0:00:02.800,0:00:08.900 これは中央銀行がもつ支配力をテーマとする映画である。 0:00:09.960,0:00:13.720 中央銀行は経済 政治 0:00:14.020,0:00:20.000 社会を変える権力をもつ。 0:00:20.430,0:00:25.320 それはこのようにして行われる... 0:00:29.440,0:00:34.440 パールハーバー - 1941年12月7日 0:00:51.020,0:00:56.920 リチャード・ヴェルナー教授の著書に基づく 0:00:59.320,0:01:05.590 帝国軍万歳!… 0:01:05.590,0:01:09.674 監督 マイケル・オズワルト 0:01:16.632,0:01:20.200 円の支配者 0:01:20.450,0:01:27.601 中央銀行と 経済の変革 0:01:39.740,0:01:42.438 私はアメリカ国旗に 0:01:42.440,0:01:46.400 忠誠を誓います 0:01:52.969,0:01:58.300 原子爆弾 0:02:13.450,0:02:18.880 アメリカ軍による占領 0:02:20.840,0:02:24.880 9時30分 横浜到着予定 0:02:25.900,0:02:29.220 当初の予定通り 0:02:29.570,0:02:31.840 上陸する 0:02:36.140,0:02:40.440 ダグラス・マッカーサー元帥が横浜に近い厚木海軍飛行場に到着したのは 0:02:40.700,0:02:44.680 1945年8月30日のことだった 0:02:47.000,0:02:49.520 航空機から現れたマッカーサーは 0:02:49.770,0:02:52.240 タラップを降りる前に立ち止まり 0:02:52.490,0:02:54.900 片手をポケットに入れ 0:02:55.150,0:02:57.920 コーンパイプをきつく咥えて 0:02:58.170,0:03:01.400 自分達が征服した地を見渡した 0:03:03.460,0:03:08.000 このポーズはカメラマンたちが様々なアングルから撮影し 0:03:08.250,0:03:12.600 各紙でこの好場面が何度も繰り返された 0:03:16.000,0:03:20.120 民主主義が日本人に植えつけられようとしていた 0:03:20.370,0:03:23.560 まるで初めて耳にする話であるかのように。 0:03:23.810,0:03:28.240 (ニュース) 問題は日本人の頭の中身だ 0:03:28.490,0:03:32.300 彼らの脳は私たち同様によく働くが 0:03:32.550,0:03:34.400 中身の良し悪しは 0:03:34.650,0:03:39.040 頭の中で考えていることによって決まるのだ 0:03:44.000,0:03:47.020 忠義なサムライを演じる歌舞伎は 0:03:47.270,0:03:49.520 禁止されるか 厳しい検閲を受けた 0:03:50.560,0:03:55.629 広島や長崎の原爆に関する本や映像も禁止 0:03:57.000,0:03:59.000 マッカーサーを風刺した漫画も禁じられた 0:03:59.250,0:04:03.977 占領軍による検閲に言及することも 厳格に禁止されていた 0:04:05.500,0:04:09.400 戦犯法廷:委員会は被告を有罪と判決し 0:04:09.650,0:04:13.040 絞首刑を宣告する 0:04:13.290,0:04:17.680 山下大将は裁判は公正だとして委員会に謝意を述べた 0:04:18.890,0:04:21.269 太平洋戦争の際首相だった 0:04:21.269,0:04:24.419 東条元帥は公判中次のように答えた 0:04:25.577,0:04:28.198 日本国の臣民(自分)が陛下のご意思に反して 0:04:28.205,0:04:30.920 かれこれすることはありえぬことであります 0:04:31.388,0:04:34.680 反対尋問は即座に打ち切られた 0:04:34.930,0:04:38.320 一週間後、東条は律儀に述べた 0:04:38.570,0:04:42.760 「天皇は常に平和を愛し平和を欲していた」 と。 0:04:43.010,0:04:45.440 (ニュース) 東条英機元帥は 0:04:45.690,0:04:49.216 戦争遂行の責任を負っていましたが、 0:04:49.216,0:04:52.771 天皇の戦争責任を免除するためできることは何でもしました 0:04:53.490,0:04:56.327 後にマッカーサーはアメリカ上院でこう述べた 0:04:56.507,0:04:59.171 「現代の文明から見ると 0:04:59.337,0:05:03.382 日本人は12歳の子供のようだ。」 0:05:12.000,0:05:14.500 あなたは知らないことに興味がおありですね 0:05:14.750,0:05:17.000 神秘的で説明のつかないことに興味がある 0:05:17.250,0:05:19.600 だからここにいる... 0:05:21.000,0:05:22.920 戦争が終わると 0:05:23.170,0:05:26.131 銀行の貸付状況は悪化していた。 0:05:26.850,0:05:30.140 銀行が保有する資産は、主に戦時国債と 0:05:30.390,0:05:32.960 戦争で破壊された諸産業への貸付金だった。 0:05:33.280,0:05:37.817 銀行部門自体が事実上破産していた。 0:05:40.040,0:05:43.493 この問題は日本銀行によって容易に解決された。 0:05:43.845,0:05:46.788 日本銀行は、銀行部門の不良債権を 0:05:46.788,0:05:49.126 新たに創造した準備金を使って 0:05:49.126,0:05:51.217 買取りさえすればよかった。 0:05:51.438,0:05:55.388 しばしば無価値となっていた資産と引き換えに良貨を与えたのである。 0:05:56.500,0:05:59.520 終戦後、まず2人の中央銀行総裁が、 0:05:59.770,0:06:02.697 アメリカ占領軍によって任命された。 0:06:04.240,0:06:07.608 最初に任命された日本銀行総裁は、 0:06:07.762,0:06:09.920 新木栄吉(あらき・えいきち)だった。 0:06:11.040,0:06:13.486 だがこのポストに就くとまもなく 0:06:13.486,0:06:16.840 新木は戦犯検事によって起訴され、 0:06:16.840,0:06:19.173 辞職しなければならなかった。 0:06:20.360,0:06:22.160 そして1951年、 0:06:22.410,0:06:27.131 公職にあった戦犯容疑者に対する大赦の後、 0:06:27.394,0:06:31.251 新木はアメリカ合衆国大使に任じられた。 0:06:31.750,0:06:35.540 1954年、大使としての職を辞して帰国すると 0:06:35.645,0:06:39.980 新木は再び中央銀行総裁の任につけられた。 0:06:44.000,0:06:47.500 1951年に行われた戦犯に対する特赦の後、 0:06:47.750,0:06:50.000 戦時中の官僚の多くが 0:06:50.100,0:06:53.260 戦争当時の地位に復帰した。 0:06:54.560,0:06:57.050 この中には戦時中の政治家や 0:06:57.300,0:06:59.840 内務省官僚の大半が含まれていた。 0:07:00.090,0:07:03.336 彼らは思想警察を統制していた者たちで 0:07:03.405,0:07:06.288 その多くが文部省に異動した。 0:07:06.586,0:07:09.782 アメリカ陸軍:極東の運命の鍵は日本だ 0:07:10.740,0:07:12.982 近代史の流れで今再び 0:07:13.859,0:07:17.436 この言葉が差し迫った現実味を帯びている 0:07:20.260,0:07:22.768 田園地域での騒乱を避けるうえで 0:07:22.768,0:07:25.393 これは中国共産党の助けとなった。 0:07:26.250,0:07:29.252 アメリカは大土地所有者から小作人への 0:07:29.252,0:07:32.360 土地の再分配に着手した。 0:07:33.750,0:07:35.149 財閥と呼ばれる 0:07:35.149,0:07:38.127 日本で影響力をもつ資本家エリート [支配層] は 0:07:38.127,0:07:40.851 犯罪的な戦争の支持者達として一掃され 0:07:40.921,0:07:44.296 ビジネスを続行することを禁じられた。 0:07:44.882,0:07:49.738 ドイツで戦争が行われた1930年代に改革主義派ファシスト官僚にも 0:07:49.738,0:07:52.986 実施できなかったファシスト政策を 0:07:52.986,0:07:55.655 アメリカ占領軍が達成したのです。 0:07:55.655,0:07:58.635 土地改革や財閥に対する政策もこれと同様でした。 0:07:58.717,0:08:01.402 そうですね、これは戦時中の日本のファシストたちと 0:08:01.402,0:08:06.718 米ニューディール政策推進者とのとてもこっけいな出会いですね。 0:08:10.560,0:08:16.460 占領終結後の政治体制 0:08:19.480,0:08:24.580 (ニュース) 国会、日本の衆参両議院の本拠 0:08:25.100,0:08:28.280 日本では、狂信的な学生と左翼グループが 0:08:28.530,0:08:30.250 数日間ぶっ続けで暴動を起こし、 0:08:30.500,0:08:33.700 アメリカとの相互防衛条約を阻止しようとしています。 0:08:33.950,0:08:36.823 社会党議員が国会自体の内部で騒動を起こしました。 0:08:36.823,0:08:38.825 警察は秩序を回復するため 0:08:38.825,0:08:41.597 社会党員をも強制退去させました。 0:08:50.440,0:08:52.792 (ニュース) 議長が演壇に連れていかれ、 0:08:52.792,0:08:55.522 条約を批准する国会の開会を宣言しました 0:08:57.760,0:08:59.260 1957年、 0:08:59.510,0:09:03.640 元A級戦犯容疑者の岸信介が 0:09:03.662,0:09:06.453 日本の首相になった。 0:09:08.740,0:09:11.340 彼は戦時中、 0:09:11.340,0:09:13.619 東条内閣の商務大臣だった。 0:09:14.214,0:09:15.983 その職責の範囲は 0:09:15.983,0:09:19.914 軍需品の調達から奴隷労働に及ぶものだった。 0:09:21.480,0:09:24.380 ヒットラーの戦時経済担当相だった 0:09:24.387,0:09:26.692 アルバート・シュピアが 0:09:26.770,0:09:31.799 ベルリンのシュパンダウ刑務所に収監されていた当時、 0:09:31.909,0:09:36.341 同じく戦時に日本で大臣を務めた人物が首相になったわけです。 0:09:36.760,0:09:40.520 岸は戦後、民主主義の擁護者となったが、 0:09:40.770,0:09:42.640 戦前と戦時中は 0:09:42.890,0:09:46.226 自分を国家社会主義者と名乗っていた。 0:09:48.280,0:09:50.424 暴力団からの資金、 0:09:50.495,0:09:52.202 企業からの出資、 0:09:52.280,0:09:54.198 CIAの裏金を使って 0:09:54.290,0:09:57.000 岸は自由民主党を 0:09:57.250,0:10:00.272 強力な政治装置に築き上げた。 0:10:02.080,0:10:03.442 日本では、 0:10:03.609,0:10:07.235 戦後の経済・政治の最も重要な指導者達の多くが 0:10:07.285,0:10:10.682 戦時中のエリート官僚グループの出身だった。 0:10:10.911,0:10:13.377 つまり日本を戦争へと追いやった同じ人々が 0:10:13.377,0:10:15.430 戦後の経済界、政界で 0:10:15.430,0:10:16.874 再び指導者となったのである。 0:10:17.117,0:10:18.816 自由民主党は 0:10:18.816,0:10:21.617 ほぼ40年の間、政権政党であり続けた。 0:10:25.540,0:10:29.300 (ニュース)アメリカの軍人さん達に日本語でお帰りなさい! 0:10:29.550,0:10:31.460 韓国での勤務期間を経て 0:10:31.710,0:10:34.500 兵士達は日本の基地に戻ろうとしています。 0:10:34.750,0:10:36.976 ほんのしばらく前まで彼らは 0:10:36.976,0:10:39.740 占領軍として駐留していました。 0:10:39.990,0:10:41.600 今度はどうやって戻ってきたかって? 0:10:41.850,0:10:45.355 兵士達は占領国の人々にどのように迎え入れられたでしょうか。 0:10:45.618,0:10:47.875 人々を支配する権力者としてではありません 0:10:48.270,0:10:49.600 敵対者としてでもありません 0:10:49.850,0:10:53.219 不信の目で見られ、恐れられ、腹立たしく思われる人達としてではなく 0:10:53.219,0:10:55.720 友人として迎えられたのです。 0:11:04.760,0:11:10.240 戦時経済体制 0:11:19.240,0:11:21.740 東京千代田区 0:11:21.990,0:11:25.120 大蔵省所在地 0:11:25.370,0:11:26.871 ここから 0:11:27.120,0:11:31.244 大蔵省は日本の経済生活の大抵の面で統制を行った。 0:11:31.950,0:11:35.080 大蔵省は最も大きな権限を持つ[br]省でした。 0:11:35.330,0:11:39.593 日本銀行は大蔵省の指示を仰がなければなりませんでした。 0:11:40.680,0:11:42.680 大蔵省官僚を見ると、人々は沈黙のうちに 0:11:42.930,0:11:47.352 深い畏怖と尊敬の念のあまり嘆息した。 0:11:47.830,0:11:50.505 大蔵省退職者は 0:11:50.505,0:11:55.280 公立・私立の公共機関の長として影響力のあるポストに就いた。 0:11:57.160,0:11:58.660 だがある分野で 0:11:58.910,0:12:01.760 大蔵省は実際には統制を行っていなかった。 0:12:02.010,0:12:06.000 それは信用創造の量とその配分である。 0:12:06.250,0:12:09.000 これを決定するのは日本の中央銀行、 0:12:09.250,0:12:11.000 つまり日本銀行だった。 0:12:12.720,0:12:14.720 日本銀行は、大蔵省、 0:12:14.873,0:12:17.303 国民、ジャーナリストに対してこう言いました。 0:12:17.303,0:12:20.360 「私どもは金利によって金融政策を実施します。」 0:12:20.610,0:12:23.000 いわば大蔵省は日銀の上に 「君臨」 し 0:12:23.250,0:12:25.540 日銀の金利政策に介入しましたが、 0:12:25.790,0:12:28.296 日銀による事実上の 「統治」 は、 0:12:28.296,0:12:30.893 金利という通貨の価値ではなく 0:12:30.922,0:12:33.840 通貨の量を手段として行われたのです。 0:12:34.090,0:12:35.740 窓口指導: 0:12:35.990,0:12:38.920 中央銀行が市中銀行に対して 0:12:38.921,0:12:43.960 信用創造の増加と信用の配分を指図するプロセス。 0:12:44.250,0:12:47.190 これは窓口指導と呼ばれ、次のようにして行われます。 0:12:47.190,0:12:49.300 日本銀行は、市中銀行に対して 0:12:49.300,0:12:53.877 次の四半期にいくら貸出さなければならないか、 0:12:53.961,0:12:57.482 しかも誰に、経済のどの部門に貸出さねばならないか指図しました。 0:12:57.551,0:12:59.950 これは信用配分であり、信用統制です。 0:13:00.303,0:13:03.734 日本銀行は、四半期毎にそれぞれの銀行に 0:13:03.948,0:13:05.785 貸出額について指示をだし、 0:13:05.902,0:13:09.441 貸出がどの産業部門に割り当てられるべきかを指導した。 0:13:10.000,0:13:13.427 貸出はすべて産業部門・下位部門に内訳され、 0:13:13.732,0:13:17.735 大口融資先はリストに名前を載せなければならなかった。 