0:00:06.563,0:00:10.701 私はカカニ・カティジャ[br]生物工学技術者です 0:00:10.701,0:00:14.494 自然環境に生息する海洋生物を[br]研究しています 0:00:14.494,0:00:15.941 私がお伝えしたいことは 0:00:15.941,0:00:18.404 少なくともこのように[br]視覚化してみると 0:00:18.404,0:00:21.453 海洋はダイナミックな[br]環境であることが分かります 0:00:21.453,0:00:23.887 ここにご覧になっているのは 0:00:23.887,0:00:25.141 潮汐や風によって 0:00:25.141,0:00:27.671 生み出された海流や渦です 0:00:27.671,0:00:29.181 生み出された海流や渦です 0:00:29.181,0:00:32.361 海洋生物がこの環境に住み 0:00:32.361,0:00:34.820 このような海流に対応しながら 0:00:34.820,0:00:37.556 生涯を過ごすことを想像してみてください 0:00:37.556,0:00:39.159 もう1つ お伝えしたいことは 0:00:39.159,0:00:43.907 小さな生物も同様に小さな流体の[br]動きを作りだしていることです 0:00:43.907,0:00:46.983 この流体の動きを私は研究しています 0:00:46.983,0:00:49.903 足跡のようなものと[br]考えればよいでしょう 0:00:49.903,0:00:54.206 私の愛犬キュランです[br]彼女の足跡を見てください 0:00:54.206,0:00:56.957 足跡はたくさんの情報を与えてくれます 0:00:56.957,0:00:59.640 足跡を残したのは どの生物か 0:00:59.640,0:01:02.899 その生物がそこにいたのは[br]いつかだけではなく 0:01:02.899,0:01:06.409 どんな行動 つまり走っていたのか[br]歩いていたのか といったことも分かります 0:01:06.409,0:01:09.837 私の愛犬キュランのように[br]陸上の生物は 0:01:09.837,0:01:14.644 泥や砂に足跡を残すかもしれませんが 0:01:14.644,0:01:20.848 海洋生物は「足跡」なるものを[br]「後流構造」とか 0:01:20.848,0:01:22.768 「流体力学的シグナル」とよばれる形で 0:01:22.768,0:01:23.861 流体に残します 0:01:23.861,0:01:26.807 想像してみてください[br]流体は透明なので 0:01:26.807,0:01:28.794 これらの構造を見るのはとても困難です 0:01:28.794,0:01:33.844 ところが流体に何かを加えると[br]全く違う光景になります 0:01:33.844,0:01:36.938 海洋生物は力強く足跡を 0:01:36.938,0:01:38.481 残していることが分かります 0:01:38.481,0:01:40.082 この足跡は常に変化し続けます 0:01:40.082,0:01:43.645 また海洋生物はこれらのシグナルを[br]感知する能力も持っています 0:01:43.645,0:01:45.955 感知されたシグナルから情報を得て 0:01:45.955,0:01:49.418 さらに追っていくか[br]そこから離れるかを決められます 0:01:49.418,0:01:51.492 つまり交尾相手や餌を探すのか 0:01:51.492,0:01:55.421 捕食されないように[br]シグナルから逃げるのかという判断です 0:01:55.421,0:01:57.662 この類のシグナルを見たり 0:01:57.662,0:02:01.825 視覚化したりするだけではなく[br]測定することができたら 0:02:01.825,0:02:03.788 良いと思いませんか? 0:02:03.788,0:02:06.442 これこそ 技術者としての[br]私の仕事です 0:02:06.442,0:02:10.425 私が実際に行ったのは[br]研究室で用いる技術を 0:02:10.425,0:02:12.636 小型化することで 0:02:12.636,0:02:16.115 要するに水中でも[br]利用できるように縮小し 0:02:16.115,0:02:19.959 スキューバダイバーが1人でも[br]使える装置を作ることでした 0:02:19.959,0:02:24.231 これでスキューバダイバーは[br]海面から40メートルまでの 0:02:24.231,0:02:25.840 どこにでも潜って 0:02:25.840,0:02:30.711 生物が作りだす流体力学的な[br]シグナルを測定できます 0:02:30.711,0:02:31.568 説明を始める前に 0:02:31.568,0:02:36.040 皆さんをこのような測定を行う[br]水の世界へとお連れしましょう 0:02:36.040,0:02:39.539 私たちは作業を行うために[br]実は夜に潜ります 0:02:39.539,0:02:43.866 それは日光のレーザー光に対する影響を 0:02:43.866,0:02:46.166 最小限に抑えたいからです 0:02:46.166,0:02:48.775 真っ暗な中で潜っているのは 0:02:48.775,0:02:52.249 研究対象の生物が驚いて[br]逃げて行かないようにするためです 0:02:52.249,0:02:55.085 私たちは興味のある生物を見つけるとすぐに 0:02:55.085,0:02:57.708 緑色レーザーのスイッチを入れます 0:02:57.708,0:03:01.987 この緑色レーザーは[br]流体をシート状に照らし出し 0:03:01.987,0:03:02.989 その流体の中では 0:03:02.989,0:03:07.219 海洋の至る所に見られる粒子で反射します 0:03:07.219,0:03:10.270 生物がこのレーザーで照らされた[br]シートの中を泳ぐにつれ 0:03:10.270,0:03:13.971 粒子も時間と共に[br]動いていくことが分かります 0:03:13.971,0:03:17.717 私たちは命がけで[br]これらのデータを集めます 