1 00:00:06,809 --> 00:00:09,740 ヤドリギを目にしたら 皆さんは慌てて逃げ出すか 2 00:00:09,740 --> 00:00:11,781 誰かお目当ての人がいたら 3 00:00:11,781 --> 00:00:15,219 真っ白な実のついた枝の下で チャンスを窺うかのどちらかでしょう 4 00:00:15,219 --> 00:00:18,610 でも ヤドリギの下でキスをするという このクリスマスの伝統は 5 00:00:18,610 --> 00:00:20,010 どうやってできたのでしょう? 6 00:00:20,010 --> 00:00:23,590 この長い間続いている慣習は 神話と 7 00:00:23,590 --> 00:00:25,840 この不思議な植物の生態が 合わさったものです 8 00:00:25,840 --> 00:00:28,600 世界にはヤドリギの種が 9 00:00:28,600 --> 00:00:30,750 千以上も存在します 10 00:00:30,750 --> 00:00:33,650 古代ヨーロッパ人は この植物の 11 00:00:33,650 --> 00:00:35,991 変わった生態に心奪われ 12 00:00:35,991 --> 00:00:39,481 伝説や神話に取り入れました 13 00:00:39,481 --> 00:00:40,571 古代ローマでは 14 00:00:40,571 --> 00:00:44,280 大プリニウスが 古代イングランドのドルイド僧は 15 00:00:44,280 --> 00:00:49,362 ヤドリギを神々が天から落とした植物だと 信じていると述べています 16 00:00:49,362 --> 00:00:52,899 これはある木々に見られる 普通でないほどに 17 00:00:52,899 --> 00:00:54,591 高い枝振りを説明したものです 18 00:00:54,591 --> 00:00:56,971 ヤドリギには癒やしの力や 19 00:00:56,971 --> 00:00:58,792 豊穣をもたらす力も あるとされていました 20 00:00:58,792 --> 00:01:03,288 一方 スカンジナビアの伝説では ヤドリギの神秘的な性質が 21 00:01:03,288 --> 00:01:07,844 神バルダーと その敬愛する母 フリッグの物語に語られています 22 00:01:07,844 --> 00:01:11,103 フリッグは愛、結婚、 そして豊穣の女神です 23 00:01:11,103 --> 00:01:14,992 フリッグは息子を愛するあまりに あらゆる植物や 24 00:01:14,992 --> 00:01:15,768 動物 25 00:01:15,768 --> 00:01:19,673 静物にまで 息子を 傷つけないよう命じました 26 00:01:19,673 --> 00:01:22,803 しかしフリッグは 熱弁の中で ヤドリギを見落としていたのです 27 00:01:22,803 --> 00:01:26,103 この見落としに気づいた 意地悪な神ロキは 28 00:01:26,103 --> 00:01:28,790 バルダーの心臓を ヤドリギの枝からできた 29 00:01:28,790 --> 00:01:30,889 矢で射貫いたのでした 30 00:01:30,889 --> 00:01:32,771 フリッグはあまりの悲しみに 涙を流し 31 00:01:32,771 --> 00:01:36,013 それが真珠のような ヤドリギの実になったと言います 32 00:01:36,013 --> 00:01:40,143 それによって他の神々が情けをかけて バルダーを生き返らせました 33 00:01:40,143 --> 00:01:43,333 この知らせを聞いて 歓喜にわいたフリッグは 34 00:01:43,333 --> 00:01:46,603 ヤドリギを死の象徴から 35 00:01:46,603 --> 00:01:49,354 平和と愛の象徴へと 変えたのです 36 00:01:49,354 --> 00:01:52,313 フリッグはあらゆる争いを 1日の間 中断することと 37 00:01:52,313 --> 00:01:55,823 この枝の下を通った者は 皆 抱き合って 38 00:01:55,823 --> 00:01:58,624 愛を世界に広めるよう命じました 39 00:01:58,624 --> 00:02:00,073 17世紀には 40 00:02:00,073 --> 00:02:02,863 新世界にやってきた イギリスの植民者が 41 00:02:02,863 --> 00:02:05,394 違ってはいるものの 非常によく似た 42 00:02:05,394 --> 00:02:07,463 ヤドリギの種を見つけました 43 00:02:07,463 --> 00:02:11,034 彼らはこの魔法、豊穣、 そして愛情の物語を当てはめて 44 00:02:11,034 --> 00:02:15,515 ヤドリギを吊るす伝統を ヨーロッパからアメリカに広めたのです 45 00:02:15,515 --> 00:02:17,586 18世紀までには 46 00:02:17,586 --> 00:02:20,764 イギリス人がこれを クリスマスの伝統にしましたが 47 00:02:20,764 --> 00:02:24,895 この慣習は人間の想像力だけの 産物ではありません 48 00:02:24,895 --> 00:02:28,265 これはすべて この植物の 不思議な生態に由来しているのです 49 00:02:28,265 --> 00:02:31,465 私たちはヤドリギを クリスマスの飾りだと考えていますが 50 00:02:31,465 --> 00:02:36,655 野生では他の木々の枝に覆いかぶさる 寄生植物でもあるのです 51 00:02:36,655 --> 00:02:39,935 ヤドリギは寄生根と呼ばれる 変形した根を持っており 52 00:02:39,935 --> 00:02:41,987 これが木の表皮を破って 53 00:02:41,987 --> 00:02:43,935 木々が幹を通じて 運んでいる 54 00:02:43,935 --> 00:02:46,936 水やミネラルを吸い上げるのです 55 00:02:46,936 --> 00:02:49,086 近くにある木々にも寄生するために 56 00:02:49,086 --> 00:02:51,715 ヤドリギは鳥などの生物に 57 00:02:51,715 --> 00:02:53,504 種をまいてもらいます 58 00:02:53,504 --> 00:02:56,513 ヤドリギの白くてネバネバした実を 食べた鳥たちは 59 00:02:56,513 --> 00:03:00,911 べたべたした種を木の表皮に 擦り付けて取り除くことがあるのです 60 00:03:00,911 --> 00:03:05,377 運が良ければ 消化されなかった種が 木の上に排出されて 61 00:03:05,377 --> 00:03:08,527 そこで発芽し成長を始めます 62 00:03:08,527 --> 00:03:11,166 生命力が強く 周りの木が葉を落とした後も 63 00:03:11,166 --> 00:03:13,923 葉が生い茂っている様子から 64 00:03:13,923 --> 00:03:18,077 迷信深い先祖たちが ヤドリギに魅せられたのもわかりますね 65 00:03:18,077 --> 00:03:22,841 こうした性質をヤドリギの不思議な力と 豊穣さのしるしだと考えたのです 66 00:03:22,841 --> 00:03:26,038 現在でも ヤドリギは それが支えている― 67 00:03:26,038 --> 00:03:29,958 野生生物の多様性で 人々に畏敬の念を抱かせます 68 00:03:29,958 --> 00:03:33,989 単なる寄生生物ではなく 要となる植物としても知られています 69 00:03:33,989 --> 00:03:36,009 様々な動物が食物としています 70 00:03:36,009 --> 00:03:37,009 シカや 71 00:03:37,009 --> 00:03:37,799 ヘラジカ 72 00:03:37,799 --> 00:03:38,528 リス 73 00:03:38,528 --> 00:03:39,331 シマリス 74 00:03:39,331 --> 00:03:40,275 ヤマアラシ 75 00:03:40,275 --> 00:03:41,169 コマドリ 76 00:03:41,169 --> 00:03:42,098 ルリツグミ 77 00:03:42,098 --> 00:03:43,101 ナゲキバト 78 00:03:43,101 --> 00:03:46,508 そして蝶の一種 カザリシロチョウ属もそうです 79 00:03:46,508 --> 00:03:48,769 ヤドリギの中には 密集して茂るものもあり 80 00:03:48,769 --> 00:03:53,219 様々な鳥にとって 巣作りをする絶好の場所になります 81 00:03:53,219 --> 00:03:56,539 そして寄生植物であるにもかかわらず 82 00:03:56,539 --> 00:03:59,832 ヤドリギは他の植物の 役に立つこともあるのです 83 00:03:59,832 --> 00:04:02,789 例えば ビャクシンは ヤドリギのそばで芽を出すことで 84 00:04:02,789 --> 00:04:05,949 実を食べる鳥の恩恵を受けます 85 00:04:05,949 --> 00:04:09,530 様々な恩恵をもたらすことで ヤドリギは生物多様性に貢献し 86 00:04:09,530 --> 00:04:12,161 生態系の繁栄を促します 87 00:04:12,161 --> 00:04:16,258 この象徴的な植物については 実態が 伝説を真似ているとさえ言えるでしょう 88 00:04:16,258 --> 00:04:19,781 野生では ヤドリギは 生命の結びつきを促し 89 00:04:19,781 --> 00:04:22,669 人間の伝統でも 同じことが起こっているのですから