わせは連邦準備銀行の内部で行われたのです。

1327
01:21:52,200 --> 01:21:55,600
なぜアメリカは、自国の領土内では

1328
01:21:55,608 --> 01:21:58,296
同じルールを施行するつもりはないのに、

1329
01:21:58,698 --> 01:22:00,837
自由市場の名において

1330
01:22:00,837 --> 01:22:04,550
外国に負担となる要求を課すのだろうか？

1331
01:22:05,500 --> 01:22:08,724
日本とアジアの危機の例は

1332
01:22:08,850 --> 01:22:11,840
どのようにすれば経済的所有権の再分配が促進され、

1333
01:22:12,090 --> 01:22:15,713
法律、経済構造、政治が変革されるよう

1334
01:22:15,750 --> 01:22:19,911
危機を工作することができるかを説明している。

1335
01:22:22,100 --> 01:22:24,250
今日では、これらと同様の出来事が

1336
01:22:24,250 --> 01:22:26,579
ユーロ圏エリアに起り、その影響が広まっている。

1337
01:22:26,655 --> 01:22:32,000
欧州債務危機

1338
01:22:32,320 --> 01:22:35,533
ユーロ通貨圏の国々には

1339
01:22:35,570 --> 01:22:38,680
自国の通貨を使用する権利がなく、

1340
01:22:38,930 --> 01:22:42,100
通貨発行権は欧州中央銀行に委譲されている。

1341
01:22:42,500 --> 01:22:44,696
(ニュース) スタジオにリチャード・ヴェルナーさんがお越しです。

1342
01:22:44,696 --> 01:22:46,767
英国サウサンプトン大学で教授を務められています。

1343
01:22:46,863 --> 01:22:50,215
欧州中央銀行に対するあなたのアドバイスは？

1344
01:22:50,215 --> 01:22:54,800
明日会議が開かれますが、あなたならばどんな発言をするでしょうか。

1345
01:22:56,120 --> 01:23:00,170
そうですね、この場合もやはり、金利よりも信用創造量に重点を置いて

1346
01:23:00,200 --> 01:23:02,320
取り組まないといけません。

1347
01:23:02,570 --> 01:23:06,644
欧州中央銀行には、過去の誤りから学ばなければならない多くの事柄があります。

1348
01:23:06,644 --> 01:23:09,772
なぜならば、過去において信用創造をほんとうに十分注意して

1349
01:23:09,772 --> 01:23:11,518
観察したとは思えないからです。

1350
01:23:11,629 --> 01:23:15,200
スペイン、アイルランドでは、欧州中央銀行の監視のもとで

1351
01:23:15,201 --> 01:23:17,789
大幅な信用の拡大 [=金融緩和] が行われました。

1352
01:23:20,740 --> 01:23:22,320
金利はもちろんユーロ圏と同じですが、

1353
01:23:22,320 --> 01:23:24,960
信用サイクルの量がとても異なっています。

1354
01:23:25,210 --> 01:23:28,194
ユーロ使用地域の金利は同一ですが、

1355
01:23:28,194 --> 01:23:31,375
2002年に、欧州中央銀行はドイツ連邦銀行に対して

1356
01:23:31,375 --> 01:23:33,667
史上最大額の信用収縮を指図し、

1357
01:23:34,584 --> 01:23:37,184
アイルランド中央銀行にはまるで将来を気遣う必要がないかのように、

1358
01:23:37,212 --> 01:23:39,108
紙幣を印刷するよう指図しました。

1359
01:23:39,108 --> 01:23:40,877
そうすると何が起こるでしょうか。

1360
01:23:40,877 --> 01:23:43,637
金利が同じだから、成長も同じ？ 違います。

1361
01:23:43,651 --> 01:23:47,741
ドイツは不況になり、アイルランドは突然好景気にわきました。

1362
01:23:50,100 --> 01:23:53,823
2004年から、欧州中央銀行の監視下で

1363
01:23:54,182 --> 01:23:57,944
アイルランド、ギリシア、ポルトガル、スペインでは1年に20％の割合で

1364
01:23:57,944 --> 01:24:01,367
銀行の信用創造が増加し、

1365
