WEBVTT 00:00:06.481 --> 00:00:08.743 ゲーム・ショーに 出演中だと想像してください 00:00:08.743 --> 00:00:12.375 1周目で既に1,000ドルを獲得し 00:00:12.375 --> 00:00:14.871 ボーナスのチャンスを 引き当てました 00:00:14.871 --> 00:00:16.657 さて ここで選択です 00:00:16.657 --> 00:00:20.401 確実に500ドルのボーナスをもらうか 00:00:20.401 --> 00:00:21.987 コインを投げるかです 00:00:22.337 --> 00:00:25.857 表が出れば1,000ドルのボーナス 00:00:25.857 --> 00:00:28.586 裏が出ればボーナスはありません 00:00:29.086 --> 00:00:33.929 2周目では 所持金は2,000ドル そこでペナルティを当ててしまいます 00:00:34.469 --> 00:00:36.384 ここで もう1つの選択です 00:00:36.384 --> 00:00:39.320 500ドルの損失で手を打つか 00:00:39.320 --> 00:00:41.951 コイン投げで運を試すかです 00:00:41.951 --> 00:00:44.522 表が出れば損失はゼロ 00:00:44.522 --> 00:00:48.839 裏が出れば1,000ドル失います 00:00:48.839 --> 00:00:50.493 もし あなたが普通の人なら 00:00:50.493 --> 00:00:54.284 1周目では 確実にボーナスをもらう方を選び 00:00:54.284 --> 00:00:56.534 2周目では コインを投げる方を選ぶでしょう 00:00:57.084 --> 00:01:00.083 でも よく考えるとこれは 全く理にかなっていません 00:01:00.083 --> 00:01:03.815 この2つは 確率も結果も 全く同じだからです 00:01:04.805 --> 00:01:08.114 では2つ目の選択の方がずっと 恐ろしく感じるのはなぜでしょう 00:01:08.474 --> 00:01:12.604 答えは「損失回避」と呼ばれる現象です 00:01:13.064 --> 00:01:15.306 合理的な経済理論で考えれば 00:01:15.306 --> 00:01:18.946 意思決定をするときは 単純な数学的計算を行い 00:01:18.946 --> 00:01:22.375 賭けられる量に対するリスクの大きさで 判断すべきです 00:01:22.805 --> 00:01:25.377 しかし 研究によると たくさんの人にとって 00:01:25.377 --> 00:01:29.500 何かを失うことが 人間心理に与えるネガティブな効果は 00:01:29.500 --> 00:01:33.962 同じものを得ることで受ける ポジティブな効果の約2倍強烈なのです 00:01:34.972 --> 00:01:39.575 損失回避とは「認知バイアス」の1つで ヒューリスティックス— 00:01:39.575 --> 00:01:44.014 つまり 厳密な分析よりも 過去の経験や直感を元に 00:01:44.014 --> 00:01:46.529 手短に答えを出す方法に 根ざしています 00:01:46.529 --> 00:01:50.165 頭の中で近道をするようなもので 不合理な選択をする原因となりますが 00:01:50.165 --> 00:01:51.459 この選択は 恋に落ちたり 00:01:51.459 --> 00:01:53.344 バンジージャンプをするのとは違い 00:01:53.344 --> 00:01:57.164 簡単に誤りであると証明できる 論理的な誤謬(ごびゅう)です 00:01:57.844 --> 00:02:03.311 この思考法 確率が関わる場面には 全く向かないことで知られています 00:02:03.591 --> 00:02:09.053 例えば 4面が緑で2面が赤の サイコロを 00:02:09.053 --> 00:02:10.556 20回振るとしましょう 00:02:10.556 --> 00:02:13.374 面の出るパターンを 次から選んで 00:02:13.374 --> 00:02:16.538 見事 その通りに出たら 25ドルもらえます 00:02:16.828 --> 00:02:18.679 どれを選びますか? 