WEBVTT 00:00:00.676 --> 00:00:03.570 人生 客観的でいられたら いろんな意味で 00:00:03.570 --> 00:00:05.593 いいですよね 00:00:05.593 --> 00:00:08.971 ただ厄介なことに 私たちは 何事も 00:00:08.971 --> 00:00:13.650 自らの色眼鏡を通して 見てしまいます 00:00:13.650 --> 00:00:17.366 ビールみたいな 単純なものでさえそうです 00:00:17.366 --> 00:00:19.548 何種類か ビールを テイスティングして 00:00:19.548 --> 00:00:23.356 「濃さ」や「苦味」で 評価をしたとしましょう 00:00:23.356 --> 00:00:27.053 ビールの評価は きれいに ばらけるはずです 00:00:27.053 --> 00:00:29.810 これを客観的にしたら どうでしょう? 00:00:29.810 --> 00:00:31.730 ビールの場合は とても簡単にできます 00:00:31.730 --> 00:00:34.122 ブラインド・テイスティングです 00:00:34.122 --> 00:00:36.846 同じようにして 同じビールを味わっても 00:00:36.846 --> 00:00:40.577 目隠しをしていると ちょっと様相が変わってきます 00:00:40.577 --> 00:00:42.779 ほとんどのビールが 同じ評価になり 00:00:42.779 --> 00:00:45.384 味の区別ができなくなります 00:00:45.384 --> 00:00:47.923 もちろん ギネスは例外です 00:00:47.923 --> 00:00:50.641 (笑) NOTE Paragraph 00:00:50.641 --> 00:00:53.427 生理機能についても 同じように考えられます 00:00:53.427 --> 00:00:56.529 人間の期待が生体機能に もたらす効果は何でしょう? 00:00:56.529 --> 00:00:59.047 例えば 鎮痛剤を売るのに 00:00:59.047 --> 00:01:01.696 「高価な薬」と伝えた場合と 00:01:01.696 --> 00:01:03.627 「安い薬」と伝えた場合とでは 00:01:03.627 --> 00:01:06.529 「高価な薬」のほうが よく効きました 00:01:06.529 --> 00:01:09.153 なぜ 痛みが より和らいだかというと 00:01:09.153 --> 00:01:12.847 期待することで 生理的効果に 違いが生まれるからです 00:01:12.847 --> 00:01:14.849 もちろん スポーツでも 主観が影響します 00:01:14.849 --> 00:01:16.527 特定のチームのファンだったら 00:01:16.527 --> 00:01:18.986 そのチームの立場でしか 00:01:18.986 --> 00:01:22.591 ゲーム展開が 見られなくなりますよね NOTE Paragraph 00:01:22.591 --> 00:01:26.717 これらに共通しているのは 私たちが目にする世界は 00:01:26.717 --> 00:01:30.157 先入観や期待感で 色付けされてしまうということです 00:01:30.157 --> 00:01:33.359 これが もっと重い問題― 00:01:33.359 --> 00:01:36.991 社会正義に関わる問題だったら どうでしょう? 00:01:36.991 --> 00:01:40.446 私のチームが取り上げたのは 「不平等」に対する見方 00:01:40.446 --> 00:01:43.441 これをブラインド・テイスティング形式で 検証しました 00:01:43.441 --> 00:01:45.800 具体的には 不平等に焦点を当て 00:01:45.800 --> 00:01:47.610 大規模なアンケート調査を行い 00:01:47.610 --> 00:01:50.164 アメリカなど様々な国で 00:01:50.164 --> 00:01:52.245 2つの質問をしました 00:01:52.245 --> 00:01:55.461 「現在 どれくらいの 不平等があると思うか?」 00:01:55.461 --> 00:01:59.732 「どれくらいの不平等が 望ましいか?」 00:01:59.732 --> 00:02:02.056 まず1つ目の質問について 考えてみましょう 00:02:02.056 --> 00:02:04.409 アメリカにいる人を全員 00:02:04.409 --> 00:02:07.264 最も貧しい人から 最も豊かな人まで 00:02:07.264 --> 00:02:09.586 右から左へ並べるとします 00:02:09.586 --> 00:02:12.138 そして5つのグループに分けます 00:02:12.138 --> 00:02:14.616 最も貧しい20% そして次の20% 00:02:14.616 --> 00:02:17.472 その次 その次 そして最富裕層の20%という具合にです 00:02:17.472 --> 00:02:20.468 そして 各グループに どれくらいの富が 00:02:20.468 --> 00:02:23.237 集まっていると思うか 尋ねます 00:02:23.237 --> 00:02:25.878 シンプルに 質問をこうしましょう 00:02:25.878 --> 00:02:28.188 下の2つのグループ 00:02:28.188 --> 00:02:30.168 最も貧しい40%には 00:02:30.168 --> 00:02:32.499 どれくらいの富があるでしょう? 