WEBVTT 00:00:00.880 --> 00:00:03.695 初めて洒落たレストランに 行った時の事をよく覚えています 00:00:03.719 --> 00:00:05.336 高級なレストランでした 00:00:05.360 --> 00:00:07.496 法律事務所が主催した 面接ディナーでした 00:00:07.496 --> 00:00:09.976 ウエイトレスが食事前に歩き回り 00:00:10.000 --> 00:00:11.856 ワインが欲しいかと聞いてきたので 00:00:11.880 --> 00:00:14.160 「もちろん」と答えました 「白ワインを少し」 と NOTE Paragraph 00:00:14.800 --> 00:00:16.536 すると彼女は即座に言いました 00:00:16.560 --> 00:00:19.350 「ソーヴィニヨン・ブランと シャルドネが ございます」 NOTE Paragraph 00:00:19.680 --> 00:00:21.616 その途端頭によぎった事が 00:00:21.640 --> 00:00:24.496 「かっこつけたフランス語できどるなよ 00:00:24.520 --> 00:00:26.490 とにかく白ワインをくれ」 00:00:27.330 --> 00:00:29.016 それでも推理力を働かせ 00:00:29.040 --> 00:00:31.456 シャルドネとソーヴィニヨン・ブランは 00:00:31.480 --> 00:00:33.376 白ワインの2つの種類だとひらめき 00:00:33.400 --> 00:00:35.816 「シャルドネをください」と答えました 00:00:35.840 --> 00:00:39.098 その方が僕にとって発音しやすかった それだけが理由でした NOTE Paragraph 00:00:39.960 --> 00:00:42.056 僕がエール大学ロースクールに通った 00:00:42.080 --> 00:00:44.760 最初の数年は たくさんこういう経験しました 00:00:45.130 --> 00:00:48.720 見た目はみんなと同じでも 文化的には よそ者でしたから 00:00:49.240 --> 00:00:50.816 僕はエリート層の出身ではありません 00:00:50.840 --> 00:00:55.140 東海岸の北東部や サンフランシスコ出身ではなく 00:00:55.140 --> 00:00:57.426 故郷はオハイオ州南部の鉄鋼業の町 00:00:57.426 --> 00:01:00.056 様々な社会問題に喘いでいる場所です 00:01:00.080 --> 00:01:02.536 アメリカの労働階級が抱えた問題を 00:01:02.560 --> 00:01:04.250 体現している場所です 00:01:04.720 --> 00:01:06.056 ヘロインが浸透し 00:01:06.080 --> 00:01:08.340 僕の知り合いも含め たくさんの命を奪っています 00:01:08.680 --> 00:01:12.640 家族間のもめごと 家庭内暴力 離婚により家族が引き裂かれています 00:01:13.400 --> 00:01:17.606 社会にも悲観的なムードが 浸透しています 00:01:17.606 --> 00:01:20.216 このような地域で 死亡率が上昇している事を考え 00:01:20.240 --> 00:01:22.416 この状況で暮らす 人々の多くにとって 00:01:22.440 --> 00:01:24.016 目の前の問題こそが 00:01:24.040 --> 00:01:27.736 地域の死亡率を押し上げる 直接の原因だという事を理解すれば 00:01:27.760 --> 00:01:30.450 問題は身に迫ったものに感じられます NOTE Paragraph 00:01:31.160 --> 00:01:33.696 僕はそんな葛藤を 目撃しながら育ちました 00:01:33.720 --> 00:01:37.840 僕の家族は長年その苦労と 共に生きてきました 00:01:39.080 --> 00:01:43.416 僕の家庭は豊かではありません 00:01:43.440 --> 00:01:45.856 コミュニティーを汚染した中毒は 00:01:45.880 --> 00:01:49.000 僕のファミリーも汚染し 悲しい事に 母も犠牲者の一人です 00:01:49.760 --> 00:01:53.896 家庭内では たくさんの問題に 直面しましたが 00:01:53.920 --> 00:01:56.776 その原因は ある時はお金がないこと 00:01:56.800 --> 00:02:01.136 ある時は 人材や物資や 人間関係に基づく支援が得られないことで 00:02:01.160 --> 00:02:03.450 僕の生活にも 大きな影響を与えました NOTE Paragraph 00:02:04.400 --> 