0:13:21.800,0:13:24.579 日銀は、どの事業が推奨されるべきか、 0:13:24.903,0:13:27.368 またどの事業が推奨されるべきでないか 0:13:27.520,0:13:28.762 決めることができた。 0:13:29.127,0:13:34.254 これは、銀行が誰に、何を目的として貸出を行うことができるかを指図することによって行われた。 0:13:35.227,0:13:37.400 これは消費財の生産に適合した 0:13:37.429,0:13:40.907 戦時経済の体制だった。 0:13:43.480,0:13:46.241 (ニュース) 日本の9千5百万の人々は、 0:13:46.250,0:13:49.936 今やアメリカ合衆国と西ヨーロッパの 0:13:49.936,0:13:53.806 最も繁栄した国々に次ぐ国民所得を得ています。 0:13:54.394,0:13:58.317 これは資本家・株主にとって望ましい体制ではありません。 0:13:58.565,0:14:02.456 ところが国民にとっては多くの富が創出されました。 0:14:02.635,0:14:06.951 所得と富の配分がきわめて均等で、 0:14:06.951,0:14:09.106 非常に高度に経済が成長しました。 0:14:09.106,0:14:12.124 生活の質と水準がたいへん急速に向上しました。 0:14:13.840,0:14:15.550 1959年だけでも 0:14:15.800,0:14:19.000 経済は17%成長した。 0:14:21.600,0:14:24.120 だが戦時経済体制の一つの結果として、 0:14:24.135,0:14:26.500 産業部門のすべてにおいて、 0:14:26.750,0:14:28.867 競争は利潤のために行われるのでなく、 0:14:28.867,0:14:31.280 マーケット・シェアを目標として行われた。 0:14:32.960,0:14:35.960 企業はマーケット・シェアを獲得するため 0:14:35.982,0:14:38.320 破産するまで戦おうとした。 0:14:40.600,0:14:43.000 間もなく人々はこの現象を認識して 0:14:43.290,0:14:45.400 「過当競争」と呼んだ。 0:14:46.000,0:14:50.925 この問題を解決したのは、あからさまか否かを問わず、カルテルの創出である。 0:14:55.100,0:14:57.000 銀行部門では、 0:14:57.220,0:15:00.984 窓口指導がカルテルを統制するしくみとなった。 0:15:01.365,0:15:04.395 何故ならば日銀は、銀行の貸出件数と貸出額を 0:15:04.395,0:15:07.937 指図することができたからだ。 0:15:08.794,0:15:11.658 この結果、戦後期を通じて銀行の格付は 0:15:11.658,0:15:15.339 合併後を除いて決して変化しなかった。 0:15:17.300,0:15:19.000 ある銀行家の言によると 0:15:19.250,0:15:21.665 「もし窓口指導がなかったとすれば 0:15:21.665,0:15:24.657 我々は腹切りをするまで競争していただろう。」 0:15:28.440,0:15:34.000 戦時経済と国際貿易 0:15:34.680,0:15:36.941 (ニュース) 米国の経常収支の赤字は 0:15:36.950,0:15:39.250 この9年間で最も大きくなっています。 0:15:39.500,0:15:43.560 この増加の大きさに多くのエコノミストが驚いています。 0:15:47.280,0:15:51.241 日本国内の競争はカルテルによって統制されていたが、 0:15:51.250,0:15:56.820 国際市場にはそのような制限がなかった。 0:15:58.000,0:16:00.627 日本企業はまもなく 0:16:00.627,0:16:03.667 世界の多くの市場で優勢となった。 0:16:07.100,0:16:09.549 米国では「日本の生産性 - 0:16:09.549,0:16:12.312 アメリカにとっての教訓」という議題で 0:16:12.312,0:16:15.270 公式の議会聴聞会がいくつも開かれた。 0:16:18.240,0:16:20.391 主要な経済理論が示すところによると、 0:16:20.393,0:16:23.640 成功することのできる市場は自由市場だけだ。 0:16:24.600,0:16:27.106 だが日本は数十年で 0:16:27.106,0:16:30.220 世界第2位の経済大国となった。 0:16:30.458,0:16:34.515 これは自由市場にはたらく「見えざる手」だけを頼みの綱としたのではなかった。 0:16:38.400,0:16:40.524 日本の戦後経済は 0:16:40.567,0:16:43.120 国民を総動員した戦時経済であり、 0:16:43.163,0:16:45.660 生産の対象が武器から 0:16:45.660,0:16:48.120 消費財に転換されたものだった。 0:16:51.000,0:16:55.700 「日銀は鎮守の森のように 0:16:55.701,0:17:00.150 静かで目立たないほうがいい。」 0:17:00.158,0:17:04.400 ( 一萬田尚登[いちまだ・ひさと]第18代日本銀行総裁) 0:17:14.250,0:17:19.098 日銀が自由市場の擁護者として自らをアピールしていたため、 0:17:19.348,0:17:22.760 窓口指導はきまりの悪い代物だった。 0:17:23.560,0:17:27.000 公式刊行物ではこれに言及することができないか、 0:17:27.250,0:17:30.410 信用統制は「自主的」に行われるものだと称して 0:17:30.410,0:17:33.240 その役割を軽く扱った。 0:17:35.160,0:17:38.275 大蔵省が日銀の信用創造と信用配分政策について 0:17:38.275,0:17:41.609 問い質(ただ)す時はいつも、 0:17:42.380,0:17:44.120 日銀の職員は、 0:17:44.120,0:17:46.968 専門家以外にはプロセスがわからないようにするため、 0:17:46.968,0:17:48.797 専門用語だらけの 0:17:48.797,0:17:51.965 複雑な議論をする習慣だった。 0:17:57.160,0:17:59.160 1965年11月、 0:17:59.410,0:18:04.670 第一回国債が市場に登場した。 0:18:04.690,0:18:05.812 これ以後 0:18:05.812,0:18:08.480 政治家たちが一層多くの資金を使いたい場合、 0:18:08.480,0:18:10.990 もはや日本銀行に圧力をかけるのではなく 0:18:11.487,0:18:14.979 大蔵省にかけたのだった。 0:18:16.250,0:18:19.475 ますます増える負債の山を最終的に統括するのは 0:18:19.475,0:18:23.100 大蔵省だった。 0:18:31.960,0:18:37.960 中央銀行家達による改革の要求 0:18:53.400,0:18:56.940 1980年代は、工業化社会で 0:18:57.160,0:18:59.480 金融緩和が行われた時期だった。 0:19:00.680,0:19:02.680 工業先進国の大半は、 0:19:02.930,0:19:06.113 資本の動きに対する制限を撤廃した。 0:19:08.000,0:19:09.500 日本では、 0:19:09.750,0:19:11.250 前日本銀行総裁 0:19:11.500,0:19:14.000 佐々木直 (ささき・ただし) が 0:19:14.250,0:19:16.600 日本経済の変革と自由化を目的とした 0:19:16.850,0:19:21.300 五カ年計画の実施を求めた。 0:19:24.320,0:19:26.000 次いで1986年、 0:19:26.250,0:19:29.560 前日銀総裁・前川春雄が座長を務める 0:19:29.810,0:19:34.000 経済構造調整研究会が、 0:19:34.250,0:19:36.415 日本人の生活水準が 0:19:36.415,0:19:39.770 一層西洋並みになるようはかる 0:19:39.770,0:19:44.200 経済改革計画 (「10年計画」) を提出した。 0:19:48.500,0:19:50.560 この提案によると 0:19:50.810,0:19:52.740 「今や我が国は、 0:19:52.762,0:19:56.770 従来の経済政策及び国民生活のあり方を 0:19:56.770,0:19:58.818 歴史的に転換させるべき 0:19:58.818,0:20:02.480 時期を迎えている。 0:20:02.850,0:20:05.793 かかる転換なくして、 0:20:05.822,0:20:09.560 我が国の発展はありえない。」 0:20:18.760,0:20:20.260 この「前川レポート」を読むと 0:20:20.510,0:20:24.000 まるでアメリカ通商代表の要望リストのような内容だ。 0:20:24.250,0:20:27.500 まず行政改革を要求し、 0:20:27.750,0:20:30.920 官僚の権限を廃止することを求めた。 0:20:31.680,0:20:34.140 目ざすは、国家の政治体制を構成する 0:20:34.140,0:20:36.600 全国民の改革であり、 0:20:36.850,0:20:39.948 戦時経済体制を廃止して、 0:20:39.948,0:20:43.480 米国型自由市場経済を導入することだ。 0:20:44.880,0:20:47.300 諮問グループのメンバーで 0:20:47.329,0:20:49.460 異議を唱えた者達は 0:20:49.460,0:20:52.240 任を解かれた。 0:20:54.320,0:20:57.320 報道関係者のレポートは非常に批判的で、 0:20:57.570,0:21:01.680 この計画の内容が過激であることを評者達は認めた。 0:21:01.930,0:21:04.560 あまりにも野心的と思われ、 0:21:05.240,0:21:07.208 日本の経済、政治、社会体制の 0:21:07.208,0:21:08.900 あらゆる部分を 0:21:08.900,0:21:10.862 無差別に変える 0:21:10.862,0:21:14.325 一つの革命を求めていた。 0:21:19.000,0:21:22.680 このレポートで何が望まれているかは明らかだったが、 0:21:22.930,0:21:25.841 これらの目標を達成するやり方について言及がないのは 0:21:25.841,0:21:28.860 あきれるばかりだった。 0:21:29.180,0:21:31.672 レポートで唯一の手掛かりとなるのは、 0:21:31.750,0:21:35.146 「これらの推奨事項の実施にあたっては、 0:21:35.146,0:21:37.539 税制を含む財政・金融政策の役割が 0:21:37.539,0:21:39.784 重要」とされている点だった。 0:21:42.600,0:21:44.100 記録によると、 0:21:44.350,0:21:46.474 常に日本銀行は 0:21:46.474,0:21:50.179 日本の体制を完全に廃止し、 0:21:50.882,0:21:53.847 アメリカ型資本主義を 0:21:53.847,0:21:57.430 導入するべきだとしてきましたが、 0:21:57.430,0:22:00.562 国民がこの考えに賛成するかどうかはまったく別の問題です。 0:22:04.320,0:22:05.462 さて次の問題は、 0:22:05.462,0:22:07.305 どうやってこれを実行するかです。 0:22:07.305,0:22:08.743 大蔵省 [現・財務省] は 0:22:08.743,0:22:11.412 戦後期のほとんどの期間、合法的に主導権を握り、 0:22:11.412,0:22:14.917 官僚機構、政治家、既存のすべてのカルテル等が 0:22:14.917,0:22:17.340 すでに定着しています。 0:22:17.613,0:22:19.317 これは古い体制ですが、 0:22:19.317,0:22:21.163 歴史が教えるところでは 0:22:21.163,0:22:24.680 体制が根本から変わるのは、危機がある場合に限られます。 0:22:27.600,0:22:29.320 委員会が提案したのは、 0:22:29.570,0:22:31.877 金融政策を利用して 0:22:31.877,0:22:34.719 大きな歴史的危機を進展させ 0:22:34.719,0:22:42.324 大蔵省、政治家、日本株式会社から成る既得権益を打ち破ることだった。 0:22:46.100,0:22:47.841 あらゆる体制には 0:22:47.850,0:22:50.000 当の体制から利益を得、 0:22:50.290,0:22:52.700 その変革を決して望まないグループがある。 0:22:52.950,0:22:55.400 おそらく世界には、危機なくして 0:22:55.518,0:22:58.406 経済・社会・政治体制を 0:22:58.422,0:23:01.613 大幅に変革した国は存在しない。 0:23:02.500,0:23:04.204 変革の必要を 0:23:04.204,0:23:06.607 市民と利益団体が納得するのは、 0:23:06.607,0:23:08.655 危機に直面する時なのだ。 0:23:09.650,0:23:12.000 どうすればこれを達成できるか? 0:23:12.250,0:23:14.100 そう、だから危機が必要になる。 0:23:14.350,0:23:17.500 危機をつくる一番良い方法はバブルを起こすことです。 0:23:17.750,0:23:21.844 なぜなら、起こすのがバブルであれば、こちらの動きを妨げる者は誰もいないからです。 0:23:23.579,0:23:29.000 バブルの起こし方 0:23:29.800,0:23:31.300 日本銀行は 0:23:31.550,0:23:35.800 窓口指導の銀行貸出目標額を大幅に増やし始めた。 0:23:36.050,0:23:38.500 1980年代の貸出割当額の増加は 0:23:38.750,0:23:41.880 年平均でほぼ15%に達した。 0:23:44.100,0:23:46.650 後に都市銀行のある職員は次のように述べた。 0:23:46.900,0:23:51.200 「バブル期の間に私たちは貸出額を一定量増やしたいと思いましたが、 0:23:51.450,0:23:54.640 日銀は私たちがもっと多く使うことを望みました。」 0:23:57.040,0:23:57.290 . 0:24:00.210,0:24:00.460 . 0:24:02.610,0:24:02.860 . 0:24:05.250,0:24:05.500 . 0:24:17.400,0:24:18.761 信用拡張は 0:24:18.761,0:24:21.206 不動産ブームの原因となっただけでなく 0:24:21.206,0:24:23.374 株式市場のブームを引き起こした。 0:24:24.312,0:24:27.191 1985年から1989年にかけて 0:24:27.391,0:24:30.887 株価は240%上昇、 0:24:31.535,0:24:35.560 地価は245%上昇した。 0:24:38.520,0:24:40.313 1980年代末まで 0:24:40.515,0:24:45.531 東京の中心にある皇居を取り囲む庭園の価額は、 0:24:45.531,0:24:49.488 カリフォルニア州全体と同じ額だった。 0:25:06.360,0:25:10.837 日本の国土面積はアメリカ合衆国の26分の1の広さしかないが、 0:25:10.922,0:25:15.869 日本の土地全体の価額は合衆国の4倍だった。 0:25:18.500,0:25:23.770 東京23区の1つ、 0:25:23.770,0:25:25.212 千代田区の市場価額は 0:25:25.295,0:25:28.747 カナダ全体の価額を超えた。 0:25:30.520,0:25:31.607 エコノミスト達は、 0:25:31.607,0:25:34.400 市場の成り行きを真に受けるよう訓練されているので 0:25:34.443,0:25:36.784 地価の高さを正当化しようとした。 0:25:36.991,0:25:40.303 一部には土地の不足がその理由だと考える者があった。 0:25:42.434,0:25:44.600 光り輝く新しい企業本社が 0:25:44.615,0:25:48.000 東京の高級オフィス街に誕生した。 0:25:49.200,0:25:51.700 労働市場もにわかに活気づき 0:25:51.743,0:25:55.282 掛け値なしに深刻な労働者不足が懸念された。 