WEBVTT 00:00:01.363 --> 00:00:04.637 私たちが たまたまバスの中で会って 00:00:04.637 --> 00:00:07.078 お互いのことを本当によく知りたくなるとします 00:00:07.078 --> 00:00:09.564 ところが私は次のバス停で 降りなければなりません 00:00:09.564 --> 00:00:14.331 それであなたは自分について 3つの事を教えようとします 00:00:14.331 --> 00:00:17.911 あなたが どんな人か定義する 00:00:17.911 --> 00:00:19.689 自分を表す3つの事 00:00:19.689 --> 00:00:23.298 あなたがどういう人か知る手がかりとなる 00:00:23.298 --> 00:00:27.292 あなたのまさに本質を表す 3つの事です 00:00:27.292 --> 00:00:30.370 不思議なことですが 00:00:30.370 --> 00:00:33.659 この3つのうち 00:00:33.659 --> 00:00:35.649 どれか1つは 00:00:35.649 --> 00:00:40.673 ある種のトラウマを 体験したことではないですか? 00:00:40.673 --> 00:00:46.370 例えば癌 レイプ 00:00:46.370 --> 00:00:51.487 ホロコースト 近親姦の体験者であること 00:00:51.487 --> 00:00:54.931 私たちは 自らが負った傷によって 00:00:54.931 --> 00:00:57.462 自分らしさを表そうとすることに お気づきでしたか? 00:00:57.462 --> 00:01:01.938 そして私がこの「体験者アイデンティティ」を 00:01:01.938 --> 00:01:04.426 最もよく目にするのは 00:01:04.426 --> 00:01:06.979 癌のコミュニティです 00:01:06.979 --> 00:01:09.713 私はこのコミュニティに長年関わっています 00:01:09.713 --> 00:01:12.907 なぜなら私はホスピスや病院で チャプレン(聖職者)として 00:01:12.907 --> 00:01:16.204 ほぼ30年働いてきたからです 00:01:16.204 --> 00:01:21.937 そして2005年 大きな癌センターに勤務していた頃 00:01:21.937 --> 00:01:24.242 私は母親が 00:01:24.242 --> 00:01:27.677 乳癌であることを知らされました 00:01:27.677 --> 00:01:29.859 そしてその5日後 00:01:29.859 --> 00:01:35.326 自分もまた乳癌であることを知ったのです 00:01:35.326 --> 00:01:37.959 母とは競争相手になれるわ― 00:01:37.959 --> 00:01:39.747 (笑) ― 00:01:39.747 --> 00:01:44.179 でも私はこれに関しては 競ったりしませんでした 00:01:44.179 --> 00:01:46.204 実際 私が思ったのは 00:01:46.204 --> 00:01:48.139 癌になった場合 00:01:48.139 --> 00:01:49.860 その治療施設で働くのは 00:01:49.860 --> 00:01:51.371 かなり便利だということです 00:01:51.371 --> 00:01:54.068 しかし大勢の人たちが憤慨して こう言いました 00:01:54.068 --> 00:01:55.530 何ですって? 00:01:55.530 --> 00:01:57.450 あなた チャプレンでしょう 00:01:57.450 --> 00:01:59.740 免疫があるはずなのに と 00:01:59.740 --> 00:02:01.817 まるで 警察官はサイレンさえ鳴らせば 00:02:01.817 --> 00:02:04.112 交通違反のチケットを 00:02:04.112 --> 00:02:07.880 免れるはずであると 言いたいかのようにです 00:02:07.880 --> 00:02:10.854 そして私は勤務先の癌センターで 治療を受けました 00:02:10.854 --> 00:02:13.376 これは驚くほど便利でした 00:02:13.376 --> 00:02:15.615 化学療法や 00:02:15.615 --> 00:02:18.325 乳房切除術 生理食塩水インプラントを受けました 00:02:18.325 --> 00:02:20.450 