WEBVTT 00:00:03.941 --> 00:00:06.471 ぺらぺらぺらぺらぺら 00:00:06.471 --> 00:00:08.399 ぺらぺらぺらぺら 00:00:08.399 --> 00:00:10.994 ぺらぺら ぺらぺらぺらぺらぺらぺら 00:00:10.994 --> 00:00:13.741 ぺらぺらぺら ぺら 00:00:14.997 --> 00:00:17.170 これは一体なんでしょう? 00:00:17.170 --> 00:00:20.760 もちろん 分からないでしょう 00:00:20.760 --> 00:00:24.360 不明瞭で理解できませんから 00:00:24.360 --> 00:00:27.768 でも願わくば 十分自信を持って語られたので 00:00:27.768 --> 00:00:31.467 少なくともミステリアスで 引きつけるものはあったのではないでしょうか 00:00:32.792 --> 00:00:35.973 明快か ミステリアスか? 00:00:35.973 --> 00:00:40.369 私は日々 グラフィック・デザイナーとして 00:00:40.369 --> 00:00:44.371 そしてまたニューヨーカーとして 00:00:44.371 --> 00:00:46.561 両者のバランスを取ろうとしています 00:00:46.561 --> 00:00:50.638 これは私の心を引きつけてやみません 00:00:50.638 --> 00:00:53.390 例をあげてみましょう 00:00:53.390 --> 00:00:57.170 これが何だか分かる方は? 00:00:59.703 --> 00:01:04.727 では こうしたら 何か分かりますか? 00:01:04.727 --> 00:01:12.110 巧みな2筆を加えてくれた 天才チャールズ・M・シュルツのおかけで 00:01:12.110 --> 00:01:15.454 この散りばめられた 7つの巧みな線が 00:01:15.454 --> 00:01:18.984 感情に富んだ命を生み出し 00:01:18.984 --> 00:01:21.863 半世紀にわたって 00:01:21.863 --> 00:01:23.906 何億人ものファンを 魅了してきました 00:01:23.906 --> 00:01:26.420 実はこちらは本の表紙で 00:01:26.420 --> 00:01:30.571 シュルツの作品と技法についての 本の表紙デザインを手掛けました 00:01:30.571 --> 00:01:32.497 この秋に出版予定で 00:01:32.497 --> 00:01:34.378 これが表紙のすべてです 00:01:34.378 --> 00:01:39.324 他の文字や視覚情報は 表紙には一切ありません 00:01:39.324 --> 00:01:42.737 この本のタイトルは 『必要なものだけ』です 00:01:43.317 --> 00:01:48.790 これは私が デザインを 理解したり 生み出したりする上で 00:01:48.790 --> 00:01:52.706 日々行っている選択を 00:01:52.706 --> 00:01:54.985 象徴するものです 00:01:55.525 --> 00:01:56.842 明快さ 00:01:57.332 --> 00:01:59.421 明快なものは要点をつきます 00:01:59.421 --> 00:02:02.758 単刀直入で 率直で 嘘偽りがありません 00:02:03.748 --> 00:02:07.370 ご自身に問うてみましょう [ いつ 明快であるべきか? ] 00:02:07.370 --> 00:02:12.818 さて このようなものは 読める読めないに関わらず 00:02:12.818 --> 00:02:16.418 非常に明快であるべきですが 00:02:16.418 --> 00:02:18.455 いかがでしょうか? 00:02:20.586 --> 00:02:27.284 こちらは 最近の都会的明快さの例で 私が大好きなものです 00:02:27.284 --> 00:02:32.732 その理由は 私が遅刻魔で いつも急いでいるからです 00:02:32.742 --> 00:02:39.288 数年前に こんな数字表示を 通りで見かけるようになったとき 00:02:39.288 --> 00:02:41.068 ワクワクしたものです 00:02:41.068 --> 00:02:45.673 車に轢かれずに道を渡るには 何秒で行けばよいか 00:02:45.673 --> 00:02:48.553 分かるようになったからです 00:02:48.553 --> 00:02:53.475 6秒? それならいける!