0:25:57.200,0:26:01.255 最終学年の大学生を釣ろうとする企業は、就職の意図がある旨を署名させようと 0:26:01.255,0:26:03.853 ホリデー・リゾートへの高価な旅に 0:26:03.853,0:26:06.486 誘うようになった。 0:26:12.250,0:26:13.222 政治家達にも、 0:26:13.222,0:26:15.294 大蔵省にも、この状況は好ましかったのです。 0:26:15.294,0:26:16.750 税の歳入額が上昇しました。 0:26:16.750,0:26:19.801 企業にもこの状況は好ましかった... バブルではすべてがすばらしかったのです。 0:26:22.550,0:26:22.800 . 0:26:24.950,0:26:25.200 . 0:26:29.300,0:26:29.550 . 0:26:33.650,0:26:33.900 . 0:26:37.270,0:26:37.520 . 0:26:39.800,0:26:43.700 資産価格と株価の上昇は止まらず、 0:26:43.950,0:26:46.767 従来の製造業者でさえ、相場に手を出してみる 0:26:46.767,0:26:50.320 誘惑には逆らえなかった。 0:26:51.274,0:26:54.660 まもなく投機そのものを取り扱うために、 0:26:54.660,0:26:58.106 大蔵省の財務部と理財局国庫課が拡張された。 0:26:58.970,0:27:00.831 財テクとして知られる 0:27:00.831,0:27:02.718 企業ヘッジファンドは 0:27:02.718,0:27:06.267 借入金を使って資産と株の投機を行った。 0:27:08.300,0:27:10.898 その熱狂ぶりは非常な水準にまで高まり、 0:27:10.898,0:27:11.962 日産のような 0:27:11.962,0:27:15.253 多くの自動車トップメーカーが 0:27:15.253,0:27:18.352 投機的投資によって儲けた利益は、 0:27:18.352,0:27:21.384 自動車の製造によって得られた額よりも多かった。 0:27:24.440,0:27:26.822 日本の新たな奇跡の経済を主題として 0:27:26.822,0:27:29.141 文字通り何千もの記事が書かれた。 0:27:29.950,0:27:32.550 誰もがよく知っている、エコノミストの説明は 0:27:32.550,0:27:34.885 生産性の向上と水準から 0:27:34.885,0:27:38.412 日本経済の印象的な実績が説明できる、というものだった。 0:27:44.800,0:27:47.494 日本的な経営管理手法に関する書籍が 0:27:47.494,0:27:49.900 国際的にベストセラーとなった。 0:27:50.800,0:27:52.568 西欧のビジネスマン達が 0:27:52.568,0:27:56.805 サムライの戦略を主題とした17世紀の小冊子を読んだ。 0:28:03.200,0:28:04.700 ところが実は 0:28:04.743,0:28:07.775 1980年代の日本の非常にすばらしい実績は 0:28:07.775,0:28:10.892 経営管理手法とほとんど関係がなかった。 0:28:12.280,0:28:15.739 信用を制限し指導するために窓口指導を用いる代わりに、 0:28:15.739,0:28:20.280 巨大なバブルを生み出すために窓口指導を用いたのだった。 0:28:26.300,0:28:31.500 私は日銀の職員と銀行家達にインタヴューして調査を行いました。 0:28:31.750,0:28:33.900 双方ともテープに収録しています。 0:28:34.150,0:28:35.700 調査の結果、 0:28:35.950,0:28:39.525 日銀は実際に非公式な窓口指導を続けたことがわかりました。 0:28:39.760,0:28:43.890 実のところ、銀行に貸出額をこれほどにも増やすよう強いたのは 0:28:43.890,0:28:45.560 日本銀行だったのです。 0:28:49.100,0:28:51.000 日銀は知っていた。 0:28:51.250,0:28:54.867 銀行が貸出目標額を達成する唯一の方法は、 0:28:54.931,0:28:57.866 非生産的貸出額を増額することだと。 0:29:00.521,0:29:02.842 ある銀行家の言葉を用いるならば 0:29:02.842,0:29:06.567 「低リスクの借手に信用に対する需要がない場合、 0:29:06.567,0:29:08.796 貸出割当額をすべて消化したいと望むと、 0:29:08.796,0:29:11.970 リスクは悪化する。」 0:29:13.300,0:29:16.183 いま一人の銀行家は次のように述べている。 0:29:16.708,0:29:19.684 「貸出を増やす窓口指導のルールの副作用は、 0:29:19.684,0:29:22.429 貸出の需要がまったくない時も 0:29:22.429,0:29:25.546 銀行が貸出額を増やしたことだ。」 0:29:27.920,0:29:33.560 通貨の創造とバブル 0:29:34.560,0:29:35.654 あらゆるバブルと同様、 0:29:35.654,0:29:37.722 日本のバブルが煽(あお)られたのは 0:29:37.722,0:29:39.724 ひとえに銀行制度によって 0:29:39.724,0:29:42.958 新しい通貨が急速に創造されたことによる。 0:29:45.300,0:29:48.400 1986年から1989年にかけて 0:29:48.400,0:29:50.615 日銀の営業局長だったのは 0:29:50.615,0:29:53.320 福井俊彦だ。 0:29:54.825,0:29:57.706 これは窓口指導による各銀行の貸出割当額に 0:29:57.706,0:29:59.960 責任を負う局だ。 0:30:00.311,0:30:02.767 福井にあるジャーナリストが尋ねた。 0:30:02.860,0:30:05.207 貸し出しが急速に増えていますが... 0:30:05.250,0:30:09.354 「貸し出しの蛇口を狭めるつもりはないのですか?」 0:30:09.521,0:30:10.843 福井は答えた。 0:30:10.843,0:30:14.899 「金融緩和を一貫して続けるわけだから 0:30:15.128,0:30:19.568 貸し出しの量的規制は自己矛盾に陥ることになります。 0:30:20.515,0:30:24.740 だから量的規制をするつもりはない。 0:30:28.690,0:30:30.792 経済の構造調整を 0:30:30.792,0:30:33.546 かなりの期間かけてやっていきながら 0:30:33.546,0:30:37.470 国際的な不均衡を是正していく。 0:30:38.853,0:30:41.832 金融政策はそれを支えることになるわけですから、 0:30:41.832,0:30:44.865 (私たちには) なるべく長く金融緩和を続けていく 0:30:44.865,0:30:47.506 責任があるのです。 0:30:48.494,0:30:53.882 そうすると金融機関の貸し出しが伸びるのは当然なのです。」 0:30:55.751,0:30:58.943 なぜ銀行はこれほど多くの融資を行っていたのか? 0:30:59.208,0:31:01.681 それは日本銀行の命令によって 0:31:01.681,0:31:04.329 そうせざるを得なかったからです。 0:31:09.720,0:31:10.690 通常 0:31:10.690,0:31:14.946 銀行は多くの融資申込者の中から顧客を選び 0:31:15.161,0:31:18.608 かなりの割合で融資を断る。 0:31:22.000,0:31:24.130 だが1987年から 0:31:24.130,0:31:26.256 形勢が逆転し 0:31:26.368,0:31:28.834 銀行家のほうが 0:31:28.834,0:31:32.160 積極的に見込み客を追いかけるようになった。 0:31:33.080,0:31:35.793 銀行がまるで行商人のように顧客を追いかけ 0:31:35.793,0:31:38.712 格安の金利で融資を勧誘した逸話が 0:31:38.712,0:31:41.341 たくさんある。 0:31:42.350,0:31:42.600 . 0:31:46.850,0:31:47.100 . 0:31:48.750,0:31:49.000 . 0:31:53.050,0:31:53.300 . 0:31:56.050,0:31:56.300 . 0:32:01.520,0:32:04.163 銀行家はますます地価の評価を 0:32:04.163,0:32:06.326 誇張して行うようになり、 0:32:06.370,0:32:09.146 貸付金に対する地価の実際比が 0:32:09.146,0:32:12.129 しばしば300%以上に急増した。 0:32:13.920,0:32:17.293 一般の人々にとってこれは奇妙な現象だった。 0:32:17.750,0:32:19.568 ほどなく人々はこれを 0:32:19.584,0:32:21.600 「過剰資金」と呼んだ。 0:32:23.100,0:32:24.629 エコノミストや 0:32:24.629,0:32:26.120 アナリスト、 0:32:26.156,0:32:29.150 金融市場や不動産会社で働く人々だけが 0:32:29.179,0:32:31.800 事情をわきまえていた。 0:32:32.174,0:32:35.477 あまりに簡単に割り切りすぎた分析を彼らは斥けた。 0:32:36.600,0:32:38.655 地価の上昇は 0:32:38.655,0:32:40.871 単に過剰資金によるというよりも 0:32:40.970,0:32:42.600 はるかに複雑な理由によるものだった。 0:32:42.884,0:32:44.591 こうした業種の人たちは、 0:32:44.600,0:32:47.558 庶民には、ただ高度な財テクの複雑な仕組みが 0:32:47.558,0:32:49.830 分からないのだ、と主張した。 0:32:53.680,0:32:58.680 国際資本の移動 0:33:07.840,0:33:10.500 ある国が創造した通貨の量が多すぎると 0:33:10.750,0:33:13.282 その通貨の一部は、海外へ投資という形で 0:33:13.282,0:33:15.520 流出する。 0:33:17.960,0:33:19.199 1980年代の 0:33:19.199,0:33:21.696 日本の資本の流れは 0:33:22.250,0:33:24.401 1980年に2億ドル以上(純額)が 0:33:24.401,0:33:26.549 国内に流入したのに対して 0:33:27.110,0:33:28.474 1986年には 0:33:28.474,0:33:31.800 1320億ドルが流出した。 0:33:35.400,0:33:38.200 美術品その他の貴重品を含む 0:33:38.450,0:33:40.165 世界中の資産が 0:33:40.250,0:33:42.500 日本のバイヤーたちの標的となった。 0:33:44.500,0:33:46.680 これにはロックフェラー・センター、コロンビア映画、 0:33:46.930,0:33:49.651 ペブルビーチ・ゴルフリンクスのような 0:33:49.651,0:33:52.596 知名度の高い購入物件が含まれていた。 0:33:55.200,0:33:57.367 驚くべきことに1986年に競売された 0:33:57.367,0:34:00.394 アメリカ合衆国の長期国債の75%が 0:34:00.656,0:34:03.444 日本円によって購入された。 0:34:07.000,0:34:08.917 だが一国が紙幣を印刷するだけで 0:34:08.917,0:34:11.661 世界中の物件を買いたい放題に購入するというのは 0:34:11.661,0:34:13.641 たやすくできることではない。 0:34:14.449,0:34:16.594 日本にこれができたのは 0:34:16.594,0:34:19.690 市場が通貨を切り下げなかったからだ。 0:34:22.100,0:34:24.500 それぞれの通貨の価値は 0:34:24.501,0:34:27.100 為替ディーラーによって決められる。 0:34:27.350,0:34:30.475 その際、彼らが観察する従来の経済指標が 0:34:30.475,0:34:34.239 その国の過剰な通貨創造を捉えていない場合、 0:34:35.551,0:34:37.920 多額の通貨創造と 0:34:37.920,0:34:40.376 これを外貨と交換しようとする試みが 0:34:40.376,0:34:42.324 影響を及ぼすことがある。 0:34:49.438,0:34:51.330 1950年代、1960年代に 0:34:51.330,0:34:54.909 米国の銀行はドルを過剰に創造したが、 0:34:54.909,0:34:56.793 この時に米国が使った同じトリックを 0:34:56.793,0:34:59.585 日本は成功させたのだった。 0:35:02.720,0:35:04.603 アメリカ合衆国株式会社は 0:35:04.603,0:35:06.627 ヨーロッパの諸企業を買収するため 0:35:06.627,0:35:09.166 このホットマネー [不正に得たカネ] を使った。 0:35:10.000,0:35:11.927 この時に米国が使った口実は 0:35:11.927,0:35:14.380 金本位制だったが、 0:35:14.380,0:35:18.978 日本の場合、口実となったのは多額の貿易黒字だった。 0:35:24.320,0:35:26.776 GDPを根拠としない融資: 0:35:26.776,0:35:30.557 財貨やサービスの生産を目的としない融資。 0:35:32.151,0:35:34.506 金融制度全体のリスクの増加を 0:35:34.506,0:35:37.205 その初期に警告する指標として、 0:35:37.205,0:35:39.525 融資総額に対して 0:35:39.525,0:35:44.529 GDPに基づかない取引を目的とする貸付金が占める割合がある。 0:35:47.100,0:35:49.780 この比率は、金融危機が発生しつつある 0:35:49.780,0:35:54.317 国々のほとんどで著しく高くなる。 0:35:59.000,0:36:01.303 1980年代と2000年代に 0:36:01.303,0:36:03.601 アメリカとイギリスで 0:36:03.601,0:36:06.704 抵当貸付と住宅価格の急騰を刺激したのは 0:36:06.704,0:36:09.449 このプロセスにほかならなかった。 0:36:11.200,0:36:13.608 これと同じプロセスはまた 0:36:13.608,0:36:15.887 黄金の1920年代を創出した。 0:36:16.600,0:36:20.503 この時アメリカの銀行は株を担保として貸出を行った。 0:36:22.000,0:36:24.000 原理は同じだ。 0:36:24.250,0:36:27.499 各銀行は株価を既定の事実と考え 0:36:27.499,0:36:30.150 新たに通貨を創造した。 0:36:30.400,0:36:32.896 株式市場で通貨量が増えると 0:36:32.896,0:36:35.200 株価は上昇しなければならなかった。 0:36:36.200,0:36:39.100 株価の一定の割合を担保として受け取れば 0:36:39.100,0:36:42.276 安全だと各々の銀行は考えたが、 0:36:42.628,0:36:45.316 すべての銀行が同じ行動をとることによって 0:36:45.316,0:36:48.520 市場全体が押し上げられる。 0:36:52.000,0:36:53.591 日本では、 0:36:53.591,0:36:56.920 民間部門が所有する土地の富が 0:36:56.920,0:36:59.720 1969年に14兆2千億円だったのが、 0:36:59.720,0:37:03.326 1989年には2000兆円に上昇した。 0:37:08.200,0:37:09.981 日本銀行第26代総裁 0:37:09.981,0:37:12.349 三重野康 (みえの・やすし) は 0:37:12.349,0:37:14.800 1989年、最初の記者会見で 0:37:15.180,0:37:17.140 地価高騰の原因として 0:37:17.140,0:37:19.900 「金融が片棒をかついでいることは否めない」 0:37:20.270,0:37:22.677 と金融緩和の副作用を率直に認め、 0:37:22.997,0:37:27.780 今後は個別の指導で不動産関連融資を抑制していくと述べた。 0:37:27.600,0:37:29.767 周囲を見回して、彼はバブル、 0:37:29.767,0:37:33.563 資産価値の上昇、貧富の格差の拡大に目を向け、 0:37:33.563,0:37:35.850 これを止めようではないかと言いました。 