お気付きになったこと ありませんか? プライベートの充実のために 変えたことについて語ってもらうと 非常に熱が入っている人が多いですよね それがマラソンのトレーニングであっても 昔の趣味の再開であっても 新しいスキルの習得であっても 多くの人にとって自己変革の取り組みは ポジティブな感情を強く刺激するからです 自己変革は自信の源となり やる気が出て 爽快感すら生み出します 自己啓発本のタイトルを見れば ご納得でしょう 『内なる巨人を目覚めさせよ』 (邦題『一瞬で「自分の夢」を実現する法』) 『今という力の活用法』 (『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』) 極めつけはこれです 皆さんも頷けるはず 『あなたはイケている 自身の偉大さを疑わず 最高の人生を送る方法』ですよ? (『もっと「自分のため」に生きていい!』) (笑) 自己変革のことになると 私たちはワクワクせずにいられないのです しかし変革の中には 全く別の感情を刺激するものもあります 組織変革です 普通の人なら 「これから当社は組織改革を行う」と 言われたら 「やばい...」と思うでしょう (笑) 「リストラだ」と 顔面は蒼白になり 過熱状態になるほど 頭をフル回転させて 逃げ隠れしようと必死になるでしょう 実際 逃走は可能かもしれません でも隠れきることは不可能です なぜなら私たちの多くは 起きている時間の大半を 組織の中で費やすからです グローバリゼーションや 技術の進歩に伴う変化 その他諸々の要因のために 私たちの組織は適応を常に強いられています そんな現代を私は 「常時進行中の変化の時代」と 名付けました このことを妻のニコラに話すと 彼女はこう言いました 「常時進行中の変化? なんだか とっても疲れそうね」と 皆さんも今まさに そう思われていませんか? 確かにそうかもしれません これまで通りのやり方で 組織変革に向き合い続けるなら なおのことです でも隠れることはできないのですから 2つのことを整理しないといけません 1つ目は なぜ変革は疲弊を伴うのかです そして2つ目は それをどう解決するかです でも その前に 変化とは困難を伴うものであることを まず認識しましょう 人が変化を嫌うのは自然なことです 強制されたなら尚更そうです ただし 組織のやり方のせいで 変化が必要以上に 受容し難く 消耗するものに なることがあるのも事実です 例えば トップが行動を起こすタイミングの遅れです その結果 緊急事態に陥ってから一気に始動するのです 疲弊するのは当然でしょう あるいは緊急性から 短期的な結果のみが重視され 将来が見えなかったり その場しのぎの表面的な対策を取りながら また元の状態に戻れると期待して 今の危機的状況だけを やり過ごそうとしたりします このような やり方は 全国共通テストに向けて一部の学生が取る 勉強法と ある意味似ています 点数を上げることを目的に 教師は試験対策用の授業をすることになります 効き目はあると言えばあって 実際 点数は上がることが多いです しかし 教育の本来の目的には そぐわないものです 長期的視点で成功を収める力を 学生に備えさせるべきなのですから さて このような課題がある中で どのように 組織変革のやり方を変革させたら 疲弊ではなく 自信ややる気が生まれるでしょうか? ここで注力すべきは 5つの戦略的な必須事項です その全てに共通する特徴が1つあります 人を第一に考える姿勢です この人を第一に考える 最初の必須事項は 目的を共有し鼓舞することです たいていの変革は 財務的・経営的な目標が掲げられます それらも重要ですし リーダーなら やる気も沸くでしょう しかし組織に従属する側の 動機付けには あまりならないでしょう 広くモチベーションを与えるには より強い目的意識に結びつけられた 変革でなければいけません レゴ社を例に挙げます レゴ・グループは今や世界的大企業ですが 実は極めて有能なリーダーシップの下で 何度も変革を成し遂げてきているのです 変革ごとに具体的な目標が設定されましたが 北極星のように 全てを結び付け 道標となっていたのが こちらの レゴ社の掲げる大きな使命でした 「ひらめきを与え 未来のビルダーを育もう」 世界進出の動機は何だったか? それは売上の増大ではなく レゴを知らない何百万人の子供たちに ブロック遊びを体験してもらうことでした 投資や革新の動機は? 