01:24:01,367 --> 01:24:03,965
不動産価格が急騰した。

1366
01:24:05,960 --> 01:24:08,650
銀行の貸出額が減少すると、

1367
01:24:08,650 --> 01:24:10,800
不動産価格が暴落して

1368
01:24:10,800 --> 01:24:12,320
住宅開発業者が破産した。

1369
01:24:12,570 --> 01:24:15,440
アイルランド、ポルトガル、スペイン、ギリシアの

1370
01:24:15,440 --> 01:24:17,313
銀行業界は支払不能となった。

1371
01:24:19,300 --> 01:24:22,213
欧州中央銀行は、これらの国々のバブルを防ぐことができた。

1372
01:24:22,767 --> 01:24:26,510
バブル後の銀行経営と経済の危機を終わらせることもできた。

1373
01:24:27,050 --> 01:24:28,925
だが各主権国家が、

1374
01:24:28,925 --> 01:24:32,188
欧州連合に財政権限と予算権を委譲するなどの

1375
01:24:32,188 --> 01:24:35,840
大きな政治的譲歩を行うまで、

1376
01:24:35,840 --> 01:24:38,362
これを行うことは拒否された。

1377
01:24:42,000 --> 01:24:44,375
スペインとギリシアの両国では

1378
01:24:44,375 --> 01:24:47,358
若年層の失業が50％にまで達し、

1379
01:24:47,484 --> 01:24:50,865
多くの若者が海外に職を求めざるをえなかった。

1380
01:24:51,212 --> 01:24:55,560
ギリシアの納税者が教育費を支払ったギリシア人医師たちが

1381
01:24:55,560 --> 01:24:57,304
現在ではドイツで働いている。

1382
01:25:00,700 --> 01:25:05,300
欧州中央銀行の決定機関の審議は、秘密である。

1383
01:25:05,550 --> 01:25:08,641
単に民主的な公開討論会や議論などによって

1384
01:25:08,650 --> 01:25:12,313
欧州中央銀行に影響力を行使しようとすることも、

1385
01:25:12,350 --> 01:25:16,000
マーストリヒト条約によって禁じられている。

1386
01:25:17,600 --> 01:25:19,563
欧州中央銀行は、

1387
01:25:19,563 --> 01:25:22,584
個々の国家の法律と司法の権限外の、

1388
01:25:22,584 --> 01:25:25,524
上位に位置する国際機関なのだ。

1389
01:25:27,050 --> 01:25:30,000
上級職員は外交パスポートを携帯し、

1390
01:25:30,250 --> 01:25:34,637
欧州中央銀行内部のファイルと文書は

1391
01:25:34,750 --> 01:25:36,917
いかなる警察権力も検事も

1392
01:25:36,917 --> 01:25:40,080
調査や押収を行うことができない。

1393
01:25:43,840 --> 01:25:46,748
エコノミストの間で、欧州中央銀行は

1394
01:25:46,750 --> 01:25:49,548
世界で最も大きな権限を持ち、透明性が最も少ない

1395
01:25:49,550 --> 01:25:52,200
銀行の一つとしてよく知られている。

1396
01:25:52,600 --> 01:25:54,541
それにもかかわらず前総裁を務めた

1397
01:25:54,550 --> 01:25:56,246
ジャン-クロード・トリシェの

1398
01:25:56,246 --> 01:25:59,203
この問題に対する取扱いは、単に問題はないと主張して

1399
01:25:59,203 --> 01:26:01,960
押し通したにすぎなかった。

1400
01:26:03,800 --> 01:26:06,967
「欧州中央銀行は、世界で最も透明な

1401
01:26:06,967 --> 01:26:09,371
中央銀行の一つであり、

1402
01:26:09,490 --> 01:26:11,779
この領域で最先端の中央銀行制度を

1403
01:26:11,779 --> 01:26:14,332
定義するうえで一役買ってきた...」

1404
01:26:14,339 --> 01:26:16,272
彼はそう言い張った。

1405
01:26:18,280 --> 01:26:21,600
世界経済フォーラム - ダヴォス、スイス

1406
01:26:21,638 --> 01:26:23,998
