私たちがこれまで
2年以上取り組んできたことを
今日この場で
ご紹介できるのを
とても喜ばしく思っています
新しい付加製造技術で
3Dプリントという名でも
知られているものです
これをご覧ください
ごくシンプルですが
同時にとても複雑なものです
同心測地線の集まりで
それぞれが中心と
繋がっています
従来の製造技術では
作り出すことのできないものです
射出成形できないような
対称的な形で
フライス加工でも
作れません
3Dプリンターの仕事です
しかし多くの3Dプリンターでは
これを作るのに3〜10時間かかるでしょう
それをこの10分の講演の間に
ステージ上で作るということに
挑戦したいと思います
どうか幸運を祈ってください
3Dプリントという呼び名は
正確ではありません
実際には2Dプリントを
繰り返しているにすぎません
使われている技術も
2Dプリント関連の技術です
インクジェット印刷を考えてみてください
文字を出すためにページの上にインクを置きます
これを繰り返すことで
3次元的なオブジェクトを作り出すのです
マイクロエレクトロニクスにも
リソグラフィーという
同様のことを行う技術があって
トランジスタや
集積回路といった構造を
繰り返し印刷して
作り上げますが
これも2次元印刷技術です
私は化学者であり
材料科学者です
私の共同考案者もまた
材料科学者で
1人は化学者
1人は物理学者ですが
私たちは3Dプリントに
興味を持つようになりました
新しいアイデアというのは
得てして
異なる領域の異なる経験を持つ人の
繋がりから生まれますが
私たちの場合もそうでした
私たちが触発されたのは
映画『ターミネーター2』の中で
T-1000が出てくるシーンです
3Dプリンターでこんな風に
できないものかと思いました
すごい形状のものが
水たまりの中から
リアルタイムで
材料の無駄もなく
できあがっていくんです
ちょうどあの映画みたいに
ハリウッド映画に
触発されたアイデアを
実現する方法を
考え出すことなんてできるのか?
これは難題でした
もしそれができたなら
3Dプリントが本格的な
製造プロセスとなることを妨げている
3つの問題を解決できます
第1の問題は 3Dプリントには
延々と時間がかかること
3Dプリンターで作るよりも早く成長する
キノコがあるくらいです (笑)
層を重ねていく
というプロセスは
力学的性質の弱さを
もたらしますが
連続的に成長させていくことができれば
この欠点を取り除けます
とても速く成長させることができれば
自己回復素材などを使うこともでき
素晴らしい性質を持たせることができます
もしハリウッドの
フィクションを実現できれば
3D製造の問題を
解決できるのです
私たちのアプローチでは
高分子化学の領域では
よく知られたことを
使っています
光と酸素を利用して連続的に
パーツを成長させるのです
光と酸素は逆方向に作用します
光は樹脂を
液体から固体に変えます
酸素はこのプロセスを阻害します
だから光と酸素は化学的に
正反対の働きをするわけです
光と酸素を空間的に
制御してやることで
このプロセスを
制御できるようになります
私たちはこれを
CLIP(連続的液体面生成)と呼んでいます
これには3つの
構成要素があります
1つは貯水槽で
あのT-1000が出てくる場面のように
液体を保持します
この貯水槽の底には
特別な窓がありますが
これについては
後ほど説明します
これに加えて台があって
貯水槽に降りてきて
液体からオブジェクトを
引き出していきます
3番目の要素は
貯水槽の下にある
デジタル投影システムで
紫外線領域の
光を投影します
鍵となるのは
貯水槽の下にある窓ですが
これは複合的で
特別なものです
光を通すだけでなく
酸素も透過します
コンタクトレンズのような性質を
持っているわけです
このプロセスがどう働くか
見てみましょう
台が降りてきて
従来のプロセスだと
窓は酸素を透過せず
2次元的なパターンが
窓に張り付いた形でできます
次の層を作るためには
分離する必要があり
新しい樹脂を入れ
再配置する—
というプロセスを
何度も繰り返します
しかし私たちの特別な窓を使うと
光を当てている間
下から酸素が上がって来て
反応を阻害することで
死角を作ることができます
この死角は
厚さが数十ミクロンで
赤血球の2、3個分です