(笑) 00:02:53.475 --> 00:02:57.283 それでは明快な陽に対する 陰を見て見ましょう 00:02:57.283 --> 00:03:00.812 陰とはミステリーです 00:03:00.812 --> 00:03:06.176 ミステリーとは その定義上 ずっと込み入ったものです 00:03:06.176 --> 00:03:09.659 ミステリーは解明されることを求めます 00:03:09.659 --> 00:03:12.643 上手く作られた謎は どうしても解明したくなります 00:03:12.643 --> 00:03:14.533 [ いつ ミステリアスになるべきか? ] 00:03:14.533 --> 00:03:20.107 第二次世界大戦時のドイツは どうしても これを解読したかったのですが 00:03:20.107 --> 00:03:22.731 できませんでした 00:03:22.731 --> 00:03:25.912 これは 私が最近手がけたデザインです 00:03:25.912 --> 00:03:28.234 村上春樹の小説で 00:03:28.234 --> 00:03:31.438 彼の表紙デザインは これまで20年間ずっと手がけてきました 00:03:31.438 --> 00:03:37.150 この小説の若い主人公は 4人の親友がいますが 00:03:37.150 --> 00:03:40.819 大学1年を過ぎると 突然何の説明もなしに 00:03:40.819 --> 00:03:44.116 一方的に絶縁を言い渡され 00:03:44.116 --> 00:03:45.973 絶望感に胸をさいなまれます 00:03:45.973 --> 00:03:51.376 友人たちの名字にはみんな 色が含まれていて 00:03:51.376 --> 00:03:56.050 アカ、アオ、シロ、クロと 呼ばれていますが 00:03:56.770 --> 00:04:00.160 主人公の多崎つくるだけは 名前に色が入っておらず 00:04:00.160 --> 00:04:04.320 いわば「色なし」です 自分たちの関係を振り返って 00:04:04.320 --> 00:04:07.776 5本の指のようだったと思う くだりがあるので 00:04:07.776 --> 00:04:12.257 それを表現できるような 抽象的なデザインを作りました 00:04:12.257 --> 00:04:16.437 でも物語の表面下には もっと複雑なものがあり 00:04:16.437 --> 00:04:21.110 この表紙の奥にも 沢山のメッセージがあります 00:04:21.110 --> 00:04:23.415 ここでは4本の指が 00:04:23.415 --> 00:04:27.362 東京の地下鉄の 4本の路線になっていて 00:04:27.362 --> 00:04:30.233 それが物語の中で 重要な意味を持っています 00:04:30.813 --> 00:04:33.340 色のない路線が 00:04:33.340 --> 00:04:36.173 他の色のそれぞれと交わっており 00:04:36.173 --> 00:04:38.940 彼が物語の後半でやることを 示唆しています 00:04:38.940 --> 00:04:41.272 当時 親友だった 一人ひとりと対峙して 00:04:41.272 --> 00:04:44.332 なぜ絶交をつきつけられたのか 探し求めます 00:04:44.332 --> 00:04:48.558 こちらは3次元的な完成品で 00:04:48.558 --> 00:04:50.879 私の机に飾ってあります 00:04:50.879 --> 00:04:55.096 私が願うのは 皆さんがこのような 00:04:55.096 --> 00:04:59.401 ミステリアスなデザインに魅了され 00:04:59.401 --> 00:05:02.436 なぜこのような表紙なのか 知りたいと思い 00:05:02.436 --> 00:05:07.345 中身を読みたくなるということです 00:05:08.163 --> 00:05:09.858 [ 視覚の言葉 ] 00:05:09.858 --> 00:05:14.177 こちらはもっと馴染みのある謎を使います 00:05:14.177 --> 00:05:15.938 どういうことでしょうか? 