何よりもまず これを言わせて下さい 00:02:20.450 --> 00:02:25.224 これは偽物です (笑) 00:02:25.224 --> 00:02:28.437 この点については ありきたりの対処法では駄目だと思いました 00:02:28.437 --> 00:02:30.211 誰かがこんなふうに口にしたら 00:02:30.211 --> 00:02:32.428 「ほら あれが例のやつ」 00:02:32.428 --> 00:02:34.892 そうしたら近づいたり ジェスチャーしたりして 00:02:34.892 --> 00:02:37.445 「いいえ こっちよ」と伝えようと 00:02:37.445 --> 00:02:39.616 さて こうして 00:02:39.616 --> 00:02:41.753 私は患者として多くのことを学びました 00:02:41.753 --> 00:02:43.275 驚いたことの1つは 00:02:43.275 --> 00:02:47.382 癌の体験のうち 医療の占める割合は 00:02:47.382 --> 00:02:49.474 ほんの少しであるということです 00:02:49.474 --> 00:02:53.827 大半は自分でも気づいていなかった 自身の感情と信念 00:02:53.827 --> 00:02:56.460 アイデンティティの喪失と発見 00:02:56.460 --> 00:02:58.038 強さや柔軟性への気づきです 00:02:58.038 --> 00:03:01.960 強さや柔軟性への気づきです 00:03:01.960 --> 00:03:04.289 それは 人生で最も重要なことが 00:03:04.289 --> 00:03:07.359 物質的なものでは全くなく 関係性であると 00:03:07.359 --> 00:03:10.440 認識することであり 00:03:10.440 --> 00:03:14.506 不確実な事態に直面しても笑うことや 00:03:14.506 --> 00:03:17.945 「私は癌なんです」と言えば 00:03:17.945 --> 00:03:22.260 ほぼ全てのことを免れられると知ることです 00:03:22.260 --> 00:03:24.773 そうして私がもう1つ学んだのは 00:03:24.773 --> 00:03:28.227 「癌を克服した人」であることを 00:03:28.227 --> 00:03:30.195 自分のアイデンティティにする 必要はないことです 00:03:30.195 --> 00:03:33.814 ですが 私がこの境地に達するのに 00:03:33.814 --> 00:03:37.360 何か強力な力が働いたのでしょうか? 00:03:37.360 --> 00:03:41.678 いいえ 誤解しないで下さいね 00:03:41.678 --> 00:03:43.637 癌の団体や 00:03:43.637 --> 00:03:45.617 早期スクリーニングの推進 00:03:45.617 --> 00:03:48.271 癌に関する啓発と研究のおかげで 00:03:48.271 --> 00:03:50.386 癌だからといって 特別な目で見られることは なくなりました 00:03:50.386 --> 00:03:51.710 これは素晴らしいことです 00:03:51.710 --> 00:03:53.794 今では 声をひそめずに 00:03:53.794 --> 00:03:55.572 癌について語ることができます 00:03:55.572 --> 00:04:00.090 私たちは癌について語り 互いに支えあうことができます 00:04:00.090 --> 00:04:03.176 しかし時々人々は 00:04:03.176 --> 00:04:04.574 少し熱が入りすぎて 00:04:04.574 --> 00:04:09.779 私たちがどう感じる「はずである」かを 教えたくなるようです 00:04:09.779 --> 00:04:13.322 私が手術を受けた約1週間後 00:04:13.322 --> 00:04:16.202 自宅にお客様を招きました 00:04:16.202 --> 00:04:18.950 これはおそらく最初の過ちでした 00:04:18.950 --> 00:04:20.471 そして心に留めていて下さい 00:04:20.471 --> 00:04:22.141 私はこの時点で 00:04:22.141 --> 00:04:25.763 20年以上チャプレンとして働いていました 00:04:25.763 --> 00:04:28.086 死にゆくことや死そのもの 00:04:28.086 --> 00:04:29.642 人生の意味といった話題は 00:04:29.642 --> 00:04:32.820 私がずっと喋り続けてきたものです 00:04:32.820 --> 00:04:35.320 その晩の食事中 00:04:35.320 --> 00:04:38.056 その客は腕を頭の上に伸ばしながら 言いました 00:04:38.056 --> 00:04:40.861 「いいかい デブラ 00:04:40.861 --> 00:04:45.010 君は今 重要なことを 学ぼうとしているところなんだ 00:04:45.010 --> 00:04:47.707 そう 君の人生は大きく 00:04:47.707 --> 00:04:49.077 変わろうとしているんだ 00:04:49.077 --> 00:04:52.725 今 君は死について 考え始めたところなんだ 00:04:52.725 --> 00:04:56.750 そう 癌は 君に 警鐘を鳴らしてくれたんだよ」 00:04:58.520 --> 00:05:01.175 これらは当事者が自分の体験を 00:05:01.175 --> 00:05:03.154 語るうえでは 00:05:03.154 --> 00:05:05.573 金言であると言うべきですが 00:05:05.573 --> 00:05:07.949 自分がどう感じるはずであるかを 00:05:07.949 --> 00:05:10.342 他人が教えるというのは 00:05:10.342 --> 00:05:12.388 ばかばかしいことです 00:05:12.388 --> 00:05:15.292 私が彼をこの手で殺さなかった 唯一の理由は 00:05:15.292 --> 00:05:17.283 私が彼をこの手で殺さなかった 唯一の理由は 00:05:17.283 --> 00:05:21.378 右腕が上がらなかったことですが 00:05:21.378 --> 00:05:25.596 私は彼にかなり悪態をつきました 00:05:25.596 --> 00:05:28.497 通常の言葉に続いて その― 00:05:28.497 --> 00:05:29.720 (笑) ― 00:05:29.720 --> 00:05:33.238 夫は 「彼女は今 麻薬を使っているんだ」と 言わざるを得ませんでした 00:05:33.238 --> 00:05:35.196 (笑) 00:05:35.196 --> 00:05:37.690 治療の後 皆は私の体験が 00:05:37.690 --> 00:05:40.973 どんな意味を もつはずなのか 教えたがりました 00:05:40.973 --> 00:05:43.765 「これはあなたの使命になるはずよ」 00:05:43.765 --> 00:05:45.389 「ランチョンセミナーに行くのね」 00:05:45.389 --> 00:05:46.651 「ピンクリボンをつけて 00:05:46.651 --> 00:05:49.042 ピンクのTシャツや 00:05:49.042 --> 00:05:50.904 ヘッドバンドやイヤリング 00:05:50.904 --> 00:05:54.640 ブレスレットを身に着けることになるわね  あとパンティも」 00:05:54.640 --> 00:05:57.869 パンティ いえいえ真面目な話 ググってみて 00:05:57.869 --> 00:05:59.920 (笑) 00:05:59.920 --> 00:06:02.011 こんな啓発はどうなの? 00:06:02.011 --> 00:06:04.078 私のパンティを見るのは夫だけなのにね 00:06:04.078 --> 00:06:05.747 (笑) 00:06:05.747 --> 00:06:10.158 彼はもう癌のことをしっかり認識してるわよ 00:06:10.158 --> 00:06:13.302 この頃私が感じたのは ああ 00:06:13.302 --> 00:06:16.452 これが残りの人生でずっと続くの? と 00:06:16.452 --> 00:06:21.424 その時 心の中で思ったのです 自分の体験を語ろう 00:06:21.424 --> 00:06:25.086 体験に自分のことを語らせてはいけない と 00:06:25.086 --> 00:06:27.194 皆さんご存知のとおり トラウマや喪失 00:06:27.194 --> 00:06:31.316 その他 人生を変える出来事に 00:06:31.316 --> 00:06:33.741 対処する方法は 00:06:33.741 --> 00:06:35.891 そこに意味を見出すことです 00:06:35.891 --> 00:06:38.128 