WEBVTT 00:00:06.488 --> 00:00:07.628 「静粛に 静粛に 00:00:07.628 --> 00:00:09.388 さあ 次は誰だね?」 00:00:09.388 --> 00:00:11.438 「裁判長 クレオパトラです 00:00:11.438 --> 00:00:16.888 このエジプトの女王は 色恋沙汰で 2人の優れたローマ軍人を破滅させ 00:00:16.908 --> 00:00:19.349 共和政を崩壊させました」 00:00:19.349 --> 00:00:22.128 「裁判長 こちらこそがクレオパトラです 00:00:22.128 --> 00:00:24.549 歴史上で最も権力のあった女性の1人であり 00:00:24.549 --> 00:00:30.619 その統治は約22年間 エジプトに安定と繁栄をもたらしました」 00:00:30.619 --> 00:00:33.936 「ところで なぜ彼女の容姿すら 定かではないのか?」 00:00:33.936 --> 00:00:37.516 「クレオパトラに関する 芸術作品や描写のほとんどは 00:00:37.516 --> 00:00:39.880 彼女に関する記述と同様に 00:00:39.880 --> 00:00:42.680 クレオパトラの死後 紀元前1世紀に登場したものです」 00:00:42.680 --> 00:00:44.771 「では 実際に分かっていることは何だ?」 00:00:44.771 --> 00:00:48.688 「クレオパトラ7世は プトレマイオス朝最後の女王で 00:00:48.688 --> 00:00:51.570 アレクサンドロス大王による征服後 エジプトを統治した― 00:00:51.570 --> 00:00:54.760 ギリシャ系マケドニアの出身です 00:00:54.760 --> 00:00:58.270 兄弟婚をした弟と アレキサンドリアで 00:00:58.270 --> 00:01:00.721 共同統治を行いましたが 00:01:00.721 --> 00:01:03.720 その弟が最後には 彼女を国外に追放します」 00:01:03.720 --> 00:01:05.899 「だが これがローマと 何の関係があるのかね?」 00:01:05.899 --> 00:01:08.361 「エジプトは長い間 ローマの属国で 00:01:08.361 --> 00:01:12.089 クレオパトラの父は共和制ローマに 資金面で大きな借りがありました 00:01:12.089 --> 00:01:15.690 ローマの内戦でカエサルに敗北した ポンペイウスが 00:01:15.690 --> 00:01:18.710 エジプトの保護を求めてきましたが 00:01:18.710 --> 00:01:22.500 逆にクレオパトラの弟によって 処刑されました」 00:01:22.500 --> 00:01:24.264 「カエサルは喜んだに違いない」 00:01:24.264 --> 00:01:29.781 「カエサルは処刑を不当だとみなし エジプトに借金の返済を要求しました 00:01:29.781 --> 00:01:31.281 エジプトの併合も可能でしたが 00:01:31.281 --> 00:01:35.931 クレオパトラは自分を王位に復位させるよう カエサルを説得したのです」 00:01:35.931 --> 00:01:38.221 「彼女はとても説得に長けていたとか」 00:01:38.221 --> 00:01:41.716 「当然です クレオパトラは魅力的な女性でしたから 00:01:41.716 --> 00:01:43.611 21歳で軍を指揮し 00:01:43.611 --> 00:01:45.221 数カ国語を操り 00:01:45.221 --> 00:01:48.932 都会にある世界最高の図書館で 当時の偉大な学者たちと共に 00:01:48.932 --> 00:01:51.492 教育を受けたのですから」 00:01:51.492 --> 00:01:52.630 「ふーむ」 00:01:52.630 --> 00:01:56.922 「ローマが彼を必要とした時もクレオパトラが エジプトで足止めしていました」 00:01:56.922 --> 00:01:59.102 「カエサルは単に 遊んでいたわけではありません 00:01:59.102 --> 00:02:01.901 エジプトの文化や知識に魅了され 00:02:01.901 --> 00:02:04.181 滞在中に多くのことを学びました 00:02:04.181 --> 00:02:06.665 ローマに戻ると 暦を刷新し 00:02:06.665 --> 00:02:07.992 国勢調査の実施を命じ 00:02:07.992 --> 00:02:10.262 公立図書館の計画を立て 00:02:10.262 --> 00:02:13.343 多くの新しい社会基盤のプロジェクトを 提案しました」 00:02:13.343 --> 00:02:17.651 「そう まさにすべてが野心的で それが故に 暗殺されたのです」 00:02:17.741 --> 00:02:20.743 「風変わりなローマ政治は 女王のせいではありません 00:02:20.923 --> 00:02:23.921 彼女の職務はエジプトを統治することであり それは成功していたのです 00:02:23.921 --> 00:02:25.542 経済を安定させ 00:02:25.542 --> 00:02:27.212 巨大な官僚機構をうまく管理し 00:02:27.212 --> 00:02:30.403 聖職者や役人による汚職を抑制しました 00:02:30.403 --> 00:02:33.472 干ばつに襲われたときは 穀物倉を民間に開放し 00:02:33.472 --> 00:02:35.802 税金恩赦を実行しました 00:02:35.802 --> 00:02:39.452 それによってエジプトは クレオパトラ政権の間ずっと 00:02:39.452 --> 00:02:42.473 暴動もなく安定した 独立国家として保たれていました」 00:02:42.473 --> 00:02:43.983 「では どこで間違ったのかね?」 00:02:43.983 --> 00:02:48.603 「この外国人の女王は カエサルの死後も ローマの政治に干渉し続けたのです」 00:02:48.773 --> 00:02:52.993 「本当のところは ローマ側から 援助の要請があったのです 00:02:52.993 --> 00:02:57.233 もちろん カエサルの仇を討とうとする オクタヴィアヌスとアントニウスを 00:02:57.233 --> 00:03:00.803 少なくとも息子のことを考えれば 支援するより他なかったのです」 00:03:00.803 --> 00:03:06.053 「支援と言ってもアントニウスには またしても 色仕掛けでしたがね」 00:03:06.133 --> 00:03:07.274 「それの何が悪いのですか? 00:03:07.274 --> 00:03:09.033 カエサルやアントニウスが犯したー 00:03:09.033 --> 00:03:12.013 数え切れないほどの不倫行為を なぜ誰も責めないのでしょう? 00:03:12.013 --> 00:03:14.958 なぜ 彼女の方がたぶらかしたと 決めつけるのでしょう? 00:03:14.958 --> 00:03:19.283 なぜ 権力のある女性に限って 性的なことで評価を下されるのでしょう?」 00:03:19.283 --> 00:03:20.063 「静粛に」 00:03:20.063 --> 00:03:22.773 「クレオパトラとアントニウスの 振る舞いは目に余りました 00:03:22.773 --> 00:03:25.484 くだらない祭事を行い 金であしらわれた玉座に座り 00:03:25.584 --> 00:03:27.133 神のように着飾って 共和制ローマの人々を怒りを買いました 00:03:27.133 --> 00:03:28.924 神のように着飾って 共和制ローマの人々を怒りを買いました 00:03:28.924 --> 00:03:33.374 それはオクタヴィアヌスの手でローマ全土に 2人の権力欲が知れ渡るまで続きました」 00:03:33.444 --> 00:03:36.413 「とはいうものの オクタヴィアヌスはアントニウスを討ち 00:03:36.413 --> 00:03:37.645 エジプトを併合して 00:03:37.645 --> 00:03:40.435 自ら皇帝の座に就いたではありませんか 00:03:40.435 --> 00:03:45.155 ローマはクレオパトラ自身ではなく 権力を持つ女性への恐れによって 00:03:45.155 --> 00:03:46.884 共和政は崩壊したのです」 00:03:46.884 --> 00:03:48.484 「皮肉なものだな」 00:03:48.484 --> 00:03:53.344 クレオパトラの物語は主に ローマ人の政敵たちの言い分が語り継がれ 00:03:53.344 --> 00:03:57.394 後世の作家が噂やイメージを 加えることで膨らんでいったのです 00:03:57.394 --> 00:04:01.154 彼女の人生や統治に関する完全な真実は 決して知ることができないでしょう 00:04:01.154 --> 00:04:06.706 しかし 歴史を裁判にかけることで 事実なのか噂なのか 区別できるのです