00:02:07.176 もし14歳の僕の生きざまを見て 00:02:07.200 --> 00:02:10.346 「この子は将来どうなるだろう」と 考えたとしたら 00:02:10.346 --> 00:02:13.286 学者が「社会的地位の上昇」と 呼ぶ面で苦労するという 00:02:13.286 --> 00:02:16.310 結論に達したことでしょう 00:02:16.560 --> 00:02:19.536 社会的地位の上昇は 抽象的な用語ですが 00:02:19.560 --> 00:02:22.296 「アメリカン・ドリーム」の核心に 00:02:22.320 --> 00:02:23.940 大きな影響力を持っています 00:02:23.940 --> 00:02:25.440 社会的地位の上昇とは 意識であり 00:02:25.440 --> 00:02:27.170 僕のように貧しい境遇で 育った子どもが 00:02:27.170 --> 00:02:29.880 そこから抜け出し もっといい生活ができるのか 00:02:29.880 --> 00:02:35.496 今よりも経済的に豊かな生活が 可能になるか 00:02:35.520 --> 00:02:38.550 それとも今までと同じ状況に 止まるかを判断できるのです 00:02:38.550 --> 00:02:40.960 残念ながら 立証されているのは 00:02:40.960 --> 00:02:45.060 この国における上昇移動は 期待するほどは進んでおらず 00:02:45.060 --> 00:02:49.520 興味深いことに 地域によって ばらつきがあります 00:02:50.110 --> 00:02:52.270 ユタ州を例にとりましょう 00:02:52.840 --> 00:02:56.376 ユタ州の貧しい子供は 実はそんなにひどい境遇ではないのです 00:02:56.400 --> 00:03:00.536 アメリカン・ドリームをそれなりに 享受できる可能性が非常に高いのです 00:03:00.560 --> 00:03:02.416 ところが僕が育った地域 00:03:02.440 --> 00:03:06.376 南部や アパラチア地方や オハイオ州南部では 00:03:06.400 --> 00:03:10.616 貧困から抜け出す可能性は少ないのです 00:03:10.640 --> 00:03:12.896 これらの地域でのアメリカンドリームは 00:03:12.920 --> 00:03:15.540 事実上 夢に過ぎないのです NOTE Paragraph 00:03:15.960 --> 00:03:17.830 何が原因でそうなるのでしょう? 00:03:18.120 --> 00:03:20.630 まず考えられるのが経済 あるいは構造的な原因です 00:03:20.630 --> 00:03:22.496 これらの地域を思い浮かべてください 00:03:22.520 --> 00:03:25.136 石炭や鉄鋼業といった産業を 00:03:25.160 --> 00:03:27.776 取り巻く景気動向は最悪で 00:03:27.800 --> 00:03:30.340 人々が向上するのを難しくしています 00:03:30.340 --> 00:03:31.896 それが一つの原因なのは確かです 00:03:31.920 --> 00:03:35.250 また頭脳の流出も問題で 優秀な人々は 00:03:35.250 --> 00:03:37.180 高度な技術を要する仕事がないため 00:03:37.180 --> 00:03:38.360 地元から離れていきます 00:03:38.360 --> 00:03:40.690 地元にビジネスやNPOを 作るのではなく 00:03:40.690 --> 00:03:44.306 別の場所へと去っていき 結果的に才能が流出します 00:03:45.160 --> 00:03:47.816 このような地域では破綻した学校も多く 00:03:47.840 --> 00:03:49.896 子供たちへの教育的支援ができず 00:03:49.920 --> 00:03:52.470 将来チャンスを手にすることを 妨げています 00:03:52.470 --> 00:03:54.250 これらの要素は どれも重要です 00:03:54.250 --> 00:03:56.630 こういう構造的障壁を 軽視する気はありません 00:03:56.630 --> 00:03:59.510 ただ自分の生い立ちや 育った環境をふり返ると 00:03:59.510 --> 00:04:02.720 別のことがおきていて それも重要だったのです 00:04:03.840 --> 00:04:07.450 その影響を測るのは難しい事ですが 同じぐらい現実的な問題でした NOTE Paragraph 00:04:08.120 --> 00:04:11.776 まず最初に言えるのが 計り知れない失望感が 00:04:11.800 --> 00:04:13.576 