WEBVTT 00:00:00.844 --> 00:00:03.222 先入観と偏見について考える時 00:00:03.222 --> 00:00:05.366 バカで悪い人間が 00:00:05.366 --> 00:00:07.820 バカで悪いことをすることを思い浮かべます 00:00:07.820 --> 00:00:09.890 このアイデアはイギリスの批評家であり 00:00:09.890 --> 00:00:12.358 ウィリアム・ヘイズリットがこのようにうまくまとめています 00:00:12.358 --> 00:00:15.293 「先入観は無知の子供である」 00:00:15.293 --> 00:00:17.405 私が皆さんにお伝えしたいのは 00:00:17.405 --> 00:00:19.040 それは誤りだということです 00:00:19.040 --> 00:00:20.772 私は皆さんに 00:00:20.772 --> 00:00:22.495 先入観や偏見は普通のことで 00:00:22.495 --> 00:00:25.783 しばしば理性的であるし 00:00:25.783 --> 00:00:27.614 良心的ですらあることを知って頂きたい 00:00:27.614 --> 00:00:29.866 そしてそれを理解頂いた時 00:00:29.866 --> 00:00:32.375 もっとこれらを理解できるようになるでしょう 00:00:32.375 --> 00:00:33.432 どういった時に間違えるのか 00:00:33.432 --> 00:00:35.200 どういった時に悪い方向へ働くのか 00:00:35.200 --> 00:00:37.525 またそうなってしまった時に 00:00:37.525 --> 00:00:39.207 どうしたら良いのかが分かるようになるでしょう NOTE Paragraph 00:00:39.207 --> 00:00:42.234 まずはステレオタイプの話をしましょう 皆さんは私について― 00:00:42.234 --> 00:00:44.480 名前も いくらかのことも ご存知でしょうから 00:00:44.480 --> 00:00:46.309 私のことを判断できるでしょう 00:00:46.309 --> 00:00:49.162 私の民族性や政治的志向 00:00:49.162 --> 00:00:52.443 宗教観を想像できるでしょう 00:00:52.443 --> 00:00:54.542 実は こうした推測は割と正確です 00:00:54.542 --> 00:00:56.724 私たちはそういうのは得意なのです 00:00:56.724 --> 00:00:58.207 とても得意です 00:00:58.207 --> 00:01:00.940 なぜならステレオタイピングする能力は 00:01:00.940 --> 00:01:04.195 心の恣意的ないたずらなどではなく 00:01:04.195 --> 00:01:06.511 むしろ一般的な 00:01:06.511 --> 00:01:08.166 思考過程の一例です 00:01:08.166 --> 00:01:09.785 私たちはこの世界の 00:01:09.785 --> 00:01:11.326 物や人と接し 00:01:11.326 --> 00:01:12.575 それらはカテゴリーに分類されますが 00:01:12.575 --> 00:01:15.031 私たちはその経験から 00:01:15.031 --> 00:01:17.390 新奇なものを一般化できます 00:01:17.390 --> 00:01:19.757 会場の皆さんはイスやリンゴ 犬について 00:01:19.757 --> 00:01:22.010 沢山の経験をお持ちだと思います 00:01:22.010 --> 00:01:23.646 皆さんはそれに基づいて 00:01:23.646 --> 00:01:25.998 見慣れない例から 00:01:25.998 --> 00:01:27.314 イスに座れること 00:01:27.314 --> 00:01:29.879 リンゴを食べられること 犬が吠えることを想定できます 00:01:29.879 --> 00:01:31.643 間違えることもあるでしょう 00:01:31.643 --> 00:01:33.443 イスは座ると崩れるかもしれません 00:01:33.443 --> 00:01:35.665 リンゴは毒かもしれませんし 犬は吠えないかもしれません 00:01:35.665 --> 00:01:38.535 ちなみにこちら 私のペットのテシーは吠えません 00:01:38.535 --> 00:01:41.294 まあとにかく 大体の場合 私たちの想像は正確です 00:01:41.294 --> 00:01:43.210 大体の場合で 社会的 非社会的なことに関わらず 00:01:43.210 --> 00:01:45.024 私たちの想像は正確です 00:01:45.024 --> 00:01:46.973 そうでなかったならば -- 00:01:46.973 --> 00:01:50.189 新たに遭遇した物事に対し 上手く想像ができなかったとしたら -- 00:01:50.189 --> 00:01:51.640 私たちはここまで生きていないでしょう 00:01:51.640 --> 00:01:54.509 事実 ヘイズリットは後に 素晴らしいエッセイの中で 00:01:54.509 --> 00:01:55.994 こう書いています 00:01:55.994 --> 00:01:58.536 「先入観や習慣の助けなくして 00:01:58.536 --> 00:02:00.876 私は部屋を通ることもできなければ 00:02:00.876 --> 00:02:03.328 あらゆる状況でどう振る舞えば良いか 分からないし 00:02:03.328 --> 00:02:07.531 周囲との関係を どう感じたら良いかも分からないでしょう」 00:02:07.531 --> 00:02:09.040 偏見もそうです 00:02:09.040 --> 00:02:10.748 私たちは時々 世界を 00:02:10.748 --> 00:02:13.749 我々 対 彼ら グループ内と外に分けます 00:02:13.749 --> 00:02:14.910 そしてそうした時 00:02:14.910 --> 00:02:16.467 私たちは何か間違えていると気付き 00:02:16.467 --> 00:02:18.140 なんだか恥ずかしくなります 00:02:18.140 --> 00:02:19.623 ですが誇らしくなることもあります 00:02:19.623 --> 00:02:21.436 私たちは公然にそれを認めます 00:02:21.436 --> 00:02:22.718 これについて私が好きな例は 00:02:22.718 --> 00:02:25.120 前回の選挙前の共和党のディベート時の 00:02:25.120 --> 00:02:27.837 聴衆からの質問です NOTE Paragraph 00:02:27.837 --> 00:02:30.129 (ビデオ)アンダーソン・クーパー: 外国援助の件で会場からの質問を はいどうぞ 00:02:30.129 --> 00:02:34.310 (ビデオ)アンダーソン・クーパー: 外国援助の件で会場からの質問を はいどうぞ NOTE Paragraph 00:02:34.310 --> 00:02:36.546 女性:アメリカ人は 00:02:36.546 --> 00:02:39.183 今 この国で苦しんでいます 00:02:39.183 --> 00:02:42.531 私たち自身が援助を必要としている中で 00:02:42.531 --> 00:02:43.847 どうして他国を 00:02:43.847 --> 00:02:47.950 援助し続けるのでしょうか NOTE Paragraph 00:02:47.950 --> 00:02:49.645 クーパー:ペリー氏 いかがでしょう NOTE Paragraph 00:02:49.645 --> 00:02:51.012 (拍手) 00:02:51.012 --> 00:02:53.350 リック・ペリー:ごもっともです 私は -- NOTE Paragraph 00:02:53.350 --> 00:02:55.010 ポール・ブルーム:壇上の皆が 00:02:55.010 --> 00:02:56.981 彼女の質問の前提に同意してます 00:02:56.981 --> 00:02:59.100 つまりアメリカ人として 00:02:59.100 --> 00:03:01.226 他よりアメリカ人を援助するべきだ ということです 00:03:01.226 --> 00:03:04.091 事実 一般的に人々は 00:03:04.091 --> 00:03:07.599 結束 忠義 誇り 愛国心といった感情に 00:03:07.599 --> 00:03:10.315 自国や自民族へと流されるものです 00:03:10.315 --> 00:03:13.400 政治的立場に関わらず 多くの人はアメリカ人であることを誇りに思い 00:03:13.400 --> 00:03:15.462 他国よりもアメリカ人を優先します 00:03:15.462 --> 00:03:18.312 他国の住民も 自身の国に対して同じように考えますし 00:03:18.312 --> 00:03:20.798 これは民族についても同様です NOTE Paragraph 00:03:20.798 --> 00:03:22.482 これを否定する方もいらっしゃるでしょう 00:03:22.482 --> 00:03:24.203 もの凄く世界主義的で 00:03:24.213 --> 00:03:26.547 民族性や国民性によって 00:03:26.547 --> 00:03:28.700 良識が影響されるべきでないと 仰る方もいるでしょう 00:03:28.700 --> 00:03:31.462 しかしそのような賢人でも 00:03:31.462 --> 00:03:33.296 友人や家族といった 00:03:33.296 --> 00:03:35.997 グループ内の近しい人に 00:03:35.997 --> 00:03:37.418 贔屓目があることは認めるでしょう 00:03:37.418 --> 00:03:38.979 ですのでそうした人でも 00:03:38.979 --> 00:03:40.954 我々 対 彼らという区別を持っているのです NOTE Paragraph 00:03:40.954 --> 00:03:43.557 こうした区別は十分自然で 00:03:43.557 --> 00:03:46.481 良識的ですが 歪んでしまうこともあります 00:03:46.481 --> 00:03:48.210 そしてこれは偉大な社会心理学者 00:03:48.210 --> 00:03:50.969 ヘンリ・タジフェルの研究の一部です 00:03:50.969 --> 00:03:53.574 タジフェルは 1919 年にポーランドで生まれました 00:03:53.574 --> 00:03:55.713 彼はフランスの大学へ行くのに国を離れ 00:03:55.713 --> 00:03:58.268 