0:00:00.774,0:00:02.515 今 この瞬間 0:00:02.515,0:00:05.989 あなたは頭の中で映画を見ています 0:00:05.989,0:00:08.516 マルチトラックのすごい映画です 0:00:08.516,0:00:11.840 あなたが今 見聞きしていることを 0:00:11.840,0:00:14.476 3Dやサラウンド音響で再生します 0:00:14.476,0:00:16.795 これはほんの序の口です 0:00:16.795,0:00:21.978 映画なのに匂いや味があり[br]触れることもできます 0:00:21.978,0:00:24.530 身体の感覚があるので 0:00:24.530,0:00:28.849 痛みもあるし お腹もすくし[br]オルガスムもあります 0:00:28.849,0:00:30.890 さらに 感情があり 0:00:30.890,0:00:34.426 怒りや幸福を感じます 0:00:34.426,0:00:38.220 記憶もあり 子どもの頃の場面が 0:00:38.220,0:00:40.920 目の前で再生されるのです 0:00:40.920,0:00:45.375 そして 常に意識の流れの 0:00:45.375,0:00:49.751 ナレーションが流れています 0:00:49.751,0:00:54.824 この映画の主人公は これらすべてを 0:00:54.824,0:00:59.189 直接経験するあなた自身なのです 0:00:59.189,0:01:04.881 この映画はあなたの[br]意識の流れそのものであり 0:01:04.881,0:01:06.188 つまり 0:01:06.188,0:01:11.326 心の中と世界における経験の主体なのです 0:01:11.326,0:01:13.631 意識とは人間の実存における 0:01:13.631,0:01:15.648 基本要素の1つです 0:01:15.648,0:01:18.580 誰でも意識があります 0:01:18.580,0:01:21.309 私たちは皆 内なる映画を持っているのです 0:01:21.309,0:01:24.040 あなたも あなたも あなたもです 0:01:24.040,0:01:27.760 私たちがこれより直接的に[br]知っているものは他にありません 0:01:27.760,0:01:31.232 少なくとも 私は自分の意識については[br]直接的に知っています 0:01:31.232,0:01:35.230 あなた方に意識があるかについては[br]はっきり分かりませんが 0:01:35.230,0:01:38.658 意識は人生を生きる価値のあるものに[br]してもくれます 0:01:38.658,0:01:42.358 意識がなかったら 生きることの 0:01:42.358,0:01:45.723 意味や価値は無くなってしまいます 0:01:45.723,0:01:46.889 しかし同時に 0:01:46.889,0:01:51.059 意識は宇宙で最も神秘的なものなのです 0:01:51.059,0:01:54.432 なぜ私たちには意識があるのでしょうか? 0:01:54.432,0:01:55.973 なぜ内なる映画があるのでしょうか? 0:01:55.973,0:01:58.226 どうして私たちは単に 0:01:58.226,0:02:00.469 インプットを処理して 0:02:00.469,0:02:02.486 アウトプットを作り出す 0:02:02.486,0:02:06.341 内なる映画などを経験しない[br]ロボットではないのでしょうか? 0:02:06.341,0:02:08.850 現時点では 誰もこれらの質問に 0:02:08.850,0:02:10.596 答えられません 0:02:10.596,0:02:14.305 意識を科学に融合させるためには 0:02:14.305,0:02:19.000 幾分過激な発想が必要かもしれません 0:02:19.000,0:02:21.966 意識の科学は 0:02:21.966,0:02:23.918 不可能だと言う人もいます 0:02:23.918,0:02:27.686 科学は本質的に客観的です 0:02:27.686,0:02:31.111 意識は本質的に主観的です 0:02:31.111,0:02:35.560 それゆえ意識の科学はあり得ないのです 0:02:35.560,0:02:38.780 20世紀の大半は そういう見解が[br]幅をきかせていました 0:02:38.780,0:02:42.598 心理学者は行動を客観的に研究し 0:02:42.598,0:02:46.660 神経科学者は脳を客観的に[br]研究してきましたが 