エコノミストのリチャード・ヴェルナーです。

1407
01:26:23,998 --> 01:26:25,892
トリシェ氏に質問します。

1408
01:26:29,240 --> 01:26:30,462
お尋ねしたいのは、

1409
01:26:30,593 --> 01:26:33,449
マーストリヒト条約または欧州中央銀行定款のどこに、

1410
01:26:33,449 --> 01:26:35,496
欧州中央銀行の仕事は、構造改革

1411
01:26:35,496 --> 01:26:39,400
または他の何らかの政治課題を支援することだと述べられているのでしょうか。

1412
01:26:39,800 --> 01:26:43,248
私は非常に明確に申しましたし、我々は常にたいへん明確に述べていたことですが、

1413
01:26:43,248 --> 01:26:46,475
この領域で私達は、過去において何ら責任を負っていませんでした。

1414
01:26:47,360 --> 01:26:49,500
我々には考えがあり、それを発言します。

1415
01:26:51,272 --> 01:26:54,232
たぶん、暮らし向きがもっと良くなることを、我々の側から

1416
01:26:54,232 --> 01:26:58,229
一般の人々に対して説明するうえで、一役買うことができるとすれば、

1417
01:26:58,229 --> 01:27:01,236
ヨーロッパがこの構造改革の実施に乗り出すための

1418
01:27:01,236 --> 01:27:03,927
助けとなることでしょう。

1419
01:27:06,550 --> 01:27:08,164
これはたいへん重要なことで

1420
01:27:08,164 --> 01:27:10,296
これについてはコンセンサスがあります。

1421
01:27:10,296 --> 01:27:12,750
経済状況の診断で、

1422
01:27:12,750 --> 01:27:14,375
この点について非常に多数の人々の

1423
01:27:14,375 --> 01:27:17,700
意見の一致があります。

1424
01:27:25,000 --> 01:27:26,332
欧州委員会は

1425
01:27:26,332 --> 01:27:28,672
投票による選出によらないメンバーから成り、

1426
01:27:28,672 --> 01:27:32,224
統一国家に付き物のあらゆるものを具えたヨーロッパ合衆国を築くことを

1427
01:27:32,224 --> 01:27:33,851
狙いとする集団だ。

1428
01:27:34,522 --> 01:27:37,941
この委員会の関心は、欧州の個々の政府を弱体化し、

1429
01:27:37,941 --> 01:27:41,420
民主的な議会の影響力を弱めることにある。

1430
01:27:45,000 --> 01:27:50,598
マーストリヒト条約で頼みの綱だった中央銀行の独立を擁護する証拠は、

1431
01:27:50,598 --> 01:27:53,165
結局、他ならぬ欧州委員会自体が委託した、

1432
01:27:53,165 --> 01:27:54,922
たった一つの研究から

1433
01:27:54,922 --> 01:27:57,960
引き出されたものだったことが分かる。

1434
01:27:58,850 --> 01:28:02,900
1992年に『一つの市場、一つの通貨』という表題で公刊されたこの研究は、

1435
01:28:03,150 --> 01:28:05,300
中央銀行を独立させれば

1436
01:28:05,315 --> 01:28:09,200
インフレが低くなることを証明しようとしたものだ。

1437
01:28:11,243 --> 01:28:15,182
この研究は、以来、オックスフォード大学の研究者、ジェームズ・フォーダーが、

1438
01:28:15,182 --> 01:28:16,689
望まれる結果を得るための

1439
01:28:16,689 --> 01:28:18,455
誤魔化 (ごまか) しであったことを

1440
01:28:18,455 --> 01:28:20,561
証明して現在に及んでいる。

1441
01:28:22,000 --> 01:28:24,790
私たちが聞かされている中央銀行の話は

1442
01:28:24,790 --> 01:28:27,550
つじつまが合いません。

1443
01:28:27,599 --> 01:28:31,805
中央銀行の働きが、彼らが私たちに信じてほしいものと異なる

1444
01:28:31,805 --> 01:28:34,203
証拠があるのです。

1445
01:28:35,840 --> 01:28:38,245
世界中に存在する中央銀行がもつ権限は、