窓に接する部分は
液体の状態のままで
オブジェクトを
引き上げていきます
サイエンス誌の論文に
書きましたが
酸素含有量を変えることで
この死角の厚みを変えることができます
だから制御できる変数がたくさんあります
酸素含有量
光 光量 硬化線量
粘度 形状
そしてプロセスの制御のため
非常に洗練されたソフトウェアを使っています
結果はとても
目覚ましいものです
従来の3Dプリンターより
25〜100倍高速です
業界を一変させられます
加えて境界の部分に
液体を送ることもできるので
スピードは千倍にもできると
考えています
これは多くの熱を
生み出すことになるでしょう
化学技術者として
熱伝導の問題と
あまりに高速で水冷装置を
備えた3Dプリンターという考えには
とても興奮を感じます
加えて 連続的に成長させるため
層構造がなくなって
均質になります
表面構造がなく
なめらかなのが分かるでしょう
3Dプリンターで作られた部品の
力学的性質は
印刷した方向に依存するというのは
よく知られていますが
これは層構造によるものです
しかしこのように
成長させることで
物質特性が印刷方向に
依存しなくなります
射出成型された部品のようで
従来の3Dプリンターで作られたものとは
大きく異なります
加えて
高分子化学の知識を
丸ごと投入して
3Dプリントされるオブジェクトに
ほしい性質を生み出す
化学反応をデザインすることができます
(拍手)
できあがりましたね
ほっとしました
本番の舞台になるとうまくいかないというのは
よくあることですから
素材に優れた力学的性質を
持たせることもできます
高い弾性あるいは
緩衝性を持つ
高分子弾性体を
使うことができます
振動の制御や優れたスニーカーといった
応用が考えられます
非常に強い素材
高い強度重量比を持つ素材
非常に優れた高分子弾性体を
作り出すことができます
どうぞ手に取ってご覧ください
優れた物質特性です
最終製品に使える特性を
パーツに持たせることができて
画期的なスピードで
作れるとなれば
製造過程を大きく変えられる
可能性があります
現在製造業界が
取り組んでいるものに
「デジタルスレッド」と
呼ばれるものがあります
CADによる設計から プロトタイプを経て
製造まで 一連の流れで行います
多くの場合
このデジタルスレッドが
プロトタイプのところで切れていて
製造まで行けません
パーツの多くが最終製品の性質を
持っていないためです
今や設計からプロトタイプ 製造へと
全体を通してデジタルスレッドを
つなげられるようになり
あらゆる可能性が広がります
高い強度重量比を持つ
優れた格子特性に取り組む
高燃費車から
新しいタービン翼まで
あらゆる素晴らしいものです
緊急の状況で
ステントが必要な時
医者は標準サイズのものを
棚から取り出す代わりに
患者の血管に合わせて
設計されたステントを使えます
緊急の際に
リアルタイムでプリントし
18ヶ月すると消える性質を
持ったステントです
あるいはデジタル歯科では
このような構造を
患者が椅子に座っている間に
作ることができます
ノースカロライナ大学の
私の学生たちの作った
構造を見てください
目を見張るような
マイクロスケール構造です
ナノサイズについては
既に優れた製造技術があります
10ミクロン以下のサイズについては
ムーアの法則が駆動してきました
その面ではとても
うまくいっています
しかし10ミクロンから
1000ミクロンの間という
中規模のものを作るのが
難しいのです
半導体産業の
減法的技術は
この領域では
上手く機能しません
ウエハーを上手く
エッチングできません
しかしこの製造技術は
とても静かに
底から物を成長させていく
加法的製造技術で
素晴らしい物を
数十秒で作れ
新しいセンサー技術
新しい薬物送達技術
新しいラボ・オン・チップ など
大きな可能性が開けます
ですから最終製品となりうる
性質を持つパーツを
リアルタイムで作れることで
3D製造の夢が本物になります
これは私たちにとって
非常にエキサイティングなことで
これはハードウェアとソフトウェアと
分子科学の交わる部分だからです
この優れたツールによって
世界のデザイナやエンジニアにどんなことができるようになるか
目にするのが待ち遠しいです
どうもありがとうございました
(拍手)