00:05:15.938 --> 00:05:18.772 こういうことです [ 別の何かのように見せる ] 00:05:18.772 --> 00:05:23.032 視覚の言葉とは 何か見慣れたものを 00:05:23.032 --> 00:05:27.691 別のものに使うことで 違う視点で見せる方法です 00:05:27.691 --> 00:05:31.840 私がこの方法をとりたかったのは デビッド・セダリスのエッセイ集を手掛けた時で 00:05:31.840 --> 00:05:35.211 当時はこんなタイトルでした [ 『貴方に必要な美のすべて』 ] 00:05:35.211 --> 00:05:39.402 ここで頭を抱えたのは このタイトルには何の意味もないこと 00:05:39.402 --> 00:05:42.792 本の中の どのエッセイとも  関連していません 00:05:42.792 --> 00:05:47.503 著者の彼氏が夢で見たんだそうです 00:05:47.993 --> 00:05:53.659 さようでございますか・・・(笑) 普段 私が生み出すデザインは 00:05:53.659 --> 00:05:57.722 たいてい文章を元にしていますが 使える文章がこれしかないわけです 00:05:57.722 --> 00:06:02.111 特に何の意味もなさない ミステリアスなタイトルだけ 00:06:02.111 --> 00:06:04.610 頭をひねりました 00:06:04.610 --> 00:06:10.848 意味がありそうで 実はそうではない 謎めいた文章が何かなかったか? 00:06:10.848 --> 00:06:13.255 すると案の定 しばらくして 00:06:13.255 --> 00:06:16.570 夕飯に中華料理を食べた後のことです 00:06:16.570 --> 00:06:23.062 テーブルに これが出てきたんです 「ああ これだ アイデアで悶えそう!」(笑) 00:06:23.472 --> 00:06:28.673 私はフォーチュンクッキーの 可笑しいくらいに謎めいた文言が好きで 00:06:28.673 --> 00:06:31.575 とても深い意味が ありそうに見えますが 00:06:31.575 --> 00:06:35.662 よく考えると 何の意味もないことが分かるでしょう 00:06:35.662 --> 00:06:41.907 例えば こちら 「未来を考えないことで得られるものを知る人は少ない」 00:06:42.537 --> 00:06:44.899 そうですか (笑) 00:06:45.389 --> 00:06:51.046 でも この視覚の言葉は セダリス氏の本に適用できます 00:06:51.046 --> 00:06:56.657 私たちはフォーチュンクッキーの おみくじはすごく見慣れているので 00:06:56.657 --> 00:06:59.424 もう あの小さなクッキーが なくとも分かるでしょう 00:06:59.424 --> 00:07:02.419 この奇妙なものを目にし 00:07:02.419 --> 00:07:04.416 大好きなデビッド・セダリスのことなので 00:07:04.416 --> 00:07:07.300 きっと楽しいものに違いない と思うわけです 00:07:07.760 --> 00:07:11.048 デイビッド・ラコフは素晴らしい作家で [ デイビッド ・ラコフ著『Fraud (インチキ)』 ] 00:07:11.048 --> 00:07:14.211 最初の作品を『インチキ』と名づけました 00:07:14.211 --> 00:07:18.171 なぜなら彼は自分に できそうもない仕事を 00:07:18.171 --> 00:07:20.841 雑誌社から依頼されたからです 00:07:20.841 --> 00:07:23.883 ラコフは小柄で華奢な 都会の男性でしたが 00:07:23.883 --> 00:07:26.762 雑誌GQは彼にコロラド川で 00:07:26.762 --> 00:07:30.478 急流下りをさせて どうなるか試そうとしたんです 00:07:31.599 --> 00:07:37.268 自分のことを偽って伝えていると 感じたのでした 00:07:37.268 --> 00:07:41.645 ですから この本の表紙も 内容を偽って伝え 00:07:41.645 --> 00:07:46.916 それに読者が異を唱えているように 見せたいと思いました 00:07:46.916 --> 00:07:50.167 この考えからグラフィティにたどり着きました 00:07:50.167 --> 00:07:52.210 グラフィティには魅力を感じます 00:07:52.210 --> 00:07:56.813 都会に住んでいる人なら グラフィティはよく目にしているでしょう 00:07:56.813 --> 00:07:58.943 いろんな種類があります 00:07:58.943 --> 00:08:02.550 こちらの写真は ロウアー・イースト・サイドで撮影した 00:08:02.550 --> 00:08:05.398 歩道にある変圧器で 00:08:05.398 --> 00:08:07.372 めちゃくちゃ落書きされています 00:08:07.372 --> 00:08:12.991 皆さんは これを見て 「素敵で都会的なものだな」と思うかもしれないし 00:08:12.991 --> 00:08:17.379 「公共財を違法に汚している」と 思うかもしれませんが 00:08:17.379 --> 00:08:19.724 一つだけ誰もが同意するのは 00:08:19.724 --> 00:08:22.905 これが読めない ということでしょう 00:08:22.905 --> 00:08:26.458 そうでしょう?  明快なメッセージはありません 00:08:26.458 --> 00:08:31.682 これとは別種のグラフィティで ずっと面白いのがあって 00:08:31.682 --> 00:08:34.538 私は校閲グラフィティと呼んでいます 00:08:34.538 --> 00:08:38.744 こちらは私が最近 地下鉄の駅で撮った写真です 00:08:38.744 --> 00:08:42.610 よく卑わいなのや くだらないのを目にしますが 00:08:42.610 --> 00:08:45.657 これは面白いなと思いました 00:08:45.657 --> 00:08:49.747 エアビーアンドビーを 持ち上げるポスターなんですが 00:08:49.747 --> 00:08:52.510 誰かがマジックペンを手に 00:08:52.510 --> 00:08:56.434 これについてどう思うか 校注として書き込んでいます 00:08:56.434 --> 00:08:59.266 これは私の注意を引きました 00:08:59.266 --> 00:09:02.692 これを本の表紙に使えないかと 考えたのです 00:09:02.692 --> 00:09:08.075 彼の本を手にとり 読み始めて思ったのは 00:09:08.075 --> 00:09:13.079 彼は主張しているような人物ではない インチキだということ 00:09:13.079 --> 00:09:16.540 そこで赤のマジックペンを手に 00:09:16.540 --> 00:09:21.151 表紙に思いっきり書きなぐりました [ FRAUD (インチキ) ] 00:09:21.151 --> 00:09:25.259 デザインの出来上がりです(笑) 00:09:25.815 --> 00:09:30.190 なんとこれが好評だったんです!(笑) 00:09:30.190 --> 00:09:32.107 著者も出版社も気に入り 00:09:32.107 --> 00:09:34.824 それでこんな本が 世に出ることになりました 00:09:34.824 --> 00:09:39.723 見ていて楽しかったですね この本を地下鉄で読んでいる人とか 00:09:39.723 --> 00:09:41.859 この本を持ち歩いている人とか 00:09:41.859 --> 00:09:45.760 頭がおかしいんじゃないかと映りました 00:09:45.760 --> 00:09:48.120 (笑) 00:09:48.590 --> 00:09:52.633 ジェイムズ・エルロイは類まれなる犯罪小説作家で [ ジェイムズ・エルロイ著『Perfidia (背信)』 ] 00:09:52.633 --> 00:09:55.117 良き友でもあります 長年 一緒に仕事をしてきました 00:09:55.117 --> 00:09:57.045 彼の代表作といえば 00:09:57.045 --> 00:10:00.015 『ブラック・ダリア』と 『L.A.コンフィデンシャル』でしょう 00:10:00.015 --> 00:10:05.150 彼の最新作が『背信』 とてもミステリアスなタイトルで 00:10:05.150 --> 00:10:08.756 多くの方がその意味をご存知でしょうが 知らない方も多いと思います 00:10:08.756 --> 00:10:12.764 小説の舞台は 1941年のロサンゼルスで 00:10:12.764 --> 00:10:17.834 日系人の探偵が 殺人事件を捜査します 00:10:17.834 --> 00:10:20.247 そこに真珠湾攻撃が起こり 00:10:20.247 --> 00:10:23.357 ただでさえ大変な彼の人生に 00:10:23.357 --> 00:10:28.200 人種間の軋轢が加わります 00:10:28.200 --> 00:10:32.718 日系人収容所が瞬く間にでき 00:10:32.718 --> 00:10:34.738 緊張が走り 00:10:34.738 --> 00:10:39.004 