ユダヤ人なのでポーランドの大学へ 行けなかったからですが 00:03:58.268 --> 00:04:00.778 その後 第二次世界大戦では 00:04:00.778 --> 00:04:02.061 フランス軍に入隊しました 00:04:02.061 --> 00:04:03.830 彼は捕らえられ 00:04:03.830 --> 00:04:05.361 戦時キャンプの囚人となりました 00:04:05.361 --> 00:04:07.628 それは恐ろしい出来事でした 00:04:07.628 --> 00:04:09.316 なぜなら もしユダヤ人だと分かれば 00:04:09.316 --> 00:04:11.408 彼は強制収容所へ移され 00:04:11.408 --> 00:04:13.400 生き延びることは ほぼできないだろうからです 00:04:13.400 --> 00:04:15.987 事実 戦後に彼が解放された時には 00:04:15.987 --> 00:04:18.492 彼の友人や家族は ほとんどが亡くなっていました 00:04:18.492 --> 00:04:20.329 彼は別の仕事に携わりました 00:04:20.329 --> 00:04:21.860 戦争孤児を助ける仕事です 00:04:21.860 --> 00:04:23.591 しかし彼はずっと以前から 00:04:23.591 --> 00:04:25.136 先入観の科学に興味を持っており 00:04:25.136 --> 00:04:27.796 ステレオタイプに関する イギリスの有名な講座の 00:04:27.796 --> 00:04:29.641 奨学金取得試験があった時 00:04:29.641 --> 00:04:30.998 彼は応募し 受かりました 00:04:30.998 --> 00:04:33.188 それから彼は凄いキャリアを歩み始めました 00:04:33.188 --> 00:04:35.937 そのきっかけは 00:04:35.937 --> 00:04:37.777 ホロコーストに関する多くの人の考えが 00:04:37.777 --> 00:04:39.893 間違っているという洞察でした 00:04:39.893 --> 00:04:42.299 当時 多くの人たちは 00:04:42.299 --> 00:04:44.200 ホロコーストとは 00:04:44.200 --> 00:04:47.204 遺伝的汚点や権威的な特性といった 00:04:47.204 --> 00:04:51.038 ドイツ人の悲しい欠点の一部によるものだと 考えていました 00:04:51.038 --> 00:04:53.096 タジフェルはこの考えを棄却しました 00:04:53.096 --> 00:04:55.639 彼は ホロコーストで起こったことは 00:04:55.639 --> 00:04:57.950 私たち一人一人が持つ 00:04:57.950 --> 00:04:59.728 通常の心理プロセスが 00:04:59.728 --> 00:05:01.489 ただ過剰に働いてしまったもの だと言っています 00:05:01.489 --> 00:05:04.174 それを調べる為 彼は イギリスの若者で 00:05:04.174 --> 00:05:05.918 一連の古典的研究を行いました 00:05:05.918 --> 00:05:07.467 その研究の一つで 彼は 00:05:07.467 --> 00:05:10.019 イギリスの若者にいろいろな質問をし 00:05:10.019 --> 00:05:11.903 その回答に基づいて評価を伝えます 00:05:11.903 --> 00:05:14.260 「あなたの回答を見たところ 00:05:14.260 --> 00:05:16.317 あなたはこれこれこうだと判断しました」 00:05:16.317 --> 00:05:17.573 参加者の半々にそれぞれこう伝えました 00:05:17.573 --> 00:05:20.320 「あなたはカンディンスキー愛好家です」 00:05:20.320 --> 00:05:23.298 「あなたはクリー愛好家です」 00:05:23.298 --> 00:05:25.114 完全にデタラメでした 00:05:25.114 --> 00:05:27.404 回答はカンディンスキーとも クリーとも無関係だったのです 00:05:27.404 --> 00:05:30.132 参加者たちはそのアーティストたちの 名前も知らなかったでしょう 00:05:30.132 --> 00:05:32.872 タジフェルはただ恣意的に 参加者を分けたのです 00:05:32.872 --> 00:05:36.143 ところがそこで彼が発見したのは このカテゴリー分けは影響があるということでした 00:05:36.143 --> 00:05:38.654 その後 参加者らに金銭を渡すと 00:05:38.654 --> 00:05:40.330 彼らはそのお金を 00:05:40.330 --> 00:05:42.130 他のグループよりは 00:05:42.130 --> 00:05:43.963 自身のグループメンバーにあげたのです 00:05:43.963 --> 00:05:46.290 更に悪いことに 参加者らは 00:05:46.290 --> 00:05:48.296 自身のグループと他のグループの 00:05:48.296 --> 00:05:50.862 識別に熱心になりました 00:05:50.862 --> 00:05:52.770 そうすることでお金は 自グループにより費やされ 00:05:52.770 --> 00:05:58.018 