0:37:36.100,0:37:39.300 三重野氏は新聞や雑誌の記事で英雄になりました。 0:37:39.550,0:37:42.900 それは彼がこの愚かな金融緩和策に反対して戦ったからですが、 0:37:43.150,0:37:47.412 ところが本人はバブル期の間は副総裁を務め、 0:37:47.434,0:37:55.606 バブルの創出を担当していたのです。 0:37:57.400,0:38:01.900 相場の暴落 0:38:16.600,0:38:18.299 突然、地価と 0:38:18.299,0:38:20.900 資産価値の上昇が止まった。 0:38:22.400,0:38:24.103 1990年だけで 0:38:24.103,0:38:27.573 株価は32%下落した。 0:38:31.600,0:38:33.600 その後、1991年7月 0:38:33.850,0:38:36.500 窓口指導が廃止された。 0:38:38.200,0:38:40.734 これには、日本銀行で 0:38:40.750,0:38:43.880 窓口指導を担当していた職員自身が驚いた。 0:38:44.200,0:38:46.744 銀行家達はほとんど無力のまま取り残された。 0:38:46.850,0:38:50.130 もはやどのようにして貸出を計画すればよいかわからないと 0:38:50.130,0:38:51.634 彼らは不満をもらした。 0:38:52.453,0:38:54.405 かつてある銀行の支店が 0:38:54.405,0:38:56.718 もっと多く融資したいと言う時には、 0:38:56.912,0:39:01.310 窓口指導の貸出割当額は使い果たしたと答えるのが常だったが、 0:39:02.856,0:39:05.903 この度はもはやそうすることができなかった。 0:39:09.000,0:39:11.279 バブルで融資された99兆円の大部分が 0:39:11.279,0:39:13.684 焦げつく可能性が高いことに 0:39:13.684,0:39:16.165 銀行が気づき始めると、 0:39:16.946,0:39:19.560 恐ろしさのあまり 0:39:19.560,0:39:21.970 銀行は投機家への融資をやめたばかりか、 0:39:22.740,0:39:25.560 他の誰に対しても融資を制限した。 0:39:26.250,0:39:29.200 (ニュース)日本では希望のないクリスマスが待っているようです。 0:39:29.450,0:39:31.100 月曜日、株式市場は 0:39:31.350,0:39:34.000 下落して過去2年以上で最低の終値となりました。 0:39:34.250,0:39:37.400 先週、日本の食品業者最大手の一つが倒産しました。 0:39:37.650,0:39:39.772 今年上場企業が倒産したのは 0:39:39.772,0:39:41.960 これで9回目です。 0:39:43.500,0:39:46.300 5百万人を超える日本人が職を失い 0:39:46.550,0:39:49.640 就職先がどこにも見つからなかった。 0:39:54.100,0:39:56.900 20歳から44歳までの男性の死亡原因では 0:39:57.160,0:40:00.500 自殺がトップになった。 0:40:02.640,0:40:02.890 . 0:40:04.900,0:40:05.150 . 0:40:07.150,0:40:07.400 . 0:40:09.600,0:40:09.850 . 0:40:21.100,0:40:23.350 1990年から2003年にかけて 0:40:23.600,0:40:27.674 21万2千社が倒産した。 0:40:29.000,0:40:30.594 同じ期間に 0:40:30.594,0:40:33.640 株式市場は80%下落した。 0:40:35.500,0:40:37.446 主要都市の地価は 0:40:37.446,0:40:40.200 最大で84%下落した。 0:40:41.620,0:40:44.442 エコノミストのある者たちはホッと胸を撫でおろしているように見えた。 0:40:44.442,0:40:46.196 景気の低迷は、煎じ詰めると 0:40:46.196,0:40:47.929 日本の経済体制がそれほど 0:40:47.929,0:40:50.314 成功していない証拠だった。 0:40:53.000,0:40:54.637 その一方で 0:40:54.750,0:40:56.180 日本銀行総裁、 0:40:56.180,0:40:59.000 三重野康(みえの・やすし)は語った。 0:40:59.400,0:41:01.287 「この不況のおかげで 0:41:01.287,0:41:03.766 誰もが経済改革を行う必要を 0:41:03.766,0:41:06.466 意識するようになってきた。」 0:41:10.960,0:41:15.100 救済措置の失敗 0:41:15.600,0:41:17.367 大蔵省は、 0:41:17.367,0:41:20.443 金利が主要な政策手段であると信じていたので、 0:41:20.443,0:41:24.746 日銀に金利を下げるよう圧力をかけた。 0:41:25.451,0:41:29.410 この結果、公定歩合は0.1%まで下がった。 0:41:32.100,0:41:35.900 ほとんどのエコノミストは、景気が回復すると予測した。 0:41:41.300,0:41:44.303 だが金利を下げれば成長が刺激され、 0:41:44.650,0:41:47.513 金利を上げれば成長が鈍化すると 0:41:47.693,0:41:49.426 金融新聞や中央銀行が 0:41:49.426,0:41:51.558 頻繁に主張したにもかかわらず、 0:41:51.787,0:41:55.524 経験上そのような因果関係を示す証拠は全く存在しない。 0:42:03.320,0:42:06.500 (ニュース)日米のビジネスマンがここで会合を開いています。 0:42:06.750,0:42:09.850 日本の企業からは円安を求める嘆願が出されています。 0:42:10.440,0:42:13.358 1ドルが100円以下で利益を出すことのできる日本の輸出業者は 0:42:13.358,0:42:15.296 全体のわずか6%しかありません。 0:42:15.422,0:42:18.222 収支を合わせるには、平均して1ドルが 0:42:18.222,0:42:21.106 117円超に上がることが必要です。 0:42:25.280,0:42:27.542 大蔵省は日銀に 0:42:27.542,0:42:29.586 大量の円を売り 0:42:29.586,0:42:32.100 米国ドルを買うことを求めた。 0:42:32.805,0:42:35.700 円の為替レートが下落し、 0:42:35.960,0:42:38.500 輸出が上向くようにするためだ。 0:42:39.760,0:42:41.520 大蔵省と日銀の 0:42:41.550,0:42:44.800 両者は、 0:42:45.050,0:42:47.160 実に折り合いがよくありません。 0:42:47.410,0:42:50.275 今月再び起こっているのは、 0:42:50.275,0:42:54.400 日銀が自らの介入を無効にしているということ、 0:42:54.650,0:42:56.410 正確に言えば、 0:42:56.410,0:42:59.000 大蔵省の命令による介入を無効にしつつあることです。 0:42:59.250,0:43:00.932 大蔵省は日銀に 0:43:00.932,0:43:05.297 米国債を凡そ200億ドル購入するよう指示しています。 0:43:05.568,0:43:08.239 ところがこの購入資金は 0:43:08.239,0:43:11.800 基本的に日銀が国の経済から得るカネなので、 0:43:11.850,0:43:14.000 不胎化されます。 0:43:14.250,0:43:16.000 大半の研究者は 0:43:16.150,0:43:19.250 不胎化された介入には効果がないことに同意しています。 0:43:19.250,0:43:21.332 日銀はまた不胎化を行っているのです。 0:43:21.410,0:43:23.248 このため介入には効力がなく、 0:43:23.250,0:43:26.132 円は現在まで依然として強いのです。 0:43:30.100,0:43:33.100 中央銀行はその資産を売却することによって国の経済から 0:43:33.350,0:43:35.320 通貨を回収することができる。 0:43:35.760,0:43:38.800 これは、資産を購入することによって国の経済に 0:43:38.863,0:43:41.100 通貨を投入することができるのと同様だ。 0:43:43.300,0:43:46.406 中央銀行が資産を売買すると、 0:43:46.550,0:43:51.680 国の経済を循環する通貨の量が増減するわけだ。 0:43:53.400,0:43:56.000 日銀の職員はこの点を無視し、 0:43:56.280,0:43:58.300 その代わりにこう主張した。 0:43:58.550,0:44:01.700 「この構造改革で 0:44:01.950,0:44:05.700 短期的にはデフレ圧力が生じるかもしれないが、 0:44:05.950,0:44:10.720 しばらくすればはるかに効率的な経済が生まれるだろう。」 0:44:18.000,0:44:20.250 この時、独立した立場にあるオブザーバーたちは、 0:44:20.500,0:44:24.600 国内需要は財政支出によって押し上げられなければならない、 0:44:24.850,0:44:27.960 そうすれば借入需要も高まるだろう、と提案した。 0:44:29.840,0:44:31.340 10年間、 0:44:31.590,0:44:33.700 政府は彼らのアドバイスに従って 0:44:33.950,0:44:36.700 政府債務を歴史的な水準にまで押し上げた。 0:44:36.950,0:44:39.200 1992年から2002年までの間に 0:44:39.550,0:44:44.665 景気刺激策が10回打ち出され、その総額は146兆円に達した。 0:44:47.560,0:44:49.060 (ニュース)リチャード・ヴェルナー氏は 0:44:49.310,0:44:51.880 東京のジャーディン・フレミング証券会社のチーフ・エコノミストです。 0:44:52.130,0:44:54.120 日本経済がどこに向かっているか、 0:44:54.370,0:44:57.129 ご意見を伝えていただきます。 0:44:57.129,0:44:59.500 日本政府は右手を使って支出を行い 0:44:59.500,0:45:01.262 国の経済組織に通貨を投入していますが、 0:45:01.262,0:45:03.770 資金調達は債券市場を通じて行われましたから、 0:45:03.770,0:45:07.185 左手を使ってその同じ通貨を国の経済組織から取り去ったわけです。 0:45:07.185,0:45:09.496 購買力は全体としてまったく増えていません。 0:45:09.496,0:45:12.139 ですから政府の財政支出には効果がないのです。 0:45:12.139,0:45:17.720 2011年までに日本政府の負債はGDPの230%、 0:45:17.970,0:45:20.040 世界最高に達しようとしていた。 0:45:27.100,0:45:30.100 大蔵省 [2001年より財務省] は万策尽きようとしていた。 0:45:32.000,0:45:35.800 オブザーバー達は不況の責任を大蔵省に負わせるようになり、 0:45:36.050,0:45:38.606 不況は日本の経済体制のせいだと唱える声に 0:45:38.606,0:45:42.296 耳を傾けはじめた。 0:45:45.880,0:45:48.050 だが銀行部門の不良債権問題と 0:45:48.050,0:45:50.601 デフレを解決することは、 0:45:50.609,0:45:53.337 どれほど難しいことだったのだろうか。 0:45:53.617,0:45:57.267 結局これはそれほど難しいことではなかったことが分かる。 0:45:57.572,0:46:01.862 金融システムは、映画「キャッチ22」のようにいつもどちらに転んでも勝算がないように見えます。 0:46:01.862,0:46:04.206 貸出額の伸びがないので、経済は成長しない。 0:46:04.206,0:46:06.713 それで貸出額が伸びないので、経済成長はない。 0:46:06.713,0:46:09.925 さて、この循環論法を破ることのできるものが一つあります。 0:46:10.010,0:46:11.731 それは中央銀行です。 0:46:11.850,0:46:16.115 この状況での中央銀行の義務は、通貨を印刷することなのです。 0:46:17.664,0:46:22.200 中央銀行の権限 0:46:22.500,0:46:25.689 今私たちに必要なのはもっと抜本的な措置です。 0:46:25.850,0:46:27.958 その中には痛みを伴うものがあれば、 0:46:27.958,0:46:29.800 伴わないものもあります。 0:46:30.050,0:46:33.900 例えば中央銀行は、すべての不良債権をただ額面どおりに買い取ることができます。 0:46:33.982,0:46:36.965 これは日本が世界で最強の銀行を持っているということでしょう。 0:46:37.600,0:46:39.765 銀行部門を救済するため 0:46:39.794,0:46:43.155 中央銀行は新たに創造された通貨を使って 0:46:43.280,0:46:45.294 不良金融資産を額面通りに 0:46:45.294,0:46:47.720 買い取ることができる。 0:46:47.970,0:46:51.237 この場合は、資産が著しく減価していることがよくあるのだが。 0:46:52.600,0:46:57.341 これは日本銀行が戦後に行ったことだ。 0:46:59.200,0:47:02.280 もう一つの方法として、銀行を支援して相当な利益を得させ、 0:47:02.530,0:47:05.520 通貨を銀行に移転させることができる。 0:47:05.670,0:47:07.840 これを成し遂げるやり方の一つは、 0:47:07.850,0:47:10.600 中央銀行が市場を独占し、 0:47:10.617,0:47:13.950 一定の市場に実際にミニ・バブルを創出することだ。 0:47:14.200,0:47:16.723 このバブルで銀行は多量に出資するため 0:47:16.723,0:47:18.988 多額の利益が得られる。 0:47:20.153,0:47:21.401 これは結局、 0:47:21.401,0:47:24.830 中央銀行が自らの銀行制度を支援するために用いる 0:47:24.830,0:47:28.351 比較的ありふれたテクニックであることがわかる。 0:47:32.200,0:47:33.920 その他の提案としては、 0:47:33.950,0:47:37.100 銀行にリスクのまったくない借り手を紹介する措置や、 0:47:37.156,0:47:41.828 会計に別の計算方法を導入して銀行のバランスシートを改善することが挙げられる。 0:47:48.000,0:47:51.655 これは西側主要国では約20年後に議論されたことだが、日本では 0:47:51.655,0:47:54.955 当局と日銀が論陣を張って 0:47:54.955,0:47:58.696 納税者がつけを支払うべきだとされた。 0:48:00.600,0:48:03.267 富士銀行頭取(当時) 橋本徹氏: 去年の3月に 0:48:03.267,0:48:06.615 政府は日本のおよそ15の主要金融機関に 0:48:06.615,0:48:10.480 多額の資金を注入しました。 0:48:13.920,0:48:16.500 私どもはその一つでした。 0:48:16.750,0:48:20.168 これは不良債権を帳簿から消すのに役立ち、 0:48:20.168,0:48:23.528 キャピタルベースの強化にも役立ちましたから、 0:48:23.528,0:48:26.958 私どもには融資の準備ができると思われました。 0:48:29.000,0:48:32.617 これまで税金が、銀行の資本構成を変更するために使われてきた。 0:48:33.100,0:48:36.174 とはいえ、納税者が銀行の問題に対して責任があったという 0:48:36.174,0:48:37.990 証拠はない。 0:48:38.154,0:48:41.134 だからこのような金融政策がモラル・ハザードを引き起こし、 0:48:41.134,0:48:44.817 リスクに対する補償のために責任感・経営倫理が失われた可能性が高い。 0:48:47.600,0:48:48.977 通貨の供給は 0:48:48.977,0:48:50.877 銀行と中央銀行による 0:48:50.877,0:48:53.810 信用創造の純増加によって決まる。 