1 00:00:06,042 --> 00:00:09,740 こちらは私たちが 2007年に設計した幼稚園です 2 00:00:10,111 --> 00:00:14,036 円形になるように幼稚園を作りました 3 00:00:14,036 --> 00:00:17,178 屋根の上を 行き止まりのない形にしたのです 4 00:00:17,179 --> 00:00:19,699 皆さんが親御さんなら 5 00:00:19,699 --> 00:00:23,663 子供たちが ぐるぐると回りたがることは お分かりになりますよね 6 00:00:24,793 --> 00:00:27,600 屋上はこんな風になっています 7 00:00:27,600 --> 00:00:29,858 どうしてこんなデザインにしたのかって? 8 00:00:29,858 --> 00:00:32,675 園長先生はこんなことを言いました 9 00:00:32,675 --> 00:00:35,254 「手すりなんか やめましょう」 10 00:00:35,254 --> 00:00:37,483 私は言いました「それは無理ですよ」 11 00:00:37,483 --> 00:00:43,777 それでも彼は言い張ります 「軒先から網を突き出して 12 00:00:43,777 --> 00:00:45,986 落ちてくる子供たちを 受け止めるっていうのは?」 13 00:00:45,986 --> 00:00:47,433 (笑) 14 00:00:47,433 --> 00:00:49,509 「それは無理ですよ」 15 00:00:49,970 --> 00:00:52,889 もちろん 国の役人はこう言いました 16 00:00:52,889 --> 00:00:56,154 「当然 手すりは設置して頂かなければ なりません」 17 00:00:58,324 --> 00:01:01,843 でも 木の周りだけ そのアイデアを残せました 18 00:01:01,843 --> 00:01:05,120 屋根を突き抜けて立つ 3本の木があるのです 19 00:01:05,120 --> 00:01:10,745 このロープを 手すり代わりとすることが許されました 20 00:01:10,745 --> 00:01:14,017 子供たちにとって この手すりは全然関係ないのですね 21 00:01:14,017 --> 00:01:16,503 わざとネットに落っこちるのです 22 00:01:17,304 --> 00:01:20,355 何人か落ちると 23 00:01:20,355 --> 00:01:23,292 もっと 24 00:01:23,292 --> 00:01:24,502 もっと落ちていきます 25 00:01:24,502 --> 00:01:25,653 (笑) 26 00:01:25,653 --> 00:01:29,203 一本の木の周りに40人もの子供が いることもあります 27 00:01:31,733 --> 00:01:32,981 枝には男の子がいますね 28 00:01:32,981 --> 00:01:35,464 彼は木が大好きで 木を食べています 29 00:01:35,464 --> 00:01:37,964 (笑) 30 00:01:38,984 --> 00:01:40,785 何かイベントがある時は 31 00:01:40,785 --> 00:01:43,051 みんな手すりの周りに座ります 32 00:01:44,191 --> 00:01:46,563 下から見ると面白いですよ 33 00:01:46,563 --> 00:01:48,652 まるで動物園のお猿さんです 34 00:01:48,652 --> 00:01:52,552 (笑) 35 00:01:52,552 --> 00:01:54,318 餌の時間ですね 36 00:01:54,318 --> 00:01:58,949 (笑)(拍手) 37 00:02:00,784 --> 00:02:03,313 私たちは屋根をなるべく低く設置しました 38 00:02:03,313 --> 00:02:07,757 下にいる子供たちだけではなく 屋上にいる子供たちも 39 00:02:07,757 --> 00:02:10,438 見えるようにしたかったからです 40 00:02:10,438 --> 00:02:14,299 屋根が高すぎると 天井しか見えませんからね 41 00:02:15,699 --> 00:02:20,215 これは足洗い場 ― いろんな水栓があります 42 00:02:20,656 --> 00:02:22,434 ホースがありますね 43 00:02:22,434 --> 00:02:25,329 友達に水をかけてみたり 44 00:02:25,329 --> 00:02:27,044 水浴びをしたくなりますよね 45 00:02:27,044 --> 00:02:29,541 前にいる子はまともに見えますが 46 00:02:29,541 --> 00:02:31,087 良く見てみると 47 00:02:31,087 --> 00:02:32,917 この子は長靴を洗っているのではなく 48 00:02:32,917 --> 00:02:34,591 靴の中に水を入れていますよ 49 00:02:34,591 --> 00:02:36,531 (笑) 50 00:02:41,423 --> 00:02:46,499 この幼稚園はほぼ一年中 完全に開けっ放しになっていて 51 00:02:47,699 --> 00:02:51,339 