災難が降りかかる中 主人公は殺人事件を解決しようとします 00:10:39.004 --> 00:10:44.656 最初に考えたのは そのまんまのデザインで 00:10:44.656 --> 00:10:48.538 真珠湾攻撃にロサンゼルスを足して 00:10:48.539 --> 00:10:55.736 街の地平線に訪れる 黙示録的な夜明けを描こうとしました 00:10:56.146 --> 00:10:58.561 言ってみれば 真珠湾攻撃の画を 00:10:58.561 --> 00:11:01.625 ロサンゼルスに接木したわけです 00:11:01.625 --> 00:11:04.899 編集長は 「うーん 面白いけど 00:11:04.899 --> 00:11:10.286 もっと良いのができるだろう シンプルにできるはずだ」と 00:11:10.286 --> 00:11:14.506 それでいつもするように はじめから考え直しました 00:11:14.506 --> 00:11:19.197 私は周りのものに 注意を払っています 00:11:19.197 --> 00:11:22.830 職場はミッドタウンの高層ビルにあって 00:11:22.830 --> 00:11:26.500 毎晩オフィスから出る時にやっているのが 00:11:26.500 --> 00:11:28.745 このボタンを押すことで 00:11:28.745 --> 00:11:32.483 大きくて重たいガラスのドアが開いて エレベーターに乗ることができます 00:11:32.483 --> 00:11:35.979 ある晩のことですが ふと 00:11:35.979 --> 00:11:41.430 これがいつもとは違って見えたのです 00:11:41.430 --> 00:11:44.279 大きな赤い丸 危険を意味しています 00:11:44.279 --> 00:11:47.158 このシンボルはあまりに明らかで 00:11:47.158 --> 00:11:49.875 何度も使われてきたに違いないと思い 00:11:49.875 --> 00:11:52.809 Googleで画像検索したところ 00:11:52.809 --> 00:11:56.608 このようなデザインの表紙は ついぞ見つからず 00:11:56.608 --> 00:11:59.232 結局 このデザインを使用することになり 00:11:59.232 --> 00:12:01.763 視覚的にも面白い 00:12:01.763 --> 00:12:05.989 ロサンゼルスとアメリカに 迫りつつある日の出という 00:12:05.989 --> 00:12:11.096 緊張感ある構図を 生み出すことができました 00:12:11.506 --> 00:12:14.492 [ メアリー・ローチ著 『ごっくん ― ヒトの消化器系について』 ] 00:12:14.492 --> 00:12:16.530 メアリー・ローチは素晴らしい作家で 00:12:16.530 --> 00:12:20.152 退屈になりがちな科学テーマを取り上げて 00:12:20.152 --> 00:12:23.540 退屈とは正反対の とても面白いものに 変えてしまいます 00:12:23.540 --> 00:12:25.167 こちらの本は 00:12:25.167 --> 00:12:28.279 ヒトの消化器官の話です 00:12:28.279 --> 00:12:33.201 この本の表紙について 思いを巡らせました 00:12:34.141 --> 00:12:37.845 これは私の自撮り写真です(笑) 00:12:37.845 --> 00:12:43.905 毎朝 自分の姿を 洗面台の鏡に映しながら 00:12:43.905 --> 00:12:46.622 自分の舌が黒くないか確認します 00:12:46.622 --> 00:12:50.170 もし黒くなければ バッチリです 00:12:50.170 --> 00:12:53.279 (笑) 00:12:55.185 --> 00:12:58.296 皆さんにもお勧めしますよ 00:12:58.296 --> 00:13:02.243 私が考え始めたのは そこは入り口だということ 00:13:02.243 --> 00:13:05.122 でしょう? 