新製品の開発ではありません 遊びを通して学ぶ楽しさを より多くの子供たちに 体感してもらうことでした 当然ながら このような強い目的意識があると レゴ社の人たちも やる気が高まるのです 人第一の第2の必須事項は 全面的に取り組むことです あまりにも多くの変革が 単なる人員削減策で終わっています つまり変革という名を借りたリストラです 絶え間ない競争に晒されているのですから 苦渋の選択を下し 組織縮小することもあるでしょう マラソンに出るために 時に減量が必要なことと同じです でも減量だけでは ゴールテープを1番に切ることはできません 勝利を掴むには 全面的に行わなければいけないのです 全面的にね つまり経費削減だけでなく 中期で勝利を収めるための 戦略も必要です 成長促進のための戦略も 企業の運営法を根本的に 変えるような行動もです そして極めて重要なのが リーダーシップや才能を 育てるための投資です 人第一の第3の必須事項は 社員が 変革の間やその後も 上手くやっていけるよう 必要なものを提供することです ここ数年で 私はトライアスロンの大会に 何度か出場しました 正直に言うと あまり強くないんです でも1つ特技があります 自分の自転車を瞬時に発見できるんです (笑) 何せ私が水泳を終える頃には ほぼ自転車は残ってませんからね (笑) 真のトライアスロン選手は 水泳・自転車・長距離走の種目には それぞれ異なる能力と 異なる道具と 異なる技能と技術が必要だと知っています 同様に 組織変革においても 各過程で必要になる技能や道具を 社員たちに提供することを忘れてはいけません クロノスという ソフトウェアの世界的企業は 製品としてのソフトウェア開発から脱却し サービスとしてのソフトウェア開発へ 移行する必要性に気付きました そこで社員が その変革について来られるように まず投資し導入したのが 新しいツールで 社員が 新サービスに搭載した 各機能の使用率や 顧客満足度を追跡できる ようにしました また技能開発に対する投資も行いました 社員が顧客サービス上の問題を その場で解決できるようにするためです そして重要なのは 社内での連携強化を行ったことです 将来 一貫して円滑な顧客体験を 提供できるようにです このような投資のおかげで クロノスの社員は 変革に押し潰されることなく 与えられた新たな役割に やる気と自信を感じていました 常時進行中の変化の時代は 変化の絶え間ない連続です したがって 第4の必須事項は 学び続ける文化を根付かせることです 2014年2月に マイクロソフトのCEOになった サティア・ナデラは 意欲的な変革の旅に乗り出しました モバイル、クラウド第一の世界で 闘う力をつけるためです 変革対象は 戦略や 組織や 非常に重要なことに 企業文化にも及びました 当時は 各部門が独立して動き 互いに競争するような文化でした 学びに適した環境とは言えないものです ナデラはこれに立ち向かったのです 溌剌とした学びの文化を築くという ビジョンを掲げて リーダーシップを発揮し 己がその場で 最も優秀な人間であるべきという 当時 はびこっていた考え方を捨て 学ぶ姿勢へと変えさせました つまり よく聞き 学び 同僚の長所を引き出すべきとしたのです すると そう時を経ずして マイクロソフト社員は 企業文化の変化を実感し始めました マイクロソフトが 人を第一に 据えたという明らかな証拠です 最後の5番目の必須事項は リーダーたちに向けたものです 変革において リーダーに必要なのはビジョンと 中間目標を含む明確なロードマップです さらに結果に対して社員に 責任を負わせる必要があります つまり 指針を示すとともに 社員の心を掴むために 皆を巻き込まなければならないのです 人第一の実現には 巻き込み型のリーダーシップが不可欠です 私はサンフランシスコの沿岸部に 住んでいますが 現在 我がバスケットボール・チームが リーグでトップなんです 2015年のチャンピオンシップで優勝し 今年も優勝が期待されています 強さの理由は色々あり 優秀な選手の在籍もその1つですが 決定的な理由として挙げられるのが ヘッドコーチのスティーブ・カーが 巻き込み型のリーダーであることです 彼がウォリアーズに来た2014年 チームは大きな変革を望んでいました 1975年以来 NBAファイナル優勝から 遠ざかっていたからです カーは明確なビジョンを持って着任し すぐに変革に着手しました まず始めに 選手とスタッフに声をかけ 引き込みました 自由に議論できる環境を作り 提案を募りました シーズン中に彼は よく尋ねました 「私が見落としていることを教えてくれ」 2015年ファイナル第4戦に 彼の姿勢がよく分かる出来事がありました 1勝2敗の成績で臨んでいたこの試合で カーは先発オーダーを変える という決断をしました 大胆としか言えない行動です 結果 ウォリアーズは勝利し その後 チャンピオンにも輝きました この勝利の鍵となったのは カーのその決断であったと 広く評価されています 興味深いのは 実は発案者は カーではなかった というところです カーの28歳のアシスタント ニック・ユーレンの案だったのです カーのリーダーシップの取り方のおかげで ユーレンは臆せずに提案できたのです そしてカーはそれに耳を傾けただけでなく それを採用し さらに勝利後に 手柄をすべてユーレンに譲りました 全ての行動は カーの 全員参加型リーダーシップによるものです 常時進行中の変化の時代において 組織は絶え間なく変化していきます しかし それにより疲弊する必要はありません 私たちは自らのために 組織のために ひいては社会のために 変革への向き合い方を 大胆に変革するべきなのです そのためには まず 人を第一に考えることから始めましょう ありがとうございました (拍手)