0:02:46.660,0:02:50.210 意識に言及した学者は かつていませんでした 0:02:50.210,0:02:52.966 TEDが始まった 30年前でさえ 0:02:52.966,0:02:55.348 意識に関する科学的研究は 0:02:55.348,0:02:57.900 ほとんどなされていませんでした 0:02:57.900,0:02:59.605 20年前から 0:02:59.605,0:03:02.578 変化の兆しが見え始めました 0:03:02.578,0:03:05.355 フランシス・クリックのような神経科学者や 0:03:05.355,0:03:08.111 ロジャー・ペンローズのような物理学者が 0:03:08.111,0:03:10.351 今こそ 科学が意識に 0:03:10.351,0:03:13.127 取り組む時だと言いました 0:03:13.127,0:03:15.447 それ以来 意識に関する 0:03:15.447,0:03:17.784 科学的研究が 急増し 0:03:17.784,0:03:19.048 大いに花開いています 0:03:19.048,0:03:21.087 この研究は素晴らしく偉大なものです 0:03:21.087,0:03:23.175 しかし これまでのところ 0:03:23.175,0:03:27.000 根本的な限界もありました 0:03:27.000,0:03:28.658 近年行われてきた 0:03:28.658,0:03:31.478 意識の科学の中心は 0:03:31.478,0:03:33.973 相関関係の探求― 0:03:33.973,0:03:37.102 脳の特定の領域と 0:03:37.102,0:03:41.120 特定の意識の状態との[br]相関関係の研究でした 0:03:41.120,0:03:42.210 こうした研究では 0:03:42.210,0:03:43.970 ナンシー・カンウィッシャーから 0:03:43.970,0:03:47.246 素晴らしい成果の話を[br]たった今聞きました 0:03:47.246,0:03:50.809 このように理解はずっと進んでいて 0:03:50.809,0:03:53.126 例えば 意識的な経験に 0:03:53.126,0:03:56.497 付随する脳の領域はよく理解されています 0:03:56.497,0:03:59.617 顔を見たり 痛みを感じたり 0:03:59.617,0:04:02.106 幸せを感じたりするような領域です 0:04:02.106,0:04:04.922 しかし これは相関関係の科学から[br]抜け切れていません 0:04:04.922,0:04:08.278 科学的な説明には至らないのです 0:04:08.278,0:04:10.901 これらの脳の領域が 0:04:10.901,0:04:14.825 特定の意識的経験に付随することは[br]分かっているのですが 0:04:14.825,0:04:18.461 なぜそうであるのかは 分かっていないのです 0:04:18.461,0:04:20.786 こう申し上げましょう 0:04:20.786,0:04:24.183 神経科学によるこうした研究は 0:04:24.183,0:04:25.929 答えが求められていた[br]意識についての 0:04:25.929,0:04:28.254 いくつかの問いに答えつつあります 0:04:28.254,0:04:31.507 特定の脳の領域に関する問いや 0:04:31.507,0:04:33.616 それが何と相関しているかなどです 0:04:33.616,0:04:36.772 しかしある意味では それらは単純な問いです 0:04:36.772,0:04:39.213 神経科学者にとっては[br]大したことではありません 0:04:39.213,0:04:41.834 意識の問題となると単純ではありません 0:04:41.834,0:04:46.425 それなのに このテーマの核心である 0:04:46.425,0:04:48.355 真の謎に触れていないのです 0:04:48.355,0:04:52.575 脳内のすべての物理的処理は 0:04:52.575,0:04:55.500 なぜ意識を伴っているのでしょうか? 0:04:55.500,0:04:58.706 なぜ内なる主観的な映画があるのでしょうか? 