0:48:54.950,0:48:56.733 モラル・ハザードのために 0:48:56.733,0:48:59.203 銀行部門が救済されないとなれば、 0:48:59.340,0:49:04.684 デフレと不況をなお回避できるのは中央銀行である。 0:49:04.684,0:49:05.994 この目的のために 0:49:05.994,0:49:09.358 中央銀行は通貨供給量を増やすことができる。 0:49:11.000,0:49:12.477 中央銀行は、 0:49:12.477,0:49:14.831 単に民間部門から資産を購入し、 0:49:14.831,0:49:17.906 新たに創造された信用を使って支払いをするだけで 0:49:17.906,0:49:19.972 いつでも無制限に国の経済の 0:49:19.975,0:49:23.337 通貨量を増やすことができる。 0:49:24.700,0:49:26.980 たとえば日銀は 0:49:27.010,0:49:28.841 不動産を購入して 0:49:28.850,0:49:31.200 これを公園にすることができる。 0:49:31.450,0:49:35.440 ここに、3つの問題を一気に解決する機会があります。 0:49:35.690,0:49:37.680 国の経済は信用創造を必要とし、 0:49:37.930,0:49:40.389 銀行は不良債権をなくす必要があります。 0:49:40.625,0:49:43.489 そして不動産部門には取引が必要です。 0:49:43.850,0:49:47.380 そのために中央銀行が紙幣を印刷し、 0:49:48.120,0:49:49.849 銀行から土地を購入して、 0:49:49.849,0:49:51.637 それを公園に変えれば、 0:49:51.637,0:49:53.695 日本人の生活の質の向上という 0:49:53.695,0:49:55.944 今ひとつの問題も解決されるのです。 0:49:57.100,0:49:59.281 たとえ日銀が後日これらの公園を 0:49:59.281,0:50:02.249 経費のほんの一部にあたる額で売却したとしても、 0:50:02.249,0:50:04.393 日銀はなお通貨を創造したことになる。 0:50:04.760,0:50:06.863 これは、そもそも日銀に 0:50:06.863,0:50:10.230 通貨を創造する費用がまったくかからないためだ。 0:50:11.880,0:50:14.791 国の経済に通貨を注入するための今ひとつの選択肢は、 0:50:14.791,0:50:16.837 量的緩和だ。 0:50:18.840,0:50:21.753 これらの選択肢がすべて使用できるにもかかわらず、 0:50:21.753,0:50:24.370 日銀はあらゆる段階で 0:50:24.370,0:50:28.437 危機を解決したであろう政策の実施を拒んだ。 0:50:30.200,0:50:32.700 私が1992年からその翌年にかけて 0:50:32.950,0:50:34.800 日銀に客員研究員として在籍していた時、 0:50:35.050,0:50:38.600 この不況はほんとうに悪化に向かっていると確信しました。 0:50:38.850,0:50:42.800 そこで日銀の人に誰と話ができるか尋ねようとしました。 0:50:43.050,0:50:46.216 なぜもっと通貨を印刷しないのかが疑問だったのです。 0:50:46.926,0:50:49.337 この問題についてとてもオープンな人に会って話をすると、 0:50:49.337,0:50:50.529 その人は言いました。 0:50:50.556,0:50:53.827 「リチャード、確かに我々はもっと多くの通貨を印刷することができたよ。 0:50:53.827,0:50:56.230 我々は経済の回復を創出することができたはずだ。 0:50:56.230,0:50:58.355 だがその場合、何も変わらなかったことになるだろう。 0:50:58.355,0:51:00.493 日本の経済構造は変わらなかったことになる。」 0:51:00.844,0:51:03.370 それでその時には、私にはまだ日銀が 0:51:03.370,0:51:06.385 まさかあまりにも大それた構造変革を成し遂げるために、 0:51:06.385,0:51:09.220 本気で不景気をわざと引き延ばしているとは 0:51:09.220,0:51:11.182 信じることができませんでした。 0:51:13.000,0:51:16.850 塩川正十郎 (まさじゅうろう) 財務大臣は、日銀に対して 0:51:16.927,0:51:20.800 デフレを止めるか、少なくともデフレと闘う手助けをするよう求めました。 0:51:21.050,0:51:24.156 経済を刺激し長期の不況を終わらせるために 0:51:24.156,0:51:26.816 もっと多くの通貨を創造してほしいとの 0:51:26.816,0:51:29.750 政府、蔵相、総理大臣の要求に、 0:51:29.750,0:51:32.400 日本銀行は一貫して盾を突いた。 0:51:34.600,0:51:35.544 時に日銀は 0:51:35.544,0:51:39.500 国の経済を流通する通貨量を積極的に削減する施策さえ行ったので、 0:51:39.750,0:51:41.975 不況はさらに悪化した。 0:51:48.320,0:51:52.320 日銀の論法はいつも最後に同じ結論で締めくくられる。 0:51:52.570,0:51:54.634 つまり、非難されるべきであるのは 0:51:54.650,0:51:56.680 日本の経済構造なのだ。 0:52:00.160,0:52:02.103 日銀の職員達の論法によると、 0:52:02.201,0:52:04.250 大幅な金融緩和は 0:52:04.375,0:52:06.806 「構造調整の進捗がさらに遅れ」 0:52:06.806,0:52:10.800 「害になりかねない」とさえいうのだ。 0:52:17.800,0:52:20.580 戦後初期の日本の指導者たちは 0:52:20.740,0:52:23.100 自分たちが戦時経済を運営していることを知っていたが、 0:52:23.350,0:52:26.200 政治的な理由からそれを語らなかった。 0:52:28.510,0:52:30.627 冷戦期の政治宣伝では、 0:52:30.627,0:52:32.310 戦後の日本は 0:52:32.394,0:52:36.560 アメリカ型の政治・経済体制を採用したといわれていた。 0:52:39.500,0:52:41.424 本当のことを言いたくなかった 0:52:41.424,0:52:43.300 戦後初期の指導者達は、 0:52:43.550,0:52:45.534 奇跡の日本経済の起源について 0:52:45.534,0:52:47.670 公にできない彼らの秘密を 0:52:47.670,0:52:49.982 語らずに世を去った。 0:52:52.320,0:52:54.840 1980年代から1990年代にかけて 0:52:54.924,0:52:57.450 日本を統治したのは、 0:52:57.700,0:52:59.201 自国の経済の真の性格と 0:52:59.201,0:53:01.765 本来望まれる目的を理解していない世代に属する 0:53:01.765,0:53:03.250 官僚・政治家たちだった。 0:53:05.400,0:53:07.950 このような世代の日本のエコノミスト達が丸ごと 0:53:07.972,0:53:10.187 米国に送り出され、 0:53:10.201,0:53:14.729 アメリカ型経済の分野で博士や経営大学院修士となった。 0:53:19.240,0:53:21.648 彼らが学んだ新古典経済学の前提によると、 0:53:21.650,0:53:24.638 経済体制には一種類のシステムしか存在しない。 0:53:24.887,0:53:27.207 つまり何の緩和策もない純然たる自由市場、 0:53:27.207,0:53:31.186 株主と中央銀行家が最高の支配者として君臨する自由市場だ。 0:53:31.918,0:53:35.724 多くの日本のエコノミストが、すばやく米国のエコノミストの議論をうのみにし、 0:53:35.724,0:53:37.840 受け売りでそれを繰り返すようになった。 0:53:43.720,0:53:49.700 大蔵省の解体 0:53:50.000,0:53:54.500 (ニュース) 日米保険協議が火曜日に2日間の日程を終了しました。 0:53:54.750,0:53:56.800 大手生命保険会社と 0:53:57.050,0:54:00.100 それ以外の大手保険会社、 0:54:00.350,0:54:04.520 それに大蔵省の既得権を制するためには、 0:54:04.539,0:54:09.821 第1次産業部門の規制緩和が必要です。 0:54:11.680,0:54:14.400 これらの当事者は12月15日以前に合意に達する必要があります。 0:54:14.650,0:54:17.772 この日以後、米国は貿易制裁を課す恐れがあります。 0:54:18.220,0:54:22.348 アナリストたちが予想する主な解決の鍵は、不動産の証券化です。 0:54:22.798,0:54:25.320 詳細についてリチャード・ヴェルナーに聞きます。 0:54:25.350,0:54:28.400 意味のある証券化を行うには、規制緩和が必要です。 0:54:28.650,0:54:31.300 これはすでにご質問への答えになります。 0:54:31.550,0:54:34.575 規制緩和を達成するためには、大蔵省の権限を 0:54:34.624,0:54:36.700 縮小しなければなりませんが、 0:54:36.950,0:54:39.880 大蔵省がこれに抵抗していたことは明らかです。 0:54:40.720,0:54:42.474 1980年代に 0:54:42.474,0:54:45.243 名声ある大蔵省の名刺を持って 0:54:45.243,0:54:47.767 自己紹介することのできた者たちは、 0:54:47.767,0:54:51.679 沈黙のうちにも深い畏怖と尊敬の念から人々を嘆息させた。 0:54:54.000,0:54:57.150 ところが1990年代の中頃から人々の態度が変わり、 0:54:57.150,0:54:59.125 大半のオブザーバーには 0:54:59.125,0:55:01.050 大蔵省が不況を起こしたことは 0:55:01.050,0:55:04.548 ほとんど疑いないと思われた。 0:55:07.000,0:55:10.441 大蔵省の庁舎の外では 0:55:10.450,0:55:14.100 しばしば官僚たちの行動に嫌気がさした市民達がデモを行った。 0:55:17.440,0:55:19.194 1998年初め、 0:55:19.194,0:55:21.725 検察官が初めて日本の省庁の中で 0:55:21.725,0:55:25.180 最大の実力をもつ省を強制捜索した。 0:55:26.200,0:55:28.105 銀行と金融当局の両者が 0:55:28.105,0:55:30.846 彼らがとった行動に対して厳しい批判を受けた。 0:55:31.490,0:55:35.244 大蔵省の官僚と銀行家達の間に存在した非公式のつながりの一部が 0:55:35.244,0:55:38.124 スキャンダルで浮き彫りにされた。 0:55:40.200,0:55:41.920 多くの銀行員とともに 0:55:41.950,0:55:43.760 一部の大蔵省官僚さえ 0:55:43.795,0:55:46.000 逮捕、収監され、 0:55:46.250,0:55:48.500 数人の自殺者がでた。 0:55:53.920,0:55:57.200 中央銀行家・白川方明 (しらかわ・まさあき) はこう説明した。 0:55:57.450,0:56:01.487 「関連するあらゆる個々の経済主体の 0:56:01.487,0:56:04.640 既得権益に関係しているので、 0:56:04.703,0:56:08.391 制度の枠組みを変えて構造改革を推進するのは 0:56:08.391,0:56:11.664 容易ではありません。」 0:56:15.284,0:56:17.887 日銀副総裁・山口泰(やまぐち・ゆたか)は 0:56:17.887,0:56:19.792 こう語った。 0:56:21.250,0:56:23.881 日銀は金融緩和によって 0:56:23.881,0:56:27.915 差し迫ったリスクの緩和が生じるというディレンマに直面し、 0:56:29.336,0:56:30.924 その結果 0:56:30.924,0:56:34.422 究極的な解決策の採用を遅らせることになった。」 0:56:48.600,0:56:51.200 1990年代以降、 0:56:51.450,0:56:55.000 政府は大蔵省の権力構造の多くの部分を 0:56:55.000,0:56:57.250 解体し始めた。 0:56:57.500,0:56:59.928 他方で、日本銀行の影響力は 0:56:59.930,0:57:02.464 著しく増大した。 0:57:03.360,0:57:06.350 (ニュース) つい先日あなたが書いていたことですが、 0:57:06.350,0:57:07.758 あなたにとっては 0:57:07.794,0:57:10.469 「日本銀行が大蔵省から切り離されて独立し、 0:57:10.469,0:57:11.924 他国の中央銀行と 0:57:11.924,0:57:14.911 対等の立場に置かれることは疑いない」とのことですね。 0:57:14.911,0:57:16.787 なぜそれほど確かなのですか。 0:57:16.870,0:57:19.846 大蔵省は少なくとも法的には 0:57:19.846,0:57:23.142 日銀を統制してきたのですが、 0:57:23.142,0:57:25.434 すっかり信用を失ってしまいました。 0:57:25.530,0:57:28.124 大蔵省が現在非難されているのは、 0:57:28.124,0:57:29.680 バブルを創出し 0:57:29.688,0:57:32.050 不況を長引かせた責任を問われ、 0:57:32.050,0:57:36.196 他にも多くの問題が最近日本で起こっているためです。 0:57:36.618,0:57:38.613 ところが日銀のほうは、 0:57:38.613,0:57:41.453 これまでずっと国民の批判の眼差しを浴びないまま、 0:57:41.453,0:57:43.922 今度はこれを利用して、こう言おうとしています。 0:57:43.922,0:57:45.800 そうだよね、大蔵省は悪かった。 0:57:45.800,0:57:48.524 だから私たちには今や独立することが必要なのです。 0:57:48.524,0:57:50.253 リチャード、どうもありがとう。 0:57:50.419,0:57:52.657 東京のジャーディン・フレミング証券会社の 0:57:52.657,0:57:55.233 チーフ・エコノミスト、リチャード・ヴェルナーでした。 0:57:58.200,0:57:59.494 1994年に 0:57:59.494,0:58:02.160 日銀総裁の地位を退いて間もなく、 0:58:02.727,0:58:04.317 三重野は 0:58:04.317,0:58:07.105 あるキャンペーンに乗り出し 0:58:07.105,0:58:10.134 さまざまな協会や利益団体に対して演説した。 0:58:11.950,0:58:15.000 彼は日銀法を変えるよう働き掛けた。 0:58:15.250,0:58:18.300 彼の論法は、日銀が間違った政策を取るよう 0:58:18.300,0:58:21.600 大蔵省が圧力をかけた、と 0:58:21.663,0:58:23.880 微妙にほのめかすものだった。 0:58:26.000,0:58:28.500 将来このような問題を回避するうえで、 0:58:28.750,0:58:32.960 日銀は完全な合法的独立を承認される必要があるというのだ。 0:58:36.000,0:58:37.600 三重野によれば、 0:58:37.850,0:58:40.113 中央銀行を独立させることは、 0:58:40.150,0:58:44.321 歴史によって育まれた人類の智慧を反映するものだった。 0:58:46.600,0:58:50.740 1998年、通貨政策は 0:58:50.740,0:58:53.923 新たに独立した日銀の手に委ねられた。 0:58:56.000,0:58:58.906 ではあなたは、政治家もエコノミストも 0:58:58.906,0:59:01.381 もっと多くの通貨を創造するよう日銀に圧力を 0:59:01.381,0:59:03.744 さらにもっとかけるべきだというのですね。 0:59:03.951,0:59:06.781 でも多くの評論家は、それは中央銀行の独立に 0:59:06.781,0:59:09.700 干渉することだというでしょう。 0:59:09.950,0:59:11.760 その点をどう考えますか? 0:59:12.010,0:59:13.540 まさにその通りです。 