1 00:00:00,914 --> 00:00:02,323 私が思うに 2 00:00:02,323 --> 00:00:04,080 アフリカにいる 援助従事者であれば 3 00:00:04,080 --> 00:00:05,673 誰しも そのキャリアで 4 00:00:05,673 --> 00:00:08,989 学校建設や研修プログラムなどの 5 00:00:08,989 --> 00:00:12,091 プロジェクトに充てられた資金を 6 00:00:12,091 --> 00:00:13,980 スーツケースにつめこんで 7 00:00:13,980 --> 00:00:17,964 最貧困の村々に飛んで 飛行機の窓から そのお金を落としたいと 8 00:00:17,964 --> 00:00:21,148 一度は願うときがあります 9 00:00:21,148 --> 00:00:23,464 なぜなら 熟練の援助従事者にとって 10 00:00:23,464 --> 00:00:26,171 世界で極貧にあえぐ人達に 11 00:00:26,171 --> 00:00:29,210 現金を届けるという考えが 12 00:00:29,210 --> 00:00:30,865 突飛ではないからです 13 00:00:30,865 --> 00:00:34,941 本当に納得がいくんです 14 00:00:34,941 --> 00:00:37,843 私が この思いに至ったのは ちょうど10年目で 15 00:00:37,843 --> 00:00:40,310 幸運にも このアイデアが 16 00:00:40,310 --> 00:00:43,974 実在するのを知ったときで 17 00:00:43,974 --> 00:00:47,817 まさに 支援システムが 必要としていたものかもしれません 18 00:00:47,817 --> 00:00:50,520 経済学者たちは これを「条件なしの現金給付」と呼び 19 00:00:50,520 --> 00:00:52,680 文字通り 条件なしで 20 00:00:52,680 --> 00:00:54,952 現金を支給します 21 00:00:54,952 --> 00:00:56,516 開発途上国の政府は 22 00:00:56,516 --> 00:00:58,192 これを何十年もやってきましたが 23 00:00:58,192 --> 00:01:00,724 今になって 初めて これまでの経験や 24 00:01:00,724 --> 00:01:03,915 新しいテクノロジーを駆使して 25 00:01:03,915 --> 00:01:08,234 支援を届けるモデルの 実現が可能になりました 26 00:01:08,234 --> 00:01:11,148 とても単純なアイデアですね? 27 00:01:11,148 --> 00:01:15,254 では なぜ私は十年もかけて 貧しい人達のために 28 00:01:15,254 --> 00:01:17,392 別のことをやったのでしょうか? 29 00:01:17,392 --> 00:01:20,935 正直なところ 私は資金があれば 30 00:01:20,935 --> 00:01:22,881 貧しい人々に より良いことができると 31 00:01:22,881 --> 00:01:25,491 信じていました 彼ら自身ができることよりもです 32 00:01:25,491 --> 00:01:26,524 これには二つの思い込みがありました 33 00:01:26,524 --> 00:01:29,113 まずは 貧しい人達が貧しいのは 34 00:01:29,113 --> 00:01:31,115 教育を受ける機会がなく 35 00:01:31,115 --> 00:01:33,275 ゆえに良い選択ができないから 36 00:01:33,275 --> 00:01:35,986 二つ目は 彼らのニーズを 見極めて届ける 37 00:01:35,986 --> 00:01:39,724 私のような専門家が必要だということです 38 00:01:39,724 --> 00:01:43,946 ところが 実際には そうではありませんでした 39 00:01:43,946 --> 00:01:46,795 貧しい人達に現金を渡すと 何が起こるかという研究が 40 00:01:46,795 --> 00:01:50,200 近年 進んでいます 41 00:01:50,200 --> 00:01:52,871 多くの研究で おしなべて分かったのは 42 00:01:52,871 --> 00:01:55,627 手に入れた現金で 自分達の生活の向上を 43 00:01:55,627 --> 00:01:57,795 図るということでした 44 00:01:57,795 --> 00:02:00,643 ウルグアイの妊婦たちは 栄養価の高い食べ物を買って 45 00:02:00,643 --> 00:02:02,877 健康な赤ちゃんを出産します 46 00:02:02,877 --> 00:02:05,971 スリランカの男性たちは ビジネスに投資します 47 00:02:05,971 --> 00:02:08,669 私たちのケニアでの活動を 調査した研究者によると 48 00:02:08,669 --> 00:02:11,586 現地の人達が投資するのは 実に様々でした 49 00:02:11,586 --> 00:02:15,936 家畜から 道具や 家の修繕までです 50 00:02:15,936 --> 00:02:18,058 そして 現金を受け取った一年後には 51 00:02:18,058 --> 00:02:20,441 ビジネスや農業を通じて 52 00:02:20,441 --> 00:02:24,131 所得も向上していました 53 00:02:24,131 --> 00:02:26,695 また 人々が飲酒や喫煙に これまで以上に費やしたり 54 00:02:26,695 --> 00:02:29,104 また 