僕のコミュニティーに漂っていた事 00:04:13.600 --> 00:04:16.736 子供達は自分の選択は 無意味だと思い込み 00:04:16.760 --> 00:04:19.416 何が起きても どんなに一生懸命努力して 00:04:19.440 --> 00:04:21.536 向上する意欲をもっていようと 00:04:21.560 --> 00:04:23.870 良い結果には ならないという絶望感です 00:04:24.160 --> 00:04:27.216 子供が育つには厳しい環境です 00:04:27.240 --> 00:04:30.416 そんな思い込みを切り替えるのは 非常に困難で 00:04:30.440 --> 00:04:34.720 思い込みは時に 疑いの原因になります 00:04:35.240 --> 00:04:38.990 例えば いま盛んに議論されている 政治問題である 00:04:38.990 --> 00:04:40.876 「積極的差別是正措置」です 00:04:40.876 --> 00:04:43.420 差別是正措置は 政治的な見解によって 00:04:43.420 --> 00:04:47.546 仕事場や教室の多様性を促す 賢明な方法かどうか 00:04:47.546 --> 00:04:48.736 評価が分かれます 00:04:48.760 --> 00:04:50.776 このような地域で育つと 00:04:50.800 --> 00:04:54.536 差別是正措置は そこに住む人々を 抑え込むものだと考えがちです 00:04:54.560 --> 00:04:57.816 労働階級の白人だと 特にそうです 00:04:57.840 --> 00:05:01.256 この措置は単に政策の良し悪しの 問題ではなく 00:05:01.280 --> 00:05:03.976 自分の足を引っ張るために 00:05:04.000 --> 00:05:06.256 政治力や資金力を持つ人々が企てた 00:05:06.280 --> 00:05:07.896 陰謀だと考えるのです 00:05:07.920 --> 00:05:13.510 差別是正措置に対する いろいろな陰謀論が 00:05:13.520 --> 00:05:16.416 現実であれ妄想であれ存在し 00:05:16.440 --> 00:05:18.790 その結果 将来への希望は 歪んでしまいます NOTE Paragraph 00:05:19.040 --> 00:05:22.256 そんな世界で育って どうしたらよいか考えた場合 00:05:22.280 --> 00:05:23.600 答えは2つになりそうです 00:05:23.600 --> 00:05:25.740 1つ目は「一生懸命 勉強するのはやめよう 00:05:25.740 --> 00:05:28.480 どんなにがんばっても結果は同じだから」 00:05:28.480 --> 00:05:30.090 もう1つの答え方は 00:05:30.090 --> 00:05:34.056 「一般的な成功の基準を 求めるのは止めよう 00:05:34.080 --> 00:05:36.416 例えば大学の教育や一流な職業 等 00:05:36.440 --> 00:05:38.800 そんな基準を気にするのは 自分とは違う境遇の人間だし 00:05:38.800 --> 00:05:40.980 どうせ彼らには 受け入れられないから」 00:05:41.004 --> 00:05:43.481 僕がエール大学に合格した時も 家族に聞かれました 00:05:43.505 --> 00:05:46.816 「入学審査委員会に通るために リベラルのふりをしたのか?」 00:05:46.840 --> 00:05:48.616 これは本当の話です 00:05:48.640 --> 00:05:52.656 もちろん大学の願書には リベラルが付けるチェック欄など 00:05:52.680 --> 00:05:54.176 ありませんでしたが 00:05:54.200 --> 00:05:57.856 これは こういった地域で 様々な社会障壁を通過するために 00:05:57.880 --> 00:06:00.256 自分を偽る必要があるのではという 00:06:00.280 --> 00:06:03.040 極めて現実味のある 不安感を表しています 00:06:03.080 --> 00:06:04.604 これは重要な問題です NOTE Paragraph 00:06:05.640 --> 00:06:08.056 たとえ悲壮感に落ち込まずに 00:06:08.080 --> 00:06:09.896 例えば 自分の選択には意味があり 00:06:09.920 --> 00:06:13.536 適切な選択をしたいと願い 00:06:13.560 --> 00:06:16.456 家族と自分のために 向上したいと思ったとしても 00:06:16.480 --> 00:06:19.656 僕が育ったような環境では そもそも どんな選択肢があるのか 