そうすれば他グループのお金は より少なくなるからです NOTE Paragraph 00:05:58.018 --> 00:06:00.236 こうした偏見はとても早い段階で現れました 00:06:00.236 --> 00:06:02.536 ですので イェールでの私の同僚であり 妻であるカレン・ウィンは 00:06:02.536 --> 00:06:04.147 赤ん坊で一連の実験を執り行いました 00:06:04.147 --> 00:06:06.979 赤ん坊に人形を見せるのですが 00:06:06.979 --> 00:06:09.244 この人形は食べ物の好みがあります 00:06:09.244 --> 00:06:11.426 ある人形は青豆が好きで 00:06:11.426 --> 00:06:14.001 別の人形はグラハムクラッカーが好きだとします 00:06:14.001 --> 00:06:16.370 赤ん坊自身の食べ物の好みを調べると 00:06:16.370 --> 00:06:19.060 基本的にはグラハムクラッカーが好まれていました 00:06:19.060 --> 00:06:21.672 ここでの疑問は 食べ物の好みが 00:06:21.672 --> 00:06:24.788 人形の扱いに影響はあるのかということです 大いにありました 00:06:24.788 --> 00:06:26.307 赤ん坊は自身と同じ好みを持つ 00:06:26.307 --> 00:06:29.786 人形をより好みましたが 00:06:29.786 --> 00:06:32.342 ひどいことに 赤ん坊は 別の好みを持つ人形を 00:06:32.342 --> 00:06:35.327 やっつける人形をより好んだのです 00:06:35.327 --> 00:06:37.604 (笑) NOTE Paragraph 00:06:37.604 --> 00:06:41.236 こうしたグループ内外に関する心理は あらゆる所で見られます 00:06:41.236 --> 00:06:42.900 異なるイデオロギーを持つ 00:06:42.900 --> 00:06:45.314 政治的対立でも見られますし 00:06:45.314 --> 00:06:48.940 戦争といった極限の状況では 00:06:48.940 --> 00:06:52.157 グループ外の者には与えるものを減らすどころか 00:06:52.157 --> 00:06:53.745 人間扱いすらしません 00:06:53.745 --> 00:06:55.985 例えばナチスがユダヤ人を 00:06:55.985 --> 00:06:58.070 虫食いやシラミとして見たり 00:06:58.070 --> 00:07:02.306 アメリカ人が日本人を ラットとして見たりです NOTE Paragraph 00:07:02.306 --> 00:07:04.520 ステレオタイプも同様に ひどいことになり得ます 00:07:04.520 --> 00:07:06.781 ですので 大抵は理性的で有用ですが 00:07:06.781 --> 00:07:08.355 時々理不尽になり 00:07:08.355 --> 00:07:09.581 間違った答えを見せます 00:07:09.581 --> 00:07:10.798 あるいは 00:07:10.798 --> 00:07:12.973 完全に非道徳的な方へ向かうこともあります 00:07:12.973 --> 00:07:15.781 この点が最も良く研究されているのは 00:07:15.781 --> 00:07:17.448 選挙の場面です 00:07:17.448 --> 00:07:18.855 興味深い実験が 00:07:18.855 --> 00:07:20.929 2008 年の選挙前に行われました 00:07:20.929 --> 00:07:23.955 候補者をどれだけアメリカと 関連付けて捉えているかを 00:07:23.955 --> 00:07:27.397 無意識下での国旗との関連付けから調査した 00:07:27.397 --> 00:07:31.002 社会心理学者による実験です 00:07:31.002 --> 00:07:32.358 実験の一つでは 00:07:32.358 --> 00:07:34.372 オバマとマケインを比較し 00:07:34.372 --> 00:07:37.766 マケインの方がよりアメリカ人的だと 捉えられていることが分かり 00:07:37.766 --> 00:07:40.339 それを知らされた人たちは それほど驚かなかったのです 00:07:40.339 --> 00:07:42.257 マケインは著名な戦争立役者であり 00:07:42.257 --> 00:07:43.916 多くの人は明示的に オバマより 00:07:43.916 --> 00:07:46.616 マケインの方がアメリカ人的な背景を 持っていると答えます 00:07:46.616 --> 00:07:48.553 ところがオバマと 00:07:48.553 --> 00:07:51.069 イギリスの首相 トニー・ブレアとを比べたところ 00:07:51.069 --> 00:07:53.330 彼もまたオバマより 00:07:53.330 --> 00:07:55.837 アメリカ人的だと評価されました 00:07:55.837 --> 00:07:57.910 実験参加者たちはブレアが 00:07:57.910 --> 00:08:00.900 アメリカ人ではないと分かっていたにも関わらずです 00:08:00.900 --> 00:08:02.324 そうです 彼らは 00:08:02.324 --> 00:08:05.375 肌の色に反応していたのです NOTE Paragraph 00:08:05.375 --> 00:08:07.426 こうしたステレオタイプと偏見は 00:08:07.426 --> 00:08:08.876 実社会に影響しており 00:08:08.876 --> 00:08:11.748 いずれも小さいことながら とても重要です 00:08:11.748 --> 00:08:14.410 最近のある実験では 研究者が 00:08:14.410 --> 00:08:17.679 eBayに 野球カードの広告を載せました 00:08:17.679 --> 00:08:20.413 白人がカードを持つ写真と 00:08:20.413 --> 00:08:21.631 黒人がカードを持つ写真です 00:08:21.631 --> 00:08:23.210 どちらも同じ野球カードです 00:08:23.210 --> 00:08:24.454 黒人がカードを持つ写真の方が 00:08:24.454 --> 00:08:26.521 白人がカードを持つ写真より 00:08:26.521 --> 00:08:29.005 実質的に低価値となりました 00:08:29.005 --> 00:08:31.367 スタンフォードでの実験では 00:08:31.367 --> 00:08:35.597 心理学者が 白人殺害事件の 00:08:35.597 --> 00:08:39.166 判決について調査しました 00:08:39.166 --> 00:08:41.970 その結果 条件は全て一定だとした場合 00:08:41.970 --> 00:08:44.340 右の男性に似ていたら 00:08:44.340 --> 00:08:46.117 左の男性に似ていた場合よりも 00:08:46.117 --> 00:08:48.090 死刑になる確率が高いです 00:08:48.090 --> 00:08:50.119 大きな理由としては 00:08:50.119 --> 00:08:52.653 右の男性の方が より典型的な黒人 -- 00:08:52.653 --> 00:08:55.283 より典型的なアフリカ系アメリカ人に見えるからです 00:08:55.283 --> 00:08:57.332 明らかにこの点が 被告に関する 00:08:57.332 --> 00:08:59.103 人々の判断に影響していました NOTE Paragraph 00:08:59.103 --> 00:09:00.650 ではこれを知った私たちは 00:09:00.650 --> 00:09:02.307 どうしたら良いのでしょう 00:09:02.307 --> 00:09:03.929 いくつかの道があります 00:09:03.929 --> 00:09:05.363 一つの道としては 00:09:05.363 --> 00:09:07.409 人々の感情に 00:09:07.409 --> 00:09:09.542 人々の共感に働きかけることで 00:09:09.542 --> 00:09:11.415 これにはよく物語が使われます 00:09:11.415 --> 00:09:13.980 仮に皆さんが自由主義的な親だとして 00:09:13.980 --> 00:09:15.852 伝統的でない家族のメリットを 00:09:15.852 --> 00:09:18.226 子どもに伝えたければ 00:09:18.226 --> 00:09:20.499 こういった本を読ませるかもしれません 『ヘザーの二人の母』 00:09:20.499 --> 00:09:22.225 もしも皆さんが保守派で 別の考え方を持っているなら 00:09:22.225 --> 00:09:24.156 こういった本を読ませるかもしれません 00:09:24.156 --> 00:09:25.905 (笑) 『ママ助けて!ベッド下に自由主義者が!』 00:09:25.905 --> 00:09:29.241 一般に 物語を通じて 00:09:29.241 --> 00:09:31.473 名も無き他所者は関係者になります 00:09:31.473 --> 00:09:34.158 そして人を集団として見るより 00:09:34.158 --> 00:09:35.860 個人として見た方が気になります 00:09:35.860 --> 00:09:38.139 これは歴史を振り返っても良く見られることです 00:09:38.139 --> 00:09:40.722 スターリンがこう述べた説があります 00:09:40.722 --> 00:09:42.339 「一人の死は悲劇だが 00:09:42.339 --> 00:09:44.379 百万の死は統計だ」 00:09:44.379 --> 00:09:45.830 マザーテレサは言いました 00:09:45.830 --> 00:09:47.371 「大衆を見ても私は行動しない 00:09:47.371 --> 00:09:49.696 個人を見たときに私は行動する」 00:09:49.696 --> 00:09:51.766 心理学者がこれを調べました 00:09:51.766 --> 00:09:53.067 例えばある実験では 00:09:53.067 --> 00:09:55.850 一つのグループにはある危機が引き起こした 00:09:55.850 --> 00:10:00.106 事態のリストを提示し その解決に 00:10:00.106 --> 00:10:01.690 いくら寄付するかを見ました 00:10:01.690 --> 00:10:03.527 別のグループには事態のリストは呈示せず 00:10:03.527 --> 00:10:05.625 