0:04:58.706,0:05:01.960 今のところ 本当に何も分かっていません 0:05:01.960,0:05:03.993 数年あれば 神経科学で 0:05:03.993,0:05:07.548 解明できると思うかもしれません 0:05:07.548,0:05:11.328 突発的な現象のひとつとして 0:05:11.328,0:05:16.210 交通渋滞やハリケーンや人生のように 0:05:16.210,0:05:18.831 答えが見出されるでしょう 0:05:18.831,0:05:20.902 出現の典型的な例は 0:05:20.902,0:05:24.280 あらゆる突発的な行動です 0:05:24.280,0:05:26.627 交通渋滞がどのように起こり 0:05:26.627,0:05:28.123 ハリケーンがどのように機能し 0:05:28.123,0:05:30.316 生き物がどのように再生産したり 0:05:30.316,0:05:33.905 順応したり代謝するのかなど 0:05:33.905,0:05:36.188 客観的な働きに関する問いばかりです 0:05:36.188,0:05:39.010 人間の脳に当てはめれば 0:05:39.010,0:05:40.519 いくつかの行動や 0:05:40.519,0:05:42.792 人間の脳の機能を突発的な現象として 0:05:42.792,0:05:43.951 説明できるでしょう 0:05:43.951,0:05:48.349 例えば 歩き方 話し方 チェスの仕方などは 0:05:48.349,0:05:50.239 すべて行動に関する問いです 0:05:50.239,0:05:52.366 しかし 意識となると 0:05:52.366,0:05:54.255 行動についての問いは 0:05:54.255,0:05:57.180 単純な部類になります 0:05:57.180,0:05:58.777 難問に分類されるのは 0:05:58.777,0:06:01.154 一体 どうして 0:06:01.154,0:06:02.965 すべての行動が 0:06:02.965,0:06:05.810 主観的な経験を伴うのかという問いです 0:06:05.810,0:06:07.565 そして出現についての 0:06:07.565,0:06:09.411 標準的なバラダイムは― 0:06:09.411,0:06:12.358 神経科学の標準的なパラダイムでさえ 0:06:12.358,0:06:16.801 あまり言及していないのです 0:06:16.801,0:06:20.446 さて 私は唯物論的科学者だと思っています 0:06:20.446,0:06:24.473 私は意識をうまく説明できる 0:06:24.473,0:06:26.802 科学的理論を 0:06:26.802,0:06:29.209 長い間 探し求めており 0:06:29.209,0:06:30.650 意識について 0:06:30.650,0:06:32.787 純粋に物理用語で語れる理論を 0:06:32.787,0:06:34.543 求める中で 0:06:34.543,0:06:35.870 壁にぶち当たってきました 0:06:35.870,0:06:37.613 そして 体系的な理由から 0:06:37.613,0:06:41.798 うまくいかないのだという結論に達しました 0:06:41.798,0:06:43.733 話すと長くなりますが 0:06:43.733,0:06:46.450 主要な考えは単純で 0:06:46.450,0:06:48.790 物理用語や脳科学的な言葉などの 0:06:48.790,0:06:51.434 純粋に還元主義的な説明からは 0:06:51.434,0:06:53.549 体系の働き方や構造・力学 0:06:53.549,0:06:55.675 その結果である行動などの 0:06:55.675,0:06:57.667 説明が得られます 0:06:57.667,0:06:59.747 これらは単純な問い― 0:06:59.747,0:07:02.245 行動や機能の仕方などには[br]適していますが 0:07:02.245,0:07:05.698 主観的な経験― 0:07:05.698,0:07:09.259 なぜすべてが内側から[br]発せられるように感じるかなどは 0:07:09.259,0:07:11.334 まったく新しいものであり 0:07:11.334,0:07:15.227 常にさらに深遠な問いなのです 0:07:15.227,0:07:20.640 ここで行き詰ってしまいます 0:07:20.640,0:07:23.855 説明が素晴らしいことに[br]繋がっており 0:07:23.855,0:07:27.455 私たちはそれに慣れています[br]物理が化学を説明し 0:07:27.455,0:07:30.695 化学が生物学を説明し 0:07:30.695,0:07:34.542 生物学は心理学を部分的に[br]説明するというものです 0:07:34.542,0:07:36.000 しかし意識は 