0:03:17.717,0:03:18.972 粒子を映し出す2つの図のうち 0:03:18.972,0:03:21.593 左側の図が表しているのは 0:03:21.593,0:03:24.165 時間と共に変化する[br]流体の変位です 0:03:24.165,0:03:26.154 このデータを使って 0:03:26.154,0:03:29.195 その流体の速度を[br]算出することができます 0:03:29.195,0:03:32.756 それは中央の図の[br]矢印プロットで示されています 0:03:32.756,0:03:34.520 このデータを使って 0:03:34.520,0:03:36.766 さまざまな疑問に答えることができます 0:03:36.766,0:03:39.694 右の図が示しているように[br]回転方向の様子を 0:03:39.694,0:03:41.136 理解するだけでなく 0:03:41.136,0:03:44.021 エネルギーの流れや 0:03:44.021,0:03:47.893 これらの生物や流体に掛かる[br]力を推定することや 0:03:47.893,0:03:50.748 また遊泳行動や摂餌行動を[br]評価することもできます 0:03:50.748,0:03:53.888 私たちはこの技術を様々な[br]生物に適用してきました 0:03:53.888,0:03:56.299 しかし ここにはある問題があります 0:03:56.299,0:04:00.915 スキューバダイバーが潜れる場所にいる[br]生物しか研究することができません 0:04:00.915,0:04:04.965 話を終える前に[br]この類の測定の観点から 0:04:04.965,0:04:07.950 次に来る最先端の研究について[br]お話ししようと思います 0:04:07.950,0:04:12.287 モントレー湾水族館研究所の[br]協力を得て 0:04:12.287,0:04:16.528 私たちは遠隔操作型無人潜水機に[br]搭載する器具を開発しています 0:04:16.528,0:04:21.799 海面から水深4千メートルまでに[br]生息する生物を― 0:04:21.799,0:04:23.495 研究できるようにするためです 0:04:23.495,0:04:26.836 それによってこの生物に関する[br]実に興味深い疑問を解消できました 0:04:26.836,0:04:28.547 これはオタマボヤです 0:04:28.547,0:04:33.952 摂餌のために水流を作り[br]「ハウス」を通過させ 0:04:33.952,0:04:35.949 栄養を濾し取ります 0:04:35.949,0:04:37.139 次の動物は― 0:04:37.139,0:04:39.091 これはクダクラゲです 0:04:39.091,0:04:43.072 サッカーコートの半分の長さまで[br]成長することができます 0:04:43.072,0:04:46.302 ジェット推進力を発生させるだけで 0:04:46.302,0:04:48.452 海中を上下に移動することが可能です 0:04:48.452,0:04:50.668 そしてようやく[br]次の疑問に答えられます 0:04:50.668,0:04:53.976 オキアミのように群泳している[br]生物がどのようにして 0:04:53.976,0:04:57.059 より広範囲に海水を[br]混合できるのかという問題です 0:04:57.059,0:05:01.096 これは私たちが潜水装置を[br]利用して得られたデータの中で 0:05:01.096,0:05:04.648 もっとも興味深い結果の一つで 0:05:04.648,0:05:08.092 オキアミは特に大群となって[br]動いているときに 0:05:08.092,0:05:10.365 混合を引き起こすことができます 0:05:10.365,0:05:14.529 それは風や潮汐と関連する[br]その他の様々な物理現象と 0:05:14.529,0:05:17.359 同等の規模で起きています 0:05:17.359,0:05:18.641 講演を終える前に 0:05:18.641,0:05:21.500 皆さんに1つ質問します 0:05:21.500,0:05:23.840 なぜなら私たちが[br]今日 当たり前に使っている技術は 0:05:23.840,0:05:26.919 どこかで始まったと[br]念頭に置くことが 0:05:26.919,0:05:28.424 大切だと思うからです 0:05:28.424,0:05:30.443 何かから閃いたのです 0:05:30.443,0:05:33.950 科学者や技術者は[br]鳥から閃めきを得て 0:05:33.950,0:05:36.191 飛行機を作りました 0:05:36.191,0:05:37.863 私たちが当たり前だと感じること― 0:05:37.863,0:05:40.620 サンフランシスコからニューヨークまで[br]飛んで行くといったことは 0:05:40.620,0:05:43.440 ある生物から閃いたのです 0:05:43.440,0:05:46.027 海洋生物を理解するための新しい技術が 0:05:46.027,0:05:48.079 進歩するにつれて 0:05:48.079,0:05:50.398 こんな疑問に[br]答えてみたくなります 0:05:50.398,0:05:52.965 海洋生物はどんな閃きを[br]与えてくれるのでしょうか? 0:05:52.965,0:05:56.715 クラゲみたいな形をした[br]水中機といった 0:05:56.715,0:05:59.466 新しい水中の技術を[br]進歩させてくれるのでしょうか? 0:05:59.466,0:06:02.543 今は海洋探査において[br]とても心躍る時代だと思います 0:06:02.543,0:06:06.437 なぜなら 今私たちは[br]これらの疑問に答えるための道具を持っていて 0:06:06.437,0:06:09.279 いつの日か 皆さんの助けを得て 0:06:09.279,0:06:12.807 この類の疑問に答えるために[br]これらの道具を活かすことができるし 0:06:12.807,0:06:15.851 また 未来の技術を[br]発展させることができるからです 0:06:15.851,0:06:17.291 ありがとうございました