人々が飲酒や喫煙に これまで以上に費やしたり 55 00:02:29,104 --> 00:02:31,609 仕事をしなくなったりした ということもありませんでした 56 00:02:31,609 --> 00:02:35,717 実はその反対で もっと働くようになります 57 00:02:35,717 --> 00:02:38,980 ここまでは物質的なニーズでしたが 58 00:02:38,980 --> 00:02:42,151 ベトナムでは 棺を購入した お年寄りの受給者もいました 59 00:02:42,151 --> 00:02:46,662 ベトナムでは 棺を購入した お年寄りの受給者もいました 60 00:02:46,662 --> 00:02:50,673 マズローの欲求段階説には 反しているかもしれませんが 61 00:02:50,673 --> 00:02:55,400 私は精神的なニーズを重んじる この選択は 62 00:02:55,400 --> 00:02:57,667 とても謙虚だと思います 63 00:02:57,667 --> 00:02:59,880 私なら食糧や物か 64 00:02:59,880 --> 00:03:03,491 棺を渡すのか 分かりませんが 65 00:03:03,491 --> 00:03:05,781 ここで問うべきは 66 00:03:05,781 --> 00:03:08,777 貧しい人達の代表として 私たちは資源の配分に 67 00:03:08,777 --> 00:03:10,622 どれくらい長けているか? 68 00:03:10,622 --> 00:03:13,517 費用対効果はどうか? ということです 69 00:03:13,517 --> 00:03:15,460 ここでも経験的証拠を見ていきます 70 00:03:15,460 --> 00:03:18,250 私たちが選んだものを届けると 71 00:03:18,250 --> 00:03:20,926 何が起こるでしょうか 72 00:03:20,926 --> 00:03:23,795 インドのプログラムについて 説得力のある研究によると 73 00:03:23,795 --> 00:03:27,102 極貧にあえぐ人達へ 家畜を支給する取組みでは 74 00:03:27,102 --> 00:03:31,023 受給者の3割が 75 00:03:31,023 --> 00:03:35,176 そっぽを向いて この家畜を売りに出しました 76 00:03:35,176 --> 00:03:38,529 そして手に入れたのが 現金です 77 00:03:38,529 --> 00:03:40,087 本当の皮肉はここからです 78 00:03:40,087 --> 00:03:42,668 このプログラムで 100ドルの価値があるものを 79 00:03:42,668 --> 00:03:44,820 支給した場合 80 00:03:44,820 --> 00:03:49,506 事務手続きなどに 更に99ドルを費やしていました 81 00:03:49,506 --> 00:03:53,152 では現金を支給するために テクノロジーを使ってはどうでしょう 82 00:03:53,152 --> 00:03:57,739 援助団体からでも 誰からでもかまいません 83 00:03:57,739 --> 00:04:01,509 貧しい人達の手に 直接 現金を届けるのです 84 00:04:01,509 --> 00:04:04,379 こんにち ケニア人の4分の3が モバイルマネーを利用しています 85 00:04:04,379 --> 00:04:07,202 どの携帯電話でも使える 86 00:04:07,202 --> 00:04:08,700 銀行口座のようなものです 87 00:04:08,700 --> 00:04:12,166 送金者が1.6パーセントを負担し 88 00:04:12,166 --> 00:04:14,204 クリック一つで 89 00:04:14,204 --> 00:04:17,155 受取人の口座に 現金が送られる仕組みです 90 00:04:17,155 --> 00:04:19,885 仲介業者は通しません 91 00:04:19,885 --> 00:04:22,748 テクノロジーが 既存の産業を 破壊してしまうことがあるように 92 00:04:22,748 --> 00:04:24,547 テクノロジーが 既存の産業を 破壊してしまうことがあるように 93 00:04:24,547 --> 00:04:27,110 貧困国における決済技術が 94 00:04:27,110 --> 00:04:30,217 既存の援助を 破壊するかもしれません 95 00:04:30,217 --> 00:04:32,529 モバイルマネーは 瞬く間に普及しているので 96 00:04:32,529 --> 00:04:35,061 世界の貧困層にいる 何十億人に 97 00:04:35,061 --> 00:04:37,860 届く日が来るでしょう 98 00:04:37,860 --> 00:04:40,481 そこで私たちが立ち上げたのが GiveDirectlyです 99 00:04:40,481 --> 00:04:42,146 私たちは貧しい人達に 100 00:04:42,146 --> 00:04:45,319 現金給付を行う 初の団体です 101 00:04:45,319 --> 00:04:49,987 これまで3万5千人に 給付を行ってきました 102 00:04:49,987 --> 00:04:51,154 ケニアとウガンダの農村部で 103 00:04:51,154 --> 00:04:54,332 1家族につき 1回千ドルを 104 00:04:54,332 --> 00:04:56,917 給付します 105 00:04:56,917 --> 00:04:59,177 これまで対象としてきたのは 106 00:04:59,177 --> 00:05:02,480 貧しい村で極貧にあえぐ人達で 107 