消化器系への入り口です 00:13:05.962 --> 00:13:08.210 ただ皆さんも同意すると思いますが 00:13:08.210 --> 00:13:12.460 実際のヒトの口の写真というのは これで見る限り 00:13:12.460 --> 00:13:16.244 美しくありません(笑) 00:13:16.244 --> 00:13:20.145 ですから表紙には イラストを使い 00:13:20.145 --> 00:13:22.374 口当たり良くしました 00:13:22.374 --> 00:13:26.902 それに消化器系へと案内するには こっち側の入り口の方が 00:13:26.902 --> 00:13:29.200 いいのは確かです 00:13:29.200 --> 00:13:31.847 (笑) 00:13:31.847 --> 00:13:34.793 その理由は お分りいただけますよね 00:13:35.533 --> 00:13:37.079 [ 無用なミステリー ] 00:13:37.079 --> 00:13:41.156 明快さとミステリーが 混在したらどうなるでしょうか? 00:13:41.516 --> 00:13:43.489 これはよくあるケースです 00:13:43.489 --> 00:13:45.997 私は無用なミステリーと呼んでいます 00:13:45.997 --> 00:13:48.946 地下鉄の駅に行くと ―私はよく地下鉄を使いますが― 00:13:48.946 --> 00:13:53.450 こんな紙が柱に張り出されています 00:13:54.150 --> 00:13:58.243 ありますよね?  私は「まずいぞ」と思い 00:13:58.243 --> 00:14:02.120 電車は近づいてくるし 何が書かれているのか理解しようとしますが 00:14:02.120 --> 00:14:04.914 大変厄介です 00:14:04.914 --> 00:14:08.914 ここでの問題は 分かりやすく 情報を細分化しているつもりが 00:14:08.914 --> 00:14:12.420 全然役に立っていないということです 00:14:12.420 --> 00:14:15.694 これは必要ないミステリーと言えます 00:14:15.694 --> 00:14:23.780 必要なのは明快で役に立つものですから 遊び半分で ちょっと変えてみました 00:14:23.780 --> 00:14:26.259 全く同じ内容を使っています 00:14:26.259 --> 00:14:29.182 (拍手) 00:14:29.532 --> 00:14:33.837 どうも 都市交通局からのお誘い お待ちしています(笑) 00:14:34.447 --> 00:14:37.506 使っている色は 元のより少ないんですよ 00:14:37.506 --> 00:14:40.803 路線の4番と5番を 緑色にしないなんて 00:14:40.803 --> 00:14:43.961 頭が悪いですね(笑) 00:14:44.851 --> 00:14:47.920 最初に目に付くのは 何か運行に変更があることで 00:14:47.920 --> 00:14:51.613 それから2つの完結した文があり 冒頭・中盤・終盤という構成で 00:14:51.613 --> 00:14:56.383 変更が何で 何が起こるか伝えています 00:14:56.383 --> 00:15:00.440 こんなに簡単なんです!(笑) 00:15:01.630 --> 00:15:04.161 [ 有用なミステリー ] 00:15:04.161 --> 00:15:09.841 次は私が愛してやまない ミステリー作品です 00:15:09.841 --> 00:15:11.498 パッケージです 00:15:11.498 --> 00:15:14.772 ダイエット・コーラの新デザインは 00:15:14.772 --> 00:15:20.200 ターナー・ダックワースが手掛けたものですが 芸術の域だと思います 00:15:20.200 --> 00:15:23.716 まさに芸術品で 美しいです 00:15:23.716 --> 00:15:26.893 デザイナーとしての私に 強く訴えかけるのは 00:15:26.893 --> 00:15:31.351 ダイエット・コーラの 視覚の言葉である 00:15:31.351 --> 00:15:34.889 書体と色と 銀色の背景を取り出し 00:15:34.889 --> 00:15:39.814 最も本質的なところまで そぎ落としているところです 00:15:39.814 --> 00:15:42.714 ちょうどあのチャーリー・ブラウンの 顔のように 00:15:42.714 --> 00:15:46.661 それが何か理解できる 最低限の情報は何かと考え 00:15:46.661 --> 00:15:50.539 人々が既に持っている 商品の知識を 00:15:50.539 --> 00:15:52.396 うまく利用しています 00:15:52.396 --> 00:15:56.181 素敵です 食料品店に行くと 00:15:56.181 --> 00:16:00.631 