0:59:13.790,0:59:16.205 これは中央銀行の独立に干渉することであり、 0:59:16.205,0:59:18.576 まさに我々が必要としている事柄なのです。 0:59:22.400,0:59:27.400 政治体制の変革 0:59:28.000,0:59:31.800 バブルがはじけた後に続いた数多くのスキャンダルも 0:59:32.430,0:59:34.970 自由民主党による1955年体制を 0:59:34.970,0:59:37.644 破滅させることになった。 0:59:40.500,0:59:42.390 かつての体制では 0:59:42.390,0:59:46.500 政治家は異なる政策を掲げて角逐を演じることはなかった。 0:59:46.750,0:59:49.300 政策は官僚が作り、 0:59:49.356,0:59:53.225 政治家は公共事業で地方の支持基盤をなだめることに 0:59:53.225,0:59:55.555 専念していたにすぎない。 0:59:59.100,1:00:00.700 1997年10月には 1:00:00.950,1:00:03.878 戦後史で初めて 1:00:03.878,1:00:07.040 経済を刺激するためのすべての政策構想が、 1:00:07.480,1:00:10.667 官僚ではなく政治家によって出された。 1:00:15.300,1:00:17.496 次いで2001年初め 1:00:17.550,1:00:21.000 新しいタイプの政治家が権力の座に押し上げられた。 1:00:21.720,1:00:25.963 (ニュース) 小泉純一郎が次期総理の本命馬として現れ、人気を博していることから、 1:00:25.963,1:00:27.887 日本国債市場は 1:00:27.887,1:00:30.324 今月最大の反騰を示しました。 1:00:30.491,1:00:33.793 小泉純一郎が総理大臣となった。 1:00:35.200,1:00:38.100 彼の人気と政策は、しばしば 1:00:38.350,1:00:41.320 マーガレット・サッチャーやロナルド・レーガンにたとえられた。 1:00:42.300,1:00:44.355 小泉の政策スローガンは単純なものだった。 1:00:44.355,1:00:47.320 「構造改革なくして経済回復なし」 1:00:54.000,1:00:56.800 2001年のジェノヴァ・サミットで彼は言った。 1:00:57.050,1:01:00.874 「改革せず景気が先だと言って 1:01:00.874,1:01:03.300 景気が回復したら、 1:01:03.308,1:01:07.162 改革する意欲がなくなってしまう。 1:01:07.732,1:01:09.387 だから 1:01:09.387,1:01:11.743 「構造改革なくして成長なし」 1:01:11.743,1:01:15.520 という方針通り選挙後もやっていこうと思っている。」 1:01:18.560,1:01:20.246 2001年の一年間、 1:01:20.310,1:01:24.290 「構造改革なくして経済成長なし」のスローガンが 1:01:24.290,1:01:26.553 日本の各テレビ局で 1:01:26.553,1:01:29.280 ほとんど毎日放送された。 1:01:30.200,1:01:30.450 . 1:01:32.850,1:01:33.100 . 1:01:36.750,1:01:37.000 . 1:01:38.950,1:01:39.200 . 1:01:43.010,1:01:43.260 . 1:01:45.650,1:01:45.900 . 1:01:48.050,1:01:48.300 . 1:01:55.000,1:01:58.120 今や誰もが構造改革が必要だと信じています。 1:01:58.370,1:02:00.608 経済回復のためには、日本型資本主義を 1:02:00.608,1:02:02.818 廃棄する必要があります。なぜでしょうか。 1:02:03.000,1:02:05.123 あらゆる政策を試みても、どれも 1:02:05.123,1:02:07.260 うまくいかなかったようです。 1:02:07.290,1:02:10.443 だから悪いのは日本式の経済体制で、 1:02:10.443,1:02:12.893 これとは縁を切ったほうがよいというわけです。 1:02:13.164,1:02:17.760 経済の改革 1:02:18.010,1:02:20.440 日本はその経済体制を 1:02:20.690,1:02:23.200 アメリカ型市場経済に切り替えつつあった。 1:02:23.450,1:02:25.000 そのことはまた、 1:02:25.250,1:02:27.000 経済の中心が、 1:02:27.430,1:02:30.169 銀行から株式市場に移されつつあることを意味した。 1:02:32.300,1:02:35.440 預金者を誘惑して銀行預金を 1:02:35.483,1:02:38.100 危険な株式市場に投資させようと、 1:02:38.100,1:02:41.575 改革論者達はあらゆる銀行の預金保証を撤回し、 1:02:41.750,1:02:45.300 税制面のインセンティブで株式投資を優遇した。 1:02:47.840,1:02:50.840 アメリカ型株主資本主義が広まると、 1:02:51.110,1:02:53.239 失業者数が大幅に増え、 1:02:53.577,1:02:56.510 所得と富の格差が拡大した。 1:02:56.794,1:02:59.900 自殺と暴力犯罪件数も増加した。 1:03:03.400,1:03:05.000 次いで2002年、日銀は 1:03:05.250,1:03:09.720 銀行がバランスシートを悪化させ、借手に担保権を行使せざるをえなくなるよう 1:03:09.970,1:03:12.880 努力を強化した。 1:03:14.316,1:03:16.504 この時まで柳沢伯夫(やなぎさわ・はくお) 1:03:16.504,1:03:18.641 金融相は、日銀が吹き込んだ 1:03:18.641,1:03:20.660 銀行への税金投入の提案に 1:03:20.660,1:03:22.672 抵抗を続けていた。 1:03:25.544,1:03:27.772 これによって銀行を事実上国有化して 1:03:27.772,1:03:29.636 経営を引き継ぎ、 1:03:29.636,1:03:32.667 企業に融資の支払いを要求する権限を利用すれば、 1:03:32.917,1:03:37.137 多数の大企業の倒産の引き金が引かれる。 1:03:40.320,1:03:44.320 柳沢氏は、正式に総理大臣によって罷免され、 1:03:44.570,1:03:47.000 竹中平蔵と交替した。 1:03:47.250,1:03:50.900 竹中は、借手の抵当流れを増やす 1:03:50.908,1:03:53.317 日本銀行の計画の支持者だった。 1:03:53.732,1:03:57.137 竹中氏は、銀行を国有化できるようにするため、 1:03:57.250,1:04:01.240 銀行のバランスシートを劇的に悪化させるための政策を 1:04:01.393,1:04:04.900 実施しようとしていました。 1:04:07.120,1:04:09.252 竹中は銀行政策を監視する 1:04:09.252,1:04:11.480 作業部会を任命したが、 1:04:11.730,1:04:14.800 これには2人の前日銀職員が含まれていた。 1:04:15.050,1:04:17.288 その一人、木村剛(きむら・たけし)は、 1:04:17.290,1:04:21.000 会計方針の変更を実施することをただちに要求した。 1:04:21.250,1:04:24.300 これを実施すれば銀行のバランスシートが悪化し、 1:04:24.330,1:04:27.120 国有化は避けられないことになる。 1:04:28.400,1:04:31.200 東京の著名なエコノミスト森永卓郎は、力説した。 1:04:31.450,1:04:35.900 日銀が吹き込んだ竹中の提案には 1:04:36.150,1:04:39.200 本来のうま味はあまりない。 1:04:41.100,1:04:42.744 ところがその代わりに、 1:04:42.744,1:04:45.655 不良資産の購入を専門とする米国ハゲタカファンドを 1:04:45.655,1:04:48.163 主に利することになるのだ。 1:04:50.200,1:04:52.907 これらのファンドが直面した困難は、 1:04:52.930,1:04:57.820 20万件を上回る倒産があるにもかかわらず、 1:04:57.820,1:04:59.900 関心の対象となるほどの大きな企業は 1:04:59.908,1:05:02.682 ほとんど倒産しないことだった。 1:05:08.500,1:05:12.900 木村と福井が倒産計画に対する支援を表明した際、 1:05:13.150,1:05:15.937 木村は、不良資産の証券化のアドバイスを行う 1:05:15.937,1:05:19.730 民間企業を経営し、 1:05:20.128,1:05:23.750 福井は、世界最大のハゲタカファンド事業主の一つである 1:05:23.750,1:05:24.905 ウォールストリートの投資会社、 1:05:24.905,1:05:28.486 ゴールドマンサックスのアドバイザーだった。 1:05:29.560,1:05:30.441 福井氏、 1:05:30.441,1:05:34.508 また福井氏に助言を与える三重野氏と、三重野氏に助言を与える前川氏、 1:05:34.508,1:05:35.470 お判りでしょう、 1:05:35.470,1:05:38.918 これらの人たちが私が著作で述べている日銀のプリンスの一部です。 1:05:39.560,1:05:42.804 記録によると、1980年代と90年代に彼らは 1:05:42.804,1:05:45.700 金融政策の目標が何だと言ったでしょうか? 1:05:45.700,1:05:47.484 経済構造を変えることです。 1:05:47.484,1:05:50.934 ではどうやってそれをするのか。そう、それには危機が必要なのです。 1:05:50.934,1:05:53.579 そしてそれこそが、彼らが実際にした仕事なのです。 1:05:53.579,1:05:56.200 リチャード、時間がありません。ここで打ち切ります。 1:05:56.250,1:05:58.999 内部告発者 1:06:02.350,1:06:02.600 . 1:06:04.600,1:06:04.850 . 1:06:07.100,1:06:07.350 . 1:06:08.850,1:06:09.100 . 1:06:12.150,1:06:12.400 . 1:06:17.800,1:06:18.050 . 1:06:21.350,1:06:21.600 . 1:06:26.544,1:06:27.930 日本銀行では 1:06:27.930,1:06:30.955 窓口指導による銀行の貸出割当に責任を負う部署を 1:06:30.955,1:06:32.900 営業局といった。 1:06:33.150,1:06:35.720 では誰がこの局を任されていたか? 1:06:35.720,1:06:37.422 バブル期の1986年から1989年にかけて 1:06:37.422,1:06:39.760 営業局のトップにあったのは 1:06:40.010,1:06:41.600 福井俊彦氏でした。 1:06:41.850,1:06:44.322 現在日銀総裁の福井氏が 1:06:44.322,1:06:48.282 バブルを創った人物なのです。 1:06:49.100,1:06:52.250 日銀総裁になったとき、 1:06:52.500,1:06:54.000 福井はよくこう言った。 1:06:54.250,1:06:56.800 「古い成長モデルを破壊して 1:06:57.050,1:07:00.240 新しい時代に合ったモデルをつくっているところです。」 1:07:04.200,1:07:07.050 あらゆる点で彼らは成功しました。 1:07:07.300,1:07:10.000 彼らの目標のリストをご覧になると、 1:07:10.250,1:07:12.650 目標をすべて達成しています。 1:07:12.900,1:07:16.000 つまり、― 大蔵省を破壊し分割する 1:07:16.250,1:07:19.350 独立の監督官庁 [金融庁] を手に入れる 1:07:19.600,1:07:22.594 日銀法を改正して 1:07:22.594,1:07:26.000 日銀の独立そのものの達成する 1:07:26.250,1:07:30.250 製造業からサービス業へ融資の重点を移し 1:07:30.500,1:07:33.750 深層から経済構造が変わるよう工作する 1:07:34.000,1:07:36.179 無差別に市場開放と規制緩和を行い、 1:07:36.436,1:07:38.560 片っ端から一切合財を 1:07:38.560,1:07:40.560 自由化し私有化する. 1:07:41.200,1:07:42.700 1920年代には 1:07:42.950,1:07:46.600 日本の経済は多くの点で今日の米国経済と似ていた。 1:07:46.850,1:07:49.700 競争は激しく、強引なやり方で雇用と解雇が行われ、 1:07:49.950,1:07:52.500 大企業は乗っ取り合戦を繰り広げた... 1:07:52.750,1:07:54.500 官僚による統制はほとんどなく、 1:07:54.750,1:07:57.200 強力な株主達が高配当を要求し、 1:07:57.450,1:08:00.362 企業の資金は、銀行からではなく、市場から調達された。 1:08:00.702,1:08:02.967 だが戦後期を通じて 1:08:02.967,1:08:06.155 日本経済はこれとはまったく逆だった ― 1:08:06.584,1:08:10.910 官僚による高度の統制下で、競争はカルテルによって制限され、 1:08:10.910,1:08:13.165 融資は銀行によって行われ、株は持ち合いだった。 1:08:13.518,1:08:15.762 株主の力は弱められ、 1:08:15.762,1:08:19.465 企業の乗っ取りは皆無で、労働市場は凍結して 1:08:19.471,1:08:23.399 終身雇用と年功序列の社会がそこにあった。 1:08:26.120,1:08:30.600 不況を終わらせ業績を改善するため、 1:08:30.767,1:08:32.956 日本は福祉資本主義から 1:08:32.956,1:08:35.880 株主資本主義に戻らなければならないと主張された。 1:08:36.300,1:08:37.808 それにもかかわらず、 1:08:37.808,1:08:41.160 なぜ貿易収支が従来一貫して大幅な黒字であり続けた国が、 1:08:41.182,1:08:43.234 さらに競争力をつけるため 1:08:43.234,1:08:46.390 経済体制を変える必要があるのか、 1:08:46.390,1:08:49.700 依然として分からなかった。 1:08:51.000,1:08:56.600 東南アジア危機 1:09:04.000,1:09:07.830 日本は、1990年代に世界大恐慌以来の 1:09:07.830,1:09:09.772 最も深刻な不況を経験したアジアで 1:09:09.772,1:09:13.587 唯一の高パフォーマンス経済国ではなかった。 1:09:20.000,1:09:24.868 1997年、東南アジアで急激な成長を遂げた「タイガー」諸国の通貨は、 1:09:24.868,1:09:28.772 米国ドルとの固定為替相場を維持することができなかった。 1:09:29.240,1:09:33.934 これらの通貨は1年以内に60~80パーセント暴落した。 1:09:37.520,1:09:41.520 この値崩れの原因は1993年にさかのぼる。 1:09:42.640,1:09:44.580 この年、 1:09:44.580,1:09:48.520 アジアのタイガー経済国である韓国、タイ、インドネシアは、 1:09:48.770,1:09:52.899 資本勘定と国際金融機関の設立に関する規制について 1:09:53.149,1:09:56.513 強引な緩和政策を実施した。 1:09:56.881,1:09:59.346 これによって企業部門と銀行部門は 1:09:59.346,1:10:02.396 海外から自由に融資を受けることができるようになった。 1:10:02.950,1:10:04.832 これが可能になったのは 1:10:04.832,1:10:07.631 戦後期になって初めてのことだった。 1:10:15.100,1:10:19.050 実際には、アジアのタイガー経済国が海外から資金を借りる必要は 1:10:19.050,1:10:21.400 まったくなかった。 1:10:21.650,1:10:24.253 国内投資に必要なすべての資金は 1:10:24.253,1:10:26.503 自国で創造することができた。 