人間の骨を体外で 育てることができますか? 近い将来に答えは イエスになるかもしれません しかしそれがなぜ可能かを 理解するためには 本来体内ではどのように骨が 成長するのか知る必要があります 多くの骨は成長する胎児の中で 柔らかくて しなやかな軟骨として生まれます 造骨細胞が軟骨を カルシウムやリン酸塩などの 無機物でできたスポンジ状の格子で 置き換えていくのです 格子は次第に硬くなり 専門化した造骨細胞である 骨芽細胞が さらに無機物を蓄えて 骨に強度を与えます 格子自体は 生きた細胞ではありませんが 血管や神経や他の生体組織などの ネットワークが 特別な管や通り道を通じて 成長します この生成の過程を通じて 多数の骨芽細胞が 骨格を強化し 我々の臓器を守り 動きを可能にし 血液細胞産生を可能にします しかしこの最初の過程だけでは 骨を強く機能的にするには 十分ではありません もしこの方法で骨を作って 筋肉をくっつけ 重い荷物を持ち上げるために 使おうとすれば 骨は負担に耐えられず 折れてしまいます これは通常は起こらないことです なぜなら我々の細胞は 使われている箇所の骨を 絶えず強化しているからです これはウォルフの法則と呼ばれる原理です しかしながら骨の材料は限られており 骨は 十分な材料がある時にだけ 新しく強化されます 幸運にも骨芽細胞―建築業者には 相方となる破骨細胞― リサイクル業者がいます 破骨細胞は必要のない無機物の格子を 酸や酵素を使って分解し 骨芽細胞がより多くの材料を 使えるようにします 軌道上にいる宇宙飛行士が 常に運動する必要がある 主な理由の1つは 無重力下で骨格への負荷が 不足するからです ウォルフの法則で予想される通り 破骨細胞が骨芽細胞よりも活発になり 骨の質量と強度を 減少させてしまいます 皆さんの体は 骨折した時に 折れた骨を元通りに再構築する 驚きの能力を持っています ガンの摘出 外傷性の事故 遺伝子の異常などの特定の状況は 体の回復能力を上回ることがあります 従来の解決法には 空いた穴の中に 金属や動物の骨や 人間の提供者からの骨を 埋めたりするものがありますが どれも最適ではありませんでした 感染症を起こしたり 免疫システムにより拒否されたりし そして健康な骨の機能の 大部分を果たすことができなかったためです 理想的な解決法は 患者自身の細胞から作られた骨を育て 穴にぴったり合うように 成形することです そしてこれこそ科学者達が 現在実現しようとしていることです その方法をご紹介します 最初に医者は患者の脂肪組織から 幹細胞を抽出し 失われた骨の正しい形を知るために CTスキャンを取ります 次に穴の形と同じ模型を作ります 3Dプリンターや 脱細胞処理した 牛の骨を彫ることによってです これらは全ての細胞が 取り除かれた骨で スポンジのような 無機物の格子のみが残っています 医師は幹細胞をこの格子に加え 生物反応器に入れます 体内の環境を すべて模倣できる装置です 温度、湿度、酸性度や栄養成分など 幹細胞が 骨芽細胞や他の細胞に分化し ミネラルの格子に定着し 生きた組織に改造できるように 最適に設定します でも 1つ足りないことがありますね ウォルフの法則を覚えていますか? 人工の骨も実際の負荷を 経験する必要があります そうでないと弱く壊れやすく なってしまいます そこで生物反応器は 時おり骨の周りに液体を噴出し その圧力で骨芽細胞に 骨の密度を増やすように伝えるのです これら全てを行うと 3週間以内に 生物反応器の中で 生きた骨が出来上がり 患者の体内に移植可能になります しかし人間でこの方法がうまく行くのか まだ明らかではありません 研究室でできた骨は 豚や他の動物への移植には 成功していますが 臨床実験は 早ければ2016年に始まります