しかしここで大事なのは 00:06:38.128 --> 00:06:39.795 自分の体験が何を意味するかを 00:06:39.795 --> 00:06:42.531 他人が教えることはできないということです 00:06:42.531 --> 00:06:45.820 それが何を意味するかを決めるのは 自分なのです 00:06:45.820 --> 00:06:47.952 それは壮大で 00:06:47.952 --> 00:06:49.959 人に訴えかけるような ものでなくても構いません 00:06:49.959 --> 00:06:52.470 なにも皆が 基金や団体を立ち上げたり 00:06:52.470 --> 00:06:54.622 本を執筆したり 00:06:54.622 --> 00:06:57.502 ドキュメンタリーを制作しなくてもいいのです 00:06:57.502 --> 00:07:00.449 意味は控えめで 00:07:00.449 --> 00:07:02.620 内に秘めたものであってもよいのです 00:07:02.620 --> 00:07:08.548 人生について小さな1つの決断をすることが 00:07:08.548 --> 00:07:13.626 大きな変化をもたらすこともあるでしょう 00:07:13.626 --> 00:07:15.566 何年も前 私の患者さんに 00:07:15.566 --> 00:07:17.571 素敵な若い男性がいて 00:07:17.571 --> 00:07:20.306 彼はスタッフから愛されていました 00:07:20.306 --> 00:07:23.190 ショックだったのは 00:07:23.190 --> 00:07:26.974 彼に友達がいなかったことです 00:07:26.974 --> 00:07:29.280 彼は独りで暮らし 00:07:29.280 --> 00:07:33.308 化学療法に独りで通い 00:07:33.308 --> 00:07:35.253 治療を受けて 00:07:35.253 --> 00:07:38.984 独りで歩いて帰宅していました 00:07:38.984 --> 00:07:40.748 私は彼に尋ねたこともあります 00:07:40.748 --> 00:07:43.489 「ねえ どうしてあなた 友達を連れてこないの?」と 00:07:43.489 --> 00:07:48.208 彼は言いました 「僕には本当に 友達がいないんです」 00:07:48.208 --> 00:07:50.469 しかし彼には注入療法のフロアに 友達が大勢いました 00:07:50.469 --> 00:07:54.845 私たちは皆 彼が大好きで 彼の部屋には常時 人が出入りしていました 00:07:54.845 --> 00:07:57.804 ですから 彼の化学療法の最終日 00:07:57.804 --> 00:07:59.131 私たちは歌を歌い 00:07:59.131 --> 00:08:01.898 彼の頭に王冠を乗せ シャボン玉を飛ばしてお祝いしました 00:08:01.898 --> 00:08:04.339 そして私は彼に尋ねました 00:08:04.339 --> 00:08:08.795 「さて今からあなたは どうするの?」 00:08:08.795 --> 00:08:10.605 彼は答えました 00:08:10.605 --> 00:08:12.238 「友達を作ります」 00:08:12.238 --> 00:08:14.350 そして実際にそうしたのです 00:08:14.350 --> 00:08:17.904 彼はボランティアを始め そこで友達を作りました 00:08:17.904 --> 00:08:20.590 そして教会にも通い始め そこでも友達を作りました 00:08:20.590 --> 00:08:23.550 クリスマスには私と夫を ホームパーティに招いてくれました 00:08:23.550 --> 00:08:28.667 そこは彼の友達で溢れ返っていました 00:08:28.667 --> 00:08:30.910 自分の体験を語りましょう 00:08:30.910 --> 00:08:32.558 体験にあなたを語らせてはいけません 00:08:32.558 --> 00:08:37.431 まさしく彼は 自身の体験を 友情の喜びを知る機会として 00:08:37.431 --> 00:08:41.198 意味づけ そして 00:08:41.198 --> 00:08:45.806 友達を作るようになったのです 00:08:45.806 --> 00:08:49.792 皆さんはどうですか? 