内と外の境目がありません 52 00:02:51,339 --> 00:02:55,978 つまりこの建築の基本的な部分は 屋根にあるのです 53 00:02:55,978 --> 00:02:59,267 教室と教室の間の境目もありません 54 00:02:59,267 --> 00:03:02,861 だから音を遮るものが全く無いのです 55 00:03:03,590 --> 00:03:09,415 沢山の子供たちを静かな 箱のような場所に閉じ込めると 56 00:03:09,415 --> 00:03:12,733 落ち着きがなくなる子もいますからね 57 00:03:12,733 --> 00:03:14,985 でもこの幼稚園では 58 00:03:14,985 --> 00:03:18,415 ナーバスになる理由なんかありません 59 00:03:18,415 --> 00:03:21,225 だって境界が無いのですから 60 00:03:21,225 --> 00:03:23,422 園長先生が言います 61 00:03:23,422 --> 00:03:27,425 隅にいるあの男の子が 部屋にじっとしていられないときは 62 00:03:27,425 --> 00:03:29,120 好きにさせます 63 00:03:29,120 --> 00:03:32,279 すると結局戻って来ちゃうんですね なにしろ円形ですから 64 00:03:32,279 --> 00:03:34,241 (笑) 65 00:03:36,561 --> 00:03:39,556 要はこういう状況では 66 00:03:39,556 --> 00:03:42,407 子供はどこかに 隠れたがるものですが 67 00:03:42,407 --> 00:03:46,986 ここでは ただ放っておけば 戻ってくるということです 68 00:03:46,986 --> 00:03:48,836 自然なプロセスですね 69 00:03:48,836 --> 00:03:53,859 2つ目に 雑音が入ってくることが とても大切だということです 70 00:03:55,711 --> 00:04:02,142 子供たちは ざわざわしていると 良く寝れますよね 71 00:04:02,142 --> 00:04:05,986 静かな場所では寝ないんです 72 00:04:05,986 --> 00:04:08,236 それに この幼稚園では 73 00:04:08,236 --> 00:04:13,483 子供たちは授業で すばらしく集中できるんです 74 00:04:15,193 --> 00:04:21,660 我々の祖先はざわざわとする ジャングルで育ってきましたよね 75 00:04:21,660 --> 00:04:23,663 そう 雑音が必要なんです 76 00:04:23,663 --> 00:04:27,967 騒がしいバーでも 友人に話しかけますよね 77 00:04:27,967 --> 00:04:31,928 静けさの中にいることが 前提になっていないんです 78 00:04:31,928 --> 00:04:34,095 近頃では 79 00:04:34,095 --> 00:04:38,569 何でもかんでも 管理下に置こうとしますが 80 00:04:40,219 --> 00:04:42,021 ここは完全に自由です 81 00:04:42,021 --> 00:04:45,033 考えてもみてください 82 00:04:45,033 --> 00:04:50,818 我々は冬にマイナス20度の中 スキーに行くことができます 83 00:04:50,818 --> 00:04:53,922 砂の温度が50度にもなっている夏に 84 00:04:53,922 --> 00:04:55,766 泳ぎにも行きます 85 00:04:56,636 --> 00:05:00,029 それに 人間は防水性です 86 00:05:00,029 --> 00:05:03,181 雨の中でも溶けたりしません 87 00:05:03,181 --> 00:05:07,050 子供たちは 外にいるべきなんです 88 00:05:07,050 --> 00:05:10,251 だから そのように彼らを 扱わなければなりません 89 00:05:10,251 --> 00:05:12,923 教室はこんな風に分けられています 90 00:05:12,923 --> 00:05:15,426 先生たちのお手伝いを することになっていますが 91 00:05:15,426 --> 00:05:17,731 手伝ったりしません 92 00:05:17,731 --> 00:05:19,346 (笑) 93 00:05:23,226 --> 00:05:25,382 私が押込めたんではないですよ 94 00:05:27,522 --> 00:05:29,706 教室です 95 00:05:30,196 --> 00:05:32,105 手洗い場です 96 00:05:32,655 --> 00:05:35,932 皆で井戸端会議していますね 97 00:05:37,082 --> 00:05:40,819 教室には 必ず木があります 98 00:05:43,969 --> 00:05:47,377 上にいるお猿さんが 別のお猿さんを 釣り上げようとしています 99 00:05:47,377 --> 00:05:49,225 (笑) 100 00:05:49,225 --> 00:05:50,829 お猿さんたちです 101 00:05:50,829 --> 00:05:52,283 (笑) 102 