0:07:36.000,0:07:38.771 この図式に当てはまりません 0:07:38.771,0:07:40.661 かたや 私たちに意識があることは 0:07:40.661,0:07:42.630 感覚与件です 0:07:42.630,0:07:43.916 その一方 それを 0:07:43.916,0:07:47.894 科学的な世界観にどう当てはめてよいか[br]分かりません 0:07:47.894,0:07:49.841 だから 意識は現在では 0:07:49.841,0:07:52.304 ある種 不合理な存在だと思います 0:07:52.304,0:07:54.340 世界観に組み込む必要があるものの 0:07:54.340,0:07:58.240 その方法が分からないのです 0:07:58.240,0:08:00.168 このような不合理に直面したときには 0:08:00.168,0:08:03.407 過激な発想がいるのかもしれません 0:08:03.407,0:08:06.412 意識を科学的に 0:08:06.412,0:08:08.852 理解するためには 0:08:08.852,0:08:11.788 一見 クレージーに感じられるような 0:08:11.788,0:08:13.880 発想の1つや2つは必要かもしれません 0:08:13.880,0:08:15.479 さて クレージーな発想の候補が 0:08:15.479,0:08:17.975 いくつかあります 0:08:17.975,0:08:22.317 今日ここにいる友人のダン・デネットは[br]その1つの持ち主です 0:08:22.317,0:08:24.714 ダンは意識に関する難題は 0:08:24.714,0:08:26.457 存在しないと考えています 0:08:26.457,0:08:29.820 内なる主観的な映画という考え方は 0:08:29.820,0:08:34.432 ある種の錯覚や混乱を伴っています 0:08:34.432,0:08:36.330 実際 客観的な機能や脳の行動を 0:08:36.330,0:08:39.337 説明しさえすればいいのであり 0:08:39.337,0:08:41.362 そうすれば説明されるべきものは 0:08:41.362,0:08:43.837 すべて説明されるのです 0:08:43.837,0:08:46.446 説得力がありますね 0:08:46.446,0:08:48.460 意識に関して 純粋に還元主義的で 0:08:48.460,0:08:50.384 脳科学的な理論を得たいのなら 0:08:50.384,0:08:52.723 探究する必要のある 0:08:52.723,0:08:56.273 過激な発想だと言えるでしょう 0:08:56.273,0:08:58.344 同時に私や他の多くの人にとっても 0:08:58.344,0:09:00.171 この見解はあまりにも単純に 0:09:00.171,0:09:02.192 意識の感覚与件を否定しているので 0:09:02.192,0:09:03.695 満足のいくものではありません 0:09:03.695,0:09:06.763 別の方向に話を進めましょう 0:09:06.763,0:09:07.949 残りの時間で 0:09:07.949,0:09:10.948 発展する可能性のある2つの[br]クレージーな発想について 0:09:10.948,0:09:14.665 お話したいと思います 0:09:14.665,0:09:16.285 最初のクレージーな発想は 0:09:16.285,0:09:20.910 意識は基本的なものだとするものです 0:09:20.910,0:09:23.751 物理学者は時折 宇宙のある側面を 0:09:23.751,0:09:25.911 基本的構成単位として捉えます 0:09:25.911,0:09:29.660 空間や時間 質量などです 0:09:29.660,0:09:33.270 それらは自らを支配する[br]基本的な法則を前提としています 0:09:33.270,0:09:37.160 重力の法則や量子力学などです 0:09:37.160,0:09:39.470 これらの基本的特性や法則は 0:09:39.470,0:09:42.687 それ以上基本的な概念で[br]説明することはできません 0:09:42.687,0:09:45.427 むしろ それらを根源的なものとして捉え 0:09:45.427,0:09:48.806 そこから世界を築くのです 0:09:48.806,0:09:53.905 時に 基本的な概念が増えることがあります 0:09:53.905,0:09:56.362 19世紀にマクスウェルは 0:09:56.362,0:09:59.530 