00:08:49.792 --> 00:08:52.145 自分のひどい体験の意味を 00:08:52.145 --> 00:08:54.592 どうやって見つけようとしていますか? 00:08:54.592 --> 00:08:56.483 それは最近のものかもしれませんし 00:08:56.483 --> 00:08:58.454 もうずっと長い間 抱え続けているものかもしれません 00:08:58.454 --> 00:09:02.345 もうずっと長い間 抱え続けているものかもしれません 00:09:02.345 --> 00:09:06.855 その意味を変えるのに 遅すぎることはありません 00:09:06.855 --> 00:09:09.110 なぜなら意味は生きているからです 00:09:09.110 --> 00:09:10.771 今日それが意味していることが 00:09:10.771 --> 00:09:12.698 1年後 10年後にも 00:09:12.698 --> 00:09:15.541 同じかは 分かりません 00:09:15.541 --> 00:09:18.151 単なる 「体験を克服した人」 以上の 存在になるのに 00:09:18.151 --> 00:09:21.672 遅すぎることはありません 00:09:21.672 --> 00:09:24.996 この語がいかに生気のない響きがするか 耳をすまして下さい 00:09:24.996 --> 00:09:26.913 「克服」 00:09:26.913 --> 00:09:31.304 動きも 成長もありません 00:09:31.304 --> 00:09:33.191 自分自身の体験を語りましょう 00:09:33.191 --> 00:09:35.812 体験にあなたを語らせてはいけません そうした場合 00:09:35.812 --> 00:09:38.973 あなたはそれにとらわれてしまうからです 00:09:38.973 --> 00:09:44.915 そこに成長はありません 00:09:44.915 --> 00:09:48.393 しかしもちろん 体験者アイデンティティを 00:09:48.393 --> 00:09:52.764 私たちに抱かせるのは 外部の圧力ではない場合もあります 00:09:52.764 --> 00:09:56.657 私たちはそれで得する時もあります 00:09:56.657 --> 00:10:00.165 何かを清算できる時もあります 00:10:00.165 --> 00:10:03.900 しかしそれでは 行き詰まります 00:10:03.900 --> 00:10:05.711 チャプレンになる為のインターンシップで 00:10:05.711 --> 00:10:09.817 私が最初に学んだことの1つは 00:10:09.817 --> 00:10:12.208 チャプレンの仕事の3つの「C」です 00:10:12.208 --> 00:10:19.170 慰め(Comfort) 明確にすること(Clarify)  必要であれば 直面を促すこと(Confront) 00:10:19.170 --> 00:10:21.325 または挑戦(Challenge)です 00:10:21.325 --> 00:10:23.271 私たちは 人を慰めたり 思いを明確にするお手伝いは 00:10:23.271 --> 00:10:25.128 好んでするのに 00:10:25.128 --> 00:10:30.070 現実に直面するよう促すことについては そうでもありません 00:10:30.070 --> 00:10:32.064 それ以外に私がチャプレンの仕事で 00:10:32.064 --> 00:10:34.522 気に入っていたことの1つは 00:10:34.522 --> 00:10:38.995 患者さんに治療の1年後や数年後に 00:10:38.995 --> 00:10:40.836 会うことです なぜなら 00:10:40.836 --> 00:10:43.536 いかに患者さんたちが変化し その人生が進展しており 00:10:43.536 --> 00:10:45.752 その人たちに何が起きたかを 知ることができるのは 00:10:45.752 --> 00:10:47.642 本当に素敵なことだからです 00:10:47.642 --> 00:10:50.162 ですから 私がある時 00:10:50.162 --> 00:10:52.610 その前年に会っていた患者さんから 00:10:52.610 --> 00:10:56.191 クリニックのロビーに呼び出され 00:10:56.191 --> 00:10:58.665 娘さんを2人連れた 彼女を見た時は感激しました 00:10:58.665 --> 00:11:02.924 娘さんたちのことは私も知っていました 