ただ個人の 00:10:05.625 --> 00:10:08.065 名前と顔だけを呈示しましたが 00:10:08.065 --> 00:10:11.284 このグループの寄付金の方が大幅に高かったのです 00:10:11.284 --> 00:10:13.145 このことはチャリティ活動に携わっている 00:10:13.145 --> 00:10:15.256 人にすれば秘密でも何でもないでしょう 00:10:15.256 --> 00:10:17.904 チャリティ関係者は 00:10:17.904 --> 00:10:19.227 事実や統計は持ってきません 00:10:19.227 --> 00:10:20.249 それよりも顔を持ってきます 00:10:20.249 --> 00:10:21.985 人を見せるのです 00:10:21.985 --> 00:10:25.212 個人に向けた同情を拡張することで 00:10:25.212 --> 00:10:27.183 その個人への同情を 00:10:27.183 --> 00:10:30.061 グループまで拡げることが可能なのです NOTE Paragraph 00:10:30.061 --> 00:10:32.527 こちらはハリエット・ビーチャー・ストウです 00:10:32.527 --> 00:10:34.970 一説としてこんな話があります 00:10:34.970 --> 00:10:37.044 リンカーン大統領が 00:10:37.044 --> 00:10:39.042 南北戦争中に 彼女をホワイトハウスへ招き 00:10:39.042 --> 00:10:40.626 こう言ったそうです 00:10:40.626 --> 00:10:43.290 「あなたがこの大変な戦争を 引き起こしたご婦人ですね」 00:10:43.290 --> 00:10:45.175 『アンクル・トムの小屋』のことを言っていたのです 00:10:45.175 --> 00:10:47.706 哲学としても神学としても 優れた作品ではありませんし 00:10:47.706 --> 00:10:50.850 文学ですらないかもしれません 00:10:50.850 --> 00:10:53.365 しかしこの本は人々に 00:10:53.365 --> 00:10:55.863 読まなければ考えもしないであろう 00:10:55.863 --> 00:10:58.196 奴隷の身になるということを 00:10:58.196 --> 00:11:00.598 考えさせるすごい本です 00:11:00.598 --> 00:11:02.379 そして それは恐らく偉大な社会的転換の 00:11:02.379 --> 00:11:03.983 一助となったと思われます NOTE Paragraph 00:11:03.983 --> 00:11:06.345 もっと最近 ここ数十年の 00:11:06.345 --> 00:11:09.414 アメリカを見てみると 00:11:09.414 --> 00:11:12.563 「コスビー・ショー」といった番組が 00:11:12.563 --> 00:11:15.251 アフリカ系アメリカ人に対する アメリカ人の態度を根本的に変えていたり 00:11:15.251 --> 00:11:18.234 「ふたりは友達?ウィル&グレース」 「モダン・ファミリー」といった番組が 00:11:18.234 --> 00:11:19.597 男女同性愛者の見方に対して 00:11:19.597 --> 00:11:20.897 影響を与えているように見えます 00:11:20.897 --> 00:11:23.352 私は アメリカの道徳的変化の 00:11:23.352 --> 00:11:26.013 主な媒介が コメディーだということは 00:11:26.013 --> 00:11:28.906 過大評価ではないと思います NOTE Paragraph 00:11:28.906 --> 00:11:30.322 ただ感情が全てではないと思いますし 00:11:30.322 --> 00:11:31.598 最後に理性の力をアピールして 00:11:31.598 --> 00:11:33.833 終わりたいと思います 00:11:33.833 --> 00:11:35.989 スティーブン・ピンカーの素晴らしい著書 00:11:35.989 --> 00:11:37.212 『人の中の良き天使』の中で 00:11:37.212 --> 00:11:39.228 こう書かれています 00:11:39.228 --> 00:11:41.810 旧約聖書は隣人を愛しなさいと説き 00:11:41.810 --> 00:11:44.532 新約聖書は汝の敵を愛しなさいと説いているが 00:11:44.532 --> 00:11:47.218 私はあまりどちらも愛していません 00:11:47.218 --> 00:11:48.885 でも殺したくもありません 00:11:48.885 --> 00:11:50.751 彼らに対して義務があることは分かっているが 00:11:50.751 --> 00:11:54.221 彼らに向ける道徳的感情や 00:11:54.221 --> 00:11:55.934 どういった姿勢で振る舞うべきかは 00:11:55.934 --> 00:11:57.981 愛が基準ではありません 00:11:57.981 --> 00:11:59.920 その基準は人権に関する理解にあり 00:11:59.920 --> 00:12:02.143 私の人生が私にとって貴重であるのと同じように 00:12:02.143 --> 00:12:04.499 彼らの人生もそうだという 信念に基づいています 