電磁現象をすでに存在している[br]基本的な概念で 0:09:59.530,0:10:01.881 説明できないと思い至りました 0:10:01.881,0:10:04.950 空間 時間 質量 ニュートンの法則も然りです 0:10:04.950,0:10:07.521 そのため マクスウェルは電磁気の 0:10:07.521,0:10:09.335 基本的な法則を仮定しました 0:10:09.335,0:10:11.746 そして その法則が支配する 0:10:11.746,0:10:13.514 基本的な要素として 0:10:13.514,0:10:16.473 電荷を仮定しました 0:10:16.473,0:10:19.756 これが意識に関して 0:10:19.756,0:10:21.366 私たちの置かれた状況です 0:10:21.366,0:10:23.851 空間や時間 質量や電荷などの 0:10:23.851,0:10:26.269 すでに存在する基本的概念で 0:10:26.269,0:10:28.940 意識を説明できないのなら 0:10:28.940,0:10:32.370 論理的に言えば 基本的語彙を[br]増やさねばなりません 0:10:32.370,0:10:34.846 自然な考え方は 0:10:34.846,0:10:38.102 意識そのものを基本的な概念― 0:10:38.102,0:10:41.134 つまり自然を構成する[br]基本的な要素として仮定するものです 0:10:41.134,0:10:44.102 突然 科学的思考が[br]できなくなるわけではありません 0:10:44.102,0:10:47.700 むしろ意識に関して 科学的に[br]考える道を切り開いてくれるのです 0:10:47.700,0:10:49.604 そうなると 意識を支配する 0:10:49.604,0:10:52.557 基本的な法則を学ぶ必要があります 0:10:52.557,0:10:54.937 意識を他の基本的な概念― 0:10:54.937,0:10:57.738 空間や時間 質量や物理的現象などと 0:10:57.738,0:11:00.674 結びつけるものです 0:11:00.674,0:11:02.856 時折 物理学者は 0:11:02.856,0:11:05.736 私たちがTシャツの前面に書けるくらい 0:11:05.736,0:11:09.538 単純な基本的法則を求めていると言います 0:11:09.538,0:11:11.259 それは意識に関する状況に 0:11:11.259,0:11:13.127 似ていると思います 0:11:13.127,0:11:15.877 私たちもTシャツの前面に書けるくらい 0:11:15.877,0:11:17.964 単純で基本的な法則を求めているのです 0:11:17.964,0:11:19.539 どんな法則かは まだわかりませんが 0:11:19.539,0:11:23.566 そういうものを求めているのです 0:11:23.566,0:11:25.983 2番目のクレージーな発想は 0:11:25.983,0:11:29.461 意識は普遍的なものかもしれないとするものです 0:11:29.461,0:11:32.522 万物には 程度の差こそあれ 0:11:32.522,0:11:36.247 意識が存在します 0:11:36.247,0:11:39.208 これは汎心論とも呼ばれています 0:11:39.208,0:11:42.210 「汎」はあまねくという意味で[br]「心」は精神を意味しており 0:11:42.210,0:11:43.981 万物には意識があるとするものです 0:11:43.981,0:11:48.228 人間だけでなく 犬やネズミやハエ― 0:11:48.228,0:11:50.805 ロブ・ナイトの微生物や 0:11:50.805,0:11:52.992 素粒子にもあるのです 0:11:52.992,0:11:55.705 光子にさえ ある種の意識があります 0:11:55.705,0:11:59.484 光子に知性があり 思考できるということでは 0:11:59.484,0:12:00.561 ありません 0:12:00.561,0:12:01.991 光子が「ああ いつも高速で 0:12:01.991,0:12:03.436 移動してばかりで 0:12:03.436,0:12:06.728 ゆっくり動いてバラの香りを[br]楽しむこともできない」と 0:12:06.728,0:12:09.720 思い悩んでいるということではないのです 0:12:09.720,0:12:11.864 そんなことはありません 0:12:11.864,0:12:14.912 光子にも何らかの 0:12:14.912,0:12:17.535 未熟な主観的感情があり 0:12:17.535,0:12:21.687 意識の先駆けのようなものを[br]持っているかもしれないということです 0:12:21.687,0:12:24.541 ちょっと変に思われるかもしれません 0:12:24.541,0:12:27.324 こんなクレージーなことを[br]どうして考えるのでしょうか? 