いつの時代も人はスピードに
魅惑されてきました
人類の進歩の歴史は
速度を極めることの歴史でもあり
この歴史的競い合いでの
最も重要な快挙の一つが
音速の壁を突き破ることでした
初めての飛行成功から間もなく
パイロットたちは航空機を
さらに速く飛ばす意欲に燃えました
しかし 速く飛行すると 乱気流を増やし
機体は大きな力を受け
さらなる加速は阻まれました
ある人は危険な急降下により
問題を回避しようとし
時としては悲劇的な
結果ともなりました
ついに 1947年には
可動式水平スタビライザーや
全動式尾翼といった
技術の進歩に支えられ 米軍パイロット
チャック・イエガーによって
ベルX-1 戦闘機を時速1127キロで
飛行させることに成功し
音速の壁を破り
彼は音速よりも早く飛行した
最初の人物となりました
ベルX-1は数多くの超音速航空機の
先駆けとなりました
後の設計ではマッハ3以上の
スピードに達する機体もありました
超音速で飛行する航空機は
ソニックブームとして知られる
雷の轟のような爆音を伴う
衝撃波を発生し
地上の人間や動物に
被害をもたらし
建物に損害を与えることもあります
そのため 世界中の科学者が
ソニックブームに注目し
大気中のその軌跡や
それが地上のどこに到達して
どれほどの騒音になるのかを
予測する試みを続けています
科学者のソニックブーム研究を
さらに深く理解するために
音についての基本から
考察してみましょう
波のない池に小石を
投げ入れた情景を想像してください
何が起きるでしょうか?
小石によって
あらゆる方向に同じスピードの
波が広がっていきます
どんどん直径が拡大する
それらの円を波面と呼びます
同様に 目には見えませんが
ホームステレオのような
固定された音源も
外側に広がる音の波を作ります
波の移動する大気の高度や
気温などの要素次第で
波のスピードは異なります
音は 海抜ゼロでは
時速約1225キロで移動します
しかし
二次元の平面的な円ではなく
波面はこれらの波に対して垂直な
放射線に添って伝わる
同心の球面となります
次に 列車の警笛のように
音源が移動する場合を想像して下さい
音源がある方向に移動すると
音源の前方の連続する音波は
相互に短い間隔に集まります
物体が接近すると
音がハイピッチになる
有名なドップラー効果の原因が
この周波数の高い波です
しかし 音源が
音波より遅く動く場合には
音は互いに
至近距離内に留まります
発する音より速い
超音速で物体が移動すると
状況は劇的に変わります
音源が 自ら発した音波を追い越しながら
現在地からまた別の音波を発すると
波は強制的にまとめられ
マッハコーンを形成します
物体は発している音より
速く動いているため
物体が接近しても
それを観る者に音は聴こえません
物体が通過後 ようやく
ソニックブームを聴くことになります
マッハコーンが地表にぶつかると
双曲線を形成しそれが前進するに従って
ブームカーペットと言われる
軌跡を残していきます
ソニックブームの影響を受ける
地域がこれによって解明できます
ソニックブームの強さは
どうでしょうか?
強さの解明には 有名な
ナビエ・ストークス方程式を
解く必要があり
その結果 超音速航空機が通過する時に
発生する気圧の変動を
求めることができます
その結果 N波として知られる
圧特性が割り出せます
この形状は
何を意味するのでしょうか?
ソニックブームは圧が
急激に変化するときに起こり
N波は二つの爆音に
関係しています ―
一つは航空機のノーズでの
最初の気圧上昇
そしてもう一つは最後部が通過した後
気圧は急速に正常状態に戻ります
これがダブルブームを起こしますが
通常 人間の耳には
一つの爆音に聴こえます
実際に これらの理論を用いた
コンピュータ・モデルで
所定の大気の状態と
飛行軌道情報から
ソニックブームの発生する
場所と強さを予測することができ
その影響を削減する
研究が続いています
当面の間 陸地上空では
超音速飛行が禁止されています
では ソニックブームは近年に
登場したものでしょうか?
そうではないようです
われわれ人間は
この音をなくそうと努力していますが
ある動物たちは 自分たちのために
ソニックブームをうまく使っていました
巨大なディプロドクスが
しっぽを叩きつけると
時速1200キロ以上になって音速を超え
捕食者を追い払っていたようです
ある種のエビは水中でそれに似た
ショック波を発することができ
巨大なはさみの一振りで
離れた場所から獲物を驚かせたり
殺したりします
ですから 我々人間のスピードへの
飽くなき追求において
素晴らしい快挙を
遂げてきましたが
実は自然界では
先駆者がいたのです