00:02:32.499 --> 00:02:35.141 少し時間を取って 数字を出してみてください 00:02:35.141 --> 00:02:37.255 普段は考えませんからね 00:02:37.255 --> 00:02:39.510 ちょっと考えて 具体的な数字を用意してください 00:02:39.510 --> 00:02:41.235 よろしいですか? NOTE Paragraph 00:02:41.235 --> 00:02:44.280 多くのアメリカ人の答えは こうです 00:02:44.280 --> 00:02:46.237 最下層20%には 00:02:46.237 --> 00:02:48.569 全体の富の2.9% 00:02:48.569 --> 00:02:50.862 次のグループには6.4% 00:02:50.862 --> 00:02:53.439 あわせて9%超です 00:02:53.439 --> 00:02:56.622 次のグループには12% 00:02:56.622 --> 00:02:58.391 その次は20% 00:02:58.391 --> 00:03:02.835 そして最富裕層20%には 58%の富があると考えていました 00:03:02.835 --> 00:03:06.210 皆さんの答えと 比べてみてください NOTE Paragraph 00:03:06.210 --> 00:03:07.551 さて 現実はどうでしょう? 00:03:07.551 --> 00:03:09.682 現実は少し違います 00:03:09.682 --> 00:03:13.385 最下層20%の持てる富は 全体の0.1% 00:03:13.385 --> 00:03:16.826 次の20%は0.2% 00:03:16.826 --> 00:03:20.009 あわせて0.3%です 00:03:20.009 --> 00:03:22.468 その次が3.9% 00:03:22.468 --> 00:03:24.651 11.3%と来て 00:03:24.651 --> 00:03:30.252 最も豊かな層が 84〜85%の富を有します 00:03:30.252 --> 00:03:33.358 現実と 私たちの認識には 00:03:33.358 --> 00:03:35.331 大きな隔たりがあるのです NOTE Paragraph 00:03:35.331 --> 00:03:37.141 では 私たちが望む姿は どうでしょう? 00:03:37.141 --> 00:03:39.208 そもそも どうすれば 分かるでしょうか? 00:03:39.208 --> 00:03:40.759 これを調べるにあたり― 00:03:40.759 --> 00:03:42.257 私たちの理想を調べるにあたり 00:03:42.257 --> 00:03:45.472 哲学者 ジョン・ロールズのことを 思い起こしました 00:03:45.472 --> 00:03:47.017 ジョン・ロールズは 00:03:47.017 --> 00:03:50.397 公正な社会について こう考えていました 00:03:50.397 --> 00:03:52.039 公正な社会とは 00:03:52.039 --> 00:03:54.554 その社会について すべてを知り尽くした上で 00:03:54.554 --> 00:03:57.577 どの立場であっても その一員になりたい社会であると 00:03:57.577 --> 00:03:58.881 美しい定義ですね 00:03:58.881 --> 00:04:01.189 普通 裕福な人は 「富める者にはより多くの富を 00:04:01.189 --> 00:04:03.226 貧しい者にはより少なく」と考え 00:04:03.226 --> 00:04:05.335 貧しければ より平等を求めるものです 00:04:05.335 --> 00:04:07.999 でも ここで仮定している社会では 00:04:07.999 --> 00:04:10.659 あなたは どの立場になるか わかりませんから 00:04:10.659 --> 00:04:12.865 あらゆる場面を 考えなければいけません 00:04:12.865 --> 00:04:15.451 ブラインド・テイスティングに 少し似ています 00:04:15.451 --> 00:04:18.721 決断するときには 結果がどうなるか見えないからです 00:04:18.721 --> 00:04:22.176 ロールズはこれを 「無知のヴェール」と呼びました NOTE Paragraph 00:04:22.176 --> 00:04:25.783 さて 私たちは 新たに アメリカ人をたくさん集め 00:04:25.783 --> 00:04:28.538 無知のヴェールの状態で 質問をしました 00:04:28.538 --> 00:04:32.648 「これから ある国の一員になるとします どの立場になるかは分かりません 00:04:32.648 --> 00:04:35.806 どんな国ならいいと思いますか?」 