0:12:27.324,0:12:30.884 その動機の一部は[br]意識は基本的な概念であるという 0:12:30.884,0:12:33.030 1つ目のクレージーな考えから生じています 0:12:33.030,0:12:37.405 意識が 空間や時間や質量のように[br]基本的なものであるなら 0:12:37.405,0:12:40.070 意識が普遍的であり そういうものなのだと 0:12:40.070,0:12:41.970 考えるのは自然なことです 0:12:41.970,0:12:43.919 この発想が私たちにとって 0:12:43.919,0:12:45.943 直観的でないとしても 0:12:45.943,0:12:48.687 人間の精神が より深く 0:12:48.687,0:12:50.418 自然と結びついている 0:12:50.418,0:12:51.938 文化圏の人々にとっては 0:12:51.938,0:12:55.010 さほど直観に反することではないというのも[br]言及するに値するでしょう 0:12:55.010,0:12:58.744 さらに深い動機は意識を[br]物理現象と結びつける 0:12:58.744,0:13:00.753 基本的法則を見出すための 0:13:00.753,0:13:02.987 最も単純かつ強力な方法は 0:13:02.987,0:13:04.967 意識と情報を結びつける 0:13:04.967,0:13:08.062 という発想に起因しています 0:13:08.062,0:13:10.073 情報処理が行われるところにはどこでも 0:13:10.073,0:13:11.138 意識があるのです 0:13:11.138,0:13:13.678 人間が行うような複雑な情報処理には 0:13:13.688,0:13:15.220 複雑な意識が伴います 0:13:15.220,0:13:17.349 単純な情報処理には 0:13:17.349,0:13:19.307 単純な意識があります 0:13:19.307,0:13:21.638 非常に期待が持てることには 近年 0:13:21.638,0:13:24.903 神経科学者のジュリオ・トノーニが 0:13:24.903,0:13:26.146 こうした理論を 0:13:26.146,0:13:28.221 数学の理論を用いて 0:13:28.221,0:13:30.070 大きく発展させました 0:13:30.070,0:13:31.587 トノーニには彼がファイと呼ぶ 0:13:31.587,0:13:33.317 情報を統合する 0:13:33.317,0:13:35.236 数学的な方法論がありました 0:13:35.236,0:13:36.843 これはシステム内で統合された 0:13:36.843,0:13:38.463 情報量を計るものです 0:13:38.463,0:13:40.832 トノーニはファイが 0:13:40.832,0:13:42.270 意識を伴うと考えました 0:13:42.270,0:13:43.591 それゆえ 人間の脳内では 0:13:43.591,0:13:46.110 膨大な情報統合が行われるため 0:13:46.110,0:13:48.144 高度なファイがあることになり 0:13:48.144,0:13:49.693 かなりの意識が存在します 0:13:49.693,0:13:53.386 マウスにおいては中程度とはいえ[br]かなりの情報統合が 0:13:53.386,0:13:54.405 行われるので 0:13:54.405,0:13:56.430 相当な程度の意識があるといえます 0:13:56.430,0:13:58.695 しかし 虫や 0:13:58.695,0:14:02.172 微生物や粒子レベルになると 0:14:02.172,0:14:03.706 ファイの量は低下します 0:14:03.706,0:14:06.139 情報統合の量が低下しても 0:14:06.139,0:14:07.587 ゼロにはなりません 0:14:07.587,0:14:09.526 トノーニの理論によると 0:14:09.526,0:14:11.733 意識の程度はまったくのゼロには 0:14:11.733,0:14:13.562 ならないのだといいます 0:14:13.562,0:14:16.101 