00:06:19.680 --> 00:06:21.776 わからない場合があるのです 00:06:21.800 --> 00:06:23.416 例えば僕は弁護士になるには 00:06:23.440 --> 00:06:26.160 ロースクールに行く必要があることすら 知りませんでした 00:06:26.360 --> 00:06:30.070 調査で明らかになっているように エリート大学は低所得層の子供にとって 00:06:30.070 --> 00:06:32.186 割安だということも知りませんでした 00:06:32.186 --> 00:06:34.696 なぜなら有名校には より多くの寄付金が集まり 00:06:34.720 --> 00:06:36.896 より多額の学資援助が可能だからです 00:06:36.920 --> 00:06:38.706 僕自身この事を知ったのが 00:06:38.706 --> 00:06:41.016 エール大学から資金援助の案内が届き 00:06:41.040 --> 00:06:43.736 数万ドルの「所得に応じた援助」と 書いてあった時でした 00:06:43.760 --> 00:06:45.896 そんな表現さえ 初めて知りましたが 00:06:45.920 --> 00:06:48.576 その手紙を手にしながら 叔母に言いました 00:06:48.600 --> 00:06:51.896 「これって 生まれて初めて 貧乏なおかげで 00:06:51.920 --> 00:06:53.840 すごく得したってことだね」 NOTE Paragraph 00:06:55.360 --> 00:06:58.176 僕が その情報を 手に入れられなかったのは 00:06:58.200 --> 00:07:01.856 僕を取り巻く社会的ネットワークが その情報を得られなかったからです 00:07:01.880 --> 00:07:05.536 僕はコミュニティーから銃を撃つこと それも上手に撃つことを学びました 00:07:05.560 --> 00:07:08.016 すごく美味しいビスケットの 作り方も学びました 00:07:08.040 --> 00:07:11.200 ちなみに 秘訣は常温でなく 凍ったバターを使うことです 00:07:11.840 --> 00:07:14.146 しかし 社会で成功する方法は 教えてもらえませんでした 00:07:14.146 --> 00:07:16.576 教育や将来の可能性に関する 00:07:16.600 --> 00:07:18.456 適切な判断 すなわち 00:07:18.480 --> 00:07:21.176 この21世紀における知識経済の中で 00:07:21.200 --> 00:07:24.376 チャンスをつかむのに必要な事は 習いませんでした 00:07:24.400 --> 00:07:28.536 経済学者は 私的な人間関係 つまり友人や同僚や家族から 00:07:28.560 --> 00:07:32.176 我々が得る価値を 「ソーシャルキャピタル」と呼びます 00:07:32.200 --> 00:07:36.016 僕のソーシャルキャピタルは 21世紀のアメリカ社会では 00:07:36.040 --> 00:07:38.190 通用しないことは明らかでした NOTE Paragraph 00:07:38.360 --> 00:07:41.296 もう一つ とても重要な要素があります 今も続いていて 00:07:41.320 --> 00:07:43.496 地域ではタブーとされていますが 00:07:43.520 --> 00:07:45.096 現実的な問題です 00:07:45.120 --> 00:07:46.840 すなわち 労働階級の子供は 00:07:46.840 --> 00:07:49.776 「子供時代の逆境体験」— 要は「トラウマ」のことですが 00:07:49.800 --> 00:07:53.520 これを経験する可能性が 非常に高いのです 00:07:54.280 --> 00:07:57.856 親から繰り返し殴られたり 怒鳴られたり 罵られたり 00:07:57.880 --> 00:08:00.296 親が乱暴されるのを目撃したり 00:08:00.320 --> 00:08:03.696 麻薬の常習やアルコールの乱用を 目撃するといった経験 00:08:03.720 --> 00:08:06.256 これらは全部 子供時代の トラウマの例ですが 00:08:06.280 --> 00:08:08.360 僕の家庭では よくおきていました 00:08:08.960 --> 00:08:12.376 さらに重要なのは 家でよくおきていた トラウマは現在だけのことではなく 00:08:12.400 --> 00:08:14.416 数世代に渡っているという点です 00:08:14.440 --> 00:08:16.640 僕の祖父母は 00:08:16.640 --> 00:08:19.416 子供が生まれた時 00:08:19.440 --> 