00:12:04.499 --> 00:12:06.431 著者はこれを支持する背景として 00:12:06.431 --> 00:12:08.279 偉大な哲学者 アダム・スミスの 物語を紹介していますが 00:12:08.279 --> 00:12:09.965 私もそうさせてもらいます 00:12:09.965 --> 00:12:11.261 私のは現代向けに少し変えて 00:12:11.261 --> 00:12:12.939 話しますが NOTE Paragraph 00:12:12.939 --> 00:12:14.840 さて アダム・スミスはまず皆さんに 00:12:14.840 --> 00:12:16.741 数千人の人々の死を想像してくださいと言います 00:12:16.741 --> 00:12:18.781 そしてそれらの人々は 00:12:18.781 --> 00:12:21.020 皆さんがよく知らない国の人です 00:12:21.020 --> 00:12:24.574 中国でもインドでも アフリカの一国でも構いません 00:12:24.574 --> 00:12:27.058 どう反応するかと スミスは尋ねてきます 00:12:27.058 --> 00:12:29.365 皆さんは それは酷いことだねと言って 00:12:29.365 --> 00:12:31.241 引き続き自分の人生を歩んでいくでしょう 00:12:31.241 --> 00:12:33.460 例えばニューヨークタイムズ オンラインを開いて 00:12:33.460 --> 00:12:36.420 こういったニュースを知るのは 日常的にあるかと思いますが 00:12:36.420 --> 00:12:37.941 私たちは自分の人生に専念します 00:12:37.941 --> 00:12:40.135 そうではなく例えば明日 00:12:40.135 --> 00:12:41.389 皆さんの小指が切り落とされることを 00:12:41.389 --> 00:12:43.928 想像してくださいと そしてそれは 00:12:43.928 --> 00:12:46.097 皆さんにとって大事でしょうと スミスは言います 00:12:46.097 --> 00:12:47.508 明日のことを考えると 00:12:47.508 --> 00:12:48.861 その夜は眠れないでしょう 00:12:48.861 --> 00:12:50.880 そしてここで質問です 00:12:50.880 --> 00:12:53.346 皆さんは数千の命と引き換えに 00:12:53.346 --> 00:12:55.315 自分の小指を守りますか 00:12:55.315 --> 00:12:57.633 答えは頭の中に留めておいてください 00:12:57.633 --> 00:13:00.552 スミスは 決してそんなことはしないと答えますが 00:13:00.552 --> 00:13:02.244 なんてイヤな答えでしょう 00:13:02.244 --> 00:13:04.275 そしてこれがある問題を提示します 00:13:04.275 --> 00:13:05.649 スミスによれば こうです 00:13:05.649 --> 00:13:07.867 「受け身で考えるとこんなにいつも 00:13:07.867 --> 00:13:09.315 浅ましく自分勝手であるならば 00:13:09.315 --> 00:13:10.780 一体どうして我々の行動原理は 00:13:10.780 --> 00:13:13.313 常にこんなに寛大で高貴なのか」 00:13:13.313 --> 00:13:15.363 これに対するスミスの答えは 00:13:15.363 --> 00:13:17.138 「理性 行動原理 意識 00:13:17.138 --> 00:13:18.679 それらが命じるのです 00:13:18.679 --> 00:13:22.104 我々の情熱の最も傲慢な部分を動かす声で 00:13:22.104 --> 00:13:23.781 我々は皆 00:13:23.781 --> 00:13:26.222 他と変わりないのだと」 NOTE Paragraph 00:13:26.222 --> 00:13:28.347 この最後の部分は 00:13:28.347 --> 00:13:31.555 よく 公平の原則として紹介されるものです 00:13:31.555 --> 00:13:34.184 この 公平の原則は 00:13:34.184 --> 00:13:35.931 世界中の宗教で語られています 00:13:35.951 --> 00:13:38.209 あらゆる黄金律 00:13:38.209 --> 00:13:40.663 世界中の道徳哲学でです 00:13:40.663 --> 00:13:41.970 様々な違いはあるものの 00:13:41.970 --> 00:13:44.964 公平な視点から良識を判断するべきという 00:13:44.964 --> 00:13:47.949 前提を共有しています NOTE Paragraph 00:13:47.949 --> 00:13:49.771 この見方を最も明瞭に示しているのは 00:13:49.771 --> 00:13:52.856 実は私にとっては 神学者でも哲学者でもなく 00:13:52.856 --> 00:13:54.213 ハンフリー・ボガート著作の 00:13:54.213 --> 00:13:55.760 『カサブランカ』の最後です 00:13:55.760 --> 00:13:59.536 ネタバレですが 00:13:59.536 --> 00:14:00.676 