彼女は1年後の経過観察に来院したのです 00:11:02.924 --> 00:11:06.461 私がロビーに行くと 彼女たちは大喜びしていました 00:11:06.461 --> 00:11:08.712 なぜなら彼女の検査結果が全て出て 00:11:08.712 --> 00:11:14.900 彼女はNED つまり 「無病生存状態」だったからです 00:11:14.900 --> 00:11:19.657 私は昔「確実に死ぬというほどではない」という 意味だと思っていたんですけどね 00:11:19.657 --> 00:11:25.150 彼女たちは大喜びして 皆で座って話し始めましたが 00:11:25.150 --> 00:11:27.957 それは非常に奇妙でした なぜなら 00:11:27.957 --> 00:11:31.839 2分もたたないうちに 彼女は 自分の診断や手術 00:11:31.839 --> 00:11:36.369 化学療法のことを再び語り始めたからです 00:11:36.369 --> 00:11:39.837 私はチャプレンとして 毎週彼女に会っていたので 00:11:39.837 --> 00:11:42.728 この話はよく知っているのに です 00:11:42.728 --> 00:11:45.770 また彼女が使っていた語は「患う」 00:11:45.770 --> 00:11:49.765 「苦悶」「闘病」といったものでした 00:11:49.765 --> 00:11:52.379 そして彼女はその話を 00:11:52.379 --> 00:11:57.173 「磔(はりつけ)に相当する苦しさだったわ」 と言って終えました 00:11:57.173 --> 00:11:59.837 この時点で彼女の2人の娘は立ち上がって 00:11:59.837 --> 00:12:03.749 「コーヒー飲んでくるわ」と言って 00:12:03.749 --> 00:12:06.890 去ってしまいました 00:12:06.890 --> 00:12:09.725 バス停に着く前に あなたについて3つの事を教えて下さい 00:12:09.725 --> 00:12:12.481 人々は 彼女が2番目や3番目にたどり着く前に 00:12:12.481 --> 00:12:17.858 バスを降りていってしまいました 00:12:17.858 --> 00:12:21.345 そこで私は彼女にティッシュを渡し 00:12:21.345 --> 00:12:24.642 抱きしめて 00:12:24.642 --> 00:12:28.152 この女性のことを本当に大切に思っていたので 00:12:28.152 --> 00:12:30.238 こう言いました 00:12:30.238 --> 00:12:32.544 「十字架から下りなさい」 00:12:32.544 --> 00:12:36.810 「何ですって?」 彼女は言いました 00:12:36.810 --> 00:12:42.224 私は繰り返しました 「十字架から下りなさい」 00:12:42.224 --> 00:12:46.869 彼女の名誉の為に言っておきますが  彼女はこのアイデンティティを抱き 00:12:46.869 --> 00:12:51.988 それに執着する理由を語っても 構わないのですが 00:12:51.988 --> 00:12:54.010 彼女はそれにかなり気を取られていました 00:12:54.010 --> 00:12:57.115 人々は変わってくれることを期待して 彼女の面倒を見ていました 00:12:57.115 --> 00:13:00.810 しかし今 それは 逆効果になってしまいました 00:13:00.810 --> 00:13:03.293 それは人を遠ざけてしまいました 00:13:03.293 --> 00:13:07.040 立ち去って コーヒーを飲みに行ってしまいました 00:13:07.040 --> 00:13:10.941 彼女は自分の体験が磔に 相当すると感じていましたが 00:13:10.941 --> 00:13:17.163 その磔にされた自己を 葬りたくはなかったのです 00:13:17.163 --> 00:13:20.080 さて 皆さんはこう考えているかもしれません 00:13:20.080 --> 00:13:23.030 私が彼女にちょっと厳しすぎるんじゃないか と 00:13:23.030 --> 00:13:25.138 そこで私はこのことを言わねばなりません 00:13:25.138 --> 00:13:28.830 私は自分自身の体験から話しているのです 00:13:28.830 --> 00:13:31.674 ここまでに多くの年数が必要でした 