00:04:35.806 --> 00:04:37.285 こちらが その結果です 00:04:37.285 --> 00:04:39.544 最初のグループ 最下層20%に 00:04:39.544 --> 00:04:41.727 どれくらいの富を 希望したでしょう? 00:04:41.727 --> 00:04:44.421 約10%の富の配分を 求めました 00:04:44.421 --> 00:04:47.831 次のグループには14% 00:04:47.831 --> 00:04:52.204 21、22、32という結果でした NOTE Paragraph 00:04:52.204 --> 00:04:55.890 このときの被験者は 誰も完全な平等は望みませんでした 00:04:55.890 --> 00:05:00.773 誰も 社会主義がすばらしい とは思わなかったようです 00:05:00.773 --> 00:05:01.951 どういうことでしょう? 00:05:01.951 --> 00:05:03.769 私たちが持っているものに関して 00:05:03.769 --> 00:05:06.307 現実と認識の間には ギャップがありますが 00:05:06.307 --> 00:05:10.412 同じくらい大きなギャップが 私たちの考える理想と 00:05:10.412 --> 00:05:13.140 認識との間にもあるというわけです NOTE Paragraph 00:05:13.140 --> 00:05:15.802 ちなみに これらの質問は 富についてだけでなく 00:05:15.802 --> 00:05:18.317 ほかのことにも 当てはまります 00:05:18.317 --> 00:05:22.790 私たちは 世界各地の人たちに 00:05:22.790 --> 00:05:24.238 さきほどの質問を 投げかけましたが 00:05:24.238 --> 00:05:26.691 リベラル派、保守派にかかわらず 00:05:26.691 --> 00:05:28.735 基本的に同じような答えが 返ってきました 00:05:28.735 --> 00:05:31.217 金持ち、貧乏人も同じ答えで 00:05:31.217 --> 00:05:32.368 男性と女性も 00:05:32.368 --> 00:05:35.121 公共ラジオNPR愛好者 フォーブズ誌の読者も同様でした 00:05:35.121 --> 00:05:38.440 イギリス、オーストラリア アメリカでも 00:05:38.440 --> 00:05:40.107 とても似通った回答を得ました 00:05:40.107 --> 00:05:42.928 大学のいろんな学部でも 聞いてみました 00:05:42.928 --> 00:05:45.856 ハーバード大学の ほぼ全学部を訪ねました 00:05:45.856 --> 00:05:47.698 ハーバード・ビジネス・スクールでさえ 00:05:47.698 --> 00:05:51.530 事実 富裕層をより豊かに 貧しい人はより貧しくという人は少数で 00:05:51.530 --> 00:05:53.950 この類似性は驚くべきものでした 00:05:53.950 --> 00:05:56.774 ハーバード・ビジネス・スクール出身の方も おられますよね NOTE Paragraph 00:05:56.774 --> 00:05:59.650 他のことについても 同じ質問をしてみました 00:05:59.650 --> 00:06:04.949 社長の給料に対して 非熟練労働者の給料はどれくらいか 00:06:04.949 --> 00:06:08.246 人々が考えている割合はこうです 00:06:08.246 --> 00:06:12.247 では どれくらいの割合が ふさわしいと考えるか 00:06:12.247 --> 00:06:15.104 実際はどうか見てみましょう 00:06:15.104 --> 00:06:18.062 現実はどうかというと それほど悪くはないでしょう? 00:06:18.062 --> 00:06:19.995 赤と黄色の面積は それほど違いませんね 00:06:19.995 --> 00:06:24.125 でも実は これは同じ尺度で 描いていないんです 00:06:26.045 --> 00:06:29.845 実際は黄、青色の部分は 見えないくらい小さいんです NOTE Paragraph 00:06:29.845 --> 00:06:32.100 では 富がもたらす 他の影響はどうでしょう? 