00:02:18.679 --> 00:02:24.138 大学生を対象とした ある研究では 被験者の65%が 00:02:24.138 --> 00:02:26.150 パターンBを選びました 00:02:26.150 --> 00:02:29.645 Aのほうが短いうえに Bに含まれており 00:02:29.645 --> 00:02:31.884 当たる確率が高いのにも かかわらずです 00:02:31.884 --> 00:02:34.602 これを「 連言錯誤 」といいます 00:02:34.942 --> 00:02:37.615 緑が出る回数はもっと多いはずと考えて 00:02:37.615 --> 00:02:41.177 より確率の低い選択肢を選んでしまう という脳の錯覚です 00:02:41.647 --> 00:02:45.372 ヒューリスティックスは 数字全般の扱いも大の苦手です 00:02:45.712 --> 00:02:49.483 ある実験では 学生を2つのグループに分け 00:02:49.483 --> 00:02:54.742 グループ1にマハトマ・ガンジーが 死亡したのは9歳より前か後か 00:02:54.742 --> 00:02:59.419 グループ2にはそれが140歳より 前か後かという質問をしました 00:03:00.149 --> 00:03:02.909 両方とも 実際とは かけ離れた数字でしたが 00:03:02.909 --> 00:03:07.257 実際の死亡年齢は何歳だったか という次の質問に対し 00:03:07.257 --> 00:03:10.116 グループ1の回答の平均は50歳 00:03:10.116 --> 00:03:12.916 グループ2では67歳だったのです 00:03:13.556 --> 00:03:17.227 最初の質問に含まれる情報が 明らかに誤りだったことは 00:03:17.227 --> 00:03:18.758 ここでは関係ないはずですが 00:03:18.758 --> 00:03:20.966 それでも回答に影響したのです 00:03:21.746 --> 00:03:24.575 これはアンカリング効果といって 00:03:24.575 --> 00:03:27.489 マーケティングや交渉などで 00:03:27.489 --> 00:03:30.411 相手が払ってもいいと思う金額を 上げるのに使われます 00:03:30.861 --> 00:03:34.899 このように様々な間違いの原因となる ヒューリスティックスが 00:03:34.899 --> 00:03:36.908 そもそも なぜ存在するのかというと 00:03:36.908 --> 00:03:39.222 なかなか便利でもあるからです 00:03:39.682 --> 00:03:41.444 人類の歴史の大部分において 00:03:41.444 --> 00:03:45.464 限られた情報で素早く決断することが 生き残るカギでした 00:03:46.104 --> 00:03:49.751 あらゆる可能性を 論理的に分析する時間がないとき 00:03:49.751 --> 00:03:52.555 ヒューリスティックスで 命が助かることもあるのです 00:03:52.555 --> 00:03:56.605 しかし 現代の環境では はるかに複雑な判断が求められます 00:03:56.605 --> 00:04:00.960 その判断は 私たちが考える以上に 無意識の要因に左右され 00:04:00.960 --> 00:04:03.368 医療から教育、金融、刑事司法まで あらゆる物事に影響を及ぼしているのです 00:04:03.368 --> 00:04:05.572 医療から教育、金融、刑事司法まで あらゆる物事に影響を及ぼしているのです 00:04:05.872 --> 00:04:08.512 ヒューリスティックスの スイッチを切ることは無理でも 00:04:08.512 --> 00:04:10.767 その存在を意識することはできます 00:04:11.067 --> 00:04:13.609 数字や確率が関わっていたり 詳細が複雑な状況に行き当たったら 00:04:13.609 --> 00:04:14.989 数字や確率が関わっていたり 詳細が複雑な状況に行き当たったら 00:04:14.989 --> 00:04:16.493 数字や確率が関わっていたり 詳細が複雑な状況に行き当たったら 00:04:16.493 --> 00:04:17.820 一瞬考えてみましょう 00:04:17.820 --> 00:04:23.448 直感で出した答えは 結局のところ 間違っているかもしれませんよ