公益の為に別れなければならないと 00:14:00.676 --> 00:14:02.269 主人公は恋人に告げます 00:14:02.269 --> 00:14:04.133 彼はこう言います アクセントは真似しませんよ 00:14:04.133 --> 00:14:05.915 「ちっぽけな三人の問題なんて 00:14:05.915 --> 00:14:07.274 この狂った世界の中では 00:14:07.274 --> 00:14:10.385 一山の豆ほどのものにも及ばない」 NOTE Paragraph 00:14:10.385 --> 00:14:13.665 私たちの理性は 情熱を抑え込むことができます 00:14:13.665 --> 00:14:15.381 私たちの理性は 00:14:15.381 --> 00:14:16.602 共感を強めることもできます 00:14:16.602 --> 00:14:18.929 『アンクル・トムの小屋』を書こうと 00:14:18.929 --> 00:14:20.652 あるいは読もうと思わせたりします 00:14:20.652 --> 00:14:23.346 また私たちの理性は 00:14:23.346 --> 00:14:25.308 習慣やタブー 法律を作り 00:14:25.308 --> 00:14:27.118 また 衝動で行動すべきでないときには 00:14:27.118 --> 00:14:28.794 理性的な人間として 00:14:28.794 --> 00:14:30.383 そうしないよう 00:14:30.383 --> 00:14:31.778 自分たちを律します 00:14:31.778 --> 00:14:33.791 これが憲法というものです 00:14:33.791 --> 00:14:36.712 それは過去に制定され 00:14:36.712 --> 00:14:38.019 今もなお運用されるもので 00:14:38.019 --> 00:14:39.004 それが示すところは 00:14:39.004 --> 00:14:41.231 人気な大統領を何度 00:14:41.231 --> 00:14:43.834 再選させようとも 00:14:43.834 --> 00:14:45.929 白人がどれだけ奴隷制度を復活させたいと 00:14:45.929 --> 00:14:49.997 望もうとも できないということです 00:14:49.997 --> 00:14:51.673 私たち自身を律したのです NOTE Paragraph 00:14:51.673 --> 00:14:54.090 別の意味でも律しています 00:14:54.090 --> 00:14:56.848 求人や賞で 00:14:56.848 --> 00:14:59.799 人を選ぶ場面になったとき 00:14:59.799 --> 00:15:02.757 私たちはその人たちの人種に強く影響されます 00:15:02.757 --> 00:15:05.053 性別に強く影響されます 00:15:05.053 --> 00:15:07.268 魅力に強く影響されます 00:15:07.268 --> 00:15:09.919 時にこう思います 「まあそういうものだ」 00:15:09.919 --> 00:15:12.226 しかし「それは間違っている」と思うこともあります 00:15:12.226 --> 00:15:14.115 この問題を何とかするためには 00:15:14.115 --> 00:15:16.366 ただ頑張るのではなく 00:15:16.366 --> 00:15:19.367 他の情報源が 00:15:19.367 --> 00:15:22.376 私たちに影響しないよう工夫します 00:15:22.376 --> 00:15:23.861 例えばそれは 多くのオーケストラオーディションで 00:15:23.861 --> 00:15:26.396 奏者をスクリーンで隔てて 00:15:26.396 --> 00:15:27.610 関連すると判断する情報のみを 00:15:27.610 --> 00:15:30.303 見るようにコントロールします 00:15:30.303 --> 00:15:32.626 私は先入観と偏見が 00:15:32.626 --> 00:15:35.720 人間の性質の根本的な二面性を 表していると考えます 00:15:35.720 --> 00:15:39.496 私たちは直感や本能 感情を持ち 00:15:39.496 --> 00:15:41.657 それは判断や行動に 00:15:41.657 --> 00:15:43.988 良い方にも悪い方にも 影響します 00:15:43.988 --> 00:15:47.610 しかし同時に私たちは理性的に検討を重ね 00:15:47.610 --> 00:15:49.045 知的に計画を立てることもでき 00:15:49.045 --> 00:15:51.862 それによってある状況下では 00:15:51.862 --> 00:15:53.805 感情を高めるように持っていき 00:15:53.805 --> 00:15:56.573 ある時は感情を殺します 00:15:56.573 --> 00:15:57.807 そして そうすることで理性は 00:15:57.807 --> 00:16:00.574 世界をより良くするよう後押ししてくれるでしょう NOTE Paragraph 00:16:00.574 --> 00:16:02.918 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:16:02.918 --> 00:16:06.623 (拍手)