棚にこの缶が並んでいるというのは 本当に素晴らしいです 00:16:00.631 --> 00:16:04.330 そして お次はこちら— 00:16:04.330 --> 00:16:06.862 がっかりさせられるものだと [ 無用な明快さ ] 00:16:06.862 --> 00:16:08.510 私は思います 00:16:08.510 --> 00:16:12.350 また地下鉄に戻りますが 00:16:12.350 --> 00:16:14.440 あのコーラが発売された後に 00:16:14.440 --> 00:16:16.340 撮った写真があるんですが 00:16:16.340 --> 00:16:18.813 場所は地下鉄タイムズ・スクエア駅 00:16:18.813 --> 00:16:23.681 コカ・コーラ社が広告スペースを 買い占めています 00:16:23.681 --> 00:16:27.990 皆さんの中には 何の話か 分かる人もいるでしょう 00:16:28.660 --> 00:16:30.438 エヘン 00:16:30.438 --> 00:16:33.056 「ニューヨークにやってきた あるのは背負った着替えと 00:16:33.056 --> 00:16:35.640 ポケットのお金と 胸に抱いた夢だけ 00:16:35.640 --> 00:16:39.147 さあ出番だ コーク」 (おまえコカインやってるな) 00:16:45.298 --> 00:16:47.781 「ニューヨークにやってきた あるのはMBAの資格と 00:16:47.781 --> 00:16:50.341 1着のきれいなスーツと かたい握手だけ 00:16:50.341 --> 00:16:53.138 さあ出番だ コーク」 (おまえコカインやってるだろ) 00:16:53.638 --> 00:16:58.142 これ本物の広告ですよ!(笑) 00:16:58.142 --> 00:17:01.973 柱すら犠牲になっていますが 00:17:01.973 --> 00:17:05.789 こちらはヨーダ調になっています(笑) 00:17:07.569 --> 00:17:10.838 「コーク さあ出番だ」 (やってるよな コカイン) 00:17:11.298 --> 00:17:13.998 [ はい? 私が何をやってるって? ] 00:17:14.018 --> 00:17:17.623 この広告は大失敗でした 00:17:17.623 --> 00:17:22.310 消費者からの反発で すみやかに撤去され 00:17:22.310 --> 00:17:26.848 ネットには ありとあらゆる パロディが溢れています 00:17:26.848 --> 00:17:28.731 (笑) 00:17:28.731 --> 00:17:34.451 ちなみに「出番だ (YOU'RE ON)」の横にある点は ピリオドではなく 商標の印です 00:17:35.141 --> 00:17:36.421 やれやれ 00:17:36.421 --> 00:17:40.433 私にとって 不思議でならないのは 00:17:40.433 --> 00:17:46.447 缶のパッケージをこんなにも ミステリアスで見事に仕上げたのに 00:17:46.447 --> 00:17:50.905 付随するメッセージが耐え難いほど 明らかに間違っていることです 00:17:50.905 --> 00:17:54.365 信じられませんでしたね 00:17:54.365 --> 00:17:58.301 本日は皆さんに 明快さとミステリーを 00:17:58.301 --> 00:18:03.699 私が仕事でどのように使っているか お話しさせていただきました 00:18:03.699 --> 00:18:09.005 皆さんの判断のお役に立てば幸いです もっと明快にしようというとき 00:18:09.005 --> 00:18:15.273 あるいは もう少しミステリアスになって 「シェア」しすぎないようにしようというときに 00:18:15.273 --> 00:18:18.110 (笑) 00:18:19.000 --> 00:18:23.806 今日の話で皆さんに覚えていただきたいものを 一つだけあげるなら 00:18:23.806 --> 00:18:25.757 こちらです 00:18:25.757 --> 00:18:29.022 ペラペラペラぺら ぺらぺらペラペラ [ チップ・キッド著『Judge This』 ] 00:18:29.022 --> 00:18:32.086 ペラペラぺらぺらぺら ぺらぺらぺら [ チップ・キッド著『Judge This』 ] 00:18:32.086 --> 00:18:33.883 ぺらぺら 00:18:33.883 --> 00:18:37.883 (拍手)