1:10:27.840,1:10:30.600 実際には、資本移動の自由化は 1:10:30.760,1:10:33.332 海外からの圧力によるものだった。 1:10:36.000,1:10:37.600 1990年代の初期から、 1:10:37.850,1:10:41.760 IMF、世界貿易機関、米国財務省が 1:10:42.010,1:10:44.200 これらの国々に働きかけて 1:10:44.450,1:10:47.600 国内企業が海外から借金することを認めさせたのだ。 1:10:49.200,1:10:52.246 この3者は、新古典主義経済学が 1:10:52.246,1:10:55.760 自由市場と自由な資本移動によって経済成長が達せられることを 1:10:55.782,1:10:57.851 証明したと主張した。 1:11:01.000,1:11:04.320 ひとたび資本勘定が規制緩和された時点で、 1:11:04.570,1:11:07.840 中央銀行は国内企業が外国から融資を受けるよう、 1:11:08.090,1:11:10.160 逆らいがたいインセンティを創出する仕事に取り掛かった。 1:11:11.200,1:11:13.700 自国通貨で借り入れると 1:11:13.950,1:11:16.303 米国ドルよりも 1:11:16.332,1:11:18.800 高くつくようにしたのだ。 1:11:20.100,1:11:23.500 (世界銀行・河合正弘氏) 国内の実勢金利は 1:11:23.611,1:11:27.239 米国ドルの金利よりも高く、 1:11:28.000,1:11:32.500 為替レートは事実上固定されていました。 1:11:33.320,1:11:35.522 為替レートを維持すると言ったのは 1:11:35.522,1:11:37.368 政府と中央銀行でした。 1:11:37.652,1:11:39.539 その通りです。タイ中央銀行と 1:11:39.539,1:11:42.870 他の東アジア諸国の中央銀行は、 1:11:42.870,1:11:46.900 為替レートの調整に抵抗しました。 1:11:47.150,1:11:49.600 為替レートを守るという信号を 1:11:49.677,1:11:52.391 発信しようとしました。 1:11:57.500,1:12:00.944 中央銀行は、公式声明で 1:12:01.570,1:12:05.727 米国ドルとの固定為替相場を維持することを強調した。 1:12:06.750,1:12:10.120 借手が、当初借りたよりも多くを自国通貨で 1:12:10.120,1:12:12.698 返さなければならなくなる心配を 1:12:12.698,1:12:14.899 無用にするためだ。 1:12:19.489,1:12:21.314 タイにいた時、私は 1:12:21.314,1:12:23.404 まっすぐタイ銀行に行って尋ねました。 1:12:23.404,1:12:26.390 「非公式に信用を指導する仕組みが何かありますか?」 1:12:26.390,1:12:28.598 私がこれを尋ねると驚いていましたが、 1:12:28.598,1:12:30.550 自分が日本にいた時の研究から、 1:12:30.550,1:12:33.828 ことによると、何か似たものがあるだろうと思いました。 1:12:34.620,1:12:35.410 私の質問に答えたのは 1:12:35.410,1:12:36.286 若い職員で、 1:12:36.286,1:12:39.234 どんな政略が関係しているか承知していなかったかも知れませんが、 1:12:39.234,1:12:43.100 彼は言いました。「ええ、ええ、その信用の仕組みは私たちの銀行にあります。」 1:12:45.289,1:12:48.301 銀行は貸出を増やすよう命じられていたが、 1:12:48.301,1:12:50.268 生産部門の借入需要が 1:12:50.268,1:12:53.594 少なくなっているという事態に直面していた。 1:12:53.594,1:12:55.953 この部門の企業が、海外からの借入の 1:12:55.953,1:12:58.748 インセンティブを与えられていたためだ。 1:13:00.200,1:13:02.879 このため銀行は、最後の手段として 1:13:02.879,1:13:06.466 リスクの高い借手への貸出を増やさなければならなかった。 1:13:10.620,1:13:12.686 中央銀行が 1:13:12.686,1:13:16.750 自国通貨を米国ドルに固定することに同意したため、 1:13:16.750,1:13:18.276 輸入が縮小し始め、 1:13:18.324,1:13:20.800 経済競争力が低下した。 1:13:21.863,1:13:25.168 ところが国際収支統計で輸出として勘定される国外債によって 1:13:25.168,1:13:27.560 これらの国々の経常収支は 1:13:27.560,1:13:30.520 維持されていた。 1:13:37.000,1:13:38.525 投機家が 1:13:38.525,1:13:43.310 タイバーツ、韓国ウォン、インドネシア・ルピーを売り始めると、 1:13:43.712,1:13:45.182 各国の中央銀行は 1:13:45.182,1:13:47.225 固定相場を維持しようとして 1:13:47.225,1:13:50.134 外貨準備を事実上すべて使い果たすに至ったが、 1:13:50.141,1:13:52.710 これは無益な試みとなった。 1:13:54.960,1:13:57.306 このため海外の資金提供者に 1:13:57.306,1:14:02.412 為替相場が割高となっているタイミングで資金を回収する機会をたっぷりと与えることになった。 1:14:04.100,1:14:07.317 これらの国々の中央銀行は、外貨準備を使い果たした場合、 1:14:07.317,1:14:08.987 債務不履行を避けるため 1:14:08.987,1:14:12.112 IMFの援助を求めなければならなくなることを心得ていた。 1:14:13.900,1:14:15.800 一たびIMFが関与すると 1:14:16.050,1:14:17.600 ワシントンを本拠とするこの機関が何を要求するか、 1:14:17.850,1:14:20.613 中央銀行は知っていた。 1:14:21.450,1:14:23.496 過去30年の間、 1:14:23.496,1:14:26.265 このような場合同じことが要求されてきた。 1:14:26.950,1:14:30.768 それは中央銀行の独立だった。 1:14:33.100,1:14:35.000 7月16日、 1:14:35.250,1:14:38.300 タイの財務大臣が日本に緊急援助を求めるため 1:14:38.550,1:14:40.900 空路で東京にやって来た。 1:14:45.640,1:14:50.703 この時、日本には2,130億ドルの外貨準備高があった。 1:14:52.987,1:14:55.674 これはIMFの資金の総額を上回る。 1:14:57.690,1:14:59.117 日本側は援助を厭(いと)わなかった。 1:14:59.117,1:15:02.251 ところがワシントンは日本が主導権を発揮しようとするのを阻止した。 1:15:02.350,1:15:05.240 アジアの通貨危機の発生に対するどのような解決策も、 1:15:05.248,1:15:08.527 IMFを介してワシントンから提示されなければならなかった。 1:15:13.000,1:15:15.600 (ニュース) 2か月にわたる投機攻撃の後 1:15:15.656,1:15:18.561 タイ政府はバーツを変動相場制に切り替えました。 1:15:24.800,1:15:27.900 通貨救済に乗り出すIMF 1:15:28.150,1:15:29.875 現在に至るまでIMFは 1:15:29.875,1:15:31.611 多くの難問をかかえる 1:15:31.611,1:15:34.218 タイ、インドネシア、韓国の経済に対して 1:15:34.218,1:15:37.180 ほぼ1200億ドルの援助を約束しています。 1:15:37.400,1:15:40.600 危機に見舞われた国々にやって来るとすぐに 1:15:40.691,1:15:44.900 IMFチームは中央銀行の内部にオフィスを設置し、 1:15:46.825,1:15:51.100 そこから、降伏条件に等しい事柄が何であるかを指図した。 1:15:53.930,1:15:57.166 IMFは、中央銀行と銀行による信用創造に対する制限、 1:15:57.173,1:15:59.722 大規模な法改正、金利の急激な 1:15:59.722,1:16:01.614 引き上げを含む 1:16:01.614,1:16:05.144 一連の政策を要求した。 1:16:08.280,1:16:10.286 金利が引き上げられると、 1:16:10.286,1:16:13.686 高リスクの借手達が債務の履行を怠り始めた。 1:16:16.600,1:16:19.500 タイ、韓国、インドネシアの銀行制度は 1:16:19.556,1:16:22.987 大量の不良債権に悩み、 1:16:22.987,1:16:25.300 事実上破綻した。 1:16:26.120,1:16:28.531 さらに銀行ばかりか、健全な企業でさえ 1:16:28.531,1:16:31.343 ますます信用が収縮することから苦しみ始め、 1:16:31.343,1:16:33.951 企業の倒産が急増した。 1:16:34.215,1:16:38.350 失業率は、1930年代以来、最高の水準に上昇した。 1:16:44.400,1:16:47.806 (ニュース) 経済の不調に悩む国々の救済でIMFが果たす役割が、 1:16:47.822,1:16:49.768 激しい論争の対象となっています。 1:16:49.963,1:16:52.224 IMFはアジア経済危機を悪化させていると 1:16:52.224,1:16:53.675 非難する人々もいます。 1:16:53.815,1:16:57.575 (マハティール首相) たとえマレーシアの経済を破壊しなければならないとしても、 1:16:57.575,1:17:00.549 彼らはそれを、自分たちが正しいことを証明するために行うでしょう。 1:17:00.549,1:17:02.124 IMFは役に立ちませんでした。 1:17:03.413,1:17:04.556 IMFは 1:17:04.556,1:17:07.631 その政策の結果がどのようなものとなるかをよく知っていた。 1:17:08.302,1:17:09.965 韓国の場合、 1:17:10.153,1:17:13.906 IMFは非公開の詳細な研究を準備し、 1:17:13.950,1:17:16.493 金利が5%まで上昇した場合 1:17:16.493,1:17:19.206 韓国企業の倒産が何件になるか 1:17:19.206,1:17:22.280 計算していた。 1:17:24.100,1:17:27.050 IMFの韓国との最初の合意では 1:17:27.050,1:17:32.080 金利をちょうど5%上げることが要求された。 1:17:35.200,1:17:37.972 明らかにIMFの政策の狙いは、アジア諸国の 1:17:38.050,1:17:41.100 経済の回復を創出することではありません。 1:17:41.239,1:17:44.199 まったく別の隠れた意図を達成しようとしています。 1:17:44.199,1:17:46.974 それは、これらの国々の経済・政治・社会体制を 1:17:46.974,1:17:48.689 変えることなのです。 1:17:48.960,1:17:52.501 実のところIMFの取引条件だと、韓国、タイのような国は、 1:17:52.501,1:17:55.324 通貨供給を再び拡大させることができなくなります。 1:17:55.441,1:17:58.739 では経済危機をますます悪化させていると。う~ん、面白いですね。 1:17:58.739,1:18:00.646 しかもIMFには隠れた意図があるというのですね。 1:18:00.646,1:18:03.687 そうですね、それほど隠されているというわけではありませんが。 1:18:03.687,1:18:05.887 IMFは、銀行から土地に至るまで 1:18:05.887,1:18:08.829 海外の事業者が何でも購入できるよう、 1:18:08.829,1:18:13.931 法律を変更しなければならないと、アジアの国々に明らかに要求しているわけですから。 1:18:14.519,1:18:18.782 また実のところ、IMFの取引条件に従えば、銀行業界の資本構成の変更は 1:18:18.782,1:18:20.889 外貨を使うことによってしか 1:18:20.889,1:18:22.279 行えません。 1:18:22.470,1:18:24.844 ところが、これはまったく必要のないことです。 1:18:24.844,1:18:27.299 なぜならば、これらの国に中央銀行がある限り、 1:18:27.356,1:18:30.922 紙幣を印刷しさえすれば銀行業界の資本構成を変更できるのですから。 1:18:30.922,1:18:33.153 この目的のために外貨は必要ありません。 1:18:33.298,1:18:38.655 ですからIMFの意図は、明らかにアジアを海外事業者の権益のために強引に抉じ開けようという算段なのです。 1:18:40.400,1:18:44.341 IMFは、経営難の銀行を救済せず、 1:18:44.853,1:18:49.400 その代わりに閉鎖して、不良資産として安く売り払うよう要求した。 1:18:49.650,1:18:52.200 それもしばしば大手の米国投資銀行に売却せよというのだ。 1:18:53.320,1:18:55.810 (ニュース) タイで起った好ましい結末の一つは、 1:18:55.810,1:18:59.250 金融会社56社の主要な資産が 1:18:59.250,1:19:01.400 競売に出されることです。 1:19:01.650,1:19:03.900 あなたの考えでは 1:19:04.600,1:19:07.412 その56社の一部のオーナーには 1:19:07.412,1:19:10.400 資産を買い戻すことが許されると思いますか? 1:19:11.500,1:19:13.255 IMFは、ほとんどの場合 1:19:13.255,1:19:16.550 銀行が海外投資家に売却されなければならないことを 1:19:16.550,1:19:17.791 同意書に明記するよう 1:19:17.791,1:19:19.575 指図した。 1:19:23.920,1:19:26.717 (ルービン米財務長官) 財政の安定を回復するうえで 1:19:26.717,1:19:30.220 これらの改革プログラムが確かな鍵になることを 1:19:30.250,1:19:32.200 強調したいと思います。 1:19:32.450,1:19:34.500 (ニュース) 初めて韓国は、 1:19:34.550,1:19:36.800 IMFの指図に応じる大きな歩みとして 1:19:36.850,1:19:40.200 5つの銀行を閉鎖しました。 1:19:41.522,1:19:44.860 銀行の閉鎖や 1:19:44.860,1:19:47.132 合併と買収の結果、 1:19:47.201,1:19:49.753 都市銀行の数が減り、 1:19:49.891,1:19:54.510 海外の戦略的投資家が一般受けしています。 1:19:54.553,1:19:57.619 これは注目に値する変化です。 1:20:02.800,1:20:06.620 アジアでは、政府が経済不振に陥った金融機関を生かすために 1:20:06.620,1:20:08.514 緊急援助を行うことは 1:20:08.514,1:20:10.508 認められなかった。 1:20:11.300,1:20:13.524 ところがこの一年後に同様の危機が 1:20:13.524,1:20:15.700 アメリカ本国を襲った時、 1:20:15.700,1:20:19.680 同じ機関がとった対応はこれとは異なるものだった。 1:20:21.320,1:20:27.320 ロングターム・キャピタル・マネジメントの救済 1:20:28.080,1:20:30.355 コネチカット州に本拠を置くヘッジファンド、 1:20:30.355,1:20:32.494 ロングターム・キャピタル・マネジメントは 1:20:32.494,1:20:34.748 富裕な個人と機関だけを顧客とし、 1:20:34.748,1:20:38.398 顧客から50億ドルを集めて 1:20:38.565,1:20:42.301 25倍のレバレッジを効かせ 1:20:42.301,1:20:44.900 世界の銀行から 1:20:44.910,1:20:47.808 1,000億ドルを超える資金を借りて 1:20:47.808,1:20:50.596 運用を行っていた。 