事実上 トノーニは意識に関する[br]基本的法則を 0:14:16.101,0:14:19.485 提案しています つまり 高度なファイには[br]高度な意識が宿るのです 0:14:19.485,0:14:22.107 私にはこの理論が正しいのかどうか[br]分かりませんが 0:14:22.107,0:14:25.318 意識の科学では 今のところ 0:14:25.318,0:14:26.704 有力な説かもしれません 0:14:26.704,0:14:28.935 あらゆる科学データを統合するのに 0:14:28.935,0:14:31.322 用いられており 0:14:31.322,0:14:33.565 良い特性を持った説なので 0:14:33.565,0:14:37.060 実際にTシャツの前面に書けるくらい単純です 0:14:37.060,0:14:39.685 最後の動機は 0:14:39.685,0:14:41.736 汎心論が意識を物質世界と統合するのに 0:14:41.736,0:14:44.950 役立つかもしれないということです 0:14:44.950,0:14:48.127 物理学者も哲学者も 度々物理が[br]不思議なほどに 0:14:48.127,0:14:50.568 抽象的であることに気づいてきました 0:14:50.568,0:14:52.716 物理は多くの方程式を使って 0:14:52.716,0:14:54.800 現実の構造を説明しますが 0:14:54.800,0:14:57.824 その根底にある現実について 0:14:57.824,0:14:59.392 説明することはありません 0:14:59.392,0:15:01.289 スティーヴン・ホーキングが言うように 0:15:01.289,0:15:05.343 何がこれらの方程式に[br]力を与えるのでしょうか? 0:15:05.343,0:15:07.961 汎心論者の見解では 0:15:07.961,0:15:10.600 物理の方程式をそのまま[br]捨て置くことはできますが 0:15:10.600,0:15:12.164 意識の流れを説明するために 0:15:12.164,0:15:13.838 用いることもできます 0:15:13.838,0:15:15.876 物理の究極の目的は 0:15:15.876,0:15:18.205 意識の流れを説明することなのです 0:15:18.205,0:15:19.858 この見解において 意識こそが 0:15:19.858,0:15:24.104 方程式に力を与えるものです 0:15:24.104,0:15:25.764 その見解では 意識は物質世界の外へ 0:15:25.764,0:15:27.440 何か余分なものとして 0:15:27.440,0:15:28.858 ぶら下がることはありません 0:15:28.858,0:15:32.314 それはまさに中心に位置しているのです 0:15:32.314,0:15:35.188 この汎心論的見解は 0:15:35.188,0:15:38.489 私たちと自然との関係性を[br]変容させてしまう 0:15:38.489,0:15:39.984 可能性があります 0:15:39.984,0:15:42.219 そして非常に重要な社会的・道徳的結果を 0:15:42.219,0:15:45.912 もたらすかもしれません 0:15:45.912,0:15:48.071 これらの中には[br]直観的でないものもあるでしょう 0:15:48.071,0:15:51.142 私はかつて 意識のある物は 0:15:51.142,0:15:53.604 何も食べるべきではないと考えており 0:15:53.604,0:15:56.208 ベジタリアンになるべきだと思っていました 0:15:56.208,0:15:58.775 あなたが汎心論者で[br]そのような見解を持つなら 0:15:58.775,0:16:01.505 お腹が満たされないことでしょう 0:16:01.505,0:16:02.793 意識について考えると 0:16:02.793,0:16:04.960 あなたの物の見方は大きく変わるでしょう 0:16:04.960,0:16:07.203 しかし倫理的な目的や道徳的な考え方に 0:16:07.203,0:16:08.477 重要な事柄は 0:16:08.477,0:16:11.554 意識そのものというよりも 0:16:11.554,0:16:15.510 意識の程度や複雑さなのです 0:16:15.510,0:16:17.448 コンピュータなどの他のシステムにおける 0:16:17.448,0:16:20.498 意識について疑問を持つのは当然でしょう 0:16:20.498,0:16:22.287 映画『her/世界でひとつの彼女』の 0:16:22.287,0:16:25.729 サマンサのような人工知能型OSは[br]どうでしょうか? 