00:05:02,480 --> 00:05:03,924 セメントや鉄筋ではなく 108 00:05:03,924 --> 00:05:05,102 泥や藁ぶき屋根の家に 住まう人達です 109 00:05:05,102 --> 00:05:07,562 泥や藁ぶき屋根の家に 住まう人達です 110 00:05:07,562 --> 00:05:09,784 皆さんが この家族だったとします 111 00:05:09,784 --> 00:05:12,236 私たちはAndroid携帯を手に お宅を訪れます 112 00:05:12,236 --> 00:05:14,563 お名前をうかがい 顔写真と 113 00:05:14,563 --> 00:05:15,979 小屋の写真を撮ります 114 00:05:15,979 --> 00:05:18,454 そしてGPS座標を取得します 115 00:05:18,454 --> 00:05:20,554 その日の晩 クラウドに 全データを送ると 116 00:05:20,554 --> 00:05:22,834 それぞれのデータが 117 00:05:22,834 --> 00:05:24,712 専門家チームによって確認されます 118 00:05:24,712 --> 00:05:28,103 この際 衛星画像などが用いられます 119 00:05:28,103 --> 00:05:30,099 そして またお宅にうかがって 120 00:05:30,099 --> 00:05:32,490 もし携帯電話をお持ちでない場合は 121 00:05:32,490 --> 00:05:34,757 簡易な携帯電話を買ってもらい 122 00:05:34,757 --> 00:05:37,078 数週間後 123 00:05:37,078 --> 00:05:39,369 そこに送金します 124 00:05:39,369 --> 00:05:40,930 5年前には 125 00:05:40,930 --> 00:05:42,458 実現不可能に見えたことが 126 00:05:42,458 --> 00:05:45,343 今では 効率的に 腐敗の心配もなく 127 00:05:45,343 --> 00:05:47,481 行うことができます 128 00:05:47,481 --> 00:05:49,797 貧しい人達に より多くのお金を渡すことで 129 00:05:49,797 --> 00:05:53,453 上手くいくことが 証明されていけば 130 00:05:53,453 --> 00:05:55,861 現金給付以外の援助の形を 131 00:05:55,861 --> 00:05:58,350 再検討する必要があります 132 00:05:58,350 --> 00:06:01,938 こんにちの援助活動の 裏側にある論理は 133 00:06:01,938 --> 00:06:05,050 「少なくとも良いことをしている」 ではないでしょうか 134 00:06:05,050 --> 00:06:06,466 これを目標にしてしまうと 135 00:06:06,466 --> 00:06:08,836 自己満足におちいり 136 00:06:08,836 --> 00:06:11,428 何もしないより 支援しているからましだと 137 00:06:11,428 --> 00:06:14,342 勘違いしてしまい 138 00:06:14,342 --> 00:06:16,614 投資が非効率化してしまいます 139 00:06:16,614 --> 00:06:20,596 革新的なことをやっていると 思い込んで 140 00:06:20,596 --> 00:06:22,750 報告書の作成に注力したり 141 00:06:22,750 --> 00:06:26,596 飛行機代や車の購入に お金を使います 142 00:06:26,596 --> 00:06:28,920 援助活動の論理が 143 00:06:28,920 --> 00:06:34,191 「現金を直接渡すより 良いことができるか?」 であったとすれば 144 00:06:34,191 --> 00:06:35,701 援助団体が目指すべきは 145 00:06:35,701 --> 00:06:37,930 貧しい人達が 自ら対処するより 146 00:06:37,930 --> 00:06:40,686 もっと良いことができる ということです 147 00:06:40,686 --> 00:06:43,634 もちろん現金を渡すだけで 公共財の創出にはなりません 148 00:06:43,634 --> 00:06:48,952 疾病の根絶や 公的機関の強化なども必要です 149 00:06:48,952 --> 00:06:51,178 ただ 個別世帯の生活向上を 150 00:06:51,178 --> 00:06:54,140 私たちがいかに支援できるかという 151 00:06:54,140 --> 00:06:57,166 より高い目標にできます 152 00:06:57,166 --> 00:06:58,729 私は援助に期待しています 153 00:06:58,729 --> 00:07:01,828 ほとんどの援助活動が 飛行機からお金を落とすより 154 00:07:01,828 --> 00:07:03,740 良いことをしていると思います 155 00:07:03,740 --> 00:07:06,288 それでも もう一つ確信しているのは 156 00:07:06,288 --> 00:07:08,521 現在の援助の多くが 157 00:07:08,521 --> 00:07:12,046 貧しい人達に直接お金を渡す以上に 効率的に機能していないことです 158 00:07:12,046 --> 00:07:15,922 今後 これが逆転することを 願っています 159 00:07:15,922 --> 00:07:17,978 ありがとうございました 160 00:07:17,978 --> 00:07:21,945 (拍手)