1:20:53.600,1:20:56.360 損失が出て、融資を行った銀行を 1:20:56.360,1:20:58.900 徐々に根底から揺るがせる兆候があらわれ、 1:20:59.660,1:21:02.212 これらが互いに連動して米国の金融システムと 1:21:02.212,1:21:04.405 経済が危機にさらされる恐れが生じると、 1:21:04.694,1:21:08.282 米国連邦準備銀行はデフォルトを避けるため 1:21:08.512,1:21:10.955 ウォールストリートと国際銀行に頼って 1:21:10.977,1:21:12.743 カルテルと同様の 1:21:12.743,1:21:16.165 緊急援助のしくみを編成した。 1:21:19.000,1:21:22.187 おっしゃる通り、確かにワシントンとニューヨークの物の見方は 1:21:22.318,1:21:24.789 どのようにも融通のつく代物に思えますね。 1:21:24.998,1:21:28.122 アジア諸国に「金融機関の救済はしない」ようにと言って 1:21:28.122,1:21:31.331 まもなくしてニューヨークのヘッジファンドの 1:21:31.331,1:21:33.209 ロング・ターム・キャピタル・マネージメントが 1:21:33.209,1:21:35.694 ほとんど破綻状態になると、 1:21:35.694,1:21:38.200 すぐに救済の仕組みが組織された。 1:21:38.450,1:21:41.642 これはアジア諸国に対して言ったことと矛盾しています。 1:21:41.819,1:21:46.040 (アジア開発銀行・吉富勝氏) でも公的資金はこのヘッジファンドの救済に使わなかったと言っていますね。 1:21:46.290,1:21:50.900 よく知られているように、打ち合わせは連邦準備銀行の内部で行われたのです。 1:21:52.200,1:21:55.600 なぜアメリカは、自国の領土内では 1:21:55.608,1:21:58.296 同じルールを施行するつもりはないのに、 1:21:58.698,1:22:00.837 自由市場の名において 1:22:00.837,1:22:04.550 外国に負担となる要求を課すのだろうか? 1:22:05.500,1:22:08.724 日本とアジアの危機の例は 1:22:08.850,1:22:11.840 どのようにすれば経済的所有権の再分配が促進され、 1:22:12.090,1:22:15.713 法律、経済構造、政治が変革されるよう 1:22:15.750,1:22:19.911 危機を工作することができるかを説明している。 1:22:22.100,1:22:24.250 今日では、これらと同様の出来事が 1:22:24.250,1:22:26.579 ユーロ圏エリアに起り、その影響が広まっている。 1:22:26.655,1:22:32.000 欧州債務危機 1:22:32.320,1:22:35.533 ユーロ通貨圏の国々には 1:22:35.570,1:22:38.680 自国の通貨を使用する権利がなく、 1:22:38.930,1:22:42.100 通貨発行権は欧州中央銀行に委譲されている。 1:22:42.500,1:22:44.696 (ニュース) スタジオにリチャード・ヴェルナーさんがお越しです。 1:22:44.696,1:22:46.767 英国サウサンプトン大学で教授を務められています。 1:22:46.863,1:22:50.215 欧州中央銀行に対するあなたのアドバイスは? 1:22:50.215,1:22:54.800 明日会議が開かれますが、あなたならばどんな発言をするでしょうか。 1:22:56.120,1:23:00.170 そうですね、この場合もやはり、金利よりも信用創造量に重点を置いて 1:23:00.200,1:23:02.320 取り組まないといけません。 1:23:02.570,1:23:06.644 欧州中央銀行には、過去の誤りから学ばなければならない多くの事柄があります。 1:23:06.644,1:23:09.772 なぜならば、過去において信用創造をほんとうに十分注意して 1:23:09.772,1:23:11.518 観察したとは思えないからです。 1:23:11.629,1:23:15.200 スペイン、アイルランドでは、欧州中央銀行の監視のもとで 1:23:15.201,1:23:17.789 大幅な信用の拡大 [=金融緩和] が行われました。 1:23:20.740,1:23:22.320 金利はもちろんユーロ圏と同じですが、 1:23:22.320,1:23:24.960 信用サイクルの量がとても異なっています。 1:23:25.210,1:23:28.194 ユーロ使用地域の金利は同一ですが、 1:23:28.194,1:23:31.375 2002年に、欧州中央銀行はドイツ連邦銀行に対して 1:23:31.375,1:23:33.667 史上最大額の信用収縮を指図し、 1:23:34.584,1:23:37.184 アイルランド中央銀行にはまるで将来を気遣う必要がないかのように、 1:23:37.212,1:23:39.108 紙幣を印刷するよう指図しました。 1:23:39.108,1:23:40.877 そうすると何が起こるでしょうか。 1:23:40.877,1:23:43.637 金利が同じだから、成長も同じ? 違います。 1:23:43.651,1:23:47.741 ドイツは不況になり、アイルランドは突然好景気にわきました。 1:23:50.100,1:23:53.823 2004年から、欧州中央銀行の監視下で 1:23:54.182,1:23:57.944 アイルランド、ギリシア、ポルトガル、スペインでは1年に20%の割合で 1:23:57.944,1:24:01.367 銀行の信用創造が増加し、 1:24:01.367,1:24:03.965 不動産価格が急騰した。 1:24:05.960,1:24:08.650 銀行の貸出額が減少すると、 1:24:08.650,1:24:10.800 不動産価格が暴落して 1:24:10.800,1:24:12.320 住宅開発業者が破産した。 1:24:12.570,1:24:15.440 アイルランド、ポルトガル、スペイン、ギリシアの 1:24:15.440,1:24:17.313 銀行業界は支払不能となった。 1:24:19.300,1:24:22.213 欧州中央銀行は、これらの国々のバブルを防ぐことができた。 1:24:22.767,1:24:26.510 バブル後の銀行経営と経済の危機を終わらせることもできた。 1:24:27.050,1:24:28.925 だが各主権国家が、 1:24:28.925,1:24:32.188 欧州連合に財政権限と予算権を委譲するなどの 1:24:32.188,1:24:35.840 大きな政治的譲歩を行うまで、 1:24:35.840,1:24:38.362 これを行うことは拒否された。 1:24:42.000,1:24:44.375 スペインとギリシアの両国では 1:24:44.375,1:24:47.358 若年層の失業が50%にまで達し、 1:24:47.484,1:24:50.865 多くの若者が海外に職を求めざるをえなかった。 1:24:51.212,1:24:55.560 ギリシアの納税者が教育費を支払ったギリシア人医師たちが 1:24:55.560,1:24:57.304 現在ではドイツで働いている。 1:25:00.700,1:25:05.300 欧州中央銀行の決定機関の審議は、秘密である。 1:25:05.550,1:25:08.641 単に民主的な公開討論会や議論などによって 1:25:08.650,1:25:12.313 欧州中央銀行に影響力を行使しようとすることも、 1:25:12.350,1:25:16.000 マーストリヒト条約によって禁じられている。 1:25:17.600,1:25:19.563 欧州中央銀行は、 1:25:19.563,1:25:22.584 個々の国家の法律と司法の権限外の、 1:25:22.584,1:25:25.524 上位に位置する国際機関なのだ。 1:25:27.050,1:25:30.000 上級職員は外交パスポートを携帯し、 1:25:30.250,1:25:34.637 欧州中央銀行内部のファイルと文書は 1:25:34.750,1:25:36.917 いかなる警察権力も検事も 1:25:36.917,1:25:40.080 調査や押収を行うことができない。 1:25:43.840,1:25:46.748 エコノミストの間で、欧州中央銀行は 1:25:46.750,1:25:49.548 世界で最も大きな権限を持ち、透明性が最も少ない 1:25:49.550,1:25:52.200 銀行の一つとしてよく知られている。 1:25:52.600,1:25:54.541 それにもかかわらず前総裁を務めた 1:25:54.550,1:25:56.246 ジャン-クロード・トリシェの 1:25:56.246,1:25:59.203 この問題に対する取扱いは、単に問題はないと主張して 1:25:59.203,1:26:01.960 押し通したにすぎなかった。 1:26:03.800,1:26:06.967 「欧州中央銀行は、世界で最も透明な 1:26:06.967,1:26:09.371 中央銀行の一つであり、 1:26:09.490,1:26:11.779 この領域で最先端の中央銀行制度を 1:26:11.779,1:26:14.332 定義するうえで一役買ってきた...」 1:26:14.339,1:26:16.272 彼はそう言い張った。 1:26:18.280,1:26:21.600 世界経済フォーラム - ダヴォス、スイス 1:26:21.638,1:26:23.998 エコノミストのリチャード・ヴェルナーです。 1:26:23.998,1:26:25.892 トリシェ氏に質問します。 1:26:29.240,1:26:30.462 お尋ねしたいのは、 1:26:30.593,1:26:33.449 マーストリヒト条約または欧州中央銀行定款のどこに、 1:26:33.449,1:26:35.496 欧州中央銀行の仕事は、構造改革 1:26:35.496,1:26:39.400 または他の何らかの政治課題を支援することだと述べられているのでしょうか。 1:26:39.800,1:26:43.248 私は非常に明確に申しましたし、我々は常にたいへん明確に述べていたことですが、 1:26:43.248,1:26:46.475 この領域で私達は、過去において何ら責任を負っていませんでした。 1:26:47.360,1:26:49.500 我々には考えがあり、それを発言します。 1:26:51.272,1:26:54.232 たぶん、暮らし向きがもっと良くなることを、我々の側から 1:26:54.232,1:26:58.229 一般の人々に対して説明するうえで、一役買うことができるとすれば、 1:26:58.229,1:27:01.236 ヨーロッパがこの構造改革の実施に乗り出すための 1:27:01.236,1:27:03.927 助けとなることでしょう。 1:27:06.550,1:27:08.164 これはたいへん重要なことで 1:27:08.164,1:27:10.296 これについてはコンセンサスがあります。 1:27:10.296,1:27:12.750 経済状況の診断で、 1:27:12.750,1:27:14.375 この点について非常に多数の人々の 1:27:14.375,1:27:17.700 意見の一致があります。 1:27:25.000,1:27:26.332 欧州委員会は 1:27:26.332,1:27:28.672 投票による選出によらないメンバーから成り、 1:27:28.672,1:27:32.224 統一国家に付き物のあらゆるものを具えたヨーロッパ合衆国を築くことを 1:27:32.224,1:27:33.851 狙いとする集団だ。 1:27:34.522,1:27:37.941 この委員会の関心は、欧州の個々の政府を弱体化し、 1:27:37.941,1:27:41.420 民主的な議会の影響力を弱めることにある。 1:27:45.000,1:27:50.598 マーストリヒト条約で頼みの綱だった中央銀行の独立を擁護する証拠は、 1:27:50.598,1:27:53.165 結局、他ならぬ欧州委員会自体が委託した、 1:27:53.165,1:27:54.922 たった一つの研究から 1:27:54.922,1:27:57.960 引き出されたものだったことが分かる。 1:27:58.850,1:28:02.900 1992年に『一つの市場、一つの通貨』という表題で公刊されたこの研究は、 1:28:03.150,1:28:05.300 中央銀行を独立させれば 1:28:05.315,1:28:09.200 インフレが低くなることを証明しようとしたものだ。 1:28:11.243,1:28:15.182 この研究は、以来、オックスフォード大学の研究者、ジェームズ・フォーダーが、 1:28:15.182,1:28:16.689 望まれる結果を得るための 1:28:16.689,1:28:18.455 誤魔化 (ごまか) しであったことを 1:28:18.455,1:28:20.561 証明して現在に及んでいる。 1:28:22.000,1:28:24.790 私たちが聞かされている中央銀行の話は 1:28:24.790,1:28:27.550 つじつまが合いません。 1:28:27.599,1:28:31.805 中央銀行の働きが、彼らが私たちに信じてほしいものと異なる 1:28:31.805,1:28:34.203 証拠があるのです。 1:28:35.840,1:28:38.245 世界中に存在する中央銀行がもつ権限は、 1:28:38.258,1:28:41.703 大きな影響を与えるにもかかわらず、ほとんど理解されていない。 1:28:42.731,1:28:46.130 中央銀行は、しばしば独立し、責任を負わず、目立たない。 1:28:46.213,1:28:48.272 陰で運営が行われているが、 1:28:48.625,1:28:51.200 その行動は私たちすべてに影響をおよぼす。 1:28:53.400,1:28:56.448 世界のほとんどすべての国にある中央銀行と 1:28:56.450,1:28:59.993 IMFは、これを達成するうえで多くの貢献をしました。 1:29:00.050,1:29:02.200 完全に独立し、 1:29:02.236,1:29:04.570 事実上いかなる民主的な機関に対しても 1:29:04.570,1:29:06.320 責任を負いません。 1:29:06.618,1:29:08.383 議会に対する責任は 1:29:08.383,1:29:11.551 通常大きなものではなく、事実上意味がありません。 1:29:12.200,1:29:14.181 日本銀行にせよ、 1:29:14.181,1:29:17.240 米国連邦準備銀行、イギリス銀行にせよ、 1:29:17.240,1:29:19.000 欧州中央銀行にせよ、 1:29:19.000,1:29:21.968 中央銀行の誤魔化しの例は山ほどある。 1:29:23.600,1:29:26.000 米国では、1920年代に 1:29:26.250,1:29:28.456 銀行が通貨を創造して 1:29:28.456,1:29:31.737 これを投機家に提供することが奨励された結果 1:29:31.737,1:29:34.820 不況が起った。 1:29:34.820,1:29:36.934 これによって自由を愛するアメリカ市民が説得され、 1:29:36.934,1:29:38.777 強力な国家統制が行われない 1:29:38.777,1:29:40.977 分権的な連邦制度ではうまく行かないと 1:29:40.977,1:29:42.503 考えられるようになった。 1:29:45.800,1:29:49.000 1990年代に日本人が説得されたのは、 1:29:49.770,1:29:51.629 それまで少なからぬ繁栄と平等をもたらしていた 1:29:51.629,1:29:54.144 日本の経済体制が、 1:29:54.167,1:29:56.652 いわゆる自由市場経済体制への変革を 1:29:56.652,1:29:58.462 必要とすることだった。 1:30:00.400,1:30:03.993 中央銀行家達は、日本の変革がまだ完了しないうちに 1:30:04.186,1:30:06.900 再び攻撃を仕掛け、IMFの先導によって 1:30:06.936,1:30:10.770 アジアのタイガー経済国に侵入した。 1:30:15.600,1:30:18.520 現在の欧州債務危機は、 1:30:18.550,1:30:22.400 中央銀行の誤魔化しの今ひとつの例だ。 1:30:24.000,1:30:25.805 構造改革が必要だとする 1:30:25.805,1:30:28.100 民意を形成するため 1:30:28.100,1:30:30.615 故意に不景気を創り出し、 1:30:30.615,1:30:33.280 そのうえ不必要にこれを長引かせることは、 1:30:33.530,1:30:36.830 権力の乱用とされるのでなければならない。 1:30:39.800,1:30:43.382 一般の人々は、これほど犠牲の大きな不正直なやり方で 1:30:43.382,1:30:47.395 巧みに操られ、踊らされることを本当に望んでいるでしょうか? 1:30:49.484,1:30:53.477 字幕  阿呆神望  (シャンティ・フーラ: https://shanti-phula.net/ja/ )