0:16:25.729,0:16:27.129 彼女には意識がありますか? 0:16:27.129,0:16:28.560 仮に情報にもとづく 0:16:28.560,0:16:29.740 汎心論的な見方をするなら 0:16:29.740,0:16:33.211 サマンサは複雑な情報の処理と 0:16:33.211,0:16:34.632 統合を行うので 0:16:34.632,0:16:37.299 彼女には意識が「ある」という答えが[br]導き出せそうです 0:16:37.299,0:16:40.237 もしそれが正しいのなら 0:16:40.237,0:16:42.602 人工知能型OS開発や 0:16:42.602,0:16:46.123 それらの電源を落とすことについての倫理が 0:16:46.123,0:16:48.859 深刻な倫理問題となるでしょう 0:16:48.859,0:16:51.359 最後に 地球全体としての 0:16:51.359,0:16:53.241 意識について 0:16:53.241,0:16:55.078 問いを抱くかもしれません 0:16:55.078,0:16:58.001 カナダには意識があるのでしょうか? 0:16:58.001,0:17:00.100 あるいは もっと身近なレベルで 0:17:00.100,0:17:01.308 TEDカンファレンスの 0:17:01.308,0:17:03.571 聴衆のようにまとまった集団はどうでしょう? 0:17:03.571,0:17:07.020 今 私たちはTEDグループとしての[br]意識を持ち 0:17:07.020,0:17:08.513 このTEDグループでの 0:17:08.513,0:17:11.319 内なる映画を見ているのでしょうか? 0:17:11.319,0:17:12.999 それは個々人の内なる映画とは 0:17:12.999,0:17:14.088 違うのでしょうか? 0:17:14.088,0:17:16.243 その答えは分かりませんが 0:17:16.253,0:17:17.624 少なくとも真剣に捉える 0:17:17.624,0:17:20.098 価値のある問いだと思います 0:17:20.098,0:17:22.435 さて この汎心論的見解は 0:17:22.435,0:17:24.248 極端なものですし 0:17:24.248,0:17:26.462 正しいかどうか分かりません 0:17:26.462,0:17:28.315 私は実は意識を基本的な概念だとする 0:17:28.315,0:17:29.948 1番目のクレージーな発想の方が 0:17:29.948,0:17:32.117 2番目に紹介した 0:17:32.117,0:17:33.920 意識を普遍的なものとするものより 0:17:33.920,0:17:36.141 正しいのではと思っています 0:17:36.141,0:17:38.219 なぜなら その見解は多くの疑問と 0:17:38.219,0:17:39.760 多くの難題を生むからです 0:17:39.760,0:17:41.120 例えば いかにほんの小さな 0:17:41.120,0:17:42.860 意識が集まって 0:17:42.860,0:17:45.157 私たちが理解しこよなく愛する 0:17:45.157,0:17:47.480 複雑な意識となるのかなどです 0:17:47.480,0:17:48.940 これらの質問に答えられたなら 0:17:48.940,0:17:50.445 重要な意識に関する理論を 0:17:50.445,0:17:53.532 確立できるかもしれません 0:17:53.532,0:17:56.920 上手くいかなくとも これは科学と哲学において 0:17:56.920,0:17:58.764 最も難解な問いなのです 0:17:58.764,0:18:02.209 一晩で解くことはできません 0:18:02.209,0:18:05.749 でも最終的には必ず解明されると思います 0:18:05.749,0:18:08.736 意識を理解することが 0:18:08.736,0:18:11.188 宇宙を理解したり 0:18:11.188,0:18:13.718 私たちの自己を理解したりする[br]真の鍵となるのです 0:18:13.718,0:18:16.621 それに必要なのは適切な[br]クレージーな発想なのかもしれません 0:18:16.621,0:18:18.612 ありがとうございました 0:18:18.612,0:18:20.300 (拍手)