00:13:31.674 --> 00:13:35.000 私は大好きだった仕事を解雇されたのです 00:13:35.000 --> 00:13:38.716 それでも私の身の潔白と不公正 00:13:38.716 --> 00:13:42.120 裏切りと欺瞞について 語るのをやめようとしませんでした 00:13:42.120 --> 00:13:43.250 この女性のように 00:13:43.250 --> 00:13:45.291 人々が私から去っていってしまうまで です 00:13:45.291 --> 00:13:48.527 私は最終的に 自分が 00:13:48.527 --> 00:13:52.399 感情を処理しているのではなく 00:13:52.399 --> 00:13:55.107 それを助長しているのだということに 気づいたのです 00:13:55.107 --> 00:13:59.170 私は磔にされた自己を 葬りたくありませんでした 00:13:59.170 --> 00:14:04.592 しかし私たちは どんな復活譚でも 00:14:04.592 --> 00:14:07.220 まず一旦 死者になることが 必要なことを知っています 00:14:07.220 --> 00:14:09.043 キリスト教の物語では 00:14:09.043 --> 00:14:12.315 キリストは復活する前に死者となり 00:14:12.315 --> 00:14:14.810 まる1日 お墓に入っていたのです 00:14:14.810 --> 00:14:16.648 そして私たちにとって 00:14:16.648 --> 00:14:18.780 お墓に入るということは 00:14:18.780 --> 00:14:22.766 自分たちの傷口にまつわる 深い内的作業に 00:14:22.766 --> 00:14:25.470 取り組むことであり 00:14:25.470 --> 00:14:29.943 自分が癒やされるのを許すことを 意味しています 00:14:29.943 --> 00:14:33.000 私たちは磔にされた自己を葬り 00:14:33.000 --> 00:14:36.604 新しい自己 真の自己が 00:14:36.604 --> 00:14:38.986 生まれるようにしなければなりません 00:14:38.986 --> 00:14:41.844 私たちは古い物語を手放し 00:14:41.844 --> 00:14:45.991 新しい物語 真の物語が 00:14:45.991 --> 00:14:49.030 語られるようにしなければなりません 00:14:49.030 --> 00:14:54.573 自分の体験を語りましょう 体験にあなたを語らせてはいけません 00:14:54.573 --> 00:14:57.154 「克服した人」が もしいなかったらどうでしょう 00:14:57.154 --> 00:14:59.950 つまり もし人々が 00:14:59.950 --> 00:15:02.820 自分のトラウマを アイデンティティとしてではなく 00:15:02.820 --> 00:15:06.990 単なる1つの体験として 語ったらどうなるでしょう? 00:15:06.990 --> 00:15:08.992 私たちは自分の傷に 00:15:08.992 --> 00:15:11.350 とらわれるのをやめ 00:15:11.350 --> 00:15:14.904 素晴らしい自己探求 自己発見 00:15:14.904 --> 00:15:18.830 成長を 始めるかもしれません 00:15:18.830 --> 00:15:23.625 これは 自分がどうなったか どうなろうとしているかに基づいて 00:15:23.625 --> 00:15:26.205 これは 自分がどうなったか どうなろうとしているかに基づいて 00:15:26.205 --> 00:15:30.375 自己を定義する出発点になるかもしれません 00:15:30.375 --> 00:15:36.146 ですから 「克服した人」であることは 00:15:36.146 --> 00:15:41.353 あなたが私に語る3つの事の1つには 含まれなくなるかもしれません 00:15:41.353 --> 00:15:42.670 ともあれ 00:15:42.670 --> 00:15:44.910 私はただ皆さんと一緒のバスに 00:15:44.910 --> 00:15:49.223 乗り合わせたことを 非常に嬉しく思っていることだけ 知って頂ければ幸いです 00:15:49.223 --> 00:15:53.119 私の降りるバス停に着いたようです 00:15:53.119 --> 00:15:56.824 (拍手)