00:05:52,283 --> 00:05:56,698 どの教室にも少なくとも1つは 天窓があります 103 00:05:57,468 --> 00:06:01,465 クリスマスになると ここから サンタクロースが降りてきます 104 00:06:07,255 --> 00:06:09,682 これは別の建物で 105 00:06:09,682 --> 00:06:14,151 楕円形の幼稚園のすぐ横にあります 106 00:06:14,151 --> 00:06:19,810 この建造物ではわずか5メートルの高さに 7つのフロアがあります 107 00:06:19,810 --> 00:06:21,971 もちろん 天井はとても低くなっています 108 00:06:21,971 --> 00:06:26,036 だから安全性を考慮しなければなりません 109 00:06:26,036 --> 00:06:30,417 そこで自分たちの娘や息子に 110 00:06:31,707 --> 00:06:34,241 入ってもらいました 111 00:06:35,731 --> 00:06:38,353 彼は頭をぶつけました 112 00:06:39,343 --> 00:06:43,312 でも大丈夫 彼の頭はとても丈夫にできています 113 00:06:43,312 --> 00:06:46,400 立ち直りが早いんです 僕の息子ですから 114 00:06:46,400 --> 00:06:48,068 (笑) 115 00:06:49,038 --> 00:06:51,898 飛び降りても大丈夫か のぞいています 116 00:06:53,038 --> 00:06:55,705 それから他の子供たちにも入ってもらいました 117 00:07:00,835 --> 00:07:03,376 東京では交通渋滞は ひどいもんです 118 00:07:03,376 --> 00:07:04,528 (笑) 119 00:07:04,528 --> 00:07:09,379 前の運転手 この女の子は 運転の仕方を覚える必要があるようです 120 00:07:09,379 --> 00:07:11,910 この頃では 121 00:07:11,910 --> 00:07:16,530 子供たちはちょっとした 危険を経験しなければなりません 122 00:07:18,970 --> 00:07:21,375 こういった場所では 123 00:07:21,375 --> 00:07:25,300 互いに助け合うことを学びます 124 00:07:25,300 --> 00:07:29,735 それが共同社会 そんな機会が今日では失われています 125 00:07:36,065 --> 00:07:42,976 この図はある男の子の 126 00:07:42,976 --> 00:07:49,300 9:10から9:30までの動きを示したものです 127 00:07:49,300 --> 00:07:55,501 この建物の周囲の長さは183mあるので 128 00:07:55,501 --> 00:07:59,353 決して小さくありません 129 00:07:59,353 --> 00:08:03,959 この子は朝に 6千m走ったことになります 130 00:08:03,959 --> 00:08:07,551 まだ驚くべきことがあります 131 00:08:07,551 --> 00:08:14,248 この幼稚園での平均は4千mで 132 00:08:15,455 --> 00:08:22,435 この幼稚園の子供たちは 数ある幼稚園の中でも 133 00:08:22,435 --> 00:08:25,590 もっとも運動能力があるということです 134 00:08:31,390 --> 00:08:33,016 園長先生は言います 135 00:08:33,016 --> 00:08:38,743 「別に訓練している訳じゃあないですよ 屋上で好きにさせているだけです 136 00:08:39,353 --> 00:08:40,972 まるで羊のようにね」 137 00:08:40,972 --> 00:08:42,401 (笑) 138 00:08:42,401 --> 00:08:44,230 彼らは走り続けます 139 00:08:44,230 --> 00:08:46,259 (笑) 140 00:08:46,779 --> 00:08:51,838 大切なのは 子供たちを管理しないこと 141 00:08:51,838 --> 00:08:55,060 過保護にしないこと 142 00:08:55,060 --> 00:08:58,687 そして 時には転ぶことだって 必要だということです 143 00:08:58,687 --> 00:09:02,473 怪我することも時には必要です 144 00:09:02,473 --> 00:09:05,892 そこから世の中で生きていく 145 00:09:05,892 --> 00:09:09,028 術を学んでいくのです 146 00:09:11,848 --> 00:09:19,057 私は 建築にはこの世と人々の生活を 147 00:09:19,057 --> 00:09:20,899 変える力があると思っています 148 00:09:21,909 --> 00:09:27,991 そして これは子供たちの生活を 変えていく試みの一つなのです 149 00:09:28,481 --> 00:09:30,133 どうも有難うございました 150 00:09:30,158 --> 00:09:32,152 (拍手)