00:06:32.100 --> 00:06:33.725 富は 財産だけの話ではないのです 00:06:33.725 --> 00:06:37.119 こんなことも聞きました― 健康は? 00:06:37.119 --> 00:06:40.812 医者にかかって薬がもらえるかは? 00:06:40.812 --> 00:06:42.522 平均寿命は? 00:06:42.522 --> 00:06:45.077 新生児の平均余命は? 00:06:45.077 --> 00:06:47.452 これらに対して 望ましいと思う配分とは? 00:06:47.452 --> 00:06:50.291 若者の教育は? 00:06:50.291 --> 00:06:52.381 高齢者の生涯学習は? 00:06:52.381 --> 00:06:55.604 わかったのは これら すべてに共通する結果ですが 00:06:55.604 --> 00:06:58.412 誰も富の不平等を 好まないということです 00:06:58.412 --> 00:07:01.918 富の産物である不平等ですが 人々がさらに嫌がる不平等は 00:07:01.918 --> 00:07:03.761 他にもあります 00:07:03.761 --> 00:07:07.782 例えば 健康や教育の不平等です 00:07:07.782 --> 00:07:10.393 さらに 行為主体者性の低い人 00:07:10.393 --> 00:07:12.687 つまり 小さな子供や 00:07:12.687 --> 00:07:14.801 赤ちゃんに起こる 不平等の是正については 00:07:14.801 --> 00:07:17.116 人は特に賛同しやすいことも 分かりました 00:07:17.116 --> 00:07:21.873 子供には自らの置かれた状況に 責任がないと考えるからです NOTE Paragraph 00:07:21.873 --> 00:07:24.158 さて ここから 何が学べるでしょうか? 00:07:24.158 --> 00:07:25.358 現実との間には2つの格差 00:07:25.358 --> 00:07:28.398 「認識のギャップ」と 「期待のギャップ」があります 00:07:28.398 --> 00:07:30.620 認識のギャップについて 私たちが探っているのは 00:07:30.620 --> 00:07:32.040 人々をどう教育していくかです 00:07:32.040 --> 00:07:34.906 不平等や 不平等がもたらすもの― 00:07:34.906 --> 00:07:38.558 健康、教育、妬み、犯罪率など― 00:07:38.558 --> 00:07:40.949 それらへの認識を どう改めさせるかです NOTE Paragraph 00:07:40.949 --> 00:07:42.830 そして期待のギャップについては 00:07:42.830 --> 00:07:46.733 自らが真に望むものへの考えを どう変えさせるかです 00:07:46.733 --> 00:07:49.898 ロールズの定義 ロールズ流の世界の見方 00:07:49.898 --> 00:07:51.500 ブラインド・テイスティング方式は 00:07:51.500 --> 00:07:54.525 思考から 利己的な動機を 消し去ってくれます 00:07:54.525 --> 00:07:57.272 もっと大きなスケールで より高い次元で 00:07:57.272 --> 00:07:59.836 それを実行するには どうすればよいでしょう? NOTE Paragraph 00:07:59.836 --> 00:08:02.692 最後に「行動のギャップ」もあります 00:08:02.692 --> 00:08:05.851 これらに対して 実際に どう行動するかです 00:08:05.851 --> 00:08:08.983 答えの一つとして あげられるのは 00:08:08.983 --> 00:08:11.635 自立していない小さな子どものことを 考えることです 00:08:11.635 --> 00:08:15.763 そのほうが やりやすいからです NOTE Paragraph 00:08:15.763 --> 00:08:21.203 今度 皆さんが ビールやワインを飲みに行くとき 00:08:21.203 --> 00:08:24.880 まずは考えてみてください 自らの経験のなかで 「現実」がどれで 00:08:24.880 --> 00:08:27.994 「期待から来るプラシーボ効果」 はどれなのか 00:08:27.994 --> 00:08:29.758 考えてみてください 00:08:29.758 --> 00:08:33.097 そしてそれが 人生における決断― 願わくば 私たち皆に影響する 00:08:33.097 --> 00:08:35.270 政策的問題において どんな意味を持つのか 00:08:35.270 --> 00:08:36.667 考えてみてください NOTE Paragraph 00:08:36.667 --> 00:08:38.394 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:08:38.394 --> 00:08:40.731 (拍手)