00:08:22.136 当然の事ながら子供を 00:08:22.160 --> 00:08:23.776 良心的に育てるつもりでした 00:08:23.800 --> 00:08:25.056 2人は中流階級で 00:08:25.080 --> 00:08:27.461 製鋼所の仕事で まともな収入を稼げました 00:08:27.485 --> 00:08:28.816 でも 結局 00:08:28.840 --> 00:08:31.856 彼らは子供たちに たくさんの トラウマを与えてしまったのです 00:08:31.880 --> 00:08:34.576 何世代も前から続くトラウマです 00:08:34.600 --> 00:08:39.360 母が12歳の時 目撃したのは 祖母が祖父に火をつけるところでした 00:08:40.120 --> 00:08:42.936 祖父が犯した罪は酔っ払って 家に帰ってきた事です 00:08:42.960 --> 00:08:44.176 祖母は警告していました 00:08:44.200 --> 00:08:46.360 「酔っ払って帰ってきたら 殺してやる」 と 00:08:47.240 --> 00:08:48.930 そして その通り実行しました 00:08:49.440 --> 00:08:52.920 子供にどんな衝撃を与えたか 想像してみてください NOTE Paragraph 00:08:53.520 --> 00:08:56.456 ごくまれな出来事と 片づけられそうですが 00:08:56.480 --> 00:09:00.456 実はウィスコンシン州 児童信託基金の調査によると 00:09:00.480 --> 00:09:06.160 低所得層の子供の40%が トラウマを複数回 体験するのに対し 00:09:06.800 --> 00:09:10.096 高所得層の子供では わずか29%なのです 00:09:10.120 --> 00:09:12.776 これが何を意味するのか よく考えてみてください 00:09:12.800 --> 00:09:14.536 もし皆さんが低所得層の子供なら 00:09:14.560 --> 00:09:19.016 およそ半数がトラウマを 数回は体験するのです 00:09:19.040 --> 00:09:20.856 これは まれなことではなく 00:09:20.880 --> 00:09:23.000 とても深刻な問題です NOTE Paragraph 00:09:23.800 --> 00:09:26.920 そのような体験をした子供が 歩む人生は予測できます 00:09:27.920 --> 00:09:31.216 麻薬に手を出す可能性も 刑務所に入る可能性も 00:09:31.240 --> 00:09:33.536 高校を中退する可能性も ずっと高くなり 00:09:33.560 --> 00:09:34.976 それにも増して心配なのは 00:09:35.000 --> 00:09:37.356 彼らも自分達の子供に 自ら体験した事を 00:09:37.356 --> 00:09:39.310 繰り返す可能性も高まるでしょう 00:09:39.640 --> 00:09:42.736 このトラウマや家庭内の混乱は 00:09:42.760 --> 00:09:46.216 この地域の文化が子供たちに残す 最悪の重荷であり 00:09:46.240 --> 00:09:49.040 延々と引き継がれていきます NOTE Paragraph 00:09:50.280 --> 00:09:52.096 これらの要素の全て 00:09:52.120 --> 00:09:54.816 絶望 落胆 00:09:54.840 --> 00:09:57.176 将来に対する悲観 00:09:57.200 --> 00:09:58.760 子供時代のトラウマ 00:09:59.440 --> 00:10:01.336 ソーシャルキャピタルの欠如を 00:10:01.360 --> 00:10:03.656 総合して考えると 00:10:03.680 --> 00:10:05.256 14歳の僕が 00:10:05.280 --> 00:10:07.616 統計の数値の一部として 00:10:07.640 --> 00:10:10.560 逆境に負けた子供の1人になる 寸前だった理由がわかります NOTE Paragraph 00:10:10.640 --> 00:10:13.336 ところが予想外の事が起きたのです 00:10:13.360 --> 00:10:15.096 僕は逆境に打ち勝ったのです 00:10:15.120 --> 00:10:17.256 僕にもチャンスが訪れました 00:10:17.280 --> 00:10:21.016 高校を卒業し 大学も終え ロースクールに行きました 00:10:21.040 --> 00:10:22.640 今は満足できる職についています 00:10:23.320 --> 00:10:24.770 何がきっかけだったのか? NOTE Paragraph 00:10:25.320 --> 00:10:27.400 一つ目の要因は 祖父母の存在です 00:10:27.400 --> 00:10:30.060 人に火を放った あの祖父母が 00:10:30.060 --> 00:10:32.680 僕が誕生した頃 自らの行いを改めたのです 00:10:33.320 --> 00:10:36.376 2人は僕に安定した 家庭環境と家族を 00:10:36.400 --> 00:10:37.696 提供してくれました 00:10:37.720 --> 00:10:39.676 子供にとって必要なことを 00:10:39.676 --> 00:10:41.690 両親ができない時には 00:10:41.690 --> 00:10:44.180 必ず手を差し伸べて その役割を果たしてくれました 00:10:44.880 --> 00:10:47.536 特に祖母は意味のあることを 2つしてくれました 00:10:47.560 --> 00:10:51.056 1つ目は 僕が勉強や 子供として必要なことに集中できる 00:10:51.080 --> 00:10:53.696 平和な家庭環境を作ってくれたこと 00:10:53.720 --> 00:10:56.096 さらに それだけではありません 祖母は中等教育さえ 00:10:56.120 --> 00:10:58.050 受けていませんでしたが とても鋭い人で 00:10:58.050 --> 00:11:01.176 コミュニティーが 僕に向けて発するメッセージ 00:11:01.200 --> 00:11:03.120 僕の選択には意味がなく 00:11:03.120 --> 00:11:04.920 不利な立場だというメッセージに 気づいていました 00:11:04.920 --> 00:11:06.080 祖母は ある時こう言いました 00:11:06.080 --> 00:11:10.180 「ジェイディー 自分を不運と思うような 負け犬になっちゃダメ 00:11:10.180 --> 00:11:12.696 やりたいことは何でもできるんだから」 NOTE Paragraph 00:11:12.720 --> 00:11:15.936 もちろん彼女自身も 世の中の不公平を認識してました 00:11:15.960 --> 00:11:17.576 子供に人生は不公平だと伝えつつ 00:11:17.600 --> 00:11:19.616 自分の選択に意味があるという事実を 00:11:19.640 --> 00:11:24.896 子供にしっかり分からせる これを両立させるのは難しいことです 00:11:24.920 --> 00:11:27.580 でも おばあちゃんは うまく両立させたのです NOTE Paragraph 00:11:29.040 --> 00:11:31.670 もう一つ 助けになったのが アメリカ海兵隊です 00:11:31.670 --> 00:11:34.750 一般には米軍の一部として知られ もちろんその通りなのですが 00:11:34.750 --> 00:11:37.810 僕にとって海兵隊は 人格を形成する 00:11:37.810 --> 00:11:38.990 4年間の特訓コースでした 00:11:38.990 --> 00:11:41.070 ベッドを整えることや 洗濯をすること 00:11:41.070 --> 00:11:44.260 朝早く起きること 自分のお金を管理すること 00:11:44.260 --> 00:11:46.856 僕のコミュニティーからは 学べなかったことです 00:11:46.880 --> 00:11:49.833 初めて車を買いに行った時 00:11:49.857 --> 00:11:54.176 ディーラーで21.9%という 「超低金利」を勧められて 00:11:54.200 --> 00:11:56.800 危うく契約するところでしたが 00:11:57.680 --> 00:11:59.536 結局は断りました 00:11:59.560 --> 00:12:01.576 将校に相談したからです 00:12:01.600 --> 00:12:03.736 こう言われました 「おまえバカか 00:12:03.760 --> 00:12:06.256 地元の信用組合で もっとましな契約をしろ」 00:12:06.280 --> 00:12:07.736 言われた通りにしました 00:12:07.760 --> 00:12:09.176 海兵隊に所属していなければ 00:12:09.200 --> 00:12:11.456 そのような知識は得られず 00:12:11.480 --> 00:12:13.680 ハッキリ言って 家計は破綻していたでしょう NOTE Paragraph 00:12:14.720 --> 00:12:17.856 最後に伝えたい事はこれです 僕は指導してくれる人や 00:12:17.880 --> 00:12:19.366 僕の人生で重要な役割を 00:12:19.366 --> 00:12:21.190 果たした人々に恵まれました 00:12:21.190 --> 00:12:24.696 海兵隊から オハイオ州立大 エール大学 00:12:24.720 --> 00:12:25.976 そして その他の場所で 00:12:26.000 --> 00:12:27.656 人々が手を差し伸べて 00:12:27.680 --> 00:12:30.496 明らかに僕に欠けていた ソーシャルキャピタルを 00:12:30.520 --> 00:12:32.920 確実に補ってくれたのです 00:12:33.480 --> 00:12:35.040 僕にとっては幸運でしたが 00:12:35.840 --> 00:12:39.136 そういう幸運を得られない 子供たちも多く 00:12:39.160 --> 00:12:42.856 この状況を どうやって変えるかという 我々全員が考えるべき 00:12:42.880 --> 00:12:44.942 重要な問題を提起していると思います 00:12:45.600 --> 00:12:49.576 我々は崩壊した家庭に生まれた 低所得層の子供たちに 00:12:49.600 --> 00:12:53.136 温かい家庭を どうやって提供するか 問う必要があります 00:12:53.160 --> 00:12:54.416 我々は低所得層の親たちに 00:12:54.440 --> 00:12:56.410 自分の子供や伴侶と 00:12:56.410 --> 00:12:58.936 より良い関係を築く方法を どうやって教えるか 00:12:58.960 --> 00:13:00.456 問う必要があります 00:13:00.480 --> 00:13:04.936 我々はソーシャルキャピタルや 指導力の恩恵を受けていない 00:13:04.960 --> 00:13:08.336 低所得層の子供たちに それを どう提供するか 問う必要があります 00:13:08.360 --> 00:13:11.416 我々は 労働階級の子供たちに 読解力や数学といった 00:13:11.440 --> 00:13:13.936 知識や技能を教える方法だけでなく 00:13:13.960 --> 00:13:16.056 対立の解消や財務管理といった 00:13:16.080 --> 00:13:17.416 社会的技能を 00:13:17.440 --> 00:13:20.280 教える方法について 問う必要があります NOTE Paragraph 00:13:21.440 --> 00:13:24.656 僕は答えを全部 知っているわけではありません 00:13:24.680 --> 00:13:27.820 問題を解決する方法を 全部知っているわけでもありません 00:13:28.360 --> 00:13:30.020 ただ これだけはわかっています 00:13:30.600 --> 00:13:32.336 オハイオ州南部では 今この瞬間も 00:13:32.360 --> 00:13:36.136 ある子供が 不安そうに 父親の帰りを待ち 00:13:36.160 --> 00:13:38.536 お父さんがドアを開けた時 00:13:38.560 --> 00:13:41.280 しらふか 酔って千鳥足か 気をもんでいます 00:13:42.000 --> 00:13:43.500 ある子供は 00:13:44.560 --> 00:13:46.896 母親が注射針を腕に刺し 00:13:46.920 --> 00:13:48.416 意識をなくしてしまい 00:13:48.440 --> 00:13:51.336 なぜお母さんが 晩ご飯を作ってくれないのか 00:13:51.360 --> 00:13:53.440 わからないまま お腹をすかせて眠りにつきます 00:13:54.400 --> 00:13:58.336 ある子供は 将来への希望はないけれど 00:13:58.360 --> 00:14:01.616 必死の思いで より良い暮らしを求めています 00:14:01.640 --> 00:14:04.390 どの子も より良い暮らしへと 導いて欲しいだけなのです 00:14:04.680 --> 00:14:06.536 僕はすべての答えはわかりませんが 00:14:06.560 --> 00:14:11.180 これは わかります なぜ僕がこれほど幸運だったのか 00:14:11.180 --> 00:14:13.410 そして この幸運を 00:14:13.410 --> 00:14:16.696 より多くのコミュニティーや この国の子供たちに与える方法について 00:14:16.720 --> 00:14:18.376 もっと意味のある 問いを発しなければ 00:14:18.400 --> 00:14:21.656 この厳しい状況は永遠に続くのです NOTE Paragraph 00:14:21.680 --> 00:14:22.896 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:14:22.920 --> 00:14:25.320 (拍手)