1446
01:28:38,258 --> 01:28:41,703
大きな影響を与えるにもかかわらず、ほとんど理解されていない。

1447
01:28:42,731 --> 01:28:46,130
中央銀行は、しばしば独立し、責任を負わず、目立たない。

1448
01:28:46,213 --> 01:28:48,272
陰で運営が行われているが、

1449
01:28:48,625 --> 01:28:51,200
その行動は私たちすべてに影響をおよぼす。

1450
01:28:53,400 --> 01:28:56,448
世界のほとんどすべての国にある中央銀行と

1451
01:28:56,450 --> 01:28:59,993
IMFは、これを達成するうえで多くの貢献をしました。

1452
01:29:00,050 --> 01:29:02,200
完全に独立し、

1453
01:29:02,236 --> 01:29:04,570
事実上いかなる民主的な機関に対しても

1454
01:29:04,570 --> 01:29:06,320
責任を負いません。

1455
01:29:06,618 --> 01:29:08,383
議会に対する責任は

1456
01:29:08,383 --> 01:29:11,551
通常大きなものではなく、事実上意味がありません。

1457
01:29:12,200 --> 01:29:14,181
日本銀行にせよ、

1458
01:29:14,181 --> 01:29:17,240
米国連邦準備銀行、イギリス銀行にせよ、

1459
01:29:17,240 --> 01:29:19,000
欧州中央銀行にせよ、

1460
01:29:19,000 --> 01:29:21,968
中央銀行の誤魔化しの例は山ほどある。

1461
01:29:23,600 --> 01:29:26,000
米国では、1920年代に

1462
01:29:26,250 --> 01:29:28,456
銀行が通貨を創造して

1463
01:29:28,456 --> 01:29:31,737
これを投機家に提供することが奨励された結果

1464
01:29:31,737 --> 01:29:34,820
不況が起った。

1465
01:29:34,820 --> 01:29:36,934
これによって自由を愛するアメリカ市民が説得され、

1466
01:29:36,934 --> 01:29:38,777
強力な国家統制が行われない

1467
01:29:38,777 --> 01:29:40,977
分権的な連邦制度ではうまく行かないと

1468
01:29:40,977 --> 01:29:42,503
考えられるようになった。

1469
01:29:45,800 --> 01:29:49,000
1990年代に日本人が説得されたのは、

1470
01:29:49,770 --> 01:29:51,629
それまで少なからぬ繁栄と平等をもたらしていた

1471
01:29:51,629 --> 01:29:54,144
日本の経済体制が、

1472
01:29:54,167 --> 01:29:56,652
いわゆる自由市場経済体制への変革を

1473
01:29:56,652 --> 01:29:58,462
必要とすることだった。

1474
01:30:00,400 --> 01:30:03,993
中央銀行家達は、日本の変革がまだ完了しないうちに

1475
01:30:04,186 --> 01:30:06,900
再び攻撃を仕掛け、IMFの先導によって

1476
01:30:06,936 --> 01:30:10,770
アジアのタイガー経済国に侵入した。

1477
01:30:15,600 --> 01:30:18,520
現在の欧州債務危機は、

1478
01:30:18,550 --> 01:30:22,400
中央銀行の誤魔化しの今ひとつの例だ。

1479
01:30:24,000 --> 01:30:25,805
構造改革が必要だとする

1480
01:30:25,805 --> 01:30:28,100
民意を形成するため

1481
01:30:28,100 --> 01:30:30,615
故意に不景気を創り出し、

1482
01:30:30,615 --> 01:30:33,280
そのうえ不必要にこれを長引かせることは、

1483
01:30:33,530 --> 01:30:36,830
権力の乱用とされるのでなければならない。

1484
01:30:39,800 --> 01:30:43,382
一般の人々は、これほど犠牲の大きな不正直なやり方で

1485
01:30:43,382 --> 01:30:47,395
巧みに操られ、踊らされることを本当に望んでいるでしょうか？

1486
01:30:49,484 --> 01:30:53,477
字幕 　阿呆神望 　(シャンティ・フーラ： https://shanti-phula.net/ja/ )