英語版字幕担当:ミシガン大学所属 ー トリシャ・ポール 完全な評価を確実に行うために、 膝の筋骨格系検査は系統立った方法で行うのが最善です。 次のビデオは膝の損傷を評価する際に用いられる一般的な検査法を多数取り入れている推奨された診察手順です。 まず患者が立った状態で診察を始めます。 大奇形や筋萎縮の形跡がないか、 膝蓋骨の並び方が左右対称かどうか、 膝の内反位あるいは外反位の兆候がないか、また扁平足や凹足ではないか確認します。 後方から観察し、外側につま先が二本以上でていないか確認します。 これはいわゆるtoo many toes兆候です。 これは足の過剰内転や前足部外転を示唆します。 患者につま先立ちをさせ、かかとの位置を評価します。 通常、かかとの位置は中立位から内反位に変化します。 次に歩行の様子を観察し、逃避性歩行や 過度の回内や回外がみられないか注意します。 次に能動的可動域を調べます。 痛みや動きに制限がある場合は、再度、 他動的に可動域を調べます。 患者を座らせた状態で膝の伸展を調べます。 同じ体勢で膝蓋骨トラッキングも観察します。 更に、股関節の内部回転、外部回転も調べます。 これは膝の痛みが股関節の異常によって起こっているか どうかを判断する手がかりになります。 座ったままの姿勢で更に解剖学的に重要な個所を触診し、圧痛が生じないか調べます。 大腿四頭筋末端、四頭筋腱、膝蓋骨、膝蓋骨腱、膝蓋腱、 脛骨粗面、さらに膝蓋下脂肪体を触診します。 内側は内側側副靭帯、内側関節裂隙、鵞足包の触診を行います。 外側は外側側副靭帯、外側関節裂隙、腓骨頭の触診を行います。 後ろから膝窩とハムストリング筋末端を触診します。 仰向けで関節浸出液をよりよく評価するために脚を完全に伸展します。 中のものを端に向かって押すように膝蓋上嚢部を圧迫し、内液の量が増えるかどうか確認します。 膝蓋骨跳動テストを行う場合は膝蓋骨を圧迫してから素早く圧迫を放します。 すぐに跳ね返るかどうか観察します。 これは内液の圧力があがっていることを示します。 轢音(クリック音)や蝶動(はじくような音)が感じられた場合は浸出液が多いということで、これはいわゆる膝蓋跳動です。 膝蓋骨圧迫テストは膝蓋大腿症候群を評価するのに使います。 膝を延ばした状態で、 膝蓋骨を大腿骨滑車に向かって押します。 痛みがあれば検査は陽性です。 膝蓋骨抑制テストも膝蓋大腿症候群を評価するのに使います。 膝を伸ばした状態で患者が大腿四頭筋に力を入れるに 従って膝蓋骨の上部を下方向に向かって押します。 痛みや摩擦音があれば検査は陽性です。 膝蓋骨アプリヘンションテストは膝蓋骨の亜脱臼や脱臼の評価に使います。 膝を伸ばした状態で、膝蓋骨を亜脱臼させようとする様に 内側と外側に押します。 痛みが出たり患者が動きについて不安感を抱いたりした 場合、検査は陽性です。 膝靭帯の弛緩を評価するのに一般的に使われる検査がいくつかあります。 内側側副靭帯の安定性は0度と30度の屈曲位で膝に 外反力を加えて調べることができます。 外側側副靭帯の安定性も0度と30度の屈曲位で膝に 内反力を加えることで調べることができます。 靭帯の弛緩は一部あるいは完全に靭帯が断裂していることを示唆します。 ラックマンテストは前十字靭帯の断裂を調べる検査です。 膝を30度の屈曲位にした状態で大腿骨を固定し、 脛骨近位端を前方に向かって引き出します。 動揺が過度に大きい場合やエンドポイント(終点)がはっきりしない場合は陽性です。 前方引き出しテストでも前十字靭帯の断裂を調べることができます。 膝を90度に屈曲させ足底を診察台につけた状態で、脛骨近位端を前方に向かって引き出します。 動揺が過度に大きい場合やエンドポイント(終点)がはっきりしない場合は陽性です。 後方引き出しテストは後十字靭帯の断裂度合いを 調べる検査です。 膝を90度に屈曲させ足底を診察台につけた状態で、脛骨近位端を後方に向かって押します。 動揺が過度に大きい場合やエンドポイント(終点)がはっきりしない場合は陽性です。 後十字靭帯(PCL)サグテストは後十字靭帯断裂の度合いを評価する検査です。 両膝を90度に屈曲させ、足底を診察台につけた状態で膝を横から観察し頸骨の位置を比較します。 どちらかの頸骨がもう一方より後方に下がっている場合は 陽性です。 マックマレーテストは半月板の損傷を評価する検査です。 仰臥位で膝を完全に曲げた状態で内側関節裂隙を触診し, 膝を外旋させながら伸ばすとともに頸骨に沿って 軸力をかけます。 足を内旋させながら外側関節裂隙を触診する時もこの手法を繰り返します。 痛みやひっかかりがあったり、雑音を感じる場合は半月板に損傷がある兆候です。 跳ね返りテストも半月板の損傷を評価する検査です。 かかとをつかみ、脚を伸ばして脚をぶらぶら振りながら軽く過伸展させます。 痛みがあれば検査は陽性です。 うつぶせの体勢でアプレーの圧迫テストを使って 半月板損傷の評価をします。 膝を90度に曲げ、頸骨に沿って軸力をかけながら 頸骨を左右に回します。 痛みがあれば検査は陽性です。 オーベルテストは脛腸靭帯症候群の評価に使う検査です。 患者が側臥位の状態で膝を支えながら90度に曲げます。 その後、股関節を伸展、外転させ、それから膝を支えるのをやめます。 膝が内転しない場合は陽性です。 患者を座らせた状態での脛腸靭帯症候群評価には ノブレーテストを使用することもできます。 膝を90度に曲げた状態で大腿骨外側上顆に力をかけ 受動的に膝を伸ばします。 30度ほどに曲げたところで外側に痛みがある場合は 陽性です。 膝の診察を終える前に神経血管系の検査を 行うことも重要です。 このビデオでは足背動脈拍動、後頸骨動脈拍動、 毛細血管再充満テストを行っています。 患者の既往歴に応じて更に詳しい検査が必要になる 可能性があります。