1976年 科学者の エドワード・ジェンナーは 8歳の男の子に 牛痘患部から 取った物質を注射しました 牛痘ウイルスに似ていて 当時猛威を振るっていた 天然痘ウイルスから守れるかもしれないと 直感したからです これは見事的中しました その男の子は 天然痘にかかることなく これが史上初めての ワクチンとなりました でも どうして 効いたのでしょう? それにはまず 免疫系が伝染病から 体を守るしくみを 理解する必要があります 病原体が 体内に侵入すると 免疫系が 一連の反応を起こし 病原体を識別して 排除しようとします 免疫系が働いている 目印になるのは 咳 鼻水 炎症 発熱など 私たちにもお馴染みのものです これはバクテリアのような脅威となるものを 体が捕まえ 阻止し 体外に出そうとしているのです これらの自然免疫反応は 適応免疫と呼ばれる — 第2波の防衛機能も 引き起こします 病原体と戦うためにB細胞やT細胞のような 特別な細胞が招集され 同時に病原体の情報を記録して 侵入者がどのような姿をし どう戦うべきなのかを記憶します このノウハウは 同じ病原体が再び侵入した時に 役立ちます 免疫は優れたしくみですが リスクもあります 体が病原体への 対抗方法を学んで 防御機能を築くまでには 時間がかかります その上 侵入された時に体が弱っていたり 幼かったりする場合 強力な病原体に対して 命の危険にさらされるかもしれません もし病気にかかる前に — 免疫系に備えをさせることが できたらどうでしょう? そこで登場するのが ワクチンです この体が自分を守る メカニズムを利用し 病気にかからずに 適応免疫反応を引き起こさせるのが ワクチンなのです そうやって独自の働きを持つ 様々なワクチンが作られてきました ワクチンには異なる タイプのものがあります まず弱毒化ワクチンがあり これは弱めておとなしくさせた 生きた病原体から作られています それから不活化ワクチンがあり これには殺した病原体が入っています 病原体を弱め あるいは不活化させることで ワクチンのせいで病気になることが ないようにしています ワクチンは病気にかかった時と 同じ免疫反応を引き起こし 体が攻撃を識別できるよう 病原体に備える 情報を覚えさせます それぞれの欠点としては 弱毒化ワクチンは作るのが難しく また生きた強力な 病原体なため 免疫系の弱い人には 使えない一方 不活化ワクチンでは 長期的な免疫が得られません 別のタイプのワクチンに サブユニット・ワクチンがあり 抗原と呼ばれる 病原体の一部分から作られます これは免疫反応を引き起こす 病原体の成分です 抗原からさらに タンパク質や多糖といった 特定の要素を 取り出したものによって 特定の反応だけ 引き起こすこともできます 現在では科学者はDNAワクチンと呼ばれる まったく新種のワクチンを 開発しています 抗原を作り出す 遺伝子を使って 免疫反応を引き起こそう というものです このワクチンが 体に注射されると その遺伝子が体内の細胞に 抗原を作るよう指令します これは強い抗体反応を 引き起こし 体を将来の脅威に 対して備えさせます またこのワクチンは 特定の遺伝物質だけからできていて 患者に病気を引き起こして 害を与える可能性のある 病原体の他の部分は 含んでいません もしDNAワクチンの 開発が成功したら 将来 病原体に対して より効果的な治療法に なるかもしれません エドワード・ジェンナーの 驚くべき発見が 現代医学の進歩に 拍車をかけたように 継続するワクチン開発によって いつかの日か HIVや マラリアや エボラも 防げるようになるかもしれません